説明

ディスプレイ装置用光学フィルタ

【課題】熱処理された強化ガラスを使用せずとも破壊強度に優れたディスプレイ装置用光学フィルタを提供すること。
【解決手段】本発明に係るディスプレイ装置用光学フィルタ20は、ディスプレイモジュール10が内蔵されたディスプレイ装置に使用され、ディスプレイモジュール10前方に配置される。ディスプレイ装置用光学フィルタ20は、非強化ガラス基板と、非強化ガラス基板の一側表面に積層される光学フィルムと、非強化ガラス基板の他側表面に形成され、非強化ガラス基板の内部から溶出する異物質を防ぐ保護層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年6月26日に出願された韓国の特許出願番号第10―2009―0057571号から優先権を主張する。そして、その全内容は、この参照によってすべての目的のために本願明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ディスプレイ装置用光学フィルタに関し、より詳しくは、熱処理された強化ガラスを使用せずとも破壊強度に優れたディスプレイ装置用光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0003】
板ガラス製造過程においては、溶解炉と冷却炉を経る途中で分解されない微細な物質が含有することがあり、かかる含有物はガラスの破損を引き起こし得る。その中でも最も好ましくない含有物はニッケル硫化物であり、これは微細なニッケル微粒子が溶解炉燃料に含まれる硫黄またはガラス貯蔵容器材料と結合する際に形成され得る。こうしたニッケル硫化物は、微細で粒径が0.4mmよりも小さいため、これらすべてを完全に除去することは不可能である。したがって、あらゆるガラスにはニッケル硫化物がある程度含まれる。
【0004】
ガラスが熱処理される際、ニッケル硫化含有物は、時間や温度作用によって変化の過程を経ることとなるが、もしニッケル硫化含有物がガラス中心部の密な部分に位置することとなれば、ニッケル硫化含有物の膨張による自然破損が起こる十分な応力を作り得る。すなわち、ニッケル硫化含有物は、ガラス本来の熱膨張の比率よりもさらに高い水準で膨張することにより、ガラス自体の破損を引き起こすこととなる。
【0005】
特に、ガラス強化の際の急冷過程において、ガラスよりも熱膨張係数の高いニッケル硫化物(NiS)は、ガラス内部で膨張しつつガラスと含有物との界面(ガラス ニッチ)表面に一部微小亀裂を残す。ニッケル硫化物(NiS)は、室温に冷却した後にもβ相へ持続的に徐々に転移し、体積増加とともに界面に作用する圧力を増加させ、強化の際に生成される亀裂を拡張させ、最終的には不時のガラス破損を招く。
【0006】
最近になり、光エレクトロニクス(photoelectronics)関連部品、その中でも画像を表示するディスプレイ装置の発達により、各種デジタル情報提供装置、たとえばテレビ用モニタ、パーソナルコンピュータ用モニタ、バス・地下鉄の案内表示板などが広く普及している。こうしたディスプレイ装置には、外光反射、輝度、コントラスト、残像、視野角、色純度を向上させるために、多様な光学フィルムを含む光学フィルタが使用されている。このような光学フィルタは、外部衝撃を防止するために、熱処理された強化ガラスを採用している。
【0007】
そこで、ディスプレイ装置業界では、強化ガラスを使用せずに光学フィルタを具現するために、多様な試みを行っている。その中で、光学フィルタに含まれるフィルムをパネルに直接貼り付けて、強化ガラスを使用せずに完成品の重さ全体をも減らそうとする試みがある。しかし、これでは、パネルから発生する騒音や外部からの衝撃に対して耐えられるような十分な強度を提供することができないのが現実である。
【0008】
こうした現実的な困難さのため、ディスプレイ装置業界では、強化ガラスの代わりに非強化ガラスを使用して破壊強度に優れた光学フィルタを具現しようとする試みを行っている。ところが、非強化ガラスは、水分あるいは空気中に長時間露出される場合、ナトリウムイオン(Na)が溶出してガラス表面の強度が弱まり、ガラス表面がぼやけて曇るようになる。そこで、従来は、非強化ガラスの前面に反射防止フィルムを貼り付け、または接着し、非強化ガラスの裏面に多様な光学フィルムを貼り付け、または接着してナトリウムイオン(Na)の溶出を防止していた。
【0009】
しかし、ディスプレイ市場が次第に拡大し、市場での価格競争が激しくなる中で、市場競争において優位を占めるためにディスプレイ企業は、反射防止フィルムやその他の光学フィルムの使用を排除する方法を通じて、光学フィルタの製造コストを下げようとする趨勢にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような背景から提案されたものであり、その目的は、熱処理された強化ガラスを使用せずとも破壊強度に優れたディスプレイ装置用光学フィルタを提供することである。
また、本発明の他の目的は、画面視認性を高め、製造コストを下げることができるディスプレイ装置用光学フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような目的を達成するために、本発明に係るディスプレイ装置用光学フィルタは、ディスプレイモジュールが内蔵されたディスプレイ装置に使用され、ディスプレイモジュール前方に配置される。また、一態様によると、本発明のディスプレイ装置用光学フィルタは、非強化ガラス基板と、非強化ガラス基板の一側表面に積層される光学フィルムと、非強化ガラス基板の他側表面に形成され、非強化ガラス基板の内部から溶出する異物質を防ぐ保護層とを含む。
【0012】
本発明の付加的な態様によるディスプレイ装置用光学フィルタは、光学フィルムがディスプレイモジュールから入射する電磁波(EMI)を遮断する電磁波遮蔽層と、電磁波遮蔽層に形成され、ディスプレイモジュールから入射する光の特性を改善させるための色補正層とを含む。
【発明の効果】
【0013】
前記の構成によると、本発明のディスプレイ装置用光学フィルタは、非強化ガラス基板の外部露出面に異物質が溶出することを防ぐ保護層を形成し、反対の面に光学フィルムが形成されるように具現することにより、たとえば、非強化ガラス基板の内部からナトリウムイオン(Na)が溶出してヘイズが増加する現象を抑制し、画面視認性と破壊強度に優れた光学フィルタを得ることができるという有用な効果がある。
【0014】
また、本発明の他のディスプレイ装置用光学フィルタは、光学フィルムが電磁波遮蔽層と色補正層のみを有しても、ディスプレイ装置用フィルタ規格を満たすことができるよう具現されることにより、光学フィルタの製造コストを下げることができるという有用な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスプレイ装置用光学フィルタが適用されたディスプレイ装置の概略的な構造を示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るディスプレイ装置用光学フィルタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図面を参照しながら、前述した態様、そして追加的な態様を記述した好適な実施形態を通じ、本発明を当業者が容易に理解して再現することができるよう、詳細に説明することとする。一方、本発明は、例示的実施形態だけでなく、様々な変形例、変更態様、等価物および他の実施形態も含み、それらは添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神と範囲内に含まれ得る。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るディスプレイ装置用光学フィルタが適用されたディスプレイ装置の概略的な構造を示している。
図1に示すように、本実施形態に係るディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)装置である。プラズマディスプレイパネル(PDP)装置は、大きくディスプレイモジュール10とディスプレイモジュール10前方に配置されるディスプレイ装置用光学フィルタ20とで具現される。
【0018】
ディスプレイモジュール10は、第1基板11と第2基板13との間に放電セル12が形成され、放電セル12には、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスが充填される。また、第1基板11と第2基板13の内側面には、蛍光物質が塗布されている。プラズマディスプレイパネル(PDP)装置は、駆動回路基板14を介して放電セル12に充填された混合ガスに強い電場を印加すると、混合ガスから放出された紫外線が蛍光物質とぶつかって、固有の可視光線と電磁波(EMI)、近赤外線(NIR)、色純度を低下させるオレンジ光を放出する。
【0019】
ディスプレイ装置用光学フィルタ20は、電磁波(EMI)、近赤外線(NIR)、オレンジ光を遮蔽して視聴者の人体を保護し、リモコンなどの外部機器の誤動作を防ぎ、色純度を向上させる役割をする。以下、図2を参照しつつ、本発明に係るディスプレイ装置用光学フィルタ20の構造を説明することとする。
【0020】
図2は、本発明に係るディスプレイ装置用光学フィルタを示している。図示したように、本発明に係るディスプレイ装置用光学フィルタ20は、非強化ガラス基板21、保護層22、光学フィルムとしての電磁波遮蔽層23と色補正層24とを含んで具現される。
【0021】
保護層22は、非強化ガラス基板21の視聴者側の面に形成され、非強化ガラス基板21の内部から溶出する異物質、たとえば、ナトリウムイオン(Na)の放出を防ぐ。一例として、保護層22は、酸化錫(SnO)を含む被膜層で具現することができる。非強化ガラス基板21に酸化錫(SnO)を含む被膜層を形成する方法としては、ガラス平坦化のためのフロート工程において、錫溶融物上にガラスを流して錫溶融物が当接する非強化ガラス基板21の一側表面に酸化錫(SnO)を含む被膜層を形成する方法を使用することができる。
【0022】
電磁波遮蔽層23は、ディスプレイモジュールから入射する電磁波(EMI)を遮断する。電磁波遮蔽層23は、金属薄膜または高屈折率透明薄膜が複数回積層されてなる多層導電膜層によって具現することができる。他の例として、電磁波遮蔽層23は、金属パターンが形成された導電性メッシュフィルムによって具現することができる。
【0023】
ここで、導電性メッシュフィルムとしては、一般的には、接地された金属メッシュ、または合成樹脂や金属繊維のメッシュに金属被覆したものを使用することができる。導電性メッシュフィルムを構成する金属の材質としては、たとえば、銅、クロム、ニッケル、銀、モリブデン、タングステン、アルミニウムなど、電気伝導性に優れ、加工性のある金属であれば、すべて使用可能である。
【0024】
そして、多層導電膜層は、ITO(Indium Tin Oxide)に代表される高屈折透明薄膜を、電磁波の遮蔽のために使用することができる。多層導電膜層としては、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの金属薄膜と、酸化インジウム、酸化第2錫、酸化亜鉛などの高屈折率透明薄膜を交互に積層してなる多層薄膜などがある。
【0025】
色補正層24は、電磁波遮蔽層23に形成され、ディスプレイモジュールから入射する光の特性を改善させる。色補正層24は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の量を減少させたり調節して色均衡を変化させたりして調整する色補正機能を遂行できるようにするもので、色補正色素を樹脂に含ませて電磁波遮蔽層23の表面に直接コーティングして形成することができる。
色補正層24は、ネオンカット色素を含ませてネオンカット機能を同時に遂行できるように具現することができる。一般的に、ディスプレイパネル内のプラズマから発生する赤色の可視光線がオレンジ色に現れる傾向がある。ネオンカット色素は、580〜600nmの波長帯を有するこうしたオレンジ色を赤色へ色補正する役割を主に果たす。
【0026】
色補正層24は、ディスプレイの色再現範囲を増加させ、画面の鮮明度を向上させるために、多様な色素を使用する。こうした色素としては、染料あるいは顔料を使用することができる。色素の種類としては、アントラキノン系、シアニン系、アゾ系、ストリル系、フタロシアニン系、メチン系などのネオン光遮蔽機能を有する有機色素があるが、本発明はこれらに限定されるものではない。色素の種類と濃度は、色素の吸収波長、吸収係数、ディスプレイにおいて要求される透過特性によって決定されるものであるので、特定の数値に限定して使用されるものではない。
【0027】
色補正層24には、近赤外線吸収色素を含めることができる。近赤外線吸収色素としては、ニッケル錯体系とジイモニウム系の混合色素、銅イオンと亜鉛イオンを含有する化合物色素、シアニン系色素、アントラキノン系色素、スクアリリウム系、アゾメチン系、オキソノール、アゾ系またはベンジリデン系化合物よりなる群から選択される1種以上を使用することができる。
【0028】
本実施形態においては、保護層22が非強化ガラス基板21の視聴者側の面に位置し、光学フィルム23,24が非強化ガラス基板21のディスプレイモジュール側の面に位置することを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、保護層22が非強化ガラス基板21のディスプレイモジュール側の面に位置し、光学フィルム23,24が非強化ガラス基板21の視聴者側の面に位置することも可能である。
【0029】
次の表1は、本発明に係るディスプレイ装置用光学フィルタに対するUL6500のDU衝撃試験結果を示している。ここで、光学フィルタは、非強化ガラス基板の外部露出面、すなわち視聴者側の面に酸化錫(SnO)を含む被膜層を形成し、その反対の面に電磁波遮蔽層と色補正層を順に積層したものである。光学フィルタに衝撃を加える物体には、直径51mm、重さ540gの鉄の玉を使用し、光学フィルタからの高さ(位置エネルギー)を変化させながらガラス破壊強度を試験した。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示すように、全部で5種類のディスプレイ装置用光学フィルタのサンプルを使用して実験した結果、破壊強度6.88J以上の場合に第4サンプルにおいて破壊が発見されたが、他の残りのサンプルは異常がなかったことを確認することができた。通常、家庭用機器として使用可能な破壊強度が3.5Jであることを勘案すると、本発明に係るディスプレイ装置用光学フィルタは、破壊強度が良好であることが分かる。
【0032】
ここまで、本明細書では、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明を容易に理解して再現できるよう、図面に図示した実施形態を参考に説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の各実施形態から多様な変形および均等な他の実施形態が可能であるという点が理解できよう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲によってのみ定められるべきである。
【符号の説明】
【0033】
10 ディスプレイモジュール
11 第1基板
12 放電セル
13 第2基板
14 駆動回路基板
20 ディスプレイ装置用光学フィルタ
21 非強化ガラス基板
22 保護層
23 電磁波遮蔽層
24 色補正層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイモジュールが内蔵されたディスプレイ装置に使用され、前記ディスプレイモジュール前方に配置されるディスプレイ装置用光学フィルタにおいて、
非強化ガラス基板と、
前記非強化ガラス基板の一側表面に積層される光学フィルムと、
前記非強化ガラス基板の他側表面に形成され、前記非強化ガラス基板の内部から異物質が溶出することを防ぐ保護層と、
を含むことを特徴とするディスプレイ装置用光学フィルタ。
【請求項2】
前記保護層が、酸化錫(SnO)を含む被膜層であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置用光学フィルタ。
【請求項3】
前記非強化ガラス基板はフロートガラスであり、前記酸化錫を含む被膜層は前記フロートガラスに形成されることを特徴とする請求項2に記載のディスプレイ装置用光学フィルタ。
【請求項4】
前記光学フィルムが、
前記ディスプレイモジュールから入射する電磁波(EMI)を遮断する電磁波遮蔽層と、
前記電磁波遮蔽層に形成され、前記ディスプレイモジュールから入射する光の色を補正するための色補正層と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置用光学フィルタ。
【請求項5】
前記電磁波遮蔽層が、導電性メッシュフィルムまたは金属薄膜と高屈折率透明薄膜が複数回積層されてなる導電膜のいずれかを含むことを特徴とする請求項4に記載のディスプレイ装置用光学フィルタ。
【請求項6】
前記色補正層には、近赤外線吸収色素およびネオンカット色素の少なくとも一つが含まれることを特徴とする請求項4に記載のディスプレイ装置用光学フィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−8259(P2011−8259A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143539(P2010−143539)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密素材株式会社 (80)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG CORNING PRECISION MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】644−1 Jinpyeong−dong, Gumi−si,Gyeongsangbuk−do 730−360,Korea
【Fターム(参考)】