説明

ディーゼル用耐熱ゴムホース

【課題】耐排ガス凝縮水性(耐酸性)、耐熱性、難燃性、低温性に優れたディーゼル用耐熱ゴムホースを提供する。
【解決手段】管状の内層1と、その外周に設けられる外層2とを備えたディーゼル用耐熱ゴムホースであって、上記内層1が、下記の(A)および(B)を必須成分とし、受酸剤不含とする内層用材料を用いて形成され、かつ、上記外層2が、下記の(A)〜(C)を必須成分とする外層用材料を用いて形成されている。
(A)エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム(EVM)。
(B)有機過酸化物架橋剤。
(C)金属水酸化物および表面処理金属水酸化物の少なくとも一方。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル・パーティキュレート・フィルター(DPF)センサーホース、ディーゼル用のバキュームブレーキホース,エアーホース,ターボ(過給機)エアーホース等に用いることができるディーゼル用耐熱ゴムホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界的な環境意識の高まりから、排ガス中のPMやNOxを低減するためのDPFシステムやターボシステムの導入が本格化している。従来の燃料用ホースやエアーホースとしては、例えば、燃料と接する内層にフッ素ゴムやアクリル系ゴムを用いたもの等が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平7−229584号公報
【特許文献2】特開2003−82029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、近年、ディーゼル車の排ガス規制の強化が進み、それに対応した新エンジンシステム(コモンレール式噴射システム)や、排ガス中のPMやNOxを低減するためのDPFシステム,ターボシステムの導入が本格化していることから、それにともない、DPFセンサーホース等のディーゼル用耐熱ゴムホースへの要求性能も厳しくなってきている。すなわち、PMやNOx等の排ガス低減を目的に燃焼効率を高めるよう、DPFシステム,ターボシステムは高温化になる。そのため、ディーゼル用耐熱ゴムホースには、従来よりも高い耐熱性と耐酸性、難燃性、低温性が求められる。しかしながら、内層にフッ素ゴム(FKM)を用いた従来のホースは、受酸剤(酸化マグネシウム,酸化亜鉛,酸化カルシウム等の金属塩)を含有しているため、耐排ガス凝縮水性(耐酸性)が劣るとともに、外層にエピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)を用いた従来のホースでは、耐熱性の点で不充分であった。また、内層、外層アクリルゴム(ACM)を用いた従来のホースでは、二次加硫工程が必須であり、外層は難燃性が劣る。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐排ガス凝縮水性(耐酸性)、耐熱性、難燃性、低温性に優れたディーゼル用耐熱ゴムホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明のディーゼル用耐熱ゴムホースは、管状の内層と、その外周に設けられる外層とを備えたディーゼル用耐熱ゴムホースであって、上記内層が、下記の(A)および(B)を必須成分とし、受酸剤不含とする内層用材料を用いて形成され、かつ、上記外層が、下記の(A)〜(C)を必須成分とする外層用材料を用いて形成されているという構成をとる。
(A)エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム(EVM)。
(B)有機過酸化物架橋剤。
(C)金属水酸化物および表面処理金属水酸化物の少なくとも一方。
【0006】
本発明者らは、耐排ガス凝縮水性(耐酸性)、耐熱性、難燃性、低温性に優れたディーゼル用耐熱ゴムホースを得るため、その各層の形成材料を中心に鋭意研究を重ねた。その結果、内層用材料および外層用材料として、二次加硫工程を必要とせず、耐熱性、耐酸性、難燃性、低温性の点で良好なパーオキサイド加硫系のEVM(エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム)を用い、さらに、内層用材料には受酸剤(酸化マグネシウム,酸化亜鉛,酸化カルシウム等の金属塩)を不含とし、外層用材料には金属水酸化物や表面処理金属水酸化物を所定の割合で配合すると、所期の目的を達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、上記の構成では、パーオキサイド加硫系のEVMによる上記作用効果に加え、上記内層用材料に受酸剤を用いていないため、受酸剤が排ガス(濃縮酸性液)によって溶解し、亀裂(クラック)を引き起こすといった不具合を生じず、また、外層用材料に金属水酸化物や表面処理金属水酸化物を特定の割合で配合することにより、本発明のディーゼル用耐熱ゴムホースは、所望の耐熱性や難燃性を備えるようになる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のディーゼル用耐熱ゴムホースは、内層用材料および外層用材料として、二次加硫工程を必要とせず、耐熱性、耐酸性、難燃性、低温性の点で良好なパーオキサイド加硫系のEVM(エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム)を用い、さらに、内層用材料には受酸剤を不含とし、外層用材料には金属水酸化物や表面処理金属水酸化物を所定の割合で配合し、上記各層を形成している。そのため、耐排ガス凝縮水性(耐酸性)、耐熱性、難燃性に優れ、また、内層用材料に金属酸化物等の受酸剤を用いていないため、受酸剤が排ガス(濃縮酸性液)によって溶解し、亀裂(クラック)を引き起こすといった不具合も生じない。このことから、DPFセンサーホース、ディーゼル用のバキュームブレーキホース,エアーホース,ターボエアーホース等といったディーゼル用耐熱ゴムホースとして有利に用いることができる。
【0009】
また、上記外層用材料に硼酸亜鉛や赤リンを加えて上記外層を形成すると、難燃効果により優れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。但し、本発明は、これに限定されるものではない。
【0011】
本発明のディーゼル用耐熱ゴムホースは、例えば、図1に示すように、管状の内層1の外周面に補強糸層3が形成され、さらにその外周面に外層2が形成されて構成されている。
【0012】
本発明においては、上記内層1が、エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム(EVM)(A成分)と,有機過酸化物架橋剤(B成分)とを必須成分とし、受酸剤を不含とする内層用材料を用いて構成され、上記外層2が、エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム(EVM)(A成分)と,有機過酸化物架橋剤(B成分)と,金属水酸化物および表面処理金属水酸化物の少なくとも一方(C成分)とを必須成分とする外層用材料を用いて構成されているのであって、これらが最大の特徴である。
【0013】
上記A成分のエチレン−酢酸ビニル共重合ゴムは、その共重合体中の酢酸ビニル量が45〜75重量%の範囲のゴム状のポリマー(以下、「EVM」と略す)が好ましく、特に好ましくは、上記酢酸ビニル量が60〜70重量%の範囲である。すなわち、酢酸ビニル量が45重量%未満であると、ポリマーが低粘度となることから、ロール加工性に劣るようになるからであり、逆に、酢酸ビニル量が75重量%を超えると、低温性に劣るようになるからである。
【0014】
なお、上記EVM(A成分)の市販品としては、例えば、ランクセス社製のレバプレン700HV等が、好適なものとして使用することができる。
【0015】
上記EVM(A成分)の加硫剤としては、有機過酸化物架橋剤(B成分)が用いられる。上記有機過酸化物架橋剤としては、特に限定はなく、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルペルオキシヘキサン、n−ブチル−4,4′−ジ−t−ブチルペルオキシバレレート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、架橋時の臭気がないという点から、ジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好適に用いられる。
【0016】
上記有機過酸化物架橋剤(B成分)の配合量は、前記EVM(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、2〜8部の範囲が好ましい。すなわち、上記有機過酸化物架橋剤の配合量が2部未満であると、架橋が不充分でホースの強度が劣る傾向がみられ、逆に8部を超えると、硬度が高く、ホースの柔軟性に劣る傾向がみられるからである。
【0017】
また、前記内層1を形成する材料(内層用材料),外層2を形成する材料(外層用材料)ともに、架橋効率を高め物性の改善をはかるために、上記過酸化物架橋剤と共架橋剤とを併用しても差し支えない。上記共架橋剤としては、例えば、硫黄含有化合物、多官能性モノマー、マレイミド化合物、キノン化合物等があげられる。
【0018】
上記硫黄含有化合物としては、例えば、硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド、メルカプトベンゾチアゾール等があげられる。上記多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルトリメリテート、トリアリルトリシアヌレート等があげられる。また、上記マレイミド化合物としては、例えば、N,N' −m−フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド等があげられる。上記キノン化合物としては、例えば、キノンジオキシム、ジベンゾイル−p−キノンジオキシム等があげられる。その中でも、耐酸性に優れた架橋形態を形成するという点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好適に使用される。
【0019】
さらに、上記内層用材料,外層用材料ともに、前記EVM(A成分)、有機過酸化物架橋剤(B成分)の他に、加硫剤、ステアリン酸等の滑剤、カーボンブラック、老化防止剤、無機充填材、着色剤、加工助剤、可塑剤を適宜に配合しても差し支えない。
【0020】
そして、本発明においては、上記内層用材料に、受酸剤不含の材料を用いることを要する。これは、受酸剤(酸化マグネシウム,酸化亜鉛,酸化カルシウム等の金属塩)を用いると、その受酸剤が排ガス(濃縮酸性液)によって溶解し、亀裂(クラック)を引き起こすからである。
【0021】
また、本発明においては、上記外層用材料に、金属水酸化物および表面処理金属水酸化物の少なくとも一方(C成分)を配合することを要する。これにより、本発明のディーゼル用耐熱ゴムホースは、所望の耐熱性や難燃性を備えるようになるのである。
【0022】
上記金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等があげられる。また、上記表面処理金属水酸化物としては、例えば、上記水酸化アルミニウム等の金属水酸化物をステアリン酸,シランカップリング剤等で処理したものがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、水酸化アルミニウムは、ディーゼル用耐熱ゴムホースの仕様において特に優れた難燃効果が得られることから、より好ましく用いられる。なお、上記外層用材料に水酸化アルミニウムを高充填する場合に、加工性が悪くなるおそれがあるが、不飽和脂肪酸エステルを併用することにより解消することができる。
【0023】
そして、外層用材料における上記C成分(金属水酸化物および表面処理金属水酸化物の少なくとも一方)の配合量は、前記EVM(A成分)100部に対して50〜80部の範囲に設定することが好ましい。すなわち、上記C成分の配合量が50部未満であると、難燃性が劣る傾向がみられ、逆に80部を超えると、常態時物性、耐熱性、低温性のいずれかが劣る傾向がみられるからである。
【0024】
上記外層2の難燃効果をより向上させるため、必要に応じ、外層用材料に、適宜、金属酸化物、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、硼酸亜鉛、膨張黒鉛、リン酸アンモニウム塩等を、単独でもしくは2種以上併せて配合してもよい。これらのなかでも、より難燃効果が高いことから、硼酸亜鉛や赤リンが好適に用いられる。
【0025】
本発明のディーゼル用耐熱ゴムホースは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、前記内層用材料の各成分を所定の割合で配合し、混練機を用いて混練することにより、内層用材料を調製する。これと同様にして、外層用材料の調製も行う。つぎに、押出成形機を用いて、各材料を同時に押出成形した後、所定の条件で加熱架橋(例えば、160〜190℃×10〜60分)する。このようにして、二層構造のディーゼル用耐熱ゴムホースを得ることができる。上記各層は同時に押出成形することを要しないが、同時に押出成形することにより、各層の界面が接着剤レスで強固に接着し、積層一体化がなされるようになるため好ましい。また、図1に示すディーゼル用耐熱ゴムホースは、内層1と外層2との間に、補強糸層3が介在されている。このホースを得るためには、まず、上記と同様の手法で各層用の材料を調製し、上記内層用材料を円筒状に押出成形した後、この外周面に、必要に応じて接着剤を塗布し、補強糸(ポリエステル、ビニロン、アラミド、ナイロン等)をスパイラル状もしくはブレード、ニッティングに巻き付けて補強糸層3を形成する。ついで、この補強糸層3の外周面に、必要に応じ接着剤を塗布し、外層用材料を押出成形する。その後、上記と同様に加熱架橋する。このようにして、図1に示すディーゼル用耐熱ゴムホースを得ることができる。
【0026】
上記図1に示すホースのように、その内層1と外層2との間に、補強糸層3が介在されていると、耐久性がより一層高くなることから、高圧ホース用途としても優れた性能を発揮することができる。
【0027】
なお、本発明のディーゼル用耐熱ゴムホースは、例えば、真空サイジング法によってストレート形状に成形しても、コルゲーターを用いて蛇腹構造に成形しても差し支えない。
【0028】
本発明のディーゼル用耐熱ゴムホース各層の厚みは、内層1の厚みが、通常、0.05〜3mmであり、好ましくは0.1〜2mmであり、外層2の厚みは、通常、0.05〜3mmであり、好ましくは0.1〜2mmである。そして、本発明のディーゼル用耐熱ゴムホースの内径は、通常、2〜30mmであり、好ましくは5〜25mmである。
【実施例】
【0029】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す各材料を準備した。
【0031】
〔EVM(A成分)〕
酢酸ビニル含有量が70重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合ゴム(ランクセス社製、レバプレン700HV)
【0032】
〔PO−ACM〕
メチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体
【0033】
〔PO−AEM〕
エチレン−メチルアクリレート共重合体(デュポン社製、VAMAC−DP)
【0034】
〔AEM〕
エチレン−メチルアクリレート共重合体に加硫サイトモノマーが加わったターポリマー(デュポン社製、VAMAC−G)
【0035】
〔ステアリン酸〕
花王社製、ルナックS30
【0036】
〔カーボンブラック〕
MAFカーボンブラック(キャボット社製、ショウブラックMAF)
【0037】
〔加工助剤〕
理研ビタミン社製、リケスターSL−02
【0038】
〔可塑剤〕
ADEKA社製、アデカサイザーRS−735
【0039】
〔共架橋剤〕
トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、TAIC−M60)
【0040】
〔有機過酸化物架橋剤(B成分)〕
ジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン(日本油脂社製、ペロキシモンF−40)
【0041】
〔架橋助剤〕
ジ−o−トリルグアニジン(大内新興化学社製、ノクセラーDT)
【0042】
〔加硫剤〕
ヘキサメチレンジアミンカーバメート(デュポン社製、ダイアック♯1)
【0043】
〔水酸化アルミニウム(C成分)〕
昭和電工社製、ハイジライトH42M
【0044】
〔表面処理水酸化アルミニウム(C成分)〕
昭和電工社製、ハイジライトH42S
【0045】
〔硼酸亜鉛〕
三洋貿易社製、アルカネックスFRC−150
【0046】
〔赤リン〕
燐化学工業社製、ノーバレット120UF
【0047】
つぎに、これらの材料を用いて、各層の形成材料を調製した。
【0048】
(1)内層用材料の調製
後記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これらを混練機を用いて混練して、内層用材料a〜dを調製した。
【0049】
(2)外層用材料の調製
後記の表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これらを混練機を用いて混練して、外層用材料A〜Iを調製した。
【0050】
このようにして得られた材料のうち、各内層用材料(未加硫配合物)を用い、160℃×45分でプレス加硫した後、後述のJIS試験方法に準拠した形状とサイズに成形して加硫ゴムテストピースを作製した。そして、この加硫ゴムテストピースを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1に示した。
【0051】
また、各外層用材料(未加硫配合物)を用い、160℃×35分でスチーム加硫した後、後述のJIS試験方法に準拠した形状とサイズに成形して加硫ゴムテストピースを作製した。そして、この加硫ゴムテストピースに関しても、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表2に示した。
【0052】
〔常態時物性〕
JIS K 6251に準拠した形状とサイズに成形して加硫ゴムテストピースを作製し、この加硫ゴムテストピースを用いて、JIS K 6251に準拠して、引張強さ(TS)および伸び(Eb )をそれぞれ測定した。評価は、TSが8MPa以上で、かつ、Eb が200%以上のものを○、それ以外のものを×とした。
【0053】
〔耐熱性(圧縮永久歪み)〕
耐熱性評価指標として、高温での圧縮永久歪みを、JIS K 6262に準拠した形状とサイズに成形して加硫ゴムテストピースを作製し、JIS K 6262に準拠して、温度175℃×試験時間72時間の測定条件にて圧縮永久歪みを測定した。そして、圧縮永久歪みが75%以下であるものを○と評価し、75%を超えるものを×と評価した。
【0054】
〔低温性〕
JIS K 6404に準拠した形状とサイズに成形して加硫ゴムテストピースを作製し、この加硫ゴムテストピースを用いて、JIS K 6404に準拠して、低温性の評価を行った。評価は、−30℃より高温のものを×、−30℃以下のものを○とした。
【0055】
〔難燃性〕
各外層用材料(未加硫配合物)を用いて、図2に示すように、直径13mmのホース11形状に金型成形した。そして、このホース11の中央に炎12をあててホース11を燃焼させ、30秒たったら炎12を取り除き、その時点から、燃焼したホースの炎が消えるまでの時間(消火時間)を測定した。評価は、消火時間が5秒以下のものを○、5秒を超えるものを×とした。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
上記表1の結果から、内層用材料dは、常態時物性、耐熱性(圧縮永久歪み)および低温性がいずれも良好であった。これに対し、内層用材料a〜cは、圧縮永久歪み特性の評価が劣っていた。
【0059】
また、上記表2の結果から、外層用材料D〜F,H,Iは、常態時物性、耐熱性(圧縮永久歪み)、低温性および難燃性がいずれも良好であった。これに対し、外層用材料A〜Cは、常態時物性や圧縮永久歪み性が悪く、二次加硫を要するものであった。また、外層用材料A〜Cは、低温性にも劣っていた。外層用材料Gは、難燃性に劣っていた。
【0060】
〔実施例1〜5、比較例1〜5〕
後記の表3に示す、内層用材料および外層用材料を組み合わせてなるホースを作製した。すなわち、上記のように予め調製した各層の材料を準備し、ついで、これらを押出成形機を用いて各層の材料を同時に押出成形した後、所定の条件でスチーム加熱架橋(160℃×35分)した。このようにして、内層(厚み1.5mm)と,外層(厚み1.5mm)とを有する二層構造のホース(内径5mm)を作製した。
【0061】
このようにして得られた実施例および比較例のホースに関し、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表3に併せて示した。
【0062】
〔耐酸性〕
各ホースに試験液を封入し、90℃×500時間の条件にて、耐酸性の評価を行った。なお、試験液として蟻酸、酢酸をそれぞれ300体積ppm含有した水を用いた。評価は、封入試験後のホースを折り曲げた際に、内面にクラックが生じなかったものを○とし、クラックが生じたものを×とした。
【0063】
〔難燃性〕
各ホースを図2に示すように、ホース11の中央に炎12をあててホース11を燃焼させ、30秒たったら炎12を取り除き、その時点から、燃焼したホースの炎が消えるまでの時間(消火時間)を測定した。評価は、消火時間が5秒以下のものを○、5秒を超えるものを×とした。
【0064】
〔低温性〕
各ホースを−35℃雰囲気下にて折り曲げた際に、内面にクラックが生じなかったものを○、クラックが生じたものを×とした。
【0065】
〔耐熱性(シール性)〕
耐熱性評価指標として、各ホースに試験液を封入し、90℃×500時間の条件にて、シール性の評価を行った。なお、試験液として蟻酸、酢酸をそれぞれ300体積ppm含有した水を用いた。締結パイプの外径は5. 3mm、締結冶具はネジクランプにて締結トルク1N/mで使用した。評価は、封入老化試験後のホースに、室温(25℃)雰囲気中で水0. 5MPa加圧した際、試験後のホース締結部に液漏れが生じなかったものを○、液漏れが生じたものを×とした。
【0066】
〔総合評価〕
前述の内層用材料の各評価,外間層用材料の各評価および上記ホースの各評価にもとづき、ホースとしての性能を総合的に評価した。評価は、各評価項目に×が1つもないものを○、それ以外のものを×とした。
【0067】
【表3】

【0068】
上記結果から、実施例品は、総合評価も全て○であった。これに対して、比較例品は、評価項目のいずれかが悪く、総合評価は×であった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、DPFセンサーホース、ディーゼル用のバキュームブレーキホース,エアーホース,ターボエアーホース等に用いることができるディーゼル用耐熱ゴムホースに関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明のディーゼル用耐熱ゴムホースの一例を示す模式図である。
【図2】難燃性の評価方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1 内層
2 外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の内層と、その外周に設けられる外層とを備えたディーゼル用耐熱ゴムホースであって、上記内層が、下記の(A)および(B)を必須成分とし、受酸剤不含とする内層用材料を用いて形成され、かつ、上記外層が、下記の(A)〜(C)を必須成分とする外層用材料を用いて形成されていることを特徴とするディーゼル用耐熱ゴムホース。
(A)エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム(EVM)。
(B)有機過酸化物架橋剤。
(C)金属水酸化物および表面処理金属水酸化物の少なくとも一方。
【請求項2】
上記外層が、上記(A)〜(C)を必須成分とし、その(C)成分の配合量が、(A)成分100重量部に対して50〜80重量部の範囲に設定された外層用材料を用いて形成されている請求項1記載のディーゼル用耐熱ゴムホース。
【請求項3】
上記外層が、上記(A)〜(C)成分とともに硼酸亜鉛を含有する外層用材料を用いて形成されている請求項1または2記載のディーゼル用耐熱ゴムホース。
【請求項4】
上記外層が、上記(A)〜(C)成分とともに赤リンを含有する外層用材料を用いて形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のディーゼル用耐熱ゴムホース。
【請求項5】
上記内層と外層との間に、補強糸層を構成する請求項1〜4のいずれか一項に記載のディーゼル用耐熱ゴムホース。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−246752(P2008−246752A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88936(P2007−88936)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】