説明

ディスプレイ用フィルタ及びこれを備えたディスプレイ

【課題】メッシュ状の電磁波シールド層上に他の機能層を形成しても、優れた反射防止性を有するディスプレイ用フィルタを提供する。
【解決手段】透明基材110と、前記透明基材上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層120と、前記電磁波シールド層上に形成された第1の機能性層131を含むディスプレイ用フィルタであって、前記電磁波シールド層上の最表層の表面粗さRaが、0.1μm以下であることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)等の各種ディスプレイに対して反射防止、近赤外線遮断、電磁波遮蔽等の各種機能を有するフィルタ、及びこのフィルタを備えたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、及びCRTディスプレイは、近年、大画面表示が主流となり、次世代の大画面表示デバイスとしてPDPが一般的になってきている。しかしながら、このPDPでは画像表示のため発光部に高周波パルス放電を行っているため、不要な電磁波の輻射や赤外線リモコン等の誤動作の原因ともなる赤外線の輻射の恐れがある。
【0003】
このため、PDPなどのディスプレイに用いられるフィルタとして、透明基材上に電磁波シールド層が形成されたものなどが知られている。電磁波シールド層には、例えば、(1)金属銀を含む透明導電薄膜、(2)金属線又は導電性繊維を網状にした導電メッシュ、(3)銅箔等の金属箔に開口部を設けたメッシュ状のもの、(4)導電性インクをメッシュ状に印刷したものなどの導電層が用いられる。なかでも、開口部により高い光透過性が得られることから(2)〜(4)のメッシュ状の導電層が好適に用いられている。導電性のメッシュの部分によって電磁波がシールドされ、開口部によって光の透過が確保される。
【0004】
さらに、従来のディスプレイ用フィルタには、耐傷付き性を付与するためのハードコート層、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射を抑制して視認性を向上させるための反射防止層が積層される。さらに、赤外線を遮蔽するために、近赤外線遮蔽層が透明基材の一方の面に設けられたディスプレイ用フィルタなども提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、1枚の透明基材と、導電性メッシュと、最表層の反射防止フィルムと、近赤外線カットフィルムとが積層一体化されてなる積層体を備えたディスプレイ用フィルタが開示されている。電磁波シールド層、ハードコート層、反射防止層及び近赤外線遮蔽層は、ディスプレイ用フィルタの用途に応じて積層して用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/309660号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ディスプレイ用フィルタでは、高い電磁波シールド性が得られることから、透明基板上のメッシュ状の電磁波シールド層が利用者側となるように配置されるのが好ましいことが知られている。メッシュ状の電磁波シールド層上に反射防止層や近赤外線吸収層などの他の機能性層を作製するには、未硬化の合成樹脂モノマー、及び必要に応じて微粒子などを含む塗工液をメッシュ状の電磁波シールド層上に直接塗工し、紫外線などの活性線の照射や加熱により硬化する方法が用いられている。しかしながら、このような方法では、優れた反射防止性を有するディスプレイ用フィルタが得られない問題があった。
【0008】
したがって、本発明は、メッシュ状の電磁波シールド層上に他の機能層を形成しても、優れた反射防止性を有するディスプレイ用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来のディスプレイ用フィルタでは、メッシュ状の電磁波シールド層の凸部によって他の機能性層表面に大きな凹凸を生じ、この凹凸が光を乱反射させるなどして、反射防止性が低下することが考えられる。本発明者等は、このような実情に着目して種々の検討を行った結果、メッシュ状の電磁波シールド層上に形成された機能性層の表面粗さを低減させることにより、著しく向上された反射防止性を有するディスプレイ用フィルタが得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、透明基材と、前記透明基材上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層と、前記電磁波シールド層上に形成された第1の機能性層を有するディスプレイ用フィルタであって、
前記電磁波シールド層上の最表層の表面粗さRaが、0.1μm以下であることを特徴とするディスプレイ用フィルタにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、電磁波シールド層上に形成された層のうち最表層の表面粗さRaを0.1μm以下とすることにより、平滑化された表面を有することにより光の乱反射が抑制され、優れた反射防止性を有するディスプレイ用フィルタを提供することが可能となる。したがって、前記ディスプレイ用フィルタは、ディスプレイに表示された画像の視認性に優れ、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイなどのディスプレイ全面に設置されるディスプレイ用フィルタとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のディスプレイ用フィルタの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のディスプレイ用フィルタは、透明基材と、前記透明基材上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層と、前記電磁波シールド層上に形成された第1の機能性層を有し、さらに前記電磁波シールド層上の最表層の表面粗さRaが0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.1μm、より好ましくは0.01〜0.08μmである。電磁波シールド層上に形成された層のうちの最表層が上記範囲内の表面粗さを有することにより、表面が平滑化され、優れた反射防止性を有するディスプレイ用フィルタを提供することが可能となる。
【0014】
なお、前記電磁波シールド層上の最表層の表面粗さRaは、JIS B 0601(1994)に従って、表面粗さ計(サーフコム480A 株式会社東京精密製)を用いて測定することができる。
【0015】
本願発明において、第1の機能性層としては、電磁波シールド層上に形成された何らかの機能を示す合成樹脂を含む層であればどのようなものでも良い。本発明では、一般に、第1の機能性層には、近赤外線吸収層又はハードコート層などが挙げられる。前記第1の機能性層は、高い表面平滑性を有する層を形成できることから、ハードコート層であるのが好ましい。なお、本発明において、ハードコート層とは、JIS−K−5400で規定される鉛筆硬度試験でH以上の硬度を有するものをいう。
【0016】
(ハードコート層)
前記ハードコート層の厚さは、通常は1〜50μm、好ましくは5〜40μm、特に好ましくは5〜35μmである。これにより、高い表面平滑性を有する層が得られる。
【0017】
ハードコート層は、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコン樹脂層等の合成樹脂を主成分とする層である。合成樹脂は、一般に熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂であり、紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂は、短時間で硬化させることができ、生産性に優れる点から好ましい。
【0018】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0019】
ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂のモノマー及び/又はオリゴマー、光重合開始剤等を含む紫外線硬化性樹脂組成物の硬化層が好ましい。
【0020】
紫外線硬化性樹脂のモノマー、オリゴマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。これらの紫外線硬化性樹脂のモノマー、オリゴマーを、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0021】
ハードコート層とするには、上記の紫外線硬化性樹脂のモノマー、オリゴマーの内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0022】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア(登録商標)184)が好ましい。
【0023】
光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0024】
さらに、ハードコート層は、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいても良い。特に、紫外線吸収剤(例、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はベンゾフェノン系紫外線吸収剤)を含むことが好ましく、これによりフィルタの黄変等の防止が効率的に行うことができる。その量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0025】
ハードコート層は、シリコーンオイルを含有するのが好ましい。これにより、表面平滑性に優れるハードコート層を形成することができる。前記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、及びメチルハイドロジェンシリコーンオイルなどが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0026】
ハードコート層におけるシリコーンオイルの含有量は、樹脂組成物に対して、好ましくは0.0005〜0.1質量%、より好ましくは0.001〜0.05質量%である。
【0027】
(反射防止層)
ハードコート層上には、反射防止層がさらに設けられるのが好ましい。これにより、高い反射防止性を有するディスプレイ用フィルタが得られる。前記反射防止層としては、(1)ハードコート層より屈折率が低い低屈折率層、又は(2)ハードコート層よりも屈折率の高い高屈折率層と、前記高屈折率層よりも屈折率の低い低屈折率層とが積層された複合膜が好ましく挙げられる。
【0028】
(低屈折率層)
低屈折率層の厚さは、通常は10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0029】
低屈折率層は、10〜40質量%(好ましくは10〜30質量%)のシリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカが合成樹脂(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。この低屈折率層の屈折率は、1.35〜1.45が好ましい。この屈折率が1.45超であると反射防止特性が低下する恐れがある。
【0030】
中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0031】
また、シリカ、好ましくは中空シリカは、シランカップリング剤で処理されていてもよい。これにより安定性、反射防止性を向上させることができる。前記シランカップリング剤としては、一般式:RnSiX(4-n)(式中、Rは、炭素数1〜4のアルコキシ基、メタアクリロイルアルキル基、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、又はパーフルオロ(メタ)アクリロイル基を表し、Xは、炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、nは1〜3、好ましくは1の整数を表す)で示されるものが好ましく挙げられる。
【0032】
シリカをシランカップリング剤で処理するには、シリカの分散液にシランカップリング剤を添加し、必要に応じて酸又はアルカリを加水分解用触媒として添加して処理する方法など、従来公知の方法を使用することができる。
【0033】
低屈折率層はシリコーンオイルを含有するのが好ましい。低屈折率層におけるシリコーンオイルの含有量は、低屈折率層に含まれる合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0005〜0.1質量部、より好ましくは0.001〜0.05質量部である。
【0034】
(高屈折率層)
高屈折率層の厚さは、通常は10〜500nm、好ましくは20〜200nmである。
【0035】
高屈折率層は、合成樹脂(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO,ATO,Sb23,ZrO2,SbO2,In23,SnO2,ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層(硬化層)とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。屈折率を1.64以上としたものが好適である。
【0036】
なお、高屈折率層が導電層である場合、この高屈折率層の屈折率を1.64以上とすることにより反射防止層の表面反射率の最小反射率を1.5%以内にすることができ、1.69以上、好ましくは1.69〜1.82とすることにより反射防止層の表面反射率の最小反射率を1.0%以内にすることができる。
【0037】
高屈折率層はシリコーンオイルを含有するのが好ましい。高屈折率層におけるシリコーンオイルの含有量は、高屈折率層に含まれる合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0005〜0.1質量部、より好ましくは0.001〜0.05質量部である。
【0038】
低屈折率層及び高屈折率層は、紫外線硬化性樹脂のモノマー及び/又はオリゴマー、光重合開始剤、上記した各微粒子等を含む紫外線硬化性樹脂組成物の硬化層であるのが好ましい。なお、低屈折率層及び高屈折率層における合成樹脂、紫外線硬化性樹脂のモノマー、オリゴマー、光重合開始剤及びシリコーンオイルの具体例としては、ハードコート層において列挙したものと同様のものが挙げられる。ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層は、いずれも可視光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0039】
本発明のディスプレイ用フィルタでは、電磁波シールド層上に形成される層として好ましくは、(1)ハードコート層のみ、(2)ハードコート層と低屈折率層とがこの順で積層されてなるもの、(3)ハードコート層と、高屈折率層と、低屈折率層とがこの順で積層されてなるもの等が挙げられる。したがって、電磁波シールド層上に形成された0.1μm以下の表面粗さRaを有する最表層としては、(1)の場合はハードコート層、(2)及び(3)の場合は低屈折率層である。
【0040】
電磁波シールド層上に各層を形成するには、有機溶剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を塗布することにより行うのが好ましい。例えば、前記の通り、有機溶剤に、合成樹脂(好ましくは紫外線硬化性樹脂のモノマー、オリゴマー)及び光重合開始剤に、必要に応じ上記の微粒子など他の成分を配合し、得られた塗工液をメッシュ状の電磁波シールド層を有する透明基材上にグラビアコータ等で塗工し、次いで乾燥した後、紫外線照射して硬化すればよい。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。
【0041】
また、電磁波シールド層上に配置された最表層の表面粗さRaを0.1μm以下とするために、塗工液をメッシュ状の電磁波シールド層を有する透明基板上に塗工した後、得られた塗工層表面をスキージ等でかきとる手段、塗工層上に表面平坦性に優れる基材を積層して紫外線照射を行って塗工層を硬化させた後に、前記基材を剥離する手段などを使用するのが好ましい。
【0042】
有機溶剤は、特に制限されないが、各成分を分散又は溶解させ且つ乾燥が容易なものが好ましい。具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、石油系溶剤などが挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0044】
(電磁波シールド層)
本発明のディスプレイ用フィルタにおいて、透明基材上に形成されるメッシュ状の電磁波シールド層は、金属を含み導電性を有する。例えば、(1)銅などの金属からなるもの、(2)バインダ樹脂中に導電性粒子を分散させたもの、等を挙げることができる。
【0045】
(1)銅などの金属からなる電磁波シールド層において、前記金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0046】
前記(1)の電磁波シールド層を作製するには、まず、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相製膜法や、印刷、塗工などの方法を用いて透明基材上に前記金属からなる金属箔を形成し、その後、前記金属箔をエッチングして開口部を設けることによりメッシュ状にする方法など、公知の方法を用いて行えばよい。
【0047】
前記(1)の電磁波シールド層を作製するには、上記方法の他にも、透明基材上に、溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成し、フィルム面に溶剤に対して不溶な導電材料からなる導電材料層を形成し、フィルム面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去する方法を用いても良い。このような方法は、例えば、特開2001−332889号公報などに記載されている。
【0048】
前記(1)の電磁波シールド層を作製するには、上記の他に、無電解めっき触媒インクを透明基材上にメッシュ状に印刷し、これにより得られたメッシュ状の無電解めっき触媒層上に上述した金属を無電解めっきすることによりメッシュ状の電磁波シールド層を得ることができる。
【0049】
無電解めっき触媒インクとしては、種々のものを用いることができ、無電解めっき触媒、バインダ樹脂、及び有機溶剤を含むインクなどが挙げられる。無電解めっき触媒としては、高い触媒活性が得られることから、パラジウム、銀、白金、および金などの金属原子の塩化物、水酸化物、酸化物、硫酸塩、アンモニウム塩などのアンミン錯体などが用いられる。特に、パラジウム化合物、中でも塩化パラジウムが好ましい。この他、無電解めっき触媒としては、複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物を用いることもできる。前記複合金属酸化物としては、PdSiO3、Ag2SiO3、PdTiO3、Ag2TiO3、PdZrO3及びAg2TiO3などが挙げられる。バインダ樹脂として好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び塩化ビニル樹脂などが挙げられる。また、透明基板上に印刷した無電解めっき触媒インクは、80〜160℃、特に90〜130℃で加熱することにより乾燥させるのが好ましい。
【0050】
前記無電解めっきは、無電解めっき浴を用いて常法に従って常温または加温下で行うことができる。
【0051】
(2)バインダ樹脂中に導電性粒子を分散させた電磁波シールド層において、前記導電性粒子としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物等を挙げることができる。特に、ITOが好ましい。
【0052】
バインダ樹脂の例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。さらに、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0053】
(2)の電磁波シールド層を作製するには、導電性粒子をバインダ樹脂に分散させた導電性インクを透明基材上にメッシュ状に印刷する方法を用いることができる。前記導電性インクは導電性粒子及びバインダ樹脂の他に、適度な粘度に調整するため、さらに溶剤を含んでいてもよい。前記溶剤としては、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のアルキルエーテルが挙げられる。
【0054】
導電性インクを透明基材上にメッシュ状に印刷するには、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷など公知の方法を用いて行えばよい。その後、必要に応じ室温〜120℃で乾燥させて硬化させる。
【0055】
電磁波シールド層としては、防眩性及び導電性に優れることから、上述したもののうち(1)の電磁波シールド層を用いるのが好ましい。
【0056】
電磁波シールド層の線で囲まれた開口部の形状は、円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意の形状とすることができるが、一般に角形であり、特に正方形であることが好ましい。また線は網状であるが、格子状とすることが好ましい。
【0057】
電磁波シールド層におけるメッシュパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の開口部が形成された格子状や、円形、六角形、三角形又は楕円形の開口部が形成されたパンチングメタル状などが挙げられる。また、開口部は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。
【0058】
メッシュ状(格子状を含む)の電磁波シールド層の線幅は、一般に20μm以下、好ましくは1〜15μm、特に1〜12μmである。線のピッチは200μm以下が好ましい。また、開口率は75〜95%であることが好ましく、特に80〜95%である。なお、開口率とはメッシュの線幅と1インチ幅に存在する線の数から計算で求めたものである。
【0059】
電磁波シールド層をさらに低い抵抗値にして、電磁波シールド効果を向上させたい場合は、電磁波シールド層上に金属メッキ層を形成することが好ましい。
【0060】
金属メッキ層は、公知の電解メッキ法、無電解メッキ法により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、これらは単独で使用しても、2種以上の合金として使用しても良い。なかでも、金属メッキ層は、ニッケル及び亜鉛の合金、又はニッケル及びスズの合金からなる層を用いるのが好ましい。これにより、黒色度合い及び導電性に優れる黒色合金導電層が得られ、電磁波シールド性を向上させるとともに防眩性を付与することができる。
【0061】
ニッケルと亜鉛又はスズとの合金からなる黒色合金導電層におけるニッケルと亜鉛又はスズとの質量比(Ni/Zn)は、0.4〜1.4、特に0.2〜1.2とするのが好ましい。これにより黒色の色調が均質な黒色合金導電層を得ることができ、厚さが薄くても高い防眩性を有する電磁波シールド層を得ることができる。
【0062】
黒色合金導電層の厚さは、0.001〜1μm、特に0.01〜0.1μmとするのが好ましい。黒色合金導電層の厚さが、0.001μm未満では十分な電磁波シールド層に十分な防眩性を付与できない恐れがあり、1μmを超えると電磁波シールド層の厚さが増加して、ディスプレイ用フィルタ表面の平坦化の観点から望ましくない。
【0063】
また、電磁波シールド層に防眩性能を付与しても良い。この防眩化処理は、電磁波シールド層の表面に黒化処理を行って、黒化層を設けることにより行っても良い。例えば、金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキ、黒又は暗色系のインクの塗布等により行うことができる。
【0064】
(透明基材)
本発明のディスプレイ用フィルタに用いられる透明基材としては、透明度及び可とう性を備え、その後の処理に耐えるものであれば特に制限はない。透明基材の材質としては、例えば、ガラス、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる、これらの中で、加工処理(加熱、溶剤、折り曲げ)による劣化が少なく、透明性の高い材料であるPET、PC、PMMAが好ましい。なかでも、安価であり優れた耐久性を有することから、PETであるのが好ましい。透明基材は、これらの材質からなるシート、フィルム、または板として用いられる。
【0065】
前記透明基材の厚さは、特に制限されないが、6〜250μm、特に6〜150μm程度であるのが好ましい。
【0066】
(第2の機能性層)
本発明のディスプレイ用フィルタでは、透明基材の電磁波シールド層が形成された面とは反対側の面に、第2の機能性層をさらに有するのが好ましい。第2の機能性層は、透明基材の電磁波シールド層が形成された面とは反対側の面に形成され、何らかの機能を示す合成樹脂を含む層であればどのようなものでも良い。第2の機能性層としては、一般に、近赤外線吸収層又は透明粘着剤層、或いはこれらの組合せである。第2の機能性層として具体的には、(1)近赤外線吸収層のみからなるもの、(2)透明粘着剤層からなるもの、又は(3)近赤外線吸収層及び透明粘着剤層からなるもの(この順で透明基材上に設けられている)からなることが好ましい。
【0067】
(近赤外線吸収層)
第2の機能性層として用いられる近赤外線吸収層(即ち、近赤外線遮蔽層)は、一般に、透明基材の表面に色素等を含む層が形成することにより得られる。近赤外線吸収層は、例えば色素及びバインダとして熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性の合成樹脂を含む塗工液を塗工、必要により乾燥、そして硬化させることにより得られる。フィルムとして使用する場合は、一般に近赤外線カットフィルムであり、例えば色素等を含有するフィルムである。
【0068】
色素としては、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有するもので、例としては、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素、を挙げることができ、特にシアニン系色素又はスクアリリウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0069】
バインダとしての合成樹脂の例としては、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、およびノルボルネン樹脂などが好ましく用いられる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
本発明では、近赤外線吸収層に、ネオン発光の吸収機能を付与することにより色調の調節機能を持たせても良い。このために、ネオン発光の吸収層を設けても良いが、近赤外線吸収層にネオン発光の選択吸収色素を含有させても良い。
【0071】
ネオン発光の選択吸収色素としては、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素、アズレニウム系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素を挙げることができる。このような選択吸収色素は、585nm付近のネオン発光の選択吸収性とそれ以外の可視光波長において吸収が小さいことが必要であるため、吸収極大波長が575〜595nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好ましい。
【0072】
また、近赤外線やネオン発光の吸収色素を複数種組み合わせる場合、色素の溶解性に問題がある場合、混合による色素間の反応ある場合、耐熱性、耐湿性等の低下が認められる場合には、すべての近赤外線吸収色素を同一の層に含有させる必要はなく、別の層に含有させても良い。
【0073】
また、光学特性に大きな影響を与えない限り、さらに着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えても良い。
【0074】
本発明のディスプレイ用フィルタの近赤外線吸収特性としては、850〜1000nmの透過率を、20%以下、さらに15%するのが好ましい。また選択吸収性としては、585nmの透過率が50%以下であることが好ましい。特に前者の場合には、周辺機器のリモコン等の誤作動が指摘されている波長領域の透過度を減少させる効果があり、後者の場合は、575〜595nmにピークを持つオレンジ色が色再現性を悪化させる原因であることから、このオレンジ色の波長を吸収させる効果があり、これにより真赤性を高めて色の再現性を向上させたものである。
【0075】
近赤外線吸収層の厚さは、特に制限はないが、近赤外線の吸収性及び可視光透過性の点で、0.5〜50μm程度が好ましい。
【0076】
近赤外線吸収層は、色調補正用の色素を含有していることが好ましい。或いは色調補正用の色素を含む色調補正層を、近赤外線吸収層と同様にして設けても良い。
【0077】
色調補正用の色素としては、近赤外線遮蔽層の黄褐色〜緑色の色調を中性化してカラーバランスを整えるために、それらの補色となるようなものが好ましい。このような色素としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料、色素等一般的なものが挙げることができる。無機顔料としては、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物等を挙げることができ、有機顔料としては、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等を挙げることができ、前記有機系染料及び色素には、アゾ系、アジン系、アントラキノン系、インジゴイド系、オキサジン系、キノフタロン系、スクワリウム系、スチルベン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ピラロゾン系、ポリメチン系等を挙げることができるが、これらの内で、発色性と耐久性の兼合いから有機系顔料が好適に用いられる。
【0078】
(透明粘着剤層)
透明粘着剤層は、本発明のディスプレイ用フィルタをディスプレイに接着するための層であり、接着機能を有するものであればどのような樹脂でも使用することができる。
【0079】
透明粘着剤層における接着機能を有する樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、アクリル樹脂(例、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体を挙げることができる(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)。その他、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系粘着剤、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン)及びSBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)等の熱可塑性エラストマー等も用いることができるが、良好な接着性が得られやすいのはアクリル樹脂系粘着剤、エポキシ樹脂である。
【0080】
透明粘着剤層の厚さは、一般に10〜50μm、好ましくは、20〜30μmの範囲が好ましい。ディスプレイ用フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に加熱圧着することによる装備することができる。
【0081】
前記透明粘着剤層の材料としてEVAを使用する場合、EVAとしては酢酸ビニル含有量が5〜50重量%、好ましくは15〜40重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有量が5重量%より少ないと透明性に問題があり、また40重量%を超すと機械的性質が著しく低下する上に、成膜が困難となり、フィルム相互のブロッキングが生じ易い。
【0082】
EVAなどを使用する場合、透明粘着剤層はさらに架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては加熱架橋する場合は、有機過酸化物が適当であり、シート加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選ばれる。使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3;ジーt−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシアセテート;2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート;第3ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;p−クロルベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシイソブチレート;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルヘキサノンパーオキサイド等を挙げることができる。これらの過酸化物は1種を単独で又は2種以上を混合して、通常EVA100重量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.5〜5.0質量部の割合で使用される。
【0083】
有機過酸化物は通常EVAに対し押出機、ロールミル等で混練されるが、有機溶媒、可塑剤、ビニルモノマー等に溶解し、EVAのフィルムに含浸法により添加しても良い。
【0084】
なお、EVAの物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐候性、耐白化性、架橋速度など)改良のために、各種アクリロキシ基又はメタクリロキシ基及びアリル基含有化合物を透明粘着剤層にさらに添加することができる。この目的で用いられる化合物としてはアクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等のアルキル基の他、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルを用いることもできる。アミドとしてはダイアセトンアクリルアミドが代表的である。
【0085】
その例としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル又はメタクリル酸エステル等の多官能エステルや、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル基含有化合物が挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して、通常EVA100質量部に対して0.1〜2質量部、好ましくは0.5〜5質量部用いられる。
【0086】
EVAを光により架橋する場合、透明粘着剤層には、上記過酸化物の代りに光増感剤が通常EVA100質量部に対して5質量部以下、好ましくは0.1〜3.0質量部使用される。
【0087】
この場合、使用可能な光増感剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、p−ニトロジフェニル、p−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロンなどが挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0088】
また、透明粘着剤層には、接着促進剤としてシランカップリング剤が併用されてもよい。このシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0089】
シランカップリング剤は、一般にEVA100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.001〜5質量部の割合で1種又は2種以上が混合使用される。
【0090】
なお、本発明に係る透明粘着剤層には、その他、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいてもよく、また、場合によってはカーボンブラック、疎水性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤を少量含んでも良い。
【0091】
透明粘着剤層は、例えばEVAと上述の添加剤とを混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形することにより製造される。
【0092】
透明粘着剤層上にはさらに剥離シートが設けられるのが好ましい。剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0093】
本発明の好ましい一実施形態である上述したハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなる反射防止層と、近赤外線吸収層及び透明粘着剤層とを有するディスプレイ用フィルタの模式断面図を図1に示す。図1に示すディスプレイ用フィルタは、透明基材110と、前記透明基材110上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層120と、電磁波シールド層120上に形成されたハードコート層131と、ハードコート層131上に形成された高屈折率層132と、前記高屈折率層上に形成された低屈折率層133とを有する。さらに、前記ディスプレイ用フィルタは、透明基材110の電磁波シールド層120が形成された面とは反対側の面に、近赤外線吸収層141と、透明粘着剤層142とを有する。
【0094】
上述した通り、本発明のディスプレイ用フィルタでは、電磁波シールド層上に形成された層のうち最表層が所定の表面粗さRaを有することを特徴とする。これにより、光の乱反射を抑制し、反射防止性が優れるディスプレイ用フィルタが得られる。
【0095】
このような本発明のディスプレイ用フィルタは、特に制限されないが、ディスプレイの画像表示ガラス板の表面に透明粘着層を介して貼合する等の手段を用いて、ディスプレイに適用できる。この時、上述した0.1μm以下の表面粗さRaを有する最表層を視聴者側に配置する。ディスプレイとしては、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)、及びCRTディスプレイなどが挙げられる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
1.メッシュ状電磁波シールド層の形成
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)上に、ポリビニルアルコールの20%水溶液をドット状に印刷した。ドット1個の大きさは1辺が150μmの正方形状であり、ドット同士間の間隔は30μmであり、ドット配列は正方格子状である。印刷厚さは、乾燥後で0.1μmである。
【0098】
その上に、銅を平均膜厚4.1μmとなるように真空蒸着した。次いで、常温の水に浸漬し、スポンジで擦ることによりドット部分を溶解除去し、次いで水でリンスした後、乾燥してポリエチレンフィルムの全面にメッシュ状の電磁波シールド層を形成した。
【0099】
このフィルム表面の電磁波シールド層は、正確にドットのネガパターンに対応した正方格子状のものであり、平均厚さは3.8μm、平均線幅は30μm、平均ピッチは170μm、開口率は68%であった。
【0100】
2.黒色合金導電層の形成
PETフィルム上に形成された電磁波シールド層に対して下記条件により亜鉛−ニッケル合金めっきを行うことにより、電磁波シールド層の全面を被覆する黒色合金導電層(厚さ0.2μm)を形成した。
【0101】
(めっき条件)
めっき液の温度:40℃
電流密度 :5〜10A/dm2
めっき時間 :10秒
めっき液量 :120m3
(めっき液組成)
ZnCl2を用いZn2+濃度が2.0g/l、NiCl2・6H2Oを用いてNi2+濃度が0.5g/l、KClを用いてK+濃度が250g/l、pH10めっき液を用いた。
【0102】
3.ハードコート層の形成
樹脂成分としてジペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して、重合開始剤(イルガキュア(登録商標)184(チバスペシャリティケミカル社製))5質量部を添加し、固形分Aを得た。一方、2−プロパノールとシクロヘキサノンとを質量比7:3で混合することにより溶剤Aを得た。固形分Aと溶剤Aとを質量比2:8で混合し、さらにシリコーンオイル(KF96−200CS 信越シリコーン)を0.02質量%添加し、室温で1時間撹拌することにより、ハードコート層用塗料を調製した。
【0103】
次に、ハードコート層用塗料を上記黒色合金導電層の全面にバーコータにより塗工し、塗工層の表面をスキージでかきとり、120℃で30秒間乾燥させた後、積算光量600mJ/cm2の紫外線を照射して、黒色合金導電層上にハードコート層(厚さ10μm)を形成した。
【0104】
4.高屈折率層の形成
二酸化チタンと二酸化ジルコニウムの複合コロイドゾル(平均粒子径13.1μm、固形分濃度30質量%、メタノール溶剤、二酸化チタンと二酸化ジルコニウムの質量比=85:15)200質量部に対し、樹脂成分としてトリメチロールプロパンアクリレート(EO3モル付加)50質量部、重合開始剤(イルガキュア(登録商標)1800(チバスペシャリティケミカル社製))7質量部、溶剤としてイソプロピルアルコールを50質量部、さらにシリコーンオイル(KF96−50CS 信越シリコーン)を0.01質量部添加し、室温で1時間撹拌した後、孔径1μmのポリプロピレンフィルターでろ過することにより、高屈折率層用塗料を調製した。
【0105】
次に、高屈折率層用塗料を、上記ハードコート層上に、バーコータにより塗布し、80℃で10秒間乾燥させた後、積算光量600mJ/cm2の紫外線を照射して、ハードコート層上に高屈折率層(厚さ1.0nm、屈折率1.67)を形成した。
【0106】
5.低屈折率層の形成
シリカ微粒子のメタノール分散液(平均粒子径15nm、固形分濃度50質量%)100質量部に対し、シランカップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503 信越シリコーン)3質量部、触媒として1N塩酸1質量部を添加し、室温で12時間撹拌した後、50時間室温で放置することにより、シランカップリング処理したシリカ微粒子分散液を調製した。
【0107】
このシリカ微粒子分散液5質量部に対し、樹脂成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート25質量部、溶剤としてメチルイソブチルケトン94質量部及びイソブチルアルコール5質量部、重合開始剤(イルガキュア(登録商標)907(チバスペシャリティケミカル社製))2質量部、さらにシリコーンオイル(KF96−50CS 信越シリコーン)を0.001質量部添加し、室温で1時間撹拌した後、孔径1μmのポリプロピレンフィルターでろ過することにより、低屈折率層用塗料を調製した。
【0108】
次に、低屈折率調製用塗料を、上記高屈折率層上に、バーコータにより塗布し、80℃で10秒間乾燥させた後、積算光量600mJ/cm2の紫外線を照射して、ハードコート層上に低屈折率層(厚さ90nm、屈折率1.45)を形成した。これにより、ディスプレイ用フィルタを得た。
【0109】
(実施例2)
実施例1のハードコート層用塗料において、樹脂成分をジペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部を、ペンタエリスリトールテトラアクリレート50質量部、及びエトキシカビスフェノールAジアクリレート(EO4モル付加)50質量部に変更し、ハードコート層の厚さを16μmとした以外は、実施例1と同様の方法でディスプレイ用フィルタを作製した。
【0110】
(実施例3)
実施例1において、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さを150μmとし、メッシュ状電磁波シールド層の平均厚さを3.4μm、平均線幅を35μm、平均ピッチを250μmに変更し、ハードコート層の厚さを30μmとした以外は、実施例1と同様の方法でディスプレイ用フィルタを作製した。
【0111】
(実施例4)
1.電磁波シールド層の形成
PETフィルム(厚さ100μm)上に、ポリエステル樹脂に対して無電解めっき触媒(PdCl2)を10質量%混合した無電解めっき触媒インクをメッシュ状にグラビア印刷した後、100℃で1分間乾燥することにより、メッシュ状の無電解めっき触媒層を得た。無電解めっき触媒層は、正方形の開口部が規則的に配列した正方格子状であり、線幅が20μmであり、開口部(格子)の一辺が191μmであり、開口率が78%であり、厚さが2μmであった。
【0112】
この無電解めっき触媒層を5%の硫酸により脱脂処理した後、下記組成を有する無電解銅めっき液(液温60℃)を用いて無電解めっきをすることにより無電解めっき触媒層上にメッシュ状の銅箔を形成した。この銅箔は、正方形の開口部が規則的に配列した正方格子状であり、線幅が23μmであり、開口部(格子)の一辺が188μmであり、開口率が77%であり、厚さが2μmであった。
【0113】
(無電解銅めっき液)
硫酸銅5水和物:13g/L
NaOH :7.5g/L
HCOH :13ml/L
錯化剤(クエン酸三アンモニウム):2g/L
【0114】
下記組成を有する電解銅めっき液(液温30℃)を用いて電解めっきすることにより、前記銅箔上にメッシュ状の銅めっき層を形成した。電解めっき条件は、20A、10分間とし、また被着材として銅板(寸法600×1000mm)を用い、アノードとしてチタンケース入り銅球を用いた。この銅めっき層は、正方形の開口部が規則的に配列した正方格子状であり、線幅が23μmであり、開口部(格子)の一辺が188μmであり、開口率が77%であり、厚さが2μmであった。
【0115】
2.黒色合金導電層の形成
PETフィルム上に形成された電磁波シールド層に対して、実施例1と同様にして、亜鉛−ニッケル合金めっきを行うことにより、電磁波シールド層の全面を被覆する黒色合金導電層(厚さ0.2μm)を形成した。
【0116】
3.ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層の形成
上記で作製した黒色合金導電層上に、実施例1と同様にしてハードコート層(厚さ10μm)、高屈折率層(厚さ1.0nm、屈折率1.67)、及び低屈折率層(厚さ90nm、屈折率1.45)を形成した。
【0117】
(比較例1)
電磁波シールド層を形成せず、ハードコート層の厚さを15μmとした以外は、実施例1と同様にして、ディスプレイ用フィルタを作製した。
【0118】
(比較例2)
電磁波シールド層を形成せず、ハードコート層の厚さを27μmとした以外は、実施例2と同様にして、ディスプレイ用フィルタを作製した。
【0119】
(比較例3)
ハードコート層の形成において、ハードコート層用塗料を電磁波シールド層の全面にバーコータにより塗布した後、塗工層の表面をスキージでかきとらなかった以外は、実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルタを作製した。
【0120】
(比較例4)
ハードコート層の形成において、ハードコート層用塗料を電磁波シールド層の全面にバーコータにより塗布した後、塗工層の表面をスキージでかきとらなかった以外は、実施例2と同様にしてディスプレイ用フィルタを作製した。
【0121】
(評価)
1.ハードコート層の厚さ
ハードコート層の厚さは、薄膜測定計F20(フィルメトリクス株式会社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0122】
2.低屈折率層の表面粗さRa
ディスプレイ用フィルタにおいて最表層である低屈折率層の表面粗さRaを、表面粗さ計(サーフコム480A 株式会社東京精密製)を用いて、JIS B 0601(1994)により規定された測定条件、測定長さ4mm、カットオフ値0.8mmで測定した。結果を表1に示す。
【0123】
3.反射率(最低反射率、視感反射率)
ディスプレイ用フィルタの裏面(電磁波シールド層形成面の裏面)に黒ビニールテープをハンドローラーを用いて貼り、分光光度計(U−4000 株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、5°正反射率を測定することにより、ディスプレイ用フィルタの反射率(最低反射率、視感反射率)を測定した。400nm〜700nmの波長内の最も低い反射率を最低反射率とし、波長400〜700nmの範囲における平均反射率を視感反射率とする。結果を表1に示す。
【0124】
4.ハードコート層の鉛筆硬度
JIS−K−5400に基づいて、作製したハードコート層について500g荷重で測定した。ハードコート層上に鉛筆を置き、45度の角度、上から500gの荷重を掛けて5mm程度引っかき、傷の付き具合を確認する。結果を表1に示す。
【0125】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のディスプレイ用フィルタは、ディスプレイに表示された画像の視認性に優れることから、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイなどのディスプレイ全面に設置されるディスプレイ用フィルタとして有用である。
【符号の説明】
【0127】
110 透明基材、
120 メッシュ状の電磁波シールド層、
131 ハードコート層、
132 高屈折率層、
133 低屈折率層、
141 近赤外線吸収層、
142 透明粘着剤層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、前記透明基材上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層と、前記電磁波シールド層上に形成された第1の機能性層を含むディスプレイ用フィルタであって、
前記電磁波シールド層上の最表層の表面粗さRaが、0.1μm以下であることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【請求項2】
前記電磁波シールド層上の最表層の表面粗さRaが、0.01〜0.08μmであることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項3】
前記第1の機能性層が、ハードコート層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項4】
前記ハードコート層の厚さが、5〜35μmであることを特徴とする請求項3に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項5】
前記ハードコート層が、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、及びメチルハイドロジェンシリコーンオイルよりなる群から選択される少なくとも1種のシリコーンオイルを含むことを特徴とする請求項3又は4に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項6】
前記ハードコート層上に、前記ハードコート層よりも屈折率の低い低屈折率層が設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項7】
前記ハードコート層上に、前記ハードコート層よりも屈折率の高い高屈折率層と、前記高屈折率層よりも屈折率の低い低屈折率層とが設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタを備えたことを特徴とするディスプレイ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−223292(P2009−223292A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4230(P2009−4230)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】