説明

ディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置

【課題】簡易な方法で製造することのできるディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】ディスク回転用モータとしてのモータ100は、シャフト13と、シャフト13の外径側においてシャフト13を回転可能に支持する軸受30と、軸受30を固定するステータ20とを備えている。ステータ20は、軸受30の外周面に取り付けられたステータコア21と、ステータコア21に巻回されたステータコイル22と、ステータコア21とステータコイル22とを互いに絶縁するインシュレータ26とを含んでいる。シャフト13はシャフト13の外周面に形成された溝13aを含み、インシュレータ26は溝13aと係合する抜け止めワッシャ部26aを含み、抜け止めワッシャ部26aはインシュレータ26の内径側端部に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置に関し、より特定的には、簡易な方法で製造することのできるディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクや光磁気ディスクなどの情報を記録した記録媒体について、情報の書き込みまたは読み出しを行う際には、ディスク駆動装置を用いてディスクが回転される。ディスク駆動装置は、ディスクを回転するためのディスク回転用モータを含んでいる。従来のディスク回転用モータに関連する技術は、たとえば下記特許文献1に開示されている。
【0003】
下記特許文献1には、シャフトと、シャフトにインサート成形されたインペラと、シャフトとともに滑り軸受を構成するスリーブと、スリーブが圧入固定された軸受保持部と、軸受保持部の外周側面に固定されたステータとを備えた送風ファンが開示されている。ステータは、ステータコアと、インシュレータと、インシュレータを介してステータコアに巻設されたコイルとを含んでいる。インシュレータの内径側端部は、軸受保持部を超えてインペラに向かって突出した突出部を含んでいる。インシュレータの突出部にインペラの大径部が軸線方向に引っかかることにより、スリーブに対するシャフトの抜け止めが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−236189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスク回転用モータは、近年、低価格化が強く要求されている。ディスク回転用モータの低価格化を実現するためには、ディスク回転用モータを簡易な方法で製造する必要がある。たとえば、ディスク回転用モータの部品点数を削減したり、ディスク回転用モータを構成する部品の加工方法として、切削加工のような比較的複雑な(高価な)加工方法ではなく、プレス加工などの比較的簡単な(安価な)方法を用いたりすることが必要である。さらに、各部品を組み立てる際には、複雑な締結方法ではなく、圧入に代表されるような比較的容易な(安価な)締結方法を採用し、かつ組立て精度を保つことが必要である。従来の技術では、製造方法の簡易化の観点で更なる改善の余地があった。特に特許文献1では、インシュレータが軸受保持部を超えてインペラに向かって突出した構成を有しているため、インシュレータの形状が複雑であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、簡易な方法で製造することのできるディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に従うディスク回転用モータは、回転軸と、回転軸の外径側において回転軸を回転可能に支持する軸受と、軸受を固定するステータとを備え、ステータは、軸受の外周面に取り付けられたステータコアと、ステータコアに巻回されたコイルと、ステータコアとコイルとを互いに絶縁するインシュレータとを含み、回転軸は回転軸の外周面に形成された溝を含み、インシュレータは溝と係合する係合部を含み、係合部はインシュレータの内径側端部に形成される。
【0008】
上記ディスク回転用モータにおいて好ましくは、係合部は、係合部の一方の面と係合部の内径側端面との間の境界に形成された曲面状の面取り部と、係合部の他方の面と係合部の内径側端面との間の境界に形成された角状部とを含み、面取り部の曲率半径は角状部の曲率半径よりも大きい。
【0009】
上記ディスク回転用モータにおいて好ましくは、回転軸の一方の端部を支持するブラケットをさらに備え、溝は、軸受とブラケットとの間の位置に形成される。
【0010】
上記ディスク回転用モータにおいて好ましくは、インシュレータは、ステータコアとコイルとの間に形成されたインシュレータ本体と、インシュレータ本体と係合部との間において回転軸の延在方向に沿って延在する延在部とをさらに含み、軸受は、軸受の外周面端部において内径側に凹んだ凹部であって、延在部と係合する凹部を含む。
【0011】
上記ディスク回転用モータにおいて好ましくは、ステータコアは、回転軸の延在方向に沿って積層された第1および第2のプレートを含み、第1のプレートは、回転軸の延在方向に沿って第2のプレートに積層された積層部と、積層部の内径側において積層部から第2のプレートの方へ折り曲げられた折り曲げ部であって、軸受の外周面に接触する折り曲げ部とを含む。
【0012】
本発明の他の局面に従うディスク駆動装置は、上記のディスク回転用モータと、ディスク回転用モータの駆動状態を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な方法で製造することのできるディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態におけるディスク駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるディスク回転用モータの構成を模式的に示す底面図である。
【図3】図2のIV−IV線に沿う断面斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】ロータ10に面している側から見た場合のインシュレータ26の構成を示す斜視図である。
【図6】ブラケット23に面している側から見た場合のインシュレータ26の構成を示す斜視図である。
【図7】ロータ10に面している側から見た場合のプレート52または53の構成を示す斜視図である。
【図8】ロータ10に面している側から見た場合のブラケット23の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施の形態におけるディスク回転用モータの製造方法の第1工程を示す斜視図であり、得られたステータコア21をロータ10に面している側から見た場合の斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態におけるディスク回転用モータの製造方法の第1工程を示す斜視図であり、得られたステータコア21をブラケット23に面している側から見た場合の斜視図である。
【図11】本発明の一実施の形態におけるディスク回転用モータの製造方法の第2工程を示す斜視図であり、得られた巻線組立体をロータ10に面している側から見た場合の斜視図である。
【図12】本発明の一実施の形態におけるディスク回転用モータの製造方法の第2工程を示す斜視図であり、得られた巻線組立体をブラケット23に面している側から見た場合の斜視図である。
【図13】本発明の一実施の形態におけるディスク回転用モータの製造方法の第3工程を示す斜視図である。
【図14】本発明の一実施の形態におけるディスク回転用モータの製造方法の第4工程を示す斜視図である。
【図15】本発明の一実施の形態におけるディスク回転用モータの製造方法の第5工程を示す斜視図である。
【図16】本発明の第1の変形例のディスク回転用モータにおける抜け止めワッシャ部26a付近の構成を模式的に示す断面図である。
【図17】本発明の第2の変形例におけるディスク回転用モータの構成を模式的に示す断面図である。
【図18】ロータ10に面している側から見た場合のプレート51の構成を示す斜視図である。
【図19】ブラケット23に面している側から見た場合のプレート51の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
以降の説明において、「外径側」とは、ディスク回転用モータの回転軸を中心とした場合の外径側を意味しており、「内径側」とは、ディスク回転用モータの回転軸を中心とした場合の内径側を意味している。「外周面」とは、ディスク回転用モータの回転軸を中心とした場合の外周面を意味しており、「内周面」とは、ディスク回転用モータの回転軸を中心とした場合の内周面を意味している。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態におけるディスク駆動装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1を参照して、本実施の形態におけるディスク駆動装置は、ディスク回転用モータとしてのモータ100と、オンオフや回転速度などのモータ100の駆動状態を制御する制御部200とを備えている。
【0019】
図2〜図4は、本発明の一実施の形態におけるディスク回転用モータの構成を模式的に示す図である。図2は底面図であり、図3は図2のIV−IV線に沿う断面斜視図であり、図4は図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【0020】
図2〜図4を参照して、モータ100は、ロータ10と、ステータ20と、軸受30とを主に含んでいる。ロータ10はステータ20に対して回転可能である。軸受30は、ロータ10をステータ20に対して回転可能に支持している。
【0021】
ロータ10は、ロータフレーム11と、マグネット12と、回転軸であるシャフト13とを含んでいる。ロータフレーム11は、ロータフレーム11内部からの磁界の漏れを防ぐものであり、たとえば磁性体よりなっている。ロータフレーム11は、ターンテーブル部11aと、側壁部11bとを含んでいる。ターンテーブル部11aは、シャフト13の延在方向(以降、軸方向と呼ぶことがある)に対してたとえば垂直な方向(図4中横方向)に延在している。ターンテーブル部11aは平面的に見て円形状を有している。ターンテーブル部11aの中心部にはシャフト13を通すための孔60が設けられており、ロータフレーム11は孔60においてシャフト13に固定されている。側壁部11bは、ターンテーブル部11aの外径側端部からステータ20のブラケット23へ(図4中下方向へ)向かって延在している。側壁部11bは円筒形状を有している。
【0022】
マグネット12は、側壁部11bの内周面に取り付けられている。マグネット12は環状を有しており、N極に着磁された領域と、S極に着磁された領域とが円周方向に沿って一定周期で交互に設けられている。マグネット12は、ステータ20と対向するようにロータフレーム11に取り付けられている。
【0023】
シャフト13は、ロータフレーム11の中央部を貫くように図4中縦方向に延在している。ロータフレーム11は、シャフト13を中心としてシャフト13とともに回転可能である。シャフト13は、シャフト13の外径側に配置された軸受30によって回転可能に支持されている。シャフト13は、図4中下端部付近の外周面に形成された溝13aを含んでいる。溝13aは、軸受30とブラケット23との間の位置に形成されている。
【0024】
ステータ20は、ステータコア21(コア)と、ステータコイル22と、ブラケット23と、底板24と、スラスト板25と、インシュレータ26および27とを含んでいる。ステータコア21は、軸受30の外周面に取り付けられており、ブラケット23に対してたとえばバーリングカシメにより固定されている。ステータコア21は、内径側から外径側へ向かって放射状に延びるように形成される複数のティース部21aを含んでいる。ステータコイル22は、複数のティース部21aの各々の周囲に巻回されている。底板24は、たとえば磁性体よりなっており、ブラケット23におけるロータ10側の面に固定されている。スラスト板25は、たとえば円形状であり、シャフト13の図4中下端部と接触する接触面を含んでいる。スラスト板25は、シャフト13のスラスト方向の荷重を受ける。
【0025】
ステータコア21は、その中央部に形成された孔21b(コア中央孔)と、孔21bを中心とする円周上の複数(たとえば3カ所)の位置に、等間隔に形成された孔21c(周辺貫通孔)とを含んでいる。孔21bおよび孔21cの各々は、ステータコア21を軸方向に貫通している。孔21bには軸受30が圧入されており、それにより軸受30はステータコア21に固定されている。
【0026】
ステータコア21は、複数枚のプレートが軸方向に積層された構造を有している。ステータコア21は、たとえばプレート52および53の2種類の形状を有するプレート(積層コア)により構成されている。プレート52および53の各々は互いに接触しており、ロータフレーム11側(図4中上側)からブラケット23側(図4中下側)へ向かって、軸方向に沿ってこの順序で積層されている。プレート52および53の各々の枚数は任意である。
【0027】
インシュレータ26および27は、ステータコア21とステータコイル22とを互いに絶縁している。インシュレータ26および27は、ステータコア21の表面全体を覆うように形成されている。インシュレータ26はステータコア21の図4中下部を覆っている。インシュレータ27はステータコア21の図4中上部を覆っている。複数のティース部21a(コア突極)には、インシュレータ26または27を挟んでステータコイル22の各々が巻回されている。インシュレータ26および27は、樹脂材のような可撓性を有する材料よりなることが好ましい。
【0028】
軸受30は、たとえばメタルオイルを含有する多孔質材料よりなっている。軸受30は、外周面における図4中下端部において、内径側に凹んだ凹部30aを含んでいる。
【0029】
モータ100は、調芯部材41と、クッションラバー42とをさらに含んでいる。ターンテーブル部11aは、その内径側端部11cが図4中上方に折り曲げられている。調芯部材41は、内径側端部11cの外周面に固定されている。調芯部材41と内径側端部11cとの間には図示しないバネが設けられており、調芯部材41は外径方向に付勢されている。クッションラバー42は、ターンテーブル部11aの図4中上面に配置されている。ディスク駆動装置にディスク80をセットする際には、ディスク80は、その中心部の孔80aが調芯部材41にはめ込まれるように、クッションラバー42上に配置される。調芯部材41はバネの作用によりディスク80の孔80aの内周面を押圧することで、ディスク80を固定する。クッションラバー42は、ディスク80の図4中上下方向の振動を抑止する。
【0030】
図5および図6は、インシュレータ26の構成を示す斜視図である。図5はロータ10に面している側から見た場合の図であり、図6はブラケット23に面している側から見た場合の図である。
【0031】
図4〜図6を参照して、インシュレータ26は、抜け止めワッシャ部26a(係合部の一例)と、軸受係合部26b(延在部の一例)と、内径部26cと、複数のティース部26d(インシュレータ本体の一例)と、コア被覆部26eと、仕切り部26fとを含んでいる。抜け止めワッシャ部26a、軸受係合部26b、内径部26c、複数のティース部26d、コア被覆部26e、および仕切り部26fの各々は一体的に形成されている。
【0032】
抜け止めワッシャ部26aは、インシュレータ26の内径側端部に設けられており、内径側に突出している。抜け止めワッシャ部26aは、シャフト13の溝13aと係合している。抜け止めワッシャ部26aは、シャフト13の図4中上方向への抜けを防止する。
【0033】
軸受係合部26bは、抜け止めワッシャ部26aの外径側端部と内径部26cの内径側端部との間に形成されており、内径部26cから軸方向に沿って図4中下方向に延在している。軸受係合部26bは、抜け止めワッシャ部26aの一部とともに凹部30aと係合している。
【0034】
内径部26cは、円形状を有しており、軸受係合部26bの図4中上端部から外径方向に延在している。内径部26cには、プレート52および53に形成された孔21cと内応する位置に、複数の孔21cが形成されている。
【0035】
複数のティース部26dの各々は、内径部26cから外径側へ向かって放射状に延びるように形成されている。複数のティース部26dの各々は、ステータコア21の複数のティース部21aの各々と対応する形状を有しており、複数のティース部21aの図4中下面を覆っている。複数のティース部26dの各々は、ステータコア21とステータコイル22との間に形成されている。
【0036】
コア被覆部26eは、複数のティース部26dの各々における周方向の端部から図4中上方向に延在している。コア被覆部26eは、複数のティース部26dの各々の周方向の側面を覆っている。
【0037】
仕切り部26fは、環状を有しており、内径部26cと複数のティース部26dとの境界において、図4中下方向に突出している。
【0038】
なお、インシュレータ27は、インシュレータ26における複数のティース部26d、コア被覆部26e、および仕切り部26fに対応する部材を有しており、インシュレータ26における抜け止めワッシャ部26a、軸受係合部26b、および内径部26cに対応する部材を有していない。
【0039】
図7は、ロータ10に面している側から見た場合のプレート52または53の構成を示す斜視図である。
【0040】
図4および図7を参照して、プレート52(貫通孔大のコア)および53(貫通孔小のコア)は平板状であり、軸方向に沿って互いに積層されている。プレート52には複数のティース部21aと、孔21bおよび孔21cとが形成されている。プレート53には複数のティース部21aと、孔21bおよび21cとが形成されている。プレート52の孔21cは直径d1を有しており、プレート53の孔21cは直径d2を有している。直径d2は直径d1よりも小さい。直径d1は、ブラケット23のバーリング部23dの直径よりもやや大きい。直径d2は、ブラケット23のバーリング部23dとプレート53の孔21cとが互いに係合する程度の大きさである。
【0041】
図8は、ロータ10に面している側から見た場合のブラケット23の構成を示す斜視図である。
【0042】
図4および図8を参照して、ブラケット23は、第1の底部23aと、第2の底部23bと、第3の底部23cと、バーリング部23dと、外縁部23eなどを含んでいる。第1〜第3の底部23a〜23cは、ブラケット23の中央部に形成されており、シャフト13の図4中下端部を支持している。第1の底部23aは、ブラケット23におけるシャフト13の図4中下端部に最も近い位置にあり、図4中横方向に延在している。第2の底部23bは、第1の底部23aの外径側端部と第3の底部23cの内径側端部との間において、軸方向に延在している。第3の底部23cは、第2の底部23bの上端部から図4中横方向に延在している。外縁部23eは、第3の底部23cの外径側端部からステータコア21の外径側端部よりも外径側の位置まで延在している。外縁部23eにおける第1の底部23aを中心とする円周上の複数(たとえば3カ所)の位置には、等間隔に孔が形成されており、バーリング部23dは各孔の周囲に形成されている。バーリング部23dは、孔21cに対応した位置に形成されている。バーリング部23dの各々は、外縁部23eからステータコア21に向かう方向(図4中上方向)に延在している。
【0043】
第1の底部23aは、スラスト板25におけるシャフト13との接触面とは反対側の面でスラスト板25と接触する。第2の底部23bは、スラスト板25の外周を取り囲んでいる。外縁部23eには底板24が形成されている。バーリング部23dは、プレート53の孔21cに挿入されている。バーリング部23dの上端部は、プレート53の孔21cの外径方向に変形されている。これにより、ステータコア21はブラケット23に対して直接締結されている。
【0044】
なお、モータ100は、ロータ10を磁気的に吸引することにより、ロータ10の軸方向における位置を安定させる吸引マグネット(図示無し)をさらに含んでいてもよい。吸引マグネットは、たとえばステータコア21のプレート52と接触するように軸受30の外周面に固定されていてもよい。
【0045】
軸受30と接触するステータコア21の内壁面には、絶縁処理および防油処理が施されることが好ましい。特にステータコア21の内壁面に防油処理を施すことにより、軸受30に含まれているメタルオイルが毛細管現象によってプレート52および53の内部に浸透することを、防止することができる。
【0046】
次に、本実施の形態におけるディスク回転用モータの製造方法の一例について、図9〜図15を用いて説明する。なお、図13および図14では、軸受30が簡略化して示されており、凹部30aは図示されていない。
【0047】
図9および図10を参照して、始めに、たとえば1枚の金属平板に対してプレス加工などの塑性加工を行うことで、プレート52および53を作製する。次に、プレート52および53を積層することにより、ステータコア21を作製する。
【0048】
図11および図12を参照して、次に、インシュレータ26および27によりステータコア21をカバーした後で、ステータコア21の複数のティース部21aの各々にステータコイル22を巻き回す。これにより、巻線組立体が得られる。
【0049】
図13を参照して、続いて、矢印A1で示すように、ブラケット23のバーリング部23dの各々にステータコア21の孔21cの各々を嵌め込む。そして、バーリング部23dの各々に対してカシメ加工を施すことにより、ブラケット23に巻線組立体を実装する。
【0050】
図14を参照して、続いて、矢印A2で示すように、ステータコア21の孔21b内に軸受30を挿入し、軸受30をステータコア21に圧入固定する。
【0051】
その後、ステータコイル22の端末をブラケット23上の基板(図示無し)と半田で接続する。これにより、図15に示すようなステータ20が得られる。
【0052】
図4を参照して、続いて、必要に応じて吸引マグネット(図示無し)を所定の位置に装着する。次に、軸受30内にシャフト13を挿入することにより、ステータ20にロータ10を装着する。この時、インシュレータ26の抜け止めワッシャ部26aは、溝13aと係合する。特にインシュレータ26が樹脂材のような可撓性を有する材料よりなる場合には、シャフト13が孔21bに挿入された時に抜け止めワッシャ部26aは変形し、抜け止めワッシャ部26aが溝13aに挿入されると抜け止めワッシャ部26aは形状に戻る。その結果、ロータ10がステータ20より外れることが抑止される。その後、調芯部材41およびクッションラバー42をロータフレーム11上に設置し、モータ100が完成する。
【0053】
本実施の形態では、ステータコア21に取り付けられたインシュレータ26の一部である抜け止めワッシャ部26aが、シャフト13に形成された溝13aの底部の外径より大きく、かつシャフト13の外周面の直径(外径)より小さく形成されている。この抜け止めワッシャ部26aにより、ロータ10の抜け防止機構が構成されているので、シャフト13の抜け止め用の部品が不要になり、部品点数を抑えることができる。また、軸受ハウジング介さずに軸受30がステータコア21に対して直接固定されるので、インシュレータ26を内径側が軸受ハウジングと干渉することが無くなり、インシュレータ26の内径側端部に抜け止めワッシャ部26aを容易に作ることができ、インシュレータ26を簡易な形状とすることができる。その結果、ディスク回転用モータを簡易な方法で製造することができる。
【0054】
[変形例]
続いて、本発明の実施の形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する構成以外の変形例の構成は、上述の実施の形態と同様であるため、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0055】
図16は、本発明の第1の変形例のディスク回転用モータにおける抜け止めワッシャ部26a付近の構成を模式的に示す断面図である。図16は、回転軸を含む平面で切った場合の断面図である。
【0056】
図16を参照して、インシュレータ26の抜け止めワッシャ部26aは、軸受30側を向いた面(図16中上面)と内径側端面との境界に形成された面取り部90と、ブラケット23側を向いた面(図16中下面)と内径側端面との境界に形成された角状部91とを含んでいる。面取り部90は、曲面状に面取りされた部分であり、角状部91は面取りされていない部分である。面取り部90の曲率半径は角状部91の曲率半径よりも大きい。
【0057】
本変形例によれば、抜け止めワッシャ部26aの図16中上面側が曲面形状を有しており、図16中下面側が平面形状を有していることで、溝13aにインシュレータ26を挿入しやすくなり、かつ溝13aからインシュレータ26が外れにくくなる。
【0058】
図17は、本発明の第2の変形例におけるディスク回転用モータの構成を模式的に示す断面図である。
【0059】
図17を参照して、本変形例のモータ100は、ステータコア21がプレート51をさらに含んでいる点で上述の実施の形態のモータとは異なっている。プレート51は、ステータコア21の図17中上端部において、プレート52上に積層されている。
【0060】
図18および図19は、プレート51の構成を示す斜視図である。図18はロータ10に面している側から見た場合の図であり、図19はブラケット23に面している側から見た場合の図である。
【0061】
図17〜図19を参照して、プレート51(貫通孔大の内曲げコア)は、積層部51aと、筒状の折り曲げ部51bとを含んでいる。積層部51aは平板状であり、軸方向に沿ってプレート52上に積層されている。積層部51aには複数のティース部21aと、孔21cとが形成されている。折り曲げ部51bは、積層部51aの内径側において積層部51aからプレート52の方へ折り曲げられている。折り曲げ部51bは軸方向に延在しており、孔21bを構成している。折り曲げ部51bには軸受30が圧入により締結されており、折り曲げ部51bの内周面は軸受30の外周面に接触している。折り曲げ部51bの外周面はプレート52および53の内径側端部と接触している。折り曲げ部51bは、プレート52および53の内径側端部と軸受30との間に延在している。孔21cは直径d1を有している。
【0062】
なお、プレート51の折り曲げ部51bは、全てのプレート52および53の内径側端部をカバーしている必要は無いが、軸受30に固定されたステータコア21が所望の取付強度を発揮する程度の長さを有していることが望ましい。
【0063】
本変形例によれば、ステータコア21を構成するプレート51の一部を折り曲げた折り曲げ部51bにより、軸受30とステータコア21との間に円筒状の壁面が設けられる。これにより、軸受30のメタルオイルがステータコア21に吸い取られることが抑止される。
【0064】
[その他]
本発明のディスク回転用モータは、上述の実施の形態のような軸回転型のモータの他、軸固定型のモータや、平面対向型のモータなどであってもよい。
【0065】
上述の実施の形態は適宜組み合わせることができる。たとえば、図16に示す抜け止めワッシャ部26aを含むインシュレータ26と、図17〜図19に示すプレート51を含むステータコア21とをディスク回転用モータが備えていてもよい。
【0066】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
10 ロータ
11 ロータフレーム
11a ロータフレームのターンテーブル部
11b ロータフレームの側壁部
11c ターンテーブル部の内径側端部
12 マグネット
13 シャフト
13a シャフトの溝
20 ステータ
21 ステータコア
21a ティース部
21b,21c ステータコアの孔
22 ステータコイル
23 ブラケット
23a,23b,23c ブラケットの底部
23d ブラケットのバーリング部
23e ブラケットの外縁部
24 底板
25 スラスト板
26,27 インシュレータ
26a インシュレータの抜け止めワッシャ部
26b インシュレータの軸受係合部
26c インシュレータの内径部
26d インシュレータのティース部
26e インシュレータのコア被覆部
26f インシュレータの仕切り部
30 軸受
30a 軸受の凹部
41 調芯部材
42 クッションラバー
51,52,53 プレート
51a プレートの積層部
51b プレートの折り曲げ部
60 ターンテーブル部の孔
80 ディスク
80a ディスクの孔
90 抜け止めワッシャ部の面取り部
91 抜け止めワッシャ部の角状部
100 モータ
200 制御部
d1,d2 直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の外径側において前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記軸受を固定するステータとを備え、
前記ステータは、
前記軸受の外周面に取り付けられたステータコアと、
前記ステータコアに巻回されたコイルと、
前記ステータコアと前記コイルとを互いに絶縁するインシュレータとを含み、
前記回転軸は前記回転軸の外周面に形成された溝を含み、前記インシュレータは前記溝と係合する係合部を含み、前記係合部は前記インシュレータの内径側端部に形成される、ディスク回転用モータ。
【請求項2】
前記係合部は、前記係合部の一方の面と前記係合部の内径側端面との間の境界に形成された曲面状の面取り部と、前記係合部の他方の面と前記係合部の内径側端面との間の境界に形成された角状部とを含み、前記面取り部の曲率半径は前記角状部の曲率半径よりも大きい、請求項1に記載のディスク回転用モータ。
【請求項3】
前記回転軸の一方の端部を支持するブラケットをさらに備え、
前記溝は、前記軸受と前記ブラケットとの間の位置に形成される、請求項1または2に記載のディスク回転用モータ。
【請求項4】
前記インシュレータは、前記ステータコアと前記コイルとの間に形成されたインシュレータ本体と、前記インシュレータ本体と前記係合部との間において前記回転軸の延在方向に沿って延在する延在部とをさらに含み、
前記軸受は、前記軸受の外周面端部において内径側に凹んだ凹部であって、前記延在部と係合する凹部を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスク回転用モータ。
【請求項5】
前記ステータコアは、前記回転軸の延在方向に沿って積層された第1および第2のプレートを含み、
前記第1のプレートは、
前記回転軸の延在方向に沿って前記第2のプレートに積層された積層部と、
前記積層部の内径側において前記積層部から前記第2のプレートの方へ折り曲げられた折り曲げ部であって、前記軸受の外周面に接触する折り曲げ部とを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスク回転用モータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスク回転用モータと、前記ディスク回転用モータの駆動状態を制御する制御部とを備えた、ディスク駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−99008(P2013−99008A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236627(P2011−236627)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【出願人】(504257302)ミネベアモータ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】