説明

ディテント機構および投光器

【課題】安価に製造可能なディテント機構およびディテント機構を採用した投光器を提供する事である。
【解決手段】一方部材2に回転自在とされる他方部材3を一方部材2に対して回り止めするディテント機構Dにおいて、一方部材2と他方部材3の一方に設けた窪み10と、一方部材2と他方部材3の他方に設けられて窪み10への侵入が可能な突条4と、一方部材2に他方部材3を回転自在に固定する軸15と、軸15と他方部材3との間に介装されて他方部材3を一方部材2側へ附勢するバネ17とを備えたことを特徴とするディテント機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディテント機構およびディテント機構を備えた投光器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種、ディテント機構は、一般的に、一方部材と一方部材に回転自在とされる他方部材の一方に設けた窪みと、一方部材と他方部材の他方に設けたディテントボールと、ディテントボールを窪み内へ進入する方向へ附勢するバネとで構成されている。
【0003】
そして、このようなディテント機構にあっては、バネによって附勢されるディテントボールが一つであると、一方部材および他方部材にバネの附勢力が回転軸に対して偏心した位置に作用して、すなわち、一方部材および他方部材に偏荷重が作用して、一方部材と他方部材とが互いに相手に対して傾ぐことになって、上記他方部材の回転に渋りが生じて円滑な回転操作を妨げる可能性があるので、二つ以上のディテントボールを同一円周上に等間隔を持って配置して、一方部材および他方部材に偏荷重が作用しないように配慮しているものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−231418号公報(図3、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このように、ディテントボールを複数設ける場合、ディテントボールを窪みに向けて附勢するバネもディテントボールと同数必要となるので、部品点数が多くなり、コスト高となる。
【0005】
そこで、本発明は上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、安価に製造可能なディテント機構を提供する事であり、このディテント機構を備えた投光器を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明は、一方部材に回転自在とされる他方部材を一方部材に対して回り止めするディテント機構において、一方部材と他方部材の一方に設けた窪みと、一方部材と他方部材の他方に設けられて窪みへの侵入が可能な突条と、一方部材に他方部材を回転自在に固定する軸と、軸と他方部材との間に介装されて他方部材を一方部材側へ附勢するバネとを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の投光器は、照明器具と、照明器具へ電力供給する太陽電池を備えた投光器本体とを備え、照明器具が投光器本体に着脱自在に固定される投光器であって、照明器具は、照明本体と、照明本体に回転自在とされるとともに投光器本体に着脱可能な持手とを備えて構成され、照明本体と持手の一方に窪みを設け、照明本体と持手の他方に窪みへの侵入が可能な突条と設け、照明本体に持手を回転自在に固定する軸と、軸と持手との間に持手を照明本体側へ附勢するバネとを備えた。
【発明の効果】
【0008】
本発明のディテント機構によれば、ディテントボールに代わる突条を複数備えても、突条の一つ毎にバネを設ける必要が無く、一つのバネのみの使用で当該機構を構成することが可能であるので、部品点数が多くなることがなく、ディテント機構を安価に製造可能となる。
【0009】
また、このディテント機構では、窪みに侵入可能な突条を一方部材あるいは他方部材に直接に設けることができ、高価なディテントボールの設置を要しないので、この点においても、ディテント機構を安価とすることができる。
【0010】
さらに、バネ力の設定の自由度が大きくなるので、特に、照明器具の照射方向の固定に適するようにバネ力を調節することができるので、背負子式の投光器に最適となり、このディテント機構を投光器に採用する場合には、照明器具の照射方向の強固に固定できるので、投光器を使用する人の負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。図1は、一実施の形態におけるディテント機構が具現化した照明器具の正面図である。図2は、一実施の形態におけるディテント機構が具現化した照明器具の一部拡大断面図である。図3は、一実施の形態におけるディテント機構が具現化した照明器具の右側面図である。図4は、一実施の形態におけるディテント機構が具現化した照明器具の持手の一部左側面図である。図5は、一実施の形態のディテント機構が具現化した投光器の斜視図である。
【0012】
一実施の形態におけるディテント機構Dは、図1および図2に示すように、照明器具1における一方部材たる照明本体2と照明本体2に回転自在とされる他方部材たる持手3との間に設けられた継手部分に具現化されており、持手3に設けた窪み10と、照明本体2に設けられて窪み10への侵入が可能な突条4と、照明本体2に持手3を回転自在に固定する軸15と、軸15と持手3との間に介装されて持手3を照明本体2側へ附勢するバネ17とを備えて構成されている。
【0013】
このディテント機構Dが具現化されている照明器具1は、複数の高輝度LED(Light Emitting Diode)を正面に具備した照明本体2と、照明本体2に回転自在に取付けられる持手3とを備えたLEDライトとされている。
【0014】
そして、照明本体2は、図1から図3に示すように、カップ状の筐体2aと、筐体2aの開口部に取付けられるレンズ2bとを備えており、高輝度LEDは図示しない反射鏡を介して筐体2aに収容されている。また、筐体2aの側部には、照明本体2の回転軸に対して垂直となる面を備えた垂直部7が形成され、当該垂直部7には、軸15が挿入される挿通孔5と、挿通孔5の外周側から外方へ向けて突出するガイド筒6と、挿通孔5およびガイド筒6と同心であってガイド筒6より大径な円の周上に等間隔を持って設けた二つの突条4とが設けられている。なお、ガイド筒6の高さは少なくとも突条4より高く設定されている。
【0015】
他方の部材である持手3は、L字状の持手本体11と、持手本体11の先端側に設けられた軸15が挿入される挿通孔12と、挿通孔12の外周に設けられて照明本体2に設けたガイド筒6が挿入される環状溝13と、挿通孔12および環状溝13と同心であって環状溝13より大径な円の周上に等間隔を持って設けた複数の窪み10とを備えて構成されている。また、挿通孔12は、環状溝13が設けられる端部側に内方へ向けて突出するフランジ部12aを備えている。
【0016】
また、持手3は、照明本体2の垂直部7に設けたガイド筒6を環状溝13内に挿入して位置決められた状態で、各突条4がそれぞれ持手3に設けた窪み10に対向すると、各突条4が相対向する各窪み10内に入り込むことが可能なようになっている。そして、このように、各突条4が相対向する各窪み10内に入り込んだ状態にあっても、ガイド筒6の先端は環状溝13の底に干渉しないようになっている。
【0017】
加えて、持手本体11の基端は、図5に示すように、投光器20における投光器本体21に着脱自在とされている。具体的には、この投光器20は、図5中の背面側に設けた図示しない太陽電池と太陽電池が発生する電力を蓄える図示しない蓄電池と蓄電池の充放電を制御するとともに照明器具1の動作を制御する図示しない制御回路とを内蔵する投光器本体21と、上記の照明器具1とで構成されており、図示したところでは、照明器具1は持手3を介して投光器本体21の左右に一つずつ固定することができるようになっている。
【0018】
また、この投光器本体21は、人が背負えるよう背負子式となっており、日中に太陽光発電によって蓄電池を充電しておくことによって、夜には商用電源や乾電池を必要としない移動可能な照明装置として機能する。
【0019】
なお、投光器本体21に照明器具1を固定するには、投光器本体21の上部に設置されたソケット21a内に、持手本体11の基端を挿入すればよく、照明器具1の着脱は簡単である。
【0020】
戻って、軸15は、先端に螺子部15aを備えるとともに、基端に鍔状の頭部15bを備えており、この軸15は、ガイド筒6を環状溝13内に挿入して照明本体2に持手3を組付けた状態で、バネ17とともに照明本体2の挿通孔5と持手3の挿通孔12に挿入されて、軸15の先端に設けた螺子部15aに螺着されるナット16で抜け止めされる。
【0021】
そして、バネ17は、軸15の外周であって持手3の挿通孔12内に収容されるとともに、軸15の頭部15bとフランジ部12aとの間に圧縮状態で介装されており、他方部材たる持手3を一方部材たる照明本体2側へ押し付けるように附勢力を発揮している。
【0022】
したがって、上記したディテント機構Dは、各突条4が相対向する各窪み10内に入り込む状態であると、バネ17での附勢力によって、突条4の窪み10からの抜けが抑制されて、照明本体2と持手3の軸15を中心とした相対回転が抑制されて、照明本体2と持手3との相対位置を維持するように機能する。
【0023】
また、各突条4が相対向する各窪み10に侵入している状態から持手3あるいは照明本体2をバネ17の附勢力に抗して回転させると、バネ17が突条4の高さ分だけ圧縮されて各突条4が窪み10から一旦抜け出出て回転方向前方にある次の窪み10に対向すると、各突条4はバネ17の附勢力によって対向する窪み10内に再度侵入して、照明本体2と持手3との相対位置を維持する回り止め機能を再度発揮するようになる。
【0024】
また、突条4が窪み10と窪み10との間に位置する場合、同一円周上に等間隔をもって配置された二つの突条4が垂直部7の端面に当接している状態となるので、照明本体2が持手3に対して傾いてしまうことがなく、照明本体2および持手3に偏荷重が作用しない。
【0025】
このように、このディテント機構Dは、図4に示すように、突条4がある窪み10から回転方向前方の次の窪み10へ入り込むまでに持手3に対して照明本体2が回転する角度θ毎に、照明本体2に対して持手3を位置決めるとともに回り止めして持手3をその位置に保持する。すなわち、この照明器具1では、照明本体2に対して持手3を好みの位置に位置決めておくことができ、持手3と照明本体2の角度を調節によって照明本体2の光の照射角度を変更することができる。
【0026】
そして、このディテント機構Dでは、ディテントボールに代わる突条4を複数備えても、突条4の一つ毎にバネを設ける必要が無く、一つのバネ17のみの使用で当該機構を構成することが可能であるので、部品点数が多くなることがなく、ディテント機構Dを安価に製造可能となる。
【0027】
また、このディテント機構Dでは、窪み10に侵入可能な突条4を一方部材あるいは他方部材に直接に設けることができ、高価なディテントボールの設置を要しないので、この点においても、ディテント機構Dを安価とすることができる。
【0028】
さらに、このディテント機構Dによれば、窪み10を軸15と同軸の一円周上に複数設け、少なくとも二つ以上の突条4を対応する窪み10に同時に侵入可能なように上記円周上に等間隔をもって設けたので、各突条4が窪み10と窪み10との間に位置する場合にあっても、等間隔に配置された各突条4が垂直部7の端面に当接して、照明本体2および持手3に偏荷重が作用しないから、照明本体2と持手3の相対回転に渋りが生じることもなく、円滑な回転を実現できる。
【0029】
さらに、ガイド筒6の高さが突条4の高さより高く設定されているため、突条4がある窪み10から回転方向前方の次の窪み10へ入り込むまでの間に、ガイド筒6が環状溝13から抜け出る事が無いので、照明本体2と持手3とが確実に周方向に位置決めされた状態に維持され、ディテント機構Dの機能が損なわれる事態を招来することがない。
【0030】
なお、突条4を3つ以上設ける場合には、上記偏荷重を照明本体2および持手3に作用することを阻止の観点から、同一円周上に等間隔を持って設けるようにすればよい。
【0031】
また、窪み10の設置数は、照明本体2を持手3に対して一回転させるうえで照明本体2の持手3に対する位置決め位置の設置数に応じて設ければよいが、最低限突条4の設置数以上に設定し、かつ、各窪み10は、持手3の全ての突条4が同時にそれぞれ対応する窪み10に対抗して侵入することが可能なように配置することが必要である。
【0032】
さらに、この実施の形態の場合、照明本体2に突条4を設け、持手3に窪み10を設けているが、逆に、照明本体2に窪み10を設け、持手3に突条4を設けるようにしてもよい。
【0033】
加えて、当該ディテント機構Dにあっては、ディテントボールに代えて転がることのない突条4を設けて窪み10に侵入させるようにしているので、ディテントボールを使用するよりも、照明本体2を持手3に対して回転させる際の抵抗が大きくなって、より強固に回り止めすることになるので、上述のディテント機構Dを備えた照明器具1を背負子式の投光器20に適用することによって、木の枝等に干渉したり、衝撃を受けたりしたときなどに、照明本体2の照射方向が変わってしまうことがない。
【0034】
つまり、背負子式の投光器20の場合、一度背中に背負われると、照明本体2の照射方向の操作がし辛い状況となるので、照明本体2の照射方向が衝撃等で簡単に変更されてしまうと、都度、投光器20を下ろして照射方向を調節して再度投光器20を背負わなくてはならないが、本発明のディテント機構Dが具現化された照明器具1を背負子式の投光器20に適用することで、このような不具合が解消される。
【0035】
さらに、ディテントボールを使用する場合には、ディテントボールを附勢するバネのバネ径がディテントボールの径に依存して設定されることになって自由度が低いが、本発明のディテント機構Dでは、突条4の大きさとは無関係にバネ17の径および線条径を自由に設定することができバネ力の大きさの調整幅が非常に大きくなり、特に、バネ力を大きくしておくことで照明本体2の照射方向を安定的に固定させることができ、背負子式の投光器20に最適となる。
【0036】
また、ディテントボールを用いず、バネ17も照明器具1について一つのみの使用となることから、照明器具1を軽量化することができ、投光器20の総重量を軽量化して、背負子式の投光器20を使用する人の負担が軽減されることになる。
【0037】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】一実施の形態におけるディテント機構が具現化した照明器具の正面図である。
【図2】一実施の形態におけるディテント機構が具現化した照明器具の一部拡大断面図である。
【図3】一実施の形態におけるディテント機構が具現化した照明器具の右側面図である。
【図4】一実施の形態におけるディテント機構が具現化した照明器具の持手の一部左側面図である。
【図5】一実施の形態のディテント機構が具現化した投光器の斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 照明器具
2 一方部材たる照明本体
2a 照明本体における筐体
2b 照明本体におけるレンズ
3 他方部材たる持手
4 突条
5,12 挿通孔
6 ガイド筒
7 照明本体における垂直部
10 窪み
11 持手本体
12a フランジ部
13 環状溝
15 軸
15a 軸における螺子部
15b 軸における頭部
16 ナット
17 バネ
20 投光器
21 投光器本体
21a ソケット
D ディテント機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方部材に回転自在とされる他方部材を一方部材に対して回り止めするディテント機構において、一方部材と他方部材の一方に設けた窪みと、一方部材と他方部材の他方に設けられて窪みへの侵入が可能な突条と、一方部材に他方部材を回転自在に固定する軸と、軸と他方部材との間に介装されて他方部材を一方部材側へ附勢するバネとを備えたことを特徴とするディテント機構。
【請求項2】
他方部材に軸と同心となる環状溝を設け、一方部材に上記環状溝に挿入されるガイド筒を設け、ガイド筒の高さは少なくとも突条より高くしたことを特徴とする請求項1に記載のディテント機構。
【請求項3】
窪みを軸と同軸の一円周上に複数設け、少なくとも二つ以上の突条を対応する窪みに同時に侵入可能なように上記円周上に等間隔をもって設けたことを特徴する請求項1または2に記載のディテント機構。
【請求項4】
照明器具と、照明器具へ電力供給する太陽電池を備えた投光器本体とを備え、照明器具が投光器本体に着脱自在に固定される投光器であって、照明器具は、照明本体と、照明本体に回転自在とされるとともに投光器本体に着脱可能な持手とを備えて構成され、照明本体と持手の一方に窪みを設け、照明本体と持手の他方に窪みへの侵入が可能な突条と設け、照明本体に持手を回転自在に固定する軸と、軸と持手との間に持手を照明本体側へ附勢するバネとを備えた投光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−310375(P2008−310375A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154662(P2007−154662)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】