説明

ディスプレイ装置

【課題】外部光を効率よく発電に利用でき、製造が容易なディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】基板と、少なくとも一つの太陽電池と、少なくとも一つの有機発光素子とを有し、太陽電池と有機発光素子が基板の同一面上にあり、太陽電池と有機発光素子が電気的に接続され、太陽電池が発電した電力を有機発光素子の駆動に利用する、ディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子と太陽電池とを一体化したディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光素子と、発電素子としての太陽電池とを組み合わせた発光装置が提案されている。この発光装置では、素子の発光や太陽光等の外部光を利用して発電し、発光素子等に電力を供給するため、外部電源や電池等の消費電力を低減できる。
【0003】
発光素子と発電素子とを組み合わせた装置は数多く提案されている(例えば、特許文献1,2,3,4,5)。
例えば、特許文献1には発光素子から発せられる光を利用し、太陽電池により発電を行う複合発光素子が提案されている。この複合発光素子は、自己発光素子から発せられる光のみを光電変換素子が電気に変換することを目的としている。
特許文献2には、発光素子部分と発電素子部分とを積層して、外部からの光を用いて発電し、発光素子で発光する、一体型薄膜太陽電池を備えた複合表示装置が提案されている。
特許文献3には、透明基板の一方の表面に有機EL素子が、透明基板の他方の表面に太陽電池が配置されている有機エレクトロルミネッセンス発光表示装置が提案されている。
特許文献4には、発光体と太陽電池が個別の基板上に並置された照明パネルが開示されている。
特許文献5には、同一の基板上にEL素子と発電素子を並置した複合発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−354773号公報
【特許文献2】特開2002−8851号公報
【特許文献3】特開2002−6769号公報
【特許文献4】特開昭60−78477号公報
【特許文献5】特開2005−203239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、発光素子と発電素子とを組み合わせた装置は数多く提案されている。しかしながら、ディスプレイ装置に関しては太陽光等の外部光の利用が十分とは言えず、また、製造工程が複雑であり、微細な構造を作製しにくい等の問題があった。
本発明の目的は、外部光を効率よく発電に利用でき、製造が容易なディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下のディスプレイ装置が提供される。
1.基板と、少なくとも一つの太陽電池と、少なくとも一つの有機発光素子とを有し、前記太陽電池と前記有機発光素子が前記基板の同一面上にあり、前記太陽電池と前記有機発光素子が電気的に接続され、前記太陽電池が発電した電力を有機発光素子の駆動に利用する、ディスプレイ装置。
2.前記太陽電池が有機太陽電池である1に記載のディスプレイ装置。
3.前記有機太陽電池が有機薄膜太陽電池である2に記載のディスプレイ装置。
4.前記有機発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である1〜3のいずれかに記載のディスプレイ装置。
5.前記基板がフレキシブル基板である1〜4のいずれかに記載のディスプレイ装置。
6.前記太陽電池と前記有機発光素子が、蒸着法又は塗布法によって作製される1〜5のいずれかに記載のディスプレイ装置。
7.下部電極を備えた基板の設置から上部電極の設置まで、真空蒸着装置内で蒸着法によって作製される6に記載のディスプレイ装置。
8.前記太陽電池が発電した電力を蓄電する二次電池を有する1〜7のいずれかに記載のディスプレイ装置。
9.外部電源を有し、必要な場合には前記外部電源から供給される電力を用いて有機発光素子を駆動する1〜8のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のディスプレイ装置は、発光素子と発電素子(受光素子)である太陽電池が同一面上に形成してあるので、これらの素子を積層した場合に比べて発光素子の吸収による太陽電池の出力低下を防止できる。また、発光面と受光面が同一面上にあるので、ディスプレイ装置を不透明な壁面に設置しても太陽電池の発電量は低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のディスプレイ装置の一実施形態を模式的に示した斜視図及びその部分拡大図である。
【図2】本発明のディスプレイ装置の一実施形態の構成を示す模式的な部分断面図である。
【図3】本発明のディスプレイ装置の他の実施形態の構成を示す模式的な部分断面図である。
【図4】本発明のディスプレイ装置の他の実施形態の構成を示す模式的な部分断面図である。
【図5】3色方式によるフルカラー表示を説明するための概念図である。
【図6】色変換方式によるフルカラー表示を説明するための概念図である。
【図7】カラーフィルタ方式によるフルカラー表示を説明するための概念図である。
【図8】有機発光素子と太陽電池の配列の例を示す模式図である。
【図9】有機発光素子と太陽電池の配列の例を示す模式図である。
【図10】有機発光素子と太陽電池の配列の例を示す模式図である。
【図11】実施例で作製したディスプレイを形成する複合素子を模式的に示した平面図である。
【図12】隣接する有機薄膜太陽電池の接続形態を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のディスプレイ装置は、基板と、少なくとも一つの太陽電池と、少なくとも一つの有機発光素子とを有する。そして、太陽電池と有機発光素子が基板の同一面上にあり、太陽電池と有機発光素子が電気的に接続され、太陽電池が発電した電力を有機発光素子の駆動に利用することを特徴とする。
【0010】
図1は本発明のディスプレイ装置の一実施形態を模式的に示した斜視図及びその部分拡大図である。
本実施形態では、基板10の同一面上に、画素である有機発光素子11と、発電素子である太陽電池12が交互に形成されている。有機発光素子11と太陽電池12を基板10の同一面上に形成することにより、太陽光等の外部光が効率よく利用できる。例えば、上述した特許文献1及び2の構成では、自己発光素子と光電子変換素子が積層して形成されているため、自己発光素子から発せられる光を電気に変換することは可能でも外部光を電気に変換することはできなかった。また、特許文献3に記載の有機EL表示装置は、透明基板の一方の表面に有機EL素子が、透明基板の他方の表面に太陽電池が配置されている。そのため、有機EL表示装置を壁面等の不透明な部位に設置した場合、有機EL素子を駆動するのに十分な電力を得ることができなかった。
【0011】
一方、本発明では有機発光素子11と太陽電池12を基板10の同一面上に形成することにより、太陽電池に入射する外部光を遮るものがない。従って、外部光を効率よく利用できる。また、ディスプレイ装置を不透明な壁に掛けて使用しても、太陽電池12が表示面に形成されているため、壁によって発電量が低下することはない。また、上記室内光を太陽電池の光源とする上記の場合、光源の強度が太陽光に比べて大きく劣るが、そのような場合、太陽電池として照射光強度が低くても変換効率があまり低下しない有機薄膜太陽電池が好適である。
【0012】
本発明のディスプレイ装置は、少なくとも一つの有機発光素子と少なくとも一つの太陽電池が基板の同一面上に形成されていればよく、各素子の位置や形状等は特に限定されるものではない。また、電気回路についても公知のものを適宜採用できる。
以下、有機発光素子として有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を、太陽電池として有機薄膜太陽電池を使用した例について説明する。
【0013】
図2は本発明ディスプレイ装置の一実施形態の構成を示す模式的な部分断面図である。尚、簡略化のため有機EL素子11と有機薄膜太陽電池12を1つずつ図示している。
本実施形態のディスプレイ装置では、有機発光素子として有機EL素子11と太陽電池である有機薄膜太陽電池12が基板10の同一面上に並置されている。
有機EL素子11は一対の電極である陽極11aと陰極11dの間に正孔注入層11b及び有機発光層11cを有する構成としてある。陽極11aは基板10上に形成されている。尚、用途にもよるが、有機EL素子の発光画素サイズは長径で数十μm〜1cm程度が考えられる。携帯電話等、モバイル用途では上記範囲の小さなサイズ、広告サインなどアプリケーション全体がある程度の大きさがあるものは、上記範囲の大きなサイズとなると考える。また、有機EL素子の構成は本実施形態に限定されず、後述する構成でもよい。
有機薄膜太陽電池12は、下部電極12aと上部電極12dの間にp層12bとn層12cを形成した構成を有する。下部電極12aは基板10上に形成されている。尚、有機薄膜太陽電池の構成は本実施形態に限定されず、後述する構成でもよい。有機薄膜太陽電池1つのサイズは、概ね有機EL素子の画素サイズと同じ程度から、少し大きめ(3〜5倍)が好ましい。例えば、後述する図8〜図10に示すパターンに合わせて、有機EL素子とほぼ同等なサイズから、少し大きめ、例えば、1.2倍〜3倍程度のサイズの有機薄膜太陽電池を使用することが好ましい。有機EL素子の閾値電圧及び発光効率と有機薄膜太陽電池の発電電圧及び光電変換効率を考慮すると、太陽電池の2個〜10個の直列接続に対し、一個の有機EL素子の画素が対応することが好ましい。有機EL素子の閾値電圧の低下及び有機薄膜太陽電池の発電電圧の能力の向上により、1:1の素子構成も可能となる。
【0014】
有機薄膜太陽電池12は、他の電源や回路とともに電源部20を構成する。電源部20が供給する電力を有機EL素子11の電極に入力するため、有機EL素子11は入力端子13を有する。電源部20と有機EL素子11を電気的に接続することにより、有機薄膜太陽電池12が発電した電力を有機EL素子11の駆動に使用する。尚、上述したように、駆動電圧の関係から複数の太陽電池に対し1個の有機EL素子を対応させることが好ましいが、電源を外部からも供給する場合はこのような問題はなく、有機EL素子と太陽電池の比率を自由に調整できる。
【0015】
本発明において、電源部20には少なくとも太陽電池が含まれるが、他の電源要素等を有していてもよい。
図3は、本発明のディスプレイ装置の他の実施形態の構成を示す模式的な部分断面図である。本実施形態のディスプレイ装置では、電源部20に二次電池21を設けてある。尚、他の構成については上述した図2と同様であるため、説明を省略する。本実施形態では、有機薄膜太陽電池12が二次電池21を充電し、二次電池21が有機EL素子11に給電するように構成してある。二次電池としては、例えば、高電圧が得られる、リチウムイオン電池が好ましい。
【0016】
図4は、本発明のディスプレイ装置の他の実施形態の構成を示す模式的な部分断面図である。
図4のディスプレイ装置では、電源部20に二次電池21、外部電源22及びスイッチ23を形成してある。尚、他の構成については上述した図2と同様であるため、説明を省略する。本実施形態では、有機薄膜太陽電池12が二次電池21を充電するようにしてある。また、スイッチ23によって、有機EL素子11の給電元を外部電源22と及び二次電池21から選択できるようにしてある。このような構成とすることにより、例えば、二次電池21の充電量が十分である場合には二次電池21を利用して有機EL素子11を駆動させることができる。一方、二次電池21の充電量が不足している場合には、外部電源22を利用して有機EL素子11を駆動させることができる。尚、外部電源22と及び二次電池21の選択は、公知の制御手段により、自動的に制御することも可能である。例えば、二次電池21の充電量を監視することによって、スイッチ23を制御することができる。尚、この駆動用電源の出力を駆動回路により制御し、有機EL素子の各画素へ供給し、高精細なディスプレイとすることも可能である。この場合、駆動方式は各画素にトランジスタ及びコンデンサーが組み込まれているアクティブマトリックス型、又は、画素列を線順次方式で駆動し、画素外部に駆動回路があるパッシブマトリックス型が挙げられる。用途にも拠るが、ディスプレイ装置の生産性の点では、パッシブマトリックス型回路が好ましい。
【0017】
本発明のディスプレイ装置では、上記の実施形態に限られず、例えば、装置の制御のために各種センサーを使用したり、ディスプレイ装置を駆動させるための制御部を有していてもよい。
例えば、ディスプレイ装置に照度センサーを設置して、その場の明るさを取り込み、使用環境に応じて有機EL素子に通電する電流値を変化させることで輝度を調節したり、点灯及び消灯を切り替えたりすることができる。具体的に、ディスプレイ装置が暗い場所で使用される場合には、装置の輝度を低くし、明るい場所で使用される場合には、輝度を高くすることによって視認性を向上することができる。
【0018】
本発明のディスプレイ装置を構成する部材や材料は、各構成部材の技術分野において公知のものを使用することができる。以下、各構成部材について簡単に説明する。
【0019】
1.基板
基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものが好ましい。例えば、ガラス基板及び透明性樹脂フィルムがある。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
本発明においては、透明性樹脂フィルム等のフレキシブル基板であっても、ディスプレイ装置の基板として使用できる。
【0020】
2.太陽電池
本発明で使用する太陽電池としては、特に限定はなく、公知の太陽電池が採用できる。例えば、単結晶Si、多結晶Si、アモルファスSi等に代表されるシリコン系太陽電池、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなる多元系化合物半導体(Cu(In,Ga)Se)の薄膜(CIGS薄膜)を用いたCIGS太陽電池、有機太陽電池等が挙げられる。
上記の太陽電池のなかで、有機太陽電池、特に、有機薄膜太陽電池が好ましい。有機薄膜太陽電池は有機EL素子と同様な方法で作製できるため、ディスプレイ装置の製造が大幅に簡略化できる。
以下、太陽電池の例として有機薄膜太陽電池について説明する。
【0021】
有機薄膜太陽電池のセル構造は、一対の電極の間に1層以上の有機薄膜層を含有する構造であれば特に限定されるものでない。必要に応じて、電極と有機層の間にバッファー層を設けてもよい。具体的には、安定な絶縁性基板上に下記の構成を有する構造が挙げられる。
ア.下部電極/p層/積層i層(p材料とn材料の混合層)/n層/上部電極
イ.下部電極/バッファー層/p層/積層i層(p材料とn材料の混合層)/n層/上部電極
ウ.下部電極/p層/積層i層(p材料とn材料の混合層)/n層/バッファー層/上部電極
エ.下部電極/バッファー層/p層/積層i層(p材料とn材料の混合層)/n層/バッファー層/上部電極
及び上記ア〜エの構成のp層とn層を置換した構造が挙げられる。積層i層は必要に応じて適宜設置すればよい。
【0022】
いずれの構成においても上部電極の形成後、大気に触れさせることなく、下部電極から上部電極までをシールドして作製し、さらに、酸化耐性を持たせる封止構造を設置することが好ましい。封止構造としては、ガラス基板上であればザグリガラス(中央部に凹部を設けたガラス)を窒素雰囲気中で、該凹部に乾燥剤をいれ、太陽電池が形成された基板と接合して封止する方法、或いは、無機のパッシベーション膜を有機太陽電池の周囲に成膜後、ガスバリア性樹脂をラミネートする方法等がある。
上記の封止は、太陽電池と有機EL素子の両方が作製された構造に対して行なうのが、ディスプレイ装置の製造効率の点で好ましい。
【0023】
(1)下部電極、上部電極
下部電極、上部電極の材料は特に制限はなく、公知の導電性材料を使用できる。例えば、p層と接続する電極としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、金(Au)、パラジウム(Pd)等の金属が使用できる。n層と接続する電極としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、カルシウム(Ca)、白金(Pt)、リチウム(Li)等の金属や、Mg:Ag、Mg:InやAl:Li等の二成分金属系が使用できる。
尚、高効率の光電変換特性を得るためには、有機太陽電池の少なくとも一方の面は太陽光スペクトルにおいて充分透明にすることが望ましい。透明電極は、公知の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように形成する。受光面の電極の光透過率は10%以上とすることが望ましい。さらに50%以上が好ましい。一対の電極構成の好ましい構成では、電極部の一方が仕事関数の大きな金属を含み、他方は仕事関数の小さな金属を含む。
【0024】
(2)p層、n層、i層
p層、n層およびi層の典型的な膜厚は、5nm〜1μmである。特に好ましい膜厚はp層、n層およびi層でそれぞれ、20nm〜100nm、10nm〜100nmおよび10nm〜1μmである。
p層の材料は特に限定されないが、正孔受容体としての機能を有する化合物が好ましい。有機化合物であれば、例えば、N,N’−ビス(3−トリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(mTPD)、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)及び4,4’,4’’−トリス(フェニル−3−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等に代表されるアミン化合物、フタロシアニン(Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)及びチタニルフタロシアニン(TiOPc)等のフタロシアニン類、オクタエチルポルフィリン(OEP)、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)及び亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)等に代表されるポルフィリン類、高分子化合物であれば、ポリヘキシルチオフェン(P3HT)及びメトキシエチルヘキシロキシフェニレンビニレン(MEHPPV)等の主鎖型共役高分子類、並びにポリビニルカルバゾール等に代表される側鎖型高分子類等が挙げられる。
【0025】
n層の材料は特に限定されないが、電子受容体としての機能を有する化合物が好ましい。有機化合物であれば、例えば、C60等のフラーレン化合物、カーボンナノチューブ、ペリレン化合物、多環キノン及びキナクリドン等、高分子系ではCN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV、−CN基又はCF基含有ポリマー及びポリ(フルオレン)化合物等を挙げることができる。電子の移動度が高い材料が好ましく、さらに電子親和力が小さい材料が好ましい。このように電子親和力の小さい材料をn層として組み合わせることで充分な開放端電圧を実現することができる。
また、無機化合物であれば、n型特性の無機半導体化合物を挙げることができる。具体的には、n−Si、GaAs、CdS、PbS、CdSe、InP、Nb,WO,Fe等のドーピング半導体及び化合物半導体、又、二酸化チタン(TiO)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti)等の酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の導電性酸化物が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、酸化チタン、特に好ましくは、二酸化チタンを用いる。
【0026】
混合i層は上記電子供与性材料(p)と電子受容性材料(n)の組み合わせによって構成され、材料は上記ように特に限定されず、電子供与性材料(p)もしくは電子受容性材料(n)は、上記例示化合物のいずれも用いることができる。
【0027】
(3)バッファー層
一般に、有機薄膜太陽電池は総膜厚が薄いことが多く、そのため上部電極と下部電極が短絡し、セル作製の歩留まりが低下することが多い。このような場合には、バッファー層を積層することによってこれを防止することが好ましい。又、発生した電流を効率よく外部に取り出すためにもバッファー層を設けた方が好ましい。
バッファー層に好ましい化合物としては、膜厚を厚くしても短絡電流が低下しないようにキャリア移動度が充分に高い化合物が好ましい。例えば、低分子化合物であれば下記に示すNTCDAに代表される芳香族環状酸無水物等が挙げられ、高分子化合物であればポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリアニリン:カンファースルホン酸(PANI:CSA)等に代表される公知の導電性高分子等が挙げられる。尚、有機EL素子で用いられる正孔注入・輸送材料及び電子輸送材料を、p層或いはn層に用いる材料との組合せを考慮して、適宜用いることも有効である。
【化1】

【0028】
また、バッファー層には、励起子が電極まで拡散して失活してしまうのを防止する役割を持たせることも可能である。このように励起子阻止層としてバッファー層を挿入することは、光電変換の高効率化のために有効である。励起子阻止層は陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。この場合、励起子阻止層として好ましい材料としては、例えば、有機EL素子用材料として公知の正孔障壁層用材料又は電子障壁層用材料等が挙げられる。このような材料はいずれも、HOMO準位とLUMO準位のエネルギー差が十分大きく、基礎吸収波長がn材料およびp材料のそれよりも短いことが望ましい。このような材料は、励起子エネルギーがp材料およびn材料より大きく、これが、励起子がp層或いはn層内に閉じ込められる条件となっている。
正孔障壁層として好ましい材料は、イオン化ポテンシャルが充分に大きい化合物であり、電子障壁層として好ましい材料は、電子親和力が充分に小さい化合物である。具体的には有機EL素子用の公知な材料であるバソクプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)等が陰極側の正孔障壁層材料として例示できる。
【化2】

【0029】
さらに、バッファー層には、上記n層材料として例示した無機半導体化合物を用いてもよい。又、p型無機半導体化合物としてはCdTe、P−Si、SiC、GaAs、WO等を用いることができる。
【0030】
3.有機発光素子
本発明で使用する有機発光素子としては、例えば、有機EL素子、有機発光トランジスタ等が採用できる。
なかでも、有機EL素子は、低電圧(3V程度)で発光するため、太陽電池との組み合わせに適するため好ましい。
以下、有機発光素子の例として有機EL素子について説明する。
【0031】
本発明で使用する有機EL素子の構成としては、特に限定するものではなく、公知の構成が採用できる。例えば、下記の構成が挙げられる。
(A)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(B)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
(C)陽極/発光層/電子注入輸送層/陰極
(D)陽極/発光層/陰極
(E)陽極/正孔注入輸送層/電子障壁層/発光層/電子注入輸送層/陰極
【0032】
(D)型の素子構成としては、発光成分を一層形態で一対の電極間に挟持させた形態の他に、例えば、発光層を下記(F)〜(G)のように形成してもよい。
(F)正孔注入輸送成分、発光成分及び電子注入輸送成分を混合させた一層形態
(G)正孔注入輸送成分及び発光成分を混合させた一層形態
(H)発光成分及び電子注入輸送成分を混合させた一層形態
【0033】
尚、本発明で使用する有機EL素子は、これらの素子構成に限るものではなく、それぞれの型の素子において、正孔注入輸送層、発光層、電子注入輸送層を複数層設けたりすることができる。また、それぞれの型の素子において、正孔注入輸送層と発光層との間に、正孔注入輸送成分と発光成分の混合層及び/又は発光層と電子注入輸送層との間に、発光成分と電子注入輸送成分の混合層を設けることもできる。
【0034】
(1)陽極
陽極としては、比較的仕事関数の大きい金属、合金又は電気電導性化合物を電極物質として使用することが好ましい。陽極に使用する電極物質としては、例えば、金、白金、銀、銅、コバルト、ニッケル、パラジウム、バナジウム、タングステン、酸化錫、酸化亜鉛、ITO(インジウム・ティン・オキサイド)、ポリチオフェン、ポリピロール等を挙げることができる。これらの電極物質は、単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。陽極は、これらの電極物質を、例えば、蒸着法、スパッタリング法等の方法により、基板の上に形成することができる。また、陽極は一層構造であってもよく、あるいは多層構造であってもよい。陽極のシート電気抵抗は、好ましくは、数百Ω以下、より好ましくは、5〜50Ω程度に設定する。陽極の厚みは、使用する電極物質の材料にもよるが、一般に、5〜1000nm程度、より好ましくは、10〜500nm程度に設定する。
陽極側から光を取り出す場合、透明な電極である必要がある。この場合、好適な材料として、ITOを挙げることができる。陽極をITOとする場合、太陽電池の下部電極としても使用できる。この場合、基板上に同時に電極を設置することも可能であるため、ディスプレイ装置の生産性向上や品質管理の点で好ましい。
【0035】
(2)正孔注入輸送層
正孔注入輸送層は、陽極からの正孔(ホール)の注入を容易にする機能、及び注入された正孔を輸送する機能を有する化合物を含有する層である。正孔注入輸送層は、正孔注入輸送機能を有する化合物(例えば、フタロシアニン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリトリアリールアミン誘導体等)を少なくとも1種使用して形成することができる。
これらの正孔注入輸送機能を有する化合物は、単独で使用してもよく、又は複数併用してもよい。
【0036】
正孔注入輸送機能を有するトリアリールアミン誘導体の具体例としては、例えば、4,4’−ビス〔N−フェニル−N−(4”−メチルフェニル)アミノ〕−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス〔N−フェニル−N−(3”−メチルフェニル)アミノ〕−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス〔N−フェニル−N−(3”−メトキシフェニル)アミノ〕−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス〔N−フェニル−N−(1”−ナフチル)アミノ〕−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ビス〔N−フェニル−N−(3”−メチルフェニル)アミノ〕−1,1’−ビフェニル、1,1−ビス〔4’−[N,N−ジ(4”−メチルフェニル)アミノ]フェニル〕シクロヘキサン、9,10−ビス〔N−(4’−メチルフェニル)−N−(4”−n−ブチルフェニル)アミノ〕フェナントレン、3,8−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)−6−フェニルフェナントリジン、4−メチル−N,N−ビス〔4”、4”’−ビス[N’,N’−ジ(4−メチルフェニル)アミノ]ビフェニル−4−イル〕アニリン、N,N’−ビス〔4−(ジフェニルアミノ)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−1,3−ジアミノベンゼン、N,N’−ビス〔4−(ジフェニルアミノ)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−1,4−ジアミノベンゼン、5,5”−ビス〔4−(ビス[4−メチルフェニル]アミノ)フェニル−2,2’:5’,2”−ターチオフェン、1,3,5−トリス(ジフェニルアミノ)ベンゼン、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリイル)トリフェニルアミン、4,4’,4”−トリス〔N,N−ビス(4”’−tert−ブチルビフェニル−4””−イル)アミノ〕トリフェニルアミン、1,3,5−トリス〔N−(4’−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ〕ベンゼン等を挙げることができる
【0037】
(3)発光層
発光層は、正孔及び電子の注入機能、それらの輸送機能、正孔と電子の再結合により励起子を生成させる機能を有する化合物を含有する層である。発光層は、発光機能を有する化合物、例えば、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、多環芳香族化合物〔例えば、ルブレン、アントラセン、テトラセン、ピレン、ペリレン、クリセン、デカサイクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、1,4−ビス(9’−エチニルアントセニル)ベンゼン、4,4’−ビス(9”−エチニルアントラセニル)ビフェニル、ジベンゾ[f,f]ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン誘導体〕、トリアリールアミン誘導体(例えば、正孔注入輸送機能を有する化合物として前述した化合物を挙げることができる)、有機金属錯体〔例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(10−ベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム、2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの亜鉛塩、4−ヒドロキシアクリジンの亜鉛塩、3−ヒドロキシフラボンの亜鉛塩、5−ヒドロキシフラボンのベリリウム塩、5−ヒドロキシフラボンのアルミニウム塩〕、スチルベン誘導体〔例えば、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル、4,4’−ビス[(1,1,2−トリフェニル)エテニル]ビフェニル〕、クマリン誘導体(例えば、クマリン1、クマリン6、クマリン7、クマリン30、クマリン106、クマリン138、クマリン151、クマリン152、クマリン153、クマリン307、クマリン311、クマリン314、クマリン334、クマリン338、クマリン343、クマリン500)、ピラン誘導体(例えば、DCM1、DCM2)、オキサゾン誘導体(例えば、ナイルレッド)、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ピラジン誘導体、ケイ皮酸エステル誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフェニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリビフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリターフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリナフチレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等を挙げることができる。
さらには、燐光発光を効率的に外部に取り出すためのホスト材料やドーパント材料が挙げられる。
【0038】
(4)電子注入輸送層
電子注入輸送層は、陰極からの電子の注入を容易にする機能及び/又は注入された電子を輸送する機能を有する化合物を含有する層である。電子注入輸送層に使用される電子注入機能を有する化合物としては、例えば、有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体等を挙げることができる。また、有機金属錯体としては、例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、ビス(10−ベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム等の有機ベリリウム錯体、5−ヒドロキシフラボンのベリリウム塩、5−ヒドロキシフラボンのアルミニウム塩等を挙げることができる。好ましくは、有機アルミニウム錯体であり、より好ましくは、置換又は未置換の8−キノリノラート配位子を有する有機アルミニウム錯体である。
本発明の有機電界発光素子においては、電子注入輸送層と陰極との間にさらに、電子注入効率を上げる目的で、LiF、MgF等の金属フッ化物、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、安息香酸リチウム等の有機化合物のリチウム塩による中間層を形成することもできる。
【0039】
(5)陰極
陰極としては、比較的仕事関数の小さい金属、合金又は導電性化合物を電極材料として使用することが好ましい。陰極に使用する電極材料としては、例えば、リチウム、リチウム−インジウム合金、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、カルシウム、マグネシウム、マグネシウム−銀合金、マグネシム−インジウム合金、インジウム、ルテニウム、チタニウム、マンガン、イットリウム、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−カルシウム合金、アルミニウム−マグネシウム合金、グラファイト薄を挙げることができる。これらの電極材料は単独で使用してもよく、また複数併用してもよい。
また、前記した太陽電池の下部電極、上部電極の説明中の、n層と接続する電極で例示した材料と重複する材料を使用することが、ディスプレイ装置の生産性向上や品質管理の点で好ましい。
【0040】
本発明のディスプレイ装置の製造方法は、特に限定されるものではないが、有機発光素子と太陽電池を同一の方法で作製することが好ましい。例えば、マスクを用いた真空蒸着法を用いる場合には、有機太陽電池と有機EL素子を、真空蒸着装置内で真空を破ることなく連続一貫で作製でき、製造工程を簡易にできる。また、パッシブパトリックス型の有機ELディスプレイの場合等、あらかじめITO付基板に層間絶縁膜を形成しておけば、マスクをかける手間が軽減されコストダウンの可能性もある。また、インクジェット法等の塗布法を用いると、簡易な製造工程で安く大量に作製することができる。本発明では、蒸着法や塗布法により素子を形成することが好ましい。
以下、有機薄膜太陽電池及び有機EL素子を使用した際の、各層の製膜方法について説明する。
【0041】
有機薄膜太陽電池及び有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング等のプラズマ成膜、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング、インクジェット等の湿式成膜法を適用することができる。
各層の膜厚は特に限定されないが、通常の膜厚は1nmから10μmの範囲が適している。
【0042】
乾式成膜法の場合、公知の抵抗加熱法が好ましく、太陽電池のi層や、有機EL素子の発光層のような混合層の形成には、例えば、複数の蒸発源からの同時蒸着による成膜方法が好ましい。さらに好ましくは、成膜時に基板温度を制御する。
【0043】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、適切な溶媒に溶解又は分散させて発光性有機溶液を調製し、薄膜を形成するが、任意の溶媒を使用できる。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、炭化水素系溶媒又はエーテル系溶媒が好ましい。又、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。尚、使用可能な溶媒は、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明においては、いずれの有機薄膜層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。
添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【0045】
本発明を構成する有機発光素子と太陽電池は蒸着法や塗布法により製造できるため、マスク蒸着等の方法によって微細なパターンも容易に作製できる。パターニングが微細であることから、有機発光素子はディスプレイの画素を形成することができ、ディスプレイ装置に太陽電池を組み合わせても外観のよさを損なわない。尚、封止工程は太陽電池及び有機EL素子をまとめて一気に封止することも可能である。
【0046】
本発明のディスプレイの表示形式は特に限定はなく、表示装置において公知の形式を採用できる。例えば、フルカラー表示の場合は、RGB方式が採用できる。また、発光素子の駆動方式も特に限定はなく、パッシブマトリクス、アクティブマトリクス等が採用できる。発光素子として有機EL素子を使用した場合、3原色を発光させる方式としては下記(1)〜(3)が知られている。
【0047】
(1)3色方式
赤色、緑色及び青色の発光層を有する有機EL素子をそれぞれ形成することにより3原色を得る。
図5は、3色方式によるフルカラー表示を説明するための概念図である。
3色方式では、基板10上に、透明電極31、発光層、及び裏面電極33がこの順に積層している有機EL素子が3つ並置されている。各EL素子は、赤色発光層32a、緑色発光層32b及び青色発光層32cのいずれかの発光層を有する。このように、異なる色を発する有機EL素子を使用することにより3原色を得る。
尚、図5及び後述する図6及び図7の矢印は各素子の発光色を示し、Rは赤色光、Gは緑色光、Bは青色光を示す。
【0048】
(2)色変換方式
青色発光する有機EL素子を用い、色変換層によって青色を緑色や赤色に変換することで、3原色を得る。
図6は、色変換方式によるフルカラー表示を説明するための概念図である。
色変換方式では、基板10上に、透明電極31、青色発光層32c、及び裏面電極33がこの順に積層している有機EL素子が3つ並置されている。赤色画素は、青色発光を赤色発光に変換する赤色色変換層34aを使用することによって、赤色発光する。同様に、緑色画素は、青色発光を緑色発光に変換する緑色色変換層34bを使用することによって、緑色発光する。青色画素は、有機EL素子の発する青色光をそのまま使用することで青色発光する。このように、色変換層を使用することにより3原色を得る。尚、他色の画素と同様に、青色画素に青色色変換層を設けてもよい。これにより、青色の色純度を上げることができる。
【0049】
(3)カラーフィルタ方式
白色発光する有機EL素子を用い、カラーフィルタを通すことで、白色から赤色、緑色及び青色を得る
図7は、カラーフィルタ方式によるフルカラー表示を説明するための概念図である。
カラーフィルタ方式では、基板10上に、透明電極31、白色発光層35、及び裏面電極33がこの順に積層している有機EL素子が3つ並置されている。赤色画素は、白色発光から赤色発光を取り出すカラーフィルタ36aを使用することによって、赤色発光する。同様に、緑色画素は、白色発光から緑色発光を取り出すカラーフィルタ36bを使用することによって、緑色発光する。青色画素は、青色画素は、白色発光から青色発光を取り出すカラーフィルタ36cを使用することによって、青色発光する。このように、カラーフィルタを使用することにより3原色を得る。
【0050】
上記方式のなかでは、視認性が良く、カラーフィルタ等の部材による太陽電池に入る光量の減少がない点では、3色方式が好ましい。
【0051】
本発明において、太陽電池と画素である有機発光素子の配列の仕方については特に制限はない。図8〜10は有機発光素子と太陽電池の配列の例を示す模式図である。図8は、有機発光素子(RGB)が形成するRGBパターン1つに対し太陽電池12が1つ隣接して形成された例である。図8のように、太陽電池をディスプレイ表面で斜線状に配置してもよく、また、縦横に直線的に配置してもよい。
図9は、複数の有機発光素子(RGB)の群に対して太陽電池12を配置した形態である。このように、有機発光素子が形成する群に対応させて、太陽電池の面積や形状等を変更してもよい。
図10は、各有機発光素子(RGB)の境界付近に有機発光素子の周辺を囲うように太陽電池12を配置した例である。
このように、有機発光素子や太陽電池の形状には特に制限はなく、ディスプレイ装置の用途や外光の想定利用量等を考慮して適宜設定できる。
尚、図示していないが、有機発光素子と太陽電池は絶縁部材を介して絶縁されていることが好ましい。絶縁部材としては一般的な封止樹脂等が使用できる。
【0052】
本発明のディスプレイ装置は、発光素子と太陽電池が基板の同一面上に形成してあるので、これらを積層した場合や別の面に形成した場合と比べて太陽電池の発電効率が向上できる。
また、有機発光素子及び太陽電池として、塗布又は蒸着プロセスで形成できるものを使用することによって、有機発光素子と太陽電池を同じ工程(インライン)で形成することができる。従って、製造効率が極めて高い。
また、有機発光素子と太陽電池は、プラスチックフィルムのようなフレキシブル基板上に作製することが可能であり、塗布プロセスへの適用も容易であるため、ディスプレイ装置を安価で大量に製造できる。
【実施例】
【0053】
実施例1
有機薄膜太陽電池で駆動する有機EL素子を用いたディスプレイを形成する複合素子を作製した。
図11は、ディスプレイを形成する複合素子を模式的に示した平面図である。
本複合素子は、有機EL素子11を直線的に配列した発光素子ライン40と、有機薄膜太陽電池12を直線的に配列した発電ライン50を有する。有機EL素子11は、基板10上に形成されたITO電極を共通の下部電極41とし、同下部電極41上に2.5mm角で有機層(図示せず)及び上部電極42が積層して形成されている。図11では、8個の有機EL素子を示している。尚、有機EL素子は青色発光する。
図12は、隣接する有機薄膜太陽電池の接続形態を模式的に示した断面図である。
有機薄膜太陽電池12は、ITOからなる下部電極51、有機層52及びアルミニウムからなる上部電極53からなる。隣接する有機薄膜太陽電池12は、下部電極51と上部電極53が電気的に接続してあり、有機薄膜太陽電池12のライン全体が直列接続となっている。図11では10個の有機薄膜太陽電池を接続している。以下、製造過程を説明する。
【0054】
基板として、ガラス基板上にITOが150nm成膜された基板を使用した。太陽光は、ガラス基板を通して太陽電池に到達して光電変換され、有機EL素子の発光もガラス基板を通して外部に取り出される。
有機EL素子の下部電極となる部分はライン状に、有機薄膜太陽電池の下部電極となる部分は2.5mm角状に形成した。
ITO付ガラス基板をオーク製作所製のUV洗浄器で30分洗浄した後、真空蒸着装置に搬入し、5×10−5Paまで排気した。基板に、有機EL素子及び有機薄膜太陽電池を形成する層をマスク蒸着にて形成した。
【0055】
はじめに、有機薄膜太陽電池の有機層(p層、i層、n層、バッファー層)を製膜した。具体的に、有機EL素子が形成される領域には成膜されないよう、太陽電池を形成する領域のみ開口されたマスク(外形サイズ30mm×4mm)を基板と接触させてセットした。
図11、12に示す、有機層を形成できる有機層用マスク1を使用して下部電極上に、p層としてインデノピレン系材料を蒸着レートで0.1nm/sで25nm成膜し、次に、i層として同じくインデノピレン系材料を0.1nm/sで、C70フラーレンを0.1nm/sで10nm共蒸着した。さらに、n層としてC70を0.1nm/sで50nm成膜し、バッファー層としてバソクプロイン(BCP)を0.1nm/sで10nm成膜した。
インデノピレン系材料はWO2010/013520号に記載の製造方法により製造した。
【0056】
続いて、有機EL素子の有機層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層)を作製した。図11に示す発光素子群を形成できるよう開口された有機物マスク2を使用して下部電極上に、4,4’,4’’−トリス(フェニル−3−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA、正孔注入材)を0.1nm/sで60nm成膜し、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD、正孔輸送材)を20nm成膜し、アントラセン系のホスト材BH1とジスシチリルアリーレン系ドーパントBD2をBD2が発光層の15質量%となるように共蒸着した(膜厚40nm)。さらに、Alq3(電子輸送材)を0.1nm/sで10nm成膜し、LiFを0.01nm/sで1nm成膜した。
【0057】
【化3】

【0058】
続いて、有機薄膜太陽電池及び有機EL素子の上部電極を、Alを蒸着にて形成した(蒸着レート:0.3〜0.5nm/s、膜厚100nm)。
尚、有機薄膜太陽電池では、上部電極をバッファー層の上部及び隣接する片側の有機薄膜太陽電池の下部電極上に蒸着することにより、各有機薄膜太陽電池(2.5mm角)を直列接続した発電ラインを形成した。有機EL素子では、有機層上に2.5mm角で形成した。
発電ラインの一端と太陽電池の下部電極(ITO)を、発電ラインの他端と有機EL素子の上部電極(Al)を電気接続し、発電ラインで発電された電力を有機EL素子に給電することで発光する複合素子を作製した。
その後、ザグリガラスで複合素子を封止した。露点が−100℃、酸素濃度0.1ppmのグローブボックス中、UV接着剤でザグリガラスを接着することで封止した。
【0059】
得られた複合素子について、AM1.5G、100mW/cmの強度の擬似太陽光を太陽電池側だけに照射した結果、有機EL素子の発光を確認した。
ガラス面にフォトダイオードを密着させることで、輝度の推定値を求めたところ、650cd/mであった。
尚、今回作製した有機薄膜太陽電池について、別途同一構成で単一セルを作製し、評価したところ、Voc、Jsc、FF、及び変換効率はそれぞれ、0.95V、7.5mA/cm、0.67、4.8%であった。
別途作製した有機EL素子の特性は、駆動電圧、電流密度及び輝度が、それぞれ7V、10mA/cm、820cd/mであった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のディスプレイ装置は、テレビ、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の各種情報端末の出力装置、広告媒体やポスターとして使用される電子ペーパー等として好適に使用できる。また、カーステレオ、MP3プレーヤー、自動車やオートバイのインストルメントパネルなどの表示装置にも使用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 ディスプレイ装置
10 基板
11,R,G,B 有機発光素子
12 太陽電池
20 電源部
21 二次電池
22 外部電源
23 スイッチ
31 透明電極
32a 赤色発光層
32b 緑色発光層
32c 青色発光層
33 裏面電極
34a 赤色色変換層
34b 緑色色変換層
35 白色発光層
36a 赤色カラーフィルタ
36b 緑色カラーフィルタ
36c 青色カラーフィルタ
40 発光素子ライン
41 下部電極
42 上部電極
50 発電ライン
51 下部電極
52 有機層
53 上部電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、少なくとも一つの太陽電池と、少なくとも一つの有機発光素子とを有し、
前記太陽電池と前記有機発光素子が前記基板の同一面上にあり、
前記太陽電池と前記有機発光素子が電気的に接続され、前記太陽電池が発電した電力を有機発光素子の駆動に利用する、ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記太陽電池が有機太陽電池である請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記有機太陽電池が有機薄膜太陽電池である請求項2に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
前記有機発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
前記基板がフレキシブル基板である請求項1〜4のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
前記太陽電池と前記有機発光素子が、蒸着法又は塗布法によって作製される請求項1〜5のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項7】
下部電極を備えた基板の設置から上部電極の設置まで、真空蒸着装置内で蒸着法によって作製される請求項6に記載のディスプレイ装置。
【請求項8】
前記太陽電池が発電した電力を蓄電する二次電池を有する請求項1〜7のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【請求項9】
外部電源を有し、必要な場合には前記外部電源から供給される電力を用いて有機発光素子を駆動する請求項1〜8のいずれかに記載のディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−37703(P2012−37703A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177197(P2010−177197)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】