テーパ光ファイバ
【課題】テーパ光ファイバの比較的細いテーパ部に光を閉じ込めて光密度を高めて、さらにこのテーパ部において光干渉効果を誘起させ、様々な機能を発現させる。
【解決手段】ファイバの一部の直径が、長手方向に沿って変化するテーパ部を有するテーパ光ファイバにおいて、前記テーパ部が、光の干渉効果を誘起するように、光の伝搬方向に沿って周期的に屈折率が変調されている、テーパ光ファイバを提供する。好ましくは、前記テーパ部の形状は、光の干渉効果を誘起する周期的な構造を有する。
【解決手段】ファイバの一部の直径が、長手方向に沿って変化するテーパ部を有するテーパ光ファイバにおいて、前記テーパ部が、光の干渉効果を誘起するように、光の伝搬方向に沿って周期的に屈折率が変調されている、テーパ光ファイバを提供する。好ましくは、前記テーパ部の形状は、光の干渉効果を誘起する周期的な構造を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテーパ光ファイバに、より具体的には、テーパ部の屈折率が周期的に変調されているテーパ光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の光ファイバは、一般的に100μm以上の直径を有し、かつ同心円状に配置されたコアとクラッドを有する。コアとクラッドのそれぞれに、屈折率の異なる材料(例えばガラス)を用いる。それにより、コアへの光閉じこめを実現している。
【0003】
一方、テーパ光ファイバとは、光ファイバの一部を加熱溶融して引き延ばすことにより、その直径を小さくした(細くした)光ファイバである。細くされた部分を「テーパ部」と称する。通常の光ファイバ部からテーパ部にいたる形状を適切に制御することで、通常の光ファイバ部に入射された光のほぼ100%が、テーパ部に導波されうる。
【0004】
テーパ光ファイバのテーパ部の直径を、1μm以下とすることもでき、加熱時間や延伸速度を調整することでテーパ部の直径を400nm程度としたテーパ光ファイバも報告されている(非特許文献1および2)。ある一定以下の直径(例えば1μm以下の直径)のテーパ部では、コアとクラッドとが明確には区別されず、伝搬する光はテーパ部を構成する材料(例えばガラス)と、外気との屈折率差によって、テーパ部に閉じ込められる。したがってテーパ部には、光ファイバに入力された光の全てを、光の回折限界に近い断面積に閉じこめることもでき、非常に大きな光密度とすることもできる。
【0005】
さらに、ある一定以下の直径のテーパ部を導波する光は、テーパ部の表面から外部(空気部)にエバネッセント波としてしみ出しながら伝搬する。このテーパ部表面でのエバネッセント波の強度は非常に大きく、条件によって最大強度の数十パーセントの強度にも達する。
【0006】
上記のような特徴を活かして、テーパ光ファイバの応用研究が行われている。例えば、センサーとしての応用が試みられている。すなわちテーパ光ファイバのテーパ部に、標的となる分子が吸着することで、発光が異なるようなセンシング分子を付着させた場合、そのテーパ部での大きな光パワー密度により、微量の標的分子を高い感度で検出することができる(非特許文献3を参照)。また、テーパ部の代わりにテーパ部と結合した微小球共振器にセンシング分子を結合させても、標的分子を検出することができる(非特許文献4を参照)。
【0007】
さらに、テーパ光ファイバのテーパ部に、ファイバーブラッググレーティング(FBG)により回折格子を形成する技術が知られている(非特許文献5などを参照)。具体的には、テーパ光ファイバのテーパ部(直径30μmまたは50μm)に、近赤外光を照射してコア−クラッドの屈折率を変調させていることが報告されている。しかし、テーパ部の直径が、波長に比べて10倍以上大きいため、表面でのエバネッセント波の強度は小さい。
【0008】
一方で、光ファイバではなく、半導体導波路(channel waveguide)に、ブラッググレーティング構造を付与する技術が知られている(非特許文献6などを参照)。具体的には、Ge−SiO2フィルムにレーザを照射して、マイクロメートルオーダーの半導体導波路を形成し、さらにその半導体導波路にブラッググレーティング構造を形成している。しかしながら、テーパ光ファイバのテーパ部とは異なり、半導体導波路に光を入力するのは一般的に困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】H. Konishi, H. Fujiwara, S. Takeuchiand K. Sasaki, "Polarization-discriminated spectra of a fiber-microsphere system", Applied Physics Letters, Vol.89 (2006), No.12, pp.121107/1-3.
【非特許文献2】浅井健志、小西秀典、高島秀聡、藤原英樹、竹内繁樹、笹木敬司、「テーパファイバ結合微小球共振器の共鳴モードにおける光位相シフト」、第17回量子情報技術研究会
【非特許文献3】J.M. Corres, J. Bravo, I.R. Matias and F.J. Arregui, "Tapered Optical Fiber Biosensor for the Detection of Anti-Gliadin Antibodies", Sensors, 2007 IEEE (28-31 Oct. 2007), pp.608-611.
【非特許文献4】Frank Vollmer, Stephen Arnold, "Whispering-gallery-mode biosensing: label-free detection down to single molecules", Nature Methods, Vol.5 (2008), No.7, pp.591-596.
【非特許文献5】D. Grobnic, S.J. Mihailov, Huimin Ding and C.W. Smelser, "Bragg Grating Evanescent Field Sensor Made in BiconicalTapered Fiber With Femtosecond IR Radiation", IEEE Photonics Technology Letters, Vol.18 (2006), No.1, pp.160-162.
【非特許文献6】J. Nishii, K. Kintaka, Y. Kawamoto and M. Takahashi, "Optical waveguide filter fabricated by excimerlaser irradiation", RIKEN Review, No.50 (2003), pp.38-41.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記の通りテーパ光ファイバは、比較的細いテーパ部に光を閉じ込めて、光密度を高めることができる。このテーパ部において光干渉効果を誘起すれば、様々な機能が発現できる。つまり、光反射鏡として作用したり、周波数フィルターとして作用したり、共振器として作用したりする。
【0011】
さらに、テーパ部の直径を小さくするほど(細くするほど)、光密度をより高めることができ、テーパ部表面に強いエバネッセント波を発生させることもできる。この光密度をさらに高めたり、エバネッセント波の強度をさらに高めたりすることができれば、テーパ光ファイバの実用化が広がることが予想され、例えばセンサーとして用いたときに、高感度化を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、テーパ光ファイバのテーパ部の屈折率を、光の伝搬方向に沿って、周期的に変調させれば、光干渉効果を誘起させて種々の機能を発現させることができる、という知見に着目してなされた。例えば、従来のテーパ光ファイバは、光をテーパ部の断面方向にのみ閉じ込めているが;これに対して本発明者は、光の伝搬方向にも光を閉じ込めて、テーパ部での光密度をさらに高めることを検討した。
【0013】
その結果、テーパ部を特異な形状としたり、テーパ部にFBG技術を用いて屈折率を変調させたりすれば、テーパ部で光干渉効果、例えばブラッグ反射が生じて、様々な機能を発現させることができることがわかった。
【0014】
すなわち本発明の第一は、以下に示すテーパ光ファイバに関する。
[1]ファイバの一部の直径が、長手方向に沿って変化するテーパ部を有する光ファイバにおいて、前記テーパ部が、光の干渉効果を誘起するように、光の伝搬方向に沿って周期的に屈折率が変調されている、テーパ光ファイバ。
[2]前記テーパ部の形状が、光の干渉効果を誘起する周期的な構造を有する、[1]に記載のテーパ光ファイバ。
[3]前記テーパ部の片側または両側に、テーパ部に連続するコアとクラッドを含む光ファイバを有する、[1]または[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[4]前記テーパ部の直径が、5μm未満である、[1]〜[3]のいずれかに記載のテーパ光ファイバ。
[5]前記テーパ部の直径が、前記光ファイバを伝搬する光の波長と同程度かそれ以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のテーパ光ファイバ。
[6]前記テーパ光ファイバの材質はガラスである、[1]〜[5]のいずれかに記載のテーパ光ファイバ。
[7]前記周期的な構造が、ファイバの延伸方向に沿って、一定間隔毎にテーパ部の周囲に設けられた畝状の凹凸である、[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[8]前記周期的な構造が、特定範囲の波長を反射する反射鏡として作用する、[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[9]前記周期的な構造が、特定範囲の波長を透過し、かつ他の特定範囲の波長の光を反射する周波数フィルターとして作用する、[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[10]前記周期的な構造中に欠陥部を有し、前記欠陥部において、特定範囲の波長の光の密度を高めることができる、[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[11][10]に記載のテーパ光ファイバと、前記欠陥部の近傍に設けられたレーザ媒質とを有する、レーザ発振器。
【0015】
本発明の第2は、以下に示すテーパ光ファイバの製造方法に関する。
[12][2]に記載のテーパ光ファイバを製造する方法であって:コアおよびクラッドを有する光ファイバを用意するステップと;前記光ファイバの一部を加熱溶融して、かつ引き延ばしてテーパ部を形成するステップと;前記テーパ部の形状を加工して、周期構造を形成するステップと、を含む製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のテーパ光ファイバは、テーパ部で光干渉効果が誘起されるので、様々な機能が発現する。例えば、光ファイバを伝搬する特定波長の光を反射する反射鏡となったり、特定波長の光だけを透過させる周波数フィルターになったり、共振器となったりする。
【0017】
さらに、本発明のテーパ光ファイバは、従来のテーパ光ファイバと比較して、テーパ部での光密度を桁違いに高めることができる。しかも、テーパ部は外部に露出しているので、テーパ部表面での強力なエバネッセント波を利用して、種々の応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】通常のテーパ光ファイバの模式図である。
【図2】実施例1〜3のシミュレーションターゲットとした、テーパ光ファイバのテーパ部を示す図である。図2Aは断面図、図2Bは斜視図である。
【図3】テーパ光ファイバのテーパ部の周期構造に欠陥部Xを導入した例を示す図である。
【図4A】周期構造が形成されていないテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである。
【図4B】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(h=50nm)。
【図4C】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(h=60nm)。
【図4D】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(h=100nm)。
【図5A】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(N=300,L=0.18mm)。
【図5B】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(N=500,L=0.3mm)。
【図5C】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(N=1000,L=0.6mm)。
【図6】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=1.0μm)。
【図7】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、モードA1の空間分布を計算した結果を示す図である(d=1.0μm)。
【図8】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=2.0μm)。
【図9】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、モードB1〜B3の空間分布を計算した結果を示す図である(d=2.0μm)。
【図10】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=5.0μm)。
【図11】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、モードC1〜C7の空間分布を計算した結果を示す図である(d=5.0μm)。
【図12】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率を計算した結果を示すグラフである(d=5.0μm,h=100nm)。
【図13】図13Aは、実施例4,5のシミュレーションターゲットとした、テーパ光ファイバのテーパ部を示す図(断面図)であり;図13Bは、図13Aに示されたテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである。
【図14】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=1.0μm,G=900nm)。
【図15】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=2.0μm,G=900nm)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.本発明のテーパ光ファイバ
本発明のテーパ光ファイバは、テーパ部Aを有し、さらに光入射部Bまたは光出射部B’を有する(図1参照)。光入射部Bまたは光出射部B’は、両方あってもよいし、一方だけであってもよい。テーパ部Aは、光入射部Bおよび光出射部B’よりも、その直径が小さいことを特徴する。本発明のテーパ光ファイバの材質は特に制限されないが、一般的には無機物であり、例えばガラスである。
【0020】
前記の通り、本発明のテーパ光ファイバのテーパ部Aの直径は、他の部分(光入射部Bや光出射部B’を含む)よりも小さければよい。光の干渉効果を誘起させる観点からは、テーパ部Aの直径は、5μm未満が好ましい(実施例3参照)。テーパ部Aの直径が、伝搬させる光の波長よりも大きければ、当該光はマルチモードで伝搬し;伝搬させる光の波長と同程度であるか、またはそれより小さければ、当該光はシングルモードで伝搬する。
【0021】
テーパ部Aの直径が、光ファイバに伝搬させる光の波長よりも短いと、テーパ部表面におけるエバネッセント波が増強される。例えば、光ファイバに1μmの波長を有する光を伝搬させる場合には、テーパ光ファイバのテーパ部の直径を約1μmか、それ以下とすることにより、テーパ部でのエバネッセント波が増強される。さらに、青色レーザ光を伝搬させる場合には、テーパ部の直径を約350nm以下にすれば、テーパ部でのエバネッセント波が増強される。
【0022】
テーパ部Aの直径を、伝搬させる光の波長よりも小さくすることにより、テーパ部の表面に、強力なエバネッセント波1が形成されうる。エバネッセント波とは、通常、テーパ部の表面から1波長程度はみだしている電磁場をいう。
【0023】
テーパ部Aの導波方向の長さは特に限定されないが、数mmとすることも可能である。テーパ部の長さを長くすれば、強力なエバネッセント波が広い領域に形成され、テーパ部の表面に形成されるエバネッセント波を利用しやすくなる。また後述するように、本発明のテーパ光ファイバのテーパ部は、その形状を加工されているので、テーパ部の導波方向の長さを比較的長くして加工容易性を高めることが好ましい。
【0024】
本発明のテーパ光ファイバのテーパ部は、伝搬する光の干渉効果を誘起することが好ましい。光の干渉効果を誘起するとは、特定の光を反射させること、特定の光だけを透過させること、光を閉じ込めること、などの意味を含む。より具体的には、ファイバを伝搬する光をブラッグ反射させたり、ブラッグ反射によって欠陥部に光を閉じ込めたりすることを含む。
【0025】
光の干渉効果を誘起するテーパ部とするには、例えばFBG技術を参照して、テーパ部に光(例えば紫外光)を照射して、テーパ部の屈折率を光伝搬方向に沿って周期的に変調させればよい。光照射によりテーパ部の屈折率を変調させるには、テーパ部のガラス材料を例えばGeO2添加石英ガラスとすればよい。さらに、光ファイバに水素を高圧充填する処理により、10−3程度の屈折率変調を得ることができる。
【0026】
さらには、テーパ部の形状は、伝搬する光の干渉効果を誘起させるような周期的な構造を有していることが好ましく;より具体的には、ブラッグ反射を起こさせるような周期構造を有していることが好ましい。ブラッグ反射させるような形状とは、例えば、光の伝搬方向に関する周期的な構造である。光の伝搬方向に関する周期的な構造とは、伝搬方向に、一定周期毎に、テーパ部の周囲に設けられた畝状の凹凸などでありうる。
【0027】
テーパ部の形状を伝播方向に沿って周期的な構造とすることで、単に非特許文献5にあるような近赤外光照射や、一般にファイバブラッググレーティングの形成で行われるGeO2添加石英ガラスへの紫外線照射などにより、ガラス材料の屈折率を変調した場合と比較すると、光の干渉効果を著しく効率的に生じさせることができることがシミュレーションにより明らかになった。
【0028】
たとえば、同等の反射率や、共振器効果を得るのに必要な繰り返し数を、10分の1以下にすることができる。これは、同等のデバイスサイズでは、より高い反射率や共振器効果を得られるとともに、デバイスの小型化、安定化するために非常に重要である。その理由は、ガラス材料の屈折率を、光照射で変調した場合には、せいぜい10−3程度の屈折率差しか得られないのに対して、テーパ部の形状を伝搬方向に沿って周期的な構造とした場合、その凸部と凹部で、10−2程度の実効的な屈折率差が得られるためである。
【0029】
したがって、テーパ部の形状を伝播方向に沿って周期的な構造とすることで、一般的に行われている手法でテーパ部の屈折率を伝搬方向に沿って変調させるよりも、より大きな光共振効果を得ることができるという利点がある。
【0030】
周期構造の例には、図2A(断面図)および図2B(斜視図)に示されるように、一定周期毎に、テーパ部の周囲を囲むように形成された凹凸Pが含まれる。図2Aおよび図2Bにおけるdは、テーパ部の直径である。前述の通り、テーパ部の直径dは、テーパ部以外のテーパ光ファイバの直径よりも小さければよいが、5μm未満が好ましく、2μm以下が特に好ましい。テーパ部の直径dが5μm以上の場合、テーパ部表面の周期的構造の効果をほとんど発揮させることができない(実施例参照)。一方、テーパ部の直径dが2μm超かつ5μm未満の場合、テーパ部表面の周期的構造の効果を発揮させることはできるものの、マルチモード伝播におけるモード変換などの予測しにくい効果が現れるおそれがある。前述の通り、テーパ部の直径dは、伝搬させる光の波長よりも短くてもよい。
【0031】
周期構造のインターバル(例えば、図2におけるΛ)を調整することにより、反射させる光の波長を制御することができる。Λを小さくすると、波長が短い光をブラッグ反射させることができ;Λを大きくすると、波長が長い光をブラッグ反射させることができる。
【0032】
周期構造の繰り返し数Nと、凹凸Pの大きさ(例えば図2における高さh)を調整することにより、光の反射率を制御することができる。繰り返し数Nを大きくしたり、高さhを大きくすれば、テーパ部でのブラッグ反射による反射率が高まり;繰り返し数Nを小さくしたり、高さhを小さくすれば、テーパ部でのブラッグ反射による反射率が低下する。
【0033】
ブラッグ反射させるようなテーパ部の周期構造は、図2に示される形状に限定されるわけではなく、例えば、凹凸Pがテーパ部の全周を囲まず、周囲の一部だけに形成されていてもよい。
【0034】
さらに、テーパ部の周期構造には、欠陥部が導入されていてもよい。欠陥部とは、周期構造の周期性が乱れた部位をいう。例えば、図3に示されたテーパ部の周期構造には、図2Aに示された周期構造に対して、周期的に形成されるべき凹凸Pがない部分Xがある。この部分Xが、欠陥部Xとなる。ブラッグ反射によって欠陥部Xに光を閉じ込めることができる。つまり、テーパ部のなかでも、特異的に欠陥部Xでの光密度を高めることができる。
【0035】
図1に示されるように、本発明のテーパ光ファイバは、外部から光を入射するための光入射部B、または外部に光を出射するための光出射部B’をも有することが好ましい。光入射部Bおよび光出射部B’は、通常の光ファイバと同様に、コアCおよびクラッドDを有することが好ましく、その直径も100μm以上とすることができる。光の入射および出射を容易にするためである。
【0036】
本発明のテーパ光ファイバは、光入射部Bまたは光出射部B’を、いずれか一方だけでも、両方を有していてもよい。例えば、テーパ部を反射鏡として利用する場合には、光入射部Bだけを有していればよく、光出射部B’を有する必要は必ずしもない。
【0037】
光入射部Bおよび光出射部B’と、テーパ部Aとは、なだらかな形状で接続していることが好ましい。なだらかな形状とすることで、テーパ部Aと光入射部B、およびテーパ部Aと光出射部B’との光接続における損失を低減することができる。なだらかな形状とは、例えば、前述の非特許文献1を参照して適宜設定される。
【0038】
前述の通り、微細な半導体導波路が報告されているが、当該導波路に光を効率的に導くことは困難であった。例えばレンズを介して、微細な半導体導波路に光を導く必要があった。一方で、本発明のテーパ光ファイバは、テーパ部を微細にしたとしても、コア−クラッド構造を有する光入射部Bを介して容易に光を導くことができ、かつ光出射部B’を介して容易に光を取り出すことができる。
【0039】
本発明のテーパ光ファイバのテーパ部は、外部に露出しており;しかも、テーパ部表面のエバネッセント波を増強することができる。一方、前述の通り、FBGにより光ファイバのコア−クラッドの屈折率を変調させた場合には、コアの周囲に存在するクラッドによって、増強されたエバネッセント波を利用しにくかった。これに対して、本発明のテーパ光ファイバのテーパ部は、外部に露出しているので、そこに生じるエバネッセント波を容易に利用することができる。よって、増強されたエバネッセント波を、種々の用途に利用することができる。
【0040】
これらの特徴を活用して、本発明のテーパ光ファイバは種々の用途に用いられうるが、1)センサー、2)レーザ発振器、3)非線形光スイッチ、4)周波数フィルターなどに応用されうる。
【0041】
例えばセンサーとして用いる場合には、テーパ部、特に好ましくはテーパ部の周期構造に導入された欠陥部に、標的分子が吸着すると異なる発光を生じるセンシング分子を付着させればよい。それにより、微量の標的分子の吸着でもセンシング分子の発光が変化するので、高感度検出が可能となる。また、テーパ部の付近に微小共振器を配置して、微小共振器にセンシング分子を付着してもよい。微小共振器にも、強力なエバネッセント波が生じるからである。
【0042】
本発明のテーパ光ファイバをレーザ発振器に応用してもよい。特に、テーパ部の周期的な構造に欠陥を設けて、欠陥の近傍にレーザ媒質を配置する。その欠陥に発生する強力なエバネッセント波とレーザ媒質が結合することにより、非常に微小な構造により、レーザを発振することができる。その場合、共振器モード体積が波長λの3乗程度と極めて小さいため、共振器とレーザ媒質は非常に強く結合し、結果として極めて低い閾値と、入出力変換効率を実現可能である。
【0043】
そのようなレーザ発振器は、光源として用いることはもちろん、その出力や、発信周波数の変化により、テーパ光ファイバのテーパ部周辺の局所的な環境を鋭敏に検出するためのセンサーとしても利用可能である。
【0044】
また、本発明のテーパ光ファイバを非線形光スイッチに応用する場合には、テーパ部を光スイッチの増幅器に適用することで、応答特性を高めることができる。
【0045】
さらに、本発明のテーパ光ファイバは、テーパ部の周期構造でのブラッグ反射を利用して、周波数フィルターとして用いてもよい。
【0046】
本発明のテーパ光ファイバのテーパ部には、光の干渉効果を誘起する部位を2以上有していてもよい。光の干渉効果を誘起する部位のそれぞれに、同一または異なる機能を付与することによって、いくつかの機能を組み合わせて有する新しいデバイスが提供されうる。
【0047】
例えば、両側に通常のシングルモードファイバ部を有するテーパ光ファイバ部に、レーザのポンプ用光を入力する端から順に、ポンプ光用の光を透過しレーザ発振光を反射する波長フィルター;レーザ発振器;レーザのポンプ用の光を反射しレーザ発振光を透過させる波長フィルター、を組み込むことにより、一方の端からポンプ用の光を入射した場合、他端からはレーザ光のみを取り出すことのできるデバイスを構成可能である。
【0048】
同様に、プローブ用の光を透過し信号光を反射するフィルターと;プローブ用の光と共鳴する共振器;プローブ光を反射し信号光を透過するフィルター、を一つのテーパ部に設けることで、一方の端からプローブ光を入射した際に、他方の端からは、共振器によって増幅されたプローブ光によって、測定対象から非常に効率的にとりだされた信号光を、プローブ光の影響を排除した状態で抽出することができるデバイスを実現できる。
【0049】
2.本発明のテーパ光ファイバの製造方法
本発明のテーパ光ファイバは、特に限定されないが、まず、コアとクラッドを有する光ファイバを用意し;その一部を加熱溶融して、かつ引き延ばしてテーパ部を形成し;形成されたテーパ部の形状を、ナノ加工することにより製造されうる。
【0050】
用意する光ファイバは特に限定されないが、例えばガラス製の光ファイバである。シングルモード用の通信用光ファイバであれば、100μm以上の直径を有しうる。
【0051】
ガラス製の光ファイバを用意した場合には、その一部を加熱することで溶融し、かつ引き延ばすことによりテーパ部を形成する。テーパ部の形成は、例えば前記の非特許文献2に記載された知見を参照して行うことができる。
【0052】
テーパ部の形状をナノ加工するには、例えば、
1)集束イオンビーム(FIB)法によって、テーパ部をナノスパッタリングすることによって、所望の形状に加工したり、
2)光リソグラフィ法によって、テーパ部を加工してもよい。つまり、テーパ部にレジスト膜を形成し;レジスト膜を光照射によりパターニングして;パターンにしたがってテーパ部をエッチングすればよい。
【実施例】
【0053】
図2Aに示すようなテーパ部をシミュレーションターゲットとして、EME法により、形成される電磁界をシミュレーションした。専用の導波路解析ソフトウェアであるFIMMWAVE(Photon Design社)を用いて数値計算を行った。
【0054】
EME法とは、導波路を光波の進行方向に対して薄くスライスして分割し;各スライスでの導波路モードを計算し;各構成要素の伝達行列を求めて;それにより電磁界をシミュレーションする方法である。EME法は、光波の進行方向に沿って周期的な構造を有する導波路をターゲットとするシミュレーションに適している。EME法により、シミュレーションターゲットとしてテーパ部全体での、伝搬光の透過率と反射率とを求めた(透過率と反射率との和を1とした)。その際、テーパ部全体をコアとし、周囲の空気をクラッドとし、コアの直径に関わらず10μm×10μmの領域(光波の進行方向に対して垂直な面)をX、Y方向ともに500分割のメッシュで計算した。また、入射光は、HE11のモードとした。
【0055】
図2に示されたテーパ部には、光波の進行方向に沿って、周期的な凹凸Pが形成されている。図2において、dはテーパ部の直径を、hは凹凸Pの高さを、Λは周期のインターバルを、Nは周期構造の繰り返し数を、Lは周期構造が形成されたテーパ部の長さを示す。
【0056】
[実施例1]
まず、テーパ部の直径dを1.0μm、周期のインターバルΛを600nm、周期構造の繰り返し数Nを1000に固定して;凹凸Pの高さhを、0nm(図4A)、50nm(図4B)、60nm(図4C)または100nm(図4D)に設定した。図4B〜図4Dの上のグラフは、伝搬光の波長(横軸)と、伝搬光の透過率または反射率(透過率と反射率の和を1とする)を示し;下のグラフは、上のグラフの透過率と反射率を対数化して示している。
【0057】
図4Aに示されるように、凹凸Pを設けない、つまり周期構造を形成しなかった場合には、いずれの波長においても反射が起こっていない、つまり透過率が1であることがわかる。一方、図4B〜図4Dに示されるように、凹凸Pを設ける、つまり周期構造を形成した場合には、1500nm付近の波長の光が反射され、つまり透過しなくなっていることがわかる。さらに、凹凸Pの高さhが大きくなるほど、反射する光の波長の幅が広がっていくことがわかる。また、反射部における最小透過率は、それぞれ4×10−4、1×10−4、6×10−6と減少し、高さhが大きくなるほど、より良好な減衰が得られている。
【0058】
一方、凹凸Pを設けない状況で、光誘起で得られる典型的な屈折率変調(10−3)を同様のインターバル、繰り返し数で与えた場合についてシミュレーションを行ったところ、これらのような良好な反射特性は得られなかった。そのため、凹凸Pを付与した場合について、伝搬モードの実効屈折率について検討したところ、10−2程度というきわめて大きな変調が得られていることが分かった。
【0059】
[実施例2]
次に、テーパ部の直径dを1.0μm、凹凸Pの高さhを50nm、周期のインターバルΛを600nmに固定し;周期構造の繰り返し数Nを、300(図5A)、500(図5B)または1000(図5C)に設定した。図5A〜Cの上のグラフは、伝搬光の波長(横軸)と、伝搬光の透過率または反射率(透過率と反射率の和を1とする)を示し;下のグラフは、上のグラフの透過率と反射率を対数化して示している。
【0060】
図5A〜図5Cに示されるように、いずれの場合も1500nmの波長の光の少なくとも一部を反射しており、透過していないことがわかる。さらに、繰り返し数Nが大きくなるほど、反射率が向上していくことがわかる。つまり、繰り返し数Nが300の場合には、反射率の最大ピークが約0.8(図5Aの上グラフ参照)であり;繰り返し数Nが500の場合には、反射率の最大ピークが約0.95(図5Bの上グラフ参照)であり;繰り返し数Nが1000の場合には、反射率の最大ピークが1に達している(図5Cの上グラフ参照)。
【0061】
[実施例3]
次に、凹凸Pの高さhを50nm、周期のインターバルΛを600nm、周期構造の繰り返し数Nを1000に固定し;テーパ部の直径dを、1.0μm、2.0μmまたは5.0μmに設定した。
【0062】
図6は、テーパ部の直径dを1.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである(図4Bと同じグラフ)。また、図7は、テーパ部の直径dを1.0μmとしたときの計算結果から得られた空間モード(モードA1)の空間分布を示す図である。図6Aのグラフは、伝搬光の波長(横軸)と伝搬光の透過率または反射率(透過率と反射率の和を1とする)を示す。図6Bのグラフは、図6Aのグラフの透過率と反射率を対数化して示している。
【0063】
図8は、テーパ部の直径dを2.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである。また、図9は、テーパ部の直径dを2.0μmとしたときの計算結果から得られた空間モード(モードB1〜B3)の空間分布を示す図である。図8AはモードB1の透過率と反射率の計算結果、図8BはモードB2の透過率と反射率の計算結果、図8CはモードB3の透過率と反射率の計算結果を示す。図9AはモードB1の空間分布、図9BはモードB2の空間分布、図9CはモードB3の空間分布を示す。
【0064】
図8Aに示されるように、モードB1の透過率を参照すると、1496nm付近および1505nm付近に2つの急峻な透過率低下部(ディップ)が認められるが、モードB1の反射率を参照すると、これら2つのディップに対応する反射成分はほとんど認められない(0.01以下)。一方、図8B、図8Cに示されるように、モードB2およびモードB3では、透過率が非常に小さいにも係わらず、大きな反射成分が認められる。これらのことから、1496nm近辺のモードB1の光は、モードB3から反射され、1505nm近辺のモードB1の光は、モードB2から反射されると考えられる。
【0065】
図10は、テーパ部の直径dを5.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである。また、図11は、テーパ部の直径dを5.0μmとしたときの計算結果から得られた空間モード(モードC1〜C7)の空間分布を示す図である。図10AはモードC1の透過率の計算結果、図10BはモードC2〜C5それぞれの透過率の計算結果、図10CはモードC1〜C5それぞれの反射率の計算結果を示す。図11AはモードC1の空間分布、図11BはモードC2の空間分布、図11CはモードC3の空間分布、図11DはモードC4の空間分布、図11EはモードC5の空間分布、図11FはモードC6の空間分布、図11GはモードC7の空間分布を示す。
【0066】
図10A〜Cから、入射光はモードC1でほとんど伝わり、他のモードへの結合もほとんどないことがわかる。また、透過率の低下部(1492nm付近)においても、透過率は0.999以上であり、テーパ部の直径dが1.0μmまたは2.0μmのときに見られたような、透過率が0.1以下になるようなディップはまったく認められない。すなわち、テーパ部(コア)の直径dを5μmまで拡大すると、FBGとしての機能がほとんど失われてしまうことがわかる。
【0067】
一方、図12は、図10と同じ条件(Λ=600nm、N=1000、d=5.0μm)で凹凸Pの高さhを100nmとしたときのモードD1(モードC1と同様の空間分布)の透過率の計算結果を示すグラフである。
【0068】
図12から、凹凸Pの高さhを高くすることで、FBG構造による光のブロッキングがわずかに大きくなることがわかる。しかしながら、透過率の低下部(1492nm前後)においても、透過率は0.99以上であり、テーパ部の直径dが1.0μmまたは2.0μmのときに見られたような、透過率が0.1以下になるようなディップはまったく認められない。すなわち、テーパ部(コア)の直径dを5μmまで拡大すると、FBGとしての機能がほとんど失われてしまうことがわかる。これは、ファイバの最低次モード(C1およびD1)がほとんどテーパ部からしみ出すことなく、ガラス内部に閉じこめられたまま伝搬しており、ガラス表面に形成した変調構造の影響を受けにくいためと考えられる。
【0069】
[実施例4]
図13Aに示すようなテーパ部をシミュレーションターゲットとして、実施例1〜3と同様にして、シミュレーションした。図13Aに示されるターゲットは、直径dを1.0μm、周期のインターバルΛを600nm、周期構造の繰り返し数Nを400、凹凸Pの高さhを50nmとしたテーパを2つ、接続部G900nmを介して接続しているテーパ部である。つまり、接続部Gに欠陥が導入されており、Λの半周期分の300nm(=G−Λ)のギャップ幅が設けられている。
【0070】
図13Bに示される通り、反射スペクトルと透過スペクトルとに注目すると、波長領域1496nm〜1502nmは反射領域(ストップバンド)であるが、その領域のうち非常に狭い線幅(中心波長1499nm)において、反射率が低下して、透過率が高まっていることがわかる。このように、共振器として動作していることが確認された。共振器のQ値は、約104倍に達しているので、電場(エバネッセント波)強度も約10000倍に増大していることが示唆される。
【0071】
凹凸Pの高さhを大きくしたり、繰り返し数Nを増やしたりすることで、Q値をさらに増大させることもできる。
【0072】
[実施例5]
次に、図13Aに示すようなテーパ部において、凹凸Pの高さhを50nm、周期のインターバルΛを600nm、各テーパにおける周期構造の繰り返し数Nを400、接続部Gを900nm(ギャップ幅300nm)に固定し;テーパ部の直径dを、1.0μmまたは2.0μmに設定した。
【0073】
図14は、テーパ部の直径dを1.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである(図13Bと同じグラフ)。
【0074】
図15は、テーパ部の直径dを2.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである。図15AはモードE1の透過率とモードE3の反射率の計算結果、図15BはモードE2,E3の透過率とモードE1,E2の反射率の計算結果を示す。
【0075】
図15Aに示されるように、モードE1の透過率を参照すると、2つの吸収ピークが認められ、モードE3の反射率を参照すると、これら2つの吸収ピークに対応すると思われる反射成分が認められる。一方、図15Bに示されるように、モードE2,E3の透過率およびモードE1,E2の反射率は、非常に小さかった。これらのことから、テーパ部(コア)の直径dを2.0μmと拡大した場合、モードE1で入射してきた光は、キャビティ内で閉じ込められた後にモードE3となって反射されると考えられる。
【0076】
このように、テーパ光ファイバのテーパ部に周期構造を設けることにより、伝搬光をブラッグ反射させることができる。よって、テーパ部での光密度をより高めることができる。さらに、テーパ部の周期構造に欠陥を導入すれば、欠陥部の光密度が位置選択的に高まる。
【0077】
テーパ部の周期構造の調整により、反射率、反射させる光の波長領域をも制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のテーパ光ファイバは、例えば、センサー、レーザ発振器、非線形光スイッチ、周波数フィルターなどとして利用されうる。
【符号の説明】
【0079】
A テーパ部
B 光入射部
B’ 光出射部
C コア
D クラッド
1 エバネッセント波
d テーパ部の直径
Λ 周期のインターバル
P 凹凸
h 凹凸Pの高さ
X 欠陥部
G 接続部
【技術分野】
【0001】
本発明はテーパ光ファイバに、より具体的には、テーパ部の屈折率が周期的に変調されているテーパ光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の光ファイバは、一般的に100μm以上の直径を有し、かつ同心円状に配置されたコアとクラッドを有する。コアとクラッドのそれぞれに、屈折率の異なる材料(例えばガラス)を用いる。それにより、コアへの光閉じこめを実現している。
【0003】
一方、テーパ光ファイバとは、光ファイバの一部を加熱溶融して引き延ばすことにより、その直径を小さくした(細くした)光ファイバである。細くされた部分を「テーパ部」と称する。通常の光ファイバ部からテーパ部にいたる形状を適切に制御することで、通常の光ファイバ部に入射された光のほぼ100%が、テーパ部に導波されうる。
【0004】
テーパ光ファイバのテーパ部の直径を、1μm以下とすることもでき、加熱時間や延伸速度を調整することでテーパ部の直径を400nm程度としたテーパ光ファイバも報告されている(非特許文献1および2)。ある一定以下の直径(例えば1μm以下の直径)のテーパ部では、コアとクラッドとが明確には区別されず、伝搬する光はテーパ部を構成する材料(例えばガラス)と、外気との屈折率差によって、テーパ部に閉じ込められる。したがってテーパ部には、光ファイバに入力された光の全てを、光の回折限界に近い断面積に閉じこめることもでき、非常に大きな光密度とすることもできる。
【0005】
さらに、ある一定以下の直径のテーパ部を導波する光は、テーパ部の表面から外部(空気部)にエバネッセント波としてしみ出しながら伝搬する。このテーパ部表面でのエバネッセント波の強度は非常に大きく、条件によって最大強度の数十パーセントの強度にも達する。
【0006】
上記のような特徴を活かして、テーパ光ファイバの応用研究が行われている。例えば、センサーとしての応用が試みられている。すなわちテーパ光ファイバのテーパ部に、標的となる分子が吸着することで、発光が異なるようなセンシング分子を付着させた場合、そのテーパ部での大きな光パワー密度により、微量の標的分子を高い感度で検出することができる(非特許文献3を参照)。また、テーパ部の代わりにテーパ部と結合した微小球共振器にセンシング分子を結合させても、標的分子を検出することができる(非特許文献4を参照)。
【0007】
さらに、テーパ光ファイバのテーパ部に、ファイバーブラッググレーティング(FBG)により回折格子を形成する技術が知られている(非特許文献5などを参照)。具体的には、テーパ光ファイバのテーパ部(直径30μmまたは50μm)に、近赤外光を照射してコア−クラッドの屈折率を変調させていることが報告されている。しかし、テーパ部の直径が、波長に比べて10倍以上大きいため、表面でのエバネッセント波の強度は小さい。
【0008】
一方で、光ファイバではなく、半導体導波路(channel waveguide)に、ブラッググレーティング構造を付与する技術が知られている(非特許文献6などを参照)。具体的には、Ge−SiO2フィルムにレーザを照射して、マイクロメートルオーダーの半導体導波路を形成し、さらにその半導体導波路にブラッググレーティング構造を形成している。しかしながら、テーパ光ファイバのテーパ部とは異なり、半導体導波路に光を入力するのは一般的に困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】H. Konishi, H. Fujiwara, S. Takeuchiand K. Sasaki, "Polarization-discriminated spectra of a fiber-microsphere system", Applied Physics Letters, Vol.89 (2006), No.12, pp.121107/1-3.
【非特許文献2】浅井健志、小西秀典、高島秀聡、藤原英樹、竹内繁樹、笹木敬司、「テーパファイバ結合微小球共振器の共鳴モードにおける光位相シフト」、第17回量子情報技術研究会
【非特許文献3】J.M. Corres, J. Bravo, I.R. Matias and F.J. Arregui, "Tapered Optical Fiber Biosensor for the Detection of Anti-Gliadin Antibodies", Sensors, 2007 IEEE (28-31 Oct. 2007), pp.608-611.
【非特許文献4】Frank Vollmer, Stephen Arnold, "Whispering-gallery-mode biosensing: label-free detection down to single molecules", Nature Methods, Vol.5 (2008), No.7, pp.591-596.
【非特許文献5】D. Grobnic, S.J. Mihailov, Huimin Ding and C.W. Smelser, "Bragg Grating Evanescent Field Sensor Made in BiconicalTapered Fiber With Femtosecond IR Radiation", IEEE Photonics Technology Letters, Vol.18 (2006), No.1, pp.160-162.
【非特許文献6】J. Nishii, K. Kintaka, Y. Kawamoto and M. Takahashi, "Optical waveguide filter fabricated by excimerlaser irradiation", RIKEN Review, No.50 (2003), pp.38-41.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記の通りテーパ光ファイバは、比較的細いテーパ部に光を閉じ込めて、光密度を高めることができる。このテーパ部において光干渉効果を誘起すれば、様々な機能が発現できる。つまり、光反射鏡として作用したり、周波数フィルターとして作用したり、共振器として作用したりする。
【0011】
さらに、テーパ部の直径を小さくするほど(細くするほど)、光密度をより高めることができ、テーパ部表面に強いエバネッセント波を発生させることもできる。この光密度をさらに高めたり、エバネッセント波の強度をさらに高めたりすることができれば、テーパ光ファイバの実用化が広がることが予想され、例えばセンサーとして用いたときに、高感度化を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、テーパ光ファイバのテーパ部の屈折率を、光の伝搬方向に沿って、周期的に変調させれば、光干渉効果を誘起させて種々の機能を発現させることができる、という知見に着目してなされた。例えば、従来のテーパ光ファイバは、光をテーパ部の断面方向にのみ閉じ込めているが;これに対して本発明者は、光の伝搬方向にも光を閉じ込めて、テーパ部での光密度をさらに高めることを検討した。
【0013】
その結果、テーパ部を特異な形状としたり、テーパ部にFBG技術を用いて屈折率を変調させたりすれば、テーパ部で光干渉効果、例えばブラッグ反射が生じて、様々な機能を発現させることができることがわかった。
【0014】
すなわち本発明の第一は、以下に示すテーパ光ファイバに関する。
[1]ファイバの一部の直径が、長手方向に沿って変化するテーパ部を有する光ファイバにおいて、前記テーパ部が、光の干渉効果を誘起するように、光の伝搬方向に沿って周期的に屈折率が変調されている、テーパ光ファイバ。
[2]前記テーパ部の形状が、光の干渉効果を誘起する周期的な構造を有する、[1]に記載のテーパ光ファイバ。
[3]前記テーパ部の片側または両側に、テーパ部に連続するコアとクラッドを含む光ファイバを有する、[1]または[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[4]前記テーパ部の直径が、5μm未満である、[1]〜[3]のいずれかに記載のテーパ光ファイバ。
[5]前記テーパ部の直径が、前記光ファイバを伝搬する光の波長と同程度かそれ以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のテーパ光ファイバ。
[6]前記テーパ光ファイバの材質はガラスである、[1]〜[5]のいずれかに記載のテーパ光ファイバ。
[7]前記周期的な構造が、ファイバの延伸方向に沿って、一定間隔毎にテーパ部の周囲に設けられた畝状の凹凸である、[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[8]前記周期的な構造が、特定範囲の波長を反射する反射鏡として作用する、[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[9]前記周期的な構造が、特定範囲の波長を透過し、かつ他の特定範囲の波長の光を反射する周波数フィルターとして作用する、[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[10]前記周期的な構造中に欠陥部を有し、前記欠陥部において、特定範囲の波長の光の密度を高めることができる、[2]に記載のテーパ光ファイバ。
[11][10]に記載のテーパ光ファイバと、前記欠陥部の近傍に設けられたレーザ媒質とを有する、レーザ発振器。
【0015】
本発明の第2は、以下に示すテーパ光ファイバの製造方法に関する。
[12][2]に記載のテーパ光ファイバを製造する方法であって:コアおよびクラッドを有する光ファイバを用意するステップと;前記光ファイバの一部を加熱溶融して、かつ引き延ばしてテーパ部を形成するステップと;前記テーパ部の形状を加工して、周期構造を形成するステップと、を含む製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のテーパ光ファイバは、テーパ部で光干渉効果が誘起されるので、様々な機能が発現する。例えば、光ファイバを伝搬する特定波長の光を反射する反射鏡となったり、特定波長の光だけを透過させる周波数フィルターになったり、共振器となったりする。
【0017】
さらに、本発明のテーパ光ファイバは、従来のテーパ光ファイバと比較して、テーパ部での光密度を桁違いに高めることができる。しかも、テーパ部は外部に露出しているので、テーパ部表面での強力なエバネッセント波を利用して、種々の応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】通常のテーパ光ファイバの模式図である。
【図2】実施例1〜3のシミュレーションターゲットとした、テーパ光ファイバのテーパ部を示す図である。図2Aは断面図、図2Bは斜視図である。
【図3】テーパ光ファイバのテーパ部の周期構造に欠陥部Xを導入した例を示す図である。
【図4A】周期構造が形成されていないテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである。
【図4B】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(h=50nm)。
【図4C】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(h=60nm)。
【図4D】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(h=100nm)。
【図5A】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(N=300,L=0.18mm)。
【図5B】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(N=500,L=0.3mm)。
【図5C】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(N=1000,L=0.6mm)。
【図6】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=1.0μm)。
【図7】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、モードA1の空間分布を計算した結果を示す図である(d=1.0μm)。
【図8】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=2.0μm)。
【図9】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、モードB1〜B3の空間分布を計算した結果を示す図である(d=2.0μm)。
【図10】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=5.0μm)。
【図11】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、モードC1〜C7の空間分布を計算した結果を示す図である(d=5.0μm)。
【図12】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率を計算した結果を示すグラフである(d=5.0μm,h=100nm)。
【図13】図13Aは、実施例4,5のシミュレーションターゲットとした、テーパ光ファイバのテーパ部を示す図(断面図)であり;図13Bは、図13Aに示されたテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである。
【図14】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=1.0μm,G=900nm)。
【図15】周期構造が形成されているテーパ部をシミュレーションターゲットとして、透過率および反射率を計算した結果を示すグラフである(d=2.0μm,G=900nm)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.本発明のテーパ光ファイバ
本発明のテーパ光ファイバは、テーパ部Aを有し、さらに光入射部Bまたは光出射部B’を有する(図1参照)。光入射部Bまたは光出射部B’は、両方あってもよいし、一方だけであってもよい。テーパ部Aは、光入射部Bおよび光出射部B’よりも、その直径が小さいことを特徴する。本発明のテーパ光ファイバの材質は特に制限されないが、一般的には無機物であり、例えばガラスである。
【0020】
前記の通り、本発明のテーパ光ファイバのテーパ部Aの直径は、他の部分(光入射部Bや光出射部B’を含む)よりも小さければよい。光の干渉効果を誘起させる観点からは、テーパ部Aの直径は、5μm未満が好ましい(実施例3参照)。テーパ部Aの直径が、伝搬させる光の波長よりも大きければ、当該光はマルチモードで伝搬し;伝搬させる光の波長と同程度であるか、またはそれより小さければ、当該光はシングルモードで伝搬する。
【0021】
テーパ部Aの直径が、光ファイバに伝搬させる光の波長よりも短いと、テーパ部表面におけるエバネッセント波が増強される。例えば、光ファイバに1μmの波長を有する光を伝搬させる場合には、テーパ光ファイバのテーパ部の直径を約1μmか、それ以下とすることにより、テーパ部でのエバネッセント波が増強される。さらに、青色レーザ光を伝搬させる場合には、テーパ部の直径を約350nm以下にすれば、テーパ部でのエバネッセント波が増強される。
【0022】
テーパ部Aの直径を、伝搬させる光の波長よりも小さくすることにより、テーパ部の表面に、強力なエバネッセント波1が形成されうる。エバネッセント波とは、通常、テーパ部の表面から1波長程度はみだしている電磁場をいう。
【0023】
テーパ部Aの導波方向の長さは特に限定されないが、数mmとすることも可能である。テーパ部の長さを長くすれば、強力なエバネッセント波が広い領域に形成され、テーパ部の表面に形成されるエバネッセント波を利用しやすくなる。また後述するように、本発明のテーパ光ファイバのテーパ部は、その形状を加工されているので、テーパ部の導波方向の長さを比較的長くして加工容易性を高めることが好ましい。
【0024】
本発明のテーパ光ファイバのテーパ部は、伝搬する光の干渉効果を誘起することが好ましい。光の干渉効果を誘起するとは、特定の光を反射させること、特定の光だけを透過させること、光を閉じ込めること、などの意味を含む。より具体的には、ファイバを伝搬する光をブラッグ反射させたり、ブラッグ反射によって欠陥部に光を閉じ込めたりすることを含む。
【0025】
光の干渉効果を誘起するテーパ部とするには、例えばFBG技術を参照して、テーパ部に光(例えば紫外光)を照射して、テーパ部の屈折率を光伝搬方向に沿って周期的に変調させればよい。光照射によりテーパ部の屈折率を変調させるには、テーパ部のガラス材料を例えばGeO2添加石英ガラスとすればよい。さらに、光ファイバに水素を高圧充填する処理により、10−3程度の屈折率変調を得ることができる。
【0026】
さらには、テーパ部の形状は、伝搬する光の干渉効果を誘起させるような周期的な構造を有していることが好ましく;より具体的には、ブラッグ反射を起こさせるような周期構造を有していることが好ましい。ブラッグ反射させるような形状とは、例えば、光の伝搬方向に関する周期的な構造である。光の伝搬方向に関する周期的な構造とは、伝搬方向に、一定周期毎に、テーパ部の周囲に設けられた畝状の凹凸などでありうる。
【0027】
テーパ部の形状を伝播方向に沿って周期的な構造とすることで、単に非特許文献5にあるような近赤外光照射や、一般にファイバブラッググレーティングの形成で行われるGeO2添加石英ガラスへの紫外線照射などにより、ガラス材料の屈折率を変調した場合と比較すると、光の干渉効果を著しく効率的に生じさせることができることがシミュレーションにより明らかになった。
【0028】
たとえば、同等の反射率や、共振器効果を得るのに必要な繰り返し数を、10分の1以下にすることができる。これは、同等のデバイスサイズでは、より高い反射率や共振器効果を得られるとともに、デバイスの小型化、安定化するために非常に重要である。その理由は、ガラス材料の屈折率を、光照射で変調した場合には、せいぜい10−3程度の屈折率差しか得られないのに対して、テーパ部の形状を伝搬方向に沿って周期的な構造とした場合、その凸部と凹部で、10−2程度の実効的な屈折率差が得られるためである。
【0029】
したがって、テーパ部の形状を伝播方向に沿って周期的な構造とすることで、一般的に行われている手法でテーパ部の屈折率を伝搬方向に沿って変調させるよりも、より大きな光共振効果を得ることができるという利点がある。
【0030】
周期構造の例には、図2A(断面図)および図2B(斜視図)に示されるように、一定周期毎に、テーパ部の周囲を囲むように形成された凹凸Pが含まれる。図2Aおよび図2Bにおけるdは、テーパ部の直径である。前述の通り、テーパ部の直径dは、テーパ部以外のテーパ光ファイバの直径よりも小さければよいが、5μm未満が好ましく、2μm以下が特に好ましい。テーパ部の直径dが5μm以上の場合、テーパ部表面の周期的構造の効果をほとんど発揮させることができない(実施例参照)。一方、テーパ部の直径dが2μm超かつ5μm未満の場合、テーパ部表面の周期的構造の効果を発揮させることはできるものの、マルチモード伝播におけるモード変換などの予測しにくい効果が現れるおそれがある。前述の通り、テーパ部の直径dは、伝搬させる光の波長よりも短くてもよい。
【0031】
周期構造のインターバル(例えば、図2におけるΛ)を調整することにより、反射させる光の波長を制御することができる。Λを小さくすると、波長が短い光をブラッグ反射させることができ;Λを大きくすると、波長が長い光をブラッグ反射させることができる。
【0032】
周期構造の繰り返し数Nと、凹凸Pの大きさ(例えば図2における高さh)を調整することにより、光の反射率を制御することができる。繰り返し数Nを大きくしたり、高さhを大きくすれば、テーパ部でのブラッグ反射による反射率が高まり;繰り返し数Nを小さくしたり、高さhを小さくすれば、テーパ部でのブラッグ反射による反射率が低下する。
【0033】
ブラッグ反射させるようなテーパ部の周期構造は、図2に示される形状に限定されるわけではなく、例えば、凹凸Pがテーパ部の全周を囲まず、周囲の一部だけに形成されていてもよい。
【0034】
さらに、テーパ部の周期構造には、欠陥部が導入されていてもよい。欠陥部とは、周期構造の周期性が乱れた部位をいう。例えば、図3に示されたテーパ部の周期構造には、図2Aに示された周期構造に対して、周期的に形成されるべき凹凸Pがない部分Xがある。この部分Xが、欠陥部Xとなる。ブラッグ反射によって欠陥部Xに光を閉じ込めることができる。つまり、テーパ部のなかでも、特異的に欠陥部Xでの光密度を高めることができる。
【0035】
図1に示されるように、本発明のテーパ光ファイバは、外部から光を入射するための光入射部B、または外部に光を出射するための光出射部B’をも有することが好ましい。光入射部Bおよび光出射部B’は、通常の光ファイバと同様に、コアCおよびクラッドDを有することが好ましく、その直径も100μm以上とすることができる。光の入射および出射を容易にするためである。
【0036】
本発明のテーパ光ファイバは、光入射部Bまたは光出射部B’を、いずれか一方だけでも、両方を有していてもよい。例えば、テーパ部を反射鏡として利用する場合には、光入射部Bだけを有していればよく、光出射部B’を有する必要は必ずしもない。
【0037】
光入射部Bおよび光出射部B’と、テーパ部Aとは、なだらかな形状で接続していることが好ましい。なだらかな形状とすることで、テーパ部Aと光入射部B、およびテーパ部Aと光出射部B’との光接続における損失を低減することができる。なだらかな形状とは、例えば、前述の非特許文献1を参照して適宜設定される。
【0038】
前述の通り、微細な半導体導波路が報告されているが、当該導波路に光を効率的に導くことは困難であった。例えばレンズを介して、微細な半導体導波路に光を導く必要があった。一方で、本発明のテーパ光ファイバは、テーパ部を微細にしたとしても、コア−クラッド構造を有する光入射部Bを介して容易に光を導くことができ、かつ光出射部B’を介して容易に光を取り出すことができる。
【0039】
本発明のテーパ光ファイバのテーパ部は、外部に露出しており;しかも、テーパ部表面のエバネッセント波を増強することができる。一方、前述の通り、FBGにより光ファイバのコア−クラッドの屈折率を変調させた場合には、コアの周囲に存在するクラッドによって、増強されたエバネッセント波を利用しにくかった。これに対して、本発明のテーパ光ファイバのテーパ部は、外部に露出しているので、そこに生じるエバネッセント波を容易に利用することができる。よって、増強されたエバネッセント波を、種々の用途に利用することができる。
【0040】
これらの特徴を活用して、本発明のテーパ光ファイバは種々の用途に用いられうるが、1)センサー、2)レーザ発振器、3)非線形光スイッチ、4)周波数フィルターなどに応用されうる。
【0041】
例えばセンサーとして用いる場合には、テーパ部、特に好ましくはテーパ部の周期構造に導入された欠陥部に、標的分子が吸着すると異なる発光を生じるセンシング分子を付着させればよい。それにより、微量の標的分子の吸着でもセンシング分子の発光が変化するので、高感度検出が可能となる。また、テーパ部の付近に微小共振器を配置して、微小共振器にセンシング分子を付着してもよい。微小共振器にも、強力なエバネッセント波が生じるからである。
【0042】
本発明のテーパ光ファイバをレーザ発振器に応用してもよい。特に、テーパ部の周期的な構造に欠陥を設けて、欠陥の近傍にレーザ媒質を配置する。その欠陥に発生する強力なエバネッセント波とレーザ媒質が結合することにより、非常に微小な構造により、レーザを発振することができる。その場合、共振器モード体積が波長λの3乗程度と極めて小さいため、共振器とレーザ媒質は非常に強く結合し、結果として極めて低い閾値と、入出力変換効率を実現可能である。
【0043】
そのようなレーザ発振器は、光源として用いることはもちろん、その出力や、発信周波数の変化により、テーパ光ファイバのテーパ部周辺の局所的な環境を鋭敏に検出するためのセンサーとしても利用可能である。
【0044】
また、本発明のテーパ光ファイバを非線形光スイッチに応用する場合には、テーパ部を光スイッチの増幅器に適用することで、応答特性を高めることができる。
【0045】
さらに、本発明のテーパ光ファイバは、テーパ部の周期構造でのブラッグ反射を利用して、周波数フィルターとして用いてもよい。
【0046】
本発明のテーパ光ファイバのテーパ部には、光の干渉効果を誘起する部位を2以上有していてもよい。光の干渉効果を誘起する部位のそれぞれに、同一または異なる機能を付与することによって、いくつかの機能を組み合わせて有する新しいデバイスが提供されうる。
【0047】
例えば、両側に通常のシングルモードファイバ部を有するテーパ光ファイバ部に、レーザのポンプ用光を入力する端から順に、ポンプ光用の光を透過しレーザ発振光を反射する波長フィルター;レーザ発振器;レーザのポンプ用の光を反射しレーザ発振光を透過させる波長フィルター、を組み込むことにより、一方の端からポンプ用の光を入射した場合、他端からはレーザ光のみを取り出すことのできるデバイスを構成可能である。
【0048】
同様に、プローブ用の光を透過し信号光を反射するフィルターと;プローブ用の光と共鳴する共振器;プローブ光を反射し信号光を透過するフィルター、を一つのテーパ部に設けることで、一方の端からプローブ光を入射した際に、他方の端からは、共振器によって増幅されたプローブ光によって、測定対象から非常に効率的にとりだされた信号光を、プローブ光の影響を排除した状態で抽出することができるデバイスを実現できる。
【0049】
2.本発明のテーパ光ファイバの製造方法
本発明のテーパ光ファイバは、特に限定されないが、まず、コアとクラッドを有する光ファイバを用意し;その一部を加熱溶融して、かつ引き延ばしてテーパ部を形成し;形成されたテーパ部の形状を、ナノ加工することにより製造されうる。
【0050】
用意する光ファイバは特に限定されないが、例えばガラス製の光ファイバである。シングルモード用の通信用光ファイバであれば、100μm以上の直径を有しうる。
【0051】
ガラス製の光ファイバを用意した場合には、その一部を加熱することで溶融し、かつ引き延ばすことによりテーパ部を形成する。テーパ部の形成は、例えば前記の非特許文献2に記載された知見を参照して行うことができる。
【0052】
テーパ部の形状をナノ加工するには、例えば、
1)集束イオンビーム(FIB)法によって、テーパ部をナノスパッタリングすることによって、所望の形状に加工したり、
2)光リソグラフィ法によって、テーパ部を加工してもよい。つまり、テーパ部にレジスト膜を形成し;レジスト膜を光照射によりパターニングして;パターンにしたがってテーパ部をエッチングすればよい。
【実施例】
【0053】
図2Aに示すようなテーパ部をシミュレーションターゲットとして、EME法により、形成される電磁界をシミュレーションした。専用の導波路解析ソフトウェアであるFIMMWAVE(Photon Design社)を用いて数値計算を行った。
【0054】
EME法とは、導波路を光波の進行方向に対して薄くスライスして分割し;各スライスでの導波路モードを計算し;各構成要素の伝達行列を求めて;それにより電磁界をシミュレーションする方法である。EME法は、光波の進行方向に沿って周期的な構造を有する導波路をターゲットとするシミュレーションに適している。EME法により、シミュレーションターゲットとしてテーパ部全体での、伝搬光の透過率と反射率とを求めた(透過率と反射率との和を1とした)。その際、テーパ部全体をコアとし、周囲の空気をクラッドとし、コアの直径に関わらず10μm×10μmの領域(光波の進行方向に対して垂直な面)をX、Y方向ともに500分割のメッシュで計算した。また、入射光は、HE11のモードとした。
【0055】
図2に示されたテーパ部には、光波の進行方向に沿って、周期的な凹凸Pが形成されている。図2において、dはテーパ部の直径を、hは凹凸Pの高さを、Λは周期のインターバルを、Nは周期構造の繰り返し数を、Lは周期構造が形成されたテーパ部の長さを示す。
【0056】
[実施例1]
まず、テーパ部の直径dを1.0μm、周期のインターバルΛを600nm、周期構造の繰り返し数Nを1000に固定して;凹凸Pの高さhを、0nm(図4A)、50nm(図4B)、60nm(図4C)または100nm(図4D)に設定した。図4B〜図4Dの上のグラフは、伝搬光の波長(横軸)と、伝搬光の透過率または反射率(透過率と反射率の和を1とする)を示し;下のグラフは、上のグラフの透過率と反射率を対数化して示している。
【0057】
図4Aに示されるように、凹凸Pを設けない、つまり周期構造を形成しなかった場合には、いずれの波長においても反射が起こっていない、つまり透過率が1であることがわかる。一方、図4B〜図4Dに示されるように、凹凸Pを設ける、つまり周期構造を形成した場合には、1500nm付近の波長の光が反射され、つまり透過しなくなっていることがわかる。さらに、凹凸Pの高さhが大きくなるほど、反射する光の波長の幅が広がっていくことがわかる。また、反射部における最小透過率は、それぞれ4×10−4、1×10−4、6×10−6と減少し、高さhが大きくなるほど、より良好な減衰が得られている。
【0058】
一方、凹凸Pを設けない状況で、光誘起で得られる典型的な屈折率変調(10−3)を同様のインターバル、繰り返し数で与えた場合についてシミュレーションを行ったところ、これらのような良好な反射特性は得られなかった。そのため、凹凸Pを付与した場合について、伝搬モードの実効屈折率について検討したところ、10−2程度というきわめて大きな変調が得られていることが分かった。
【0059】
[実施例2]
次に、テーパ部の直径dを1.0μm、凹凸Pの高さhを50nm、周期のインターバルΛを600nmに固定し;周期構造の繰り返し数Nを、300(図5A)、500(図5B)または1000(図5C)に設定した。図5A〜Cの上のグラフは、伝搬光の波長(横軸)と、伝搬光の透過率または反射率(透過率と反射率の和を1とする)を示し;下のグラフは、上のグラフの透過率と反射率を対数化して示している。
【0060】
図5A〜図5Cに示されるように、いずれの場合も1500nmの波長の光の少なくとも一部を反射しており、透過していないことがわかる。さらに、繰り返し数Nが大きくなるほど、反射率が向上していくことがわかる。つまり、繰り返し数Nが300の場合には、反射率の最大ピークが約0.8(図5Aの上グラフ参照)であり;繰り返し数Nが500の場合には、反射率の最大ピークが約0.95(図5Bの上グラフ参照)であり;繰り返し数Nが1000の場合には、反射率の最大ピークが1に達している(図5Cの上グラフ参照)。
【0061】
[実施例3]
次に、凹凸Pの高さhを50nm、周期のインターバルΛを600nm、周期構造の繰り返し数Nを1000に固定し;テーパ部の直径dを、1.0μm、2.0μmまたは5.0μmに設定した。
【0062】
図6は、テーパ部の直径dを1.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである(図4Bと同じグラフ)。また、図7は、テーパ部の直径dを1.0μmとしたときの計算結果から得られた空間モード(モードA1)の空間分布を示す図である。図6Aのグラフは、伝搬光の波長(横軸)と伝搬光の透過率または反射率(透過率と反射率の和を1とする)を示す。図6Bのグラフは、図6Aのグラフの透過率と反射率を対数化して示している。
【0063】
図8は、テーパ部の直径dを2.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである。また、図9は、テーパ部の直径dを2.0μmとしたときの計算結果から得られた空間モード(モードB1〜B3)の空間分布を示す図である。図8AはモードB1の透過率と反射率の計算結果、図8BはモードB2の透過率と反射率の計算結果、図8CはモードB3の透過率と反射率の計算結果を示す。図9AはモードB1の空間分布、図9BはモードB2の空間分布、図9CはモードB3の空間分布を示す。
【0064】
図8Aに示されるように、モードB1の透過率を参照すると、1496nm付近および1505nm付近に2つの急峻な透過率低下部(ディップ)が認められるが、モードB1の反射率を参照すると、これら2つのディップに対応する反射成分はほとんど認められない(0.01以下)。一方、図8B、図8Cに示されるように、モードB2およびモードB3では、透過率が非常に小さいにも係わらず、大きな反射成分が認められる。これらのことから、1496nm近辺のモードB1の光は、モードB3から反射され、1505nm近辺のモードB1の光は、モードB2から反射されると考えられる。
【0065】
図10は、テーパ部の直径dを5.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである。また、図11は、テーパ部の直径dを5.0μmとしたときの計算結果から得られた空間モード(モードC1〜C7)の空間分布を示す図である。図10AはモードC1の透過率の計算結果、図10BはモードC2〜C5それぞれの透過率の計算結果、図10CはモードC1〜C5それぞれの反射率の計算結果を示す。図11AはモードC1の空間分布、図11BはモードC2の空間分布、図11CはモードC3の空間分布、図11DはモードC4の空間分布、図11EはモードC5の空間分布、図11FはモードC6の空間分布、図11GはモードC7の空間分布を示す。
【0066】
図10A〜Cから、入射光はモードC1でほとんど伝わり、他のモードへの結合もほとんどないことがわかる。また、透過率の低下部(1492nm付近)においても、透過率は0.999以上であり、テーパ部の直径dが1.0μmまたは2.0μmのときに見られたような、透過率が0.1以下になるようなディップはまったく認められない。すなわち、テーパ部(コア)の直径dを5μmまで拡大すると、FBGとしての機能がほとんど失われてしまうことがわかる。
【0067】
一方、図12は、図10と同じ条件(Λ=600nm、N=1000、d=5.0μm)で凹凸Pの高さhを100nmとしたときのモードD1(モードC1と同様の空間分布)の透過率の計算結果を示すグラフである。
【0068】
図12から、凹凸Pの高さhを高くすることで、FBG構造による光のブロッキングがわずかに大きくなることがわかる。しかしながら、透過率の低下部(1492nm前後)においても、透過率は0.99以上であり、テーパ部の直径dが1.0μmまたは2.0μmのときに見られたような、透過率が0.1以下になるようなディップはまったく認められない。すなわち、テーパ部(コア)の直径dを5μmまで拡大すると、FBGとしての機能がほとんど失われてしまうことがわかる。これは、ファイバの最低次モード(C1およびD1)がほとんどテーパ部からしみ出すことなく、ガラス内部に閉じこめられたまま伝搬しており、ガラス表面に形成した変調構造の影響を受けにくいためと考えられる。
【0069】
[実施例4]
図13Aに示すようなテーパ部をシミュレーションターゲットとして、実施例1〜3と同様にして、シミュレーションした。図13Aに示されるターゲットは、直径dを1.0μm、周期のインターバルΛを600nm、周期構造の繰り返し数Nを400、凹凸Pの高さhを50nmとしたテーパを2つ、接続部G900nmを介して接続しているテーパ部である。つまり、接続部Gに欠陥が導入されており、Λの半周期分の300nm(=G−Λ)のギャップ幅が設けられている。
【0070】
図13Bに示される通り、反射スペクトルと透過スペクトルとに注目すると、波長領域1496nm〜1502nmは反射領域(ストップバンド)であるが、その領域のうち非常に狭い線幅(中心波長1499nm)において、反射率が低下して、透過率が高まっていることがわかる。このように、共振器として動作していることが確認された。共振器のQ値は、約104倍に達しているので、電場(エバネッセント波)強度も約10000倍に増大していることが示唆される。
【0071】
凹凸Pの高さhを大きくしたり、繰り返し数Nを増やしたりすることで、Q値をさらに増大させることもできる。
【0072】
[実施例5]
次に、図13Aに示すようなテーパ部において、凹凸Pの高さhを50nm、周期のインターバルΛを600nm、各テーパにおける周期構造の繰り返し数Nを400、接続部Gを900nm(ギャップ幅300nm)に固定し;テーパ部の直径dを、1.0μmまたは2.0μmに設定した。
【0073】
図14は、テーパ部の直径dを1.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである(図13Bと同じグラフ)。
【0074】
図15は、テーパ部の直径dを2.0μmとしたときの透過率と反射率の計算結果を示すグラフである。図15AはモードE1の透過率とモードE3の反射率の計算結果、図15BはモードE2,E3の透過率とモードE1,E2の反射率の計算結果を示す。
【0075】
図15Aに示されるように、モードE1の透過率を参照すると、2つの吸収ピークが認められ、モードE3の反射率を参照すると、これら2つの吸収ピークに対応すると思われる反射成分が認められる。一方、図15Bに示されるように、モードE2,E3の透過率およびモードE1,E2の反射率は、非常に小さかった。これらのことから、テーパ部(コア)の直径dを2.0μmと拡大した場合、モードE1で入射してきた光は、キャビティ内で閉じ込められた後にモードE3となって反射されると考えられる。
【0076】
このように、テーパ光ファイバのテーパ部に周期構造を設けることにより、伝搬光をブラッグ反射させることができる。よって、テーパ部での光密度をより高めることができる。さらに、テーパ部の周期構造に欠陥を導入すれば、欠陥部の光密度が位置選択的に高まる。
【0077】
テーパ部の周期構造の調整により、反射率、反射させる光の波長領域をも制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のテーパ光ファイバは、例えば、センサー、レーザ発振器、非線形光スイッチ、周波数フィルターなどとして利用されうる。
【符号の説明】
【0079】
A テーパ部
B 光入射部
B’ 光出射部
C コア
D クラッド
1 エバネッセント波
d テーパ部の直径
Λ 周期のインターバル
P 凹凸
h 凹凸Pの高さ
X 欠陥部
G 接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバの一部の直径が、長手方向に沿って変化するテーパ部を有するテーパ光ファイバにおいて、
前記テーパ部が、光の干渉効果を誘起するように、光の伝搬方向に沿って周期的に屈折率が変調されている、テーパ光ファイバ。
【請求項2】
前記テーパ部の形状が、光の干渉効果を誘起する周期的な構造を有する、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項3】
前記テーパ部の片側または両側に、テーパ部に連続するコアとクラッドを含む光ファイバを有する、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項4】
前記テーパ部の直径が、5μm未満である、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項5】
前記テーパ部の直径が、前記光ファイバを伝搬する光の波長と同程度かそれ以下である、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項6】
前記テーパ光ファイバの材質はガラスである、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項7】
前記周期的な構造が、ファイバの延伸方向に沿って、一定間隔毎にテーパ部の周囲に設けられた畝状の凹凸である、請求項2に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項8】
前記周期的な構造が、特定範囲の波長を反射する反射鏡として作用する、請求項2に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項9】
前記周期的な構造が、特定範囲の波長を透過し、かつ他の特定範囲の波長の光を反射する周波数フィルターとして作用する、請求項2に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項10】
前記周期的な構造中に欠陥部を有し、
前記欠陥部において、特定範囲の波長の光の密度を高めることができる、請求項2に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項11】
請求項10に記載のテーパ光ファイバと、前記欠陥部の近傍に設けられたレーザ媒質とを有する、レーザ発振器。
【請求項12】
請求項2に記載のテーパ光ファイバを製造する方法であって、
コアおよびクラッドを有する光ファイバを用意するステップと、
前記光ファイバの一部を加熱溶融して、かつ引き延ばしてテーパ部を形成するステップと、
前記テーパ部の形状を加工して、周期構造を形成するステップと、を含む製造方法。
【請求項1】
ファイバの一部の直径が、長手方向に沿って変化するテーパ部を有するテーパ光ファイバにおいて、
前記テーパ部が、光の干渉効果を誘起するように、光の伝搬方向に沿って周期的に屈折率が変調されている、テーパ光ファイバ。
【請求項2】
前記テーパ部の形状が、光の干渉効果を誘起する周期的な構造を有する、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項3】
前記テーパ部の片側または両側に、テーパ部に連続するコアとクラッドを含む光ファイバを有する、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項4】
前記テーパ部の直径が、5μm未満である、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項5】
前記テーパ部の直径が、前記光ファイバを伝搬する光の波長と同程度かそれ以下である、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項6】
前記テーパ光ファイバの材質はガラスである、請求項1に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項7】
前記周期的な構造が、ファイバの延伸方向に沿って、一定間隔毎にテーパ部の周囲に設けられた畝状の凹凸である、請求項2に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項8】
前記周期的な構造が、特定範囲の波長を反射する反射鏡として作用する、請求項2に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項9】
前記周期的な構造が、特定範囲の波長を透過し、かつ他の特定範囲の波長の光を反射する周波数フィルターとして作用する、請求項2に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項10】
前記周期的な構造中に欠陥部を有し、
前記欠陥部において、特定範囲の波長の光の密度を高めることができる、請求項2に記載のテーパ光ファイバ。
【請求項11】
請求項10に記載のテーパ光ファイバと、前記欠陥部の近傍に設けられたレーザ媒質とを有する、レーザ発振器。
【請求項12】
請求項2に記載のテーパ光ファイバを製造する方法であって、
コアおよびクラッドを有する光ファイバを用意するステップと、
前記光ファイバの一部を加熱溶融して、かつ引き延ばしてテーパ部を形成するステップと、
前記テーパ部の形状を加工して、周期構造を形成するステップと、を含む製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図7】
【図9】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図7】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2010−211192(P2010−211192A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15814(P2010−15814)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第19回量子情報技術研究会(平成20年11月20日〜21日開催、社団法人電子情報通信学会 量子情報技術時限研究専門委員会)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、光子間の高効率固体量子位相ゲート素子の実現に関する研究、委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第19回量子情報技術研究会(平成20年11月20日〜21日開催、社団法人電子情報通信学会 量子情報技術時限研究専門委員会)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、光子間の高効率固体量子位相ゲート素子の実現に関する研究、委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
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