説明

ディスプレイパネルへの塗布方法および装置、ディスプレイパネルの製造方法および装置

【課題】レーザによるアスペクト比の高いノズルの穴加工において、ノズルの穴出口にカケ等の欠陥のない穴加工を行い、塗布の精度が高く、経時劣化の影響を小さくしたノズルを提供する。
【解決手段】予め行われたテスト加工で穴内壁に凹部が観察された場合に凹部が観察されなくなるまでレーザ強度を上げる調整を行い、調整されたレーザ強度のレーザを用いて、穴出口に欠陥のない穴を有する硬度の高いノズルユニット5を得る。このノズルユニット5の穴からペーストホルダー7の蛍光体ペーストを吐出させて、ディスプレイパネル4に蛍光体ペーストを精度よく塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルなどの塗布対象物に、蛍光体ペーストなどの塗液を塗布する技術である、ディスプレイパネルへの塗布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイパネルなどの塗布対象物に対し、蛍光体ペーストなどの塗液を塗布する場合、ノズルを用い、そのノズルの穴から塗液を吐出させる方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、ディスプレイパネルは、1日あたり、数千、数万枚製造されるものであって、さらに、ディスプレイの微細化が進んでいるため、1枚のパネルに対して塗布ヘッドを走査させる距離も長くなっている。
【0004】
そのため、塗布に用いるノズルの経時劣化が発生する可能性が高くなり、経時劣化し難いノズルが求められている。
【0005】
しかしながら、経時劣化し難いノズルを形成するために、硬度の高い材料を用いると、そのノズルの穴を高精度に形成することが、困難である。
【0006】
ノズルの穴の加工方法としては、例えば、ドリルを用いた穴加工や、レーザを用いた穴加工が存在する。一般に、レーザを用いた穴加工は、ドリルを用いた穴加工に対して、より硬度の高い材料に対して穴加工できるとされている。
【0007】
従来のレーザによる穴加工法としては、大きく分類して、熱による加工と、アブレーションと呼ばれる直接分解あるいは蒸発による加工とがある。熱加工で一般的に用いられるレーザとしては、連続あるいはパルス炭酸ガスレーザや、連続あるいはパルスYAGレーザの赤外レーザである。また、アブレーション加工に使われるレーザは、パルス幅が非常に短いレーザで、エキシマレーザやピコ秒レーザが知られている。
【0008】
精密な穴をレーザを用いて加工する技術として、例えば、パルスレーザによるアブレーション加工で、穴の中心から外側に向かって加工してゆき、最後に穴形状を決める外周加工をする方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
図11は、従来のレーザによる穴加工法を示す図である。図11に示す穴加工法は、インクジェット式ノズルの加工のため、被加工物上に貫通穴をレーザ加工する方法であって、所望の開口の外周線930より内側で、外周線930を実質上最初に加工しないように、外周線930から十分に離れた一点のアブレーション開始点910でレーザビームを用いて被加工物の表面を最初に照射する工程と、外周線930が変形しないよう制御された可変速度で、ほぼ外周線930の方向にレーザビームを駆動する工程と、外周線930内の材料をほぼ取り除くよう設計されたレーザ駆動パターン920で前記加工物の材料を加工することによって開口を形成する工程を含む方法である。この方法により、穴出口面900外周のカケなどの欠陥を防ぎ、精密な穴加工を行うことができるとされている。また、この場合のレーザ強度は、加工表面の面粗度を維持するため、50mJ/mm程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−192043号公報
【特許文献2】特表2005−533662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ディスプレイパネルに塗布するためのノズルを形成する際に、前述した従来のレーザによる穴加工法では、アスペクト比(穴の径と穴の深さの比)の高い穴加工を行った場合、穴出口に外周のカケなどの欠陥が発生し、目的の穴形状を加工することができない。このため、加工の歩留まりが悪くなる。例えば、厚さ400μmのSUS430の板に直径100μm(アスペクト比:4)の穴を開ける場合に、穴外周にカケ等の欠陥が発生し、目的の穴形状が得られない。そのため、このような加工によって作成されたノズルを用いても、塗布の精度が高くできず、また、経時劣化の影響が小さくできないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明のディスプレイパネルへの塗布方法は、予め行なわれたテスト加工で穴内壁に凹部が観察された場合に前記凹部が観察されなくなるまでレーザ強度を上げる調整を行い、前記調整されたレーザ強度のレーザを用いて形成された穴を有するノズルを用い、前記ノズルの穴から蛍光体ペーストを吐出させてディスプレイパネルに前記蛍光体ペーストを塗布することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のディスプレイパネルへの塗布装置は、予め行なわれたテスト加工で穴内壁に凹部が観察された場合に前記凹部が観察されなくなるまでレーザ強度を上げる調整を行い、前記調整されたレーザ強度のレーザを用いて形成された穴を有するノズルと、前記ノズルに蛍光体ペーストを供給する塗液タンクと、前記ノズルの穴から吐出された蛍光体ペーストが塗布されるディスプレイパネルを載置するための載置部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ノズルを用いた塗布において、塗布の精度が高く、経時劣化の影響が小さいディスプレイパネルへの塗布方法および装置と、それによりディスプレイパネルを製造するディスプレイパネルの製造方法および装置を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1におけるディスプレイパネルへの塗布装置を示す概略図
【図2】本発明の実施の形態1に用いるノズルの穴の上面図(a)と断面図(b)の概略を示す図
【図3】本発明の実施の形態1に用いるノズルのレーザ加工システムの説明図
【図4】図3のノズルのレーザ加工システムによる穴加工の経過の説明図
【図5】ノズルの穴加工の欠陥例(a),(b)を示す説明図
【図6】ノズルの穴加工の欠陥例(a),(b)を示す説明写真を示す図
【図7】ノズルの穴内面を割断して観察した写真を示す図
【図8】溶融現象により穴内面に発生する小穴の説明図
【図9】本発明の実施の形態1におけるノズルのレーザ穴加工法のフローチャート
【図10】本発明の実施の形態2におけるノズルのレーザ穴加工法のフローチャート
【図11】従来のレーザによる穴加工法を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明における実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付して、適宜説明を省略している。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるディスプレイパネルへの塗布装置を示す概略図である。本実施の形態1では、塗布対象となるディスプレイパネルがプラズマディスプレイパネルの場合について説明するが、その他のディスプレイパネルにも適宜条件変更することにより、適用可能である。
【0018】
図1において、ディスプレイパネル4への塗布装置1は、図のy方向に往復移動自在な移動テーブル2と、図のx方向に往復移動自在なヘッドベース3などを有するものである。
【0019】
塗布装置1は、移動テーブル2およびこれに載置したディスプレイパネル4と、ヘッドベース3は、相対的にxy方向に移動する。このヘッドベース3には、ノズルユニット5が装着されており、ディスプレイパネル4に対して2次元座標に基づく数十μmオーダーの蛍光体ペーストの塗布が可能になっている。
【0020】
なお、移動テーブル2、ヘッドベース3、ノズルユニット5の動作は、図示しない制御部により制御される。この制御部は、その記憶部(図示せず)に格納された制御プログラムに基づいて、タンクホルダー6に装着されたペーストホルダー(塗液タンク)7に加圧するポンプ(図示せず)の駆動をも制御し、蛍光体ペーストを塗布するプロセスを実行する。
【0021】
また、ヘッドベース3は、図のz方向に高さ調整可能であり、ノズルユニット5は、R,G,Bの各蛍光体ペーストのペーストホルダー7と接続されている。
【0022】
図1に示すノズルユニット5のノズル部に、図2(a),(b)に示す穴を形成する。図2(a)は、ノズルユニット5のノズル部の一部を図1のz軸方向から見た図であり、図2(b)は、ノズルユニット5のノズル部の一部を図1のxz平面の断面図である。図2(a),(b)に示すように、本実施の形態1のノズルユニット5は、そのノズル部に複数形成された穴8を有し、この穴8より蛍光体ペーストを吐出するものである。図2(b)に示すように、本実施の形態1のノズルユニット5の穴8は、蛍光体ペーストの供給側となるレーザが照射される側のユニット表面5aにテーパ形状を有する。また、ノズルユニット5の穴8は、蛍光体ペースト吐出側となるユニット裏面5bにはテーパなどが存在しないストレート形状を有する。
【0023】
なお、本実施の形態1のノズルユニット5の穴8は、z軸方向から見た場合に、円形状のものを用いているが、この形状としては、楕円形状や、長穴形状(長方形に半円を2つ付けた形状)を用いることも可能である。
【0024】
続いて、ノズルユニット5のノズル部に穴8を形成する方法を説明する。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態1において、レーザによる穴加工法によって塗布用のノズルにレーザ加工を行うことが可能なレーザ加工システム101の構成を示している。ノズルのレーザ加工システム101は、パルスレーザ光を出力するレーザ発生装置105と、レーザ発生装置105を制御するレーザ制御装置(図示せず)と、後述するレンズ等で構成される光学システム106と、光学システム106を制御する光学システム制御装置(図示せず)とを備えている。
【0026】
光学システム106は、レーザ発生装置105から出力されたパルスレーザ光107を反射する第1ミラー104と、シャッター110と、アッテネータ115と、第2ミラー108と、ビームエキスパンダ120と、波長板125と、スキャンミラー130と、テレセントリックレンズ140とを備えている。
【0027】
パルスレーザ光107の最終端には、被加工物155であるノズルユニット5のノズル部が設置される。アッテネータ115は、位相板及び偏光板を備えており、パルスレーザ光107の強度を調整するために用いられる。
【0028】
レーザ発生装置105から出力されたパルスレーザ光107の一部は、第1ミラー104で反射する。第1ミラー104で反射されたパルスレーザ光107は、シャッター110を通った後に、アッテネータ115を通過する。アッテネータ115を通過したパルスレーザ光107は、第2ミラー108で反射し、ビームエキスパンダ120によって適当な倍率で拡大されて、コリメート光となる。そして、コリメート光となったパルスレーザ光107は、偏光方向を調整するための波長板125を通過し、スキャンミラー130で反射した後、テレセントリックレンズ140によって集光され、被加工物155に到達する。そして、集光されたビームによって、被加工物155の加工が行われる。ここで、スキャンミラー130を揺動させながら加工を行うと、被加工物155に対するビームの到達位置が変化する。そのため、被加工物155の表面を層状に削りとることができ、任意の3次元形状に加工することができる。
【0029】
図4は、ノズルのレーザ加工システム101を用いて、被加工物155である板厚400μmのSUS430(フェライト系ステンレス鋼)を用いたノズルユニット5のノズル部に、直径100μmの貫通穴加工を行った際の加工経過を、穴中心軸を含む平面で割断して図示したものである。図3に示すレーザ発生装置105から出力されたレーザはピコ秒レーザで、波長は1053nm、パルス幅約20ps、繰り返し周波数2kHzのものを用いた。テレセントリックレンズ140は焦点距離が200mmのものを用い、その焦点位置は被加工物表面に設定した。図4において、202は被加工物表面、204はレーザ入射方向、205は被加工物底面、210は本来加工されるべき穴形状、215は加工中における所定の時点での加工面である。
【0030】
ここで、実験として、スキャンミラー130を揺動させることによって被加工物表面202に入射したパルスレーザ光107を約400μm/sの速度で渦を描くように移動させることにより、被加工物155を層状にアブレーション加工した。これを複数回、例えば10回繰り返すことにより、穴形状210を得るという方法で、2000個の穴加工を行った。
【0031】
その結果、図5(a),(b)に示すような穴出口の欠陥が50%の貫通穴に発生した。図5(a)はノズルの穴外周に発生するカケの断面図であり、305が穴出口の外周に発生するカケである。また、図5(b)は穴出口近傍に発生するサテライトと呼ばれる欠陥の断面図である。サテライトとは、穴出口側に、本来の加工形状に近接して加工される穴のことであり、このサテライトの直径は本来の加工形状の直径に対して1/10程度である。図5(b)において、306がサテライトである。このサテライト306の穴内面を観察したところ、穴内壁に凹部(横穴)307が生成され、そこから穴出口まで貫通していることがわかった。
【0032】
図6(a)は図5(a)を穴出口側から観察した写真であり、また図6(b)は図5(b)を穴出口側から観察した写真である。前述した渦を描くように移動させる加工方法では、このような欠陥が発生することにより、目的の穴形状210が得られない。
【0033】
ここで、穴外周のカケ及びサテライトの発生メカニズムについて考察する。従来、カケは穴が貫通する瞬間に発生すると考えられ、穴の外周からではなく穴中心付近より貫通させることによってカケの発生を抑制することができると考えられていた。しかしながら、今回の加工対象であるアスペクト比の高い穴加工を行った場合、穴外周のカケだけでなく、図5(b)に示すように、ノズルの穴のレーザ出口側に、ノズルの穴外周のカケ及び本来の加工形状に近接して、直径が1/10程度のサテライトと呼ばれる穴が加工される場合があることがわかった。
【0034】
このサテライトの発生原因としては、穴貫通後に、穴を通過したレーザがステージ等に反射して発生した場合や、レーザが光路上の反射ミラーの裏面反射等で分岐した等の理由で分岐した場合等の理由が考えられる。しかしながら、前者に関してはステージを充分ワーク裏面から離してもサテライトが発生することから除外され、また後者に関しては加工条件によってはサテライトの発生確率が約10%と低いため除外された。
【0035】
図7は、ノズルの穴外周のカケ及びサテライトの発生原因を探るため、穴外周のカケ及びサテライトが発生する条件で加工された穴を被加工物表面202と垂直な面で割断し、穴内壁を観察したものである。図7において、501はレーザ入口側、502はレーザ出口側、307は穴内壁に形成された凹部(横穴)である。穴外周のカケ305及びサテライト306の発生は、この穴内壁に形成された凹部307によるものであると考えられる。
【0036】
このノズルの穴内壁に形成された凹部307は、アスペクト比の高い穴加工をレーザによるアブレーション加工で行う場合、レーザによる熱の蓄積により被加工物155の一部が溶融し、その部分だけ急速に加工が進むことにより発生すると考えられる。この溶融現象は、アスペクト比の低い穴の場合は熱の蓄積が小さく、通常のアブレーション加工のみ行われるため発生しない。この溶融現象は、図8に示すように、直径10μm程度の円錐状の小穴605が加工面215に生成されることで発生する。その場所に再度レーザが照射されると、小穴605内部でレーザが反射を繰り返し、深さ方向及び横方向に小穴605が成長する。この小穴605が横方向に成長したものが穴内壁に形成された凹部(横穴)307であり、さらに深さ方向に成長して穴中心から半径程度離れた場合は穴外周のカケ305となり、穴形状の半径より大きく離れた場合はサテライト306となると考えられる。
【0037】
これらの実験による考察に基づいて、本実施の形態1では、ノズルの小穴605の発生を抑えるために、溶融現象の発生を抑えることが必要であると考えた。
【0038】
当初は、溶融現象を抑えるために加工時のレーザ強度(パワー)を小さくして、ノズルへの熱の蓄積を少なくしようと試みた。しかしながら、レーザ強度を小さくしても、ノズルの穴外周のカケ305及びサテライト306の発生を抑えることはできなかった。そこで、逆に加工時のレーザ強度(パワー)を大きくして加工を行うと、ノズルの穴外周のカケ305及びサテライト306の発生を抑えることができた。
【0039】
ここで、レーザ強度を大きくすることで、ノズルの穴外周のカケ305及びサテライト306の発生が抑えられることについて、その理由を考察する。
【0040】
レーザ強度が小さい場合、ノズルに加工される穴が深くなると、加工粉や穴側壁によってレーザが加工面215まで到達しにくくなり、アブレーション加工が十分に行われず、レーザのエネルギーの一部が熱としてワークに蓄積される。ある一定の深さ(アスペクト比:2程度)に達すると、蓄積された熱により溶融が発生し、ノズルの加工面215に前述の小穴605が発生すると考えられる。一方、レーザ強度が大きい場合は、ノズルの穴が深くなってもレーザが十分に加工面215まで到達し、十分にアブレーション加工が行われるためレーザのエネルギーは熱としてノズルに蓄積されず、小穴605の発生が起こらないと考えられる。
【0041】
つまり、レーザにより被加工物155の加工面215に熱が蓄積し、被加工物155の一部が溶融し、小穴605が発生する。その状態で小穴605内にレーザが照射されることでレーザが小穴605内部で内部反射を起こして小穴605を成長させ、本来の加工形状よりも外側に成長することで穴内壁に加工された凹部(横穴)307となり、さらに成長して被加工物底面205に達する。このようなメカニズムにより、穴出口外周のカケ305や、サテライト306といった穴形状210の欠陥が発生すると考えられる。そのため、穴内壁の窪み(小穴605)が発生しない条件で加工を行うことができれば、最終的に欠陥のないノズルの穴加工を行うことができるということがわかる。
【0042】
図9は、本実施の形態1のレーザによるノズルの穴加工法を示すフローチャートである。図9に示ように、まず、ステップS701において、本加工の前に予めレーザ強度を決定するためのテスト加工を行う。続いて、ステップS702において、加工された穴内壁を割断する(またはプローブ等を使用して検査する)ことで、加工された穴内壁での凹部(横穴)307の有無を確認する。
【0043】
ステップS702で加工された穴内壁に凹部(横穴)307が観察された場合は、ステップS710によりレーザ強度を上げる。また、ステップS702で加工された穴内壁に凹部(横穴)307が観察されなくなった場合、ステップS720により本加工用の被加工物155を供給し、ステップS725により本加工を行う。
【0044】
(表1)にレーザ強度と加工された穴内壁に凹部(横穴)307発生の関係を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
(表1)に示すように、レーザ強度640mJ/mm以上では穴出口外周のカケ305や、サテライト306といった穴形状210の欠陥が発生しないということがわかる。レーザ強度640mJ/mmにより再度2000個の穴加工する本加工を行ったところ、2000個全ての穴において、穴出口外周のカケ305及びサテライト306等の欠陥のない形状を得ることができた。この結果から、レーザ強度640mJ/mm以上とすることで、穴形状の欠陥が発生しないノズルの穴加工が可能であることが分かる。
【0047】
このようにしてレーザにより加工したノズルを用いて、プラズマディスプレイパネルに蛍光体ペーストを塗布して、種々の処理を行うことにより、プラズマディスプレイパネルを作成する。
【0048】
なお、発明者らの追加の実験により、本実施の形態1に記載したフェライト系ステンレス鋼(例えば、SUS430)だけでなく、フェライト系ステンレス鋼よりもさらに硬度の高い、マルテンサイト系ステンレス鋼(例えば、SUS420J2)や析出硬化ステンレス鋼(例えば、SUS630)にも適用することができることが分かった。
【0049】
一般に、フェライト系ステンレス鋼はドリルを用いることで穴を加工することも可能であるが、マルテンサイト系ステンレス鋼や析出硬化ステンレス鋼はドリルで穴を加工することは非常に困難である。そのため、本発明を用いることにより、これらマルテンサイト系ステンレス鋼や析出硬化ステンレス鋼をノズルに用いることを可能とし、さらに硬度の高いノズルを提供することが可能である。
【0050】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2におけるレーザによるノズルの穴加工法を示すフローチャートである。本実施の形態2について、図10に示すフローチャートに沿って説明する。
【0051】
図10において、まず、ステップS801において、本加工の前に予めレーザ強度を決定するためのテスト加工を行う。続いて、ステップS802において、加工された穴内壁を割断する(またはプローブ等を使用して検査する)ことで、加工された穴内壁での凹部(横穴)307の有無を確認する。
【0052】
ステップS802で穴内壁に形成された凹部(横穴)307が観察された場合は、ステップS810によりレーザ強度を上げる。また、ステップS802で穴内壁に加工された凹部(横穴)307が観察されなくなかった場合、ステップS820により本加工用の被加工物155を供給し、ステップS825により本加工を開始する。
【0053】
そして、ステップS830により第1のレーザ加工、すなわち第1レーザ強度による下穴加工を開始し、ステップS835により第1のレーザ加工から第2のレーザ加工にレーザ強度を変化させ、ステップS840により第2のレーザ加工、すなわち第2レーザ強度による仕上げ加工を行う。
【0054】
第2のレーザ加工においては、第1のレーザ加工と比較してレーザ強度の低いレーザを使用する。これは、第1のレーザ強度(前記実施の形態1でのレーザ強度)では、穴内壁の表面粗さや形状精度が充分に調整できない場合があり、いわゆる仕上げのレーザ加工を行なう必要があるためである。これにより、ノズルの穴内壁の表面粗さや形状精度を向上させた穴加工を行うことができる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態2のレーザによるノズルの穴加工法によれば、レーザによるアスペクト比の高い穴加工において、ノズルの穴出口にカケ等の欠陥のない精密な穴加工が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るディスプレイパネルへの塗布方法は、硬度の高いノズルを用いることで、経時劣化を抑えることができ、連続使用するディスプレイパネルへの塗布の用途においても適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 塗布装置
2 移動テーブル
3 ヘッドベース
4 ディスプレイパネル
5 ノズルユニット
6 タンクホルダー
7 ペーストホルダー
8 穴
101 レーザ加工システム
104 第1ミラー
105 レーザ発生装置
106 光学システム
107 パルスレーザ光
108 第2ミラー
109 レーザ計測装置
110 シャッター
115 アッテネータ
120 ビームエキスパンダ
125 波長板
130 スキャンミラー
140 テレセントリックレンズ
155 被加工物
202 被加工物表面
204 レーザ入射方向
205 被加工物底面
210 穴形状
215 加工面
305 カケ
306 サテライト
307 凹部
501 レーザ入口側
502 レーザ出口側
605 小穴
900 穴出口面
910 アブレーション開始点
920 レーザ駆動パターン
930 外周線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め行われたテスト加工で穴内壁に凹部が観察された場合に前記凹部が観察されなくなるまでレーザ強度を上げる調整を行い、前記調整されたレーザ強度のレーザを用いて形成された穴を有するノズルを用い、
前記ノズルの穴から蛍光体ペーストを吐出させてディスプレイパネルに前記蛍光体ペーストを塗布する
ディスプレイパネルへの塗布方法。
【請求項2】
前記ノズルがマルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化ステンレス鋼の板で、前記レーザがパルスレーザである
請求項1に記載のディスプレイパネルへの塗布方法。
【請求項3】
前記ノズルがSUS430の板で、前記レーザがパルスレーザである
請求項1に記載のディスプレイパネルへの塗布方法。
【請求項4】
加工された穴のアスペクト比が4以上である
請求項2または3に記載のディスプレイパネルへの塗布方法。
【請求項5】
前記レーザのレーザ強度が640mJ/mm以上である
請求項2〜4いずれか1項に記載のディスプレイパネルへの塗布方法。
【請求項6】
予め行われたテスト加工で穴内壁に加工された凹部が観察された場合に前記凹部が観察されなくなるレーザ強度である第1のレーザ強度までレーザ強度を上げる調整を行い、前記調整された第1のレーザ強度により第1の本加工を行い、その後、第1のレーザ強度よりも低い第2のレーザ強度にて第2の本加工を行うことで形成された穴を有するノズルを用いる
請求項1〜5いずれか1項に記載のディスプレイパネルへの塗布方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載のディスプレイパネルへの塗布方法を用いる
ディスプレイパネルの製造方法。
【請求項8】
予め行われたテスト加工で穴内壁に凹部が観察された場合に前記凹部が観察されなくなるまでレーザ強度を上げる調整を行い、前記調整されたレーザ強度のレーザを用いて形成された穴を有するノズルと、
前記ノズルに蛍光体ペーストを供給する塗液タンクと、
前記ノズルの穴から吐出された蛍光体ペーストが塗布されるディスプレイパネルを載置するための載置部と、を備える
ディスプレイパネルへの塗布装置。
【請求項9】
前記ノズルがマルテンサイト系ステンレス鋼または析出硬化ステンレス鋼の板で、前記レーザがパルスレーザである
請求項8に記載のディスプレイパネルへの塗布方法。
【請求項10】
前記ノズルがSUS430の板で、前記レーザがパルスレーザである
請求項8に記載のディスプレイパネルへの塗布装置。
【請求項11】
加工された穴のアスペクト比が4以上である
請求項9または10に記載のディスプレイパネルへの塗布装置。
【請求項12】
前記レーザのレーザ強度が640mJ/mm以上である
請求項9〜11いずれか1項に記載のディスプレイパネルへの塗布装置。
【請求項13】
予め行われたテスト加工で穴内壁に加工された凹部が観察された場合に前記凹部が観察されなくなるレーザ強度である第1のレーザ強度までレーザ強度を上げる調整を行い、前記調整された第1のレーザ強度により第1の本加工を行い、その後、第1のレーザ強度よりも低い第2のレーザ強度にて第2の本加工を行うことで形成された穴を有するノズルを用いる
請求項8〜12いずれかに記載のディスプレイパネルへの塗布装置。
【請求項14】
請求項8〜13いずれか1項に記載のディスプレイパネルへの塗布装置を備える
ディスプレイパネルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−11203(P2011−11203A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286386(P2009−286386)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】