説明

テーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置

【課題】動作時間が不定な補助機能を実行することによってサイクルタイムが延びることを防止することが可能なテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置を提供すること。
【解決手段】自己のパステーブルの基準となる値Lを読み(SA01)、自己のパステーブルから基準となる値Lに近い次の指令基準値のデータを読み出し(SA02)、自己のパステーブルに指令基準値があるか否か判断し(SA03)、指令基準値がある場合には、基準となる値Lが指令基準値に到達したか否か判断し(SA04)、到達した場合には、他のパステーブルとの待ち合せ指令があるか否か判断し(SA05)、ある場合には基準となる値Lのカウントを停止し(SA06)、他のパステーブルとの待ち合わせは完了したか否か判断し(SA07)、完了した場合には基準となる値Lのカウントの停止を解除し(SA08)、他のパステーブルとの待ち合わせがない場合とともに指令を実行する(SA09)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を制御する数値制御装置に関する。特に、テーブル形式で記憶されたデータに基づいて各軸を駆動制御する機能を有する数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NCプログラムのブロックによる指令ではなく、時間、主軸位置、あるいは送り軸位置を基準にした軸の位置を設定したテーブル形式データ(パステーブル)をメモリに格納しておき、テーブル形式データ(パステーブル)を順次読み出しながら各軸を駆動する機能(パステーブル運転機能)を備えた数値制御装置が公知である(特許文献1,特許文献2)。これにより、加工プログラムのブロックによる指令にとらわれない自由な工具の動作が可能となり、加工時間の短縮や、加工の高精度化を実現できる。
【0003】
図10および図11は特許文献2に開示されるパステーブル運転のブロック図およびパステーブルの例を示す図である。図10に示されているパステーブル運転を行う数値制御装置は、基準値カウンタ1、X軸用パステーブルTx、Z軸用パステーブルTz、X軸パステーブル補間処理部4x、Z軸パステーブル補間処理部4z、送り軸のX軸用のモータ5x、Z軸用のモータ5zを備えている。図11(b)のパステーブルはX軸用のパステーブルTxの例を示すものであり、時間、主軸位置あるいは送り軸位置に対してX軸の位置が記憶されている。図11(a)のグラフは、図11(b)のパステーブルTxに基づいて移動したX軸の位置を示すグラフである。
【0004】
また、テーブル形式データによる運転において、複数ある系統毎に独自の基準を具備し、それぞれの系統の基準を用いてそれぞれの系統に属したテーブル形式データを運転する機能、および、複数系統のテーブル形式データの運転を待ち合せる技術が特許文献3に開示されている。
図12は特許文献3に開示されるパステーブル運転のブロック図であり、図13は2つの系統でパステーブル運転を待ち合わせる場合のパステーブルの例を示す図である。図12に示されているパステーブル運転を行う数値制御装置は2つの系統を備えている。系統1、系統2毎にそれぞれ、系統1X軸パステーブルT1x,系統2Z軸パステーブルT2z、基準値カウンタ1(3−1),基準値カウンタ2(3−2)、系統1X軸パステーブル補間処理部(4−1x),系統2Z軸パステーブル補間処理部(4−2z)、系統1X軸用モータ(5−1x),系統2Z軸用モータ(5−2z)を備えている。図13(a)は系統1のX軸パステーブル、図13(b)は系統2のZ軸パステーブルである。系統1のX軸と系統2のZ軸とは、基準時間(または位置)において系統待ち合せ指令P12により待ち合せが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−177604号公報
【特許文献2】特開2003−303005号公報
【特許文献3】特開2006−302208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テーブル形式データによる運転(パステーブル運転)では、プログラム経路の各点を通過する時刻をテーブル形式データにより指定することで、全ての軸が基準となる時間に同期して動作する。同様に、主軸に対する指令や補助機能指令を出力する時刻をテーブル形式データにより指定することで、全ての主軸指令や補助機能指令も基準となる時間に同期して出力される。従来のテーブル形式データによる運転では、系統内の全ての軸と主軸と補助機能は同期して動作することを想定されていたため、基準となる時間は系統内で共通であった(図10参照)。
【0007】
補助機能により油圧や空圧を用いたアクチュエータなどの外部機器を制御する場合、補助機能を出力してから該外部機器の動作が完了するまでの時間が不定となる場合がある。テーブル形式データによる運転において、動作時間が不定な補助機能を実行すると同時に、主軸または送り軸を駆動させる場合、以下の2つの方法がある。
1)補助機能の最大動作時間に余裕時間を加算した補助機能のテーブル形式データと、主軸または送り軸のテーブル形式データを、メモリから順次読み出しながら、補助機能を実行し、主軸と送り軸を駆動させる(図14,図15参照)。
2)補助機能の実行開始から終了までの間、基準のカウントを停止させ、その間は主軸と送り軸も停止させる(図16,図17参照)。
【0008】
上記1)の方法の場合、補助機能の最大動作時間に余裕時間を加算していることにより、補助機能のテーブル形式データは実際の動作時間より長くなるため、サイクルタイムが延びてしまう問題がある。図14に示されるパステーブル番号1000のパステーブルにより運転を行う場合、図15に示されるようにL2.0で指令された動作時間の不定な補助機能M1234の最大動作時間と余裕時間を加算した時間がL2.0〜L7.0であるため、たとえ、L5.0でM1234が完了した場合であっても、次回の補助機能であるM2345はL8.0まで出力できない。
【0009】
上記2)の方法の場合、基準のカウントを停止させている間は、送り軸と主軸を駆動できないため、補助機能の実行中に加工や加工準備を行うことができず、サイクルタイムが延びてしまう問題がある。図16に示されるパステーブル番号2000のパステーブルによる運転を行う場合、L2.0で指令された動作時間の不定な補助機能M1234が完了するまで基準となる時間のカウントが停止されるため、送り軸や主軸の動作もその間停止する(図17参照)。
【0010】
そこで、本発明の目的は、動作時間が不定な補助機能を実行することによってサイクルタイムが延びることを防止することが可能なテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係る発明は、基準となる時間、主軸あるいは送り軸の位置と、該基準となる主軸あるいは送り軸とは別の主軸あるいは送り軸の位置あるいは補助機能の出力を対応させたテーブル形式データを、前記基準となる主軸あるいは送り軸とは別の主軸毎あるいは送り軸毎あるいは補助機能毎にメモリに格納しておき、前記基準となる時間、主軸あるいは送り軸の位置を基準値カウンタに入力し、該基準値カウンタの値に同期して前記基準となる主軸あるいは送り軸とは別の主軸あるいは送り軸の位置あるいは補助機能の出力を順次読み出しながら、該別の主軸あるいは送り軸の位置あるいは補助機能を制御するテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置において、前記基準となる主軸あるいは送り軸とは別の主軸毎あるいは送り軸毎あるいは補助機能毎にそれぞれ基準値カウンタを備え、該各基準値カウンタの値に基づいて前記各テーブル形式データを実行することを特徴とするテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置である。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記基準値カウンタを、それぞれ独自にリセットするリセット部と、前記基準カウンタをそれぞれ独自に停止および再開する停止・再開部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置である。
請求項3に係る発明は、前記基準値カウンタを、主軸毎あるいは送り軸毎あるいは補助機能毎に任意に選択する基準値カウンタ選択部を備えたことを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置である。
請求項4に係る発明は、主軸毎のテーブル形式データあるいは送り軸毎のテーブル形式データあるいは補助機能毎のテーブル形式データは、他のテーブル形式データに基づく運転を待ち合わせる待ち合わせコードを含むことを特徴とする請求項1または3のいずれか1つに記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置である。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記待ち合わせコードは、どのテーブル形式データと待ち合わせるかの情報を含むことを特徴とする請求項4に記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置である。
請求項6に係る発明は、前記待ち合わせるテーブル形式データは、系統間のものであることを特徴とする請求項4または5のいずれか1つに記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置である。
請求項7に係る発明は、前記待ち合わせるテーブル形式データは、系統内のものであることを特徴とする請求項4または5のいずれか1つに記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、動作時間が不定な補助機能を実行することによってサイクルタイムが延びることを防止することが可能なテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置を提供できる。換言すれば、本発明により、動作時間が不定な補助機能の実行開始で補助機能の基準のカウントを停止させ補助機能の実行終了で補助機能の基準のカウントを再開させる間、主軸と送り軸はそれぞれ独自の基準に基づいてテーブル形式データを実行できるので、従来のテーブル形式データによる運転に比較してサイクルタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るテーブル形式データ(パステーブル)による運転の概要を説明するブロック図である。
【図2】3系統システムでのテーブル形式データ(パステーブル)による運転の概要を説明するブロック図である。
【図3】1系統システムでの系統内の待ち合わせを含む、本発明に係るテーブル形式データ(パステーブル)による運転を行うパステーブルを説明する図である。
【図4】図3に示されるテーブル形式データ(パステーブル)を運転した場合の結果を説明する図である。
【図5】3系統システムでの系統間の待ち合わせを含む、本発明に係るテーブル形式データ(パステーブル)による運転を行うパステーブルを説明する図である。
【図6】図5に示されるテーブル形式データ(パステーブル)を運転した場合の結果を説明する図である。
【図7】本発明に係る補助機能のテーブル形式データ(パステーブル)による運転処理のフローチャートである。
【図8】本発明に係る主軸あるいは送り軸のテーブル形式データ(パステーブル)による運転処理のフローチャートである。
【図9】本発明に係るパステーブル運転を行う数値制御装置の要部ブロック図である。
【図10】特許文献2に開示されるテーブル形式データ(パステーブル)による運転の概要を説明するブロック図である。
【図11】テーブル形式データ(パステーブル)の例を示す図である。
【図12】特許文献3に開示されるテーブル形式データ(パステーブル)による運転の概要を説明するブロック図である。
【図13】2つの系統でテーブル形式データ(パステーブル)による運転を待ち合わせる場合のテーブル形式データ(パステーブル)の例を示す図である。
【図14】従来の方法1によりテーブル形式データ(パステーブル)による運転を行うパステーブルを説明する図である。
【図15】図14に示されるテーブル形式データ(パステーブル)を運転した場合の結果を説明する図である。
【図16】従来の方法2によりテーブル形式データ(パステーブル)による運転を行うパステーブルを説明する図である。
【図17】図16に示されるテーブル形式データ(パステーブル)を運転した場合の結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
本発明は、テーブル形式データ(パステーブル)による運転において、主軸や送り軸や補助機能といったテーブル形式データ(パステーブル)毎に独自の基準を持たせることにより、より柔軟な制御を可能とし、サイクルタイムの短縮を実現するものである。本発明では、動作時間が不定な補助機能が実行中の間、補助機能のテーブル形式データのみ基準のカウントを停止させ、送り軸や主軸のテーブル形式データの基準のカウントは継続して行う手段を持つ。その結果、テーブル形式データ毎に基準がずれることが考えられるが、送り軸毎のテーブル形式データ、主軸毎のテーブル形式データ、補助機能毎のテーブル形式データの運転を待ち合わせる手段を持つため、必要に応じて動作の同期を取ることができる。
【0017】
図1は本発明に係るテーブル形式データ(パステーブル)による運転の概要を説明する図である。図1に示される本発明の実施形態の数値制御装置は、時間あるいは主軸位置あるいは送り軸位置をそれぞれ独立してカウントする第1基準値カウンタ3a、第2基準値カウンタ3b、第3基準値カウンタ3c、X軸パステーブルTx,主軸パステーブルTs,補助機能パステーブルTm、X軸パステーブル補間処理部4x,主軸パステーブル補間処理部4s,補助機能パステーブル出力処理部4m、X軸用モータ5x,主軸用モータ5sを備えている。第1基準値カウンタ3a,第2基準値カウンタ3b,第3基準値カウンタ3cは、数値制御装置が有する計時機能からの信号、あるいは、各送り軸や主軸に取り付けられた位置検出器からの位置検出信号をカウントする。そして、第1基準値カウンタ3a,第2基準値カウンタ3b,第3基準値カウンタ3cは、それぞれ、カウントのリセット信号を受けるとカウント値を初期値に戻され、停止信号を受けるとカウント値の更新を停止し、再開信号を受けるとカウント値の更新を再開する。
【0018】
本発明の実施形態は、第1基準値カウンタ3a,第2基準値カウンタ3b,第3基準値カウンタ3cからの基準値を任意に切り換えて選択するための切り換えスイッチ6a,6b,6cを備えている。例えば、X軸用パステーブルTxを第1基準値カウンタ3a,主軸パステーブルTsを第2基準値カウンタ3b,補助機能パステーブルTmを第3基準値カウンタ3cからの基準値にしたがってパステーブル運転できる。あるいは、切り換えスイッチ6a,6b,6cの設定により、全てのパステーブルTx,Ts,Tmを基準値カウンタ3aからの基準値にしたがってパステーブル運転できる。
【0019】
図2は、3系統システムでのテーブル形式データ(パステーブル)による運転の概要を説明するブロック図である。図2に示される本発明の実施形態の数値制御装置は、時間あるいは主軸位置あるいは送り軸位置をそれぞれ独立してカウントする第1基準値カウンタ3a、第2基準値カウンタ3b、第3基準値カウンタ3c、系統1のX軸パステーブルT1x,系統2の主軸パステーブルT2s,系統3の補助機能パステーブルT3m、系統1のX軸パステーブル補間処理部4−1x,系統2の主軸パステーブル補間処理部4−2s,系統3の補助機能パステーブル出力処理部4−3m、系統1のX軸用モータ5−1x,主軸用モータ5−2sを備えている。第1基準値カウンタ3a,第2基準値カウンタ3b,第3基準値カウンタ3cは、数値制御装置が有する計時機能からの信号、あるいは、各送り軸や主軸に取り付けられた位置検出器からの位置検出信号をカウントする。そして、第1基準値カウンタ3a,第2基準値カウンタ3b,第3基準値カウンタ3cは、それぞれ、カウントのリセット信号を受けるとカウント値を初期値に戻され、停止信号を受けるとカウント値の更新を停止し、再開信号を受けるとカウント値の更新を再開する。
【0020】
本発明の実施形態は、第1基準値カウンタ3a,第2基準値カウンタ3b,第3基準値カウンタ3cからの基準値を任意に切り換えて選択するための切り換えスイッチ6a,6b,6cを備えている。例えば、1系統のX軸用パステーブルT1xを第1基準値カウンタ3a,系統2の主軸パステーブルT2sを第2基準値カウンタ3b,系統3の補助機能パステーブルT3mを第3基準値カウンタ3cからの基準値にしたがってパステーブル運転できる。あるいは、切り換えスイッチ6a,6b,6cの設定により、全てのパステーブルT1x,T2s,T3mを基準値カウンタ3aからの基準値にしたがってパステーブル運転できる。
【0021】
<系統内の待ち合せの実施形態>
図3は、1系統システムでの系統内の待ち合わせを含む、本発明に係るテーブル形式データ(パステーブル)による運転を行うテーブル形式データ(パステーブル)を説明する図である。ここでは基準値を時間による基準値としている。図3に示されるように、テーブル形式データ毎に独自の基準となる時間を持つ。
補助機能はL2.0で動作時間の不定な補助機能M1234を出力した後、基準となる時間のカウントを停止する。X軸と主軸Sの基準となる時間は独自であるため、補助機能の基準となる時間が停止している影響を受けることなく動作可能である。動作時間の不定な補助機能M1234が完了した後は、必要に応じて待ち合せ指令WAIT(X,S,M)を指令することにより、X軸と主軸Sと補助機能との間で動作の同期を取ることができる。待ち合せ完了後は、X軸と主軸Sの基準となる時間はL5.0から開始され、それと同時に補助機能の基準となる時間はL3.0から開始される。
【0022】
図4は、図3に示されるテーブル形式データ(パステーブル)を運転した場合の結果を説明する図である。本発明の、X軸(送り軸),主軸S,補助機能のパステーブルを運転した場合、X軸と主軸SはL5.0で待ち合せ指令(WAIT(X,S,M))により補助機能との待ち合せを行い、X軸,主軸S,補助機能の間で動作の同期がなされている。(WAIT(X,S,M))では、系統内のX軸,主軸S,補助機能の間で待ち合わせることを指定している。補助機能のパステーブルTmの運転に用いられる基準となる時間はM1234の完了まで停止する。その間も、X軸のパステーブルTx,主軸SのパステーブルTsの運転に用いられる基準となる時間はカウントを続けているので、X軸と主軸Sは動作可能である。
【0023】
<系統間の待ち合せの実施形態>
図5は、3系統システムでの系統間の待ち合わせを含む、本発明に係るテーブル形式データ(パステーブル)による運転を行うパステーブルを説明する図である。系統1〜3のパステーブル運転では、系統1のX軸のパステーブルT1x,系統2の主軸SのパステーブルT2sのL5.0で待ち合せ指令(WAIT(P1X,P2S,P3M))が指令され、系統3のパステーブルT3mのL3.0で待ち合せ指令(WAIT(P1X,P2S,P3M))が指令される。待ち合せ指令(WAIT(P1X,P2S,P3M))は、どの系統のどのテーブル形式データと待ち合わせるかを指定している。WAIT(P1X,P2S,P3M)では、系統1のX軸のパステーブル、系統2の主軸Sのパステーブル、系統3の補助機能のパステーブルの間で待ち合せを行うことを指定している。なお、ここでは、3系統として説明しているが、2系統あるいは4系統、それ以上の系統も同様に、テーブル形式データ毎に独自の基準となる基準値(ここでは、基準となる時間)を備える構成とすることも本発明に含まれる。
【0024】
図6は、図5に示されるテーブル形式データ(パステーブル)を運転した場合の結果を説明する図である。図3に示されるように、テーブル形式データ毎に独自の基準となる時間を持つ。系統3の補助機能はL2.0で動作時間の不定な補助機能M1234を出力した後、基準となる時間のカウントを停止する。系統1のX軸と系統2の主軸Sの基準となる時間は独自であるため、補助機能の基準となる時間が停止している影響を受けることなく動作可能である。動作時間の不定な補助機能M1234が完了した後は、必要に応じて待ち合せ指令WAIT(P1X,P2S,P3M)を指令することにより、X軸と主軸Sと補助機能との間で動作の同期を取ることができる。待ち合せ完了後は、X軸と主軸Sの基準となる時間はL5.0から開始され、それと同時に補助機能の基準となる時間はL3.0から開始される。
【0025】
図7は、本発明に係るテーブル形式データ(パステーブル)による運転処理のフローチャートである。なお、このフローチャートは自系統内での待ち合せ、および、他系統との待ち合せにおける処理を説明するものである。ここでは、テーブル形式データ(パステーブル)が補助機能のパステーブルによる運転処理のフローチャートである。以下、各ステップにしたがって説明する。
●[ステップSA01]自己のパステーブルの基準となる値Lを読む。
●[ステップSA02]自己のパステーブルから基準となる値Lに近い次の指令基準値のデータを読み出す。
●[ステップSA03]自己のパステーブルに指令基準値があるか否か判断し、指令基準値がある場合にはステップSA04へ移行し、無い場合には処理を終了する。
●[ステップSA04]基準となる値Lが指令基準値に到達したか否か判断し、到達した場合にはステップSA05へ移行し、到達していない場合にはステップSA01に戻り処理を継続する。
●[ステップSA05]他のパステーブルとの待ち合せ指令があるか否か判断し、ある場合にはステップSA06へ移行し、ない場合にはステップSA09へ移行する。
●[ステップSA06]基準となる値Lのカウントを停止する。
●[ステップSA07]他のパステーブルとの待ち合わせは完了したか否か判断し、完了した場合にはステップSA08へ移行し、完了していない場合には待ち合わせが完了するまで待つ。
●[ステップSA08]基準となる値Lのカウントの停止を解除する。
●[ステップSA09](補助機能の)指令を実行し、ステップSA01へ戻り、処理を継続する。
【0026】
図8は、本発明に係るテーブル形式データ(パステーブル)による運転処理のフローチャートである。なお、このフローチャートは自系統内での待ち合せ、および、他系統との待ち合せにおける処理を説明するものである。
●[ステップSB01]自己のパステーブルの基準となる値Lを読む。
●[ステップSB02]自己のパステーブルから基準となる値Lに近い次の指令基準値のデータを読み出す。
●[ステップSB03]自己のパステーブルに指令基準値があるか否か判断し、指令基準値がある場合にはステップSB04へ移行し、無い場合には処理を終了する。
●[ステップSB04]他のパステーブルとの待ち合せ指令があるか否か判断し、ある場合にはステップSB05へ移行し、ない場合にはステップSB08へ移行する。
●[ステップSB05]基準となる値Lのカウントを停止する。
●[ステップSB06]他のパステーブルとの待ち合わせは完了したか否か判断し、完了した場合にはステップSB07へ移行し、完了していない場合には待ち合わせが完了するまで待つ。
●[ステップSB07]基準となる値Lのカウントの停止を解除する。
●[ステップSB08]補間処理して移動指令を出力する。
●[ステップSB09]自己のパステーブルの基準となる値Lを読む。
●[ステップSB10]ステップSB09で読み込んだ基準となる値LがステップSB02で読み込んだ指令基準値に到達したか否か判断し、到達していなければステップSB08へ戻り処理を継続し、到達していればステップSB02に戻り処理を継続する。
【0027】
図9は、本発明に係るパステーブル運転を行う一実施形態の数値制御装置の要部ブロック図である。CPU11は数値制御装置10を全体的に制御するプロセッサである。CPU11はROM12に格納されたシステムプログラムをバス20を介して読み出し、該システムプログラムに従って数値制御装置10の全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ及び表示器/MDIユニット70を介してオペレータが入力した各種データが格納される。SRAM14は図示しないバッテリでバックアップされ、数値制御装置10の電源がオフされても記憶装置が保持される不揮発性メモリとして構成される。SRAM14中には、インタフェース15を介して読み込まれた加工プログラムや表示器/MDIユニット70を介して入力された加工プログラム等が記憶される。さらに、前述した各テーブル形式データ(パステーブル)が予め格納されている。また、ROM12には、加工プログラムの作成及び編集処理を実施するための各種システムプログラムが予め書き込まれている。
【0028】
インタフェース15は、数値制御装置10と図示しないアダプタ等の外部機器との接続を可能とするものである。また、数値制御装置10内で編集した加工プログラムは、外部機器を介して外部記憶装置に記憶させることができる。PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)16は、数値制御装置10内に内蔵されたシーケンスプログラムで工作機械のアクチュエータ等の補助装置にI/Oユニット17を介して信号を出力し制御する。また、工作機械の本体に設けられた操作盤の各種スイッチ等からの信号を受け、必要な信号処理を行った後、CPU11に渡す。
表示器/MDIユニット70はディスプレイやキーボード等を備えた手動データ入力装置であり、インタフェース18は表示器/MDIユニット70のキーボードからの指令、データを受け入れてCPU11に渡す。インタフェース19は操作盤71に接続され、操作盤71からの各種指令を受け取るようになっている。
【0029】
各送り軸の軸制御回路30,31はCPU11からの各送り軸の移動指令を受けて、各送り軸の指令をサーボアンプ40,41に出力する。サーボアンプ40,41はこの指令を受けて、各送り軸のサーボモータ50x,51zを駆動する。各送り軸のサーボモータ50x,51zは図示しない位置・速度検出器を内蔵し、この位置・速度検出器からの位置、速度フィードバック信号を軸制御回路30,31にフィードバックし、位置・速度のフィードバック制御を行う。なお、図9では、この位置・速度のフィードバックについて記載していない。
【0030】
また、スピンドル制御回路60は主軸回転指令を受け、スピンドルアンプ61にスピンドル速度信号を出力する。スピンドルアンプ61はスピンドル速度信号を受けて、主軸モータ62を指令された回転速度で回転させる。ポジションコーダ63は、主軸モータ62の回転に同期して帰還パルス(基準パルス)及び1回転信号をスピンドル制御回路60にフィードバックし、速度制御を行う。
【0031】
この帰還パルス(基準パルス)及び1回転信号は、スピンドル制御回路60を介してCPU11によって読み取られ、帰還パルス(基準パルス)はRAM13に設けられたカウンタ(図1,図2,図10,図12の各基準値カウンタに対応するカウンタ)で計数される。なお、主軸の指令パルスを計数してもよい。また、RAM13に設けられたカウンタは、数値制御装置10が有する計時機能から得られる時間信号のパルス数を計数する、あるいは、送り軸からのフィードバック信号から得られるパルス数を計数し、パステーブル運転する際の基準信号(図7,図8の「基準となる値L」に対応する)を得る。なお、送り軸の指令パルスを計数してもよい。
【0032】
なお、上述した数値制御装置10は、1つの系統として構成してもよいし、複数の系統としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
3a 第1基準値カウンタ
3b 第2基準値カウンタ
3c 第3基準値カウンタ

Tx X軸パステーブル
T1x 系統1のX軸パステーブル
Ts 主軸Sパステーブル
T2s 系統2の主軸Sパステーブル
Tm 補助機能パステーブル
T3m 系統3の補助機能パステーブル

4x X軸パステーブル補間処理部
4−1x 系統1のX軸パステーブル補間処理部

4s 主軸Sパステーブル補間処理部
4−2s 系統2の主軸Sパステーブル補間処理部
4m 補助機能パステーブル出力処理部
4−3m 系統3の補助機能パステーブル出力処理部

5x X軸モータ
5−1x 系統1のX軸モータ
5s 主軸モータ
5−2s 系統2の主軸モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準となる時間、主軸あるいは送り軸の位置と、該基準となる主軸あるいは送り軸とは別の主軸あるいは送り軸の位置あるいは補助機能の出力を対応させたテーブル形式データを、前記基準となる主軸あるいは送り軸とは別の主軸毎あるいは送り軸毎あるいは補助機能毎にメモリに格納しておき、前記基準となる時間、主軸あるいは送り軸の位置を基準値カウンタに入力し、該基準値カウンタの値に同期して前記基準となる主軸あるいは送り軸とは別の主軸あるいは送り軸の位置あるいは補助機能の出力を順次読み出しながら、該別の主軸あるいは送り軸の位置あるいは補助機能を制御するテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置において、
前記基準となる主軸あるいは送り軸とは別の主軸毎あるいは送り軸毎あるいは補助機能毎にそれぞれ基準値カウンタを備え、
該各基準値カウンタの値に基づいて前記各テーブル形式データを実行することを特徴とするテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置。
【請求項2】
前記基準値カウンタを、それぞれ独自にリセットするリセット部と、
前記基準カウンタをそれぞれ独自に停止および再開する停止・再開部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置。
【請求項3】
前記基準値カウンタを、主軸毎あるいは送り軸毎あるいは補助機能毎に任意に選択する基準値カウンタ選択部を備えたことを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置。
【請求項4】
主軸毎のテーブル形式データあるいは送り軸毎のテーブル形式データあるいは補助機能毎のテーブル形式データは、他のテーブル形式データに基づく運転を待ち合わせる待ち合わせコードを含むことを特徴とする請求項1または3のいずれか1つに記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置。
【請求項5】
前記待ち合わせコードは、どのテーブル形式データと待ち合わせるかの情報を含むことを特徴とする請求項4に記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置。
【請求項6】
前記待ち合わせるテーブル形式データは、系統間のものであることを特徴とする請求項4または5のいずれか1つに記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置。
【請求項7】
前記待ち合わせるテーブル形式データは、系統内のものであることを特徴とする請求項4または5のいずれか1つに記載のテーブル形式データによる運転機能を備えた数値制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−234445(P2012−234445A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103770(P2011−103770)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】