説明

ディーゼル燃料添加剤組成物及びそれを用いた洗浄方法

【課題】ディーゼル燃料中に安定的に分散し、ポリマー系物質由来の付着物、水溶性の付着物、及び非水溶性の付着物を同時に洗浄除去することができ、かつ、被洗浄物に悪影響を与えることのないディーゼル燃料添加剤組成物、及びそれを用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】当該ディーゼル燃料添加剤組成物は、(a)一般式(1)の50〜80%(質量%)のポリオキシアルキレンアルキルアミン、(b)5〜20%のグリコールモノアルキルエーテル、(c)5〜15%のグリコールジアルキルエーテル、(d)5〜15%のヘテロ環状化合物、(e)1〜5%の水からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル燃料に添加されるディーゼル燃料添加剤組成物、及びそれを用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への対応の観点から、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)や、粒子状物質(PM)等の低減が課題となっており、この課題を解決する手段として、コモンレール式の燃料噴射システムを備えたディーゼルエンジンがある。
【0003】
コモンレール式の燃料噴射システムは、燃料を燃料噴射ポンプで加圧して、蓄圧室であるコモンレールに蓄圧し、このコモンレールに蓄圧された高圧燃料を燃料噴射ノズルよりシリンダー内に吹き込むものである。
コモンレール式の燃料噴射システムの燃料は高温、高圧に曝されることで、燃料中の様々な添加物が変性するようになり、特にインジェクターノズルに付着物が付着するという問題がある。
【0004】
上記インジェクターノズルを適正に使用するには、付着物を除去する必要がある。
そして、従来、付着物の除去に用いる洗浄剤として、種々の洗浄剤が報告されている(特許文献1、特許文献2)。
具体的には、カーボン系の付着物の除去に効果のある洗浄剤としては、ポリブテンアミンやポリエーテルアミン等を主成分とした洗浄剤がある。
【0005】
また、特許文献1に記載の洗浄剤組成物は、ナトリウムやカリウム化合物からなる水溶性の付着物を洗浄除去することが可能な洗浄剤組成物である。
また、特許文献2に記載の洗浄剤組成物は、ナトリウムやカリウム化合物からなる水溶性の付着物と、燃料劣化物や添加剤等からなる非水溶性の付着物が混合した混同性の付着物を洗浄除去することが可能な洗浄剤組成物である。
【0006】
【特許文献1】特開2008−81626号公報
【特許文献2】特開2008−81627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記付着物には、上記水溶性の付着物、非水溶性の付着物以外にも、ディーゼル燃料中に低温流動性向上材等として含まれるエチレン−ビニル酢酸コポリマー等のポリマー系物質由来の付着物が混合している場合がある。
そして、上記特許文献1、特許文献2に記載の洗浄剤組成物には、ポリマー系物質由来の付着物に対する洗浄効果はない。
【0008】
また、ポリマー系物質由来の付着物を洗浄するために、各種溶剤を使用した場合には、付着物の剥離、膨潤が発生し、燃料配管中のほかの部位で閉塞などの不具合を起こしエンジンが停止するおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、ディーゼル燃料中に安定的に分散し、ポリマー系物質由来の付着物、水溶性の付着物、及び非水溶性の付着物を同時に洗浄除去することができ、かつ、被洗浄物に悪影響を与えることのないディーゼル燃料添加剤組成物、及びそれを用いた洗浄方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、(a)下記の一般式(1)で示されるポリオキシアルキレンアルキルアミン、
(b)下記の一般式(2)で示されるグリコールモノアルキルエーテル、
(c)下記の一般式(3)で示されるグリコールジアルキルエーテル、
(d)ヘテロ環状化合物、及び
(e)水からなり、
上記(a)成分を50〜80質量%含有し、上記(b)成分を5〜20質量%含有し、上記(c)成分を5〜15質量%含有し、上記(d)成分を5〜15質量%含有し、上記(e)成分を1〜5質量%含有することを特徴とするディーゼル燃料添加剤組成物にある(請求項1)。
【化4】

(なお、R1は炭素数8〜25のアルキル基を示し、A1及びA2はそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基であり、繰り返す場合、A1及びA2はそれぞれ同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよく、k及びlはそれぞれ1〜30の数を示す。)
【化5】

(なお、R2は炭素数1〜8のアルキル基である。A3は炭素数2〜3のアルキレン基であり、繰り返す場合、A3は同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよく、mは1〜4の数を示す。)
【化6】

(なお、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基である。A4は炭素数2〜3のアルキレン基であり、繰り返す場合、A4は同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよく、nは1〜4の数を示す。)
【0011】
本発明のディーゼル燃料添加剤組成物は、ディーゼル燃料中に添加することにより、コモンレール式の燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンのインジェクターノズルに付着した付着物を洗浄するためのものである。
そして、上記ディーゼル燃料添加剤組成物は、上記(a)成分〜(e)成分を、同時に、特定の割合で含有することにより、ディーゼル燃料中に安定的に分散するものとなり、ポリマー系物質由来の付着物、水溶性の付着物、及び非水溶性の付着物を同時に洗浄除去することができ、かつ、被洗浄物に悪影響を与えることもない。
【0012】
上記(a)成分のポリオキシアルキレンアルキルアミンを含有することにより、ディーゼル燃料中における上記ディーゼル燃料添加剤組成物の安定性を確保することができる。そのため、上記ディーゼル燃料添加剤組成物は、ディーゼル燃料中に添加された際に、安定的に分散することができる。
【0013】
また、上記(a)成分のポリオキシアルキレンアルキルアミン、上記(b)成分のグリコールモノアルキルエーテル、上記(c)成分のグリコールジアルキルエーテル、及び上記(d)成分のヘテロ環状化合物を同時に含有することにより、ポリマー系物質由来の付着物、及び非水溶性の付着物を良好に洗浄除去することができる。
【0014】
また、上記(e)成分の水を含有することにより、水溶性の付着物を洗浄することが可能となる。
ここで、水は、被洗浄物を腐食させる原因となり易い。しかしながら、上記(e)成分の含有量を制限し、かつ、上記(a)成分を同時に含有させることにより、水を安定的に分散させることができ、被洗浄物の腐食の発生を抑制することができる。
【0015】
このように、本発明によれば、ディーゼル燃料中に安定的に分散し、ポリマー系物質由来の付着物、水溶性の付着物、及び非水溶性の付着物を同時に洗浄除去することができ、かつ、被洗浄物に悪影響を与えることのないディーゼル燃料添加剤組成物を提供することができる。
【0016】
第2の発明は、コモンレール式の燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンのインジェクターノズルに付着したポリマー系物質由来の付着物、水溶性の付着物、及び非水溶性の付着物を洗浄除去する方法であって、
ディーゼル燃料に対して第1の発明のディーゼル燃料添加剤組成物を0.5〜2質量%添加することにより洗浄を行うことを特徴とする洗浄方法にある(請求項8)。
【0017】
本発明の洗浄方法は、上述したように、第1の発明のディーゼル燃料添加剤組成物を用いて行うものであるため、ディーゼル燃料中に上記ディーゼル燃料添加剤組成物が安定的に分散し、ポリマー系物質由来の付着物、水溶性の付着物、及び非水溶性の付着物を同時に洗浄除去することができ、かつ、被洗浄物に悪影響を与えることなく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の発明のディーゼル燃料添加剤組成物は、上述したように、上記(a)成分、上記(b)成分、上記(c)成分、上記(d)成分、及び上記(e)成分からなる。
そして、上記(a)成分を示す上記一般式(1)において、R1は炭素数8〜25のアルキル基を示す。
炭素数8〜25のアルキル基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。上記R1は、ドデシル基であることが特に好ましい。
【0019】
また、上記一般式(1)において、A1及びA2はそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を示す。
炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
そして、上述したように、繰り返す場合、つまり、k及び/又はlが2〜30である場合には、A1及び/又はA2は、同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよい。
また、上記A1、A2は、エチレン基であることが好ましい。
【0020】
上記A1あるいはA2がメチレン基である場合には、親水性が強くなり、燃料への溶解性が悪くなるおそれがある。一方、上記A1あるいはA2が炭素数5以上のアルキレン基である場合には、親油性が強くなり水を安定的に分散できなくなるおそれがある。
【0021】
また、上記一般式(1)において、k及びlはそれぞれ1〜30の数を示す。
上記kあるいはlが31以上である場合には、親水性が強くなり、燃料への溶解性が悪化するという問題がある。
そして、k+lの値が2〜4であるであることが好ましい。k+lの値が4を超える場合には、親水性が強くなり燃料への溶解性が悪くなるおそれがある。
そして、上記(a)成分は、ラウリルジエタノールアミンであることが好ましい(請求項2)。
【0022】
上記(b)成分を示す上記一般式(2)において、R2は炭素数1〜8のアルキル基である。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。
上記R2が炭素数9以上のアルキル基である場合には、凝固点が高くなり、低温流動性が悪化するおそれがある。
【0023】
また、上記一般式(2)において、A3は炭素数2〜3のアルキレン基である。
炭素数2〜3のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
そして、上述したように、繰り返す場合、つまり、mが2〜4の場合には、上記A3は、同一のアルキレン基であっても、異なるアルキレン基であってもよい。
【0024】
上記A3がメチレン基である場合には、親水性が強くなり、燃料への溶解性が悪化するおそれがある。一方、上記A3が炭素数4以上のアルキレン基である場合には、親油性が強くなり、水を安定的に分散できなくなるおそれがある。
【0025】
また、上記一般式(2)において、mは1〜4の数を示す。
上記mが5以上である場合には、親水性が強くなり、燃料への溶解性が悪化するおそれがある。
そして、上記(b)成分は、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのうち1種又は2種以上であることが好ましい(請求項3)。
【0026】
また、上記(c)成分を示す上記一般式(3)において、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基である。
上述したように、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。
上記R3あるいはR4が炭素数9以上のアルキル基である場合には、凝固点が高くなり、低温流動性が悪化するおそれがある。
【0027】
また、上記一般式(3)において、A4は炭素数2〜3のアルキレン基である。
炭素数2〜3のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
そして、上述したように、繰り返す場合、つまり、nが2〜4の場合には、上記A4は、同一のアルキレン基であっても、異なるアルキレン基であってもよい。
【0028】
上記A4がメチレン基である場合には、親水性が強くなり、燃料への溶解性が悪化するおそれがある。一方、上記A4が炭素数4以上のアルキレン基である場合には、親油性が強くなり、水を安定的に分散できなくなるおそれがある。
【0029】
また、上記一般式(3)において、nは1〜4の数を示す。
上記nが5以上である場合には、親水性が強くなり、燃料への溶解性が悪化するおそれがある。
そして、上記(c)成分は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのうち1種又は2種以上であることが好ましい(請求項4)。
【0030】
また、上記(d)成分であるヘテロ環状化合物は、環構成原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が含まれる化合物である。
そして、上記(d)成分としては、N−メチル−2−ピロリドン、1,4ジオキサン、γ−ブチロラクトンのうち1種又は2種以上であることが好ましい(請求項5)。
【0031】
また、上記(a)成分を50〜80質量%含有する。
上記(a)成分の含有量が50質量%未満の場合には、水を安定的に燃料中に分散できなくなるおそれがある。一方、上記(a)成分の含有量が80質量%を超える場合には、燃料添加剤の低温での安定性が悪くなるという問題がある。
また、上記(a)成分の含有量は、60〜70質量%であることがより好ましい。
【0032】
また、上記(b)成分を5〜20質量%含有する。
上記(b)成分の含有量が5質量%未満の場合には、十分な洗浄効果を得られず、また、水を安定的に分散できなくおそれがある。一方、上記(b)成分の含有量が20質量%を超える場合には、被洗浄物に付着している付着物中のポリマー由来の付着物が粘性を持ち、インジェクターノズルの作動性が悪くなるおそれがある。
また、上記(b)成分の含有量は、10〜15質量%であることがより好ましい。
【0033】
また、上記(c)成分を5〜15質量%含有する。
また、上記(c)成分の含有量が5質量%未満の場合には、十分な洗浄効果を発揮できないおそれがある。一方、上記(c)成分の含有量が15質量%を超える場合には、被洗浄物に付着している付着物中のポリマー由来の付着物が粘性を持ち、インジェクターノズルの作動性が悪くなるおそれがある。
また、上記(c)成分の含有量は、5〜10質量%であることがより好ましい。
【0034】
また、上記(d)成分を5〜15質量%含有する。
上記(d)成分の含有量が5質量%未満の場合には、十分な洗浄効果を発揮することができず、また、水を安定的に分散できなくなるおそれがある、一方、上記(d)成分の含有量が15質量%を超える場合には、被洗浄物に付着している付着物中のポリマー由来の付着物が粘性を持ち、インジェクターノズルの作動性が悪くなるおそれがある。
また、上記(d)成分の含有量は、5〜10質量%であることがより好ましい。
【0035】
また、上記(e)成分を1〜5質量%含有する。
上記(e)成分の含有量が1質量%未満の場合には、水溶性の付着物成分に対する洗浄効果を発揮できないおそれがある。一方、上記(e)成分の含有量が5質量%を超える場合には、被洗浄物の腐食の原因となる等、上記被洗浄物を用いたシステムに悪影響を与えるおそれがある。
また、上記(e)成分の含有量は、2〜3質量%であることがより好ましい。
【0036】
また、上記(a)成分と、上記(e)成分との含有量比は、(e)の含有量/(a)の含有量が0.1以下であることが好ましい(請求項6)。
この場合には、(e)成分である水を特に安定的に分散させることができる。
上記(e)の含有量/(a)の含有量が0.1を超える場合には、水が安定的に分散されず、上記被洗浄物を用いたシステムに悪影響を与えるおそれがある。
【0037】
また、本発明のディーゼル燃料添加剤組成物は、ディーゼル燃料中に添加される濃縮液であって、それ自体で安定に存在可能である。
そして、上記ディーゼル燃料添加剤組成物は、ディーゼル燃料に対し、0.5〜2質量%添加して使用することが好ましい(請求項7)。
この場合には、特に良好な洗浄性を得ることができる。
【0038】
ディーゼル燃料における、上記燃料添加剤の含有量が0.5質量%未満である場合には、十分な洗浄性を得られないおそれがある。一方、上記燃料添加剤の含有量が2質量%を超える場合には、燃料中の水分量が多くなり、被洗浄物の腐食の原因となる等、上記被洗浄物を用いたシステムに悪影響を与えるおそれがある。
また、上記ディーゼル燃料添加剤組成物は、ディーゼル燃料に対し、1質量%含有させることがより好ましい。
【0039】
また、上記燃料添加剤は、ディーゼルエンジンの燃料タンクに投入することによりディーゼル燃料に添加する方法や、予め、ディーゼル燃料添加剤組成物を配合させたディーゼル燃料を使用する方法等を採用することにより使用することができる。
【0040】
また、本発明のディーゼル燃料添加剤組成物は、上記ディーゼル燃料添加剤組成物の作用効果を阻害しない範囲内で、種々の目的により他の成分(例えば、硝酸オクチル、硝酸シクロヘキシル等のセタン価向上剤、ポリエーテルアミン、ポリブテニルアミン等の清浄剤、脂肪族アミン、アルケニルコハク酸エステル等の腐食防止剤、ポリグリコールエーテル等の氷結防止剤等)を添加してもよい。
【0041】
また、第2の発明の洗浄方法は、上述したように、ディーゼル燃料に対して第1の発明のディーゼル燃料添加剤組成物を0.5〜2質量%添加することにより洗浄を行う。
ディーゼル燃料における、上記燃料添加剤の含有量が0.5質量%未満である場合には、十分な洗浄性を得られないおそれがある。一方、上記燃料添加剤の含有量が2質量%を超える場合には、燃料中の水分量が多くなり、被洗浄物の腐食の原因となる等、上記被洗浄物を用いたシステムに悪影響を与えるおそれがある。
【0042】
また、上記洗浄方法は、ディーゼル燃料添加剤組成物をディーゼルエンジンの燃料タンクに投入することによりディーゼル燃料に添加する方法や、予め、ディーゼル燃料添加剤組成物を配合させたディーゼル燃料を使用する方法等により行うことができる。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
本例は、本発明の実施例に係るディーゼル燃料添加剤組成物について説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
本例においては、実施例としてのディーゼル燃料添加剤組成物(試料E1〜試料E6)、及び比較例としてのディーゼル燃料添加剤組成物(試料C1〜試料C10)を作製した。
【0044】
上記実施例としてのディーゼル燃料添加剤組成物(試料E1〜試料E6)は、(a)下記の一般式(1)で示されるポリオキシアルキレンアルキルアミン、(b)下記の一般式(2)で示されるグリコールモノアルキルエーテル、(c)下記の一般式(3)で示されるグリコールジアルキルエーテル、(d)ヘテロ環状化合物、及び(e)水からなる。また、上記(a)成分を50〜80質量%含有し、上記(b)成分を5〜20質量%含有し、上記(c)成分を5〜15質量%含有し、上記(d)成分を5〜15質量%含有し、上記(e)成分を1〜5質量%含有する。
【化7】

(なお、R1は炭素数8〜25のアルキル基を示し、A1及びA2はそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基であり、繰り返す場合、A1及びA2はそれぞれ同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよく、k及びlはそれぞれ1〜30の数を示す。)
【化8】

(なお、R2は炭素数1〜8のアルキル基である。A3は炭素数2〜3のアルキレン基であり、繰り返す場合、A3は同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよく、mは1〜4の数を示す。)
【化9】

(なお、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基である。A4は炭素数2〜3のアルキレン基であり、繰り返す場合、A4は同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよく、nは1〜4の数を示す。)
【0045】
上記ディーゼル燃料添加剤組成物(試料E1〜試料E6、及び試料C1〜試料C10)を作製するに当たっては、まず、表1に示すように、(a)成分〜(e)成分を用意した。
そして、表1に示す(a)成分〜(e)成分を配合して、表2に示す組成を有するディーゼル燃料添加剤組成物(試料E1〜試料E6、及び試料C1〜試料C10)を作製した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
そして、得られたディーゼル燃料添加剤組成物のうち、試料E1〜試料E6、及び試料C10について、低温流動限界評価試験を行い、低温流動性限界を評価した。
低温流動限界評価試験は、各試料について、−5℃で流動するか否かを試験し、低温流動限界を評価した。
−5℃で流動する場合を評価○とし、−5℃で流動しない場合を評価△とした。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
表3より知られるように、実施例としての試料E1〜試料E6は、低温流動性限界に優れている。
また、比較例としての試料C9は、(a)成分の含有量が本発明の上限を上回るため、−5℃において流動しなかった。
【0051】
次に、軽油に、得られた各ディーゼル燃料添加剤組成物(試料E1〜試料E6、及び試料C1〜試料C10)を1質量%配合することによって表4に示す軽油組成物(軽油組成物1〜軽油組成物17)を調整した。
なお、軽油組成物7は、ディーゼル燃料添加剤組成物を配合させておらず、軽油100質量%のものである。
【0052】
【表4】

【0053】
そして、得られた軽油組成物(軽油組成物1〜軽油組成物17)について、洗浄性、安定性、及び腐食性の評価を行った。
結果を表4に併せて示す。
【0054】
<洗浄性>
洗浄性を評価するに当たっては、まず、燃料噴射システムを搭載した車両のインジェクターより、付着物(ポリマー系物質由来の付着物、水溶性の付着物、非水溶性付着物の混合付着物)が付着したニードル部品を取り出した。そして、各軽油組成物(軽油組成物1〜軽油組成物17)に24時間浸漬させ、付着物の除去具合を目視にて評価した。
【0055】
(評価基準)
◎:付着物がほぼ完全に除去されている場合。
○:付着物の大部分が除去されている場合。
△:付着物の除去量が少量である場合。
□:付着物が粘性を持つ場合。
×:付着物がほとんど除去されない場合。
評価が◎あるいは○である場合を合格、評価が△、□あるいは×である場合を不合格とした。
【0056】
<安定性>
安定性は、上記ディーゼル燃料添加剤組成物(試料E1〜試料E6、及び試料C1〜試料C10)を軽油に配合した際のディーゼル燃料添加剤組成物の分散性を目視で観察することにより評価した。
水の分離が確認されない場合を合格(評価○)とし、水の分離が確認された場合を不合格(評価×)とした。
【0057】
<腐食性>
腐食性を評価するに当たっては、まず、直径6cmのシャーレの上にろ紙を敷き、鋳鉄(FC200)切粉5gを入れる。そこに、上記軽油組成物(軽油組成物1〜軽油組成物17)を加え、10分間浸漬した後、デカンテーションにより試験液を除去する。その後、20℃、湿度60%の容器内で保管し、鋳鉄切粉の発錆状態を観察し、腐食性を評価した。
発錆が確認されない場合を合格(評価○)とし、発錆が確認された場合を(評価×)とした。
【0058】
表4より知られるように、実施例としての軽油組成物1〜軽油組成物6は、良好な洗浄性を示した。
このように、本発明によれば、ディーゼル燃料中に安定的に分散し、ポリマー系物質由来の付着物、水溶性の付着物、及び非水溶性の付着物を同時に洗浄除去することができ、かつ、被洗浄物に悪影響を与えることのないディーゼル燃料添加剤組成物を提供できることが分かる。
【0059】
また、表4より、比較例としての軽油組成物7は、ディーゼル燃料添加剤組成物を含有していないため、洗浄性が不合格であった。
また、比較例としての軽油組成物8は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(b)成分の含有量が本発明の下限を下回る試料C1を用いているため、洗浄性及び安定性が不合格であった。
【0060】
また、比較例としての軽油組成物9は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(c)成分の含有量が本発明の下限を下回る試料C2を用いているため、洗浄性が不合格であった。
また、比較例としての軽油組成物10は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(d)成分の含有量が本発明の下限を下回る試料C3を用いているため、洗浄性及び安定性が不合格であった。
【0061】
また、比較例としての軽油組成物11は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(b)成分の含有量が本発明の上限を上回る試料C4を用いているため、ポリマー系物質由来の付着物が粘性をもち、洗浄性が不合格であった。
また、比較例としての軽油組成物12は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(c)成分の含有量が本発明の上限を上回る試料C5を用いているため、ポリマー系物質由来の付着物が粘性をもち、洗浄性が不合格であった。
【0062】
また、比較例としての軽油組成物13は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(d)成分の含有量が本発明の上限を上回る試料C6を用いているため、ポリマー系物質由来の付着物が粘性をもち、洗浄性が不合格であった。
また、比較例としての軽油組成物14は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(e)成分の含有量が本発明の下限を下回る試料C7を用いているため、洗浄性が不合格であった。
【0063】
また、比較例としての軽油組成物15は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(e)成分の含有量が本発明の上限を上回る試料C8を用いており、洗浄性、安定性及び腐食性が不合格であった。
また、比較例としての軽油組成物16は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(a)成分の含有量が本発明の上限を上回り、上述したように低温流動性限界が不良である試料C9を用いているが、その他の洗浄成分の含有量が本発明の範囲内であるため、洗浄性、安定性及び腐食性については良好な結果を示した。
また、比較例としての軽油組成物17は、ディーゼル燃料添加剤組成物として、(a)成分の含有量が本発明の下限を下回る試料C10を用いているため、安定性及び腐食性が不合格であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記の一般式(1)で示されるポリオキシアルキレンアルキルアミン、
(b)下記の一般式(2)で示されるグリコールモノアルキルエーテル、
(c)下記の一般式(3)で示されるグリコールジアルキルエーテル、
(d)ヘテロ環状化合物、及び
(e)水からなり、
上記(a)成分を50〜80質量%含有し、上記(b)成分を5〜20質量%含有し、上記(c)成分を5〜15質量%含有し、上記(d)成分を5〜15質量%含有し、上記(e)成分を1〜5質量%含有することを特徴とするディーゼル燃料添加剤組成物。
【化1】

(なお、R1は炭素数8〜25のアルキル基を示し、A1及びA2はそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基であり、繰り返す場合、A1及びA2はそれぞれ同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよく、k及びlはそれぞれ1〜30の数を示す。)
【化2】

(なお、R2は炭素数1〜8のアルキル基である。A3は炭素数2〜3のアルキレン基であり、繰り返す場合、A3は同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよく、mは1〜4の数を示す。)
【化3】

(なお、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基である。A4は炭素数2〜3のアルキレン基であり、繰り返す場合、A4は同一のアルキレン基であっても異なるアルキレン基であってもよく、nは1〜4の数を示す。)
【請求項2】
請求項1において、上記(a)成分は、ラウリルジエタノールアミンであることを特徴とするディーゼル燃料添加剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記(b)成分は、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのうち1種又は2種以上であることを特徴とするディーゼル燃料添加剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記(c)成分は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのうち1種又は2種以上であることを特徴とするディーゼル燃料添加剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記(d)成分は、N−メチル−2−ピロリドン、1,4ジオキサン、γ−ブチロラクトンのうち1種又は2種以上であることを特徴とするディーゼル燃料添加剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記(a)成分と、上記(e)成分との含有量比は、(e)の含有量/(a)の含有量が0.1以下であることを特徴とするディーゼル燃料添加剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、上記ディーゼル燃料添加剤組成物は、ディーゼル燃料に対し、0.5〜2質量%添加して使用することを特徴とするディーゼル燃料添加剤組成物。
【請求項8】
コモンレール式の燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンのインジェクターノズルに付着したポリマー系物質由来の付着物、水溶性の付着物、及び非水溶性の付着物を洗浄除去する方法であって、
ディーゼル燃料に対して請求項1〜7のいずれか1項に記載のディーゼル燃料添加剤組成物を0.5〜2質量%添加することにより洗浄を行うことを特徴とする洗浄方法。

【公開番号】特開2010−106173(P2010−106173A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280957(P2008−280957)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(393004085)油化産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】