説明

ティシュ及びカートン入りティシュ、並びにこれらの製造方法

【課題】得られるティシュのプライ剥がれを防止することができるのは勿論のこと、ティシュの破れ、割け、折れ等の不具合を有効に防止可能なティシュの製造方法を提供する。
【解決手段】(1)長尺幅広プライ34Aの長手方向に沿って、ティシュ長さL1に相当する間隔I1でエンボス部38Aを形成するエンボス部形成工程30と、(2)長尺幅広プライ34Aを、各々のエンボス部38Aの片側の縁部に沿って切り分け、縁部E1に沿ってエッジエンボス8Aが形成され、縁部E2にはエッジエンボスが形成されていない長尺プライ44Aを形成する切り分け工程40と、(3)長尺プライ44Aを、その短手方向に向かって、ティシュ幅W1に相当する長さL2に裁断し、プライ4Aの端部E3に沿って、エッジエンボス8Aが形成され、端部E4にはエッジエンボスが形成されていないティシュ1を複数組得る裁断工程50と、を備えたティシュの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用衛生用紙の一種である、ティシュ及びカートン入りティシュ、並びにこれらの製造方法に関するものである。より具体的には、原紙が2枚以上積層されたプライからなり、積層された原紙同士の剥離(プライ剥がれ)を防止するためのエッジエンボスが形成されたティシュ及びカートン入りティシュ、並びにこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ティシュは、原紙が2枚以上積層されたプライから構成されている。従って、積層された原紙同士の剥離(プライ剥がれ)を防止する目的で、プライボンディング処理が施されることがある。例えば図2A及び図2Bに示すように、原紙2c,2dが積層されたプライ4Bからなり、プライ剥がれを防止する目的で、プライ4Bの両端部の近傍に帯状のエッジエンボス8Bが形成されたティシュ100が知られている。
【0003】
このようなティシュの製造方法としては、例えば図3に示すように、(1)二条の凸エンボス面37Bが形成された凸エンボスホイール36Bを用い、複数枚の原紙32c,32dが積層された長尺幅広プライ34Bの長手方向に沿って、二条のエンボス部38Bを複数箇所に形成し、(2)その後、丸刃46を備えたスリッター42を用い、その長尺幅広プライ34Bを、二条のエンボス部38Bの間隙部において切り分け(切断線43)、これらを折り重ねた後、(3)形成したエンボス部38Bと直交する方向に裁断することによって(裁断線52)、プライ4Bの両端部E5,E6近傍に、帯状のエッジエンボス8Bを形成する製造方法が行われる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−180550号公報
【特許文献2】特開2006−271458号公報
【特許文献3】特開2007−143659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記の製造方法は、(1)原紙のクレープ状態に乱れがあると、得られるティシュに破れや割けが発生し易いという問題があった。このクレープ状態の乱れは、ヤンキードライヤーによる抄紙工程等で形成される場合がある。また、(2)原紙同士の層間にエアが入る等の理由で、原紙がダブついた状態のままボンディングされてしまい、得られるティシュに折れや破れが発生し易いという問題もあった。
【0006】
即ち、前記の製造方法は、得られるティシュに、破れ、割け、折れ等の不具合が発生し易い点で十分満足できるものではなく、未だ解決すべき課題を残すものであった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、ティシュのプライ剥がれを防止することができるのは勿論のこと、ティシュの破れ、割け、折れ等の不具合を有効に防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、プライの一方の端部側にのみエッジエンボスを形成し、プライの他方の端部側にはエッジエンボスを形成しないことによって、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示すティシュ及びカートン入りティシュ、並びにこれらの製造方法が提供される。
【0009】
[1] (1)複数枚の原紙が積層された長尺幅広プライの長手方向に沿って、ティシュ長さに相当する間隔で帯状のエンボス部を複数箇所に形成するエンボス部形成工程と、(2)前記エンボス部が複数箇所に形成された前記長尺幅広プライを、各々のエンボス部の片側の縁部に沿って切り分け、ティシュ長さに相当する幅を有し、その一の縁部E1に沿って帯状のエッジエンボスが形成され、他の縁部E2には前記エッジエンボスが形成されていない長尺プライを複数組形成する切り分け工程と、(3)前記長尺プライを、その長手方向と直交する短手方向に向かって、ティシュ幅に相当する長さに裁断し、複数枚の原紙が積層されたプライからなり、前記プライの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボスが形成され、他の端部E4には前記エッジエンボスが形成されていないティシュを複数組得る裁断工程と、を備えたティシュの製造方法。
【0010】
[2] 前記エンボス部形成工程は、その長手方向に向かって送り出された前記長尺幅広プライを、凸エンボス模様が刻設された凸エンボスホイールと受けロールとの間に挟みこんで押圧し、前記エンボス部を形成するものである前記[1]に記載のティシュの製造方法。
【0011】
[3] 前記エンボス部形成工程は、前記凸エンボスホイールとして、二条の押圧面が形成され、一方の押圧面は前記凸エンボス模様が形成された凸エンボス面、他方の押圧面はプレーン面である凸エンボスホイールを用いるものである前記[2]に記載のティシュの製造方法。
【0012】
[4] 複数枚の原紙が積層されたプライからなり、前記プライの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボスが形成され、他の端部E4には前記エッジエンボスが形成されていないティシュ。
【0013】
[5] (1)複数枚の原紙が積層された長尺幅広プライの長手方向に沿って、ティシュ長さに相当する間隔で帯状のエンボス部を複数箇所に形成するエンボス部形成工程と、(2)前記エンボス部が複数箇所に形成された前記長尺幅広プライを、各々のエンボス部の片側の縁部に沿って切り分け、ティシュ長さに相当する幅を有し、その一の縁部E1に沿って帯状のエッジエンボスが形成され、他の縁部E2には前記エッジエンボスが形成されていない長尺プライを複数組形成する切り分け工程と、(3)複数組の前記長尺プライを折り板式加工機に送り込み、各々の長尺プライの前記縁部E1が積層方向の一方に、前記縁部E2が積層方向の他方に配向するように、一組の長尺プライを長手方向に沿って折り返し、その折り返し部分に他の一組の長尺プライを挟み込み、更に、前記他の一組の長尺プライを長手方向に沿って折り返す動作を繰り返して、複数組の前記長尺プライが折り重ねられた長尺ティシュ束を形成する折り畳み工程と、(4)前記長尺ティシュ束を、その長手方向と直交する短手方向に向かって、ティシュ幅に相当する長さに裁断し、複数枚の原紙が積層されたプライからなり、前記プライの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボスが形成され、他の端部E4には前記エッジエンボスが形成されていないティシュが折り重ねられたティシュ束を得る裁断工程と、(5)前記ティシュ束を、前記ティシュの前記端部E3がカートンの上面側に、前記ティシュの前記端部E4がカートンの底面側に配向するように、ティシュ収納用のカートンの内部に収納してカートン入りティシュを得る箱詰め工程と、を備えたカートン入りティシュの製造方法。
【0014】
[6] 前記エンボス部形成工程は、その長手方向に向かって送り出された前記長尺幅広プライを、凸エンボス模様が刻設された凸エンボスホイールと受けロールとの間に挟みこんで押圧し、前記エンボス部を形成するものである前記[5]に記載のカートン入りティシュの製造方法。
【0015】
[7] 前記エンボス部形成工程は、前記凸エンボスホイールとして、二条の押圧面が形成され、一方の押圧面は前記凸エンボス模様が形成された凸エンボス面、他方の押圧面はプレーン面である凸エンボスホイールを用いるものである前記[6]に記載のカートン入りティシュの製造方法。
【0016】
[8] 複数組のティシュが折り重ねられたティシュ束と、上面にティシュ取出口を形成する取出口形成用切込線が形成された、前記ティシュ束を収納するためのカートンとを備え、前記ティシュは、複数枚の原紙が積層されたプライからなり、前記プライの一の端部E3に沿ってエッジエンボスが形成され、他の端部E4には前記エッジエンボスが形成されていないものであり、前記ティシュ束は、前記ティシュの前記端部E3が積層方向の一方に、前記ティシュの前記端部E4が積層方向の他方に配向するように、複数組の前記ティシュが折り重ねられたものであるとともに、前記ティシュの前記端部E3が前記カートンの上面側に、前記ティシュの前記端部E4が前記カートンの底面側に配向するように、前記カートンの内部に収納されているカートン入りティシュ。
【発明の効果】
【0017】
本発明のティシュの製造方法、カートン入りティシュの製造方法は、得られるティシュのプライ剥がれを防止することができるのは勿論のこと、ティシュの破れ、割け、折れ等の不具合を有効に防止可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のティシュ及びカートン入りティシュ、並びにこれらの製造方法を実施するための最良の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える物及び製造方法を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[1]ティシュ及びその製造方法:
本発明のティシュの製造方法は、図1Aに示すように、プライ4Aの一方の端部E3側にのみエッジエンボス8Aを形成し、プライ4Aの他方の端部E4側にはエッジエンボスを形成しない点に特徴がある。
【0020】
図3に示すように、従前の製造方法では、二条のエンボス部38Bを形成するため、極めて狭い領域の中で2箇所に凸エンボス面37Bからの力を加えていた。従って、長尺幅広プライ34Bの二条のエンボス部38Bやその間隙部において原紙32c,32dがダメージを受け易かった。しかも、この製造方法では、エンボス部38Bを形成後、丸刃46を備えたスリッター42を用いて、前記ダメージが加わった二条のエンボス部38Bの間隙部を切断して、長尺幅広プライ34Bを切り分ける必要があった。従って、原紙にクレープの乱れ等があると、エンボス部38Bを形成する際、或いは長尺幅広プライ34Bを切り分ける際に、プライに破れや割けが発生し易かった。
【0021】
また、前記の製造方法は、得られるティシュの両端部E5,E6に対応する部分にエンボス部38Bを形成するため、原紙32c,32dがダブついた状態でボンディングされると、以後そのダブつきが解消されることがなかった。従って、そのダブつきに起因して、得られるティシュに折れや破れが発生し易かった。
【0022】
これに対し、本発明の製造方法では、図1Aに示すように、エンボス部38Aを形成する数自体が少ないため、長尺幅広プライ34Aに対して凸エンボス面37Aから力を加えられる箇所も少ない。また、ティシュ長さL1に相当する広い間隔を空けて各エンボス部38Aを形成する。従って、長尺幅広プライ34Aに与えるダメージが少なくて済み、エンボス部の間隙部を切り分ける必要もない。このような方法によれば、エンボス部38Aを形成する際、或いは長尺幅広プライ34Aを切り分ける際に、長尺幅広プライ34Aに破れや割けが発生し難い。
【0023】
また、図1Aに示すように、得られるティシュの端部E3に対応する部分にのみエンボス部38Aを形成するため、原紙32a,32bがダブついた状態でボンディングされたとしても、後の切り分け工程においてそのダブつきが解消される。従って、ダブつきに起因して、得られるティシュに折れや破れが発生するという問題を解決することができる。
【0024】
本発明のティシュの製造方法は、エンボス部形成工程、切り分け工程、裁断工程の3工程を必須の工程として備える。以下、項分けして説明する。
【0025】
[1−1]エンボス部形成工程:
「エンボス部形成工程」は、ティシュの原材料である長尺幅広プライにエンボス部を形成する工程である。
【0026】
具体的には、図1Aに示すエンボス部形成工程30のように、複数枚の原紙32a,32bが積層された長尺幅広プライ34Aの長手方向に沿って、ティシュ長さL1に相当する間隔I1で帯状のエンボス部38Aを複数箇所に形成する。
【0027】
ティシュ長さL1に相当する間隔I1でエンボス部38Aを形成することで、得られるティシュ1には、1枚当たり1箇所のエンボス部38Aが形成されることになる。そして、後に、エンボス部38Aの片側の縁部に沿って長尺幅広プライ34Aを切り分けることによって、プライ4Aの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボスが形成され、他の端部E4にはエッジエンボスが形成されていないティシュ1を得ることが可能となる。
【0028】
前記の条件を満たす限り、エンボス部38Aの形成方法は特に限定されない。但し、図1A及び図1Bに示すように、その長手方向に向かって送り出された長尺幅広プライ34Aを、凸エンボス模様が刻設された凸エンボスホイール36Aと受けロール35との間に挟みこんで押圧し、エンボス部38Aを形成する方法であることが好ましい。
【0029】
凸エンボスロールの構造については特に限定されない。図1Aに示す方法では、一条の押圧面が形成され、その押圧面は凸エンボス模様が形成された凸エンボス面37Aである凸エンボスホイール36Aを用いている。
【0030】
但し、本発明の製造方法では、図4に示す方法のように、二条の押圧面が形成され、一方の押圧面は前記凸エンボス模様が形成された凸エンボス面37A、他方の押圧面はプレーン面37Cである凸エンボスホイール36Cを用いることも好ましい。このような方法は、プレーン面37Cによって長尺幅広プライ34Aを軽く押さえながら、エンボス部38Aを形成することができる。
【0031】
本発明の製造方法では、エンボス部を帯状に形成する。「帯状」とは、ある程度の幅をもってエンボス部が形成されていることを意味し、複数の模様や帯がある程度の幅に集合して形成されているようなものも含まれる。エンボス部の幅、形成位置について特に制限はない。
【0032】
「エンボス」の方式は、長尺幅広プライに型押し模様を形成し得るものである限り、特に制限はない。例えば、受けロールとしてラバーロールを用いるラバースチールエンボスであってもよいし、受けロールに凸エンボス模様と相補的な凹エンボス模様が刻設された凹エンボスロールを用いるマッチドスチールエンボスであってもよい。「エンボス」の形状としては、例えば真円形、楕円形、菱型等の形状を挙げることができる。
【0033】
「長尺幅広プライ」とは、ティシュの中間体となる、1枚のティシュよりも幅、長さとも大であるプライを意味する。長尺幅広プライの形成方法は特に限定されないが、例えば図1Bに示すような方法で形成することができる。図1Bに示す方法では、長尺かつ幅広の原紙32a,32bを大径のロール状に巻回してなる原紙ロール31a,31bを用意し、この原紙ロール31a,31bから原紙32a,32bをその長手方向に送り出し、押さえロール33a,33bで合流させて原紙32a,32bを積層させて長尺幅広プライ34Aとしている。
【0034】
プライの形成に用いる「原紙」についても特に制限はないが、坪量10〜18g/mに抄紙されたティシュ用原紙を好適に用いることができる。
【0035】
[1−2]切り分け工程:
「切り分け工程」は、エンボス部が形成された長尺幅広プライを切り分けて(即ち、幅方向に分割して)、複数の長尺プライとする工程である。
【0036】
具体的には、図1A及び図1Bに示す切り分け工程40のように、エンボス部38Bを形成後、丸刃46を備えたスリッター42を用いて、エンボス部38Aが複数箇所に形成された長尺幅広プライ34Aを、各々のエンボス部38Aの片側の縁部に沿って切り分け(切断線43)、ティシュ長さL1に相当する幅W2を有し、その一の縁部E1に沿って帯状のエッジエンボス48Aが形成され、他の縁部E2にはエッジエンボスが形成されていない長尺プライ44Aを複数組形成する。スリッター42は、図1Bに示されるようにアンビルロール41と組み合わされて長尺幅広プライ34Aの切断用として用いられる。
【0037】
切断の位置について特に制限はない。また、切り分けの方法についても特に制限はない。例えば、丸刃又はバンドソーを備えたカッターにより切り分ける方法等を採用することができる。カッターとしては、マルチブレードソー、丸刃ソー、テーブル式マルチブレードソー等を好適に用いることができる。
【0038】
[1−3]裁断工程:
「裁断工程」は、長尺プライを裁断し、複数組のティシュを得る工程である。
【0039】
具体的には、図1Aに示す裁断工程50のように、長尺プライ44Aを、その長手方向と直交する短手方向に向かって、ティシュ幅W1に相当する長さL2に裁断する。こうすることにより、複数枚の原紙2a,2bが積層されたプライ4Aからなり、プライ4Aの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボス8Aが形成され、他の端部E4にはエッジエンボスが形成されていないティシュ1を複数組得ることができる。このティシュ1は、ティシュ長さL1、ティシュ幅W1の形状を有するものである。
【0040】
裁断の方法について特に制限はない。例えば、切り分け工程と同様に、丸刃又はバンドソーを備えたカッターを用いて裁断することができる。
【0041】
[1−4]ティシュ:
前記の製造方法によれば、図5A及び図5Bに示すような、複数枚の原紙2a,2bが積層されたプライ4Aからなり、プライ4Aの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボス8Aが形成され、端部E3と対向する端部E4にはエッジエンボスが形成されていないティシュ1を得ることができる。
【0042】
[2]カートン入りティシュ及びその製造方法:
本発明のカートン入りティシュの製造方法は、前記ティシュの製造方法に準じて、エンボス部形成工程、切り分け工程を行った後、得られた長尺プライを折り重ねて長尺ティシュ束とし、この長尺ティシュ束を裁断してティシュ束を得、このティシュ束をティシュ収納用カートンに収納してカートン入りティシュを製造する方法である。
【0043】
本発明のカートン入りティシュの製造方法は、エンボス部形成工程、切り分け工程、折り畳み工程、裁断工程、箱詰め工程の5工程を必須の工程として備える。但し、エンボス部形成工程及び切り分け工程は、ティシュの製造方法に準じて行うことができるため説明を割愛し、折り畳み工程、裁断工程、箱詰め工程についてのみ説明する。
【0044】
[2−1]折り畳み工程:
「折り畳み工程」は、エンボス部形成工程、切り分け工程を経て得られた長尺プライを折り畳み、複数組の長尺プライが折り重ねられた長尺ティシュ束を形成する工程である。
【0045】
具体的には、複数組の長尺プライを折り板式加工機に送り込み、各々の長尺プライの縁部E1が積層方向の一方に、縁部E2が積層方向の他方に配向するように、一組の長尺プライを長手方向に沿って折り返し、その折り返し部分に他の一組の長尺プライを挟み込み、更に、他の一組の長尺プライを長手方向に沿って折り返す動作を繰り返して、複数組の長尺プライが折り重ねられた長尺ティシュ束を形成する。
【0046】
長尺プライを折り畳む方法としては、折板式加工機(「多連機」とも称される。)を用いる方法やロータリーシリンダー式加工機(「インターフォールダー」とも称される。)を用いる方法等が知られている。但し、本発明の製造方法においては、折板式加工機を用いる方法を採用することとした。
【0047】
折板式加工機は、衛生用紙束を構成するプライの組数に応じた長尺プライ供給ロール及び折板を備えた加工機である。この加工機は、長尺プライ供給ロールから長尺プライを引き出し、引き出された長尺プライをその長手方向に沿って折板で折り重ねていく動作を繰り返して複数組の長尺プライが折り重ねられた長尺ティシュ束を形成する。従って、長尺プライの長手方向の縁部E1に沿って形成されたエッジエンボスを積層方向の一方に配向させるように長尺ティシュ束を形成することができる。
【0048】
このようにエッジエンボスを積層方向の一方に配向させることによって、ティシュをカートンに収納した際に、取り出し側の端部のみにエッジエンボスが位置するカートン入りティシュを製造することができる。このようなティシュは、ティシュの取り出し側端部にエッジエンボスが形成されているため、ティシュ取り出し時のプライ剥がれが防止され、ティシュの取出しが容易である。また、エッジエンボスによって、取り出し側端部の強度が向上しているため、取り出しの際のティシュの破れ等を効果的に防止することができる。
【0049】
折り畳みのパターンは特に限定されない。但し、一組の長尺プライが長手方向に沿って折り返され、その折り返し部分に他の一組の長尺プライを挟み込まれ、更に、他の一組の長尺プライが長手方向に沿って折り返されるという繰り返し構造となるように折り畳むことが好ましい。このような構造とすると、最上層のプライがカートンから取り出されると、これに伴ってその直下に位置するプライが引き出される、いわゆるポップアップ方式によりプライを順次取出すことが可能となる。
【0050】
「繰り返し構造」としては、例えば、2つ折り繰り返し構造(Cホールド)の他、3つ折り繰り返し構造(Z折り構造)又はこれらを組み合わせた繰り返し構造等を挙げることができる。
【0051】
2つ折り繰り返し構造(Cホールド)の例としては、図6Aに示すティシュ束20Aのように、側面から見てV字型(C字型)に折り返されたプライ4Cが互いに対向するように交互に挟み込まれることによって、複数のプライ4Cが連続的に折り畳まれた繰り返し構造を挙げることができる。
【0052】
3つ折り繰り返し構造の例としては、図6Bに示すティシュ束20Bのように、側面から見てZ字型に折り返されたプライ4Dが互いに対向するように交互に挟み込まれることによって、複数のプライ4Dが連続的に折り畳まれた繰り返し構造を挙げることができる。
【0053】
これらを組み合わせた繰り返し構造としては、図6Cに示すティシュ束20Cのように、側面から見てV字型(C字型)に折り返されたプライ4CとZ字型に折り返されたプライ4Dが交互に挟み込まれることによって、複数のプライ4C,4Dが連続的に折り畳まれた繰り返し構造を挙げることができる。
【0054】
図6A〜図6Cに示すティシュ束20A〜20Cは、ティシュの端部E3側に形成されたエッジエンボス8C,8Dが全てティシュの積層方向の上方に配向するように(即ち、エッジエンボス8C,8Dがティシュの取り出し側の端部に位置するように)、カートンの上面側にプライ4C,4Dが折り重ねられている例である。
【0055】
[2−2]裁断工程:
「裁断工程」は、前記折り畳み工程で得られた長尺ティシュ束を長手方向と直交する方向(短手方向)に裁断する工程である。
【0056】
具体的には、長尺ティシュ束を、その長手方向と直交する短手方向に向かって、ティシュ幅に相当する長さに裁断し、複数枚の原紙が積層されたプライからなり、プライの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボスが形成され、端部E3と対向する端部E4にはエッジエンボスが形成されていないティシュが折り重ねられたティシュ束を得る。こうすることにより、所定のティシュ長さ、ティシュ幅のティシュが折り重ねられたティシュ束を一時に複数組得ることができる。
【0057】
裁断の方法については、既に説明したティシュの製造方法と同様の方法を採用することができる。例えば、丸刃又はバンドソーを備えたカッターを用いて裁断することができる。
【0058】
[2−3]箱詰め工程:
「箱詰め工程」は、前記裁断工程で得られたティシュ束をティシュ収納用カートンに収納して箱詰めする工程である。
【0059】
具体的には、ティシュ束を、ティシュの端部E3(エッジエンボスが形成されている側の端部)がカートンの上面側に、ティシュの端部E4(エッジエンボスが形成されていない側の端部)がカートンの底面側に配向するように、ティシュ収納用のカートンの内部に収納してカートン入りティシュを得る。
【0060】
ティシュ束の箱詰め方法は、従来公知の箱詰め方法を広く採用することができ、特に制限はない。例えば、図7に示すような、上面62、底面64、及び一対の側面66を有し、これらの面によって区画された内部空間が形成され、上面62と底面64と一対の側面66のそれぞれの端縁から妻面を形成するためのフラップ68が延出された、角筒状カートン60を用意し、その角筒状カートン60の内部空間にティシュ束20を収納し、次いで、フラップ68を折り曲げて固定することにより妻面を形成することにより、収納する方法を採ることができる。
【0061】
なお、「角筒状カートン」は、例えば図8に示すカートンブランク80のような、紙材料等からなるカートンブランクを折り曲げることによって形成することができる。
【0062】
カートンブランク80は、一枚の紙材料によって、折り曲げ線を介して上面62、底面64、一対の側面66が形成されており、側面66の端縁からは、折り曲げ線を介して内フラップ68bが延出されたものである。また、上面62の端縁からは、折曲線を介して上面外フラップ68aが延出されており、これと同様に、底面64の端縁からは、折曲線を介して底面外フラップ68cが延出されている。更に、底面64の一の側縁部からは、折曲線を介して、側面接合代82が延出されている。
【0063】
このカートンブランク80にはカートンの上面に相当する面に環状の取出口形成用切込線72が形成されている。そして、取出口形成用切込線72を包囲する位置に、スリット74が形成されたウインドウフィルム70が貼り付けられている。このようなカートンブランク80は、各折曲線を折り曲げ、側面接合代82と側面66を接合することにより、双方の妻面側が開放された角筒状カートンを形成することができる。
【0064】
なお、カートンブランク80には、底面64となる面の中央部にU字状の押上片形成用切込線84が1対形成されている。この押上片形成用切込線84を押圧して押し破り、カートンの内側に折り曲げると、押上片によって、カートン内部のティシュが上面側に押し上げられる。従って、上面の取出口からティシュを最後の一枚まで、安定してポップアップさせることが可能となる。
【0065】
[2−4]カートン入りティシュ:
前記の製造方法によれば、本発明のカートン入りティシュを得ることができる。本発明のカートン入りティシュは、複数組のティシュが折り重ねられたティシュ束と、上面にティシュ取出口を形成する取出口形成用切込線が形成された、ティシュ束を収納するためのカートンとを備える。
【0066】
収納されるティシュは、複数枚の原紙が積層されたプライからなり、プライの一の端部E3に沿ってエッジエンボスが形成され、他の端部E4にはエッジエンボスが形成されていないものである。
【0067】
前記ティシュにより形成されるティシュ束は、ティシュの端部E3が積層方向の一方に、ティシュの端部E4が積層方向の他方に配向するように、複数組の前記ティシュが折り重ねられたものである。
【0068】
そして、前記ティシュ束は、ティシュの端部E3がカートンの上面側に、ティシュの端部E4がカートンの底面側に配向するように、カートンの内部に収納されている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のティシュの製造方法、カートン入りティシュの製造方法は、プライ剥がれを防止するためのエッジエンボスが形成されたティシュ、特にカートン入りティシュの製造に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1A】本発明のティシュの製造方法の一の実施形態を模式的に示す工程図である。
【図1B】図1Aに示す製造方法を側方から見た状態を示す模式図である。
【図2A】従来のティシュの一の実施形態を模式的に示す平面図である。
【図2B】図2Aに示すティシュのA−A’断面を模式的に示すA−A’断面図である。
【図3】従来のティシュの製造方法の一の実施形態を模式的に示す工程図である。
【図4】本発明のティシュの製造方法の別の実施形態を模式的に示す工程図である。
【図5A】本発明のティシュの一の実施形態を模式的に示す平面図である。
【図5B】図5Aに示すティシュのA−A’断面を模式的に示すA−A’断面図である。
【図6A】本発明のカートン入りティシュを構成するティシュ束の一の実施形態を示す概略側面図である。
【図6B】本発明のカートン入りティシュを構成するティシュ束の別の実施形態を示す概略側面図である。
【図6C】本発明のカートン入りティシュを構成するティシュ束の更に別の実施形態を示す概略側面図である。
【図7】本発明のカートン入りティシュの製造方法の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明のカートン入りティシュの製造方法に用いるカートンブランクの一の実施形態を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0071】
1,100:ティシュ、2a,2b,2c,2d:原紙、4A,4B,4C,4D:プライ、8A,8B,8C,8D:エッジエンボス、20,20A,20B,20C:ティシュ束、30:エンボス部形成工程、31a,31b:原紙ロール、32a,32b,32c,32d:原紙、33a,33b:押さえロール、34A,34B:長尺幅広プライ、35:受けロール、36A,36B,36C:凸エンボスホイール、37A,37B、37C:凸エンボス面、38A,38B:エンボス部、40:切り分け工程、41:アンビルロール、42:スリッター、43:切断線、44A:長尺プライ、46:丸刃、48A:エッジエンボス、50:裁断工程、52:裁断線、60:角筒状カートン、62:上面、64:底面、66:側面、68:フラップ、68a:上面外フラップ、68b:内フラップ、68c:底面外フラップ、70:ウインドウフィルム、72:取出口形成用切込線、74:スリット、80:カートンブランク、82:側面接合代、84:押上片形成用切込線、W1:ティシュ幅、W2:幅、L1:ティシュ長さ、L2:長さ、I1:間隔、E1,E2:縁部、E3,E4,E5,E6:端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)複数枚の原紙が積層された長尺幅広プライの長手方向に沿って、ティシュ長さに相当する間隔で帯状のエンボス部を複数箇所に形成するエンボス部形成工程と、
(2)前記エンボス部が複数箇所に形成された前記長尺幅広プライを、各々のエンボス部の片側の縁部に沿って切り分け、ティシュ長さに相当する幅を有し、その一の縁部E1に沿って帯状のエッジエンボスが形成され、他の縁部E2には前記エッジエンボスが形成されていない長尺プライを複数組形成する切り分け工程と、
(3)前記長尺プライを、その長手方向と直交する短手方向に向かって、ティシュ幅に相当する長さに裁断し、複数枚の原紙が積層されたプライからなり、前記プライの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボスが形成され、他の端部E4には前記エッジエンボスが形成されていないティシュを複数組得る裁断工程と、
を備えたティシュの製造方法。
【請求項2】
前記エンボス部形成工程は、その長手方向に向かって送り出された前記長尺幅広プライを、凸エンボス模様が刻設された凸エンボスホイールと受けロールとの間に挟みこんで押圧し、前記エンボス部を形成するものである請求項1に記載のティシュの製造方法。
【請求項3】
前記エンボス部形成工程は、前記凸エンボスホイールとして、二条の押圧面が形成され、一方の押圧面は前記凸エンボス模様が形成された凸エンボス面、他方の押圧面はプレーン面である凸エンボスホイールを用いるものである請求項2に記載のティシュの製造方法。
【請求項4】
複数枚の原紙が積層されたプライからなり、
前記プライの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボスが形成され、他の端部E4には前記エッジエンボスが形成されていないティシュ。
【請求項5】
(1)複数枚の原紙が積層された長尺幅広プライの長手方向に沿って、ティシュ長さに相当する間隔で帯状のエンボス部を複数箇所に形成するエンボス部形成工程と、
(2)前記エンボス部が複数箇所に形成された前記長尺幅広プライを、各々のエンボス部の片側の縁部に沿って切り分け、ティシュ長さに相当する幅を有し、その一の縁部E1に沿って帯状のエッジエンボスが形成され、他の縁部E2には前記エッジエンボスが形成されていない長尺プライを複数組形成する切り分け工程と、
(3)複数組の前記長尺プライを折り板式加工機に送り込み、各々の長尺プライの前記縁部E1が積層方向の一方に、前記縁部E2が積層方向の他方に配向するように、一組の長尺プライを長手方向に沿って折り返し、その折り返し部分に他の一組の長尺プライを挟み込み、更に、前記他の一組の長尺プライを長手方向に沿って折り返す動作を繰り返して、複数組の前記長尺プライが折り重ねられた長尺ティシュ束を形成する折り畳み工程と、
(4)前記長尺ティシュ束を、その長手方向と直交する短手方向に向かって、ティシュ幅に相当する長さに裁断し、複数枚の原紙が積層されたプライからなり、前記プライの一の端部E3に沿って、帯状のエッジエンボスが形成され、他の端部E4には前記エッジエンボスが形成されていないティシュが折り重ねられたティシュ束を得る裁断工程と、
(5)前記ティシュ束を、前記ティシュの前記端部E3がカートン上面側に、前記ティシュの前記端部E4がカートン底面側に配向するように、ティシュ収納用のカートンの内部に収納してカートン入りティシュを得る箱詰め工程と、
を備えたカートン入りティシュの製造方法。
【請求項6】
前記エンボス部形成工程は、その長手方向に向かって送り出された前記長尺幅広プライを、凸エンボス模様が刻設された凸エンボスホイールと受けロールとの間に挟みこんで押圧し、前記エンボス部を形成するものである請求項5に記載のカートン入りティシュの製造方法。
【請求項7】
前記エンボス部形成工程は、前記凸エンボスホイールとして、二条の押圧面が形成され、一方の押圧面は前記凸エンボス模様が形成された凸エンボス面、他方の押圧面はプレーン面である凸エンボスホイールを用いるものである請求項6に記載のカートン入りティシュの製造方法。
【請求項8】
複数組のティシュが折り重ねられたティシュ束と、上面にティシュ取出口を形成する取出口形成用切込線が形成された、前記ティシュ束を収納するためのカートンとを備え、
前記ティシュは、複数枚の原紙が積層されたプライからなり、前記プライの一の端部E3に沿ってエッジエンボスが形成され、他の端部E4には前記エッジエンボスが形成されていないものであり、
前記ティシュ束は、前記ティシュの前記端部E3が積層方向の一方に、前記ティシュの前記端部E4が積層方向の他方に配向するように、複数組の前記ティシュが折り重ねられたものであるとともに、前記ティシュの前記端部E3が前記カートンの上面側に、前記ティシュの前記端部E4が前記カートンの底面側に配向するように、前記カートンの内部に収納されているカートン入りティシュ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−291984(P2009−291984A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146003(P2008−146003)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】