説明

テラヘルツ波分光計測装置

【課題】テラヘルツ波発生素子及びテラヘルツ波検出素子が一体に設けられた内部全反射プリズムにおいて、被測定物の加熱・冷却に伴う影響を抑制できるテラヘルツ波分光計測装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るテラヘルツ波分光計測装置では、内部全反射プリズム31は、全反射面31cを含む第1のプリズム部分31fと、テラヘルツ波発生素子32及びテラヘルツ波検出素子33が一体に固定される本体部分31gと、を有し、第1のプリズム部分31fと本体部分31gとの嵌合部分に断熱材31hが介在している。これにより、被測定物34を加熱・冷却する際の温度変化が、第1のプリズム部分31fから本体部分31gに伝わり難くなっている。従って、テラヘルツ波発生素子32及びテラヘルツ波検出素子33に温度変化が過剰に伝わることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波を用いた分光計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テラヘルツ波を用いた分光計測装置に関する技術として、例えば特許文献1に記載の全反射分光計測装置がある。この全反射分光計測装置では、内部全反射プリズムの入射面にテラヘルツ波発生素子が一体に設けられ、内部全反射プリズムの出射面にテラヘルツ波検出素子が一体に設けられている。このような内部全反射プリズムとテラヘルツ波発生素子とテラヘルツ波検出素子とを一体化した一体型プリズムを用いる場合、全反射分光計測装置を小型化しつつ、高い効率でテラヘルツ波を検出できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−224449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、テラヘルツ波を用いた分光計測装置の被測定物には、計測中の加熱・冷却を必要とするものがある。特許文献1に記載の全反射分光計測装置では、一体型プリズムが用いられているため、被測定物を加熱・冷却する際の温度変化が、内部全反射プリズムを経てテラヘルツ波発生素子及びテラヘルツ波検出素子に伝わり易い。テラヘルツ波発生素子及びテラヘルツ波検出素子に温度変化が過剰に伝わると、テラヘルツ波発生素子及びテラヘルツ波検出素子の動作不良や剥離等が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、テラヘルツ波発生素子及びテラヘルツ波検出素子が一体に設けられた内部全反射プリズムにおいて、被測定物の加熱・冷却に伴う影響を抑制できるテラヘルツ波分光計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題解決のため、本発明に係るテラヘルツ波分光計測装置は、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光をポンプ光とプローブ光とに分岐する分岐部と、分岐部で分岐したポンプ光の入射によってテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生素子と、テラヘルツ波の入射面・出射面及び被測定物の配置部を有し、入射面から入射したテラヘルツ波を内部で伝播させ、配置部で反射又は透過させて出射面から出射させる内部全反射プリズムと、内部全反射プリズムから出射したテラヘルツ波と、プローブ光とが入射し、テラヘルツ波とプローブ光との間の相関を検出するテラヘルツ波検出素子と、を備え、内部全反射プリズムは、配置部を含む第1のプリズム部分と、テラヘルツ波発生素子が一体に固定される入射面及びテラヘルツ波検出素子が一体に固定される出射面と、第1のプリズム部分が嵌合する凹部とを含む本体部分と、を有し、第1のプリズム部分と本体部分との嵌合部分に断熱材が介在していることを特徴とする。
【0007】
このテラヘルツ波分光計測装置では、第1のプリズム部分と本体部分との嵌合部分に断熱材が介在している。このため、被測定物を加熱・冷却する際の温度変化が、第1のプリズム部分から本体部分に伝わり難くなっている。従って、テラヘルツ波発生素子及びテラヘルツ波検出素子に温度変化が過剰に伝わることを防止でき、テラヘルツ波発生素子及びテラヘルツ波検出素子の動作不良や剥離等の影響を抑制できる。
【0008】
ここで、第1のプリズム部分と本体部分との嵌合部分にマッチングオイルが更に介在していることが好ましい。この場合、上記嵌合部分の界面において、テラヘルツ波の多重反射を抑制できる。
【0009】
また、第1のプリズム部分と本体部分との嵌合部分において、テラヘルツ波が通る光路部分に本体部分と略同等の屈折率を有すると共に第1のプリズム部分を支持する第2のプリズム部分が介在しており、テラヘルツ波が通らない非光路部分に断熱材が介在していることが好ましい。この場合、非光路部分では、断熱材によって第1のプリズム部分から本体部分への熱伝導を抑制でき、光路部分では、第2のプリズム部分によってテラヘルツ波の透過率を十分に確保できる。
【0010】
また、断熱材は空気であることが好ましい。この場合、空気を断熱材として利用することで、内部全反射プリズムの構成を簡素化できる。
【0011】
また、非光路部分に第1のプリズム部分を支持する第3のプリズム部分が更に介在していることが好ましい。この場合、第1のプリズム部分が更にしっかりと支持される。
【0012】
また、第1のプリズム部分と本体部分との嵌合部分において、テラヘルツ波が通る光路部分に空気が介在しており、テラヘルツ波が通らない非光路部分に断熱性を有すると共に第1のプリズム部分を支持する断熱材が介在していることが好ましい。この場合、非光路部分では、断熱材によって第1のプリズム部分から本体部分への熱伝導を抑制でき、光路部分では、空気によって断熱性とテラヘルツ波の透過率の向上とを両立できる。
【0013】
また、第1のプリズム部分には、温度を調整する温度調整手段が接続されていることが好ましい。この場合、温度調整手段により第1のプリズム部分の温度を調整することで、被測定物の温度を効率よく調整できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るテラヘルツ波分光計測装置によれば、テラヘルツ波発生素子及びテラヘルツ波検出素子が一体に設けられた内部全反射プリズムにおいて、被測定物の加熱・冷却に伴う影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るテラヘルツ波分光計測装置の一実施形態を示す図である。
【図2】内部全反射プリズムの断面図である。
【図3】被測定物に関する光学定数を計測する手順を示すフローチャートである。
【図4】内部全反射プリズムの変形例を示す図である。
【図5】内部全反射プリズムの別の変形例を示す図である。
【図6】内部全反射プリズムの更に別の変形例を示す断面図である。
【図7】内部全反射プリズムの更に別の変形例を示す断面図である。
【図8】内部全反射プリズムの更に別の変形例を示す断面図である。
【図9】内部全反射プリズムの更に別の変形例を示す断面図である。
【図10】内部全反射プリズムの更に別の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るテラヘルツ波分光計測装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るテラヘルツ波分光計測装置の一実施形態を示す図である。同図に示すように、テラヘルツ波分光計測装置1は、レーザ光を出射するレーザ光源2と、テラヘルツ波発生素子32・内部全反射プリズム31・テラヘルツ波検出素子33が一体となった一体型プリズム3と、テラヘルツ波を検出する検出部4とを備えた全反射分光計測装置である。また、テラヘルツ波分光計測装置1は、上記構成要素の動作を制御する制御部5と、検出部4からの出力に基づいてデータ解析を行うデータ解析部6と、データ解析部6における処理結果を表示する表示部7とを備えている。
【0018】
レーザ光源2は、フェムト秒パルスレーザを発生させる光源である。レーザ光源2からは、例えば平均パワー120mW、繰り返しレート77MHzのフェムト秒パルスレーザが出力される。レーザ光源2から出射したフェムト秒パルスレーザは、ミラー11,12を経て、ビームスプリッター13によってポンプ光48とプローブ光49とに二分される(図2参照)。プローブ光49が伝播するプローブ光用光路C1には、ミラー14,15及びレンズ16が設けられており、プローブ光49は、レンズ16で集光されて後述のテラヘルツ波検出素子33に入射する。
【0019】
一方、ポンプ光48が伝播するポンプ光用光路C2には、遅延部21と、変調器22とが設けられている。遅延部21は、一対のミラー23,24と、可動ステージ26上に設置された反射プリズム25によって構成され、反射プリズム25の位置を一対のミラー23,24に対して前後させることで、ポンプ光48の遅延調節が可能となっている。また、変調器22は、例えば光チョッパによってポンプ光48の透過と遮断を切り替える部分である。変調器22は、制御部5からの信号に基づいて、例えば1kHzでポンプ光48の透過と遮断の変調を行う。
【0020】
ポンプ光用光路C2を伝播したポンプ光48は、ミラー28を経てレンズ27で集光され、一体型プリズム3に入射する。一体型プリズム3を構成する内部全反射プリズム31は、例えばSiやMgO等によって形成されている。図2に示すように、内部全反射プリズム31の入射面31a側にはテラヘルツ波発生素子32が一体に固定され、出射面31b側にはテラヘルツ波検出素子33が一体に固定されている。内部全反射プリズム31は、上部に平坦な全反射面31cを有し、入射面31aから入射したテラヘルツ波を内部で伝播させ、全反射面31cで全反射させ、出射面31bから出射させる。全反射面31cには、屈折率、誘電率、吸収係数といった各種の光学定数を計測する対象となる被測定物34が配置される。即ち、本実施形態では、全反射面31cが被測定物34の配置部をなしている。また、本実施形態では、被測定物34には、例えば医薬品等、計測中の加熱・冷却を必要とするものが想定される。
【0021】
入射面31aと全反射面31cとの間には、テラヘルツ波発生素子32で発生したテラヘルツ波Tを全反射面31cに向けて平行光化する第1光学面31dが設けられている。更に、全反射面31cと出射面31bとの間には、全反射面31cで全反射したテラヘルツ波Tを出射面31bに向けて集光する第2光学面31eが設けられている。これらの第1光学面31d及び第2光学面31eは、内部全反射プリズム31の底面を所定の形状に曲面加工することによって形成されている。
【0022】
テラヘルツ波発生素子32としては、例えばZnTeなどの非線形光学結晶、GaAsを用いた光スイッチなどのアンテナ素子、InAsなどの半導体、超伝導体などを用いることができる。これらの素子から発生するテラヘルツ波のパルスは、一般的には数ピコ秒程度である。テラヘルツ波発生素子32として非線形光学結晶を用いた場合、テラヘルツ波発生素子32にポンプ光48が入射すると、非線形光学効果によってテラヘルツ波Tに変換される。発生したテラヘルツ波Tは、内部全反射プリズム31の全反射面31cで全反射し、テラヘルツ波検出素子33に入射する。
【0023】
テラヘルツ波検出素子33としては、例えばZnTeなどの電気光学結晶、GaAsを用いた光スイッチなどのアンテナ素子を用いることができる。テラヘルツ波検出素子33として、電気光学結晶を用いた場合、テラヘルツ波検出素子33にテラヘルツ波Tとプローブ光49とが同時に入射すると、プローブ光49がポッケルス効果によって複屈折を受ける。プローブ光49の複屈折量は、テラヘルツ波Tの電場強度に比例する。従って、プローブ光49の複屈折量を検出することで、テラヘルツ波Tを検出できる。
【0024】
テラヘルツ波発生素子32及びテラヘルツ波検出素子33の固定には、例えば熱硬化型の接着剤が用いられる。このとき用いられる接着剤は、テラヘルツ波Tの波長において透明なものであって、テラヘルツ波発生素子32及びテラヘルツ波検出素子33それぞれの屈折率と内部全反射プリズム31の屈折率との間の屈折率、又はいずれかと同等の屈折率を有していることが好ましい。
【0025】
また、接着剤のほか、テラヘルツ波Tの波長において透明なワックスを溶融・凝固させて固定する方法や、テラヘルツ波発生素子32及びテラヘルツ波検出素子33を入射面31a及び出射面31bにそれぞれ直接接触させた状態で、テラヘルツ波発生素子32及びテラヘルツ波検出素子33の縁部を接着剤で固めるようにしてもよい。
【0026】
テラヘルツ波Tを検出する検出部4は、テラヘルツ波検出素子33が電気光学結晶の場合、図1に示すように、例えばλ/4波長板41と、偏光素子42と、一対のフォトダイオード43,43と、差動増幅器44と、ロックイン増幅器47とによって構成されている。テラヘルツ波検出素子33で反射したプローブ光49は、ミラー45によって検出部4側に導かれ、レンズ46で集光されてλ/4波長板41を経由した後、ウォラストンプリズムなどの偏光素子42によって垂直直線偏光成分と水平直線偏光成分とに分離される。このプローブ光49の垂直直線偏光成分と水平直線偏光成分とは、一対のフォトダイオード43,43によってそれぞれ電気信号に変換され、差動増幅器44によってその差分が検出される。差動増幅器44からの出力信号は、ロックイン増幅器47によって増幅された後、データ解析部6に入力される。
【0027】
テラヘルツ波検出素子33にテラヘルツ波Tとプローブ光49とが同時に入射した場合、差動増幅器44からはテラヘルツ波Tの電場強度に比例した強度の信号が出力され、テラヘルツ波検出素子33にテラヘルツ波Tとプローブ光49とが同時に入射しなかった場合、差動増幅器44からは信号が出力されないこととなる。また、テラヘルツ波Tが内部全反射プリズム31の全反射面31cで反射するときに放射されるエバネッセント成分は、内部全反射プリズム31の全反射面31cに配置される被測定物34と相互作用を起こし、被測定物34が配置されていない場合に比べてテラヘルツ波Tの反射率が変化する。従って、このテラヘルツ波Tの反射率の変化を計測することで、被測定物34の分光特性を評価できる。
【0028】
データ解析部6は、例えばテラヘルツ波分光計測装置1の専用の解析プログラムに基づいて全反射分光計測のデータ解析処理を行う部分であり、物理的には、CPU(中央処理装置)、メモリ、入力装置、及び表示部7などを有するコンピュータシステムである。データ解析部6は、ロックイン増幅器47から入力された信号に基づいてデータ解析処理を実行し、解析結果を表示部7に表示させる。
【0029】
図3は、被測定物34に関する光学定数を計測する手順を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、テラヘルツ波Tが内部全反射プリズム31の全反射面31cに対しP偏光で入射した場合を仮定する。
【0030】
図3に示すように、まず、テラヘルツ波分光計測装置1を用いてリファレンス計測及びサンプル計測を実施する(ステップS01,S02)。リファレンス計測では、被測定物34が配置されていない全反射面31cで全反射したテラヘルツ波Trefを計測する。また、サンプル計測では、被測定物34が配置されている全反射面31cで全反射したテラヘルツ波Tsigを計測する。なお、リファレンス計測は、光学定数の計測の度に行わなくても良い。例えば、一度のリファレンス計測結果を記憶しておき、記憶したリファレンス計測結果を以後の光学定数の計測で繰り返し用いてもよい。
【0031】
次に、テラヘルツ波Trefとテラヘルツ波Tsigとをそれぞれフーリエ変換することによって、振幅Rref及び位相Φrefと、振幅Rsig及び位相Φsigと、をそれぞれ求める(ステップS03)。
【0032】
次に、振幅Rrefと振幅Rsigとの比Pを式(1)によって求め、位相Φrefと位相Φsigとの位相差Δを式(2)によって求める(ステップS04)。
【数1】


【数2】


さらに、上述した比Pと位相差Δとを用いて値qを式(3)のように定める(ステップS05)。
【数3】

【0033】
ここで、内部全反射プリズム31に対するテラヘルツ波Tの入射角をθ(図2参照)とし、テラヘルツ波Tref及びテラヘルツ波Tsigについてスネルの法則より求められる屈折角をそれぞれθref,θsigとする。更に、フレネルの反射式を用いると、式(3)におけるPe−iΔは、以下の式(4)で表すことができる。
【数4】

【0034】
上記式(4)を式(3)に代入し、式の変形を行うと、以下の式(5)が得られる。
【数5】

【0035】
また、内部全反射プリズム31を構成する物質の複素屈折率をnprismとし、被測定物34の複素屈折率をnsampleとした場合、スネルの法則は以下の式(6)のようになり、被測定物34の複素屈折率の2乗は、式(7)で表される。従って、式(5)を式(7)に代入することで、被測定物34の複素屈折率を求めることができ、これにより、被測定物34の所望の光学定数が計測される(ステップS06)。
【数6】


【数7】

【0036】
続いて、本発明の要部である内部全反射プリズム31について、更に詳細に説明する。
【0037】
図2に示すように、内部全反射プリズム31では、配置面31cを上面とする断面三角形状の第1のプリズム部分31fが本体部分31gに対して別体となっている。第1のプリズム部分31fは、本体部分31gと同様にSiやMgO等によって形成されている。
【0038】
一方、本体部分31gの上部には、第1のプリズム部分31fの形状に対応する断面三角状の凹部31iが形成されている。そして、第1のプリズム部分31fは、本体部分31gの凹部31iに嵌め込まれている。
【0039】
また、第1のプリズム部分31fと本体部分31gとの嵌合部分には、テラヘルツ波Tが通る光路部分と、テラヘルツ波Tが通らない非光路部分とを含む全体に、断熱性を有する断熱材31hが介在している。断熱材31hは、例えばセラミックス等、テラヘルツ波Tの波長において透明なものであることが好ましい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、第1のプリズム部分31fと本体部分31gとの嵌合部分に断熱材31hが介在している。このため、被測定物34を加熱・冷却する際の温度変化が、第1のプリズム部分31fから本体部分31gに伝わり難くなっている。従って、テラヘルツ波発生素子32及びテラヘルツ波検出素子33に温度変化が過剰に伝わることを防止でき、テラヘルツ波発生素子32及びテラヘルツ波検出素子33の動作不良や剥離等の影響を抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、全反射面31cを含む第1のプリズム部分31fを、本体部分31gから取り外すことができる。このため、被測定物34に関する光学定数を計測した後に、全反射面31cを容易に洗浄できる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
【0043】
例えば、図4に示すように、第1のプリズム部分31fと本体部分31gとの嵌合部分の界面にマッチングオイル31kを塗布してもよい。この場合、上記界面において、テラヘルツ波の多重反射を抑制できる。
【0044】
また、第1のプリズム部分31f及び凹部31iの断面形状は三角形状に限られない。例えば、第1のプリズム部分31f及び凹部31iの断面形状は、図5に示すように矩形状であってもよいし、図6に示すように、上広がりの台形状であってもよい。
【0045】
また、図6に示すように、第1のプリズム部分31fと本体部分31gとの嵌合部分において、テラヘルツ波Tが通る光路部分に、本体部分31gと略同等の屈折率を有すると共に第1のプリズム部分31fを支持する第2のプリズム部分31mを介在させ、テラヘルツ波が通らない非光路部分に断熱材31hを介在させてもよい。第2のプリズム部分31mは、例えば本体部分31gと同様にSiやMgO等によって形成される。この場合、非光路部分では、断熱材31hによって第1のプリズム部分31fから本体部分31gへの熱伝導を抑制でき、光路部分では、第2のプリズム部分31mによってテラヘルツ波Tの透過率を十分に確保できる。
【0046】
また、図7に示すように、図6の断熱材31hをなくし、非光路部分に形成される空隙31nの空気を断熱材としてもよい。この場合、空気を断熱材として利用することで、内部全反射プリズムの構成を簡素化できる。
【0047】
また、図8に示すように、非光路部分に、第1のプリズム部分31fを支持する第3のプリズム部分31pを更に介在させてもよい。第3のプリズム部分31pは、例えば本体部分31gと同様にSiやMgO等によって形成される。この場合、第1のプリズム部分31fが更にしっかりと支持される。
【0048】
また、図9に示すように、第1のプリズム部分31fと本体部分31gとの嵌合部分において、テラヘルツ波Tが通る光路部分に空隙31qを形成し、テラヘルツ波Tが通らない非光路部分に、断熱性を有すると共に第1のプリズム部分31fを支持する断熱材31rを介在させてもよい。断熱材31rは、例えばセラミックス等である。この場合、非光路部分では、断熱材31rによって第1のプリズム部分31fから本体部分31gへの熱伝導を抑制でき、光路部分では、空気によって断熱性とテラヘルツ波Tの透過率の向上とを両立できる。
【0049】
また、図10に示すように、第1のプリズム部分31fには、温度を調整する温度調整手段31sが接続されていることが好ましい。温度調整手段31sは、例えば、ペルチェ素子である。この場合、温度調整手段31sにより第1のプリズム部分31fの温度を調整することで、被測定物34の温度を効率よく調整できる。
【符号の説明】
【0050】
1…テラヘルツ波分光計測装置、31…内部全反射プリズム、31a…入射面、31b…出射面、31c…全反射面(配置部)、31f…第1のプリズム部分、31g…本体部分、31h…断熱材、31i…凹部、31k…マッチングオイル、31m…第2のプリズム部分、31p…第3のプリズム部分、31r…断熱材、31s…温度調整手段、32…テラヘルツ波発生素子、33…テラヘルツ波検出素子、34…被測定物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射されたレーザ光をポンプ光とプローブ光とに分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐した前記ポンプ光の入射によってテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生素子と、
前記テラヘルツ波の入射面・出射面及び被測定物の配置部を有し、前記入射面から入射した前記テラヘルツ波を内部で伝播させ、前記配置部で反射又は透過させて前記出射面から出射させる内部全反射プリズムと、
前記内部全反射プリズムから出射した前記テラヘルツ波と、前記プローブ光とが入射し、前記テラヘルツ波と前記プローブ光との間の相関を検出するテラヘルツ波検出素子と、を備え、
前記内部全反射プリズムは、
前記配置部を含む第1のプリズム部分と、
前記テラヘルツ波発生素子が一体に固定される前記入射面及び前記テラヘルツ波検出素子が一体に固定される前記出射面と、前記第1のプリズム部分が嵌合する凹部とを含む本体部分と、を有し、
前記第1のプリズム部分と前記本体部分との嵌合部分に断熱材が介在していることを特徴とするテラヘルツ波分光計測装置。
【請求項2】
前記第1のプリズム部分と前記本体部分との嵌合部分にマッチングオイルが更に介在していることを特徴とする請求項1記載のテラヘルツ波分光計測装置。
【請求項3】
前記第1のプリズム部分と前記本体部分との嵌合部分において、前記テラヘルツ波が通る光路部分に前記本体部分と略同等の屈折率を有すると共に前記第1のプリズム部分を支持する第2のプリズム部分が介在しており、前記テラヘルツ波が通らない非光路部分に前記断熱材が介在していることを特徴とする請求項1又は2記載のテラヘルツ波分光計測装置。
【請求項4】
前記断熱材は空気であることを特徴とする請求項3記載のテラヘルツ波分光計測装置。
【請求項5】
前記非光路部分に前記第1のプリズム部分を支持する第3のプリズム部分が更に介在していることを特徴とする請求項3又は4記載のテラヘルツ波分光計測装置。
【請求項6】
前記第1のプリズム部分と前記本体部分との嵌合部分において、前記テラヘルツ波が通る光路部分に空気が介在しており、前記テラヘルツ波が通らない非光路部分に断熱性を有すると共に前記第1のプリズム部分を支持する断熱材が介在していることを特徴とする請求項1又は2記載のテラヘルツ波分光計測装置。
【請求項7】
前記第1のプリズム部分には、温度を調整する温度調整手段が接続されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のテラヘルツ波分光計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−207975(P2012−207975A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72794(P2011−72794)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】