説明

ディスプレイフィルタ

【課題】ベース基材の変形を防ぎ、ディスプレイ装置の視認性を高めることのできるディスプレイフィルタを提供する。
【解決手段】本発明は、ディスプレイフィルタ20に関するもので、ディスプレイモジュール100の前方に配置されるベース基材25と、ベース基材25の表面のうち視聴者側の面に積層される光学フィルム21,23,24と、ベース基材25の表面のうちディスプレイモジュール100側の面にコーティングされ、ベース基材25の変形を防ぐハードコーティング層26とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイフィルタに関し、より詳しくは、高温または多湿の環境においても優れた外観品位および画質を提供し、また、耐久性に優れ、帯電防止が可能なディスプレイフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会が高度に情報化されていくにつれて、イメージディスプレイ(image display)関連部品および機器が著しく進歩し、普及している。その中でも、画像を表示するディスプレイ装置は、テレビ装置用、パーソナルコンピュータのモニタ装置用などとして著しく普及しており、また、こうしたディスプレイ装置は、大型化とともに薄型化が進んでいる。
【0003】
一般的に、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)装置は、既存のディスプレイ装置を代表するCRT(cathode ray tube)装置に比べて、大型化および薄型化を同時に満たすことのできる次世代型ディスプレイ装置として脚光を集めている。
【0004】
こうしたPDP装置は、ガス放電現象を利用して画像を表示するものであり、表示容量、輝度、明暗比、残像、視野角などの各種表示能力に優れている。そして、PDP装置は、他のディスプレイ装置よりも大型化が容易であり、薄型の発光型ディスプレイ装置として、今後、高品質デジタルテレビに最も適した特性を備えているものと評価されている。
【0005】
PDP装置は、電極に印加される直流または交流電圧によって電極間のガスの放電が発生し、それに伴う紫外線の放射によって蛍光体を励起させて発光することとなる。
【0006】
しかし、PDP装置は、その駆動特性上、電磁波および近赤外線の放出量が多く、蛍光体の表面反射が高いだけでなく、封入ガスであるヘリウム(He)やキセノン(Xe)から放出されるオレンジ光によって色純度が陰極線管装置に比べて劣るという短所がある。また、発生した電磁波および近赤外線は、人体に有害な影響を及ぼし、無線電話機やリモコンなどといった精密機器の誤動作を誘発し得る。
【0007】
したがって、PDP装置からの電磁波および近赤外線の放出を所定値以下に抑制することが要求されている。このため、電磁波および近赤外線を遮蔽すると同時に放射光を減少させ、色純度を向上させる目的で、電磁波遮蔽、近赤外線遮蔽、外光表面反射防止および/または色純度改善などの機能を有するPDPフィルタを採用している。
【0008】
図1は、従来のPDPフィルタを概略的に示す断面図である。図示するように、従来のPDPフィルタは、反射防止層11、透明基板12、電磁波遮蔽層13、色補正層14、およびベース基材15を含む。
【0009】
反射防止層11は、外光反射を抑制して視認性を向上させる。透明基板12は、反射防止層11と電磁波遮蔽層13と色補正層14とベース基材15とを積層および支持するためのものであって、半強化ガラスまたは透明高分子樹脂を使用することができる。電磁波遮蔽層13は、PDP装置から放出される人体に有害な電磁波(EMI)を遮断する。色補正層14は、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の量を減少させたり調節して、色均衡を変化させたり矯正する。色補正層14は、近赤外線遮蔽色素を含めて具現することができる。色補正層はベース基材にコーティング形成されていてもよい。この場合、ベース基材15は、色補正層14を保持し且つ保護する機能を果たし、たとえばPET、TACを使用することができる。
【0010】
ところが、この種の従来のPDPフィルタは、画質をむしろ低下させ得るという問題点を有している。たとえば、ディスプレイ装置が高温および高湿状態に露出されているとき、ベース基材に使用されるPET基材の材料の一つであるオリゴマーが表面に溶出する現象が発生して、視認性が低下する。また、高湿条件での露出によって電磁波の遮蔽に使用される金属導電膜が腐食する現象が発生するという問題があった。一方、従来のPDPフィルタでは、静電気の発生により異物が付着することで、視認性が低下するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記のような背景から提案されたものであり、本発明の目的は、ディスプレイ装置の視認性を高めることのできるディスプレイフィルタを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、高湿条件での露出によってベース基材に形成される光学フィルムの変形を防止することのできるディスプレイフィルタを提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、ディスプレイ装置において、帯電が起こることによって視認性が低下することを遮断することのできるディスプレイフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記のような目的を達成するために、本発明の一態様に係るディスプレイフィルタは、ディスプレイモジュールの前方に配置されるベース基材と、ベース基材の表面のうち視聴者側の面に積層される光学フィルムと、ベース基材の表面のうちディスプレイモジュール側の面にコーティングされ、高温または多湿な環境においてベース基材の変形を防ぐハードコーティング層とを含む。
【0015】
ここで、ハードコーティング層は、その厚さが1μm以上、3μm以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の付加的な態様に係るディスプレイフィルタは、ハードコーティング層が、ベース基材の表面に静電気の発生を防止する帯電防止物質を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るディスプレイフィルタは、高温または多湿な環境においてベース基材の変形を防ぐハードコーティング層が形成されることにより、ベース基材を構成している物質のうち低分子量のオリゴマーが基材表面に溶出することを防ぐことができ、オリゴマーの溶出による視認性の低下を防ぐことができるという有用な効果がある。
【0018】
また、本発明に係るディスプレイフィルタは、ハードコーティング層が形成されることで耐スクラッチ性を満足させるのみならず、ベース基材の水分透過率を下げることにより、水分によってベース基材に形成される光学フィルムの変形を防止することができるという有用な効果がある。
【0019】
また、本発明に係るディスプレイフィルタは、ハードコーティング層に帯電防止物質が形成されることにより、本発明のディスプレイフィルタを採用したディスプレイ装置において、静電気が起こることによって視認性が低下することを遮断することができるという有用な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来のPDPフィルタを概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るディスプレイフィルタが適用されたディスプレイ装置の概略的な構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付された図面を参照しながら、前述した態様、そして追加的な態様を記述した好適な実施形態を通じ、本発明を当業者が容易に理解して再現することができるよう、詳細に説明することとする。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係るディスプレイフィルタが適用されたディスプレイ装置の概略的な構造を示している。ここで、ディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)装置である。図2に示すように、プラズマディスプレイパネル(PDP)装置に適用された本発明に係るディスプレイフィルタ20は、ディスプレイモジュール100の前方に設けられる。
【0023】
本発明に係るディスプレイフィルタ20は、透明基板22と、光学フィルムとしての反射防止層21、電磁波(EMI)遮蔽層23および近赤外線(NIR)遮蔽層24と、ベース基材25と、ハードコーティング層26とを含めて具現することができる。
【0024】
反射防止層21は、外光反射を抑制して視認性を向上させる。反射防止層21は、可視領域において屈折率が1.5以下、好ましくは1.4以下の低いフッ素系透明高分子樹脂やホウ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化ケイ素の薄膜などを、たとえば1/4波長の光学膜厚によって単一層に形成したものを使用することができる。
【0025】
また、反射防止層21は、屈折率の異なる金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物などの無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂などの有機化合物の薄膜を2層以上に多層積層した構造を有することができる。
【0026】
透明基板22は、光学フィルムを積層するためのもので、半強化ガラスまたは透明高分子樹脂を使用することができる。前記高分子樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PolyEtylene Terephthalate,PET)、アクリル(Acryl)、ポリカーボネート(Polycabonate,PC)、ウレタンアクリレート(Urethane Acrylate)、ポリエステル(Polyester)、エポキシアクリレート(Epoxy Acrylate)、臭素化アクリレート(Brominate Acrylate)、ポリ塩化ビニル(PolyVinyl Chloride,PVC)などがある。
【0027】
電磁波(EMI)遮蔽層23は、ディスプレイモジュール100から放出される人体に有害な電磁波(EMI)を遮断する。一例として、電磁波(EMI)遮蔽層23は、金属薄膜および高屈折率の透明薄膜を積層してなる多層透明導電膜によって具現することができる。他の例として、電磁波(EMI)遮蔽層23は、金属パターンが形成された導電性メッシュフィルムによって具現することができる。また、近赤外線(NIR)遮蔽層24を別途形成せずに、上記多層透明導電膜のみで近赤外線(NIR)および電磁波(EMI)を遮蔽する2つの機能を遂行することができる。
【0028】
近赤外線(NIR)遮蔽層24は、無線電話機やリモコンなどの電子機器の誤動作を引き起こす近赤外線(NIR)を遮蔽する。近赤外線吸収物質としては、ニッケル錯体系とジイモニウム系の混合色素、銅イオンおよび亜鉛イオンを含有する化合物色素、シアニン系色素、アントラキノン系色素、スクアリリウム系、アゾメチン系、オキソノール、アゾ系またはベンジリデン系化合物よりなる群から選択される1種以上を使用することができる。近赤外線遮蔽層は、ベース基材にコーティングされたコーティング層で形成されていてもよい。この場合、近赤外線遮蔽層、ベース基材、およびハードコーティング層からなるフィルムは、電磁波遮蔽層に粘着剤(PSA)を介して粘着されていてもよい。
【0029】
ベース基材25は、ディスプレイモジュール100の前方に配置され、電磁波(EMI)遮蔽層23および近赤外線(NIR)遮蔽層24を保護する。ベース基材25は、ポリマー樹脂によって具現されてもよく、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PolyEtylene Terephthalate,PET)によって具現される。
【0030】
ハードコーティング層26は、ベース基材25の表面のうちディスプレイモジュール側の面にコーティングされ、高温または多湿な環境におけるベース基材25の変形、たとえばオリゴマーの溶出を防ぐ。ここで、ハードコーティング層のコーティング方法は、ダイコータ、スプレー、スピンコーティング、グラビアなどを使用可能である。
【0031】
次の表1は、温度60℃、相対湿度90%の環境において、ハードコーティング層のないベース基材(I)およびハードコーティング層のあるベース基材(II)を採用したディスプレイ装置のヘイズ値を測定した結果を示している。ディスプレイ装置のヘイズ値の測定結果により、ハードコーティング層26が、ベース基材25の変形、たとえばオリゴマーの溶出を防ぐ作用があるのかどうかを確認することができる。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示すように、ハードコーティング層のあるベース基材(II)を採用したディスプレイ装置の視認性が良いことが分かる。これにより、ハードコーティング層26がベース基材25のオリゴマーの溶出を防ぐ効果を有することを確認することができる。
【0034】
ハードコーティング層26は、一実施形態において、アクリル系物質のハードコーティング層によって具現することができる。ここで、アクリル系物質は、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどを含む。ポリアクリル系物質は吸収性能を有するため、ハードコーティング層26は、水分を吸収して、ベース基材25の水分透過率を減らすことができる。これにより、導電膜または金属メッシュパターンで形成される電磁波(EMI)遮蔽層23の腐食を防ぐことができる。
【0035】
次の表2は、温度25℃、相対湿度60%の環境において、ハードコーティング層のないベース基材(I)およびハードコーティング層のあるベース基材(II)の含湿率(単位:g/m)を測定した結果を示している。
【0036】
【表2】

【0037】
表2に示すように、ハードコーティング層のあるベース基材(II)の含湿率が低いことが分かる。これにより、ハードコーティング層によって、ベース基材(II)へ浸透する水分の透湿率が低くなることを確認することができる。
【0038】
次の表3は、温度25℃、相対湿度60%の環境において、ハードコーティング層の厚さと含湿率(単位:g/m)との関係を測定した結果を示している。
【0039】
【表3】

【0040】
表3に示すように、ハードコーティング層の厚さが1μm以上、3μm以下のハードコーティング層によって具現されることが好ましい。すなわち、ハードコーティング層の厚さが1μm未満の場合、ハードコーティング層によって保護されるベース基材は、高温・高湿条件においてオリゴマーが溶出することを防ぐことができないためである。また、ハードコーティング層の厚さが3μmを超過する場合には、ハードコーティング層によって保護されるベース基材のオリゴマーの溶出を防ぐことはできるが、含湿率の効果が3μmの場合よりも劣ることを確認することができる。
【0041】
他の実施形態において、ハードコーティング層26は、ベース基材25の表面に静電気の発生を防止する帯電防止物質を含むことができる。ここで、帯電防止物質は、金属酸化物として、たとえばSnO、SbOなどを使用することができる。他の例として、帯電防止物質は、電導性高分子によって具現することができる。
【0042】
本明細書においては、本発明に係るディスプレイフィルタが適用されたディスプレイ装置であり、プラズマディスプレイパネル(PDP)装置、および液晶ディスプレイ(LCD)装置のみについて言及したが、有機電界発光表示装置(Organic Light Emitting Display:OLCD)にも、本発明に係るディスプレイフィルタを適用することができる。
【0043】
ここまで、本明細書では、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明を容易に理解して再現できるよう、図面に図示した実施形態を参考に説明したが、これは例示的なものに過ぎない。当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の各実施形態から多様な変形および均等な他の実施形態が可能であるという点が理解できよう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定められるべきである。
【符号の説明】
【0044】
20 ディスプレイフィルタ
21 反射防止層(光学フィルム)
22 透明基板
23 電磁波遮蔽層(光学フィルム)
24 近赤外線遮蔽層(光学フィルム)
25 ベース基材
26 ハードコーティング層
100 ディスプレイモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイモジュールに内蔵されたディスプレイ装置に使用されるディスプレイモニタにおいて、
ディスプレイモジュールの前方に配置されるベース基材と、
前記ベース基材の表面のうち視聴者側の面に積層される光学フィルムと、
前記ベース基材の表面のうちディスプレイモジュール側の面にコーティング形成され、前記ベース基材の変形を防ぐハードコーティング層と、
を含むことを特徴とするディスプレイフィルタ。
【請求項2】
前記ハードコーティング層が、前記ベース基材の表面に静電気の発生を防止する帯電防止物質を含むことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイフィルタ。
【請求項3】
前記ハードコーティング層は、その厚さが1μm以上、3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイフィルタ。
【請求項4】
前記ベース基材は、PETからなることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイフィルタ。
【請求項5】
前記光学フィルムは電磁波遮蔽層を含み、
前記電磁波遮蔽層は、金属薄膜および高屈折率の透明薄膜が複数回積層されてなる導電膜、または金属メッシュパターンが形成された導電性メッシュ層であることを特徴とする請求項3に記載のディスプレイフィルタ。
【請求項6】
前記ハードコーティング層は、アクリル系コーティング層であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−8261(P2011−8261A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144658(P2010−144658)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密素材株式会社 (80)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG CORNING PRECISION MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】644−1 Jinpyeong−dong, Gumi−si,Gyeongsangbuk−do 730−360,Korea
【Fターム(参考)】