説明

テトラヒドロキノリン、その合成法、およびその中間体

本発明は5HT2C作動薬または部分作動薬として有用な化合物、その誘導体の合成法、およびその中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年10月17日に提出された米国仮特許出願番号60/727,606(その全体は本発明の一部として参照される)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、5HT2C作動薬または部分作動薬として有用な化合物、その誘導体の合成法、およびその中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
統合失調症はおよそ5百万人が発症している。統合失調症の最も一般的な治療法は、現在のところ「非定型」抗精神病薬であり、これはドーパミン(D)およびセロトニン(5−HT2A)受容体拮抗作用を組み合わせる。定型抗精神薬と比べた非定型抗精神薬の有効性および副作用において報告されている改善にもかかわらず、これらの化合物は統合失調症の全ての症状を適切に治療するわけではないようであり、体重増加などの問題のある副作用を伴う(Allison、D.B.ら、Am.J.Psychiatry、156:1686−1696、1999;Masand、P.S.、Exp.Opin.Pharmacother.I:377−389、2000; Whitaker、R.、Spectrum Life Sciences. Decision Resources.2:1−9、2000)。
【0004】
非定型抗精神病薬はさらに、5−HTc受容体に対して高い親和性で結合し、5−HTc受容体拮抗物質または逆作動薬として機能する。体重増加は、非定型抗精神病薬、例えば、クロザピンおよびオランザピンに関連する、問題のある副作用であり、5−HTc拮抗作用が体重増加の原因であることが示唆されている。反対に、5−HTc受容体の刺激の結果、食物摂取および体重が減少することが知られている(Walshら、Psychopharmacology 124:57−73、1996;Cowen、P.J.ら、Human Psychopharmacology 10:385−391、1995;Rosenzweig−Lipson、S.ら、ASPET abstract、2000)
【0005】
いくつかの証拠は、統合失調症の治療薬としての5−HTc受容体闘争性または部分闘争性の役割を裏付ける。研究により、5−HTc拮抗物質はドーパミンのシナプスレベルを増大させ、パーキンソン病の動物モデルにおいて有効であることが示唆される(Di Matteo、V.ら、Neuropharmacology 37:265−272、1998;Fox、S.H.ら、Experimental Neurology 151:35−49、1998)。統合失調症の陽性症状は、ドーパミンの増大したレベルに関連するので、5−HT2C作動薬および部分作動薬などの5−HT2C拮抗物質に対して反対の作用を有する化合物は、シナプスドーパミンのレベルを減少させるはずである。最近の研究は、5−HT2C作動薬が、クロザピンなどの薬剤の重要な抗精神病作用に介在すると考えられる脳領域である前頭前皮質および側坐核におけるドーパミンのレベルを減少させることを証明した(Millan、M.J.ら、Neuropharmacology 37:953−955、1998;Di Matteo、V.ら、Neuropharmacology 38.:1195−1205、1999;Di Giovanni、G.ら、Synapse 35:53−61、2000)。しかしながら、5−HTc作動薬は、錐体外路系副作用と最も密接に関連する脳領域である線条体におけるドーパミンレベルを減少させない、加えて、最近の研究は、5−HT2C作動薬が腹側被蓋領域(VTA)における発射(firing)を軽減するが、黒質においては軽減しないことを証明している。黒質線条体路に対する中脳辺縁経路における5−HT2C作動薬の差動効果は、5−HT2C作動薬が、辺縁選択性を有し、定型抗精神病薬に関連する錐体外路系副作用をもたらす可能性が低いことを示唆する。
【特許文献1】米国仮特許出願番号60/727,606
【非特許文献1】Allison、D.B.ら、Am.J.Psychiatry、156:1686−1696、1999
【非特許文献2】Masand、P.S.、Exp.Opin.Pharmacother.I:377−389、2000
【非特許文献3】Whitaker、R.、Spectrum Life Sciences. Decision Resources.2:1−9、2000
【非特許文献4】Walshら、Psychopharmacology 124:57−73、1996
【非特許文献5】Cowen、P.J.ら、Human Psychopharmacology 10:385−391、1995
【非特許文献6】Rosenzweig−Lipson、S.ら、ASPET abstract、2000
【非特許文献7】Di Matteo、V.ら、Neuropharmacology 37:265−272、1998
【非特許文献8】Fox、S.H.ら、Experimental Neurology 151:35−49、1998
【非特許文献9】Millan、M.J.ら、Neuropharmacology 37:953−955、1998
【非特許文献10】Di Matteo、V.ら、Neuropharmacology 38.:1195−1205、1999
【非特許文献11】Di Giovanni、G.ら、Synapse 35:53−61、2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書において記載されるように、本発明は、5HT2C作動薬または部分作動薬としての活性を有する化合物を調製する方法を提供する。これらの化合物は、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調性感情障害、妄想性障害、物質誘発性精神病性障害、L−DOPA誘発性精神病、アルツハイマー型認知症に関連する精神病、パーキンソン病に関連する精神病、レヴィー小体病に関連する精神病、認知症、記憶障害、アルツハイマー病に関連する知的障害、双極性障害、抑鬱障害、気分エピソード、不安障害、適応障害、摂食障害、てんかん、睡眠障害、片頭痛、性的機能不全、胃腸障害、肥満、または外傷に関連する中枢神経系不全、卒中、または脊髄損傷を治療するために有用である。このような化合物は、式I:
【化1】


(式中:
【化2】


は単結合または二重結合を表し;
nは0、1、または2であり;
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
およびRは一緒になって飽和または部分的不飽和4−8員環を形成し、ここで、前記環はハロゲン、−R、または−ORから独立して選択される1〜3個の基で任意に置換されていてもよく;
、R、およびRは各々独立して、−Rである)
の化合物またはその医薬上許容される塩を包含する。
【0007】
本発明はさらに、かかる化合物の調製に有用な合成中間体も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の方法および中間体は、例えば、国際特許出願番号PCT/US03/12747(国際公開番号WO 03/091250)(Ramamoorthy名義であり、その全体は本発明の一部として参照される)において記載されているような化合物の調製に有用である。ある実施形態において、本発明の化合物は、一般に、以下に記載されるスキームIに従って調製される:
【化3】

【0009】
前記スキームIにおいて、各Rは独立して、水素または好適なカルボキシル保護基であり、n、PG、PG、R、R、CG、およびCGの各々は下記定義の通りであり、本明細書において記載される種類および部分集合に含まれる。
【0010】
一つの態様において、本発明は、前記スキームIにおいて示される工程に従って鏡像異性的に富む形態における式E、D、C、B、A、およびIIのキラルシス−1,2−二置換シクロペンタン化合物を調製する方法を提供する。この式の化合物において、RおよびRは式Iの化合物について前記定義のとおりであり、各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり、各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である。
【0011】
工程S−1で、式Hの化合物を式Gの化合物と、相補カップリング基CGおよびCGを有する炭素中心間のCsp2−Csp2カップリング反応によりカップリングさせる。好適なカップリング反応は当業者には周知であり、典型的には、電子吸引基(例えば、Cl、Br、I、OTf等)であるカップリング基の1つを含むので、得られる極性炭素−CG結合は電子が豊富な金属(例えば、低原子価パラジウム種)による酸化的付加を受けやすく、相補カップリング基は電陽性基(例えば、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボラン、スタンナン、シリル種、亜鉛種、アルミニウム種、マグネシウム種、ジルコニウム種など)であるので、電陽性カップリング基を有する炭素は、他の電陽性種(例えば、PdII−IV種またはNiII−IV種)に移動しやすい。反応例は、Metal−Catalyzed Cross−Coupling Reactions、A.de MeijereおよびF.Diederich編、第2版、John Wiley & Sons、2004において記載されているものを包含する。ある実施形態において、式Hの化合物におけるCGは、ボロン酸、ボロン酸エステル、またはボランである。他の実施形態において、式Hの化合物におけるCGはボロン酸エステルである。さらに別の実施形態において、式Hの化合物におけるCGはボロン酸である。ある実施形態において、式Gの化合物におけるCGは、Br、I、またはOTfである。他の実施形態において、式Gの化合物におけるCGはOTfである。ある実施形態において、変換は、パラジウム種により触媒される。他の実施形態において、反応は、Jarochら、米国特許第6,391,887号、実施例15において記載されているようにして行われる。
【0012】
式H、F、およびEのPG基は好適なアミノ保護基である。好適なアミノ保護基は当該分野において周知であり、Protective Groups in Organic Synthesis、T.W.GreeneおよびP.G.M. Wuts、第3版、John Wiley & Sons、1999(その全体は本発明の一部として参照される)において詳細に記載されているものを包含する。好適なアミノ保護基は、これらが結合している−NH−部分と一緒になって、これに限定されないが、アラルキルアミン、カーバメート、アリルアミン、アミドなどを包含する。式H、F、およびEのPG基の例は、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、ピバロイルなどを包含する。ある実施形態において、式H、F、およびEの化合物中のPG基はt−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ピバロイル、またはアセチルである。他の実施形態において、式H、F、およびEの化合物中のPG基はピバロイルである。
【0013】
すでに一般的に記載したように、式G、F、およびEのR基は、各式について独立して、水素または好適なカルボキシル保護基のいずれかである。好適なカルボキシル保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されたものを包含する。好適なカルボキシル保護基は、これらが結合しているカルボキシレート部分と一緒になって、これに限定されないが、任意に置換されていてもよいC1−6脂肪族エステル、任意に置換されていてもよいアリールエステル、シリルエステル、活性化エステル、アミド、ヒドラジドなどを包含する。かかるエステル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、およびフェニルエステルが挙げられ、各基は任意に置換されていてもよい。追加の好適な保護カルボン酸としては、オキサゾリンおよびオルトエステルが挙げられる。ある実施形態において、式G、F、またはEのいずれかのR基は、メチル、エチル、またはベンジルである。他の実施形態において、式G、F、またはEのいずれかのR基はエチルである。
【0014】
工程S−2で、式Fのシクロペンテニルオレフィンを不斉水素化して、鏡像異性的に富む形態で式Eのキラルシクロペンテンを提供する。本明細書において用いられる場合、「鏡像異性的に富む」とは、その混合物中に存在するエナンチオマーの比が1:1以外であることを意味する。ある実施形態において、不斉水素化は好適なキラル触媒により触媒される。ある実施形態において、キラル触媒は、遷移金属種および好適なキラルリガンドを含む複合体である。ある実施形態において、遷移金属種は後期遷移金属種(例えば、Ru、Rh、Pd、Ir、またはPt種)である。他の実施形態において、遷移金属種はロジウムまたはルテニウム種である。ある実施形態において、キラルリガンドは、遷移金属種を結合することができるリン部分(例えば、ホスフィンまたはホスファイト部分)を含有する。他の実施形態において、キラルリガンドは、遷移金属種を結合することができるオレフィン性部分を含有する。さらに別の実施形態において、キラルリガンドは、遷移金属種を結合することができるカルベン部分を含有する。不斉水素化に好適なキラルリガンドは当該分野において周知である;例えば、Stereochemistry of Organic Compounds、E.L.ElielおよびS.H.Silen、1994、John Wiley and Sons; Asymmetric Catalysis in Organic Synthesis、R. Noyori、1994、John Wiley and Sons; X. CuiおよびK. Burgess、Chem.Rev.105:3272−3296(2005);およびW.TangおよびX.Zhang、Chem.Rev.103:3029−3069(2003)参照。さらなるキラルリガンドの例としては、これに限定されないが、JosiPhos型、MandyPhos(登録商標)型、WalPhos型、TaniaPhos(登録商標)型、RoPhos型、DIPAMP型、Butiphane型、BPE型、QUINAP型、BINAP型、NorPhos型、MonoPhos型、TunePhos型、MalPhos型、DuPhos型、PHOX型、KetalPhos型、f−KetalPhos型、TangPhos型、BIPHEP型、ferrotane型、Binaphane型、f−Binaphane型、Binapine型、FAP型、MOP型、DIOP型、ChiraPhos型、BPPM型、およびBICP型が挙げられる。
【0015】
「不斉水素化」なる用語は、本明細書において用いられる場合、鏡像異性的に富むキラル生成物をもたらすアキラルまたはキラル基質の水素化を意味する。ある実施形態において、不斉水素化はキラル遷移金属含有種により触媒される。
【0016】
当業者は、式FのCO部分は水素化の間、保護された形態(すなわち、Rが好適なカルボキシル保護基であるもの)であるか、または脱保護されて、水素化前に遊離カルボン酸(すなわち、Rが水素であるもの)を得ることができることを認識するであろう。当業者はまた、Rが水素化により開裂できる保護基である場合、Rの開裂およびシクロペンテニルオレフィンの不斉水素化が同時に起こり得ることを認識するであろう。
【0017】
当業者は、不斉水素化が図示されたものと立体化学的に反対の鏡像異性的に富む形態において式E、D、C、B、A、およびIIの化合物を提供することができることを認識するであろう。ある実施形態において、式E、D、C、B、A、およびIIの化合物の1つのエナンチオマーは、実質的に他の立体異性体なしに形成される。本明細書において用いられる場合、「実質的にない」とは、有意に高い比率の1つのエナンチオマーから化合物が構成されることを意味する。他の実施形態において、少なくとも約98重量%の望ましいエナンチオマーが存在する。本発明のさらに別の実施形態において、少なくとも約99重量%の望ましいエナンチオマーが存在する。このようなエナンチオマーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)およびキラル塩分割をはじめとする当業者に公知の任意の方法によりラセミ混合物から単離することができるか、または本明細書において記載される方法により調製することができる。
【0018】
工程S−3で、式Eの鏡像異性的に富む化合物は、環化されて、式Dの鏡像異性的に富む化合物を形成する。式EのR基が好適なカルボキシル保護基である場合、当業者は、PGおよびRの選択に応じて、これらの保護基の1つまたは両方の開裂の前に環化を行うことができることを理解するであろう。同様に、これらの保護基の1つまたは両方の開裂は、環化と同時に起こり得る。別法として、PGの開裂は、環化後に行うことができる。当業者は、PGおよびRの存在または不在、および選択に応じて、ラクタム形成が同時に起こり得ることを理解するであろう。当業者は、ラクタム形成が、熱によるか、塩基触媒作用、または酸(ルイスまたはブレンステッド(LewisまたはBroensted))触媒作用で誘発することができることも理解するであろう。
【0019】
工程S−4で、式Dのラクタムカルボニル部分を好適な還元剤で還元して、式Cの化合物を得る。好適な還元剤は当業者に周知であり、様々な金属水素化物(例えば、アルミニウム水素化物、ホウ水素化物など)などを包含する。この種類の還元を促進する条件は、当該分野において周知であり、例えば、Comprehensive Organic Transformaions、R.C.Larock、第2版、John Wiley & Sons、1999参照。
【0020】
工程S−5で、式Cの化合物のN−アルキル化により、式B(ここで、nは0、1、または2であり、PGは好適なアミノ保護基である)の化合物が得られる。好適なアミノ基は当業者に周知であり、式H、F、およびEの化合物におけるPG基について前記定義の通りである。ある実施形態において、このN−アルキル化は、触媒量の酸の存在下で2−メチル−2−オキサゾリンを用いて行われ、式B(ここで、nは1であり、PGはアセチルである)の化合物を得る。当業者は、PGおよびPGが同じであっても、異なっていてもよいことを理解するであろう。
【0021】
工程S−6で、式Bの化合物におけるPG保護基の除去により、式A(ここで、nは0、1、または2である)のジアミノ化合物を得る。ある実施形態において、式Bの化合物におけるPG基は、酸分解(酸により促進される加水分解を包含する)により除去される。式Bの化合物におけるPG基を酸での処理により除去すると、式Aの化合物および脱保護において用いられる酸を含む塩が形成されると理解される。例えば、式Bの化合物のPG基が酸、例えば、トリフルオロ酢酸での処理により除去される場合、得られるジアミノ化合物はそのトリフルオロ酢酸塩として形成される。当業者は、様々な酸が、酸に不安定なアミノ保護基を除去するために有用であり(例えば、Greene、1999参照)、従って、式Aの化合物の様々な塩形態が想定されることを認識するであろう。
【0022】
他の実施形態において、式Bの化合物におけるPG基は、塩基加水分解により除去される。当業者は、様々な塩基が塩基に不安定なアミノ保護基の除去に有用であることを認識するであろう(例えば、Greene、1999参照)。
【0023】
工程S−7で、式Aの化合物を式RCHO(式中、Rは水素またはC1−6アルキル基である)のアルデヒド、または適切なホルムアルデヒド等価物で処理して、式II(式中、nは0、1、または2であり、Rは水素またはC1−6アルキル基である)の化合物を得る。この種類の環化は当該分野において周知であり、例えば、E.D.CoxおよびJ.M.Cook、Qhem.Rev.95:1797−1842、1995;M.ChrzanowskaおよびM.D.Rozwadowska Chem.Rev.104:3341−3370、2004;J. Royerら、Chem.Rev.104:2311−2352、2004;およびB.E.Maryanoffら、Chem.Rev.104:1431−1628、2004参照。当業者は、様々な反応条件がこの種類の反応を促進するために有用であり、従って、様々な反応条件が想定されることを認識するであろう。例えば、反応は、触媒作用(ルイス酸およびブレンステッド酸の両方を包含する)の有無にかかわらず、凝縮水の除去または隔離(例えば、Dean−Starkトラッピング、モレキュラシーブ)の有無にかかわらず、プロトン性または非プロトン性媒体中で行うことができる。
【0024】
当業者は、前記変換において用いられるホルムアルデヒドの適切な等価物は、これに限定されないが、パラホルムアルデヒド、ジメトキシメタン、および1,3,5−トリオキサンを包含することを認識するであろう。
【0025】
当業者は、本発明の方法により調製される式IIの化合物を、好適な酸で処理して、その塩を形成できることを理解するであろう。ある実施形態において、式IIの化合物をHClで処理して、その塩酸塩を形成する。
【0026】
一つの実施形態によると、式H、F、E、D、C、B、A、およびIIのRおよびR基は、各々独立して、R基である。別の実施形態によると、式H、F、E、D、C、B、A、およびIIのRおよびR基の1つは水素である。さらに別の実施形態によると、式H、F、E、D、C、B、A、およびIIのRおよびR基はどちらも水素である。
【0027】
本明細書において用いられる場合、「部分的に不飽和」なる用語は、環原子間の少なくとも1つの二重または三重結合を含む環部分を意味する。「部分的に不飽和」なる用語は、複数の不飽和部位を有する環を包含することを意図されるが、芳香族部分を包含することは意図されない。本明細書において用いられる場合、「芳香族」なる用語は、Hueckel理論に従って、環状非局在化4n+2 π電子系を有する化合物または部分をさす。
【0028】
別の態様によると、本発明は式II:
【化4】


(式中:
nは0、1、または2であり;
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
は−Rである)
の化合物またはその医薬上許容される塩を調製する方法であって:
(a)式A:
【化5】


(式中:
nは0、1、または2であり;
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を提供し、
(b)式Aの化合物を式RCHOのアルデヒド、または適切なホルムアルデヒド等価物と反応させて、式IIの化合物を形成する工程を含む方法を提供する。
【0029】
この種類の環化は当該分野において周知であり、例えば、E.D.CoxおよびJ.M.Cook、Chem.Rev.95:1797−1842、1995;M.ChrzanowskaおよびM.D.Rozwadowska Chem.Rev.104:3341−3370、2004;J.Royerら、Chem.Rev.104:2311−2352、2004;およびB.E.Maryanoffら、Chem.Rev、104:1431−1628、2004参照。当業者は、様々な反応条件がこの種類の反応を促進するために有用であり、従って、様々な反応条件が想定されることを認識するであろう。ある実施形態において、反応は熱励起により行われる。他の実施形態において、反応は、酸触媒作用で行われる。さらに別の実施形態において、反応は、凝集水の除去または隔離(例えば、Dean−Starkトラッピング、モレキュラシーブ)により行われる。
【0030】
一つの実施形態によると、前記工程(b)は、水性ホルムアルデヒドを用いて行われる。ある実施形態において、水性ホルムアルデヒドは式Aの化合物を消費するために十分な量で添加される。ある実施形態において、水性ホルムアルデヒドは式Aの化合物に対して、少なくとも約0.90モル当量の量、約0.90モル当量から約1.10モル当量の量、または約1.0モル当量から約1.05モル当量の量で添加される。
【0031】
別の実施形態によると、工程(b)は、ホルムアルデヒド等価物を用いて行われる。いくつかの実施形態において、ホルムアルデヒド等価物は固体形態において反応溶媒に添加されて、反応懸濁液が形成されるか、または固体ホルムアルデヒド等価物を反応溶媒中に懸濁させ、反応混合物に添加することができる。他の実施形態において、パラホルムアルデヒドがホルムアルデヒド等価物として使用され、式Aの化合物を消費するために十分な量で添加される。いくつかの実施形態において、パラホルムアルデヒドは、式Aの化合物に対して、少なくとも約0.90モル当量の量、約0.90モル当量から約1.10モル当量の量、または約1.0モル当量から約1.05モル当量の量で添加される。
【0032】
ある実施形態において、パラホルムアルデヒドは固体形態である。反応に適したパラホルムアルデヒドは顆粒(または他の粒状形態)および粉末形態で、様々な供給業者、例えば、Aldrich、Fluka、Celanese Chemicals、J.T.Baker、Mallinckrodt Laboratory Chemicals、Miljac Inc.、Sego Int. Corp.、Spectrum Chemicals Mfg.、Total Specialty Chemicals Inc.、US Chemicals Inc.、Riedel−de Haen、Acros Organics、Pfaltz & Bauer Chemicals、Derivados、Lancaster SynthesisおよびEM Scienceから商業的に入手可能である。ある好適な粉末形態は、200メッシュスクリーン上に少なくとも約10%粒子が保持されている。
【0033】
式IIの化合物について一般に前記定義された通り、nは0、1、または2である。従って、本発明は、式IIa、IIb、またはIIc:
【化6】


(式中、R、R、R、およびnは前記および本明細書において定義された通りである)のいずれかの化合物を調製する方法を提供する。
【0034】
別の実施形態によると、本発明は、式Aの化合物:
【化7】


(式中:
nは0、1、または2であり;
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を調製する方法であって:
(a)式B:
【化8】


(式中:
nは0、1、または2であり;
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基である)
の化合物を提供し、
(c)式Bの前記化合物を脱保護して、式Aの前記化合物を形成する工程を含む方法を提供する。
【0035】
すでに一般的に定義されたとおり、式Bの化合物におけるPG基は好適なアミノ保護基である。好適なアミノ保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なアミノ保護基は、これが結合している−NH−部分と一緒になって、これに限定されないが、アラルキルアミン、カーバメート、アリルアミン、アミドなどを包含する。ある実施形態において、式Bの化合物におけるPG基は、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキソカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、またはピバロイルから選択される。他の実施形態において、式Bの化合物におけるPG基は、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、ピバロイル、またはトリフルオロアセチルから選択される。さらに別の実施形態において、式Bの化合物におけるアミノ保護基はアセチルである。
【0036】
別の実施形態によると、本発明は、式B:
【化9】


(式中:
nは0、1、または2であり;
およびRは、各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基である)
の化合物を調製する方法であって:
(a)式C:
【化10】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を提供し、
(b)式Cの前記化合物をアルキル化して、式Bの化合物を形成する工程を含む方法を提供する。
【0037】
ある実施形態において、前記工程(b)でのアルキル化は、式Cの前記化合物を式:
【化11】


の化合物と反応させることにより達成され、ここで、前記反応は、好適な媒体中で行われ:式中:
nは0、1、または2であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は好適な脱離基である。
【0038】
前記定義のとおり、Lは好適な脱離基である。好適な脱離基は当該分野において周知である、例えば、Advanced Organic Chemistry、J.March、第5版、John Wiley and Sons、2000参照。かかる脱離基は、これに限定されないが、ハロゲン、アルコキシ、スルホニルオキシ、任意に置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ、任意に置換されていてもよいアルケニルスルホニルオキシ、任意に置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ、およびジアゾニウム部分を包含する。
【0039】
好適な脱離基の例は、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、メタンスルホニルオキシ(メシルオキシ)、p−トルエンスルホニルオキシ(トシルオキシ)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ(トリフリルオキシ)、ニトロ−フェニルスルホニルオキシ(ノシルオキシ)、およびブロモ−フェニルスルホニルオキシ(ブロシルオキシ)を包含する。ある実施形態において、Lはハロゲンである。他の実施形態において、Lは任意に置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ、任意に置換されていてもよいアルケニルスルホニルオキシ、または任意に置換されていてもよいアリールスルホニルオキシである。
【0040】
別の実施形態によると、好適な脱離基は、反応媒体内でその場で生成させることができる。すなわち、式:
【化12】


の化合物のL部分は、好適な前駆体からその場で生成させることができる。様々な前駆体からの脱離基のその場での生成は、当該分野において周知であり、例えば、March(2000)参照。
【0041】
一般に前記定義のとおり、式:
【化13】


の化合物におけるPG基は好適なアミノ保護基である。好適なアミノ保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なアミノ保護基は、これが結合している−NH−部分と一緒になって、これに限定されないが、アラルキルアミン、カーバメート、アリルアミン、アミドなどを包含する。ある実施形態において、式:
【化14】


の化合物におけるPG基は、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキソカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、またはピバロイルから選択される。他の実施形態において、式:
【化15】


の化合物におけるPG基は、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、ピバロイル、またはトリフルオロアセチルから選択される。さらに別の実施形態において、式:
【化16】


の化合物におけるアミノ保護基はアセチルである。
【0042】
ある実施形態において、工程(b)でのアルキル化反応は、式Cの化合物におけるアミノ部分による脱離基の置換を包含する。ある実施形態において、このアルキル化反応は、任意の追加の塩基の存在下で行われる。ある実施形態において、このアルキル化反応は適切な塩基の存在下で行われる。
【0043】
ある実施形態において、工程(b)でのアルキル化反応は好適な媒体中で行われる。好適な媒体は、溶媒または溶媒混合物であって、合した化合物の組み合わせにおいて、この化合物間の反応の進行を促進するものである。好適な溶媒は1以上の成分を可溶化させることができるか、あるいは好適な溶媒は1以上の反応成分の懸濁を促進することができる。本発明の変換において有用な好適な溶媒の例は、プロトン性溶媒(例えば、アルコール、水)、ハロゲン化炭化水素、エーテル、エステル、芳香族炭化水素、他の極性または非極性非プロトン性溶媒、または前記溶媒の混合物である。かかる混合物は、例えば、プロトン性および非プロトン性溶媒の混合物(例えば、ベンゼン/メタノール/水;ベンゼン/水;ジメトキシエタン/水など)を包含する。これらおよび他のかかる好適な溶媒、およびその混合物は当該分野において周知であり、例えば、March(2000)参照。
【0044】
さらに別の実施形態において、1以上の試薬はさらに好適な溶媒として機能することができる。例えば、有機塩基、例えば、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンは、前記反応において利用されるならば、その塩基性化試薬としての役割に加えて、溶媒として機能することができる。
【0045】
他の実施形態において、前記工程(b)でのアルキル化は、式Cの前記化合物を:
【化17】


と好適な酸の存在下で反応させて、式Bの化合物(式中、nは1であり、PGはアセチルである)を形成することにより達成される。かかる好適な酸は当該分野において周知であり、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸または過塩素酸、あるいは有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸、低級アルキルスルホン酸、またはアリールスルホン酸を包含する。ある実施形態において、前記工程(b)でのアルキル化は、式Cの前記化合物を:
【化18】


とパラ−トルエンスルホン酸の存在下で反応させることにより達成される。
【0046】
他の実施形態において、式Bの化合物を提供するための式Cの化合物のアルキル化は、イミン形成および式Cのアミノ化合物を好適なカルボニル含有化合物(典型的には、アルデヒド)および好適な還元剤(例えば、NaBHCN、NaHB(OAc))と反応させることによるそのヒドリド還元を含む還元的アルキル化法により行われる。この種類の還元的アルキル化は当該分野において周知であり、例えば、Larock(1999)参照。
【0047】
本発明のさらに別の態様は、式C:
【化19】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を調製する方法であって:
(a)式D:
【化20】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を提供し、
(b)式Dの前記化合物を好適な還元剤で処理して、式Cの化合物を形成する工程を含む方法を提供する。
【0048】
好適な還元剤は当業者に周知であり、様々な金属水素化物(例えば、アルミニウム水素化物、ホウ水素化物など)などを包含する。この種類の還元を促進する条件は、当該分野において周知であり、例えば、Larock(1999)参照。ある実施形態において、還元剤は、アルミニウム水素化物種またはホウ水素化物種から選択される。他の実施形態において、還元剤は、LiAlH、NaAlH、LiHAl(OMe)、BH、またはNaBHから選択される。さらに別の実施形態において、還元剤はLiAlHである。
【0049】
別の実施形態によると、本発明は式D:
【化21】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を得る方法であって:
(a)式E:
【化22】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を提供し、
(b)式Eの化合物を脱保護し、環化して、式Dの化合物を形成する工程を含む方法を提供する。
【0050】
前記定義のとおり、式EのPG基は好適なアミノ保護基である。好適なアミノ保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なアミノ保護基は、これらが結合している−NH−部分と一緒になって、これに限定されないが、アラルキルアミン、カーバメート、アリルアミン、アミドなどを包含する。ある実施形態において、式EのPG基は、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、またはピバロイルから選択される。他の実施形態において、式EのPG基は、t−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ピバロイル、またはアセチルから選択される。他の実施形態において、式EのPG基はピバロイルである。
【0051】
前記定義のとおり、式EのR基は、水素または好適なカルボキシル保護基のいずれかである。好適なカルボキシル保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なカルボキシル保護基は、これらが結合しているカルボキシレート部分と一緒になって、これに限定されないが、任意に置換されていてもよいC1−6脂肪族エステル、任意に置換されていてもよいアリールエステル、シリルエステル、活性化エステル、アミド、ヒドラジドなどを包含する。ある実施形態において、式EのR基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、およびフェニルから選択され、ここで、各基は任意に置換されていてもよい。さらなる好適な保護されたカルボン酸は、オキサゾリンおよびオルトエステルを包含する。ある実施形態において、式EのR基は、メチル、エチル、またはベンジルである。他の実施形態において、式EのR基はエチルである。さらに別の実施形態において、式EのR基は水素である。
【0052】
式EのR基は好適なカルボキシル保護基であり、当業者は、PGおよびRの選択に応じて、これらの保護基の一方または両方の開裂の前に環化を行うことができることを認識するであろう。同様に、これらの保護基の一方または両方の開裂は、環化と同時に起こり得る。別法として、PGの開裂は、環化の後に行うことができる。当業者は、PGおよびRの存在または不在、および選択に応じて、ラクタム形成が同時に起こり得ることを認識するであろう。当業者は、ラクタム形成が熱、塩基触媒作用、または酸(ルイスまたはブレンステッド)触媒作用で誘発されることも理解するであろう。
【0053】
ある実施形態において、環化は塩基触媒作用を用いて行われる。他の実施形態において、環化は酸触媒作用を用いて行われる。ある実施形態において、環化は、水性HSOの存在下で行われる。他の実施形態において、環化は、加熱して行われる。ある実施形態において、環化は約85℃に加熱して行われる。さらに別の実施形態において、環化は酸の存在下で加熱して行われる。ある実施形態において、環化は約85℃、水性HSOの存在下で行われる。
【0054】
ある実施形態において、本発明は式E:
【化23】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を鏡像異性的に富む形態において調製する方法であって:
(a)式F:
【化24】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を提供し、
(b)式Fの前記化合物を不斉水素化して、式Eの前記化合物を鏡像異性的に富む形態において提供する工程を含む方法を提供する。
【0055】
前記定義のとおり、式FのPG基は好適なアミノ保護基である。好適なアミノ保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なアミノ保護基は、これらが結合している−NH−部分と一緒になって、これに限定されないが、アラルキルアミン、カーバメート、アリルアミン、アミドなどを包含する。ある実施形態において、式FのPG基は、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、またはピバロイルから選択される。他の実施形態において、式FのPG基は、t−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ピバロイル、またはアセチルから選択される。他の実施形態において、式FのPG基はピバロイルである。
【0056】
ある実施形態において、不斉水素化は好適なキラル触媒により触媒される。ある実施形態において、キラル触媒は、遷移金属種および好適なキラルリガンドを含む複合体である。ある実施形態において、遷移金属種は、Ru、Rh、Pd、Ir、またはPt種から選択される後期遷移金属種である。他の実施形態において、遷移金属種はロジウムまたはルテニウム種である。
【0057】
ある実施形態において、キラル触媒はキラルリガンドおよび好適な遷移金属種間の前もって形成された複合体である。ある実施形態において、キラル触媒がキラルリガンドおよび好適な遷移金属種間で前もって形成された複合体である場合、キラル触媒は、[((R,R)−Me−Butiphane)−Rh(COD)]BFまたは[((S,S)−Me−MaIPhos)−Rh(COD)]BFから選択される(表I参照)。
【0058】
ある実施形態において、キラル触媒は、キラルリガンを好適な遷移金属種と組み合わせることにより形成される。キラルリガンドを好適な遷移金属種と組み合わせることによりキラル触媒が形成される実施形態において、遷移金属種は、Rh(COD)SOCF(「COD」は1,5−シクロオクタジエンを表す)、Rh(NOR)BF(ここで、「NOR」はビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン、即ち、ノルボルナジエンを表す)、Ru(COD)(Me−アリル)(ここで、「Me−アリル」は2−メチルアリルを表す)、[RuCl(p−シメン)]、または[RuCl(C)]から選択される。キラルリガンドを好適な遷移金属種と組み合わせることによりキラル触媒が形成される他の実施形態において、遷移金属種は、Rh(COD)SOCFまたはRh(NOR)BFから選択される。キラルリガンドを好適な遷移金属種と組み合わせることによりキラル触媒が形成されるある実施形態において、キラルリガンドはリン部分(例えば、ホスフィンまたはホスファイト部分)を含有する。他の実施形態において、キラルリガンドは、遷移金属種を結合できるオレフィン系部分を含有する。さらに別の実施形態において、キラルリガンドは遷移金属種を結合できるカルベン部分を含有する。不斉水素化に適したキラルリガンドは当該分野において周知である;例えば、Stereochemistry of Organic Compounds、E.L.ElielおよびS.H.Silen、1994、John Wiley and Sons;Asymmetric Catalysis in Organic Synthesis、R.Noyori、1994、John Wiley and Sons; X.CuiおよびK.Burgess、Chem.Rev.105:3272−3296(2005);ならびにW.TangおよびX.Zhang、Chem.Rev.103:3029−3069(2003)参照。かかるキラルリガンドは、例えば、SolviasまたはSigma−Aldrichなどから商業的に入手可能であるか、または当業者に公知の方法により調製される。キラルリガンドのさらなる例は、これに限定されないが、JosiPhos型、MandyPhos(登録商標)型、WalPhos型、TaniaPhos(登録商標)型、RoPhos型、DIPAMP型、Butiphane型、BPE型、QUINAP型、BINAP型、NorPhos型、MonoPhos(登録商標)型、TunePhos型、MalPhos型、DuPhos型、PHOX型、KetalPhos型、f−KetalPhos型、TangPhos型、BIPHEP型、ferrotane型、Binaphane型、f−Binaphane型、Binapine型、FAP型、MOP型、DIOP 型、ChiraPhos型、BPPM型、およびBICP型を包含する。ある実施形態において、キラルリガンドはJosiPhos型またはTaniaPhos(登録商標)型である。
【0059】
ある実施形態において、キラルリガンドは、表Iに示されたものから選択される。他の実施形態において、キラルリガンドは、JosiPhos J002−1、J002−2、J216−1、J216−2、J202−2、またはTaniaPhos T001−1(表I参照)から選択される。さらに別の実施形態において、キラルリガンドはJosiPhos J216−1またはJ216−2(表I参照)である。
表I;代表的な触媒:
【化25】


[((R,R)−Me−Butiphane)−Rh(COD)]BF
【化26】


[((S,S)−Me−MaIPhOS)−Rh(COD)]BF
代表的なリガンド:
【化27】


JosiPhos型
J001−1:R=Ph、R’=シクロヘキシル
J002−1:R=Ph、R’=t−Bu
J002−2:R=Ph、R’=t−Bu[図示されたものと反対の立体化学]
J003−1:R=シクロヘキシル、R’=シクロヘキシル
J005−1:R=Ph、R’=3,5−ジメチルフェニル
J006−1:R=3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル、R’=シクロヘキシル
J007−1:R=3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル、R’=シクロヘキシル
J008−1:R=3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル、R’=3,5−ジメチルフェニル
J009−1:R=シクロヘキシル、R’=t−Bu
J011−1:R=4−トリフルオロメチルフェニル、R’=t−Bu
JO12−1:R=パラ−トリル、R’=t−Bu
J013−1:R=3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル、R’=t−Bu
J015−2:R=2−フリル、R’=シクロヘキシル[図示されたものと反対の立体化学]
J031−1:R=フェニル、R’=シクロペンチル
J202−2:R=4−メトキシフェニル、R’=t−Bu[図示されたものと反対の立体化学]
J211−1:R=2−メチルフェニル、R’=t−Bu
J212−2:R=2−フリル、R’=t−Bu[図示されたものと反対の立体化学]
J216−1:R=1−ナフチル、R’=t−Bu
J216−2:R=1−ナフチル、R’=t−Bu[図示されたものと反対の立体化学]
【化28】


WalPhos型
W003−1:R=Ph、R’=シクロヘキシル
W006−1:R=Ph、R’=3,5−ジメチルフェニル
W008−1:R=シクロヘキシル、R’=3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル
【化29】


TaniaPhosTM型
T001−1:R=ジメチルアミノ、R’=Ph、R’’=Ph
T002−1:R=ジメチルアミノ、R’=シクロヘキシル、R’’=シクロヘキシル
【化30】


MandyPhosTM型
M001−1:R=ジメチルアミノ、R’=Ph、R’’=Ph
M002−1:R=ジメチルアミノ、R’=Ph、R’’=シクロヘキシル
M004−1:R=ジメチルアミノ、R’=Ph、R’’=3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル
【化31】


【化32】


【化33】


(S)−BINAP
【化34】


【化35】


【化36】


(R)−C3−TunePhos
【化37】


【化38】


【化39】


【化40】


【化41】


【化42】

【0060】
前記定義のとおり、式FのR基は水素または好適なカルボキシル保護基のいずれかである。当業者は、式FのCO部分が、水素化の間、保護された形態(即ち、Rが好適なカルボキシル保護基であるもの)であり得るか、または遊離カルボン酸(即ち、Rが水素であるもの)であり得ることを認識するであろう。ある実施形態において、水素化の間、Rは水素である。他の実施形態において、Rは水素化の間、好適なカルボキシル保護基である。好適なカルボキシル保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なカルボキシル保護基は、これらが結合しているカルボキシレート部分と一緒になって、これに限定されないが、任意に置換されていてもよいC1−6脂肪族エステル、任意に置換されていてもよいアリールエステル、シリルエステル、活性化エステル、アミド、ヒドラジドなどを包含する。ある実施形態において、式Fの化合物におけるPG基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、およびフェニルエステルから選択され、ここで、各基は任意に置換されていてもよい。さらなる好適な保護されたカルボン酸は、オキサゾリンおよびオルトエステルを包含する。ある実施形態において、式FのPG基は、メチル、エチル、またはベンジルである。他の実施形態において、式FのPG基はエチルである。
【0061】
当業者は、Rが水素化により開裂し得る保護基である場合、Rの開裂およびシクロペンテニルオレフィンの不斉水素化は同時に起こり得ることも認識するであろう。
【0062】
ある実施形態において、Rは、水素化前に除去される好適なカルボキシル保護基である。他の実施形態において、Rは塩基で開裂可能な保護基であって、水素化前に除去されるものである。さらに別の実施形態において、Rは、水素化前に除去されるエチル基である。さらに別の実施形態において、Rはエチル基であって、これは水素化前にKOHでの処理により開裂される。
【0063】
ある実施形態において、不斉水素化は高温で行われる。他の実施形態において、反応は、約30℃から約80℃の間の温度で行われる。さらに別の実施形態において、反応は約30℃の温度で行われる。さらに別の実施形態において、反応は約50℃の温度で行われる。さらに別の実施形態において、反応は約80℃の温度で行われる。
【0064】
ある実施形態において、不斉水素化は高圧で行うことができる。ある実施形態において、反応は約225psiから450psiの間の圧力で行われる。他の実施形態において、反応は約225psiの圧力で行われる。さらに別の実施形態において、反応は約450psiの圧力で行われる。
【0065】
ある実施形態において、不斉水素化は、1つのエナンチオマーが混合物の少なくとも25%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。他の実施形態において、不斉水素化は式Eの化合物を、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも50%を構成するエナンチオマーの混合物として提供する。さらに別の実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも75%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。さらに別の実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも90%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。さらに別の実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも95%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。他の実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも98%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。ある実施形態において、他の立体異性体が実質的にない式Eの化合物の1つのエナンチオマーが提供される。
【0066】
別の実施形態によると、本発明は式F:
【化43】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を得る方法であって:
(a)式H:
【化44】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
CGは、結合したCsp2炭素およびCGカップリング基を有するCsp2炭素間の遷移金属によるCsp2−Csp2カップリングを促進するカップリング基である)
の化合物を提供し、
(b)式Hの前記化合物を式G:
【化45】


(式中:
CGは、結合したCsp2炭素およびCGカップリング基を有するCsp2炭素間の遷移金属によるCsp2−Csp2カップリングを促進するカップリング基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物と好適な遷移金属の存在下でカップリングする工程を含む方法を提供する。
【0067】
本発明のこの部分において、式Hの化合物は、式Gの化合物に、相補性カップリング基CGおよびCGを有する炭素中心間のCsp2−Csp2カップリング反応によりカップリングさせる。好適なカップリング反応は当業者に周知であり、典型的には、電子吸引基(例えば、Cl、Br、I、OTfなど)であるカップリング基の1つを含むので、得られる極性炭素−CG結合は、電子豊富な金属(例えば、低原子価パラジウム種)による酸化的付加を受けやすく、相補性カップリング基は電陽性基(例えば、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボラン、スタンナン、シリル種、亜鉛種、アルミニウム種、マグネシウム種、ジルコニウム種など)であるので、電陽性カップリング基を有する炭素は、他の電陽性種(例えば、PdII−IV種またはNiII−IV種)に移動しやすい。反応の例は、de Meijere(2004)において記載されているものを包含する。ある実施形態において、式Hの化合物におけるCGは、ボロン酸、ボロン酸エステル、またはボランである。他の実施形態において、式Hの化合物におけるCGはボロン酸エステルである。さらに別の実施形態において、式Hの化合物におけるCGはボロン酸である。ある実施形態において、式Gの化合物におけるCGはBr、I、またはOTfである。他の実施形態において、式Gの化合物におけるCGはOTfである。ある実施形態において、変換はパラジウム種により触媒される。他の実施形態において、変換はPd(PPhにより触媒される。他の実施形態において、反応は、Jarochら、米国特許第6,391,887号、実施例15において記載されているように行われる。
【0068】
式HのPG基は好適なアミノ保護基である。好適なアミノ保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なアミノ保護基は、これらが結合している−NH−部分と一緒になって、これに限定されないが、アラルキルアミン、カーバメート、アリルアミン、アミドなどを包含する。ある実施形態において、式HのPG基は、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、またはピバロイルから選択される。他の実施形態において、式HのPG基はt−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ピバロイル、またはアセチルから選択される。さらに別の実施形態において、式HのPG基はピバロイルである。
【0069】
式Gの化合物におけるR基は水素または好適なカルボキシル保護基のいずれかである。ある実施形態において、式Gの化合物におけるR基は水素である。他の実施形態において、式Gの化合物におけるR基は好適なカルボキシル保護基である。好適なカルボキシル保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なカルボキシル保護基は、これらが結合しているカルボキシレート部分と一緒になって、これに限定されないが、任意に置換されていてもよいC1−6脂肪族エステル、任意に置換されていてもよいアリールエステル、シリルエステル、活性化エステル、アミド、ヒドラジドなどを包含する。ある実施形態において、式GのR基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、およびフェニルから選択され、ここで、各基は任意に置換されていてもよい。追加の好適な保護されたカルボン酸はオキサゾリンおよびオルトエステルを包含する。他の実施形態において、式GのR基は、メチル、エチル、またはベンジルである。他の実施形態において、式GのR基はエチルである。
【0070】
ある実施形態において、本発明は、式E:
【化46】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を鏡像異性的に富む形態において調製する方法であって:
(a)式H:
【化47】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
CGは、結合したCsp2炭素およびCGカップリング基を有するCsp2炭素間の遷移金属により媒介されるCsp2−Csp2カップリングを促進するカップリング基である)
の化合物を提供し、
(b)式Hの前記化合物を式G:
【化48】


(式中:
CGは、結合したCsp2炭素およびCGカップリング基を有するCsp2炭素間の遷移金属によるCsp2−Csp2カップリングを促進するカップリング基であり;
は、水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物と、好適な遷移金属の作用によりカップリングして、式F:
【化49】

(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素またはPGであり;
PGは好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を提供し、
(c)式Fの前記化合物を不斉水素化して、鏡像異性的に富む形態において式Eの前記化合物を提供する工程を含む方法を提供する。
【0071】
別の実施形態によると、本発明は式D:
【化50】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を得る方法であって:
(a)式F:
【化51】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を提供し、
(b)式Fの前記化合物を不斉水素化して、鏡像異性的に富む形態において式E:
【化52】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を提供し、
(c)式Eの前記化合物を脱保護し、環化して、式Dの前記化合物を形成する工程を含む方法を提供する。
【0072】
本発明のさらに別の態様は、式C:
【化53】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を調製する方法であって:
(a)式F:
【化54】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を提供し、
(b)式Fの前記化合物を不斉水素化して、式E:
【化55】


(式中:
およびRは、各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を鏡像異性的に富む形態において提供し、
(c)式Eの化合物を脱保護し、環化して、式D:
【化56】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を形成し、
(d)式Dの前記化合物を好適な還元剤で処理して、式Cの化合物を形成する工程を含む方法を提供する。
【0073】
本発明のさらに別の態様は、式C:
【化57】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を調製する方法であって:
(a)式E:
【化58】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を鏡像異性的に富む形態において提供し、
(b)式Eの化合物を脱保護し、環化して、式D:
【化59】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を形成し、
(c)式Dの前記化合物を好適な還元剤で処理して、式Cの化合物を形成する工程を含む方法を提供する。
【0074】
本発明の別の態様は、式D:
【化60】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基である)
の化合物を提供する。
【0075】
ある実施形態において、式DのRおよびR基の1つは水素である。もう一つ別の実施形態において、式DのRおよびR基はどちらも水素である。さらに別の実施形態において、式DのRおよびR基の一方は、ハロゲンまたは−CNから選択される。さらにもう一つ別の実施形態において、式DのRおよびR基の一方は−ORであり、ここで、Rは水素またはC1−6アルキル基である。もう一つ別の実施形態において、式DのRおよびR基の1つは、−C1−6アルキル、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルから選択される。
【0076】
当業者は、式Eの化合物を鏡像異性的に富む形態において提供する不斉水素化条件を、式Eにおいて図示されたものと反対の立体化学を有する式Eの化合物を提供するために適応させることができることを認識するであろう。従って、本明細書において示された構造はさらに、図示されたものと反対の立体化学を有する式E、D、C、B、A、およびIIの化合物を包含することを意味する。さらに、当業者は、式Eの化合物から形成される式D、C、B、A、およびIIの化合物は、式Eの化合物を記載する実施形態において本明細書において記載されるような鏡像異性的に富む形態において形成されることを認識するであろう。
【0077】
本発明のさらに別の態様は、式E:
【化61】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基である)
の化合物を鏡像異性的に富む形態で提供する。
【0078】
前記定義のとおり、式EのPG基は好適なアミノ保護基である。好適なアミノ保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なアミノ保護基は、これらが結合している−NH−部分と一緒になって、これに限定されないが、アラルキルアミン、カーバメート、アリルアミン、アミドなどを包含する。ある実施形態において、式EのPG基は、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、またはピバロイルから選択される。他の実施形態において、式EのPG基は、t−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ピバロイル、またはアセチルから選択される。他の実施形態において、式EのPG基はピバロイルである。
【0079】
前記定義のように、式EのR基は水素または好適なカルボキシル保護基のいずれかである。好適なカルボキシル保護基は当該分野において周知であり、Greene(1999)において詳細に記載されているものを包含する。好適なカルボキシル保護基は、これらが結合しているカルボキシレート部分と一緒になって、これに限定されないが、任意に置換されていてもよいC1−6脂肪族エステル、任意に置換されていてもよいアリールエステル、シリルエステル、活性化エステル、アミド、ヒドラジドなどを包含する。ある実施形態において、式EのR基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、およびフェニルから選択され、ここで、各基は任意に置換されていてもよい。さらなる好適な保護されたカルボン酸は、オキサゾリンおよびオルトエステルを包含する。ある実施形態において、式EのR基はメチル、エチル、またはベンジルである。他の実施形態において、式EのR基はエチルである。さらに別の実施形態において、式EのR基は水素である。
【0080】
ある実施形態において、式EのRおよびR基の1つは水素である。もう一つ別の実施形態において、式EのRおよびR基はどちらも水素である。さらに別の実施形態において、式EのRおよびR基の1つは、ハロゲンまたは−CNから選択される。さらにもう一つ別の実施形態において、式EのRおよびR基の1つは−ORであり、ここで、Rは水素またはC1−6アルキル基である。もう一つ別の実施形態において、式EのRおよびR基の1つは、−C1−6アルキル、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルから選択される。
【0081】
ある実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも25%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。他の実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも50%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。さらに別の実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも75%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。さらに別の実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも90%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。さらに別の実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも95%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。他の実施形態において、不斉水素化は、エナンチオマーの1つが混合物の少なくとも98%を構成するエナンチオマーの混合物として式Eの化合物を提供する。ある実施形態において、他の立体異性体が実質的にない式Eの化合物の1つのエナンチオマーが提供される。
【実施例】
【0082】
【化62】

【0083】
本明細書において示されるように、E−1およびent−E−1についての%eeデータおよび変換率%データは、次のキラルHPLC法により得られた:
カラム:Chiracell OJ−RH
溶媒系:75:25
95%水、5%アセトニトリル、0.01% HPO:95%アセトニトリル、5%水、0.01% HPO
速度:1 ml/分
実行時間:10分
波長:210nm
【化63】

【0084】
2−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−フェニル]−シクロペント−1−エンカルボン酸エチルエステル(F−1a):2−(N−ピバロイルアミノ)フェニルボロン酸(30.4g、0.14モル、H−1)および2−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−シクロペント−1−エンカルボン酸エチルエステル(43.8g、0.15モル、G−1)の430mLのジメトキシエタン(DME)中溶液に、152mLの水、続いて炭酸カリウム(30.4g、0.23モル)を添加した。溶液を完全に窒素でパージし、次いで60℃に温めた。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.91g、0.79ミリモル)の60mLのDME中溶液を次いで一度に添加した。混合物を次いで80℃に加熱した。1時間後、混合物を室温に冷却し、木炭(Darco、G60、100メッシュ)で処理し、20分間撹拌した。混合物を次いで、Celite(登録商標)の1−2cmパッドを通して濾過し、追加のDMEですすいだ。濾液を約1/8体積に濃縮し、この時点で結晶が形成した。濾過および真空乾燥により、灰白色固体(42.6g、98%)として標記化合物(F−1a)を得た。H NMR(CDCl):8.01(d、1H)、7.89(br s、1H)、7.5−7.1(m、3H)、4.13(q、2H)、2.94−2.80(m、4H)、2.08(p、2H)、1.29(S、9H)、1.12(t、3H)。
【化64】

【0085】
2−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−フェニル]−シクロペント−1−エンカルボン酸(F−1b):前記項から得られたエチルエステル(42.6g、0.14モル、F−1a)を185mLの1N KOH(水性)および21mLのテトラヒドロフラン(THF)の混合物に添加した。混合物を70℃に5時間加熱し、この時点で混合物を冷却し、次いで酢酸エチルで2回洗浄した。水性層を木炭(Darco、G60、100メッシュ)で処理し、30分間撹拌した。1cmのCelite(登録商標)を通して混合物を濾過し、水でリンスした。濾液を1N HCl(水性)で酸性化して、pH4−5にした。形成された固体を濾過し、水でよくすすいだ。生成物(F−1b)を白色粒状結晶(32.4g、83%)として得た。H NMR(CDCl):7.73(d/br s 2H重複)、7.30(t、1H)、7.20(t、1H)、7.10(d、1H)、2.90−2.70(m、4H)、2.0(p、2H)、1.23(s、9H)。
【化65】

【0086】
1(R),2(S)−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−フェニル]−シクロペンタンカルボン酸(E−1):不活性雰囲気下のRh(COD)SOCF(0.7mg、1モル%)およびJosiphos SL−J202−2(1.0mg、1モル%)の混合物を1mLのメタノールと合し、60分間周囲温度で振盪した。混合物を1mLメタノール中2−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−フェニル]−シクロペント−1−エンカルボン酸(50mg、0.174ミリモル、F−1b)に添加した。混合物を450psi H下、50℃で36時間撹拌した。冷却し、Nでパージした後、混合物を真空中で濃縮した。HPLC分析は、完全な変換(E−1の収率100%)および72%eeのキラル純度を示した。H NMR(CDCl):7.48(br s、1H)、7.34(d、2H)、7.28(m、1H)、7.11(d、1H)、3.52−3.43(m、1H)、3.28−3.20(m、1H)、2.43−2.30(m、1H)、2.05−1.94(m、4H)、1.66−1.54(m、1H)、1.41(s、9H)。不斉水素化のさらなる条件を表IIに示す。
【化66】

【0087】
1,2,3,3a(R),5,9b(S)−ヘキサヒドロ−シクロペンタ[c]キノリン−4−オン(D−1):1R,2S−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−フェニル]−シクロペンタンカルボン酸(100mg、0.53ミリモル、E−1)を0.25mLのDME中に溶解させた。1.5mLの30%HSO(水性)を次に添加し、混合物を85℃に加熱した。10時間後、反応を冷却し、次いで酢酸エチルで希釈した。飽和水性NaHCOで洗浄した後、有機物を無水MgSO上で乾燥した。濾過および濃縮により、51mgの標記キノリノン化合物(D−1)を得た。H NMR(CDCl):8.97(br s、1H)、7.23−7.15(m、2H)、7.01(t、1H)、6.83(d、1H)、3.27(q、1H)、3.01−2.94(m、1H)、2.36−2.30(m、1H)、2.18−2.07(m、2H)、1.76−1.64(m、3H)。
【化67】

【0088】
2,3,3a(S)−4,5,9b(S)−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン(C−1):1,2,3,3a(R),5,9b(S)−ヘキサヒドロ−シクロペンタ[c]キノリン−4−オン(30mg、0.16ミリモル)を0.6mLの無水THFと合する。水素化アルミニウムリチウム溶液(0.6mL、1N THF中)を滴下した。混合物を窒素下で一夜撹拌した。1N HCl(水性)でクエンチした後、生成物(C−1)を酢酸エチルで抽出し、無水MgSO上で乾燥した。H NMR(CDCl):7.12(d、1H)、7.00(t、1H)、6.71(t、1H)、6,60(d、1H)、3.18−3.12(dd、1H)、3.02(q、1H)、2.84(t、1H)、2.45−2.33(m、1H)、2.26−2.14(m、1H)、2.08−1.95(m、1H)、1.80−1.40(m、4H)。
【化68】

【0089】
1S,2R−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−フェニル]−シクロペンタンカルボン酸(ent−E−1):不活性雰囲気下のRh(NOR)BF(0.7mg、1モル%)およびJosiphos SL−J216−1(1.1mg、1モル%)の混合物を1mLのメタノールと合し、60分間周囲温度で振盪した。混合物を、1mLのメタノール中2−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−フェニル]−シクロペント−1−エンカルボン酸(50 mg、0.174ミリモル、F−1b)に添加した。混合物を450psi H下、80℃で24時間撹拌した。冷却し、Nでパージした後、混合物を真空中で濃縮した。HPLC分析は、完全な変換(100%収率)および92%eeのキラル純度を示した。H NMR(CDCl):7.48(br s、1H)、7.34(d、2H)、7.28(m、1H)、7.11(d、1H)、3.52−3.43(m、1H)、3.28−3.20(m、1H)、2.43−2.30(m、1H)、2.05−1.94(m、4H)、1.66−1.54(m、1H)、1.41(s、9H)。不斉水素化のさらなる条件を表IIに示す。
【化69】

【0090】
1,2,3,3a(S),5,9b(R)−ヘキサヒドロ−シクロペンタ[c]キノリン−4−オン(ent−D−1):1S,2R−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−フェニル]−シクロペンタンカルボン酸(100mg、0.53ミリモル、ent−E−1)を0.25mLのDME中に溶解させた。1.5 mLの30%HSO(水性)を次に添加し、混合物を85℃に加熱した。10時間後、反応を冷却し、次いで酢酸エチルで希釈した。飽和水性NaHCOで洗浄後、有機物を無水MgSO上で乾燥した。濾過および濃縮により、51mgの標記キノリノン(ent−D−1)を得た。H NMR(CDCl):8.97(br s、1H)、7.23−7.15(m、2H)、7.01(t、1H)、6.83(d、1H)、3.27(q、1H)、3.01−2.94(m、1H)、2.36−2.30(m、1H)、2.18−2.07(m、2H)、1.76−1.64(m、3H)。
【化70】


2,3,3a(R),4,5,9b(R)−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン(ent−C−1):1,2,3,3a(S),5,9b(R)−ヘキサヒドロ−シクロペンタ[c]キノリン−4−オン(30mg、0.16ミリモル、ent−D−1)を0.6mLの無水THFと合した。水素化アルミニウムリチウム溶液(0.6mL、1N THF中)を滴下した。混合物を窒素下で一夜撹拌した。1N HCl(水性)でクエンチした後、生成物(ent−C−1)を酢酸エチルで抽出し、無水MgSO上で乾燥した。H NMR(CDCl):7.12(d、1H)、7.00(t、1H)、6.71(t、1H)、6.60(d、1H)、3.18−3.12(dd、1H)、3.02(q、1H)、2.84(t、1H)、2.45−2.33(m、1H)、2.26−2.14(m、1H)、2.08−1.95(m、1H)、1.80−1.40(m、4H)。
【0091】
前記のE−1およびent−E−1の調製例に加えて、表IIはキラルリガンドおよび遷移金属の組み合わせ(エントリー1−51、53−57、および59−68)、ならびに前もって形成されたキラル複合体(エントリー52および58)であって、図示されるようなE−1を形成するためのシクロペンテンF−1bの不斉水素化において触媒として有用であることも判明したものを記載する。典型的には、遷移金属種およびキラルリガンドは、遷移金属種が二元金属である場合(この場合、比は1:2(即ち、金属中心につき1リガンド)であった)を除いて、1:1の比で用いられた。前もって形成されたキラル複合体を包含するキラル触媒は、典型的には、100:1の基質(F−1b)対触媒比で使用された。反応は前述のようにして行われ、反応は、前述のように、MeOHまたはTHFを溶媒として使用し、約30℃から約80℃の範囲の温度、約225psiから約450psiの範囲の圧力で、任意に添加剤としてトリエチルアミンの存在下で行われた。
【化71】


【表1−1】


【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化1】

[式中:
nは0、1、または2であり;
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
は−Rを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を調製する方法であって:
(a)式F:
【化2】

(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物を提供し、
(b)式Fの該化合物を不斉水素化して、式E:
【化3】

(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物を鏡像異性的に富む形態で提供し、
(c)式Eの化合物を脱保護し、環化して、式D:
【化4】

(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物を形成し、
(d)式Dの化合物を好適な還元剤で処理して、式C:
【化5】

(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物を形成し、
(e)式Cの前記化合物をアルキル化して、式B:
【化6】


(式中:
nは0、1、または2であり;
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基を意味する)
で示される化合物を形成し、
(f)式Bの該化合物を脱保護して、式A:
【化7】


(式中:
nは0、1、または2であり;
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物を形成し、
(g)式Aの化合物を式:RCHOのアルデヒド、または好適なホルムアルデヒド等価物と反応させて、式IIの化合物を形成する工程を含む、方法。
【請求項2】
nの各々が1であり、RおよびRの各々が水素である請求項1記載の方法。
【請求項3】
式FおよびEのPG基が、ピバロイル、t−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、またはアセチルである請求項1記載の方法。
【請求項4】
式FおよびEのR基が水素またはエチルである請求項1記載の方法。
【請求項5】
式BのPG基がアセチルである請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程(b)での式Fの前記化合物の不斉水素化がキラル触媒により触媒される請求項1記載の方法。
【請求項7】
キラル触媒が、Ru、Rh、Pd、Ir、またはPt種および好適なキラルリガンドを含む複合体である請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程(c)での脱保護および環化が、式Eの前記化合物を水性HSOの存在下で反応させることにより行われる請求項1記載の方法。
【請求項9】
工程(d)での好適な還元剤が、LiAlH、NaAlH、LiHAl(OMe)、BH、またはNaBHから選択される請求項1記載の方法。
【請求項10】
工程(e)でのアルキル化が、式Cの前記化合物を
【化8】


と好適な酸の存在下で反応させることにより行われ、式B:
【化9】


(式中、nは1であり、PGはアセチルを意味する)
で示される化合物が形成される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
工程(g)での式:RCHOのアルデヒドがホルムアルデヒドまたはその好適な等価物である請求項1記載の方法。
【請求項12】
式C:
【化10】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物を調製する方法であって:
(a)式F:
【化11】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−Cl―6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物を提供し、
(b)式Fの該化合物を不斉水素化して、式E:
【化12】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物を鏡像異性的に富む形態において提供し、
(c)式Eの化合物を脱保護し、環化して、式D:
【化13】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物を提供し、
(d)式Dの該化合物を好適な還元剤で処理して、式Cの化合物を形成する工程を含む、方法。
【請求項13】
およびRの各々が水素である請求項12記載の方法。
【請求項14】
式FおよびEの化合物のPG基がピバロイル、t−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、またはアセチルである請求項12記載の方法。
【請求項15】
式FおよびEのR基が水素またはエチルである請求項12記載の方法。
【請求項16】
式BのPG基がアセチルである請求項12記載の方法。
【請求項17】
工程(b)での式Fの該化合物の不斉水素化がキラル触媒により触媒される請求項12記載の方法。
【請求項18】
キラル触媒がRu、Rh、Pd、Ir、またはPt種および好適なキラルリガンドを含む複合体である請求項17記載の方法。
【請求項19】
工程(c)での脱保護および環化が、式Eの該化合物を水性HSOの存在下で反応させることにより行われる請求項12記載の方法。
【請求項20】
工程(d)での好適な還元剤が、LiAlH、NaAlH、LiHAl(OMe)、BH、またはNaBHから選択される請求項12記載の方法。
【請求項21】
式D:
【化14】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物を調製する方法であって:
(a)式F:
【化15】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物を提供し、
(b)式Fの該化合物を不斉水素化して、式E:
【化16】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−Ci−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物を鏡像異性的に富む形態において提供し、
(c)式Eの化合物を脱保護し、環化して、式Dの化合物を形成する工程を含む、方法。
【請求項22】
およびRの各々が水素である請求項21記載の方法。
【請求項23】
式FおよびEのPG基がピバロイル、t−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、またはアセチルである請求項21記載の方法。
【請求項24】
式FおよびEのR基が水素またはエチルである請求項21記載の方法。
【請求項25】
工程(b)での式Fの該化合物の不斉水素化がキラル触媒により触媒される請求項21記載の方法。
【請求項26】
キラル触媒が、Ru、Rh、Pd、Ir、またはPt種および好適なキラルリガンドを含む複合体である請求項25記載の方法。
【請求項27】
工程(c)での脱保護および環化が、式Eの該化合物を水性HSOの存在下で反応させることにより行われる請求項21記載の方法。
【請求項28】
式E:
【化17】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OCパーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物を鏡像異性的に富む形態で調製する方法であって:
(a)式F:
【化18】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物を提供し、
(b)式Fの該化合物を不斉水素化して、式Eの化合物を提供する工程を含む、方法。
【請求項29】
およびRの各々が水素である請求項28記載の方法。
【請求項30】
式FおよびEのPG基がピバロイル、t−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、またはアセチルである請求項28記載の方法。
【請求項31】
式FおよびEのR基が水素またはエチルである請求項28記載の方法。
【請求項32】
工程(b)での式Fの該化合物の不斉水素化がキラル触媒により触媒される請求項28記載の方法。
【請求項33】
キラル触媒が、Ru、Rh、Pd、Ir、またはPt種および好適なキラルリガンドを含む複合体である請求項28記載の方法。
【請求項34】
鏡像異性的に富む形態の式E:
【化19】


(式中、
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物。
【請求項35】
およびRの各々が水素であり、PGがピバロイル、t−ブチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、またはアセチルであり、Rが水素またはエチルである請求項34記載の化合物。
【請求項36】
およびRの各々が水素であり、PGがピバロイルであり、Rが水素である請求項35記載の化合物。
【請求項37】
式D:
【化20】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC!−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物。
【請求項38】
およびRの各々が水素である請求項37記載の化合物。
【請求項39】
式D:
【化21】

(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物を調製する方法であって:
(a)式E:
【化22】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
PGは好適なアミノ保護基であり;
は水素または好適なカルボキシル保護基を意味する)
で示される化合物を提供し、
(b)式Eの化合物を脱保護し、環化して、式Dの化合物を形成する工程を含む方法。
【請求項40】
式C:
【化23】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物を調製する方法であって、
(a)式D:
【化24】


(式中:
およびRは各々独立して、ハロゲン、−CN、フェニル、−R、−OR、−C1−6パーフルオロアルキル、または−OC1−6パーフルオロアルキルであり;
各Rは独立して、水素またはC1−6アルキル基を意味する)
で示される化合物を提供し、
(b)式Dの化合物を好適な還元剤で処理して、式Cの化合物を形成する工程を含む、方法。

【公表番号】特表2009−511633(P2009−511633A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536737(P2008−536737)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/040546
【国際公開番号】WO2007/047671
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】