説明

テレフタル酸工程から発生する廃棄物の処理方法

廃棄物を水および腐食防止剤と均一に混合して廃水を製造し、前記廃水を液状に維持させる条件の下で前記廃水の有機化合物を酸化剤との酸化反応によって分解させ、前記液状成分から触媒粒子を回収することにより、テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法を開示する。この方法は、廃棄物を液状に維持させながら有機物を分解すると同時に、触媒の回収効率も向上させることができて、産業的に利用可能性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレフタル酸(Terephthalic Acid)製造工程から発生する廃棄物の処理方法
に関する。より具体的に、本発明は、廃棄物を水および腐食防止剤と混合し、加圧および加熱させて液体状態を維持させ、酸化剤と反応させて有機物を分解し、例えばコバルト、マンガンなどの触媒も円滑に回収することができる、テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、テレフタル酸は、p−キシレン、例えばコバルト、マンガンなどの遷移金属を用いて部分的に酸化反応させて製造される。この過程で所望の製品であるテレフタル酸以外に安息香酸(Benzoic Acid)、p−トルアルデヒド(p-tolualdehyde)、p−トルイル酸(p-toluic acid)、4−カルボキシベンズアルデヒド(4-carboxybenzaldehyde)、4−ヒドロキシメチルベンゾ酸(4-hydroxymetnyl benzoic acid)などの副反応物質が生成される。テレフタル酸合成反応の後、製品としてのテレフタル酸と溶媒としての酢酸を回収すると、前記副反応有機物、触媒としてのコバルト、マンガン、および助触媒としての臭化水素酸(HBr)などを含んだ廃棄物が発生する。
【0003】
テレフタル酸を製造する過程で副産物として生成される有機性廃棄物には、芳香族化合物が多量含まれており、常温で固体状態なので、廃棄物から高価なコバルト、マンガン触媒を回収することが非常に難しい。テレフタル酸製造工程で発生する廃棄物は、溶媒である酢酸を回収すると、常温では流動性のない固体に近い状態となるため、処理に困難さが多い。このような廃棄物を処理する技術として活用されることが焼却法である。廃棄物を焼却すると、コバルトとマンガンなどの触媒成分は、焼却残灰と共に排出され、この残灰から触媒金属成分を回収する技術が開発された(米国特許第4,786,621号、同第4,876,386号)。ところが、固体状態のような廃棄物を連続的に焼却炉に注入することが非常に難しい作業なので、溶媒である酢酸を回収しながら発生する有機性廃棄物を可燃性オイルと混合して注入することにより、焼却炉注入ノズルが詰まる問題を解決した技術(韓国特許第0371231号、日本特許第63040157号)などを使用する。ところが、このような焼却技術は触媒金属を焼却灰から回収する手続きが非常に難しく、回収過程で新しい廃棄物と廃水が発生するという問題があり、一部の触媒粒子は焼却の際に微細粒子なので、排ガスと共に外部へ排出されて回収が不可能になり、大気汚染防止設備などの追加環境汚染防止設備が必要となる。
【0004】
テレフタル酸工程で発生した廃棄物から触媒を回収する他の技術としては、エチレン工程で発生する廃アルカリ水溶液によってテレフタル酸工程廃棄物のpHを7.5以下に1次中和した後、苛性ソーダ水溶液によってpH8.5〜9.0に調整した後、ポリアクリルアミドを添加してコバルトおよびマンガンと結合させて析出させた後、回収する方法である(中国特許第1117163号)。この技術は、エチレン工程から発生する廃水をリサイクルしながら触媒も回収するといる利点があるが、テレフタル酸工程からの廃棄物成分の大部分を占める安息香酸、テレフタル酸、トルイル酸などの有機物を化学的に分解せず、全て廃水として排出するため、高濃度の有機性廃水が多量排出されるという問題が発生する。このように触媒回収過程で発生する高濃度の有機性廃水は、化学的酸素要求量が数十万ppmに達するほどに有機物の含量が多いため、生物学的に廃水を処理することが非常に難しく、これを処理するための廃水処理施設は膨大な面積を占める。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、従来のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物を処理する焼却処理方法の問題を解決するための研究を行った結果、前記廃棄物を水および腐食防止剤と均一に混合し、加圧および加熱して液体状態に維持させながら有機物を分解すると共に、触媒の回収効率も増加させることができる方法を見出し、これに基づいて本発明を完成した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、テレフタル酸製造工程の廃棄物から有機物成分を分解し、触媒回収効率を増大させることができる、テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、a)テレフタル酸製造工程から発生した触媒含有有機性廃棄物に水および腐食防止剤を均一に混合させた液状の廃水を提供する段階と、b)前記廃水が液状に維持される範囲内で加圧および加熱させる段階と、c)前記加熱廃水を酸化剤と反応させて有機物を分解させ、金属酸化物形態の触媒を形成させる段階と、d)前記c)段階の高温処理水を冷却させる段階と、e)前記冷却された処理水を減圧させ、気体成分および触媒粒子含有液体に分離して気体を排出させる段階と、f)前記液体からコバルトおよびマンガン触媒粒子を回収する段階とから構成される。
【発明の効果】
【0008】
従来のテレフタル酸製造工程の際に発生する副反応物質を焼却処理する方法は、溶媒である酢酸を回収すると、常温で副反応物質が固体状態になって、焼却させて処理することが難しく、焼却炉に円滑に注入するために他の液状有機溶剤を混合すると、溶剤の処理問題が発生した。特に、焼却処理の際に例えばコバルト、マンガンなどの触媒粒子が微細であって排ガスと共に外部に飛散して排出されるので、触媒回収率が低下するという問題があり、焼却灰から回収する場合、触媒回収率を高めるために強酸と強アルカリで溶解および中和させるときに新しい廃水および廃棄物の環境汚染物質が発生して実質的に触媒回収が難しいという問題点があった。
【0009】
ところが、本発明に係るテレフタル酸製造工程の廃棄物処理方法は、従来の焼却処理法の問題点なしで有機物を分解して廃棄物を処理することができるうえ、触媒回収も効率的なので、テレフタル酸製造工程がより効率的に行われることが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、同一または類似の部分については同一の符号を付する。
【0011】
前述したように、テレフタル酸製造工程の廃棄物の大部分は分子量の大きい有機酸物質なので、水に対する溶解度が非常に低いため、廃棄物を水と混合してもよく溶けず、スラリー状態を維持する。また、テレフタル酸合成過程で助触媒として用いられる臭化水素酸(HBr)は、腐食性が非常に強いから、有機物酸化過程で装置の腐食を防止するために腐食防止剤を添加しなければならない。したがって、前記廃棄物を処理するためには有機物の溶解度を高め、臭化水素酸による腐食を防止するためには適切なアルカリ成分を選定して投与することが好ましい。
【0012】
本発明によれば、テレフタル酸製造工程から発生した廃棄物を水に適正の濃度で混合した後、水に対する有機物の溶解度を高め且つ臭化水素酸による腐食を防止するために腐食防止剤を混合する。
【0013】
その後、高圧ポンプを用いて、反応温度で廃水が液体状態を維持するように圧力を41
.5〜260barに上昇させて連続的に処理設備に注入し、熱交換器と加熱器を介して250〜370℃の反応温度まで上昇させた後、酸化剤(例えば、酸素、空気など)を注入して有機物成分を二酸化炭素と水などに分解させる。本発明によれば、前記水に混合される有機性廃棄物の含量は0.1重量%〜30重量%が適切である。
【0014】
このような酸化反応過程で、有機物成分は二酸化炭素と水に分解されるが、コバルトとマンガンなどの触媒成分は金属酸化物粒子に変化して新しいスラリー状態になる。本発明では、所望の濃度で有機物を分解させた後、触媒粒子含有混合物を冷却させ、降圧し、触媒金属粒子を分離して回収した後、再び触媒としてリサイクルし得るようにした。
【0015】
図1は本発明に係るテレフタル酸の製造過程から発生する廃棄物を処理する一実施例を示す。
【0016】
図1を参照すると、テレフタル酸製造過程から発生する廃棄物10は、常温で固体状態であって、未回収テレフタル酸だけでなく安息香酸、p−トルアルデヒド、p−トルイル酸、4−カルボキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシメチルベンゾ酸などの分子量の比較的大きい芳香族の副反応物質である。これらは、溶媒としての酢酸が除去された状態では常温で固体として存在する。したがって、これらの有機性廃棄物を効果的に酸化分解させるためには水に均一に分散させなければならない。ところが、大部分の有機物が非常に低い水に対する溶解度を示すため、均一に分散させることが非常に難しい。幸いに、テレフタル酸製造過程から発生する廃棄物は、有機酸物質なので、塩基成分を混合して有機塩に変換して水に対する溶解度を増加させることができた。
【0017】
図1に示すように、テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物10は、水11と混合してスラリー化させる。その後、廃棄物を水に溶解させ且つ助触媒としての臭化水素酸を中和させるために、腐食防止剤12を混合して均一な廃水状態で混合槽14に保管させる。
【0018】
本発明の廃棄物の溶解度を増加させ、臭化水素酸と中和させて中性の塩を形成させるための腐食防止剤(または防食剤)としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO-3-)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、水酸化カリウム(KOH)、および炭酸カリウム(KCO)の中から少なくとも一つを選択して使用する。前記防食剤を投与しなければ、臭化水素酸によって腐食が増大し、防食剤があまり多く投与されると、廃水のpHが高くなってアルカリによる腐食が再び増大するため、防食剤は、廃水のpHが4〜7の範囲に調節されるように投入しなければならない。
【0019】
前記混合槽14で十分に混合されて均一に溶解された廃棄物水溶液としての廃水をポンプ21によって昇圧して処理工程に注入する。本発明によれば、処理工程の圧力は、処理温度でスチームが生成されない圧力、すなわち最高反応温度における蒸気圧より高い圧力まで上昇させて反応物が気化しないようにしなければならない。前記反応物の圧力が蒸気圧より低い場合、反応混合物は気化し、激しい場合には蒸気によるハンマリング(hammering)現象まで発生して工程の運転が不均一、不安定になり、蒸気が生成されると、流体の
密度が急激に減少するため、反応に必要な十分な滞留時間を確保することができなくて有機物を適切に分解させ難くなる。よって、有機物を分解させる酸化反応温度が250〜370℃の範囲で変わるとき、41.5〜250barの運転圧力で廃水を注入しなければならない。
【0020】
前記ポンプ21によって加圧された廃水は、熱交換器22に注入される。熱交換器22は、反応器24で酸化反応によって分解されてから排出される高温の処理水の熱エネルギーを流入廃水の加熱に活用することができるため、熱エネルギーの観点で経済的な工程となるようにする。特に、有機物の濃度がCOD80,000mgO/Lの程度と高い場
合には、有機物の分解に伴って発生する酸化反応熱のみでも流入廃水を反応温度にまで十分加熱することができる。
【0021】
本発明では、熱交換器22を通過しながら1次加熱された廃水を、酸化反応温度まで最終的に加熱させるために加熱器23に流入させる。流入する廃水は、加熱器23によって250〜370℃の範囲で選定された反応温度まで加熱された後、反応器24に注入される。熱交換器22を通過した廃水が所望の反応温度と同一またはより高い場合には、加熱器ではさらに熱エネルギーを供給せず直ちに反応器24に注入する。反応器24に注入された廃水に酸化剤13が注入され、廃水に含まれた有機物と酸化剤とが反応して有機物が二酸化炭素および水などに分解される。
【0022】
本発明によれば、酸化剤は、酸素、空気、酸素を含有する気体混合物、オゾン、酸素と水との混合液、過酸化水素などの酸素含有流体の少なくとも一種を選択して使用し、有機物の分解に要求される理論的な注入量より1〜50モル%超過する量で過量注入する。特に、廃水の有機物濃度が高い場合には、反応器の温度が超臨界水条件の374℃以上に過熱されないように酸化剤の種類を選択し、好ましくは酸素と水との混合液を酸化剤として注入して廃水の有機物を分解させることにより、反応器の冷却効果も示すことができる。また、酸化剤を反応器の入口と反応器の内部のうち少なくとも一箇所で分注する。
【0023】
前記反応器で有機物が十分に酸化反応されて分解されるように、廃水の滞留時間は2〜30分とすることが好ましい。
【0024】
その後、反応器24から排出される処理水は、流入する廃水と熱交換器22で熱交換しながら冷却されるが、外部に排出されるには未だあまり高い温度であるから、圧力を降下させる前に再び冷却器25を通過させ、排出に適するように25〜100℃の温度で冷却させる。冷却された処理水は減圧装置26と減圧弁27を通過させて減圧させる。
【0025】
本発明において、前記1次減圧装置26は、反応温度で蒸気圧以上の高圧状態の処理水を冷却させた後、圧力を降下させる装置である。廃水が分解されると、水の他にも例えば二酸化炭素、酸素などの気体成分だけでなく、例えばコバルト、マンガンなどの触媒成分が金属粒子として析出されて一緒に排出される。したがって、圧力を降下させる過程でこのような気体−液体−固体成分が混合された場合、減圧弁27を激しく磨耗させて使用寿命が短縮する。よって、減圧弁27の前に、1次に圧力を降下させる設備を設置すると、減圧弁27の磨耗を予防することができる。前記減圧弁の磨耗を予防する減圧装置26としては、例えば代表的に内径の小さいチューブを設置した毛細管減圧設備を挙げることができる。
【0026】
本発明によれば、前記冷却処理水は、減圧装置26を通過すると、41.5〜250barの高圧流体が常圧〜20barの圧力に低くなって、最終的に圧力を降下させる減圧弁27の磨耗速度を低下させることができる。最後に減圧弁27を通過した後、気液分離器31に流入して前記有機物が分解されながら発生する二酸化炭素、過量注入された酸素などの気体成分25が大気中に排出され、残りの触媒粒子を含む液体は固液分離器32に流入して金属酸化物粒子形態の触媒粒子34が回収され、その他の処理水33は排出される。
【0027】
前記固液分離器32は、触媒粒子と処理水が混合された状態で触媒粒子を除去する装置であって、例えば沈殿による分離、遠心分離器、フィルターなどが使用できる。有機物の分解過程で生成されるコバルトとマンガン触媒粒子は、数μm程度と非常に微細なので、単純な沈殿方法のみで十分分離するには多くの時間が要求される。したがって、遠心分離器とフィルターなどが結合した形態の分離装置を使用することが好ましい。
【0028】
一方、有機性廃棄物の有機物の濃度が高い廃水を分解する場合、酸化剤を過量で使用して酸素排出量も増加し、二酸化炭素の生成量が増加すると、減圧装置で圧力を降下させる過程で不安定な運転状況が発生するおそれがある。よって、このような場合には、冷却した処理水を減圧させた後で気体成分を除去するよりは、気体成分を除去した後で圧力を降下させる方法がさらに好ましい。
【0029】
図2には有機物の濃度が比較的高い廃水処理の際に、気体成分を排出した後で圧力を降下させる方法について示した。反応器24で有機物が分解されると、二酸化炭素が発生する。発生した二酸化炭素は、一部は水に溶解されるが、平衡濃度以上の二酸化炭素は気体として存在する。また、CODより1〜50モル%過量で注入された酸素は反応せず、反応器24から排出される。このように気体成分を大量含有する場合には、図1のように毛細管減圧装置26に直接処理水を注入すると、気体−スラリー状態のスラグ流れが形成される。このようなスラグ流れは気体とスラリー間の摩擦係数差が非常に大きいため、圧力変動が激しくなり、圧力調節弁の磨耗も激しくなるおそれがある。
【0030】
したがって、気体成分が多い場合には、図2に示すように、反応器24から排出される処理水は、熱交換器22で流入廃水と熱交換された後、冷却器25で冷却され、気液分離器31に注入されて気体および触媒粒子含有液体に分離される。前記気液分離器31の圧
力は気体排出口の気体減圧弁126を用いて調節する。気液分離器31の圧力を調節することにより、工程の全体圧力が調節される。一方、気液分離器31で気体が分離された処理水と触媒粒子の混合スラリーは、液位を調節する液位調節器(LC)によって適正水位以上になると、自動水位調節弁127が開かれて高圧のスラリーが排出される。
【0031】
この際、弁(例えば、減圧弁27)の磨耗を防止するために、自動弁127の次に減圧装置26を設置した。その後、図1で説明したように、減圧装置26を通過しながら41.5〜250barの高圧流体が常圧〜20barの圧力に降下して、最終的に圧力を降下させる減圧弁27の磨耗速度を低下させることができる。前記減圧弁27を通過した後、処理水と触媒粒子は固液分離器32に流入して触媒が回収され、処理水が排出される。
【0032】
上述したように、本発明は、テレフタル酸製造工程の際に発生する有機物を酸化分解させるとともに、廃棄物に含まれている触媒成分を金属酸化物粒子の形で効率よく回収することができるという利点がある。
【0033】
[発明の様態]
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0034】
〈実施例1〉
テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の組成成分
テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物から溶媒としての酢酸と水を完全に除去した後、廃棄物に含まれた有機物と触媒成分を分析した。下記表1はテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の組成の一例を示す。
【0035】
下記表1より、テレフタル酸工程の廃棄物にはテレフタル酸と安息香酸が85%程度となるほど高い含量を占めており、イソフタル酸、p−トルイル酸などの物質が少量含まれており、その他の不純物が含まれていることが分かる。
【0036】
【表1】

【0037】
〈実施例2〉
テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の分解
前述したように、テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物は、有機物と触媒成分とが混合された状態である。この廃棄物に水を混合し、NaOHを添加して溶解させた後、一部の固体粒子が存在する廃水状態で処理工程に投入した。
【0038】
流入する廃水は、82,300mgO/LのCOD(化学的酸素要求量)を有し、NaOHを1.786重量%の濃度で混合してpHを6.0に調整した。反応器は、管型反応器を使用し、298℃の入口温度で反応が進行しながら益々増加して反応器の出口温度は361℃に維持され、圧力は250barであり、反応器滞留時間は4.3分であった。酸素は化学的酸素要求量より20%過量注入し、分解後の処理水のpHは7.2であって原廃水より増加し、CODは3,570mgO/Lと測定され、これにより分解率が95.7%に到達することが分かった。
【0039】
〈実施例3〉
反応器の反応時間による有機物の分解
テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物に水と水酸化ナトリウムを混合して原廃水を製造した。原廃水のCODは84,000mgO/Lであり、pHは5.5にした。工程の圧力は250barとし、酸素は化学的酸素要求量より20%超過して注入した。下記表2は各反応条件による処理水のCODと有機物分解率を示す。
【0040】
表2に示すように、廃水の反応器流入温度は250℃より高いことが好ましく、反応温度および滞留時間が増加するほど有機物の分解効率が増大することを確認することができ、反応器流入温度が250℃より低い場合、初期反応速度があまり遅いため、滞留時間が長くなっても反応が本格的に開始される250℃まで上昇することは難しくなって、十分な有機物分解率を得難いことを確認することができた。
【0041】
【表2】

【0042】
〈実施例4〉
防食剤の投与による処理水の金属成分含量の変化
テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物は、臭化水素酸(HBr)と例えばテレフタル酸、安息香酸、p−トルイル酸などの有機酸から構成されており、これらによって前記廃棄物を水に混合すると酸性を呈する。また、これらの有機酸は、水に対する解離度が大きくないため、よく溶解されない。臭化水素酸による腐食を防止し、酸性を呈するため解離度が低くてスラリー状態になるという問題を解決するために、本発明では、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カリウム(KCO)などのアルカリを投与して廃棄物を溶解させ、一部の固体粒子が存在する廃水に製造した後、分解することにより、工程に円滑な投入が可能であり、腐食防止効果が得られた。
【0043】
本発明に係る防食剤の投与による腐食防止効果を確認した。実験は管型反応器を用いて行った。反応器の出口温度が360℃であり、滞留時間は4.5〜5分に調節し、圧力は250barに維持し、酸素は廃水のCOD84,000mgO/Lに必要量より20%超過して注入した。
【0044】
表3は廃棄物を水に混合した後、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カリウム(KCO)などのアルカリ水溶液またはアルカリ炭酸塩水溶液を混合して分解した後、処理水に混合された4種の金属成分の含量を分析した結果を示す。4種の金属成分は、反応器と実験装置の製作に使用したニッケル合金I−625の主要合金材料である鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)であって、これらの成分が処理水に多量含有されると、例えば反応器、熱交換器などの腐食が多く進んでいることを示す。
【0045】
表3に示すように、防食剤を使用しない場合に腐食が非常に激しく進行するが、廃水のpHが4〜7に維持されるように防食剤を混合すると、腐食が著しく減少することを確認することができる。
【0046】
【表3】

【0047】
〈実施例5〉
回収された触媒粒子のサイズ分布
テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物に水と防食剤としての水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを混合した廃水を360℃で分解させた後、処理水に含まれた触媒粒子のサイズ分布を測定した。図3は粒子のサイズ分布を示した。体積を基準として、粒子はd(0.1)=1.175μm、d(0.5)=3.005μm、d(0.9)=18.324μmのサイズを持つと測定された。
【0048】
〈実施例6〉
触媒回収
廃水の酸化分解は360℃、250barで実施した。防食剤として水酸化ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの組み合わせを用いて廃水のpHを調節した。前記廃水に含まれたコバルトおよびマンガン触媒の含量はICP−MSで分析し、注入される触媒量を計算した。触媒は処理水を停滞させた後、フィルターを用いて回収した。下記表4には注入した触媒量と回収した触媒量を各成分別に分析してまとめた。表4より、本発明によれば触媒回収効率に優れることが分かる。
【0049】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によってテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物を処理する工程の概略図である。
【図2】本発明によってテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物内の有機物の濃度が高くて排出ガスが多い場合の好適な工程の概略図である。
【図3】本発明の一実施例によってテレフタル酸製造工程の際に発生した廃棄物を処理し、回収された触媒粒子のサイズ分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
10:テレフタル酸工程廃棄物
11:水
12:腐食防止剤 13:酸化剤
14:混合槽 21:廃水ポンプ
22:熱交換器 23:加熱器
24:反応器 25:冷却器
26:減圧装置 27:減圧弁
31:気液分離器 32:固液分離器
33:排出された処理水 34:回収された触媒
35:排出ガス 126:気体排出器
127:水位調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)テレフタル酸製造工程から発生した触媒含有有機性廃棄物に水および腐食防止剤を均一に混合させた液状の廃水を提供する段階と、
b)前記廃水が液状に維持される範囲内で加圧および加熱させる段階と、
c)前記加熱廃水を酸化剤と反応させて有機物を分解させ、金属酸化物形態の触媒を形成させる段階と、
d)前記c)段階の高温処理水を冷却させる段階と、
e)前記冷却された処理水を減圧させ、気体成分および触媒粒子含有液体に分離して気体を排出させる段階と、
f)前記液体からコバルトおよびマンガン触媒粒子を回収する段階とを含むことを特徴とする、テレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記(a)段階の液状廃水の有機性廃棄物の含量は0.1重量%〜30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記(e)段階は、前記冷却処理水を、気体成分および触媒粒子含有液体に分離した後、減圧させる段階で代替されることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記腐食防止剤は、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記腐食防止剤は、前記廃水のpHが4〜7に維持されるように投入されることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項6】
前記(b)および前記(c)段階は、41.5〜250barの圧力および250〜370℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項7】
前記酸化剤は、酸素、空気、酸素を含有する気体混合物、オゾン、過酸化水素水溶液、酸素含有水、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項8】
前記酸化剤は、前記廃水の有機物を完全酸化分解させるのに必要な量より1モル%〜50モル%を超過する量で使用されることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項9】
前記(d)段階では、25〜100℃で冷却することを特徴とすることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項10】
前記(e)段階では、常圧〜20barの範囲に減圧することを特徴とする、請求項1または3に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項11】
前記(e)段階は、毛細管減圧器で行われることを特徴とする、請求項1または3に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。
【請求項12】
前記(f)段階は、沈殿器、遠心分離器、およびフィルターよりなる群から選ばれた少
なくとも一つが設置された固液分離器で行われることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸製造工程から発生する廃棄物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−506888(P2009−506888A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529916(P2008−529916)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003515
【国際公開番号】WO2007/029956
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(595137310)ハンファ ケミカル コーポレーション (31)
【出願人】(508071331)サンナン ペトロケミカル カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】