説明

テラヘルツパルス光測定装置および測定方法

【課題】 1回の時間遅延動作でノイズ成分を低減するための複数の時系列波形を得ること。
【解決手段】 テラヘルツ光発生器5から発生したテラヘルツパルス光L6を試料Sに照射し、試料Sを透過したテラヘルツパルス光L8の電場強度の時間的変化をテラヘルツ光検出器8により検出する。原点位置からA方向に距離dだけ折り返しミラー11を移動させる1回の時間遅延動作中に、、試料Sを透過したテラヘルツパルス光L8の電場強度を所定遅延時間間隔で細かく検出する。記憶回路21は、各電場強度データを、検出時の時間遅延量に対応する折り返しミラー11の位置情報とともに記憶する。演算回路22は、記憶回路21から所定の遅延時間量ごとに複数組の電場強度データを抽出し、複数組の時系列波形を得て、各時系列波形をそれぞれフーリエ変換して複数のスペクトル波形を得る。これら複数のスペクトル波形にはそれぞれ複数の振幅情報と位相情報が含まれており、演算回路22は、これら複数の振幅情報または位相情報について、さらに平均化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツパルス光を用いた測定装置およびテラヘルツパルス光を用いた測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ光を利用する各種の測定装置では、概ね0.01×1012〜100×1012ヘルツ(0.01〜100THz)の周波数領域のテラヘルツパルス光を試料に照射して、試料を透過した透過光または試料から反射した反射光を検出することにより、試料の電気的特性や成分濃度などを測定する。従来、テラヘルツパルス光を検出する検出器を動作させるプローブパルス光がテラヘルツ光検出器へ到達する時間を遅延させ、その時間遅延量に応じた電場強度を測定することでテラヘルツパルス光の時系列波形を取得し、この時系列波形に基づいて物性値や成分量を算出するテラヘルツ光測定装置が知られている。時間遅延装置には、ミラーと、そのミラーを移動させてプローブパルス光の光路長を連続的に変化させる移動ステージとが備えられ、1回の移動操作(時間遅延動作)で1つの時系列波形が得られる。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−277393号公報(第10,11頁、第1,4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のテラヘルツパルス光測定装置は、1回の時間遅延動作で1つの時系列波形しか得られず、時間遅延動作を繰り返し行い複数の時系列波形を得なければならないので、測定時間を多く必要とするという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1の発明によるテラヘルツパルス光測定装置は、ポンプパルス光の照射によりテラヘルツパルス光を発生するテラヘルツ光発生器と、テラヘルツ光発生器で発生したテラヘルツパルス光を試料へ照射する光学系と、光学系を介してテラヘルツパルス光が照射された試料からのテラヘルツパルス光をプローブパルス光の照射により電場強度信号として検出するテラヘルツ光検出器と、テラヘルツパルス光がテラヘルツ光検出器へ到達する時間とプローブパルス光がテラヘルツ光検出器へ到達する時間との時間差を連続的に変更する時間遅延装置と、時間遅延装置による一回の時間遅延動作において、所定のサンプリング間隔で取得された電場強度信号のデータを記憶する記憶回路と、記憶回路に記憶された時間遅延装置の位置情報に基づいて複数の演算用電場強度データを抽出し、これら複数の演算用電場強度データを演算処理して測定結果を算出する演算回路とを備えたことを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載のテラヘルツパルス光測定装置において、抽出された複数の演算用電場強度データはそれぞれ時系列波形データであり、演算回路は、時系列波形データのそれぞれをフーリエ変換して得られる複数の振幅情報を平均化処理してその振幅を算出することを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項1または2に記載のテラヘルツパルス光測定装置において、抽出された複数の演算用電場強度データはそれぞれ時系列波形データであり、演算回路は、時系列波形データのそれぞれをフーリエ変換して得られる複数の位相情報を平均化処理してその位相を算出することを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項3に記載のテラヘルツパルス光測定装置において、演算回路は、複数の位相情報を平均化処理して位相を算出する際、電場強度信号のサンプリング間隔に応じて時系列波形データに含まれる位相ずれを補正することを特徴とする。
(5)請求項5の発明によるテラヘルツパルス光測定方法は、ポンプパルス光の照射によりテラヘルツパルス光を発生させ、発生したテラヘルツパルス光を試料へ照射し、ポンプパルス光により発生したテラヘルツパルス光がテラヘルツ光検出器へ到達するタイミングとプローブパルス光によりテラヘルツパルス光を電場強度信号として検出するタイミングとを連続的に変更しながら、試料からのテラヘルツパルス光を検出し、タイミングを連続的に変更する一回の時間遅延動作において、検出された電場強度信号のデータを所定のサンプリング間隔で取得して記憶し、記憶された電場強度信号のデータに基づいて複数の演算用電場強度データを抽出し、これら複数の演算用電場強度データを演算処理して測定結果を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一回の時間遅延動作において得た電場強度信号のデータに基づいて複数組の時系列波形データである演算用電場強度データを得、これら複数の演算用電場強度データから所望の測定結果を演算処理するようにしたので、測定時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明によるテラヘルツパルス光測定装置の一実施の形態について、図1〜4を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態によるテラヘルツパルス光測定装置の構成を模式的に示す全体構成図である。テラヘルツパルス光測定装置100は、試料Sにテラヘルツパルス光を照射し、試料Sを透過したテラヘルツパルス光の電場強度の時間的変化を検出し、この検出データをフーリエ変換することにより各周波数における振幅情報と位相情報を得るものである。
【0008】
テラヘルツパルス光測定装置100は、パルス光L1を放射するレーザ光源1と、パルス光L1をパルス光L2,L9に分割するビームスプリッタ2と、ミラー3,4と、テラヘルツパルス光L5を発生させるテラヘルツ光発生器5と、曲面鏡6,7と、試料Sを透過した後のテラヘルツパルス光L8を検出するテラヘルツ光検出器8とを備える。また、テラヘルツパルス光測定装置100は、周知の時系列テラヘルツ光検出法によりテラヘルツパルス光を検出する目的で、テラヘルツ光検出器8へ導くパルス光L11の到達時間を変更する時間遅延装置10と、ミラー14とを備えている。
【0009】
さらに、テラヘルツパルス光測定装置100は、テラヘルツ光検出器8に接続されたA/D変換回路16と、時間遅延装置10に接続された同期回路17、ステージコントローラ18と、制御装置20と、ディスプレイ23とを備えている。制御装置20は、記憶回路21および演算回路22を有し、A/D変換回路16、同期回路17、ステージコントローラ18およびディスプレイ23にそれぞれ接続されている。
【0010】
パルス光L1を放射するレーザ光源1としては、例えば、フェムト秒パルスレーザが用いられる。パルス光L1は、中心波長が近赤外領域のうちの780〜830nm程度、繰り返し周期が数kHzから100MHzのオーダー、パルス幅が10〜150fs程度の直線偏光のパルス光である。
【0011】
ビームスプリッタ2で分割されたポンプパルス光L2は、ミラー3,4を順次経由し、ポンプパルス光L4となってテラヘルツ光発生器5へ入射する。テラヘルツ光発生器5は、光スイッチ素子5aおよびバイアス回路5bを有する。バイアス回路5bにより光スイッチ素子5aに直流電圧を印加した状態で、ポンプパルス光L4を光スイッチ素子5aに照射すると、テラヘルツパルス光L5が発生する。テラヘルツパルス光L5は、曲面鏡6で集光され、試料Sを透過する。試料Sを透過したテラヘルツパルス光L7は、その透過地点の物性情報を含む光であり、曲面鏡7で集光され、テラヘルツパルス光L8となってテラヘルツ光検出器8へ入射する。
【0012】
ビームスプリッタ2で分割されたプローブパルス光L9は、時間遅延装置10、ミラー14を順次経由し、プローブパルス光L11となってテラヘルツ光検出器8へ入射する。テラヘルツ光検出器8は、光スイッチ素子5aと同様の光スイッチ素子8aおよびI/V変換回路8bを有する。光スイッチ素子8aに試料Sを透過したテラヘルツパルス光L8を入射させた状態で、プローブパルス光L11を光スイッチ素子8aに照射すると、光スイッチ素子8aでは、その瞬間的な照射時間だけテラヘルツパルス光L8の電場によって生じる光電流が流れる。すなわち、試料Sを透過してテラヘルツ光検出器8へ入射したテラヘルツパルス光L8の電場強度がI/V変換回路8bにより検出される。
【0013】
テラヘルツ光検出器8は、検出された電流信号をI/V変換回路8bにより電圧信号に変換してA/D変換回路16へ送出する。A/D変換回路16は、その電圧信号をデジタル量に変換して制御装置20へ送出する。
【0014】
時間遅延装置10は、ビームスプリッタ2からテラヘルツ光検出器8までのプローブパルス光の到達時間を変更するための装置であり、折り返しミラー11、可動ステージ12およびリニアエンコーダ13を有する。折り返しミラー11は、2枚もしくは3枚の反射鏡からなり、可動ステージ12に載置され、図中矢印で示すA方向に移動可能であり、その移動距離dはリニアエンコーダ13で精密に測定される。
【0015】
可動ステージ12は、ステージコントローラ18により駆動制御され、プローブパルス光L9とL10の合計光路長が連続的に変化する。ステージコントローラ18は、制御装置20からの指令信号に基づいて可動ステージ12を移動させる不図示のモータをコントロールする。原点位置からA方向に距離dだけ折り返しミラー11を移動したとすると、光路長の変化量は2×dとなる。従って、光路長の変化量に比例してプローブパルス光がテラヘルツ光検出器8へ到達する時間が連続的に遅延する。原点位置からの移動距離d、すなわち折り返しミラー11の位置情報は、リニアエンコーダ13から同期回路17へ逐次送出される。
【0016】
前述したように、プローブ光としてのパルス光L11が光スイッチ素子8aを照射する瞬間に光スイッチ素子8aに入射しているテラヘルツパルス光L8の電場強度が検出される。これは、プローブパルス光がテラヘルツ光検出器8に対してゲートをかけていることになる。可動ステージ12を連続的に移動させてゲートをかけるタイミングをずらしながら、テラヘルツ光検出器8に繰り返し到来するテラヘルツパルス光L8の各遅延時間での電場強度を検出する。
【0017】
各遅延時間で検出された電場強度は、電圧信号としてI/V変換回路8bからA/D変換回路16へ送出され、A/D変換回路16によりデジタル量に変換されるが、このデジタル量への変換動作は次のようにして行われる。すなわち、同期回路17は、リニアエンコーダ13から送出される折り返しミラー11の位置情報が予め設定された複数の位置情報と合致する毎にA/D変換回路16に対してA/D変換のためのトリガーを出力する。具体的には、同期回路17は、リニアエンコーダ13からのパルス数をカウントし、カウント数(折り返しミラー11の移動距離)が予め設定されたカウント数に達する度にトリガーを出力する。このカウント数は、後述する最小時間間隔rに対応するものである。これらの電場強度のデジタルデータは制御装置20へ送られ、記憶回路21に格納される。また、トリガー出力時の位置データも同期回路17から制御装置20へ送られ、記憶回路21に格納される。制御装置20では、電場強度に関するデジタルデータを電場強度検出時の位置データを基に継ぎ合わせ、テラヘルツパルス光L8の電場強度の時系列波形E(t)を取得する。
【0018】
図2は、本実施の形態のテラヘルツパルス光測定装置により計測された時系列波形E(t)のグラフである。この時系列波形E(t)はディスプレイ23(図1参照)の画面上に表示される。横軸は、同期回路17から出力された位置データから算出される遅延時間であり、縦軸は、A/D変換回路16から出力された電場強度であり、I/V変換回路8bにより検出された電流信号、または変換された電圧信号に相当するものである。
【0019】
この時系列波形E(t)は、可動ステージ12を原点位置から距離dだけ移動させるという1回の時間遅延動作によって得られたグラフである。すなわち、可動ステージ12が原点位置にあるときの遅延時間tはt=0であり、原点位置から距離dの位置にあるときの遅延時間tはt=pである。
【0020】
図2のグラフにおいて、時刻tからtまでの時間帯の時系列波形E(t)の曲線を拡大して図3(a)に示す。今、図3(a)では、時刻tからtまでの時間を3等分して、その1つを時間間隔qで表し、さらに、時間間隔qをn等分し、その1つを時間間隔rで表す。そして、この最小時間間隔r毎に時系列波形E(t)を構成するデータが制御装置20の記憶回路21に記憶されているとする。
【0021】
図3(b)〜図3(e)は、図3(a)の時系列波形E(t)から所定の時間間隔でデータ(演算用電場強度データ)を抽出し、それぞれ再構成した時系列波形を示す。図3(b)は、時刻tから時間間隔q毎に記憶回路21からデータを抽出して構成した時系列波形E(t+0r)であり、この波形は記憶回路21の第1の記憶領域に格納される。図3(c)は、時刻t+rを基準に時間間隔q毎に記憶回路21からデータを抽出して構成した時系列波形E(t+1r)であり、この波形は記憶回路21の第2の記憶領域に格納される。図3(d)は、時刻t+2rを基準に時間間隔q毎に記憶回路21からデータを抽出して構成した時系列波形E(t+2r)であり、この波形は記憶回路21の第3の記憶領域に格納される。このように、時間間隔rづつずらして時系列波形を取得し、q/r個(n個)の波形を記憶領域に格納する。図3(e)は、時刻t+(n−1)rを基準に時間間隔q毎に記憶回路21からデータを抽出して構成した時系列波形E(t+(n−1)r)であり、この波形は記憶回路21の第nの記憶領域に格納される。最終的には、図2の時系列波形E(t)の全領域(遅延時間p)にわたってq/r個の波形を各々の記憶領域に格納する。
【0022】
制御装置20の演算回路22によりこれらのq/r個の時系列波形をそれぞれフーリエ変換する。
図4は、図3(a)の時系列波形E(t)にフーリエ変換を施して得られたスペクトル波形のグラフである。横軸は周波数、縦軸はスペクトル強度を表す。図3(b)〜図3(e)の時系列波形にそれぞれフーリエ変換を施して得られたスペクトル波形も類似の曲線となる。これらのスペクトル波形はディスプレイ23の画面上に表示される。
【0023】
フーリエ変換によりスペクトル波形はq/r個得られ、各々のスペクトル波形に振幅情報と位相情報が含まれている。n番目の時系列波形E(t+(n−1)r)についてフーリエ変換の結果得られた振幅情報を|En(ω)|、位相情報をθn(ω)と表す。振幅情報|En(ω)|と位相情報θn(ω)は、それぞれq/r個得られる。
【0024】
q/r個の振幅情報|En(ω)|は、積算し平均をとることでホワイトノイズを1/√(q/r)に低減させることができる。ホワイトノイズとは、図4のスペクトル波形の全周波数域でほぼ一律に重複しているノイズである。積算および平均化演算は演算回路22で実行され、ホワイトノイズが低減した振幅情報|E(ω)|は、式1に示される。
【数1】

【0025】
また、q/r個の位相情報θn(ω)も、積算し平均をとることでホワイトノイズを低減させることができる。しかし、位相情報の場合は、時間間隔rづつずらして時系列波形を取得しているので、フーリエ変換後に積算および平均化処理を行う際には、それぞれの周波数に応じた位相補正が必要になる。位相補正、積算および平均化演算は演算回路22で実行され、ホワイトノイズが低減した位相情報θ(ω)は、式2に示される。式2において位相補正項は、rω(n−1)である。
【数2】

【0026】
以上の演算により、ホワイトノイズが低減した振幅情報|E(ω)|と位相情報θ(ω)が得られる。振幅情報|E(ω)|と位相情報θ(ω)の両者を用いて、例えば半導体材料の屈折率や誘電率などを算出できるが、振幅情報|E(ω)|のみを用いて算出できる物性値の場合は、位相情報θ(ω)に関わる演算を省略することができる。なお、本実施の形態では、1回の時間遅延動作で図2の時系列波形を得ているが、m回の時間遅延動作を行いm個の時系列波形を取得し、各々の時系列波形について上述した演算と平均化を行えば、データ数がm倍になるので、ノイズの低減効果は、より一層大きくなる。なお、本発明は、ノイズの低減のみを目的とするものではなく、測定時間を大幅に短縮する目的もある。
【0027】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、時間遅延装置10をプローブパルス光の光路に挿入する代わりに、ポンプパルス光(ポンプパルス光L2、L3、L4)の光路に挿入し、テラヘルツパルス光L5発生の時間遅延を行ってもよい。また、テラヘルツパルス光測定装置100に試料Sを2次元移動させる走査機構を設けて走査型イメージング装置としてもよい。この場合は、時間遅延動作を行う回数が多いので、測定時間短縮の効果が大きい。
また、テラヘルツパルス光測定装置100は透過式の装置であるが、試料からの反射光を検出する反射式の装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係るテラヘルツパルス光測定装置の構成を模式的に示す全体構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るテラヘルツパルス光測定装置により計測された時系列波形E(t)のグラフである。
【図3】図2の時系列波形E(t)曲線を拡大して示す図である。図3(a)は、時刻tからtまでの時間帯の時系列波形E(t)を示し、図3(b)〜図3(e)は、図3(a)の時系列波形E(t)から所定の時間ずらしてデータを抽出し、それぞれ再構成した時系列波形を示す。
【図4】図3(a)の時系列波形E(t)にフーリエ変換を施して得られたスペクトル波形のグラフである。
【符号の説明】
【0029】
1:レーザ光源
2:ビームスプリッタ
5:テラヘルツ光発生器
8:テラヘルツ光検出器
10:時間遅延装置
11:折り返しミラー
12:可動ステージ
13:リニアエンコーダ
16:A/D変換回路
17:同期回路
18:ステージコントローラ
20:制御装置
21:記憶回路
22:演算回路
23:ディスプレイ
100:テラヘルツパルス光測定装置
L1:レーザパルス光
L2〜L4:ポンプパルス光
L5〜L8:テラヘルツパルス光
L9〜L11:プローブパルス光
S:試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプパルス光の照射によりテラヘルツパルス光を発生するテラヘルツ光発生器と、
前記テラヘルツ光発生器で発生したテラヘルツパルス光を試料へ照射する光学系と、
前記光学系を介してテラヘルツパルス光が照射された試料からのテラヘルツパルス光をプローブパルス光の照射により電場強度信号として検出するテラヘルツ光検出器と、
前記テラヘルツパルス光が前記テラヘルツ光検出器へ到達する時間と前記プローブパルス光が前記テラヘルツ光検出器へ到達する時間との時間差を連続的に変更する時間遅延装置と、
前記時間遅延装置による一回の時間遅延動作において、所定のサンプリング間隔で取得された電場強度信号のデータを記憶する記憶回路と、
前記記憶回路に記憶された前記時間遅延装置の位置情報に基づいて複数の演算用電場強度データを抽出し、これら複数の演算用電場強度データを演算処理して測定結果を算出する演算回路とを備えたことを特徴とするテラヘルツパルス光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテラヘルツパルス光測定装置において、
前記抽出された複数の演算用電場強度データはそれぞれ時系列波形データであり、
前記演算回路は、前記時系列波形データのそれぞれをフーリエ変換して得られる複数の振幅情報を平均化処理してその振幅を算出することを特徴とするテラヘルツパルス光測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のテラヘルツパルス光測定装置において、
前記抽出された複数の演算用電場強度データはそれぞれ時系列波形データであり、
前記演算回路は、前記時系列波形データのそれぞれをフーリエ変換して得られる複数の位相情報を平均化処理してその位相を算出することを特徴とするテラヘルツパルス光測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のテラヘルツパルス光測定装置において、
前記演算回路は、前記複数の位相情報を平均化処理して位相を算出する際、前記電場強度信号のサンプリング間隔に応じて前記時系列波形データに含まれる位相ずれを補正することを特徴とするテラヘルツパルス光測定装置。
【請求項5】
ポンプパルス光の照射によりテラヘルツパルス光を発生させ、
前記発生したテラヘルツパルス光を試料へ照射し、
前記ポンプパルス光により発生したテラヘルツパルス光がテラヘルツ光検出器へ到達するタイミングとプローブパルス光によりテラヘルツパルス光を電場強度信号として検出するタイミングとを連続的に変更しながら、前記試料からのテラヘルツパルス光を検出し、
前記タイミングを連続的に変更する一回の時間遅延動作において、前記検出された電場強度信号のデータを所定のサンプリング間隔で取得して記憶し、
前記記憶された前記電場強度信号のデータに基づいて複数の演算用電場強度データを抽出し、これら複数の演算用電場強度データを演算処理して測定結果を得ることを特徴とするテラヘルツパルス光測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−266908(P2006−266908A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86262(P2005−86262)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(592171153)株式会社栃木ニコン (34)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】