説明

ディフェクト検出回路及び制御装置

【課題】従来のディフェクト検出回路は、回路規模が増大、あるいは、ディフェクトを誤検出する問題があった。
【解決手段】本発明にかかるディフェクト検出回路は、入力信号の振幅レベルの変化量を検出し傾き検出信号として出力する検出回路52と、入力信号の振幅レベルに応じて比較電圧Vcompのレベルを変化させる比較電圧制御回路54と、傾き検出信号のレベルと比較電圧Vcompのレベルとを比較して制御信号を出力する比較回路53と、を備えることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディフェクト検出回路及び制御装置に関し、特に、記憶媒体の欠陥を検出するディフェクト検出回路及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスク等が情報の記憶媒体として多く用いられている。光ディスクは、サーボ制御によって回転が制御される。また、光ディスクへの情報の読み出し又は記録を行うレーザー光の出力及び戻り光の集光を行うピックアップの位置制御もサーボ制御によって制御される。光ディスク装置は、このサーボ制御によって、安定した情報の読み出し又は記録を行う。しかし、光ディスクは、ディスク上への指紋の付着やディスク面の傷等によって欠陥領域が存在する場合がある。このような欠陥領域では、光ディスクから適切な反射光が得られず、サーボ制御が不安定になり、データの読み出し又は記録に不具合を生じる可能性がある。
【0003】
そこで、光ディスク装置は、ピックアップが欠陥領域上を通過する場合には、サーボ制御を欠陥領域直前の状態で固定し、サーボ制御を安定させることを行う。このようなサーボ制御では、欠陥領域を検出する必要がある。このような、欠陥領域を検出するディフェクト検出回路の従来例が特許文献1及び2に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている従来例1のディフェクト検出回路100のブロック図を図4に示す。図4に示すようにディフェクト検出回路100は、AGC(Automatic Gain Control)回路110、高速ピークホールド検波回路111、低速ピークホールド検波回路112、減算器113、比較回路114を有している。光ディスクから読み取られた反射光の光量に応じて生成される入力信号Xは、光ディスクの状態によって、振幅が変動する。AGC回路110は、増幅率を変更することで、出力信号の振幅を一定に保つ増幅器である。つまり、AGC回路110は、入力信号Xの振幅の変動を抑制したAGC出力信号Yを内部回路に出力する。
【0005】
高速ピークホールド検波回路111と、低速ピークホールド検波回路112は、入力信号Xの上側のピークレベルに追従した信号を出力する。高速ピークホールド検波回路111は、低速ピークホールド検波回路112よりもピークレベルの追従性が高く、より高感度な検波回路である。なお、高速ピークホールド検波回路111の出力を高速エンベロープ信号と称し、低速ピークホールド検波回路112の出力を低速エンベロープ信号と称す。
【0006】
減算器113は、低速エンベロープ信号の信号レベルから、高速エンベロープ信号の信号レベルを減算した減算信号を出力する。比較回路114は、この減算信号の信号レベルと他の回路で生成される基準電圧Vrefとを比較し、ディフェクト領域検出信号Zを出力する。
【0007】
ここで、ディフェクト検出回路100の動作を示すタイミングチャートを図5に示す。図5に示すように、ディフェクト検出回路100は、タイミングT3からT4で入力信号Xの振幅が極端に小さくなるディフェクト領域において、高速エンベロープ信号の信号レベルが極端に小さくなる。これに対し、低速エンベロープ信号の信号レベルは即座には低下しない。そのため、このディフェクト領域では、減算信号の信号レベルが上昇し、基準電圧Vrefを上回る。減算信号の信号レベルが基準電圧Vrefを上回っている期間に、ディフェクト領域検出信号Zがハイレベルとなる。
【0008】
一方、タイミングT1〜T2、及び、タイミングT3〜T4の期間でも入力信号Xの信号レベルは低下するが、この期間での信号レベルの低下は、レーザー光の揺らぎあるいはディスク面の揺らぎに起因するものである。そのため、入力信号Xの振幅の低下は小さいものであり、減算信号の信号レベルの変化は小さく、減算信号の信号レベルは基準電圧Vrefよりも小さい。従って、このような領域では、ディフェクト領域検出信号Zはロウレベルを維持する。
【0009】
つまり、従来例1では、高速エンベロープ信号と低速エンベロープ信号との感度の差を用いてディフェクト領域検出信号Zを生成する。一方、特許文献2には、従来例1とは異なるディフェクト検出回路が開示されている。特許文献2に開示されている従来例2のディフェクト検出回路200のブロック図を図6に示す。
【0010】
図6に示すように、ディフェクト検出回路200は、全加算回路210、微分回路211、パルス信号変換回路212、ディフェクト信号回路213を有している。全加算回路210は、入力信号Xの振幅を全加算した全加算信号を生成する。微分回路211は、全加算信号の微分値を算出し、微分信号を生成する。パルス信号変換回路212は、微分信号の信号レベルが閾値の範囲(図6において閾値Vthaと閾値Vthbとの間で示される範囲)を超えた期間に相当するハイレベル期間を有するパルス信号を生成する。ディフェクト信号回路213は、パルス信号に応じてディフェクト信号を生成する。
【0011】
ディフェクト検出回路200の動作を示すタイミングチャートを図7に示す。図7に示すように、ディフェクト検出回路200の全加算信号は、タイミングT3で信号レベルが大きく低下する。このとき、全加算信号の傾きが大きく変化するため、微分信号の信号レベルが全加算信号の傾きに応じて変化する。そして、微分信号の信号レベルが閾値以下となる期間にパルス信号が生成される。このパルス信号の立ち上がりに応じてディフェクト信号は立ち上がる。
【0012】
一方、タイミングT4で全加算信号の信号レベルが正常な信号レベルに戻る。このとき、全加算信号の傾きが大きく変化するため、微分信号の信号レベルが全加算信号の傾きに応じて変化する。そして、微分信号の信号レベルが閾値以上となる期間にパルス信号が生成される。このパルス信号の立ち下がりに応じてディフェクト信号は立ち下がる。
【0013】
つまり、ディフェクト検出回路200は、入力信号Xの信号レベルを全加算した信号の傾きに応じてディフェクトを検出する。光ディスク装置では、例えば迷光などによって入力信号XにDCオフセットが生じることがある。しかしながら、DCオフセット成分では全加算信号の微分値は大きく変化することはない。従って、ディフェクト検出回路200は、DCオフセットが生じた場合であっても、入力信号Xの信号レベルが大きく変化するディフェクトのみを検出することができる。
【特許文献1】特開2004−273020号公報
【特許文献2】特開2001−273633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来例1のディフェクト検出回路100は、エンベロープ信号を生成する回路を2つ準備する必要があり、回路規模が増大するという問題がある。また、従来例2のディフェクト検出回路200では、ディフェクトを検出するために閾値を設定し、当該閾値を超えた傾き(微分した結果の大きさ)をディフェクトとして検出しているが、光ディスク等のメディアは、メディアの種類、例えば、CD−ROM、CD−R、CD−RW及び、メーカーによるばらつきによって、特性、例えば、反射率やディスクの偏心(揺らぎの原因の一つとなる)が異なる。そのため、閾値を固定してしまうと、図7に示すように、タイミングT1〜T2、又は、タイミングT5〜T6のような、レーザー光の揺れや光ディスクの揺れによって生じる入力信号Xの小さな変動をもディフェクトとして検出してしまい、その結果、音切れ、映像切れ等が頻繁に発生するという問題が発生する。
【0015】
このような現象は、特に、入力信号Xの振幅レベルが大きい、すなわち、反射率が大きい場合に発生する。逆に入力信号Xの振幅レベルが小さい、すなわち、反射率が小さい場合には、ディフェクトが発生した場合でも閾値を超えないため検出ができない。つまり、入力信号Xが小さい場合には、ディフェクトがあるにもかかわらず、ディフェクトの検出が行われない場合がある。このような場合、ディフェクトがあっても安定性を保つように制御されるAGC回路やサーボ制御回路は、ディフェクトがないともとして制御されるため過制御状態となる。特に、ディフェクトがある状態からディフェクトがない状態に移行した場合、AGC回路やサーボ制御回路は、信号振幅の変化に追従しきれずに制御が不安定になる問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかるディフェクト検出回路は、入力信号の振幅レベルの変化量を検出し傾き検出信号として出力する検出回路と、前記入力信号の振幅レベルに応じて比較電圧のレベルを変化させる比較電圧制御回路と、前記傾き検出信号のレベルと前記比較電圧のレベルとを比較して制御信号を出力する比較回路と、を備えることを特徴とするものである。
【0017】
本発明にかかるディフェクト検出回路によれば、入力信号Xの全体的な振幅レベルと入力信号の振幅レベルの変化率とに基づき、ディフェクト領域を検出する。これによって、入力信号の全体的な振幅レベルに関わらず精度良くディフェクト領域を検出することが可能である。
【0018】
また、本発明にかかる制御装置は、上記の記載のディフェクト検出回路に加え、前記入力信号の振幅レベルに基づいて、ゲインを制御するオートゲインコントロール回路(AGC回路)と、前記記憶媒体の回転制御及び前記記憶媒体からの反射光の光量に応じて前記入力信号を出力するピックアップの位置制御を行うサーボ制御回路と、のうち少なくとも一方を備え、前記AGC回路は前記制御信号によってゲインを変更するか否かが制御され、前記サーボ制御回路は前記制御信号によって動作が制御されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるディフェクト検出回路によれば、入力信号の振幅のレベルに応じた閾値と傾き検出信号の信号レベルとを比較することによって、揺らぎを誤検出することなく、ディフェクト領域を選択的に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。実施の形態1にかかる光ディスク装置1は、レーザー光を用いて記憶媒体(例えば、CDやDVD等の光ディスク)から情報の再生及び記録を行うものである。光ディスク装置1は、レーザー光を記録面に照射し、その反射光の光量の変化を検出することで記録された情報の再生を行う。
【0021】
実施の形態1にかかる光ディスク装置1のブロック図を図1に示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる光ディスク装置1は、光ディスク回転モータ10、ピックアップ20、サーボ制御回路30、AGC回路40、ディフェクト検出回路50を有している。
【0022】
光ディスク回転モータ10は、光ディスクを回転させるモータであって、サーボ制御回路30から入力される制御信号に基づき、光ディスクの回転速度を制御する。ピックアップ20は、光ディスクへのレーザー光の出力、及び、光ディスクからの反射光の光量に応じた振幅を有する入力信号Xの生成を行う。ピックアップ20は、例えばサーボモータによって光ディスク表面に沿って移動可能である。ピックアップ20の位置制御を行うサーボモータは、サーボ制御回路30によって制御される。
【0023】
サーボ制御回路30は、入力信号Xの状態に応じて光ディスクの回転速度とピックアップの位置を制御する制御信号を出力する。また、サーボ制御回路30は、ディフェクト検出回路50が出力するホールドイネーブル信号に基づき増幅率を固定する。このホールドイネーブル信号は、ディフェクト領域検出信号Zと同じ論理の信号であって、ディフェクト領域検出信号Zと同じものであっても良い。
【0024】
光ディスク装置では、情報記録又は光ディスクからの情報再生を行う際に、トラッキングサーボ制御、フォーカスサーボ制御、スピンドルサーボ制御、スレッドサーボ制御が行われる。トラッキングサーボ制御は、光ディスクからの反射光を用いて光スポット中心と光ディスクのグルーブ中心との位置ずれを検出し、この位置ずれを補正するようピックアップの位置を制御する。これにより、光ディスク上のグルーブ中心に光スポットの中心を維持する。フォーカスサーボ制御は、光ディスクからの反射光を用いてレーザー光を集光する対物レンズの焦点位置のずれを検出し、この焦点ずれを補正するようピックアップの位置を制御する。これによって、光ディスクの上下ぶれに追随して、レーザー光を集光する対物レンズの焦点位置を光ディスクの面上に維持する。スピンドルサーボ制御は、再生RF(Radio Frequency)信号のデータレート、ウォブル周波数を一定とするように光ディスク回転モータの回転速度を制御する。スレッドサーボ制御は、トラッキングのDC成分に追従するようにピックアップの傾きを制御することで長距離シークを可能にする。
【0025】
AGC回路40は、振幅が変動する入力信号Xを略一定の振幅の信号に増幅して、内部回路(不図示)にAGC出力信号Yとして出力する。内部回路では、AGC出力信号Yに基づいて信号の処理が行われる。なお、入力信号Xの振幅の変動は、例えばレーザー光の光量の揺らぎ、あるいは、光ディスク表面の指紋や傷等のディフェクト(欠陥)が存在するディフェクト領域の情報をピックアップが読み取る場合にレーザー光の反射率が低下するために発生する。また、AGC回路40は、ディフェクト検出回路50が出力するホールドイネーブル信号に基づき増幅率を固定する。このホールドイネーブル信号は、ディフェクト領域検出信号Zと同じ論理の信号であって、ディフェクト領域検出信号Zと同じものであっても良い。
【0026】
ディフェクト検出回路50は、入力信号Xの振幅に基づきディフェクト領域を検出する。このディフェクト検出回路50について、詳細に説明する。ディフェクト検出回路50は、ピークホールド検波回路51、傾き検出回路52、比較回路53、基準電圧制御回路54を有している。
【0027】
ピークホールド検波回路51は、入力信号Xのピークレベルの変動に応じて信号レベルが変動するエンベロープ信号を生成する。このエンベロープ信号は、本実施の形態では、入力信号Xの振幅のうち上側のピークレベルに応じて変動する信号である。なお、エンベロープ信号は、入力信号Xの振幅のうち下側のピークレベルに応じて変動するものであっても良い。
【0028】
傾き検出回路52は、エンベロープ信号の信号レベルの変化率に基づきエンベロープ信号の傾きを検出し、傾き検出信号を出力する。例えば、エンベロープ信号の信号レベルに変化がない場合、傾き検出信号は所定の信号レベルを維持する。一方、エンベロープ信号の信号レベルが変動した場合、エンベロープ信号の変化率に応じて傾き検出信号の信号レベルを変動させる。傾き検出信号の信号レベルの変動は、エンベロープ信号の変化率が大きいほど大きなものとなる。
【0029】
比較回路53は、傾き検出信号と基準電圧Vref2によって指定される所定の範囲とを比較し、ディフェクト領域検出信号Zを出力する。例えば、傾き検出回路52がエンベロープ信号の信号レベルの降下(負の変化率)を検出し、その変化率に応じて変動した傾き検出信号の信号レベルが所定の範囲を外れた場合、ディフェクト信号の信号レベルはロウレベルからハイレベルに変化する。一方、傾き検出回路52がエンベロープ信号の信号レベルの上昇(正の変化率)を検出し、その変化率に応じて変動した傾き検出信号の信号レベルが所定の範囲を外れた場合、ディフェクト信号の信号レベルはハイレベルからロウレベルに変化する。なお、所定の範囲は、例えばエンベロープ信号に傾きがない場合の傾き検出信号の信号レベルを中心として上下に対象に上限値と下限値を設けたものである。この上限値及び下限値は、ディフェクトによって発生する入力信号Xの振幅変化を検出可能であり、レーザー光の揺らぎによって発生する入力信号Xの振幅変化には反応しない程度に設定することが好ましい。この所定の範囲を設定する比較電圧Vcompは、比較電圧制御回路54によって生成される。
【0030】
比較電圧制御回路54は、入力信号Xと振幅基準値とを比較し、この比較結果に基づいて基準電圧Vrefを係数倍した比較電圧Vcompを比較回路53に供給する。なお、係数は、入力信号Xと振幅基準値との比較結果に基づいて変化させても良い。比較電圧制御回路54の動作についてより詳細に説明する。比較電圧制御回路54は、入力信号Xの全体的な振幅レベルが振幅基準値よりも小さいと判断した場合、基準電圧Vrefに掛ける係数を小さくする。これによって、比較電圧Vcompの電圧レベルは小さくなる。一方、入力信号Xの全体的な振幅レベルが振幅基準値よりも大きいと判断した場合、基準電圧Vrefに掛ける係数を小さくする。これによって、比較電圧Vcompの電圧レベルは大きくなる。
【0031】
このように、入力信号Xの全体的な振幅レベルに応じて比較電圧Vcompの電圧レベルを変更することで、入力信号Xの全体的な振幅レベルが小さくなったことにより傾きが小さくなったディフェクトを検出することが可能となる。一方、入力信号Xの全体的な振幅レベルが大きい場合には、振幅レベルが大きくなったことによって大きくなった傾きに応じてディフェクト領域を選択的に検出することが可能である。
【0032】
なお、基準電圧Vrefは、入力信号Xの振幅レベルが任意に設定された振幅レベルである場合にディフェクト領域を選択的に検出できる電圧レベルとして、予め設定される。また、振幅基準値は、基準電圧Vrefの設定時に使用した振幅レベルに相当する値を予め設定する。この基準電圧Vrefと振幅基準値とは、任意に値を設定することが可能であり、前述の設定方法は一例を示すものである。
【0033】
このディフェクト領域検出信号Zは、サーボ制御回路30とAGC回路40とにホールドイネーブル信号として入力される。サーボ制御回路30及びAGC回路40は、例えばホールドイネーブル信号がハイレベルである期間は、それ以前の制御状態及び増幅率を維持する。一方、ホールドイネーブル信号がロウレベルである期間では、サーボ制御回路30は、光ディスクからの情報の再生が安定するように各種制御を行い、AGC回路40は入力信号Xの振幅に応じて増幅率を変更する。
【0034】
ここで、ディフェクト検出回路50の動作の一例を示すタイミングチャートを図2に示し、この図を参照してディフェクト検出回路50の動作を説明する。図2に示すように、入力信号Xが入力されると、この入力信号Xの信号レベルに応じて、ピークホールド検波回路51がエンベロープ信号を生成する。続いて、エンベロープ信号の傾きに応じて、傾き検出回路52が傾き検出信号を生成する。そして、傾き検出信号の信号レベルが所定の範囲以上になった場合に、比較回路53がディフェクト領域検出信号Zの信号レベルを変化させる。なお、図2に示す例では、所定の範囲は、上限値Vth_Hと下限値Vth_Lとの間の範囲である。
【0035】
図2に示す例では、ピックアップがディフェクト領域の上部に達するタイミングT3で入力信号Xの振幅が小さくなる。このとき、エンベロープ信号の信号レベルは、この入力信号Xの信号レベルの変化に応じて低下する。このエンベロープ信号の変化率は負であるため、傾き検出信号の信号レベルは低下する。また、タイミングT3における傾き検出信号の信号レベルは、所定の範囲の下限値Vth_Lを下回る。これによって、ディフェクト領域検出信号Zはロウレベルからハイレベルに変化する。
【0036】
また、タイミングT4でピックアップがディフェクト領域の上部を脱出すると、入力信号Xの振幅が大きくなる。このとき、エンベロープ信号の信号レベルは、この入力信号Xの信号レベルの変化に応じて上昇する。このエンベロープ信号の変化率は正であるため、傾き検出信号の信号レベルは上昇する。また、タイミングT4における傾き検出信号の信号レベルは、所定の範囲の上限値Vth_Hを上回る。これによって、ディフェクト領域検出信号Zはハイレベルからロウレベルに変化する。
【0037】
一方、タイミングT1〜T2及びタイミングT5〜T6においても、入力信号Xの振幅が小さくなる。この期間における入力信号Xの振幅変化は、例えばレーザー光の揺らぎ等によるものであって、タイミングT3〜T4における振幅の低下に比べて小さい。従って、エンベロープ信号の信号レベルの低下及び傾き検出信号の信号レベルの変動は、タイミングT3〜T4の期間に比べて小さい。このとき、傾き検出信号の信号レベルの変動は、所定の範囲内に十分収まるものである。そのため、ディフェクト領域検出信号Zの信号レベルは変化しない。
【0038】
ここで、エンベロープ信号の傾きとディフェクト領域の検出結果との関係を図3に示す。図3に示すように、例えば、ディフェクトによる入力信号Xの振幅変動に相当する傾きAと、レーザー光の揺らぎによる入力信号Xの振幅変動に相当する傾きBとがある場合、実施の形態1のディフェクト検出回路50は、傾きBではディフェクトを検出せずに、傾きAの場合にディフェクトを検出する。一方、従来例2では、傾きA、傾きBともにディフェクトとして検出する。これは、従来例2では、ディフェクト検出のタイミングの精度を向上させるために、所定の範囲を狭く設定しなければならないためである。これに対して、実施の形態1のディフェクト検出回路50では、所定の範囲を従来例2よりも広く設定することで、入力信号Xの振幅変動が緩やかな揺らぎによる変動と入力信号Xの振幅変動が急峻なディフェクトによる変動とを切り分けることが可能となる。
【0039】
上記説明より、実施の形態1にかかるディフェクト検出回路によれば、入力信号Xの振幅変動に応じて変動するエンベロープ信号の傾きに基づきディフェクト領域検出信号Zを生成する。これによって、従来例1では2つのピークホールド検波回路が必要であったのに対して、実施の形態1にかかるディフェクト検出回路は、1つのピークホール回路でディフェクトを検出することが可能である。つまり、実施の形態1にかかるディフェクト検出回路は、従来例1に比べて回路規模を削減することが可能である。
【0040】
また、傾き検出信号の比較範囲となる所定の範囲を従来例2よりも広くすることで、ディフェクト領域のみを選択的に検出することが可能である。さらに、実施の形態1にかかるディフェクト検出回路100は、比較電圧制御回路54を有している。そして、この比較電圧制御回路54は、入力信号Xのディフェクト領域以外の振幅レベルに応じて比較電圧Vcomの電圧レベルを変化させることが可能である。つまり、所定の範囲を調節することで、入力信号Xの振幅レベルが全体的に変動した場合であっても、それに応じて比較電圧Vcompの電圧レベルを変更することが可能である。したがって、実施の形態1にかかるディフェクト検出回路は、入力信号Xの振幅レベルが全体的に変動した場合であっても、精度良くディフェクト領域検出信号Zを生成することが可能である。これによって、光ディスク装置のサーボ制御回路及びAGC回路の動作を入力信号Xの振幅変動の要因に応じて切り替えることが可能となる。
【0041】
さらに、実施の形態1にかかるディフェクト領域検出信号Zに応じて、サーボ制御回路及びAGC回路の制御をホールド状態とすることで光ディスク装置の制御を安定化させることが可能である。ディフェクト領域のような入力信号Xの振幅変動が大きな領域において、入力信号Xの変動に対してサーボ制御回路及びAGC回路の制御を追従させた場合、制御におけるオーバーシュート等が発生し、制御系が混乱する問題がある。しかしながら、このようなディフェクト領域を検出し、この領域を通過する場合における制御をホールドすることで、装置の制御全体を安定させることが可能である。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、ディフェクトを検出するためにディフェクト検出回路50を用いたが、光ディスクに予め埋め込まれている位置情報を検出対象としても良い。例えば、情報が書き込まれていない未記録ディスクに対してディフェクト検出回路を用いて位置情報を検出し、この位置情報に基づきディフェクト領域の場所を特定する。これによって、例えば、特定された未記録ディスク上のディフェクト領域に対しては、その後の記録・再生動作でアクセスを行わないようにするなどの処理が可能である。また、実施の形態では、光ディスクを用いて説明したが、CD,DVD以外にも、入力信号(読み出し信号)が記憶媒体の状態に依存して変化するものであれば、適用が可能である。
【0043】
また、上記実施の形態では、比較電圧制御回路は入力信号X及び振幅基準値を入力として基準電圧Vrefから比較電圧Vcompを生成しているものについて説明した。これに対して、入力信号Xの代わりにピークホールド検波回路からのエンベロープ信号を用い、振幅基準値の代わりにエンベロープ信号の基準値を用いても良い。そして、このエンベロープ信号と基準値との比較結果に応じて、比較電圧Vcompの電圧レベル設定する。この場合、既にあるピークホールド検波回路を利用することができ比較電圧制御回路で入力信号の振幅レベルを検出する回路が不要となるため、回路構成を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態1にかかる光ディスク装置のブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるディフェクト検出回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】実施の形態1及び従来例2のエンベロープ信号の傾きとディフェクトの検出結果の関係を示す図である。
【図4】従来例1にかかるディフェクト検出回路のブロック図である。
【図5】従来例1にかかるディフェクト検出回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】従来例2にかかるディフェクト検出回路のブロック図である。
【図7】従来例2にかかるディフェクト検出回路の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 光ディスク装置
10 光ディスク回転モータ
20 ピックアップ
30 サーボ制御回路
40 AGC回路
50 ディフェクト検出回路
51 ピークホールド検波回路
52 傾き検出回路
53 比較回路
54 比較電圧制御回路
Vcomp 比較電圧
Vref 基準電圧
X 入力信号
Y AGC出力信号
Z ディフェクト領域検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の振幅レベルの変化量を検出し傾き検出信号として出力する検出回路と、
前記入力信号の振幅レベルに応じて比較電圧のレベルを変化させる比較電圧制御回路と、
前記傾き検出信号のレベルと前記比較電圧のレベルとを比較して制御信号を出力する比較回路と、を備えることを特徴とするディフェクト検出回路。
【請求項2】
前記比較電圧制御回路は、基準電圧に所定の係数を掛けることでレベルが設定された前記比較電圧を生成することを特徴とする請求項1に記載のディフェクト検出回路。
【請求項3】
前記入力信号の振幅レベルは、前記入力信号に基づいてエンベロープ信号を生成するピークホールド検波回路によって生成されることを特徴とする請求項1記載のディフェクト検出回路。
【請求項4】
前記比較電圧制御回路は、振幅基準値と前記入力信号とを比較した結果に基づいて基準電圧に所定の係数をかけて得られた前記比較電圧を出力することを特徴とする請求項1に記載のディフェクト検出回路。
【請求項5】
前記検出回路は、前記入力信号に基づいてエンベロープ信号を生成するピークホールド検波回路と、前記エンベロープ信号に基づいて傾きを検出し傾き検出信号を生成する傾き検出回路とを備えることを特徴とする請求項1記載のディフェクト検出回路。
【請求項6】
前記入力信号は、記憶媒体から読み出された信号に基づいて生成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のディフェクト検出回路。
【請求項7】
前記記憶媒体は、光ディスクであることを特徴とする請求項6記載のディフェクト検出回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のディフェクト検出回路と、
前記入力信号の振幅レベルに基づいて、ゲインを制御するオートゲインコントロール回路(AGC回路)とを備え、
前記AGC回路は前記制御信号によってゲインを変更するか否かが制御されることを特徴とする制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載のディフェクト検出回路と、
前記記憶媒体の回転制御及び前記記憶媒体からの反射光の光量に応じて前記入力信号を出力するピックアップの位置制御を行うサーボ制御回路とを備え、
前記サーボ制御回路は前記制御信号によって動作が制御されることを特徴とする制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載のディフェクト検出回路と、
前記入力信号の振幅レベルに基づいて、ゲインを制御するオートゲインコントロール回路(AGC回路)であって、前記制御信号によってゲインを変更するか否かが制御されるAGC回路と、
前記記憶媒体の回転制御及び前記記憶媒体からの反射光の光量に応じて前記入力信号を出力するピックアップの位置制御を行うサーボ制御回路であって、前記制御信号によって動作が制御されるサーボ制御回路とを備えることを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−47164(P2008−47164A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218771(P2006−218771)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】