説明

ディスクブレーキのパッド内の振動を弱めるデバイス

ディスクブレーキのキャリパの少なくとも1つのパッド(16)と少なくとも1つのピストンとの間に取り付けられることに適する、ディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。デバイス(10)は、ピストン(22)内に作られる空胴(28)内に干渉によって取り付けられることに適する少なくとも1つの略円筒形のダンパ(26)を備える。ダンパ(26)は、半径方向へ延びかつ少なくとも1つの接線成分(T)を有する方向に従ってダンパ(26)の周りを少なくとも部分的に包む少なくとも1つの突起(32)を備える干渉面(30)を有する。ダンパ(26)は、前記干渉によるカップリングを介してピストン(22)へ固定的に接続されることに適する。ダンパの前記干渉面(30)は、前記干渉面(30)の波動状の軸方向プロファイル(34)を画定する2つ以上の突起(32)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、ディスクブレーキのパッド内の振動を弱めるためのデバイスである。
【背景技術】
【0002】
制動ステップの間、ディスクブレーキは、キャリパの動作によって生じる振動を受けることが知られている。このような振動は、うっとうしいヒューヒュー音を出す。
【0003】
従って、ディスクブレーキの場合は、うっとうしいヒューヒュー音の発生を回避する必要性が特に高い。
【0004】
ヒューヒュー音の発生を回避するためのデバイスは、独国特許第9002441号明細書及び欧州特許第0321652号明細書、独国特許第19716569号明細書及び独国特許第10031904号明細書から知られている。
【0005】
具体的には、独国特許第9002441号明細書は、パッドの空胴内に干渉によって取り付けられるダンパを示しているが、このダンパは、多くの観点で満足のいくものではあるものの、その側面全体をプレスする空胴の壁によって完全に圧縮される、または包囲されることから、ダンパ本体は十分に動作することができない。
【0006】
この目的に沿って、例えば欧州特許第872660号明細書または米国特許第4875556号明細書に記述されているような振動を弱めるためのデバイスを用いることが知られている。欧州特許第872660号明細書は、側面の中心部分に沿って複数の軸方向突起を有する円筒形ダンパを示している。米国特許第4875556号明細書は、比較的大きい塊から成る複数の環状突起を装備していて、ピストンの空胴内を移動しかつキャリパの振動中に少なくとも1つの突起でピストンの壁に衝突するインサートを示している。しかしながら、これらのソリューションの何れも、振動に起因するヒューヒュー音を除去することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎を成す課題は、上述の必要事項を満足させかつ同時に上述の欠点を回避するため等の構造的及び機能的特性を有する、ディスクブレーキのパッド内の振動を弱めるためのデバイスを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題は、請求項1に記載されている、ディスクブレーキのパッド内の振動を弱めるためのデバイスによって解決される。諸従属請求項は、本発明によるデバイスの可能な実施形態に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明による、ディスクブレーキのパッド内の振動を弱めるためのデバイスのさらなる特性及び優位点は、添付の図面を参照して限定ではなく表示を目的として行なう下記の好適な実施形態例に関する説明から明らかとなるであろう。
【図1】本発明によるデバイスを示す略図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った断面図を示す。
【図3】図4の線III−IIIに沿った、図1のデバイスの第1のコンポーネントを示す断面図である。
【図4】図1のデバイスの第1のコンポーネントを示す略図である。
【図5】図1のデバイスの第2のコンポーネントを示す略図である。
【図6】図5の線VI−VIに沿った断面図を示す。
【図7】図5の線VII−VIIに沿った断面図を示す。
【図8】ディスクブレーキのパッドに関連づけられる本発明によるデバイスを示す略斜視図である。
【図9】本発明によるデバイスを備えるディスクブレーキのキャリパを示す略部分断面図である。
【図10】本発明によるデバイスを示す略図である。
【図11】図10の線XI−XIに沿った断面図を示す。
【図12】図10のデバイスのコンポーネントを示す略図である。
【図13】図12の線XIII−XIIIに沿った断面図を示す。
【図14】図12の線XIV−XIVに沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述の図面を参照すると、参照数字10は、ディスクブレーキのパッド内の振動を弱めるためのデバイス全体を示し、以後、単にこれをデバイス10として表示する。
【0011】
図9は、デバイス10を示すために部分的に分割された、キャリパ12の一部を例示したものである。キャリパ12は、ディスク14に関連づけられる。参照文字Xは、ディスクの回転軸を示す。
【0012】
キャリパ12は、プレート18と摩擦材料の層20とを有する少なくとも1つのパッド16を備える。さらに、キャリパ12はシリンダ24の少なくとも1つのピストン22を備え、ピストン22は、シリンダ/ピストン自体の長手方向に沿ってパッド16上へ、具体的にはプレート18上へスラストをかけることに適する。図9に示されている例では、キャリパは液圧型であり、かつピストンは液圧制動系の一コンポーネントである。
【0013】
ある可能な実施形態によれば、デバイス10は、例えば図9に示されているように、パッド16とピストン22との間に取り付けられることに適する。具体的には、デバイス10は、パッド16のプレート18とピストン22との間に取り付けられることに適する。キャリパは、可変数のピストンを装備するものを予見することが可能であり、かつ好適には、各ピストン毎に1つのデバイス10が予見される。
【0014】
効果的には、デバイス10は少なくとも1つのダンパ26を備える。
【0015】
このようなダンパは略円筒形の形状を有するが、略円筒形という用語は、長手軸に沿って、または方向Lに延びる形状を意味する。さらに、長手軸Lに対して垂直かつ入射的である少なくとも1つの半径方向R、及び半径方向Rのうちの1つに対して垂直であって長手方向Lに入射しない少なくとも1つの接線方向Tを識別することも可能である。
【0016】
半径方向及び接線方向という言い回しは、必ずしも円形基部を備える直立円筒形状に対する言及を含意するものではないが、好適には、ダンパ26は、円形の基部と、後に説明するような形状を有する側壁とを備える略円筒形状を有する。図9に示されている例を参照すると、ダンパ26はキャリパ12内に、長手軸Lがパッド16に対して、少なくともダンパ26とパッド16とが相互に作用する部分では略垂直であり、かつピストン22の長手方向に平行であるように取り付けられることに適する。再度、図9に示されている例を参照すると、ダンパ26はキャリパ12内に、長手軸Lがディスクの回転軸に対して略平行であるように取り付けられることに適する。
【0017】
効果的には、ダンパ26は、ピストン22内に作られる空胴28内に干渉によって取り付けられることに適する。空胴28は、先に述べた定義によれば略円筒形状を有し、長手軸は、組み立てられた形状ではダンパの長手軸に対して平行である。さらに、空胴28は、ダンパ26を受容するために、パッド16へ向かって、具体的にはパッド16のプレート18へ向かって開いている。
【0018】
図2及び図5−図7を参照すると、効果的には、ダンパ26は、半径方向へ延びかつ少なくとも1つの接線成分を有する方向に従ってダンパ26の周りを少なくとも部分的に包む少なくとも1つの突起32を備える干渉面30を有する。ある可能な実施形態によれば、ダンパ26は、接線方向に従ってダンパ26の周りを少なくとも部分的に包む少なくとも1つの突起32を備える。
【0019】
ある可能な実施形態によれば、ダンパ26は、好適にはダンパの有効干渉面全体に渡って延びる少なくとも1つの環状突起32を備える。有効干渉面という言い回しは、空胴である可能性を除外したダンパの干渉面を意味する。
【0020】
効果的には、ダンパ26は、先に述べた干渉によるカップリングを介してピストン22へ固定的に接続されることに適する。
【0021】
言い替えれば、ダンパ26の、及び具体的には突起32の半径方向寸法は、未組立状態でピストン22の空胴28の半径方向寸法より大きい。
【0022】
ある可能な実施形態、例えば図示されている実施形態によれば、干渉面30は、干渉面30の波動状の軸方向プロファイル34を画定する2つ以上の突起32を備える。「軸方向プロファイル」という言い回しは、例えば図6または図7に示されているような、長手軸Lを含む平面でダンパを分割することによって達成されるプロファイルを意味する。
【0023】
波動状のプロファイルを設けることにより、ダンパは、ピストン内に予見されるその空胴へ干渉によって固着され、かつ同時に、ダンパとしてのその機能を十分に実行するためになおも軸方向及び半径方向の双方に変形することができ、座がその全干渉面上で輪のような形になることでダンパが過剰に固くされてその変形ケイパビリティ、延てはダンピング効果が減じられることが防止される。
【0024】
ある可能な実施形態によれば、干渉面30は、個々の窪み36と交互する2つ以上の突起32を備える。
【0025】
諸図に示されている例を参照すると、干渉面30は、好適には3つの突起32が個々の窪み36と交互される波動状の軸方向プロファイル34を画定する3つの突起32を備える。
【0026】
ある可能な実施形態によれば、突起32は、好適には少なくとも1つの外周部分38を備える少なくとも部分的に曲がった軸方向プロファイルを有する。効果的には、突起32は半円形の軸方向プロファイルを有する。例えば、突起32は、ダンパの周りを少なくとも部分的に包む半ドーナツ形の構造体を画定することができる。
【0027】
図6を参照すると、外側の突起、即ちダンパの基部に近い突起は、半円形の軸方向プロファイルを有する。
【0028】
ある可能な実施形態によれば、突起32は、例えば外周部分38を窪み36へ接続する少なくとも1つの直線部分40を含む軸方向プロファイルを有する。ある可能な実施形態によれば、突起32は例えば、互いに入射する、例えば互いに対して35゜から45゜までの間、好適には40゜の角度で傾斜される個々の直線部分40を介して隣接する窪みへ接続する外周部分38を備える軸方向プロファイルを有する。効果的には、2つの直線部分は、半径方向に対して等しく傾斜される。
【0029】
図6を参照すると、中間または中央の突起、即ち外側の2突起間に位置決めされる突起は、互いに対して傾斜されかつ外周部分38を介して接合する2つの直線部分40を含む軸方向プロファイルを有する。
【0030】
ある可能な実施形態によれば、デバイス10は、ピストンとパッド16との間、具体的にはピストンとパッド16の摩擦材料の層20とは反対側の面44との間に配置されることに適する、かつディスク14とは反対側に配置されることに適するプレート形エレメント42を備える。
【0031】
効果的には、ダンパ26とプレート形エレメント42とは、少なくとも1つの軸方向の接続エレメント46を介して接続される。ある可能な実施形態によれば、ダンパ26とプレート形エレメント42とは、少なくとも1つの軸方向の管状接続エレメントを介して接続される。好適には、ダンパとプレート形エレメントとは、少なくとも1つの軸方向の接続リベットを介して接続される。
【0032】
ある可能な実施形態によれば、軸方向の接続エレメント46は、軸方向の個々の貫通空胴48、50においてダンパ26及びプレート形エレメント42を貫通する。
【0033】
ある可能な実施形態によれば、ダンパ26の軸方向の空胴48は、軸方向の接続エレメント46のヘッド54を受容するための広げられた端52を備える。効果的には、ヘッド54は広げられた端52へ当接する。ある可能な実施形態によれば、ダンパ26の軸方向の空胴48は、もしあれば広げられた端52の反対側に皿部分55を備える。
【0034】
ある可能な実施形態によれば、プレート形エレメント42は、プレート形エレメント自体の軸方向の貫通空胴50を画定する皿部分56を備える。効果的には、皿部分56は、軸方向の接続エレメント46の変形部分58の突合わせ部分を画定することに適する。デバイスの組み立てられた形状において、ダンパ26の皿部分55は、プレート形エレメント42の皿部分56を少なくとも部分的に受容する。
【0035】
ある可能な実施形態によれば、ダンパ26は、少なくとも干渉面30上では開く少なくとも1つの吐出し空胴60を備える。例えば、吐出し空胴60は、ダンパ26の高さ全体に渡って軸方向へ延びる。効果的には、吐出し空胴60は、具体的にはダンパの高さに沿って軸方向へ延びていれば、組立てステップ及び動作ステップの双方において変形を補償する機能を有する。
【0036】
効果的には、プレート形エレメント42が、例えば予見されれば軸方向の貫通空胴50と交わる少なくとも1つの通気開口62を備えることを予見することが可能である。ある可能な実施形態によれば、通気開口62は、例えば開口50を介して延びてこの開口50の両側を延び続ける半径方向のスロットである。効果的には、通気開口62は、プレート形エレメント42の少なくとも半径方向へ、ピストンの半径方向寸法を超える、かつ好適にはシリンダとピストン貫通リング63aとの間に付着されるダストガード63の半径方向寸法をも超える部分に渡って延びる。
【0037】
吐出し空胴60及び通気開口62の双方が予見される場合、デバイス10の組み立てられた状態において、プレート形エレメント42の通気開口62はダンパ26の吐出し空胴60に対応し、或いは、どちらかと言えばこれらは、少なくとも部分的に、略軸方向へ通気開口62を介して半径方向へ継続する自由通路を残すように互いに面する。言い替えれば、プレート形エレメント42の、具体的にはスロット形である通気開口62は、ダストガードの所定の状況においてピストン内部に溜まる可能性もある空気の通気機能を実行する。実際に、リング63aとダストガード63との間に存在する空気は高温によって広がる可能性があり、かつダストガードを、特にパッドが新品である場合はパッドの表面44に触れるまで膨張させる可能性がある。これは、ダストガード63とパッド表面44とピストン22との間に閉空間を生じさせることになり、この閉空間において、高温によって拡大された空気は、パッド上へ、パッドをディスクへと押しつけて残留トルクを発生させること等の圧力を生成する可能性もあり、または、ピストンを引き戻させて次の制動時に不快な感覚を生じさせる可能性もある。
【0038】
管状の軸方向接続エレメント46が予見される事例では、通気開口62もまた、効果的には、空気を管状の軸方向接続エレメント及び通気開口を介して外部へ通気するために貫通空胴48、50まで延びる。
【0039】
ある可能な実施形態によれば、ダンパ26は、少なくともプレート形エレメント42側のダンパ26の基部66上では開く少なくとも1つの位置合わせ空胴64を備える。効果的には、プレート形エレメント42は、位置合わせ空胴64への挿入に適する少なくとも1つの突起68を備える。
【0040】
ある可能な実施形態によれば、位置合わせ空胴64は、ダンパ26の高さの少なくとも一部分に渡って軸方向へ延びる。効果的には、位置合わせ空胴64は、干渉面30上で少なくとも部分的に開く。
【0041】
図示されている例を参照すると、軸方向突起68は、プレート形エレメント42を刻んで折り畳むことによって形成される。
【0042】
ある可能な実施形態によれば、ダンパ26の位置合わせ空胴64及びプレート形エレメント42の軸方向突起68は、ダンパ26の吐出し空胴60がプレート形エレメント42の通気開口62に対応するように配置され、或いは、どちらかと言えばこれらは、少なくとも部分的に、略軸方向へ自由通路を残すように互いに面する。
【0043】
ある可能な実施形態、例えば図示されている例によれば、位置合わせ空胴64及び吐出し空胴60は略正反対に配置される。
【0044】
効果的には、位置合わせ空胴64への挿入に適するダンパ26の位置合わせ空胴64及びプレート形エレメント42の軸方向突起68は、プレート形エレメントに対するダンパの角度位置合わせ及び回転防止ストップの機能を実行する。角度位置合わせは、ダンパ26の吐出し空胴60及びプレート形エレメント42の通気開口62がその位置合わせにあることによりピストン内の空気の確実な通気が予見される場合に、特に有益である。
【0045】
効果的には、ダンパ26とプレート形エレメント42とは、軸方向の接続エレメント46(または軸方向の管状接続エレメントまたは軸方向の接続リベット)を介して軸方向へ固定的に接続される。ダンパ26の位置合わせ空胴64とプレート形エレメント42の軸方向突起68との間のカップリングは、ダンパ26とプレート形エレメント42との間の回転接続を保証する。
【0046】
ある可能な実施形態によれば、プレート形エレメント42は、パッド16の表面44へ接着することに適する接着面70を備える。より一般的には、プレート形エレメント42は、パッド16のディスクとは反対側の表面44への接続手段を備える。
【0047】
ある可能な実施形態によれば、ダンパ26はゴムから、例えば好適には硬度60Sh AであるEPDMゴムから製造される。
【0048】
ある可能な実施形態によれば、プレート形エレメント42はダンピングプレートから、或いはどちらかと言えば、例えばシムと呼ばれる(交互する多層を有する)鋼及びゴム製の層状材料から製造される。
【0049】
効果的には、本発明は、これまでに述べた特性のうちの1つまたはそれ以上を有するパッド内の振動を弱めるためのデバイスを備える、ディスクブレーキのキャリパにも関する。
【0050】
以下、デバイス10のアッセンブリ及びそのキャリパ上への、例えば図9に示されているキャリパ12上への取付けについて説明する。
【0051】
ある可能な実施形態によれば、ダンパ26とプレート形エレメント42とは、プレート形エレメント42の軸方向突起68が、もしあればダンパ26の位置合わせ空胴64内へ挿入されるように引き合わされる。軸方向の接続エレメント46は、ダンパ26及びプレート形エレメント42の個々の軸方向貫通空胴48、50を介して導かれる。具体的には、軸方向の接続エレメント46(リベット)は、例えば添付の図面に示されているものによればダンパ26側でデバイス10へ、ヘッド54が広げられた端52に当接するまで差し込まれる。次に、軸方向の接続エレメント46は、例えば変形部分58を形成しかつダンパ26及びプレート形エレメント42へ少なくとも軸方向に固定的に接続するために、具体的には皿状に変形される。
【0052】
デバイス10のキャリパ上へ取り付けるステップでは、ダンパ26はピストン22の空胴28内へ干渉によって挿入され、これに起因してデバイス10とピストンとは互いに固定的に接続される。もし存在すれば、吐出し空胴60は、取付けステップにおいて生じる可能性がある変形を補償する。
【0053】
システムが加圧下に置かれると、パッド16は、例えば接着面70を介してデバイス10へ固定的に接続され、これに起因して、パッド16はピストンへ固定的に接続されてダンピングが最適化される。
【0054】
パッドを交換する場合は、デバイス10の一体式交換が可能である。
【0055】
以下、デバイス10の動作について述べる。
【0056】
制動ステップの間、デバイス10は、キャリパ及びパッドの振動によって結果的に生じる振動及びヒューヒュー音を制限する機能を実行する。ダンピング効果は、ダンパとピストンとの間の干渉による接続を介してパッドをピストンへ固定的に接続することによって最適化される。このソリューションは、デバイス10がパッドへ固定的に接続(接着)されかつピストン内に干渉によって取り付けられ、パッドとキャリパとの間にダンピング層が生成される、という事実によってキャリパの騒々しさを減じる。パッド及びピストンの双方へ固定的に接続されるこのようなダンピング層は、制動の間に、制動トルクに続いてパッドが受ける加速をダンパ材料(ゴム)の硬度及びダンパとピストンとの間の干渉の度合いに比例する値で減じることができる。
【0057】
これまでに言及した内容から、ディスクブレーキのパッド内の振動を弱めるための本発明によるデバイスを予見するという事実が、キャリパ及びパッドの振動に起因するうっとうしいヒューヒュー音を回避する前述の要件を回避することを如何にして可能にするかを認識することができる。
【0058】
また、ダンパ内に、組立ての間及び動作の間の双方で変形を補償することができる吐出し空胴が存在することも特に効果的である。
【0059】
さらなる優位点は、プレート形エレメント内に、具体的には空胴、例えばダンパの吐出し空胴と結合されると、または管状の接続エレメントと接続されるとピストン内に溜まる可能性もある空気を自由に通気させる通気開口が存在することによって達成される。
【0060】
軸方向接続エレメントの存在は、達成が容易な軸方向の主たる強迫の達成を可能にする。さらに、ダンパの位置合わせ空胴とプレート形エレメントの突起との間のカップリングの存在は、例えば、ダンパの吐出し空胴及びプレート形エレメントの通気開口の存在が予見される場合に特に有益である正しい角度位置合わせ及び回転防止ストップを保証する。
【0061】
さらに、軸方向接続エレメント及びダンパの位置合わせ空胴とプレート形エレメントの突起とのカップリングは、ダンパとプレート形エレメントとの間の完全に固定された接続を保証する。この場合は、先に述べた内容による、ディスクブレーキのパッド内の振動を弱めるためのデバイスを保有することが効果的であり、前記デバイスは、ディスクの反対側へ配置されることに適するパッドの表面とピストンとの間に配置されることに適するプレート形エレメントを備え、ダンパ及びプレート形エレメントは少なくとも1つの軸方向接続エレメントを介して軸方向へ固定的に接続され、かつダンパ及びプレート形エレメントは、角度位置合わせ及び回転防止ステップを作ることに適するさらなるカップリング、例えばダンパの位置合わせ空胴とプレート形エレメントの突起との間のカップリングを備える。しかしながら、角度位置合わせ及び回転防止ステップを作製することに適するカップリングについては、他の実施形態も可能である。
【0062】
これまでに述べかつ例示した内容に対しては、変形及び/または追加が予見され得ることは明らかである。例えば、記述されているデバイスは、固定キャリパに適用されることも、浮動キャリパに適用されることも可能である。さらにデバイス10は、油圧キャリパに、または別種のアクチュエータ、例えば機械的または電気的アクチュエータを備えるキャリパにも適用されることが可能である。この場合は、どのように作動されても、パッド上に作用するスラスタまたはピストンを画定することが可能であり、かつこのようなスラスタとパッドとの間へ記述されているデバイスを挿入することができる。
【0063】
例えば、ダンパの形状は、異なるものを予見することが可能である。使用される形式に関わらず、半径方向Rの長手軸または長手方向L及び接線方向Tの定義はそのまま有効であって、ダンパ形状に対する如何なる類の限定も含意されない。
【0064】
干渉面は、可変数の突起を有することが可能である。具体的には、先に述べたような任意選択の特性を有する1つまたは複数の突起、例えば少なくとも3つの突起が存在することが可能である。
【0065】
各突起は、例えば個々の直線部分、例えば互いに入射し合う直線部分を介して隣接する窪みへ接続する様々な形状の外側部分を備える軸方向プロファイルを有することが可能である。突起の外側部分は様々な形状にされることが可能であって、例えば、これは曲線であることも、直線であることも可能であり、かつ恐らくはダンパの長手軸に対して平行に配置されることも可能である。
【0066】
ある可能な実施形態によれば、ダンパは、半径方向へ延びかつ少なくとも1つの接線成分を有する方向に従ってダンパの周りを少なくとも部分的に包む少なくとも1つの突起、例えば僅かに螺旋状である環状突起を備える干渉面を有する。
【0067】
ある可能な実施形態によれば、ダンパの位置合わせ空胴及び吐出し空胴は、同時的に一致して通気、角度位置合わせ及び回転防止ストップの各機能を実行することができる。
【0068】
図8及びこれ以降の図は、ダンパ26の形状の可能な変形例を示す。図示されている実施形態によれば、ダンパ26の軸方向空胴48は、両側に皿部分55を備える。同様に、軸方向の接続エレメント46も、両側に2つの変形部分58を備える。
【0069】
図示されていない可能な一実施形態によれば、ダンパ26は、ダンパを軸方向に沿ってどちらにも取り付けることができるように、ダンパ自体の反対側の基部に、例えば同じ軸方向に沿って配置される2つの位置合わせ空胴64を備えることが可能である。
【0070】
ある可能な実施形態によれば、パッド16のプレート18は、ディスクとは反対側の表面44にディスクの回転軸に対して傾斜された部分を有することが可能である。ピストンが前記傾斜された部分において作用する事例では、デバイス10の長手軸Lは軸Xに対して傾斜されて配置され、一方でピストンの長手軸に対しては平行のままである。
【0071】
恐らくは、ダンパとプレート形エレメントとの間の接続が、記述されている他の特性(例えば、ダンパとピストンとの間、ダンパの吐出し空胴とプレート形エレメントの通気開口との間、ダンパの位置合わせ空胴とプレート形エレメントの突起との間の干渉による接続)に関わらず軸方向接続エレメント(リベット)を介して達成される、先に述べたようなデバイス10を予見することが効果的である。
【0072】
恐らくは、記述されている他の特性(例えば、ダンパとピストンとの間、ダンパの位置合わせ空胴とプレート形エレメントの突起との間の干渉による接続、軸方向接続エレメントを介する接続)に関わらず、ダンパが吐出し空胴を備え、プレート形エレメントが通気開口を備える、先に述べたようなデバイス10を予見することが可能である。
【0073】
恐らくは、記述されている他の特性(例えば、ダンパとピストンとの間、ダンパの吐出し空胴とプレート形エレメントの通気開口との間の干渉による接続、軸方向接続エレメントを介する接続)に関わらず、先に述べたように、角度位置合わせ及び回転防止ストップ(例えば、ダンパは位置合わせ空胴を備え、かつプレート形エレメントは軸方向突起を備える)を達成することに適するカップリングを備えるデバイス10を予見することができる。
【0074】
熟練者は、偶発的かつ特異的な要件を満足するために、但し添付のクレームの保護の範囲を逸脱することなく、上述のディスクブレーキのパッド内の振動を弱めるためのデバイスの上述の好適な実施形態と機能上等価である他のものによって、エレメントの多くの修正、適応及び置換を提示することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのパッド(16)と、前記パッド(16)上へスラストをかけることに適する少なくとも1つのピストン(22)とを備えるディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)であって、前記デバイス(10)は、前記少なくとも1つのパッド(16)と前記少なくとも1つのピストン(22)との間に取り付けられることに適し、
前記デバイス(10)は、前記ピストン(22)内に作られる空胴(28)内に干渉によって取り付けられることに適する少なくとも1つの略円筒形のダンパ(26)を備え、前記ダンパ(26)は、半径方向へ延びかつ少なくとも1つの接線成分(T)を有する方向に従って前記ダンパ(26)の周りを少なくとも部分的に包む少なくとも1つの突起(32)を備える干渉面(30)を有し、かつ、
前記ダンパ(26)は、前記ピストン(22)へ前記干渉によるカップリングを介して固定的に接続されることに適し、
前記干渉面(30)は、前記干渉面(30)の波動状の軸方向プロファイル(34)を画定する2つ以上の突起(32)を備えることを特徴とするデバイス(10)。
【請求項2】
前記デバイス(10)は、ディスク(14)とは反対側へ配置されることに適する前記パッド(16)の表面(44)と前記ピストン(22)との間に配置されることに適するプレート形エレメント(42)を備え、前記ダンパ(26)及び前記プレート形エレメント(42)は、少なくとも1つの軸方向の接続エレメント(46)、例えば少なくとも1つの軸方向の管状接続エレメントまたは例えば少なくとも1つの軸方向の接続リベットを介して接続され、かつ、前記プレート形エレメント(42)は、前記パッド(16)の前記ディスクとは反対側の前記表面(44)への接続手段、例えば前記パッド(16)の前記ディスクとは反対側の前記表面(44)へ接着することに適する接着面(70)を備える、請求項1に記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項3】
前記軸方向の接続エレメント(46)は前記ダンパ(26)及び前記プレート形エレメント(42)と個々の軸方向の貫通空胴(48、50)で交差する、請求項2に記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項4】
前記ダンパ(26)の前記軸方向の空胴(48)は、前記軸方向の接続エレメント(46)のヘッド(54)を受容するために広げられた端(52)を備え、前記ヘッド(54)は前記広げられた端(52)に当接する、請求項3に記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項5】
前記プレート形エレメント(42)は前記軸方向の貫通空胴(50)を画定する皿部分(56)を備え、前記皿部分(56)は、前記軸方向の接続エレメント(46)の変形部分(58)のための突合わせ部分を画定することに適し、前記プレート形エレメント(42)の前記皿部分(56)は、前記ダンパ(26)の可能な皿部分(55)内に少なくとも部分的に受容されることに適する、請求項3または請求項4に記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項6】
前記ダンパ(26)は、少なくとも前記干渉面(30)上では開きかつ前記ダンパ(26)の全体高さに渡って軸方向へ延びる少なくとも1つの吐出し空胴(60)を備える、請求項1から5のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項7】
前記デバイス(10)は、ディスクとは反対側へ配置されることに適する前記パッド(16)の表面(44)と前記ピストン(22)との間に配置されることに適するプレート形エレメント(42)を備え、前記プレート形エレメント(42)は、前記プレート形エレメント(42)の軸方向の貫通空胴(50)と交差する少なくとも1つの通気開口(62)を備え、前記通気開口(62)は例えば半径方向のスロットである、請求項1から6のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項8】
前記プレート形エレメント(42)の前記通気開口(62)は前記ダンパ(26)の前記吐出し空胴(60)に対応する、請求項6及び請求項7に記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項9】
前記デバイス(10)は、前記ディスク(14)の反対側へ配置されることに適するパッド(16)の表面(44)と前記ピストン(22)との間に配置されることに適するプレート形エレメント(42)を備え、前記ダンパ(26)は、少なくとも前記プレート形エレメント(42)側の前記ダンパ(26)の基部(66)上では開く少なくとも1つの位置合わせ空胴(64)を備え、前記プレート形エレメント(42)は、前記位置合わせ空胴(64)内へ挿入することに適する少なくとも1つの軸方向突起(68)を備え、例えば前記位置合わせ空胴(64)は、前記ダンパ(26)の高さの少なくとも一部に渡って軸方向へ延び、かつ例えば前記位置合わせ空胴(64)は前記干渉面(30)上で開く、請求項1から8のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項10】
前記位置合わせ空胴(64)と前記吐出し空胴(60)とは略正反対に配置される、請求項6から9のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項11】
前記ダンパ(26)の前記位置合わせ空胴(64)及び前記プレート形エレメント(42)の前記軸方向突起(68)は、前記ダンパ(26)の前記吐出し空胴(60)が前記プレート形エレメント(42)の前記通気開口(62)に対応するように配置される、請求項8から10のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの突起(32)は、例えば少なくとも1つの外周部分(38)を備える少なくとも部分的に曲がった軸方向プロファイルを有し、または例えばこれは、半円形の軸方向プロファイルを有する、請求項1から11のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの突起(32)は、互いに入射する、例えば互いに対して35゜から45゜までの間、好適には40゜の角度で傾斜される個々の直線部分(40)を介して隣接する窪み(36)へ接続する外周部分(38)を含む軸方向プロファイルを有する、請求項1から12のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項14】
前記ダンパ(26)は少なくとも3つの突起(32)を備える軸方向プロファイルを有していて、例えば外側の2突起は半円形の軸方向プロファイルを有し、かつ例えば少なくとも1つの真ん中の突起は、互いに対して傾斜されかつ外周部分(38)を介して接合する2つの直線部分(40)を含む軸方向プロファイルを有する、請求項1から13のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項15】
前記デバイス(10)は、前記ディスク(14)の反対側へ配置されることに適するパッド(16)の表面(44)と前記ピストン(22)との間に配置されることに適するプレート形エレメント(42)を備え、前記プレート形エレメント(42)は少なくとも1つの突起(68)に関連づけられる少なくとも1つの通気開口(62)を備え、前記ダンパ(26)は、前記突起(68)を受容することに適する少なくとも1つの位置合わせ及び吐出し空胴を備え、これに起因して、前記通気開口と前記位置合わせ及び吐出し空胴とが互いに対応する、請求項1から14のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項16】
前記デバイス(10)は、ディスク(14)とは反対側へ配置されることに適する前記パッド(16)の表面(44)と前記ピストン(22)との間に配置されることに適するプレート形エレメント(42)を備え、前記ダンパ(26)及び前記プレート形エレメント(42)は、少なくとも1つの軸方向の接続エレメント(46)を介して軸方向へ堅固に固定され、かつ前記ダンパ(26)及び前記プレート形エレメント(42)は角度位置合わせ及び回転防止ストップを作製することに適するさらなるカップリング(64、68)を備える、請求項1から15のいずれかに記載のディスクブレーキのパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載のパッド(16)内の振動を弱めるためのデバイス(10)を備えるディスクブレーキのキャリパ(12)であって、前記キャリパは少なくとも1つのパッド(16)と、前記パッド(16)上へスラストをかけることに適する少なくとも1つのピストン(22)とを備え、前記デバイス(10)は前記少なくとも1つのパッド(16)と前記少なくとも1つのピストン(22)との間に取り付けられ、
前記デバイス(10)は、前記ピストン(22)内に作られる空胴(28)内に干渉によって取り付けられる少なくとも1つの略円筒形のダンパ(26)を備え、前記ダンパ(26)は、半径方向へ延びかつ少なくとも1つの接線成分(T)を有する方向に従って前記ダンパ(26)の周りを少なくとも部分的に包む少なくとも1つの突起(32)を備える干渉面(30)を有し、かつ、前記ダンパ(26)は、前記ピストン(22)へ前記干渉によるカップリングを介して固定的に接続されるキャリパ(12)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−531565(P2012−531565A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516922(P2012−516922)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052776
【国際公開番号】WO2010/150164
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511289301)
【Fターム(参考)】