説明

ディスクブレーキ装置

【課題】ブレーキパッドの裏板とピストン間に介装される内シムと外シムの最適な構成を提供すること。
【解決手段】裏板41は、板ばね81によりロータ径方向内側に向け付勢され、V字状内周側トルク受け面41aで、キャリパ20に設けた内周支持軸61と2箇所で係合し、外周側トルク受け面41bで、キャリパ20に設けた外周支持軸72と1箇所で係合している。裏板41とピストン31,32間には、裏板側に配置される内シムISaとピストン側に配置される外シムISbが介装され、裏板と内シム間、ピストンと外シム間の摩擦係数が内シムと外シム間の摩擦係数に比し大きくされている。内シムISaは、裏板に対し、ロータ径方向・周方向で一体的に移動可能、ロータ軸方向で相対移動可能であり、外シムISbは、裏板に対し、ロータ径方向・周方向で一体的に移動可能、ロータ軸方向で相対移動可能、内周支持軸61の軸心回りに所定量回転可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置に係り、特に、回転体(例えば、車軸ハブ)に組付けられて同回転体と一体的に回転するディスクロータと、このディスクロータの一部の外周を跨ぐようにして支持体(例えば、車体)に組付けられるキャリパと、前記ディスクロータを挟持可能に配置されて前記キャリパに支持軸を介してロータ軸方向にて移動可能に支持される一対のブレーキパッドと、前記キャリパに組付けられて前記各ブレーキパッドを前記ディスクロータに向けて押圧するピストンを備えていて、前記ピストンが前記各ブレーキパッドの裏板を押圧することにより、前記各ブレーキパッドのライニングが前記ディスクロータの被制動面に摺動可能に圧接して、前記ディスクロータが制動されるように構成されているディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のディスクブレーキ装置は、例えば、下記特許文献1に記載されていて、各ブレーキパッドが、キャリパに一体的に設けられていて各ライニングのロータ径方向内側かつロータ周方向中央部にて前記各裏板に設けた内周係合面に係合する単一の内周支持軸と、キャリパに一体的に設けられていて各ライニングの一側(回入側)にてロータ径方向外側に向けて延びる裏板のアーム部に設けた貫通孔を貫通する単一の外周支持軸によって、キャリパにロータ軸方向にて移動可能に支持されるとともに、キャリパに形成されていて各ライニングの他側(回出側)にて裏板に形成された端面(平面)と係合するトルク受け面(平面)にて、キャリパにロータ軸方向にて移動可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−527272号公報
【発明の概要】
【0004】
上記した特許文献1に記載されているディスクブレーキ装置においては、制動時のトルクを受ける箇所が、主として、キャリパに形成されていて各ライニングの他側にて裏板のロータ周方向端部に形成された端面(平面)と係合するトルク受け面(平面)である。ところで、このトルク受け面(平面)は、裏板の内周係合面と内周支持軸との係合関係(各部材の製作誤差や組付誤差、或いは、熱膨張変形)等により容易に変化し、裏板の端面(平面)と面一で係合し難い不安定な平面である。このため、制動時において、ブレーキパッドの挙動が不安定となるおそれがあって、ブレーキ鳴きが発生するおそれがある。また、この場合には、キャリパにトルク受け面(平面)を形成するための加工が必要であるとともに、各裏板の他側の端面(平面)全体を加工する必要があって、加工を要する面積が大きくてコスト高となる。
【0005】
また、上記した特許文献1に記載されているディスクブレーキ装置においては、制動時のトルクを受ける箇所が、各裏板の他側(ライニングにおける回出側)の端面と係合するトルク受け面(平面)であり、各裏板の一側(ライニングにおける回入側)から大きく離れている(モーメントアームが長い)ため、制動時に生じる各ブレーキパッドの巻き込みモーメント(ディスクロータとライニングとの摺動面が、制動時のトルクを受ける箇所に対して、ロータ軸方向に変位していることに起因して生じるものであり、ライニングにおける回入側の面圧を回出側の面圧に比して高くする回転モーメントである)は大きい。このため、各ライニングのディスクロータに対する面圧分布が悪くて、各ライニングのロータ周方向での偏摩耗は避け難い。
【0006】
上記した課題を解決すべく、本願の出願人は、特願2009−85282にて、回転体に組付けられて同回転体と一体的に回転するディスクロータと、このディスクロータの一部の外周を跨ぐようにして支持体に組付けられるキャリパと、前記ディスクロータを挟持可能に配置されて前記キャリパに支持軸を介してロータ軸方向にて移動可能に支持される一対のブレーキパッドと、前記キャリパに組付けられて前記各ブレーキパッドを前記ディスクロータに向けて押圧するピストンを備えていて、前記ピストンが前記各ブレーキパッドの裏板を押圧することにより、前記各ブレーキパッドのライニングが前記ディスクロータの被制動面に摺動可能に圧接して、前記ディスクロータが制動されるように構成されているディスクブレーキ装置において、前記各ブレーキパッドは付勢部材によってロータ径方向内側に向けて付勢され、前記支持軸は、前記キャリパに一体的に設けられていて前記各ライニングのロータ径方向内側かつロータ周方向中央部にて前記各裏板に設けたV字状の内周側トルク受け面に2箇所にて係合する単一の内周支持軸と、前記キャリパに一体的に設けられていて前記各ライニングのロータ径方向外側かつロータ周方向中間部にて前記各裏板に設けた外周側トルク受け面に1箇所にて係合する外周支持軸によって構成されていて、前記各ブレーキパッドは前記内周支持軸の軸心回りに所定量回転可能に組付けられているディスクブレーキ装置を提案した。
【0007】
かかるディスクブレーキ装置においては、上記した課題を解決することが可能であるが、制動時のブレーキ鳴きを十分に解消できない場合があって、更なる改善が要望されていた。本発明は、かかる要望に応えるべくなされたものであり、上記したディスクブレーキ装置であって、前記各裏板と前記各ピストン間には、裏板側に配置される内シムと、ピストン側に配置される外シムが重ねて介装されていて、前記裏板と前記内シム間の摩擦係数と前記ピストンと前記外シム間の摩擦係数が前記内シムと前記外シム間の摩擦係数に比して大きく設定されており、前記内シムは、前記裏板に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、組付けられ、前記外シムは、前記裏板に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、前記内周支持軸の軸心回りに所定量回転可能に、組付けられていることに特徴がある。
【0008】
この場合において、前記外シムには、前記裏板におけるロータ周方向のリーディング側端面(ディスクロータが前進回転するときの回入側端面)に形成したリーディング側係合面に係合するリーディング側係止爪と、前記裏板におけるロータ周方向のトレーリング側端面(ディスクロータが前進回転するときの回出側端面)に形成したトレーリング側係合面に係合するトレーリング側係止爪と、前記裏板におけるロータ径方向の外周側端面に形成した外周係合面に係合する外周側係止爪と、前記裏板におけるロータ径方向の内周側端面に形成した内周係合面に係合する内周側係止爪が設けられ、前記裏板の前記リーディング側係合面、前記トレーリング側係合面および前記外周係合面が前記内周支持軸の軸心を中心とする円弧形状に形成され、前記裏板が前記外周支持軸によって前記内周支持軸上でのトレーリング側への傾動を規制されリーディング側への傾動を許容されている状態では、前記外シムの前記内周側係止爪が前記裏板の前記内周係合面に対して離脱可能に係合していることも可能である。
【0009】
また、前記外シムには、前記裏板における前記外周側トルク受け面のロータ周方向両側に形成された一対の外周係合面に係合する一対の外周係止爪が設けられているとともに、前記裏板における前記内周側トルク受け面のロータ周方向両側に形成された一対の内周係合面に係合する一対の内周係止爪が設けられていて、前記裏板に形成された前記一対の外周係合面と前記一対の内周係合面が共に前記内周支持軸の軸心を中心とする円弧形状の形成されていることも可能である。
【0010】
上記した本発明のディスクブレーキ装置においては、ディスクロータの制動時、各ブレーキパッドにおけるV字状の内周側トルク受け面と内周支持軸の係合部2箇所と、各ブレーキパッドの外周側トルク受け面と外周支持軸の係合部1箇所の合計3箇所にて、制動時のトルクが受けられるため、制動時のトルクを不安定な平面で受ける場合(例えば、上記した特許文献1のディスクブレーキ装置のような場合)に比して、各ブレーキパッドの挙動が安定する。このため、制動時の不安定挙動に伴うブレーキ鳴きの発生を抑制することが可能である。また、制動時のトルクを受ける箇所の面積(加工面積)が、制動時のトルクを不安定な平面で受ける場合に比して、削減できて、加工コストを低減することが可能である。
【0011】
また、本発明によるディスクブレーキ装置においては、制動時のトルクを受ける箇所が、各ライニングのロータ径方向内側であってロータ周方向中央部の位置と、各ライニングのロータ径方向外側であってロータ周方向中間部の位置であり、これらの位置は各ライニングのロータ周方向端面から大きく離れていない(モーメントアームが短い)。このため、上記した特許文献1のディスクブレーキ装置に比して、制動時に生じる各ブレーキパッドの巻き込みモーメントを小さくすることが可能であり、各ライニングのディスクロータに対する面圧分布を均一化することが可能であるとともに、各ライニングのロータ周方向での偏摩耗を抑制することが可能である。
【0012】
また、本発明によるディスクブレーキ装置においては、内シムが、裏板に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、組付けられ、外シムが、裏板に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、内周支持軸の軸心回りに所定量回転可能に、組付けられている。このため、非制動時に内シムおよび外シムの裏板に対する動き(シム振動)を抑制することが可能であり、このシム振動に起因するラトル音を抑制することが可能である。
【0013】
また、本発明によるディスクブレーキ装置においては、制動時において、裏板(ブレーキパッド)が内周支持軸に対して傾動する際に、裏板が外シム(ピストンによって動きを規制されている)によって傾動を阻害されないようにすることが可能である。このため、制動時に得られる内シムと外シム間の相対移動を所期のものとすることが可能であり、内シムと外シム間の相対移動によって得られるブレーキ鳴き防止機能を有効に発揮させることが可能である。
【0014】
本発明の実施に際して、前記外シムには前記外周支持軸に対して係合・離脱可能なストッパが設けられていて、前記裏板が前記外周支持軸によって前記内周支持軸上でのトレーリング側への傾動を規制されリーディング側への傾動を許容されているとき、前記ストッパが前記外周支持軸と係合して前記外シムの前記内周支持軸に対するトレーリング側への傾動を規制するように設定されていることも可能である。この場合には、外シムが外力で内周支持軸に対してトレーリング側へ傾動することを防止することができる。このため、裏板に対して外シムを所期の状態に維持することができて、裏板が内周支持軸に対してリーディング側へ傾動する際の円滑な動きを保証することが可能である。
【0015】
この場合において、前記ストッパは、前記外周支持軸と平面にて係合するように設定されていることも可能である。この場合には、ストッパによる外周支持軸への傷付けを抑制することが可能である。このため、外周支持軸に対する裏板の円滑な動き(ブレーキパッドのロータ軸方向での円滑な動き)を長期間保証することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるディスクブレーキ装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿った断面図である。
【図4】図2のC−C線に沿った断面図である。
【図5】図2のD−D線に沿った断面図である。
【図6】図2に示した内シムと外シムの外形全体を破線で追加して示した図2相当の断面図である。
【図7】図1〜図6に示したディスクブレーキ装置における一対のブレーキパッド、内シム、外シム、複数個のピストン、内周支持軸、外周支持軸等の関係を示した斜視図である。
【図8】図7に示した左方のブレーキパッドとこれに組付けられた内シムと外シムの関係を示した背面図である。
【図9】図8に示したブレーキパッド、内シム、外シムの分解斜視図である。
【図10】図7〜図9に示した外シム単体の背面図である。
【図11】図7〜図9に示した内シム単体の背面図である。
【図12】図7〜図9に示したブレーキパッド単体の背面図である。
【図13】図8に示したブレーキパッド、内シム、外シムの制動時における挙動を概略的に示した作動説明図である。
【図14】裏板に形成された一対の外周係合面と一対の内周係合面が共に内周支持軸の軸心を中心とする円弧形状の形成されている実施形態を概略的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図6は本発明によるディスクブレーキ装置を車両用のピストン対向型(固定型)ディスクブレーキ装置に実施した実施形態を示していて、この実施形態のディスクブレーキ装置DB1は、車軸ハブ(図示省略の回転体)に組付けられて車輪(図示省略)と一体的に回転するディスクロータ10と、このディスクロータ10の外周部の一部分を跨ぐようにして配置されるキャリパ20と、このキャリパ20に組付けた4個のピストン31,32,33,34、インナー側ブレーキパッド40、アウター側ブレーキパッド50を備えるとともに、インナー側ブレーキパッド40に組付けた内シムISa、外シムISbと、アウター側ブレーキパッド50に組付けた内シムOSa、外シムOSbを備えている。また、ディスクブレーキ装置DB1は、キャリパ20に設けたインナー側内周支持軸61およびインナー側外周支持軸62とアウター側内周支持軸71およびアウター側外周支持軸72を備えるとともに、板バネ81,82を備えている。
【0018】
ディスクロータ10は、図4に示したように、インナー側ブレーキパッド40のライニング42とアウター側ブレーキパッド50のライニング52によって挟持可能な環状の被制動面10a,10bを有している。また、ディスクロータ10は、被制動面10a,10bが制動時にインナー側ブレーキパッド40のライニング42およびアウター側ブレーキパッド50のライニング52によって挟持されることにより、回転を制動されるようになっている。このディスクロータ10は、車輪の前進回転時には、車輪と一体的に図2の時計方向に回転(正回転)し、図2の左方側が回入側(リーディング側)となり、図2の右方側が回出側(トレーリング側)となる。
【0019】
キャリパ20は、図1〜図6に示したように、ディスクロータ10の一部の外周を跨ぐようにして対向するインナーハウジング部21とアウターハウジング部22を備えるとともに、これらを連結する一対の連結部23、24を備えている。インナーハウジング部21は、ディスクロータ10のインナー側に配置されていて、一対のシリンダ21a,21b(図2参照)を有している。
【0020】
また、インナーハウジング部21は、インナー側ブレーキパッド40における裏板41のロータ径方向内側かつロータ周方向中央部に設けたV字状の内周側トルク受け面41aに係合するインナー側内周支持軸61を支持するための支持部21cを有するとともに、インナー側ブレーキパッド40における裏板41のロータ径方向外側かつロータ周方向中央部に設けたV字状の外周側トルク受け面41bに係合可能なアウター側外周支持軸72の先端部に連結されるインナー側外周支持軸62を支持するための支持部21dを有している。
【0021】
また、インナーハウジング部21は、ロータ径内方端にてロータ径内方に向けて延びる一対の取付け部21e,21fを有していて、これらの取付け部21e,21fにてボルト(図示省略)を用いて車体側(支持体)に取付けられるように構成されている。一対のシリンダ21a,21bは、図2に示したように、ロータ周方向にて所定の間隔で配置され、図5に示したように、ロータ軸方向に形成されている。
【0022】
アウターハウジング部22は、ディスクロータ10のアウター側に配置されていて、インナーハウジング部21のシリンダ21a,21bと同様に、一対のシリンダ22a,22bを有するとともに、インナーハウジング部21の各支持部21c,21dと同様に、アウター側内周支持軸71を支持するための支持部22cと、アウター側外周支持軸72を支持するための支持部22dを有している(図3参照)。
【0023】
各ピストン31,32,33,34は、図2、図3および図5に示したように、各シリンダ21a,21b,22a,22bに周知のように液密的かつロータ軸方向に摺動可能に組付けられていて、ディスクロータ10を挟んで対向配置されている。また、各ピストン31,32,33,34は、ディスクロータ10の制動時に、各シリンダ21a,21b,22a,22bとの間に形成される油室Rcにブレーキマスタシリンダ(図示省略)から供給される作動油によって押動されて、インナー側ブレーキパッド40,アウター側ブレーキパッド50をディスクロータ10に向けてロータ軸方向に押圧可能である。なお、各油室Rcはキャリパ20に設けた油路20aを通して互に連通している。
【0024】
インナー側ブレーキパッド40は、図2、図4、図5および図6に示したように、裏板41と、この裏板41に固着したライニング42によって構成されている。また、インナー側ブレーキパッド40は、図2、図4および図6に示したように、キャリパ20のインナーハウジング部21側に配置されていて、裏板41にてインナー側内周支持軸61とアウター側外周支持軸72に組付けられていて、インナー側内周支持軸61の軸心回りに所定量(僅かな量)回転可能に組付けられている。
【0025】
裏板41は、図2、図4、図5および図6に示したように、平板状に形成されていて、ライニング42よりロータ径方向内側に延在しV字状の内周側トルク受け面41aを形成してなる内側部41Aを有するとともに、ライニング42よりロータ径方向外側に延在しV字状の外周側トルク受け面41bを形成してなる外側部41Bを有している。内周側トルク受け面41aは、ライニング42のロータ径方向内側かつロータ周方向中央部に設けられている。外周側トルク受け面41bは、ライニング42のロータ径方向外側かつロータ周方向中央部に設けられている。
【0026】
また、裏板41には、図8および図12に示したように、内シムISaが係合する一対の外周係合面41c、41dと一対の内周係合面41e、41fが形成されるとともに、外シムISbが係合するリーディング側係合面41gとトレーリング側係合面41hと一対の外周係合面41i、41jと内周係合面41kが形成されている。一対の外周係合面41c、41dと一対の内周係合面41e、41fと内周係合面41kは直線状に形成されている。一方、リーディング側係合面41gとトレーリング側係合面41hと一対の外周係合面41i、41jはインナー側内周支持軸61の軸心を中心とする円弧形状に形成されている。なお、内周係合面41e、41fとリーディング側係合面41gとトレーリング側係合面41hは、裏板41に凹部を形成することにより形成されている。
【0027】
ライニング42は、略扇形にてロータ周方向に延びるように形成されていて、ピストン31,32が内シムISaと外シムISbを介して裏板41を押圧することにより、ディスクロータ10の被制動面10aに摺動可能に圧接してディスクロータ10を制動可能である。なお、ディスクロータ10の正回転制動時(車両前進時のディスクロータ制動時)には、ディスクロータ10の被制動面10aに摺動可能に圧接するライニング42にロータ周方向での回入側から回出側へ摩擦力が作用する。
【0028】
インナー側ブレーキパッド40に組付けた内シムISaは、裏板41とピストン31,32間にて裏板側に配置されていて、裏板41に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、組付けられている。この内シムISaには、一対の外周側係止爪ISa1、ISa2が形成されるとともに、一対の内周側係止爪ISa3、ISa4が形成されている。外周側係止爪ISa1、ISa2は外周係合面41c、41dに固定され、内周側係止爪ISa3、ISa4は内周係合面41e、41fに固定されている。
【0029】
一方、インナー側ブレーキパッド40に組付けた外シムISbは、裏板41とピストン31,32間にてピストン側に配置されていて、裏板41に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、インナー側内周支持軸61の軸心回りに所定量回転可能に(図2参照)、組付けられている。この外シムISbには、リーディング側係止爪ISb1とトレーリング側係止爪ISb2と一対の外周側係止爪ISb3、ISb4が形成されるとともに、内周側係止爪ISb5とストッパISb6が形成されている。リーディング側係止爪ISb1はリーディング側係合面41gに摺動可能に係合し、トレーリング側係止爪ISb2はトレーリング側係合面41hに摺動可能に係合し、外周側係止爪ISb3、ISb4は外周係合面41i、41jに摺動可能に係合している。内周側係止爪ISb5は、内周係合面41kに対して離脱可能に係合している。
【0030】
なお、図2および図8に示した状態(裏板41がトレーリング側に傾動していて、図13の(a)に示した状態と同じ状態)では、リーディング側係止爪ISb1とリーディング側係合面41gの係合部において、リーディング側係合面41gはリーディング側係止爪ISb1に対してロータ径内方に所定量傾動可能であり、トレーリング側係止爪ISb2とトレーリング側係合面41hの係合部において、トレーリング側係合面41hはトレーリング側係止爪ISb2に対してロータ径外方に所定量傾動可能である。
【0031】
ストッパISb6は、アウター側外周支持軸72に対して係合・離脱可能であり、裏板41がアウター側外周支持軸72によってインナー側内周支持軸61上でのトレーリング側への傾動を規制されリーディング側への傾動を許容されているとき(図13の(a)参照)、アウター側外周支持軸72と係合して外シムISbのインナー側内周支持軸61に対するトレーリング側への傾動を規制するように設定されている。また、ストッパISb6は、アウター側外周支持軸72と平面にて係合するように設定されている。
【0032】
上記した内シムISaと外シムISbは、裏板41とピストン31,32間に重ねて介装されていて、内シムISaは裏板41との当接部に例えば耐熱ゴムを配設した金属(ステンレス)プレートで構成され、外シムISbはピストン31,32との当接部に例えば耐熱ゴムを配設した金属(ステンレス)プレートで構成されている。このため、裏板41と内シムISa間の摩擦係数とピストン31,32と外シムISb間の摩擦係数が内シムISaと外シムISb間の摩擦係数に比して大きく設定されている。
【0033】
アウター側ブレーキパッド50は、図3、図4および図5に示したように、裏板51と、この裏板51に固着したライニング52によって構成されている。また、アウター側ブレーキパッド50は、図3および図4に示したように、キャリパ20のアウターハウジング部22側に配置されていて、裏板51にてアウター側内周支持軸71とアウター側外周支持軸72に組付けられていて、アウター側内周支持軸71の軸心回りに所定量(僅かな量)回転可能に組付けられている。
【0034】
裏板51は、図3、図4および図5に示したように、平板状に形成されていて、ライニング52よりロータ径方向内側に延在しV字状の内周側トルク受け面51aを形成してなる内側部51Aを有するとともに、ライニング52よりロータ径方向外側に延在しV字状の外周側トルク受け面51bを形成してなる外側部51Bを有している。内周側トルク受け面51aは、ライニング52のロータ径方向内側かつロータ周方向中央部に設けられている。外周側トルク受け面51bは、ライニング52のロータ径方向外側かつロータ周方向中央部に設けられている。
【0035】
また、裏板51は、上述したインナー側の裏板41に対して面対称の形状に形成されていて、内シムOSaが係合する一対の外周係合面51c、51dと一対の内周係合面51e、51fが形成されるとともに、外シムOSbが係合するリーディング側係合面51gとトレーリング側係合面51hと一対の外周係合面51i、51jと内周係合面51kが形成されている。一対の外周係合面51c、51dと一対の内周係合面51e、51fと内周係合面51kは直線状に形成されている。一方、リーディング側係合面51gとトレーリング側係合面51hと一対の外周係合面51i、51jはアウター側内周支持軸71の軸心を中心とする円弧形状に形成されている。なお、内周係合面51e、51fとリーディング側係合面51gとトレーリング側係合面51hは、裏板51に凹部を形成することにより形成されている。
【0036】
ライニング52は、略扇形にてロータ周方向に延びるように形成されていて、ピストン33,34が内シムOSaと外シムOSbを介して裏板51を押圧することにより、ディスクロータ10の被制動面10bに摺動可能に圧接してディスクロータ10を制動可能である。なお、ディスクロータ10の正回転制動時(車両前進時のディスクロータ制動時)には、ディスクロータ10の被制動面10bに摺動可能に圧接するライニング52にロータ周方向での回入側から回出側へ摩擦力が作用する。
【0037】
アウター側ブレーキパッド50に組付けた内シムOSaは、裏板51とピストン33,34間にて裏板側に配置されていて、裏板51に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、組付けられている。この内シムOSaには、一対の外周側係止爪OSa1、OSa2が形成されるとともに、一対の内周側係止爪OSa3、OSa4が形成されている。外周側係止爪OSa1、OSa2は外周係合面51c、51dに固定され、内周側係止爪OSa3、OSa4は内周係合面51e、51fに固定されている。
【0038】
一方、アウター側ブレーキパッド50に組付けた外シムOSbは、裏板51とピストン33,34間にてピストン側に配置されていて、裏板51に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、アウター側内周支持軸71の軸心回りに所定量回転可能に(図3参照)、組付けられている。この外シムOSbには、リーディング側係止爪OSb1とトレーリング側係止爪OSb2と一対の外周側係止爪OSb3、OSb4が形成されるとともに、内周側係止爪OSb5とストッパ(図示省略)が形成されている。リーディング側係止爪OSb1はリーディング側係合面51gに摺動可能に係合し、トレーリング側係止爪OSb2はトレーリング側係合面51hに摺動可能に係合し、外周側係止爪OSb3、OSb4は外周係合面51i、51jに摺動可能に係合している。内周側係止爪OSb5は、内周係合面51kに対して離脱可能に係合している。
【0039】
なお、図3に示した状態(裏板51がトレーリング側に傾動している状態)では、リーディング側係止爪OSb1とリーディング側係合面51gの係合部において、リーディング側係合面51gはリーディング側係止爪OSb1に対してロータ径内方に所定量傾動可能であり、トレーリング側係止爪OSb2とトレーリング側係合面51hの係合部において、トレーリング側係合面51hはトレーリング側係止爪OSb2に対してロータ径外方に所定量傾動可能である。
【0040】
ストッパ(図示省略)は、アウター側外周支持軸72に対して係合・離脱可能であり、裏板51がアウター側外周支持軸72によってアウター側内周支持軸71上でのトレーリング側への傾動を規制されリーディング側への傾動を許容されているとき、アウター側外周支持軸72と係合して外シムOSbのアウター側内周支持軸71に対するトレーリング側への傾動を規制するように設定されている。また、ストッパは、アウター側外周支持軸72と平面にて係合するように設定されている。
【0041】
上記した内シムOSaと外シムOSbは、裏板51とピストン33,34間に重ねて介装されていて、内シムOSaは裏板51との当接部に例えば耐熱ゴムを配設した金属(ステンレス)プレートで構成され、外シムOSbはピストン33,34との当接部に例えば耐熱ゴムを配設した金属(ステンレス)プレートで構成されている。このため、裏板51と内シムOSa間の摩擦係数とピストン33,34と外シムOSb間の摩擦係数が内シムOSaと外シムOSb間の摩擦係数に比して大きく設定されている。
【0042】
インナー側内周支持軸61とアウター側内周支持軸71は、図4に示したように、キャリパ20の各支持部21cと22cにそれぞれ螺着されていて、ロータ軸方向に延びている。また、アウター側外周支持軸72は、キャリパ20の各支持部21dと22dにそれぞれ挿通されていて、インナー側外周支持軸62の先端部に設けた雄ねじ部62aをアウター側外周支持軸72の先端部に設けた雌ねじ部72aに螺合することにより、インナー側外周支持軸62と連結されている。
【0043】
板バネ81は、キャリパ20の支持部21cにネジ91を用いて組付けられていて、インナー側ブレーキパッド40の回入側部位が回出側部位に比してロータ径方向外側となるように、裏板41の回出側部位外周をロータ径方向内側に向けて付勢している。一方、板バネ82は、キャリパ20の支持部22cにネジ92を用いて組付けられていて、アウター側ブレーキパッド50の回入側部位が回出側部位に比してロータ径方向外側となるように、裏板51の回出側部位外周をロータ径方向内側に向けて付勢している。
【0044】
これにより、インナー側ブレーキパッド40の裏板41が、内周側トルク受け面41aの図2におけるインナー側内周支持軸61に対する1時から2時の位置と10時から11時の位置の2箇所にて、インナー側内周支持軸61に隙間ゼロで係合するとともに、外周側トルク受け面41bの図2におけるアウター側外周支持軸72に対する7時から8時の位置の1箇所にて、アウター側外周支持軸72に隙間ゼロで係合している。
【0045】
一方、アウター側ブレーキパッド50の裏板51が、内周側トルク受け面51aの図3におけるアウター側内周支持軸71に対する1時から2時の位置と10時から11時の位置の2箇所にて、アウター側内周支持軸71に隙間ゼロで係合するとともに、外周側トルク受け面51bの図3におけるアウター側外周支持軸72に対する4時から5時の位置の1箇所にて、アウター側外周支持軸72に隙間ゼロで係合している。
【0046】
上記のように構成した実施形態においては、ブレーキペダル(図示省略)の踏込みに伴って、ブレーキマスタシリンダ(図示省略)から各油室Rcに向けて作動油が供給されると、各ピストン31,32,33,34がディスクロータ10に向けて押動されてインナー側ブレーキパッド40,アウター側ブレーキパッド50をディスクロータ10に向けて押圧する。これにより、インナー側ブレーキパッド40,アウター側ブレーキパッド50のライニング42,52がディスクロータ10の被制動面10a,10bに摺動可能に圧接して、ディスクロータ10を制動する。なお、ブレーキペダル(図示省略)の踏込みが解除されて、各油室Rcからブレーキマスタシリンダ(図示省略)に向けて作動油が排出されると、上述したディスクロータ10の制動は解除される。
【0047】
ところで、上記のように構成した実施形態においては、ディスクロータ10の制動時(正回転制動時)、各ブレーキパッド40,50におけるV字状の内周側トルク受け面41a,51aと各内周支持軸61,71の係合部2箇所と、各ブレーキパッド40,50におけるV字状の外周側トルク受け面41b,51bと外周支持軸72の係合部1箇所の合計3箇所にて、制動時のトルクが受けられるため、制動時のトルクを不安定な平面で受ける場合(例えば、上記した特許文献1のディスクブレーキ装置のような場合)に比して、各ブレーキパッド40,50の挙動が安定する。このため、制動時の不安定挙動に伴うブレーキ鳴きの発生を抑制することが可能である。また、制動時のトルクを受ける箇所の面積(加工面積)が、制動時のトルクを不安定な平面で受ける場合に比して、削減できて、加工コストを低減することが可能である。
【0048】
また、この実施形態においては、制動時のトルクを受ける箇所が、各ライニング42,52のロータ径方向内側であってロータ周方向中央部の位置と、各ライニング42,52のロータ径方向外側であってロータ周方向中央部の位置であり、これらの位置は各ライニング42,52のロータ周方向端面から大きく離れていない(モーメントアームが短い)。このため、上記した特許文献1のディスクブレーキ装置に比して、制動時に生じる各ブレーキパッド40,50の巻き込みモーメントを小さくすることが可能であり、各ライニング42,52のディスクロータ10に対する面圧分布を均一化することが可能であるとともに、各ライニング42,52のロータ周方向での偏摩耗を抑制することが可能である。
【0049】
また、この実施形態においては、各裏板41,51が各板バネ81,82によって回出側部位外周をロータ径方向内側に向けて付勢されていて、各ブレーキパッド40,50の回入側部位が回出側部位に比してロータ径方向外側となるように設定されている。したがって、制動時のトルクを受ける3箇所が、各板バネ81,82の付勢力により制動前に予め係合(当接)している。このため、ディスクロータ10の非制動時に、キャリパ20に組付けた各支持軸上61,62,71,72での各ブレーキパッド40,50のガタつきを抑制することが可能であるとともに、例えば、車両前進時(ディスクロータ10の正回転時)のディスクロータ制動初期のような、制動に際して、各ブレーキパッド40,50の裏板41,51と各外周支持軸62,72が当接することがなくて、クロンク音(各裏板41,51が各外周支持軸62,72に当接することによって生じる打音)の発生を抑制する(無くす)ことが可能である。
【0050】
なお、ディスクロータ10の逆回転制動時には、その制動初期に、各ブレーキパッド40,50の裏板41,51が外周支持軸72に当接して、クロンク音が発生するものの、その後の制動においては、ディスクロータ10の正回転制動時の作動と同様の作動が得られる。したがって、ディスクロータ10の逆回転制動時(車両後進時のディスクロータ制動時)においても、ディスクロータ10の正回転制動時(車両前進時のディスクロータ制動時)に得られる作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0051】
また、上記のように構成した実施形態においては、内シムISa,OSaが、裏板41,51に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、組付けられ、外シムISb,OSbが、裏板41,51に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、内周支持軸61,71の軸心回りに所定量回転可能に、組付けられている。このため、非制動時に内シムISa,OSaおよび外シムISb,OSbの裏板41,51に対する動き(シム振動)を抑制することが可能であり、このシム振動に起因するラトル音を抑制することが可能である。
【0052】
また、上記のように構成した実施形態においては、制動時において、裏板41,51(ブレーキパッド)が内周支持軸61,71に対して傾動する際に、裏板41,51が外シムISb,OSb(ピストン31・32,33・34によって動きを規制されている)によって傾動を阻害されないようにすることが可能である。このため、制動時に得られる内シムISa,OSaと外シムISb,OSb間の相対移動を所期のものとすることが可能であり、内シムISa,OSaと外シムISb,OSb間の相対移動によって得られるブレーキ鳴き防止機能を有効に発揮させることが可能である。
【0053】
また、上記のように構成した実施形態では、外シムISb,OSbに外周支持軸72に対して係合・離脱可能なストッパ(ISb6)が設けられていて、裏板41,51が外周支持軸72によって内周支持軸61,71上でのトレーリング側への傾動を規制されリーディング側への傾動を許容されているとき、ストッパ(ISb6)が外周支持軸72と係合して外シムISb,OSbの内周支持軸61,71に対するトレーリング側への傾動を規制するように設定されている。これにより、外シムISb,OSbが外力で内周支持軸61,71に対してトレーリング側へ傾動することを防止することができる。このため、図13の(a)に示したように、裏板41,51に対して外シムISb,OSbを所期の状態に維持することができて、裏板41,51が内周支持軸61,71に対してリーディング側へ傾動する際(図13の(b)参照)の円滑な動きを保証することが可能である。
【0054】
また、ストッパ(ISb6)が、外周支持軸72と平面にて係合するように設定されているため、ストッパ(ISb6)による外周支持軸72への傷付けを抑制することが可能である。このため、外周支持軸72に対する裏板41,51の円滑な動き(ブレーキパッドのロータ軸方向での円滑な動き)を長期間保証することが可能である。
【0055】
上記した実施形態においては、外シムISb,OSbのリーディング側係止爪ISb1,OSb1、トレーリング側係止爪ISb2,OSb2、外周側係止爪ISb3、ISb4,OSb3、OSb4を、内周支持軸61,71の軸心を中心とする円弧状に形成して実施したが、これらの係止爪を直線状に形成して実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、外シムISb,OSbの外周側係止爪を一対として実施したが、これら外周側係止爪の何れか一方を無くして実施することも可能である。
【0056】
また、上記した実施形態においては、外シムISb,OSbに5個の係止爪を設けて実施したが、例えば裏板41を図14に示した形状(内周支持軸61の両側に内周支持軸61の軸心を中心とする円弧状の内周係合面41m、41nが形成されている)に形成可能である場合には、上記した実施形態のリーディング側係止爪ISb1、トレーリング側係止爪ISb2、内周側係止爪ISb5の3個に代えて、内周係合面41m、41nに係合する一対の内周側係止爪ISb6、ISb7を採用して実施することも可能である。なお、この場合には、裏板41のリーディング側係合面41g、トレーリング側係合面41h、内周係合面41kが不要である。
【0057】
また、上記した実施形態においては、板バネ81,82を用いて、インナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50がロータ径方向内側に向けて付勢されるとともに、各ブレーキパッドの回入側部位が回出側部位に比してロータ径方向外側となるように付勢されるように構成して実施したが、付勢部材の種類は板バネに限定されるものではなく、例えば、棒バネであってもよく、適宜変更して実施することが可能である。
【0058】
また、上記した実施形態においては、インナー側外周支持軸62とアウター側外周支持軸72が螺合連結によって一体的に連結される構成として実施したが、これらが別個に構成されるようにして実施することも可能である。
【0059】
また、上記した実施形態においては、キャリパ20が、ディスクロータ10の外周部の一部分を跨いで対向するインナーハウジング部21とアウターハウジング部22を備えるとともに、これらを連結する一対の連結部23,24を備えていて、これらが一体的に形成されているものを採用して実施したが、キャリパのインナーハウジング部とアウターハウジング部をロータ軸方向にて二分割して、これらを複数の連結ボルトで連結して構成したキャリパを採用して実施することも可能である。
【0060】
また、上記した実施形態においては、キャリパ20のインナーハウジング部21とアウターハウジング部22に形成されているシリンダがそれぞれ二個ずつであるように構成して実施したが、キャリパのインナーハウジング部とアウターハウジング部に形成されているシリンダと、これに組付けるピストンをそれぞれ一個または三個以上設けて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
DB1…ディスクブレーキ装置、10…ディスクロータ、10a,10b…被制動面、20…キャリパ、21…インナーハウジング部、22…アウターハウジング部、23,24…連結部、31,32,33,34…ピストン、40…インナー側ブレーキパッド、50…アウター側ブレーキパッド、41,51…裏板、41a,51a…内周側トルク受け面、41b,51b…外周側トルク受け面、41c、41d,51c、51d…外周係合面、41e、41f,51e、51f…内周係合面、41g,51g…リーディング側係合面、41h,51h…トレーリング側係合面、41i、41j,51i、51j…外周係合面、41k,51k…内周係合面、42,52…ライニング、ISa,OSa…内シム、ISa1、ISa2,OSa1、OSa2…外周側係止爪、ISa3、ISa4,OSa3、OSa4…内周側係止爪、ISb,OSb…外シム、ISb1,OSb1…リーディング側係止爪、ISb2,OSb2…トレーリング側係止爪、ISb3、ISb4,OSb3、OSb4…外周側係止爪、ISb5,OSb5…内周側係止爪、ISb6…ストッパ、61…インナー側内周支持軸、62…インナー側外周支持軸、71…アウター側内周支持軸、72…アウター側外周支持軸、81,82…板バネ(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に組付けられて同回転体と一体的に回転するディスクロータと、このディスクロータの一部の外周を跨ぐようにして支持体に組付けられるキャリパと、前記ディスクロータを挟持可能に配置されて前記キャリパに支持軸を介してロータ軸方向にて移動可能に支持される一対のブレーキパッドと、前記キャリパに組付けられて前記各ブレーキパッドを前記ディスクロータに向けて押圧するピストンを備えていて、前記ピストンが前記各ブレーキパッドの裏板を押圧することにより、前記各ブレーキパッドのライニングが前記ディスクロータの被制動面に摺動可能に圧接して、前記ディスクロータが制動されるように構成されているディスクブレーキ装置において、
前記各ブレーキパッドは付勢部材によってロータ径方向内側に向けて付勢され、前記支持軸は、前記キャリパに一体的に設けられていて前記各ライニングのロータ径方向内側かつロータ周方向中央部にて前記各裏板に設けたV字状の内周側トルク受け面に2箇所にて係合する単一の内周支持軸と、前記キャリパに一体的に設けられていて前記各ライニングのロータ径方向外側かつロータ周方向中間部にて前記各裏板に設けた外周側トルク受け面に1箇所にて係合する外周支持軸によって構成されていて、前記各ブレーキパッドは前記内周支持軸の軸心回りに所定量回転可能に組付けられており、
前記各裏板と前記各ピストン間には、裏板側に配置される内シムと、ピストン側に配置される外シムが重ねて介装されていて、前記裏板と前記内シム間の摩擦係数と前記ピストンと前記外シム間の摩擦係数が前記内シムと前記外シム間の摩擦係数に比して大きく設定されており、
前記内シムは、前記裏板に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、組付けられ、
前記外シムは、前記裏板に対して、ロータ径方向およびロータ周方向にて一体的に移動可能に、ロータ軸方向にて相対移動可能に、前記内周支持軸の軸心回りに所定量回転可能に、組付けられていることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスクブレーキ装置において、前記外シムには、前記裏板におけるロータ周方向のリーディング側端面に形成したリーディング側係合面に係合するリーディング側係止爪と、前記裏板におけるロータ周方向のトレーリング側端面に形成したトレーリング側係合面に係合するトレーリング側係止爪と、前記裏板におけるロータ径方向の外周側端面に形成した外周係合面に係合する外周側係止爪と、前記裏板におけるロータ径方向の内周側端面に形成した内周係合面に係合する内周側係止爪が設けられ、
前記裏板の前記リーディング側係合面、前記トレーリング側係合面および前記外周係合面が前記内周支持軸の軸心を中心とする円弧形状に形成され、
前記裏板が前記外周支持軸によって前記内周支持軸上でのトレーリング側への傾動を規制されリーディング側への傾動を許容されている状態では、前記外シムの前記内周側係止爪が前記裏板の前記内周係合面に対して離脱可能に係合していることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のディスクブレーキ装置において、前記外シムには、前記裏板における前記外周側トルク受け面のロータ周方向両側に形成された一対の外周係合面に係合する一対の外周係止爪が設けられているとともに、前記裏板における前記内周側トルク受け面のロータ周方向両側に形成された一対の内周係合面に係合する一対の内周係止爪が設けられていて、前記裏板に形成された前記一対の外周係合面と前記一対の内周係合面が共に前記内周支持軸の軸心を中心とする円弧形状の形成されていることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のディスクブレーキ装置において、前記外シムには前記外周支持軸に対して係合・離脱可能なストッパが設けられていて、前記裏板が前記外周支持軸によって前記内周支持軸上でのトレーリング側への傾動を規制されリーディング側への傾動を許容されているとき、前記ストッパが前記外周支持軸と係合して前記外シムの前記内周支持軸に対するトレーリング側への傾動を規制するように設定されていることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のディスクブレーキ装置において、前記ストッパは、前記外周支持軸と平面にて係合するように設定されていることを特徴とするディスクブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−241951(P2011−241951A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116773(P2010−116773)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】