説明

デサチュラーゼ遺伝子とその使用

【課題】糸状菌や肝臓、副腎等の哺乳動物組織に含まれているアラキドン酸、真菌類や魚油に含まれているEPAは、デサチュラーゼにより生成される。Δ5−デサチュラーゼ及びΔ6−デサチュラーゼ、これらの酵素をコードする各遺伝子、並びにこれらの酵素による組換え生産方法を提供する。
【解決手段】炭素5(即ち「Δ5−デサチュラーゼ」)及び炭素6(即ち「Δ6−デサチュラーゼ」)のポリ不飽和脂肪酸の不飽和化に関与する遺伝子。Δ5−デサチュラーゼは例えばジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)からアラキドン酸(AA)への変換や20:4n−3からエイコサペンタエン酸(EPA)への変換に使用できる。Δ6−デサチュラーゼはリノレン酸(LA)からγ−リノレン酸(GLA)への変換に使用できる。生産されるAAやポリ不飽和脂肪酸は医薬組成物、栄養組成物、動物飼料及び他の製品(例えば化粧品)に添加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酵素(即ちThraustochytrium aureumΔ5−デサチュラーゼ、Saprolegnia diclinaΔ5−デサチュラーゼ、Saprolegnia diclinaΔ6−デサチュラーゼ及びIsochrysis galbanaΔ5−デサチュラーゼ)をコードする遺伝子の同定と単離に関する。特に、Δ5−デサチュラーゼは例えばジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)からアラキドン酸(AA)及び(n−3)−エイコサテトラエン酸(20:4n−3)からエイコサペンタエン酸(20:5n−3)への変換を触媒する。Δ6−デサチュラーゼは例えばα−リノレン酸(ALA)からステアリドン酸(STA)への変換を触媒する。この変換産物はその後、他のポリ不飽和脂肪酸(PUFA)の生産における基質として利用することができる。この産物又は他のポリ不飽和脂肪酸は医薬組成物、栄養組成物、動物飼料及び他の製品(例えば化粧品)に添加することができる。
【背景技術】
【0002】
デサチュラーゼ(desaturase)は多数の重要な機能をもつ長鎖ポリ不飽和脂肪酸の生産に不可欠である。例えばポリ不飽和脂肪酸(PUFA)は細胞膜の主要成分であり、リン脂質形態で存在する。哺乳動物プロスタサイクリン、エイコサノイド、ロイコトリエン及びプスタグランジンの前駆物質としても機能する。更に、PUFAは発育中の乳児脳の適正な発育と組織形成及び修復に必要である。PUFAの生物学的意義に鑑み、PUFAとその中間体を効率的に生産する試みがなされている。
【0003】
PUFA生合成にはΔ5−デサチュラーゼとΔ6−デサチュラーゼ以外に多数の酵素が関与している。例えば、エロンガーゼ(elo)はγ−リノレン酸(GLA)からジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)への変換とステアリドン酸(18:4n−3)から(n−3)−エイコサテトラエン酸(20:4n−3)への変換を触媒する。リノレン酸(LA,18:2−Δ9,12又は18:2n−6)はオレイン酸(18:1−Δ9)からΔ12−デサチュラーゼにより生産される。GLA(18:3−Δ6,9,12)はリノレン酸からΔ6−デサチュラーゼにより生産される。
【0004】
動物はΔ9位を越えて不飽和化することができないため、オレイン酸をリノレン酸に変換できないことに留意すべきである。同様に、α−リノレン酸(ALA,18:3−Δ9,12,15)は哺乳動物により合成することができない。他方、α−リノレン酸は哺乳動物と藻類でΔ6−デサチュラーゼによりステアリドン酸(STA,18:4−Δ6,9,12,15)に変換され(PCT公開WO96/13591とThe Faseb Journal,Abstracts,Part I,Abstract 3093,page A532(Experimental Biology 98,San Francisco,CA,April 18−22,1988)参照、米国特許第5,552,306号も参照)、その後、(n−3)−エイコサテトラエン酸(20:4−Δ8,11,14,17)まで伸長することができる。このポリ不飽和脂肪酸(即ち20:4−Δ8,11,14,17)はその後、本発明の酵素のようなΔ5−デサチュラーゼによりエイコサペンタエン酸(EPA,20:5−Δ5,8,11,14,17)に変換することができる。真菌類や植物等の他の真核生物は炭素12(PCT公開WO94/11516及び米国特許第5,443,974号参照)と炭素15(PCT公開WO93/11245参照)で不飽和化する酵素をもつ。従って、動物の主要なポリ不飽和脂肪酸は食物及び/又はリノレン酸もしくはα−リノレン酸の不飽和化と伸長から誘導される。これらの問題に鑑み、これらの脂肪酸を天然に生産する種からPUFA合成に関与する遺伝子を単離し、商業的量の1種以上のPUFAを生産できるように改変可能な微生物、植物又は動物系でこれらの遺伝子を発現させることは非常に有益である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した最も重要な長鎖PUFAの1種はアラキドン酸(AA)である。AAは糸状菌に含まれており、肝臓や副腎等の哺乳動物組織からも精製できる。上述したように、ジホモ−γ−リノレン酸からのAA生産はΔ5−デサチュラーゼにより触媒される。EPAも重要な長鎖PUFAである。EPAは真菌類に含まれ、魚油にも含まれている。上述したように、EPAは(n−3)−エイコサテトラエン酸から生産され、Δ5−デサチュラーゼにより触媒される。上記に鑑み、Δ5−デサチュラーゼ及びΔ6−デサチュラーゼ酵素、これらの酵素をコードする各遺伝子、並びにこれらの酵素の組換え生産方法が明白に必要である。更に、天然濃度よりも高濃度のPUFAを含有する油類と、新規PUFAを高度に含有する油類も必要である。このような油類はΔ5−デサチュラーゼ及びΔ6−デサチュラーゼ遺伝子の単離と発現によってしか製造することができない。
【0006】
本明細書に引用する全米国特許、優先権文献及び刊行物はその内容全体を参考資料として本明細書に組込む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は配列番号13(図2)、配列番号19(図4)、配列番号28(図6)、配列番号30(図8)、配列番号32(図10)及び配列番号34(図14)を含むヌクレオチド配列の少なくとも約50%を含むか又はこれに相補的な単離ヌクレオチド配列又はフラグメントに関する。特に、単離ヌクレオチドは配列番号13、配列番号19、配列番号28、配列番号30、配列番号32又は配列番号34により表すことができる。これらの配列はポリ不飽和脂肪酸を基質として利用する機能的に活性なデサチュラーゼをコードすることができる。
【0008】
更に、本発明はデサチュラーゼ活性をもち、配列番号20、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35から構成される群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の一致度又は類似度をもつポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むか又はこれに相補的な単離ヌクレオチド配列又はフラグメントに関する。
【0009】
ヌクレオチド配列は例えばSaprolegnia diclina(配列番号13及び配列番号19)もしくはThraustochytrium aureum(配列番号28、配列番号30及び配列番号32)等の真菌類又はIsochrysis galbana(配列番号34)等の藻類から得られる。
【0010】
本発明は上記ヌクレオチド配列によりコードされる精製蛋白質又はポリペプチド(配列番号14(図3)、配列番号20(図5)、配列番号29(図7)、配列番号31(図9)、配列番号33(図11)及び配列番号35(図15))にも関する。
【0011】
更に、本発明は、炭素5又は炭素6のポリ不飽和脂肪酸を不飽和化し、上記精製蛋白質のアミノ酸配列(即ち配列番号14、配列番号20、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35)に少なくとも約50%のアミノ酸一致度又は類似度をもつ精製ポリペプチドにも関する。
【0012】
更に、本発明はデサチュラーゼ(即ちΔ5又はΔ6)の製造方法にも関する。本方法はa)配列番号19、配列番号28、配列番号13、配列番号30、配列番号32又は配列番号34を適宜含むヌクレオチド配列を単離する段階と、b)i)単離ヌクレオチド配列とこれに作動的に連結したii)プロモーター又は所定型の調節配列を含むベクターを構築する段階と、c)適宜Δ5−デサチュラーゼ又はΔ6−デサチュラーゼの発現に十分な時間及び条件下にベクターを宿主細胞に導入する段階を含む。宿主細胞は例えば真核細胞又は原核細胞とすることができる。特に、原核細胞は例えば大腸菌、藍色細菌又は枯草菌とすることができる。真核細胞は例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞又は真菌細胞(例えばSaccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Candida種、Lipomyces starkey、Yarrowia lipolytica、Kluyveromyces種、Hansenula種、Trichoderma種又はPichia種)とすることができる。
【0013】
更に、本発明はa)配列番号13、配列番号19、配列番号28、配列番号30、配列番号32又は配列番号34により表されるヌクレオチド配列と、b)これに作動的に連結したプロモーター又は調節配列を含むベクターにも関する。本発明はこのベクターを含む宿主細胞にも関する。宿主細胞は例えば真核細胞又は原核細胞とすることができる。利用可能な真核細胞及び原核細胞は上記に記載した通りである。
【0014】
更に、本発明は上記ベクターを含む植物細胞、植物又は植物組織であって、ベクターのヌクレオチド配列の発現の結果、植物細胞、植物又は植物組織により少なくとも1種のポリ不飽和脂肪酸が生産される前記植物細胞、植物又は植物組織にも関する。ポリ不飽和脂肪酸は例えばヌクレオチド配列がΔ5−又はΔ6−デサチュラーゼのいずれをコードするかに応じて例えばAA、EPA、GLA又はSTAから構成される群から選択することができる。本発明は上記植物細胞、植物又は植物組織により発現される1種以上の植物油又は植物酸にも関する。
【0015】
更に、本発明は上記ベクターを含むトランスジェニック植物であって、ベクターのヌクレオチド配列の発現の結果、トランスジェニック植物の種子でポリ不飽和脂肪酸が生産される前記トランスジェニック植物にも関する。
【0016】
更に、本発明は上記ベクターを含む哺乳動物細胞であって、例えばLA、ALA、DGLA及びETAから構成される群から選択される脂肪酸を含む培地で細胞を増殖させると、ベクターのヌクレオチド配列の発現の結果、AA、EPA、GLA及び/又はSTAの生産レベルが変化する前記哺乳動物細胞にも関する。
【0017】
本発明はプロモーター又は調節配列に作動的に連結したΔ5−デサチュラーゼ又はΔ6−デサチュラーゼをコードするDNA配列をそのゲノムに含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物に関することにも留意すべきである。DNA配列は配列番号13(Δ6)、配列番号19(Δ5)、配列番号28(Δ5)、配列番号30(Δ5)、配列番号32(Δ6)及び配列番号34(Δ5)により表すことができる。更に、本発明はトランスジェニック非ヒト哺乳動物により生産され、検出可能な濃度の少なくともΔ5−デサチュラーゼ又は少なくともΔ6−デサチュラーゼを適宜含む液体(例えば乳)にも関する。
【0018】
更に、本発明はポリ不飽和脂肪酸の製造方法(即ち「第1」方法)として、a)例えば配列番号19、配列番号28、配列番号30又は配列番号34により表されるヌクレオチド配列を単離する段階と、b)単離ヌクレオチド配列を含むベクターを構築する段階と、c)Δ5−デサチュラーゼ酵素の発現に十分な時間及び条件下にベクターを宿主細胞に導入する段階と、d)発現したヒトΔ5−デサチュラーゼ酵素を基質ポリ不飽和脂肪酸に暴露し、基質を産物ポリ不飽和脂肪酸に変換する段階を含む方法にも関する。夫々基質ポリ不飽和脂肪酸は例えばDGLA又は20:4n−3とすることができ、産物ポリ不飽和脂肪酸は例えばAA又はEPAとすることができる。本方法は更に産物ポリ不飽和脂肪酸をエロンガーゼ又はデサチュラーゼに暴露し、産物ポリ不飽和脂肪酸を別のポリ不飽和脂肪酸に変換する段階を含むことができる(即ち「第2」方法)。追加の段階を含むこの方法(即ち「第2」方法)では、夫々産物ポリ不飽和脂肪酸は例えばAA又はEPAとすることができ、「別の」ポリ不飽和脂肪酸はアドレン酸又は(n−3)−ドコサペンタエン酸とすることができる。追加の段階を含む方法は別のポリ不飽和脂肪酸を付加デサチュラーゼ又はエロンガーゼに暴露して別のポリ不飽和脂肪酸を最終ポリ不飽和脂肪酸に変換する段階を更に含むことができる(即ち「第3」方法)。最終ポリ不飽和脂肪酸は例えば(n−6)−ドコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸(DHA)酸とすることができる。
【0019】
更に、本発明はポリ不飽和脂肪酸の製造方法として、a)配列番号13又は配列番号33により表されるヌクレオチド配列を単離する段階と、b)単離ヌクレオチド配列を含むベクターを構築する段階と、c)Δ6−デサチュラーゼ酵素の発現に十分な時間及び条件下にベクターを宿主細胞に導入する段階と、d)発現したΔ6−デサチュラーゼ酵素を基質ポリ不飽和脂肪酸に暴露し、基質を産物ポリ不飽和脂肪酸に変換する段階を含む方法に関する。夫々基質ポリ不飽和脂肪酸は例えばLA又はALAとすることができ、産物ポリ不飽和脂肪酸は例えばGLA又はSTAとすることができる。本方法は産物ポリ不飽和脂肪酸をエロンガーゼ(又はデサチュラーゼ)に暴露し、産物ポリ不飽和脂肪酸を別のポリ不飽和脂肪酸に変換する段階を更に含むことができる。追加の段階を含むこの方法では、夫々産物ポリ不飽和脂肪酸は例えばGLA又はSTAとすることができ、「別の」ポリ不飽和脂肪酸はDGLA又はエイコサテトラエン酸(ETA)とすることができる。追加の段階を含む方法は別のポリ不飽和脂肪酸を付加デサチュラーゼ(又はエロンガーゼ)に暴露して別のポリ不飽和脂肪酸を最終ポリ不飽和脂肪酸に変換する段階を更に含むことができる。最終ポリ不飽和脂肪酸は例えばAA又はEPAとすることができる。
【0020】
本発明は上記方法により製造される産物ポリ不飽和脂肪酸、上記方法により製造される別のポリ不飽和脂肪酸及び上記方法により製造される最終ポリ不飽和脂肪酸から構成される群から選択される少なくとも1種のポリ不飽和脂肪酸を含む栄養組成物にも関する。産物ポリ不飽和脂肪酸はΔ5−又はΔ6−デサチュラーゼヌクレオチド配列のいずれを使用しているかに応じて例えばAA、EPA、GLA又はSTAであり得る。別のポリ不飽和脂肪酸は同様にΔ5−又はΔ6−デサチュラーゼヌクレオチド配列のいずれを使用しているかに応じて例えばアドレン酸、(n−3)−ドコサペンタエン酸、DGLA及びEPAであり得る。最終ポリ不飽和脂肪酸は同様にΔ5−又はΔ6−デサチュラーゼヌクレオチド配列のいずれを使用しているかに応じて例えば(n−6)−ドコサペンタエン酸、DHA、AA又はEPAであり得る。
【0021】
本発明は1)上記方法により製造される「産物」PUFA、上記方法により製造される「別の」PUFA及び上記方法により製造される「最終」PUFAから構成される群から選択される少なくとも1種のポリ不飽和脂肪酸(PUFA)と、2)医薬的に許容可能なキャリヤーを含む医薬組成物にも関する。
【0022】
更に、本発明は上記方法により製造される産物PUFA、上記方法により製造される別のPUFA及び上記方法により製造される最終PUFAから構成される群から選択される少なくとも1種のPUFAを含む動物飼料又は化粧品にも関する。これらのPUFAは上記に挙げた通りであり、図1に例示する。
【0023】
更に、本発明はポリ不飽和脂肪酸の摂取不全に起因する状態の予防又は治療方法として、予防又は治療を行うために十分な量の上記栄養組成物を患者に投与する方法にも関する。
【0024】
本明細書に記載する各ヌクレオチド及びアミノ酸配列は特定配列番号で指定していることにも留意すべきである。(添付の)配列表はこれらの各配列とその対応番号を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明はSaprolegnia diclinaに由来するΔ5−デサチュラーゼ遺伝子、Saprolegnia diclinaに由来するΔ6−デサチュラーゼ遺伝子、Thraustochytrium aureumに由来する2種のΔ5−デサチュラーゼ遺伝子及びIsochrysis galbanaに由来するΔ6−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド及び翻訳アミノ酸配列に関する。更に、本発明はこれらの遺伝子とこれらの遺伝子によりコードされる酵素の使用にも関する。例えば、前記遺伝子と対応する酵素は医薬組成物、栄養組成物及び他の有価製品に添加可能なポリ不飽和脂肪酸(例えばアラキドン酸、エイコサペンタエン酸及び/又はアドレン酸)の製造に使用することができる。
【0026】
Δ5−デサチュラーゼ遺伝子、Δ6−デサチュラーゼ遺伝子及びそれらにコードされる酵素
上述のように、本発明のΔ5−デサチュラーゼ遺伝子及びΔ6−デサチュラーゼ遺伝子によりコードされる酵素は夫々炭素数20及び18を上回る長さをもつ高度に不飽和のポリ不飽和脂肪酸の生産に不可欠である。単離Thraustochytrium aureum Δ5−デサチュラーゼ遺伝子(ATCC34304)のヌクレオチド配列を図6に示し、対応する精製蛋白質のアミノ酸配列を図7に示す。単離Saprolegnia diclina Δ5−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を図4に示し、対応する精製蛋白質のアミノ酸配列を図5に示す。単離Saprolegnia diclina Δ6−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を図2に示し、対応する精製蛋白質のアミノ酸配列を図3に示す。単離Thraustochytrium aureum(BICC7091)Δ5−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を図8に示し、対応する精製蛋白質のアミノ酸配列を図9に示す。単離Thraustochytrium aureum Δ6−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を図10に示し、対応する精製蛋白質のアミノ酸配列を図11に示す。最後に、単離Isochrysis galbana Δ5−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を図14に示し、対応する精製蛋白質のアミノ酸配列を図15に示す。
【0027】
本発明の遺伝子の重要性の1例として、単離Δ5−デサチュラーゼ遺伝子はDGLAをAAに変換し、又はエイコサテトラエン酸をEPAに変換する。AAは例えばΔ5−デサチュラーゼ遺伝子とそれによりコードされる酵素なしには合成することができない。本発明の単離Δ6−デサチュラーゼ遺伝子は例えばリノレン酸(18:2n−6)をγ−リノレン酸(GLA)に変換し、γ−リノレン酸(GLA)をステアリドン酸(STA)に変換する。
【0028】
本発明は本明細書に記載する配列番号19(即ちSaprolegnia diclinaのΔ5−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号13(即ちThraustochytrium aureumのΔ6−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号28(即ちThraustochytrium aureum(ATCC34304)のΔ5−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号30(即ちThraustochytrium aureum(BICC7091)のΔ5−デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号32(即ちThraustochytrium aureumのΔ6−デサチュラーゼ遺伝子)及び配列番号34(即ちIsochrysis galbanaのΔ5−デサチュラーゼ遺伝子)のヌクレオチド配列の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、更に好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%を含むか又はこれに相補的な(即ち配列一致度をもつ)ヌクレオチド配列(及びこれによりコードされる対応する蛋白質)にも関することに留意すべきである。(一致度百分率に関して50%〜100%の全整数も本発明の範囲に含むものとする。)このような配列はヒト起源及び他の非ヒト起源とすることができる(例えばC.elegans又はマウス)。
【0029】
更に、本発明は本発明のヌクレオチド配列(即ち配列番号13、配列番号19、配列番号28、配列番号30、配列番号32及び配列番号34)及び他の起源に由来し、上記相補性又は対応性をもつ配列のフラグメント及び誘導体にも関する。上記配列(即ち適宜Δ5−デサチュラーゼ活性又はΔ6−デサチュラーゼ活性をもつ配列)の機能的等価物も本発明に含まれる。
【0030】
本発明は炭素5位又は炭素6位でポリ不飽和脂肪酸を不飽和化し、上記ヌクレオチド配列によりコードされる上記蛋白質のアミノ酸配列(即ち配列番号14(図3)、配列番号20(図5)、配列番号29(図7)、配列番号31(図9)、配列番号33(図11)及び配列番号35(図15))に対して少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、更に好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸類似度又は一致度をもつ精製ポリペプチドにも関する。50〜100%の全整数の類似度又は一致度も本発明の範囲に含むものとする。
【0031】
「一致度」なる用語は特定比較窓又はセグメントにわたる2種の配列のヌクレオチド間の関連度を表す。即ち、一致度は2種のDNAセグメントの同一鎖(センス又はアンチセンス)間の同一、対応又は等価度として定義される。「配列一致度百分率」は2種の最適に整列させた配列を特定領域にわたって比較し、両者配列で塩基が一致する位置の数を測定して整合位置数を求め、このような位置数を比較するセグメントの合計位置数で割って100を掛けることにより計算される。最適配列整列はSmith & Waterman,Appl.Math.2:482(1981)のアルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci(USA)85:2444(1988)の方法及び関連アルゴリズムを実施するコンピュータープログラム(例えばClustal Macaw Pileup(http://cmgm.stanford.edu/biochem218/11Multiple.pdf;Higginsら,CABIOS.5L151−153(1989))、FASTDB(Interlligenetics)、BLAST(National Center for Biomedical Information;Altschulら,Nucleic Acids Research 25:3389−3402(1997))、PILEUP(Genetics Computer Group, Madison,WI)又はTGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,Madison,WI)により実施することができる。(米国特許第5,912,120号参照。)
本発明の趣旨では、「相補性」は2種のセグメント間の関連度として定義される。これは一方のDNAセグメントのセンス鎖が他方のDNAセグメントのアンチセンス鎖と適当な条件下でハイブリ大豆して二重螺旋を形成する能力を測定することにより決定される。二重螺旋では一方の鎖にアデニンが現れ、他方の鎖にチミンが現れる。同様に、一方の鎖にグアニンが存在する場合には、他方にシトシンが存在する。2種のDNAセグメントのヌクレオチド配列間の関連度が大きいほど、2種のDNAセグメントの鎖間にハイブリッドデュプレクスを形成する能力は高い。
【0032】
2種のアミノ酸配列間の「類似度」は両者配列における一連の同一な保存アミノ酸残基の存在として定義される。2種のアミノ酸配列間の類似度が高いほど、2種の配列の対応、同一又は等価度は高い。(2種のアミノ酸配列間の「一致度」は両者配列における一連の厳密に同一又は不変のアミノ酸残基の存在として定義される。)「相補性」、「一致度」及び「類似度」の定義は当業者に周知である。
【0033】
「〜によりコードされる」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を意味し、ポリペプチド配列又はその一部は核酸配列によりコードされるポリペプチドからのアミノ酸を少なくとも3個の、より好ましくは少なくとも8個、更に好ましくは少なくとも15個含むアミノ酸配列を含む。
【0034】
本発明はPUFAデサチュラーゼ活性をもち、配列番号13(図2)、配列番号19(図4)、配列番号28(図6)、配列番号30(図8)、配列番号32(図10)又は配列番号34(図14)を含むヌクレオチド配列を含むか又はこれに相補的なヌクレオチド配列をもつ核酸に並のストリンジェント条件下でハイブリダイズ可能な単離ヌクレオチド配列にも関する。核酸分子の1本鎖形が適当な温度及びイオン強度条件下で別の核酸分子とアニールできるときに核酸分子は別の核酸分子と「ハイブリダイズ可能」である(Sambrookら,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York参照)。温度及びイオン強度条件はハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。「ハイブリダイゼーション」には2種の核酸が相補的配列を含んでいることが必要である。他方、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーによっては塩基間にミスマッチが生じる場合がある。核酸をハイブリダイズするのに適したストリンジェンシーは核酸の長さと相補度に依存する。このような変数は当業者に周知である。より具体的には、2種のヌクレオチド配列間の類似度又は相同度が高いほどこれらの配列をもつ核酸のハイブリッドのTm値は大きい。100ヌクレオチド長を越えるハイブリッドについては、Tmの計算式が導かれている(Sambrookら,前出参照)。短い核酸とのハイブリダイゼーションではミスマッチの位置が重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrookら,前出参照)。
【0035】
本明細書で使用する「単離核酸フラグメント又は配列」とは場合により合成、非天然又は改変ヌクレオチド塩基を含む1本鎖又は2本鎖のRNA又はDNAのポリマーである。DNAポリマー形態の単離核酸フラグメントはcDNA、ゲノムDNA又は合成DNAの1個以上のセグメントから構成され得る(特定ポリヌクレオチドの「フラグメント」とは特定ヌクレオチド配列のある領域に同一又は相補的な少なくとも約6ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約8ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド、更に好ましくは少なくとも約15ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも約25ヌクレオチドの連続配列を含むポリヌクレオチド配列を意味する。)(通常はその5’−一リン酸形で存在する)ヌクレオチドはその1文字表記により次のように表す。「A」はアデニル酸又はデオキシアデニル酸(夫々RNA又はDNA)、「C」はシチジル酸又はデオキシシチジル酸、「G」はグアニル酸又はデオキシグアニル酸、「U」はウリジル酸、「T」はデオキシチミジル酸、「R」はプリン(A又はG)、「Y」はピリミジン(C又はT)、「K」はG又はT、「H」はA又はC又はT、「I」はイノシン、「N」は任意ヌクレオチドを表す。
【0036】
「機能的に等価であるフラグメント又はサブフラグメント」及び「機能的に等価なフラグメント又はサブフラグメント」なる用語は本明細書では同義に使用する。これらの用語はフラグメント又はサブフラグメントが活性酵素をコードするか否かに関係なく遺伝子発現を変更又は所定表現型を発現する能力を維持する単離核酸フラグメントの一部又はサブ配列を意味する。例えば、フラグメント又はサブフラグメントをキメラ構築物の設計に使用し、形質転換植物で所定表現型を発現させることができる。キメラ構築物は活性酵素をコードするか否かに関係なく植物プロモーター配列に対して適当な方向で核酸フラグメント又はサブフラグメントを連結することにより共抑制又はアンチセンスで使用するように設計することができる。
【0037】
「相同度」、「相同」、「実質的に類似|及び「実質的に対応」等の用語は本明細書では同義に使用する。これらの用語は1個以上のヌクレオチド塩基が変異しても遺伝子発現を媒介又は所定表現型を発現する核酸フラグメントが能力が変わらないことを意味する。これらの用語は当初の未改変フラグメントに対して得られる核酸フラグメントの機能的性質を実質に変えない本発明の核酸フラグメントの変異(例えば1個以上のヌクレオチドの欠失又は挿入)を意味する。従って、当業者に自明の通り、本発明は特定の例示配列以外の配列にも関する。
【0038】
「遺伝子」とはコーディング配列に先行する調節配列(5’非コーディング配列)と後続する調節配列(3’非コーディング配列)を含めた特定蛋白質を発現する核酸フラグメントを意味する。
【0039】
「天然遺伝子」とはそれ自体の調節配列と共に天然に存在する遺伝子を意味する。これに対して「キメラ構築物」とは一般には天然に共存しない核酸フラグメントの組み合わせを意味する。従って、キメラ構築物は異なる起源に由来する調節配列とコーディング配列を含むか、又は同一起源に由来するが、通常天然に存在するとは異なる方法で配置された調節配列とコーディング配列を含むことができる(「単離」なる用語は配列をその天然環境から取出すことを意味する。)
「外来」遺伝子とは宿主生物に通常存在しないが、遺伝子導入により宿主生物に導入された遺伝子を意味する。外来遺伝子は非天然生物又はキメラ構築物に挿入した天然遺伝子を含むことができる。「トランスジーン」とは形質転換法によりゲノムに導入した遺伝子である。
【0040】
「コーディング配列」とは特定アミノ酸配列をコードするDNA配列を意味する。「調節配列」とはコーディング配列の上流(5’非コーディング配列)、内部、又は下流(3’非コーディング配列)に配置され、関連コーディング配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性又は翻訳に作用するヌクレオチド配列を意味する。調節配列としてはプロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン及びポリアデニル化認識配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「プロモーター」とはコーディング配列又は機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を意味する。プロモーターは近位及び遠位上流エレメントから構成され、これらのエレメントはエンハンサーと呼ぶことが多い。従って、「エンハンサー」はプロモーター活性を刺激することができ、プロモーターの固有エレメント又はプロモーターのレベルもしくは組織特異性を増強するために挿入される異種エレメントであり得る。プロモーター配列は遺伝子の転写部分の内部に配置してもよいし、及び/又は転写配列の下流に配列してもよい。プロモーターはその全体が天然遺伝子に由来するものでもよいし、天然に存在する異なるプロモーターに由来する異なるエレメントから構成してもよいし、合成DNAセグメントを含むものでもよい。当業者に自明の通り、種々のプロモーターは種々の組織もしくは細胞型で、又は種々の発生段階で、又は種々の環境条件に応答して遺伝子の発現を誘導することができる。殆どの細胞型で殆どの場合に遺伝子を発現させるプロモーターを一般に「構成的プロモーター」と言う。植物細胞で有用な種々の型の新規プロモーターが絶えず発見されつつあり、OkamuroとGoldbert,(1989)Biochemistry of Plants 15:1−82に多数の例が記載されている。更に、殆どの場合に調節配列の厳密な境界が完全に決定されているので、所定変形のDNAフラグメントが同一プロモーター活性をもつこともあると考えられる。
【0042】
「イントロン」は蛋白質配列の一部をコードしない遺伝子の介在配列である。従って、このような配列はRNAに転写されるが、その後、切出されるので翻訳されない。この用語は切出されたRNA配列にも使用される。「エキソン」は転写される遺伝子の配列の一部であり、遺伝子から誘導される成熟メッセンジャーRNAに存在するが、必ずしも最終遺伝子産物をコードする配列の一部でなくてもよい。
【0043】
「翻訳リーダー配列」とは遺伝子のプロモーター配列とコーディング配列の間に配置されたDNA配列を意味する。翻訳リーダー配列は翻訳開始配列の上流の完全にプロセスされたmRNAに存在する。翻訳リーダー配列は一次転写産物からmRNAへのプロセシング、mRNA安定性又は翻訳効率に作用し得る。翻訳リーダー配列の例は文献に記載されている(Turner,R.とFoster,G.D.(1995)Molecular Biotechnology 3:225)。
【0044】
「3’非コーディング配列」とはコーディング配列の下流に配置されたDNA配列を意味し、ポリアデニル化認識配列やmRNAプロセシング又は遺伝子発現に作用することが可能な調節配列をコードする他の配列が挙げられる。ポリアデニル化シグナルは一般にmRNA前駆物質の3’末端へのポリアデニル酸領域の付加に作用することを特徴とする。種々の3’非コーディング配列の使用がIngelbrechtら,(1989)Plant Cell 1:671−680に例示されている。
【0045】
「RNA転写産物」とはDNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写により得られる産物を意味する。RNA転写産物がDNA配列の完全な相補的コピーであるときには一次転写産物と言うが、一次産物の転写後プロセシングにより誘導されるRNA配列でもよく、その場合には成熟RNAと言う。「メッセンジャーRNA(mRNA)」とはイントロンをもたないRNAであり、細胞により蛋白質に翻訳できるものを意味する。「cDNA」とはmRNA鋳型に相補的であり、逆転写酵素を使用してこの鋳型から合成されるDNAを意味する。cDNAは1本鎖でもよいし、DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメントを使用して2本鎖に変換してもよい。「センス」RNAとはmRNAを含み、細胞内又はin vitroで蛋白質に翻訳することができるRNA転写産物を意味する。「アンチセンスRNA」とは標的一次転写産物又はmRNAの全部又は一部に相補的であり、標的遺伝子の発現を阻止するRNA転写産物を意味する(米国特許第5,107,065号)。アンチセンスRNAは特異的遺伝子転写産物のどの部分と相補的でもよく、即ち、5’非コーディング配列、3’非コーディング配列、イントロン、又はコーディング配列のいずれでもよい。「機能的RNA」とはアンチセンスRNA、リボザイムRNA又は翻訳できないが、細胞プロセスに作用する他のRNAを意味する。「相補体」及び「逆相補体」なる用語は本明細書ではmRNA転写産物に関して同義に使用し、メッセージのアンチセンスRNAを意味する。
【0046】
「内因性RNA」なる用語は天然又は非天然即ち組換え手段、突然変異誘発等により導入されるかを問わずに本発明の組換え構築物による形質転換前に宿主のゲノムに存在する任意核酸配列によりコードされる任意RNAを意味する。
【0047】
「非天然」なる用語は通常天然に存在するものと一致しない人工を意味する。
【0048】
「作動的に連結」なる用語は一方の核酸配列の機能が他方により調節されるように単一核酸フラグメントで核酸配列を結合することを意味する。例えば、プロモーターがコーディング配列の発現を調節できるとき(即ちコーディング配列がプロモーターの転写制御下にあるとき)にプロモーターはコーディング配列に作動的に連結している。コーディング配列はセンス又はアンチセンス方向のいずれで調節配列に作動的に連結してもよい。別の例では、本発明の相補的RNA領域を標的mRNAの5’又は標的mRNAの3’又は標的mRNAの内部に直接又は間接的に作動的に連結してもよいし、第1の相補領域を標的mRNAの5’に作動的に連結し、その相補体を3’に作動的に連結してもよい。
【0049】
本明細書で使用する「発現」なる用語は機能的終産物の生産を意味する。遺伝子の発現には遺伝子の転写とmRNAから前駆物質又は成熟蛋白質への翻訳が必要である。「アンチセンス阻害」とは標的蛋白質の発現を抑制することが可能なアンチセンスRNA転写産物の生産を意味する。「共抑制」とは同一又は実質的に類似する外来又は内因性遺伝子の発現を抑制することが可能なセンスRNA転写産物の生産を意味する(米国特許第5,231,020号)。
【0050】
「成熟」蛋白質とは翻訳後プロセシングしたポリペプチド、即ち一次翻訳産物に存在するプレ又はプロペブチドを除去したポリペプチドを意味する。「前駆物質」蛋白質とはmRNAの翻訳の一次産物、即ちプレ及びプロペブチドがまだ存在するものを意味する。プレ及びプレペブチドとしては細胞内局在シグナルが挙げられるが、これに限定されない。
【0051】
「安定な形質転換」とは核ゲノムとオルガネラゲノムの両者を含む宿主生物のゲノムに核酸フラグメントを導入し、遺伝的に安定した遺伝を行うことを意味する。これに対して、「一過的形質転換」とは核酸フラグメントを宿主生物の核又はDNA含有オルガネラに導入し、組込み又は安定な遺伝なしに遺伝子発現させることを意味する。形質転換核酸フラグメントを含む宿主生物を「トランスジェニック」生物と言う。コメ、トウモロコシ及び他の単子葉植物の好ましい細胞形質転換法は粒子加速又は「遺伝子銃」形質転換技術(Kleinら,(1987)Nature(London)327:70−73;米国特許第4,945,050号)、又はトランスジーンを含む適当なTiプラスミドを使用するアグロバクテリウム法(Ishida Y.ら,1996,Nature Biotech.14:745−750)の使用である。本明細書で使用する「形質転換」なる用語は安定な形質転換と一過的形質転換の両者を意味する。
【0052】
本明細書で使用する標準組換えDNA及び分子クローニング技術は当分野で周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor,1989(以下、「Sambrook」と言う)により詳細に記載されている。
【0053】
「組換え」なる用語は例えば化学合成又は遺伝子工学技術による核酸の単離セグメントの操作により、2つの分離配列セグメントの人工的組合せを意味する。
【0054】
「PCR」又は「ポリメラーゼ連鎖反応」は大量の特定DNAセグメントの合成技術であり、一連の反復サイクルから構成される(Perkin Elmer Cetus Instruments,Norwalk,CT)。一般に、2本鎖DNAを熱変性し、標的セグメントの3’境界に相補的な2種のプライマーを低温でアニールした後、中温で伸長する。これらの連続3段階1組をサイクルと言う。
【0055】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は短時間で鋳型の反復複製によりDNAを数百万倍に増幅するために使用される強力な技術である。(Mullisら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263−273(1986);Erlichら,ヨーロッパ特許出願第50,424号;ヨーロッパ特許出願第84,796号;ヨーロッパ特許出願第258,017号;ヨーロッパ特許出願第237,362号;Mullis,ヨーロッパ特許出願第201,184号,Mullisら,米国特許第4,683,202号;Erlich,米国特許第4,582,788号;及びSaikiら,米国特許第4,683,194号)。この方法はin vitro合成した特定オリゴヌクレオチドの組合せを利用してDNA合成を開始する。プライマーの設計は分析したいDNAの配列に依存する。この方法は鋳型を高温で溶融し、プライマーを鋳型内の相補的配列にアニールさせた後、DNAポリメラーゼで鋳型を複製するサイクルを多数回(通常は20〜50回)行うことにより実施される。
【0056】
PCR反応産物はアガロースゲルで分離後に臭化エチジウム染色とUV透照により分析される。あるいは、放射性dNTPをPCRに加えて産物にラベルを加えてもよい。この場合には、ゲルをX線フィルムに露光することによりPCR産物を可視化する。放射性標識PCR産物には個々の増幅産物レベルを定量できるという利点もある。
【0057】
本明細書では「組換え構築物」、「発現構築物」及び「組換え発現構築物」なる用語を同義に使用する。これらの用語は当業者に周知の標準方法を使用して細胞のゲノムに挿入することができる遺伝材料の機能単位を意味する。このような構築物をそのまま使用してもよいし、ベクターに組込んで使用してもよい。ベクターを使用する場合には、ベクターの選択は当業者に周知のように宿主植物を形質転換するために使用する方法に依存する。例えば、プラスミドベクターを使用することができる。本発明の単離核酸フラグメントのいずれかを含む宿主細胞を有効に形質転換し、選択し、増殖させるためにベクター上に配置する必要がある遺伝要素は当業者に周知である。個々の各種形質転換イベントの結果、各種レベル及びパターンの発現が生じる(Jonesら,(1985)EMBO J.4:2411−2418;De Almeidaら,(1989)Mol.Gen.Genetics 218:78−86)ので、所望発現レベル及びパターンを示す系列を得るためには多重イベントをスクリーニングしなければならないことも当業者に自明である。このようなスクリーニングはDNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、蛋白質発現のウェスタン分析、又は表現型分析により実施することができる。
【0058】
Δ5−デサチュラーゼ酵素とΔ6−デサチュラーゼ酵素の製造
デサチュラーゼ酵素のいずれか1種をコードする遺伝子を単離したら、その後、ベクター又は構築物を使用することにより原核又は真核宿主細胞に導入することができる。ベクター(例えばバクテリオファージ、コスミド又はプラスミド)はΔ5−デサチュラーゼ酵素又はΔ6−デサチュラーゼ酵素のいずれかをコードするヌクレオチド配列と、宿主細胞で機能的であり且つヌクレオチド配列によりコードされるデサチュラーゼの発現を誘発することが可能な任意調節配列(例えばプロモーター)を含むことができる。調節配列はヌクレオチド配列に作動的に関連又は作動的に連結している。(上述のように、調節配列がコーディング配列の転写又は発現に作用する場合に調節配列はコーディング配列に「作動的に連結している」と言う。)利用可能なプロモーターとしては例えばアルコールデヒドロゲナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグルコイソメラーゼ、ホスホグリセル酸キナーゼ、酸ホスファターゼ、T7、TPI、ラクターゼ、メタロチオネイン、サイトメロガロウイルス極初期、ホエイ酸蛋白質、グルコアミラーゼをコードする遺伝子に由来するものや、ガラクトースの存在下に活性化されるプロモーター(例えばGAL1及びGAL10)が挙げられる。更に、他の蛋白質、オリゴ糖、脂質等をコードするヌクレオチド配列と、ポリアデニル化シグナル(例えばSV−40T−抗原、オボアルブミン又はウシ成長ホルモンのポリAシグナル)等の他の調節配列もベクターに配置してもよい。構築物に配置する配列の選択は所望発現産物と宿主細胞の種類に依存する。
【0059】
上述のように、ベクターを構築したら、次に例えばトランスフェクション、形質転換及びエレクトロポレーション等の当業者に公知の方法により選択宿主細胞に導入することができる(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Vol.1−3,Sambrookら編,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)参照)。その後、遺伝子の発現を可能にする適当な条件下で宿主細胞を培養して所望PUFAを生産させた後、回収し、精製する。
【0060】
利用可能な原核宿主細胞の例としては例えば大腸菌、枯草菌及びシアノバクテリア(例えばSpirulina種、即ち藍藻)等の細菌類が挙げられる。利用可能な真核宿主細胞の例としては例えば哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞(例えばSaccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Lipomyces starkey、Candida種(例えばYarrowia(Candida) lipolytica)、Kluyveromyces種、Pichia種、Trichoderma種又はHansenula種)、又は真菌細胞(例えば糸状菌細胞、例えばAspergillus、Neurospora及びPenicillium)が挙げられる。Saccharomyces cerevisiae(パン酵母)細胞を利用するのが好ましい。
【0061】
宿主細胞での発現は一過的又は安定的に行うことができる。一過的発現は導入構築物が宿主細胞で機能的な発現シグナルを含むが、複製しないので宿主細胞に殆ど組込まれないか又は宿主細胞が増殖していない場合に生じ得る。一過的発現は目的遺伝子に作動的に連結した調節プロモーターの活性を誘導することによっても実施できるが、このような誘導系は基底発現レベルが低いことが多い。安定的発現は宿主ゲノムに組込むことができるか又は宿主細胞で自律複製する構築物を導入することにより達成することができる。発現構築物に配置するか又は発現構築物をトランスフェクトする選択マーカーを使用して目的遺伝子の安定的発現を選択した後に、マーカーを発現する細胞を選択することができる。安定的発現が組込みの結果である場合には、構築物の組込み部位は宿主ゲノム内でランダムでもよいし、宿主遺伝子部位との組換えをターゲットするために十分な宿主ゲノムとの相同領域を含む構築物を使用してターゲットしてもよい。内在部位に構築物をターゲットする場合には、転写及び翻訳調節領域の全部又は一部を内在部位により提供することができる。
【0062】
トランスジェニック哺乳動物を使用して目的酵素(即ちΔ5−デサチュラーゼの1種以上、Δ6−デサチュラーゼの1種以上、又はその組合せ)を発現させ、最終的に目的PUFAを発現させることもできる。より具体的に言うと、上記構築物を作出したら、胚の前核に挿入すればよい。その後、胚をレシピエント雌に移植する。あるいは、核導入法も利用できる(Schniekeら,Science 278:2130−2133(1977))。その後、妊娠と出産が可能である(例えば米国特許第5,750,176号及び米国特許第5,700,671号参照)。その後、子孫からの乳汁、組織又は他の体液試料は非トランスジェニック動物に通常検出される濃度とは異なる濃度のPUFAを含有しているはずである。後続世代をモニターし、変化又は増加濃度のPUFAが生産されているかどうかを調べ、従って所望デサチュラーゼ酵素をコードする遺伝子がそのゲノムが組込まれているかどうかを調べる。宿主として利用する哺乳動物は例えばマウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ及びウシから構成される群から選択することができる。但し、目的酵素をコードするDNAをそのゲノムに組込む能力がある限り任意哺乳動物を使用することができる。
【0063】
デサチュラーゼポリペプチドを発現させるには、デサチュラーゼポリペプチドをコードするDNAに機能的転写及び翻訳開始及び終結領域を作動的に連結する。転写及び翻訳開始及び終結領域は発現させようとするDNA、所望系で発現できることが知られているか又はその可能性がある遺伝子、発現ベクター、化学合成、又は宿主細胞における内在部位から等の種々の非排他的起源に由来する。植物組織及び/又は植物部分における発現は特に組織又は部分が種子、葉、果実、花、根等の早期回収されるものである場合にある程度の効率を示す。米国特許第5,463,174号、4,943,674号、5,106,739号、5,175,095号、5,420,034号、5,188,958号及び5,589,379号に記載されているような特定調節配列を利用することにより植物でその位置に発現をターゲットすることができる。あるいは、発現される蛋白質は直接又は更に改変後に宿主植物から液体フラクションに組込むことができる産物を生産する酵素でもよい。デサチュラーゼ遺伝子又はアンチセンスデサチュラーゼ転写産物が発現すると、植物部分及び/又は植物組織に含まれる特定PUFA又はその誘導体の濃度が変化し得る。デサチュラーゼポリペプチドコーディング領域を単独又は他の遺伝子と共に発現させ、より高濃度の所望PUFAを含有するか又はPUFA組成が人乳により近似する組織及び/又は植物部分を生産することもできる(Prietoら,PCT公開WO95/24494)。終結領域は開始領域を得た遺伝子の3’領域又は別の遺伝子に由来するものとすることができる。多数の終結領域が同一及び異なる属及び種から種々の宿主で満足できるとして知られており、見出されている。終結領域は特定性質よりもむしろ便宜上から選択するのが一般的である。
【0064】
上述のように、植物(例えばGlycine max(大豆)又はBrassica napus(キャノーラ))又は植物組織を夫々宿主又は宿主細胞として利用してデサチュラーゼ酵素を発現させ、ポリ不飽和脂肪酸の生産に利用してもよい。より具体的に言うと、所望PUFAを種子で発現させることができる。種子油の分離方法は当分野で公知である。即ち、PUFA源の提供に加え、デサチュラーゼ遺伝子と恐らく他のデサチュラーゼ遺伝子及びエロンガーゼ遺伝子の発現により種子油成分を操作すると、栄養組成物、医薬組成物、動物飼料及び化粧品に添加可能な種子油を提供することができる。この場合にも、プロモーターに作動的に連結したデサチュラーゼをコードするDNA配列を含むベクターをデサチュラーゼ遺伝子の発現に十分な時間と条件下に植物組織又は植物に導入する。ベクターは更に他の酵素(例えばΔ4−デサチュラーゼ、エロンガーゼ、Δ12−デサチュラーゼ、Δ15−デサチュラーゼ、Δ17−デサチュラーゼ及び/又はΔ19−デサチュラーゼ)をコードする1種以上の遺伝子も含んでいてもよい。酵素が作用する該当基質(例えばDGLA(Δ5−デサチュラーゼの場合)、ALA(Δ6−デサチュラーゼの場合)等)を植物組織又は植物で生産してもよいし、このような基質を生産する酵素をコードするベクターを植物組織、植物細胞又は植物に導入してもよい。更に、適当な酵素を発現する植物組織に基質を噴霧してもよい。これらの種々の技術を使用して、植物細胞、植物組織又は植物の使用によりPUFA(例えばn−6不飽和脂肪酸(例えばAA)又はn−3脂肪酸(例えばEPA又はSTA))を生産することもできる。本発明は更に上記ベクターを含むトランスジェニック植物として、ベクターのヌクレオチド配列の発現の結果として例えばトランスジェニック植物の種子でポリ不飽和脂肪酸を生産する植物にも関することにも留意すべきである。
【0065】
単一植物プロトプラスト形質転換体又は種々の形質転換外植片から植物を再生、発生及び培養することも当分野で周知である(WeissbachとWeissbach,In:Methods for Plant Molecular Biology,(Eds.),Academic Press,Inc.San Diego,CA,(1988))。この再生及び増殖法は一般に形質転換細胞を選択する段階と、通常の胚発生〜挿し木苗段階で個体化細胞を培養する段階を含む。トランスジェニック胚及び種子も同様に再生させる。得られたトランスジェニック挿し木苗をその後、土壌等の適当な植物成長媒質に植え付ける。
【0066】
目的蛋白質をコードする外来外因性遺伝子を含む植物の発生又は再生は当分野で周知である。再生した植物を自家受粉させて同型トランスジェニック植物を提供することが好ましい。あるいは。再生植物から得た花粉を栽培学的に重要な系列の種子成長植物と交配する。逆に言うと、これらの重要系列の植物からの花粉を使用して再生植物に受粉させる。当業者に周知の方法を使用して所望ポリペプチドを含む本発明のトランスジェニック植物を栽培する。
【0067】
植物組織から植物を再生させる方法は種々のものがある。特定再生方法は出発植物組織と再生させようとする特定植物種によって異なる
主にAgrobacterium Tumefaciensを使用して双子葉植物を形質転換し、トランスジェニック植物を得る方法がワタ(米国特許第5,004,863号、米国特許第5,159,135号、米国特許第5,518,908号)、大豆(米国特許第5,569,834号、米国特許第5,416,011号、McCabeら,BiolTechnology6:923(1988),Christouら,Plant Physiol.87:671−674(1988))、アブラナ属(米国特許第5,463,174号)、落花生(Chengら,Plant Cell Rep.15:653−657(1996),McKentlyら,Plant Cell Rep.14:699−703(1995))、パパイヤ及びエンドウ(Grantら,Plant Cell Rep.15:254−258,(1995))について報告されている。
【0068】
エレクトロポレーション、粒子衝撃及びAgrobacteriumを使用する単子葉植物の形質転換も報告されている。形質転換と植物再生はアスパラガス(Bytebierら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)84:5354,(1987))、オオムギ(WanとLemaux,Plant Physiol 104:37(1994))、トウモロコシ(Rhodesら,Science 240:204(1988),Bordon−Kammら,Plant Cell 2:603−618(1990),Frommら,BiolTechnology 8:833(1990),Kozielら,BiolTechnology 11;194,(1993),Armstrongら,Crop Science 35:550−557(1995))、オート麦(Somersら,BiolTechnology 10:1589(1992))、オーチャードグラス(Hornら,Plant Cell Rep.7:469(1986))、コメ(Toriyamaら,TheorAppl.Genet.205:34,(1986);Partら,Plant Mol.Biol.32:1135−1148,(1996);Abediniaら,Aust.J.Plant Physiol.24:133−141(1997);ZhangとWu,Theor.Appl.Genet.76:835(1988);Zhangら,Plant Cell Re.7:379,(1988);BattrawとHall,Plant Sci.86:191−202(1992);Christouら,Bio/Technology 9:957(1991))、ライ麦(De la Penaら,Nature 325:274(1987))、サトウキビ(BowerとBirch,Plant J.2:409(1992))、ヒロハノウシノケグサ(Wangら,BiolTechnologt 10:691(1992);米国特許第5,631,152号)で達成されている。
【0069】
クローニングした核酸構築物の一過的発現に基づく遺伝子発現アッセイはポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション又は粒子衝撃により核酸分子を植物細胞に導入することにより開発されている(Marcotteら,Nature 335:454−457(1988);Marcotteら,Plant Cell 1:523−532(1989);McCartyら,Cell 66:895−905(1991);Hattoriら,Genes Dev.6:609−618(1992);Goffら,EMBO J.9:2517−2522(1990))。
【0070】
一過的発現系を使用して遺伝子構築物を機能的に分析することができる(一般にMaligaら,Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor Press(1995))。当然のことながら、本発明の核酸分子の任意のものをベクター、プロモーター、エンハンサー等の他の遺伝子エレメントと共に永久的又は一過的に植物細胞に導入できる。
【0071】
上記方法に加え、巨大分子(例えばDNA分子、プラスミド等)の構築、操作及び単離、組換え生物の作成並びにクローンのスクリーニングと単離に関する特定条件及び手順を記載した標準資料は当業者に周知である(例えばSambrookら,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1989);Maligaら,Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor Press(1995);Birrenら,Genome Analysis:Detecting Genes,1,Cold Spring Harbor,New York(1998);Birrenら,Genome Analysis:Analyzing DNA,2,Cold Spring Harbor,New York(1998);Plant Molecular Biology:A Laboratory Manual,Clark編,Springer,New York(1997))。
【0072】
天然又は組換えにより宿主細胞により生産され得る基質と、後から宿主細胞に導入するベクターに存在するDNA配列によりコードされ得る酵素を図1に示す。
【0073】
上記に鑑み、本発明はデサチュラーゼ酵素(即ちΔ5又はΔ6)の製造方法として、1)デサチュラーゼ酵素をコードする遺伝子のヌクレオチド配列を単離する段階と、2)前記ヌクレオチド配列を含むベクターを構築する段階と、3)デサチュラーゼ酵素の生産に十分な時間及び条件で前記ベクターを宿主細胞に導入する段階を含む方法に関する。
【0074】
本発明はポリ不飽和脂肪酸の製造方法として、デサチュラーゼが酸をポリ不飽和脂肪酸に変換するように酸を酵素に暴露する段階を含む方法にも関する。例えば20:3n−6をΔ5−デサチュラーゼ酵素に暴露すると、AAに変換される。その後、AAをエロンガーゼに暴露し、AAをアドレン酸(即ち22:4n−6)に伸長する。あるいは、Δ5−デサチュラーゼを利用して20:4n−3を20:5n−3に変換してからエロンガーゼに暴露して(n−3)−ドコサペンタエン酸に変換してもよい。その後、Δ4−デサチュラーゼを使用することにより(n−3)−ドコサペンタエン酸をDHAに変換することができる。即ち、Δ5−デサチュラーゼは特定有効目的に使用可能なポリ不飽和脂肪酸の製造に使用することができる。
【0075】
Δ6−デサチュラーゼの役割については、酵素が酸をGLAに変換するようにリノレン酸を酵素に暴露することができる。その後、エロンガーゼを使用してGLAをDGLAに変換することができる。その後、DGLAをΔ5−デサチュラーゼに暴露することによりDGLAをAAに変換することができる。別例として、ALAをSTAに変換するためにはALAをΔ6−デサチュラーゼに暴露することができる。その後、エロンガーゼを使用することによりSTAを20:4n−3に変換することができる。その後、20:4n−3をΔ5−デサチュラーゼに暴露することによりEPAに変換することができる。即ち、Δ6−デサチュラーゼは有利な性質をもつPUFAの製造や、他のPUFAの製造に使用することができる。
【0076】
Δ5−デサチュラーゼ遺伝子、Δ6−デサチュラーゼ遺伝子、及びこれらの遺伝子によりコードされる酵素の使用
上述のように、単離デサチュラーゼ遺伝子とこれらの遺伝子によりコードされるデサチュラーゼ酵素は多くの用途がある。例えば、遺伝子と対応する酵素はポリ不飽和脂肪酸の製造に間接又は直接的に使用することができ、例えば、Δ5−デサチュラーゼはAA、アドレン酸又はEPAの製造に使用することができる。Δ6−デサチュラーゼはGLA、DGLA、STA又は20:4n−3の製造に間接又は直接的に使用することができる。(「直接」とは酵素が酸を組成物で利用する別の酸に直接変換する状況(例えばDGLAからAAへの変換)を意味する。「間接」とは酸がデサチュラーゼにより別の酸(即ち中間経路)に変換(例えばDGLAからAA)された後、後者酸が非デサチュラーゼ酵素の使用(例えばエロンガーゼによりAAからアドレン酸)又は別のデサチュラーゼ酵素の使用(例えばΔ17−デサチュラーゼによりAAからEPA)に変換される状況を意味する)。これらのポリ不飽和脂肪酸(即ちデサチュラーゼ酵素の活性により直接又は間接的に製造されたポリ不飽和脂肪酸)は例えば栄養組成物、医薬組成物、化粧品及び動物飼料に添加することができ、これらのいずれも本発明に含まれる。これらの使用について以下に詳述する。
【0077】
栄養組成物
本発明は栄養組成物を含む。このような組成物は本発明の目的では体内に取込まれると、(a)組織を強化又はエネルギーを供給し、及び/又は(b)十分な栄養状態又は代謝機能を維持、回復又は補助するにように作用するヒト消費用(胃又は腸消費用を含む)任意食品又は調製物を含む。
【0078】
本発明の栄養組成物は本発明によるデサチュラーゼ遺伝子の使用により直接又は間接的に製造された少なくとも1種の油又は酸を含み、固体形態でも液体形態でもよい。更に、組成物は特定用途に必要な量の食用多量養素、ビタミン及びミネラルを加えてもよい。このような成分の量は組成物を健常乳児、幼児又は成人に使用するのかあるいは所定代謝状態(例えば代謝障害)を伴う等の特殊な要求のあるものに使用するのかによって広い範囲をとる。
【0079】
組成物に添加でかる多量養素の例としては食用脂肪、炭水化物及び蛋白質が挙げられるが、これらに限定されない。このような食用脂肪の例としてはヤシ油、大豆油並びにモノ及びジグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。このような炭水化物の例としては蔗糖、食用乳糖及び加水分解澱粉が挙げられるが、これらに限定されない。更に、本発明の栄養組成物で利用可能な蛋白質の例としては大豆蛋白質、電気透析ホエイ、電気透析脱脂乳、ホエイ、又はこれらの蛋白質の加水分解物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
ビタミンとミネラルとしては、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩化物、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素、並びにビタミンA、E、D、C及びE複合体を本発明の栄養組成物に添加できる。
【0081】
本発明の栄養組成物で利用する成分は半精製又は精製物に由来する。半精製又は精製とは、天然材料に精製又は合成により製造した材料を意味する。
【0082】
本発明の栄養組成物の例としては乳児用調製乳、栄養補助食品、代用食品及び再水和組成物が挙げられるが、これらに限定されない。特に有利な栄養組成物としては経腸及び非経腸乳児用補給剤、特殊乳児用調製乳、高齢者用補給剤、及び胃腸障害及び/又は吸収不良者用補給剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の栄養組成物は食事の補充を必要としない場合にも食品に添加できる。例えば、組成物は任意種の食品に添加することができ、例えばマーガリン、調製バター、チーズ、牛乳、ヨーグルト、チョコレート、キャンディ、スナック菓子、サラダ油、調理用油、調理用脂肪、肉類、魚肉及び飲料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明の好適態様では、栄養組成物は経腸栄養製品であり、成人又は小児経腸栄養製品がより好ましい。この組成物は慢性又は急性疾患状態によりストレスを受けていたり、特殊処置が必要な成人又は小児に投与することができる。組成物は本発明により製造されるポリ不飽和脂肪酸に加え、上記のような多量養素、ビタミン及びミネラルを加えてもよい。多量養素は人乳に含まれると等価の量又はエネルギー換算即ちカロリー当たりの換算で添加することができる。
【0085】
液体又は固体経腸及び非経腸栄養製剤の処方方法は当分野で周知である(下記実施例も参照されたい)。
【0086】
経腸製剤は例えば滅菌後に即使用(RTF)式で利用してもよいし、濃縮液体又は粉末で保存してもよい。粉末は上記のように調製した製剤を噴霧乾燥し、濃縮物を再水和して再構成することにより製造することができる。成人及び小児栄養製剤は当分野で周知であり、市販されている(例えばRose Products Division,Abbott Laboratories,Columbus,Ohio製品Similac(登録商標)、Ensure(登録商標)、Jevity(登録商標)及びAlimentum(登録商標))。本発明により製造した油又は酸はこれらの製剤の任意のものに添加することができる。
【0087】
本発明の栄養組成物のエネルギー密度は、液体形態の場合には約0.6Kcal〜約3Kcal/mlとすることができる。固体又は粉末形態の場合には、栄養補給剤に約1.2〜>9Kcal/g、好ましくは約3〜7Kcal/gを加えることができる。一般に、液体製品の浸透圧は700mOsm未満、より好ましくは660mOsm未満とする。
【0088】
栄養製剤には本発明により製造したPUFA以外に上記のように多量養素、ビタミン及びミネラルを加えることができる。これらの付加成分の存在は個体がこれらの成分の最小1日必要量を摂取するのを助ける。PUFA提供に加え、亜鉛、銅、葉酸及び酸化防止剤を組成物に加えると望ましい場合もある。これらの物質はストレス下の免疫系を強化するので、組成物を投与する個体に更に有利である。これらの成分は医薬組成物にも添加できる。
【0089】
より好ましい態様では、栄養組成物は酸化防止剤と少なくとも1種のPUFAに加えて炭水化物源を含み、炭水化物の少なくとも5重量%は食用オリゴ糖である。より好ましい態様では、栄養組成物は更に蛋白質、タウリン及びカルニチンを含む。
【0090】
上述のように、本発明により製造したPUFA又はその誘導体は代用食品又は補助食品、特に乳児用調製乳に添加し、点滴栄養患者や、栄養不良又は他の状態もしくは疾患状態の予防又は治療に用いることができる。背景として、人乳の脂肪酸プロフィルはDHA約0.15%〜約0.36%、EPA約0.03%〜約0.13%、AA約0.30%〜約0.88%、DGLA約0.22%〜約0.67%、及びGLA約0.27%〜約1.04%であることに留意すべきである。即ち、本発明により製造されるAA、EPA及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)等の脂肪酸は例えば人乳のPUFA濃度を良好に増すように乳児用調製乳の組成を変更したり、非ヒト哺乳動物母乳に通常含まれるPUFA濃度を変えるために使用することができる。特に、医薬又は食品補給剤、特に母乳代用剤又は補給剤に使用する組成はAA、DGLA及びGLAの1種以上を含むことが好ましい。油はAA約0.3〜30%、DGLA約0.2〜30%及び/又はGLA約0.2〜約30%を含むことがより好ましい。
【0091】
本発明はトリグリセリドとして計算した場合に脂肪酸約2〜約30重量%を含む非経腸栄養組成物に関する。好適組成物はGLAとして全PUFA組成物の約1〜約25重量%を含む(米国特許第5,196,198号)。場合により、他のビタミン、特に脂溶性ビタミン(例えばビタミンA、D、E)やL−カルニチンも加えてもよい。所望により、α−トコフェロール等の防腐剤を約0.1重量%加えてもよい。
【0092】
更に、AA、DGLA及びGLAの比は特定所期最終用途に合わせて調節することができる。母乳補給剤又は代用剤として処方する場合には、夫々約1:19:30〜約6:1:0.2の比でAA、DGLA及びGLAを含む組成物が提供される。例えば、動物の母乳は1:19:30〜6:1:0.2のAA:DGLA:GLA比をとることができ、約1:1:1、1:2:1、1:1:4の中間比をとることが好ましい。宿主細胞で同時に製造する場合には、GLAやDGLA等の前駆物質基質からAAへの変換率を調節してPUFA比を厳密に制御することが好ましい。例えば、AA対DGLA比を約1:19にするにはDGLAからAAへの変換率として5%〜10%を使用することができ、AA対DGLA比を約6:1にするには変換率約75%〜80%を使用することができる。従って、細胞培養系であるか宿主動物中であるかに関係なく、デサチュラーゼ発現のタイミング、程度及び特異性と、他のデサチュラーゼ及びエロンガーゼの発現を調節することにより、PUFA濃度及び比を調節することができる。本発明により生産されるPUFA/酸(例えばAA及びEPA)をその後、所望濃度及び比で他のPUFA/酸(例えばGLA)と配合してもよい。
【0093】
更に、本発明により製造したPUFA又はこれを含む宿主細胞を動物飼料補給剤として使用し、動物の組織又は乳脂肪酸組成をヒト又は動物消費により望ましいものに変えることもできる。
【0094】
医薬組成物
本発明は本明細書に記載するデサチュラーゼ遺伝子を使用して本明細書に記載する方法により製造した酸及び/又は油の1種以上を含む医薬組成物にも関する。より具体的には、このような医薬組成物は酸及び/又は油の1種以上と医薬的に許容可能な標準周知非毒性キャリヤー、アジュバント又はビヒクル、例えばリン酸緩衝塩類溶液、水、エタノール、ポリオール、植物油、湿潤剤又はエマルション(例えば水/油エマルション)を含むことができる。組成物は液体形態でも固体形態でもよい。例えば、組成物は錠剤、カプセル剤、飲用液剤もしくは粉末剤、注射剤、又は局所軟膏もしくはクリームの形態とすることができる。例えば分散剤の場合には所望粒度を維持し、界面活性剤を使用することにより適正な流動性を維持することができる。例えば糖類、塩化ナトリウム等の等張剤を加えると望ましい場合もある。このような不活性希釈剤以外に、湿潤剤、乳化懸濁剤、甘味料、調味料及び香料等のアジュバントを組成物に加えてもよい。
【0095】
懸濁液は活性化合物以外に例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル類、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天−寒天及びトラガカントガム又はこれらの物質の混合物等の懸濁剤を含むことができる。
【0096】
錠剤やカプセル剤等の固体剤形は当分野で周知の技術を使用して製造することができる。例えば、本発明により製造したPUFAを乳糖、蔗糖及びコーンスターチ等の慣用錠剤基剤に結合剤(例えばアラビアガム、コーンスターチ又はゼラチン)、崩壊剤(例えばジャガイモ澱粉又はアルギン酸)及び滑剤(例えばステアリン酸又はステアリン酸マグネシウム)を加えて錠剤化することができる。カプセル剤は酸化防止剤及び該当PUFAと共にこれらの賦形剤をゼラチンカプセルに封入することにより製造することができる。酸化防止剤とPUFA成分は上記基準に合うようにする。
【0097】
静脈内投与には、本発明により生産したPUFA又はその誘導体をIntralipids(登録商標)等の市販製剤に配合すればよい。典型的な健常成人血漿脂肪酸プロフィルはAA6.64〜9.46%、DGLA1.45〜3.11%、及びGLA0.02〜0.08%である。患者で正常脂肪酸プロフィルに達するようにこれらのPUFA又はその代謝前駆物質を単独又は他のPUFAと併用して投与することができる。所望により、製剤の各成分を単一又は多重使用可能なキット形態で個々に提供してもよい。特定脂肪酸の典型的な用量は0.1mg〜20g(100gまで)/日であり、10mg〜1、2、5又は10g/日が好ましい。
【0098】
本発明の医薬組成物の可能な投与経路としては例えば経腸(例えば経口及び直腸)と非経腸が挙げられる。例えば、液体製剤を例えば経口又は直腸投与することができる。更に、均一混合物を水に完全に分散し、滅菌条件下に生理的に許容可能な希釈剤、防腐剤、緩衝液又は推進剤と混合し、スプレー又は吸入剤を形成することができる。投与経路は当然のことながら所望効果に依存する。例えば、肌荒れ、乾燥又は老化の治療や、皮膚損傷又は火傷の治療や、疾病又は障害により損傷した皮膚又は毛髪の治療に組成物を利用する場合には、局所塗布すればよいと思われる。
【0099】
組成物の患者投与量は当業者が決定することができ、患者の体重、患者の年齢、患者の免疫状態等の種々の因子により異なる。
【0100】
剤形としては、組成物は例えば液剤、分散液、懸濁液、エマルション又は後で再構成する滅菌粉末とすることができる。
【0101】
本発明は更に本明細書に記載する医薬及び/又は栄養組成物の使用による各種疾患の治療にも関する。特に、本発明の組成物は血管形成後再狭窄の治療に使用することができる。更に、炎症、関節リウマチ、喘息及び乾癬の症状も本発明の組成物で治療することができる。PUFAはカルシウム代謝に関与していることも分かっているので、本発明の組成物は恐らく骨粗鬆症や腎臓又は尿管結石の治療又は予防にも利用できると思われる。
【0102】
更に、本発明の組成物は癌の治療にも使用できる。悪性細胞は脂肪酸組成の変化が示されている。脂肪酸を加えるとその増殖が抑制され、細胞死を生じ、化学治療剤感受性を増すことが分かっている。更に、本発明の組成物は癌に伴う悪液質の治療にも有用であると思われる。
【0103】
本発明の組成物は糖尿病の治療にも使用することができる(例えば米国特許第4,826,877号とHorrobinら,Am.J.Clin.Nutr.Vol.57(Suppl.)732S−737S参照)。糖尿病動物では脂肪酸代謝及び組成の変化が示されている。
【0104】
更に、デサチュラーゼ酵素の使用により直接又は間接的に製造したPUFAを含む本発明の組成物は湿疹治療、血圧降下及び検査数値の改善にも使用できる。更に、本発明の組成物は血小板凝固、血管拡張の誘導、コレステロールレベル低下、血管平滑筋及び繊維組織の増殖抑制(Brennerら,Adv.Exp.Med.Biol.Vol.83,p.85−101,1976)、胃腸出血及び非ステロイド抗炎症薬の他の副作用(米国特許第4,666,701号参照)の緩和又は予防、子宮内膜症や月経前症候群(米国特許第4,758,592号参照)の予防又は治療、並びにウイルス感染後の筋肉痛、脳脊髄炎及び慢性疲労(米国特許第5,116,871号参照)の治療にも使用できる。
【0105】
本発明の組成物の他の用途としてはAIDS、多発性硬化症及び炎症性皮膚疾患の治療と、健康維持が挙げられる。
【0106】
更に、本発明の組成物は化粧目的にも利用できる。混合物を形成するように既存化粧品組成物に添加してもよいし、単独組成物として使用してもよい。
【0107】
獣医用途
動物は要求及び条件の多くがヒトと同一であるので、上記医薬及び栄養組成物は動物(即ち家畜又は非家畜)でもヒトと同様に利用できる。例えば、本発明の油又は酸は動物又は水産養殖飼料添加物、動物代用飼料、動物ビタミン又は動物局所軟膏に利用することができる。
【0108】
以下、実施例により本発明を説明するが、これにより発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0109】
真菌からのデサチュラーゼ単離とcDNAライブラリー構築のための縮重オリゴヌクレオチドの設計
Saprolegnia diclina(S.diclina)(ATCC56851)の脂肪酸組成物を分析した処、相当量のアラキドン酸(ARA,20:4 n−6)とエイコサペンタエン酸(EPA,20:5n−3)が存在することが判明した。そこで、この生物はリノレン酸(LA,18:2n−6)をγ−リノレン酸(GLA,18:3n−6)に変換することが可能な活性Δ6−デサチュラーゼとジホモγ−リノレン酸(DGLA,20:3 n−6)をアラキドン酸(ARA,20:4 n−6)に変換する活性Δ5−デサチュラーゼを含有していると思われた(図1)。更に、S.diclinaはARAをEPAに不飽和化することが可能なΔ17−デサチュラーゼも含有していると思われた。
【0110】
Thraustochytrium aureum(T.aureum)(ATCC34304)の脂肪酸組成物を分析した処、ARAとEPAのみならずアドレン酸(ADA,22:4n−6)、ω6−ドコサペンタエン酸(ω6−DPA,22:5n−6)、ω3−ドコサペンタエン酸(ω3−DPA,22:5n−3)及びドコサヘキサエン酸(DHA,22:6n−3)等の長鎖PUFAも検出された。従って、Δ6、Δ5及びΔ17−デサチュラーゼに加え、T.aureumはADAをω3−DPA又はω6−DPAをDHAに変換するΔ19−デサチュラーゼ及び/又はADAをω6−DPA又はω3−DPAをDHAに変換するΔ4−デサチュラーゼを恐らく含有していると思われた。そこで、S.diclinaとT.aureumからこれらの推定デサチュラーゼ遺伝子を単離し、最終的に代替宿主で発現させることにより機能を確認することを目的にした。
【0111】
機能的デサチュラーゼ酵素をコードする遺伝子を単離するために、生物毎にcDNAライブラリーを構築した。Saprolegnia diclina(ATCC56851)をジャガイモデキストロース培地Dfco#336(Difco Laboratories,Detroit,Michigan)で室温で4日間絶えず撹拌しながら培養した。チーズクロス数層で濾過することにより菌糸体を回収し、乳鉢乳棒を使用して液体窒素中で培養物を粉砕した。Qiagen RNeasy Maxiキット(Qiagen,Valencia,CA)を製造業者のプロトコール通りに使用して全RNAを精製した。
【0112】
T.aureum(ATCC34304)細胞を光照射下にBY+培地(Difco#790)で室温で4日間絶えず撹拌(250rpm)しながら培養し、最大バイオマスを得た。これらの細胞を5000rpmで10分間遠心分離により回収し、RNアーゼを含まない氷冷水で濯いだ。これらの細胞を次にフレンチプレスで10,000psiで溶解させ、溶解細胞をTE緩衝フェノールに直接集めた。フェノール:クロロホルム(1:1v/v)抽出の反復後にクロロホルム抽出により細胞溶解液から蛋白質を取出した。0.3M(終濃度)酢酸ナトリウム(pH5.6)とイソプロパノール1容量を使用して水相から核酸を−70℃で30分間沈殿させた。沈殿した核酸を15,000rpmで30分間4℃で遠心分離して集め、5分間減圧乾燥した後、1×DNアーゼ緩衝液(20mM Tris−Cl,pH8.0;5mM MgCl)中DNアーゼI(無RNアーゼ)で15分間室温で処理した。5mM EDTA(pH8.0)で反応を停止し、Qiagen RNeasy Maxiキット(Qiagen,Valencia,CA)を製造業者のプロトコール通りに使用してRNAを更に精製した。
【0113】
オリゴdTセルロース樹脂を使用して各生物の全RNAからmRNAを単離した。次にpBluescript II XRライブラリー構築キット(Stratagene,La Jolla,CA)を使用して2本鎖cDNAを合成した後、pBluescript II SK(+)ベクターに指向性クローニングした(5’EcoRI/3’XhoI)。S.diclina及びT.aureumライブラリーは各平均インサート寸法約700bpのクローン約2.5×10個を含んでいた。液体窒素中で培養物を粉砕することによりS.diclinaとT.aureumの培養物を生産するPUFAからのゲノムDNAを単離し、Qiagen Genomic DNA Extraction Kit(Qiagen,Valencia,CA)を使用して精製した。
【0114】
採用したアプローチは公知デサチュラーゼで保存されているアミノ酸モチーフを示す縮重オリゴヌクレオチド(即ちプライマー)を設計することであった。これらのプライマーをPCR反応で使用すると、真菌から推定デサチュラーゼ遺伝子に保存領域を含むフラグメントを同定することができた。真菌デサチュラーゼとしてはMortierella alpinaからΔ5及びΔ6−デサチュラーゼ遺伝子(夫々Genbank受託番号AF067650、AB020032)しか同定されていないので、これらの縮重プライマーの設計時には植物だけでなく動物からのデサチュラーゼ配列も考慮した。これらの縮重プライマーの設計には以下の生物からの公知Δ5及びΔ6−デサチュラーゼ配列を使用した。Mortierella alpina、Borago officinalis、Helianthus annuus、Brassica napus、Dictyostelium discoideum、Rattus norvegicus、Mus musculus、Homo sapien、Caenorhabditis elegans、Arabidopsis thaliana及びRicinuscommunis。使用した縮重プライマーは以下の通りであり、CODEHOP Blockmakerプログラム(http://blocks.fhcrc.org/codehop.html)を使用した。
【0115】
【化1】

【0116】
更に、公知Δ6−デサチュラーゼに存在する第2及び第3の保存「ヒスチジンボックス」に基づいて他の2種のプライマーを設計した。
【0117】
【化2】

【0118】
オリゴヌクレオチド配列の縮重コードはB=C,G,T;H=A,C,T;S=C,G;R=A,G;Y=C,T;D=A+T+C;N=A,C,G,又はT/U,不明又はその他とした。
【実施例2】
【0119】
Saprolegnia diclina(ATCC56851)からのΔ6−デサチュラーゼヌクレオチド配列の単離
塩化リチウム法(Hogeら,Exp.Mycology(1982)6:225−232)を使用してSaprolegnia diclina(ATCC56851)から全RNAを単離した。SuperScript Preamplificationシステム(LifeTechnologies,Rockville,MD)とキットに付属のオリゴ(dT)12−18プライマーを使用して全RNA5μgを逆転写し、第1鎖cDNAを作製した。
【0120】
Δ6−デサチュラーゼ遺伝子を単離するために、上記縮重オリゴヌクレオチドの各種順列と組合せをPCR反応で使用した。試験した各種プライマー組合せのうちで明白なバンドを生じたプライマーはRO834/FO838のみであった。第1鎖cDNA鋳型2μl、20mMTris−HCl,pH8.4、50mM KCl、1.5mM MgCl、各デオキシリボヌクレオチド三リン酸200μM及び各プライマー2pmolを含有する100μl容量中でPCR増幅を実施した。42℃と45℃の2種の異なるアニール温度で熱サイクルを実施し、これらの2種のPCR反応を組合せ、1.0%アガロースゲル上で分解し、QiaQuick Gel Extraction Kit(Qiagen,Valencia,CA)を使用して〜100bpバンドをゲル精製した。T4DNAポリメラーゼ(LifeTechnologies,Rockville,MD)を製造業者の仕様通りに使用してこれらのフラグメントの突出末端を「充填」し、これらのDNAフラグメントをPCR−Bluntベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした。組換えプラスミドをTOP10スーパーコンピテント細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)に形質転換し、クローンを配列決定した。
【0121】
こうして従来同定されているΔ6−デサチュラーゼに配列相同を示すクローン2個を単離した。これらのクローンは次のように説明される。
【0122】
a.クローン#20−2を部分配列決定した処、702bpからの推定アミノ酸配列はTfastA検索における最高得点としてMortierella alpinaからのΔ6−デサチュラーゼと30.2%の一致を示した。
【0123】
b.クローン#30−1を部分配列決定した処、687bpの推定アミノ酸配列はTfastA検索における最高得点としてMortierella alpinaのΔ6−デサチュラーゼと48.5%の一致を示した。これらの2種の配列は相互にオーバーラップしており、S.diclinaからの単一推定Δ6−デサチュラーゼに属すると思われた。次にこの新規Δ6−デサチュラーゼ配列を使用し、S.diclinaのmRNAから作製したcDNAライブラリーから全長Δ6−デサチュラーゼ遺伝子の3’及び5’末端を検索するためのプライマーを設計した。
【0124】
3’末端を単離するために、鋳型としてcDNAライブラリーから精製したプラスミドDNAとオリゴヌクレオチドRO923(配列番号7)(5’−CGGTGCAGTGGTGGAAGAACAAGCACAAC−3’)及びRO899(配列番号8)(5’−AGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGC−3’)を使用してPCR増幅を実施した。オリゴヌクレオチドRO923はこの推定Δ6−デサチュラーゼの#20−2フラグメントに基づいて設計し、オリゴヌクレオチドRO899はcDNAライブラリーの作製に使用したpBluescript II SK(+)ベクターからの配列に対応する。各プライマー10pmolとTaq PCR Master Mix(Qiagen,Valencia,CA)を使用して増幅を実施した。試料をまず94℃で3分間変性した後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で2分間を30サイクル実施した。72℃で10分間の最終伸長サイクルを実施した後に反応を終了した。PCRフラグメントを0.8%アガロースゲル上で分解し、Qiagen Gel Extraction Kitを使用して精製した。T4 DNAポリメラーゼ(LifeTechnologies,Rockville,MD)を製造業者の仕様通りに使用してこれらのフラグメントの末端を「充填」し、これらのDNAフラグメントをPCR−Bluntベクター(Invitrogen,Carlbad,CA)にクローニングした。組換えプラスミドをTOP10スーパーコンピテント細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)に形質転換し、クローンを配列決定した。クローンsd2−2は958bpインサートを含んでおり、公知Δ6−デサチュラーゼとの配列相同に基づいて推定Δ6−遺伝子の3’末端を含み、更に「TAA」停止コドンとPoly Aテールを含むことが確認された。
【0125】
Saprolegnia diclinaからこのΔ6−デサチュラーゼの5’末端を単離するために、先に同定した#30−1フラグメントの配列に基づいてオリゴヌクレオチドRTO939(配列番号9)(5’−CGTAGTACTGCTCGAGGAGCTTGAGCGCCG−3’)を設計した。このオリゴヌクレオチドを(pBluescript SK(+)ベクターの配列に基づいて設計した)RO898(配列番号10)(5’−CCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAG−3’)と併用し、cDNAライブラリーからのΔ6−デサチュラーゼの5’末端をPCR増幅した。この場合には、このΔ6−デサチュラーゼの5’末端に存在すると予想されるGCリッチ領域が生じるというPCR増幅問題を解決するためにAdvantage−GC cDNA PCRキット(Clonetech,Palo Alto,CA)を使用した。PCR熱サイクル条件は以下の通りとした。まず鋳型を94℃で1分間変性した後、[94℃で30秒間、68℃で3分間]30サイクルを実施し、最後に68℃で5分間の伸長サイクルを実施した。こうして得られたPCR産物を上記と同一のプロトコールに従ってPCR−Bluntベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした。こうして新規Δ6−デサチュラーゼの「ATG」開始部位を含む360bpインサートを含むクローンsd21−2が得られた。このフラグメントの推定アミノ酸配列を公知Δ6−デサチュラーゼと整列させると、37〜45%の一致度を示した。
【0126】
S.diclina cDNAライブラリー又はS.diclinaゲノムDNAを鋳型として下記オリゴヌクレオチドを使用してPCR増幅によりこの新規Δ6−デサチュラーゼ遺伝子全体を単離した。
【0127】
【化3】

クローンsd21−2の5’末端からの配列と酵母発現ベクターへのクローニングを助長するためのEcoRI部位(下線部)を含むオリゴヌクレオチド。
【0128】
【化4】

停止コドンを含むsd2−2の3’末端からの配列と酵母発現ベクターへのクローニングのためのHindIII部位(下線部)を含むオリゴヌクレオチド。
【0129】
cDNAライブラリープラスミド鋳型200ngと、各プライマー10pmolと、Taq PCR Master Mix(Qiagen,Valencia,CA)、又はゲノムDNA200ngと、各プライマー10pmolと、Advantage−GC cDNA PCRキット(Clonetech,Palo Alto,CA)を使用してPCR増幅を実施した。熱サイクル条件は以下の通りとした。まず鋳型を94℃で1分間変性した後、[94℃で30秒間、68℃で3分間]30サイクルを実施し、最後に68℃で5分間の伸長サイクルを実施した。こうして得られたPCR産物をEcoRI/HindIIIで消化し、酵母発現ベクターpYX242(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングしてクローンpRSP1(ゲノムDNA由来)及びpRSP2(ライブラリー由来)を作製した後、配列決定し、発現試験に使用した。
【0130】
Δ6−デサチュラーゼ全長遺伝子インサートは長さ1362bp(配列番号13、図2)であり、最初のATGから開始し、453アミノ酸をコードするオープンリーディングフレームを含んでいた。(Δ6−デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列はブダペスト条約に基づき、American Type Culture Collection(ATCC),10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110にプラスミドpRSP1として寄託し、受託番号PTA−2829を付与された。)全長遺伝子のアミノ酸配列(配列番号14、図3)はMortierella alpina、Caenorhabiditis elegans及びBorago officinalisからのΔ6−デサチュラーゼに相同の領域を含んでいた。更に、全公知膜結合デサチュラーゼに存在する3個の保存「ヒスチジンボックス」(Oduleyら,(1994)The Plant Cell 6:147−158)も含んでいた。これらはアミノ酸位置171〜176、208〜212及び391〜395に位置していた。他の膜結合Δ6−デサチュラーゼと同様に、S.diclinaΔ6−デサチュラーゼにおける第3のヒスチジンボックスモチーフ(HXXHH)はQXXHHであることが判明した。この配列は5’末端にシトクロムb5ドメインも含んでいた。このシトクロムb5ドメインは多数の膜結合デサチュラーゼ酵素に存在しており、シトクロムb5はこれらの酵素で電子供与体として機能すると考えられる。このドメインの存在はPUFA生産のために異種系でデサチュラーゼを発現させるときに有利であると思われる。この遺伝子は植物でPUFA生合成経路の再構成に使用することが提案されているので、この遺伝子の塩基組成は重要であると思われる。(組換え遺伝子のうちには宿主と塩基組成が異なるために発現しにくいものがあることは公知である。この遺伝子の総G+C含量は59%であり、植物での発現に成功しているM.alpinaデサチュラーゼに近似する。)
【実施例3】
【0131】
Saprolegnia diclina(ATCC56851)からのΔ5−デサチュラーゼヌクレオチド配列の単離
Saprolegnia diclina(ATCC56851)はアラキドン酸(ARA,20:4 n−6)とエイコサペンタエン酸(EPA,20:5 n−3)の両者を生産するので、恐らくジホモγ−リノレン酸(DGLA,20:3n−6)をアラキドン酸(ARA,20:4 n−6)に変換することが可能なΔ5−デサチュラーゼをもつと考えられた。
【0132】
S.diclinaからΔ5−デサチュラーゼを単離するには、Δ6−デサチュラーゼ単離と同様に第1鎖cDNAを鋳型として使用して縮重プライマーの各種組合せをPCR反応で使用した。最終反応容量50μl中、第1鎖cDNA鋳型2μl、20mMTris−HCl,pH8.4、50mM KCl、1.5mM MgCl、各デオキシリボヌクレオチド三リン酸200μM、各プライマー2pmol及びcDNAポリメラーゼ(Clonetech,Palo Alto,CA)1UのPCR条件を使用してプライマー対RO753及びRO754で明白な588bpバンドが得られた。熱サイクルは次のように実施した。94℃で3分間の初期変性後に94℃で30秒間変性、60℃で30秒間アニーリング及び72℃で1分間伸長を35サイクル実施した。この後、72℃で7分間の最終伸長を実施し、4℃で反応を終了した。こうして作製したこのフラグメントをクローニングし(クローン#18−1)、配列決定し、翻訳すると、Mortierella alpinaΔ5−デサチュラーゼ(Genbank受託番号AF067654)とのアミノ酸一致度43%と、Dictyostelium discoideumΔ5−デサチュラーゼ(Genbank受託番号AB029311)との一致度38.7%を示した。二次PCRフラグメントは実施例2に記載した反応でプライマーRO834とRO838を使用して同定した。約1000bp長のこのフラグメントをクローニングした処(クローン#20−8)、775bpに由来する推定アミノ酸配列はDictyostelium discoideumΔ5−デサチュラーゼ(Genbank受託番号AB029311)との一致度42%を示した。これらの2種の配列#18−1及び#20−8は相互にオーバーラップしており、S.diclinaからの単一推定Δ5−デサチュラーゼに属すると思われた。次にこれらの配列を使用し、S.diclinaのmRNAから作製したcDNAライブラリーから新規Δ5−デサチュラーゼの3’及び5’末端を検索するためのプライマーを設計した。
【0133】
この推定Δ5−デサチュラーゼの3’末端を単離するために、cDNAライブラリーから精製したプラスミドDNAを鋳型として使用し、オリゴヌクレオチドRO851(配列番号15)(5’−CCATCAAGACGTACCTTGCGATC−3’)及びRO899(配列番号8)(5’−AGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGC−3’)を使用してPCR増幅を実施した。
【0134】
オリゴヌクレオチドRO851はこの推定Δ5−デサチュラーゼの#18−1フラグメントに基づいて設計し、オリゴヌクレオチドRO899はpBluescript II SK(+)ベクターからの配列に対応する。鋳型プラスミドDNA200ng、各プライマー10pmol及びTaq PCR Master Mix(Qiagen,Valencia,CA)を使用して増幅を実施した。試料をまず94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間からなる35サイクルを実施した。72℃で7分間の最終伸長サイクルを実施した後に反応を終了した。PCRフラグメントを実施例2に記載したプロトコールに従ってPCR−Bluntベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした。組換えプラスミドをTOP10スーパーコンピテント細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)に形質転換し、クローンを配列決定した。クローンsd12−11は公知Δ5−デサチュラーゼとの配列相同に基づいて推定Δ5−遺伝子の3’末端を含み、更に「TAA」停止コドンとポリAテールを含む648bpインサートを含んでいた。
【0135】
プライマーRO941及びRO898を使用してSaprolegnia diclinaからこのΔ5−デサチュラーゼの5’末端を単離した。このオリゴヌクレオチドRO941(配列番号16)(5’−GCTGAACGGGTGGTACGAGTCGAACGTG−3’)は先に同定した#20−8フラグメントの配列に基づいて設計した。cDNAライブラリープラスミドDNAを鋳型として使用し、このオリゴヌクレオチドをPCR増幅(pBluescript SK(+)ベクターの配列に基づいて設計した)RO898(配列番号10)(5’−CCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAG−3’)と併用した。ここではAdvantage−GC cDNA PCRキット(Clonetech,Palo Alto,CA)を製造業者のプロトコール通りに使用し、熱サイクル条件は以下の通りとした。初期変性を94℃で1分間実施した後、[94℃で30秒間変性、68℃で3分間アニーリング及び伸長]30サイクルを実施し、68℃で5分間の最終伸長サイクルを実施した。これらのPCR産物を上記と同様に精製し、PCR−Bluntベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングし、配列決定した。クローンsd24−1は新規Δ5−デサチュラーゼの推定「ATG」開始部位を含む295bpインサートを含むことが確認された。このフラグメントの推定アミノ酸配列を分析した処、公知Δ5−デサチュラーゼと相同性の高い領域を示し、シトクロムb5ドメインも存在することが判明した。
【0136】
S.diclinaゲノムDNAを鋳型として下記オリゴヌクレオチドを使用してPCR増幅により全長Δ5−デサチュラーゼ遺伝子を単離した。
【0137】
a.クローンsd24−1の5’末端からの配列と酵母発現ベクターへのクローニングを助長するためのEcoRI部位(下線部)を含むRO953(配列番号17)(5’−ACGAGAGAATTCATGGCCCCGCAGACGGAGCTCCGCCAGCGC−3’)、及び
b.停止コドンを含むsd12−11の3’末端からの配列と酵母発現ベクターへのクローニングのためのXhoI部位(下線部)を含むRO956(配列番号18)(5’−AAAAGACTCGAGTTAGCCCATGTGGATCGTGGCGGCGATGCCCTGC−3’)。
【0138】
「全長」遺伝子のPCR増幅条件はゲノムDNAからのΔ6−デサチュラーゼの増幅について記載したと同様とした(実施例2)。こうして得られたPCR産物をEcoRI/XhoIで消化し、酵母発現ベクターpYX242(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした。クローンpRSP3(ゲノムDNA由来)は1413bpインサートを含むことが判明したので発現試験に使用した。
【0139】
S.diclinaからの推定Δ5−デサチュラーゼの1413bp全長遺伝子(配列番号19、図4)は471アミノ酸をコードするオープンリーディングフレームを含んでいた(配列番号20、図5)。(Δ5−デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列はブダペスト条約に基づき、American Type Culture Collection(ATCC),10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110に2001年1月23日付けで(プラスミドpRSP3として)寄託し、受託番号PTA−2928を付与された。)この翻訳蛋白質はMortierella alpinaΔ5−デサチュラーゼ(Genbank受託番号AF067654)とのアミノ酸一致度40.5%と、Dictyostelium discoideumΔ5−デサチュラーゼ(Genbank受託番号AB029311)との一致度39.5%を示した。更に、アミノ酸位置186〜190、223〜228、406〜410に3個の保存「ヒスチジンボックス」も含んでいた。Δ6−デサチュラーゼと同様に、この配列は5’末端にシトクロムb5ドメインも含んでいた。この遺伝子の総G+C含量は61.5%であった。
【実施例4】
【0140】
パン酵母におけるS.diclinaデサチュラーゼ遺伝子の発現
pYX242(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした全長Δ6−デサチュラーゼから構成されるクローンpRSP2と、pYX242にクローニングした全長Δ5−デサチュラーゼから構成されるクローンpRSP3をコンピテントSaccharomyces cerevisiae株334に形質転換した。酵母形質転換はAlkali−Cation Yeast Transformation Kit(BIO101,Vista,CA)を製造業者の指定した条件に従って使用して実施した。ロイシンを欠失する培地(DOB[−Leu])で形質転換体をロイシン栄養要求性に関して選択した。これらのクローンの特異的デサチュラーゼ活性を検出するために、下記特異的脂肪酸基質50μMの存在下に形質転換体を増殖させた。
【0141】
a.ステアリン酸(18:0)(オレイン酸への変換はΔ9−デサチュラーゼ活性を示す)。
【0142】
b.オレイン酸(18:1)(リノレン酸への変換はΔ12−デサチュラーゼ活性を示す)。
【0143】
c.リノレン酸(18:2 n−6)(α−リノレン酸への変換はΔ15−デサチュラーゼ活性を示し、γ−リノレン酸への変換はΔ6−デサチュラーゼ活性を示す)。
【0144】
d.α−リノレン酸(18:3 n−3)(ステアリドン酸への変換はΔ6−デサチュラーゼ活性を示す)。
【0145】
e.ジホモγ−リノレン酸(20:3 n−3)(アラキドン酸への変換はΔ5−デサチュラーゼ活性を示す)。
【0146】
陰性対照株は未変異pYX242ベクターを含むS.cerevisiae 334とし、同時に増殖させた。培養液を激しく撹拌し(250rpm)、各種基質50μM(終濃度)の存在下に24℃で48時間増殖させた。細胞をペレット化し、メタノール中でボルテックスし、クロロホルムと(内部標準として)トリトリデカノインを加えた。これらの混合物を室温で少なくとも1時間又は4℃で一晩インキュベートした。クロロホルム層を抽出し、無水硫酸ナトリウム1gを使用してWhatmanフィルターで濾過し、粒状物と残留水を除去した。有機溶媒を窒素流下に40℃で蒸発させた。次に、メタノール中0.5N水酸化カリウム2mlを密閉管に加えることによりガスクロマトグラフィー分析(GC)に備えて抽出した脂質を脂肪酸メチルエステル(FAME)に誘導体化した。試料を95℃〜100℃まで30分間加熱し、室温まで冷却した。メタノール中14%三弗化ホウ素約2mlを加え、加熱を繰返した。抽出した脂質混合物が冷却した後、水2mlとヘキサン1mlを加え、GC分析のためにFAMEを抽出した。産物を(産物+添加基質)の和で割って100を掛けることにより変換率を計算した。
【0147】
表1は添加基質の変換率に基づく単離遺伝子の酵素活性を示す。S.diclinaからのΔ6−デサチュラーゼ遺伝子を含むpRSP1クローンは18:2n−6基質の28%を18:3n−3に変換すると共に、18:3n−3基質の37%を18:4n−3に変換した。これは遺伝子がΔ6−デサチュラーゼをコードすることを裏付けている。この場合にはバックグラウンド(基質の非特異的変換)はなかった。(本明細書に引用する表は末尾にまとめて示す。)
S.diclinaからのΔ5−デサチュラーゼ遺伝子を含むpRSP3クローンは加えた20:3n−6基質の27%を20:4n−6に変換することができ、この遺伝子によりコードされる酵素がΔ5−デサチュラーゼであることを示している。この場合もバックグラウンド基質変換は検出されなかった。このデータは種々の基質特異性をもつデサチュラーゼを異種系で発現させることができ、更にポリ不飽和脂肪酸を生産するために使用できることを示している。
【0148】
表2は指定プラスミドを含むS.cerevisiae 334から抽出した全脂質の百分率として目的脂肪酸を示す。増殖培地にグルコースは加えなかった。アフィニティガスクロマトグラフィーを使用して各脂質を分離した。GC/MSを利用して生成物を同定した。この表から明らかなように、外部から加えた基質は遊離形態で加えた場合には組換え酵母により取込まれ、その膜に取込まれる。Δ6−デサチュラーゼ遺伝子を含む酵母クローン(pRSP1)では、LA(18:2)を基質として加えた場合にGLA(γ−18:3)が新規PUFAとして同定され、DGLA(20:3)を基質として加えた場合にはΔ5−デサチュラーゼ遺伝子を含む酵母(pRSP3)でアラキドン酸が検出された。
【実施例5】
【0149】
S.diclinaデサチュラーゼとエロンガーゼの同時発現
実施例4に記載したような酵母である酵母発現ベクターpYES2にヒトエロンガーゼ遺伝子(配列番号21)を含むクローンであるpRAE73−A3でプラスミドpRSP1(6Δ)及びpRSP3(Δ5)を夫々同時形質転換した。このエロンガーゼ遺伝子はPUFA経路の伸長段階の一部を触媒する。ロイシンとウラシルを欠失する最少培地(DOB[−Leu−Ura])で同時形質転換体を選択した。
【0150】
表3は基質LA(18:2 n−6)50μMを加えた場合にΔ6−デサチュラーゼがこの基質をGLA(18:3 n−6)に変換し、エロンガーゼがGLAに炭素2個を加えてDGLA(20:3n−6)を生産できることを示す。これらの同時形質転換酵素による基質から終産物への変換率は26.4%であり、陰性対照からバックグラウンドは観察されない。同様に、同時形質転換酵素はALA(18:3n−3)に作用して最終的に変換率34.39%で(20:4n−3)を形成することができる。従って、S.diclinaΔ6−デサチュラーゼは異種発現系で生成物を生産することができ、この発現系をPUFA生合成経路からの別の異種酵素により更に利用すると予想PUFAを生産することができた。
【0151】
表4はpRSP3(Δ5)/ヒトエロンガーゼ同時形質転換実験の結果を示す。この場合には、基質GLA(18:3 n−6)をヒトエロンガーゼによりDGLA(20:3n−6)に変換し、これをS.diclinaΔ5−デサチュラーゼの作用により更にARA(20:4n−6)に変換した。これらの同時形質転換酵素による基質から終産物への変換率は38.6%であり、陰性対照からバックグラウンドは観察されない。
【0152】
この場合に試験した他の基質はSTA(18:4n−3)であり、2種の酵素の共同作用により最終的にEPA(20:5n−3)に変換された。pRSP1とpRSP3をM.alpinaに由来するエロンガーゼ遺伝子(pRSP2)(配列番号22)で同時形質転換した場合にも同様の結果が観察され、両者遺伝子は相互の存在下に機能的であることが判明した(表3及び表4参照)。
【実施例6】
【0153】
Thraustochytrium aureum(ATCC34303)からのΔ5−デサチュラーゼヌクレオチド配列の単離
推定デサチュラーゼを単離するために、実施例2に記載したように全RNAを単離した。実施例2に示したようなSuperScript Preamplificationシステム(LifeTechnologies,Rockville,MD)を使用して全RNA約5μgを逆転写し、第1鎖cDNAを作製した。50μl反応でblock makerプログラムで設計した縮重プライマーRO834(配列番号1)及び838(配列番号4)を使用し、第1鎖cDNA鋳型2μl、20mMTris−HCl,pH8.4、50mM KCl、1.5mM MgCl、各デオキシリボヌクレオチド三リン酸200μM、各プライマー2pmol及びcDNAポリメラーゼ(Clonetech,Palo Alto,CA)を併用した。熱サイクルは次のように実施した。94℃で3分間の初期変性後に94℃で30秒間変性、60℃で30秒間アニーリング及び72℃で1分間伸長を35サイクル実施した。この後、72℃で7分間の最終伸長を実施した。1%アガロースゲル上で約1000bpの2つの弱いバンドを分離し、切出し、QiaQuick Gel Extraction Kit(Qiagen,Valencia,CA)を使用して精製した。実施例2に記載したように末端にT4 DNAポリメラーゼを充填し、平滑末端フラグメントをPCR−Bluntベクター(Invitrogen,Carlbad,CA)にクローニングした。得られたクローンを配列決定した処、クローン30−9からの680bpの部分配列が確認され、その226アミノ酸の翻訳はゼブラフィッシュ成魚からのΔ6−デサチュラーゼ(Genbank受託番号AW281238)とのアミノ酸一致度31.5%であった。ヒトΔ6−デサチュラーゼ(Genbank受託番号AF126799)、Physcomitrella patens(コケ)Δ6−デサチュラーゼ(Genbank受託番号AJ222980)、Brassica napus(キャノーラ)Δ8−スフィンゴ脂質デサチュラーゼ(Genbank受託番号AJ224160)及びヒトΔ5−デサチュラーゼ(ATCC受託番号203557、Genbank受託番号AF199596)とも同程度のアミノ酸相同度(29.6%〜28.7%)が認められた。公知デサチュラーゼと相当程度のアミノ酸相同度があったので、推定デサチュラーゼをコードする全長遺伝子について酵母発現時のその活性を求めた。
【0154】
遺伝子の3’末端を単離するために、Taq PCR Master Mix(Qiagen,Valencia,CA)中反応容量100μlでT.aureum cDNAライブラリーからの精製プラスミド100ngとの反応でプライマーRO936(配列番号23)(5’−GTCGGGCAAGGCGGAAAAGTACCTCAAGAG−3’)及びRO899(配列番号8)(5’−AGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGC−3’)10pmolを併用した。熱サイクル条件は次のように実施した。94℃で3分間の初期溶融後に94℃で1分間、60℃で1分間及び72℃で3分間を30サイクル実施した。この後、72℃で10分間の伸長段階を実施した。1.2kbの予想寸法を含む数個のバンドを上述のように1%アガロースゲル上で分離し、精製した。同じく上述のように、フラグメントの末端を平滑にし、PCR−Bluntにクローニングし、配列決定した。約1.2kbのフラグメント#70−2を配列決定した処、フラグメント30−9とオーバーラップするオープンリーディングフレームと停止コドンを含んでいた。
【0155】
遺伝子の5’末端を単離するために、RO937(配列番号24)(5’−AAACCTGTAGACAATGTGGAGGGGCGTGGG−3’)及びRO899(配列番号8)を50μl PCR反応で使用し、ライブラリーからの精製プラスミドDNA100ngと各プライマー10pmolを使用し、Advantage−GC cDNA PCRキット(Clonetech,Palo Alto,CA)を製造業者のプロトコール通りに使用した。熱サイクル条件は以下の通りとした。初期変性を94℃で1分間実施した後、[94℃で30秒間変性、68℃で3分間アニーリング及び伸長]30サイクルを実施し、68℃で5分間の最終伸長サイクルを実施した。予想寸法範囲にある約500bpのバンドを上述のようにゲル精製し、平滑末端化し、PCR−Bluntにクローニングした。クローン95−2はオープンリーディングフレームと出発コドンを含んでいた。このフラグメントもクローン30−9とオーバーラップしており、確かに同一遺伝子の部分であると思われた。
【0156】
全長遺伝子を単離するために、夫々EcoRIとXhoIで切断される制限部位3’及び5’(下線部)をもつ以下のプライマー、即ち5’プライマーRO972(配列番号25)(5’−ATACTTGAATTCATGGGACGCGGCGGCGAAGGTCAGGTGAAC−3’)、3’プライマーRO949(配列番号26)(5’−CTTATACTCGAGCTAAGCGGCCTTGGCCGCCGCCTGGCC−3’)及び3’プライマーRO950(配列番号27)(5’−CTTATACTCGAGTAAATGGCTCGCGAGGCGAAGCGAGTGGC−3’)を設計した。停止コドンを含むプライマーRO949はGC含量66%であるが、停止コドンの外側の別のプライマーRO950はGC含量が56%しかないので、初期単離の試みでは遺伝子の3’末端に2種のプライマーを使用した。Advantage−GC cDNA PCRキット(Clonetech,Palo Alto,CA)を前項で記載したと同一条件下で使用してRO972/RO949及びRO972/950により50μl PCR反応を実施した。RO972/950プライマー対のみが約1.6kbのバンドを生じた。(標的100ngと同一条件で)ゲノムDNAを鋳型として使用した場合にも同様の寸法のバンドが得られた。フラグメントを上述のようにアガロースゲル上で分離し、ゲル精製し、平滑末端化し、PCR−Bluntにクローニングした。フラグメントを配列決定により評価し、多数のクローンをEcoRI/XhoIで切断して全長遺伝子を切出し、Rapidライゲーションキット(Roche,Indianopolis,IN)を使用してエビアルカリホスファターゼ(Roche,Indianopolis,IN)で予め処理しておいたpYX242 EcoRI/XhoIに連結した。クローン99−3(pRTA4と言う)は1317bpの全長遺伝子(配列番号28、図6)と439aaのオープンリーディングフレーム(配列番号29、図7)を含んでいた。(Δ5−デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列はブダペスト条約に基づき、ATCC,10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110に2001年1月23日付けで寄託し、受託番号PTA−2927を付与された。)この遺伝子はアミノ酸番号171〜175、208〜212、及び376〜380に3個のヒスチジンボックスを含んでいた。この遺伝子の5’末端を翻訳すると、シトクロムb5との相同を示す。
【実施例7】
【0157】
パン酵母におけるT.aureumデサチュラーゼ遺伝子の発現
全長遺伝子を含むクローンpRTA4を実施例4に記載したように酵母宿主S.cerevisiae 334に形質転換し、選択培地にプレーティングした。ロイシンを欠失する最少培地に基質として表5に示すように外因遊離脂肪酸50μMを加え、培養液を24℃で48時間増殖させた。基質変換はDGLA(20:3n−6)からARA(20:4n−6)のみであった。添加したDGLAの23.7%が変換され、この遺伝子はΔ5−デサチュラーゼをコードすることがわかる。
【0158】
表6は酵母宿主から抽出した脂質の百分率として脂肪酸の一部を示す。Δ5−デサチュラーゼ活性についてはバックグラウンド(酵母発現プラスミドPYX242を含む陰性対照で観察されるARAの検出)はなかった。
【実施例8】
【0159】
T.aureumデサチュラーゼとエロンガーゼの同時発現
実施例4に記載したような酵母発現ベクターpYES2に、PUFA経路の更なる酵素、ヒトエロンガーゼ遺伝子を含むpRAE73−A3、でプラスミドpRTA4を同時形質転換し、ロイシンとウラシルを欠失する最少培地で同時形質転換体を選択した。
【0160】
表7は基質DGLA100μMを加えた場合にΔ5−デサチュラーゼがALAを生産し、エロンガーゼがALAに炭素2個を加えてADAを生産できることを示す。ARAとADA(産物)の両者から構成されるT.aureumΔ5−デサチュラーゼの変換率は16.7%であり、陰性対照からバックグラウンドは観察されない。
【0161】
以上の結果、T.aureumΔ5−デサチュラーゼは異種発現系で生成物を生産することができ、この発現系をPUFA生合成経路からの別の異種酵素により更に利用すると予想PUFAを生産することができる。
【実施例9】
【0162】
Thraustochytrium aureum BICC7091(T7091)からのΔ5−デサチュラーゼヌクレオチド配列の単離
実施例1に記載した縮重プライマー対RO834/RO836を使用して部分デサチュラーゼ候補を単離した。DNeasy plant maxiキット(Qiagen,Valencia,CA)を使用してThraustochytrium aureum BICC7091(Bicon India Ltd.,Banglore,India)からゲノムDNAを調製した。プライマーRO834(5’−GTB TAY GAYGTB ACC GAR TGG GTB AAG CGY CAY CCB GGH GGH−3’)(配列番号1)及びRO838(5’−CAT GGT VGG RAA SAG RTG RTG YTC RAT CTG RTA GTT−3’)(配列番号36)を使用してT7091 gDNAを増幅した。単離T7091 gDNA 5μl、0.2m dNTP mix、各プライマー50pM、10×緩衝液10μl及びcDNAポリメラーゼ1.0Uを含む100μl容量中でPCR増幅を実施した。Perkin Elmer 9600で以下の熱サイクル条件を実施した。94℃で3分間後に94℃で30秒間、60℃で30秒間及び72℃で1分間を35サイクル実施した。PCR後に72℃で7分間の付加伸長段階を実施した。PCR増幅混合物を1%アガロースゲル上で泳動させ、QiaQuick Gel Extraction Kit(Qiagen,Valencia,CA)を使用して約1.2Kb及び1.4Kbの増幅フラグメントをゲル精製した。T4DNAポリメラーゼ(LifeTechnologies,Rockville,MD)を使用してこれらのフラグメントの突出末端を「充填」し、単離フラグメントをPCR−Bluntベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングし、組換えプラスミドをTOP10スーパーコンピテント細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)に形質転換した。
【0163】
24個のクローンを調製し、ABI 373A DNA Sequencer(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用して配列決定した。翻訳配列をクエリーとして使用し、tFastAアルゴリズム(蛋白質クエリー配列と任意群のヌクレオチド配列の類似性に関するPearsonとLipman検索)を使用してGenEmb1データベース(Genetics Computer Group(GCG)(Madison,WI)を検索した。遺伝子フラグメントT7091B2は公知データベースと一致があったので更に調べた。T7091B2はヒトΔ5−デサチュラーゼ(GenBank受託番号AF225273)と362アミノ酸で一致度26.8%であった。
【0164】
3’及び5’末端を単離するために、T7091B2内部配列に基づいて新規プライマーを設計した。新規プライマーとベクタープライマーを使用して平均インサート寸法1Kbのクローン約2×10個を含むT7091 cDNAライブラリーをPCR増幅した。ベクタープライマーRO898(5’−CCC AGT CAC GAC GTT GTA AAA CGA CGG CCA G−3’)(配列番号10)及びRO899(5’−AGC GGA TAA CAA TTT CAC ACA GGA AAC AGC−3’)(配列番号8)と併用した場合にクローンT7091B2でより多量の5’及び3’配列を生産したプライマーは夫々RO1065(5’−CGA CAA GAG GAA GAG TGT CCA AAT C−3’)(配列番号37)及びRO1064(5’−CGCCTT CAA GAG TTT TTG TAC GGA ATT GGG−3’)(配列番号38)であった。T7091B2 5’及び3’配列に基づいて2種の新規プライマーを設計した。
【0165】
a.付加NcoI制限部位(下線部)をもつRO1097(5’−CTT GTA CCA TGG GTC GCG GAG CAC AGG GAG−3’)(配列番号39)。
【0166】
b.RO1098(5’−TG AGC TTA CTC GCT CTT GGC AGC TTG GCC−3’)(配列番号40)。
【0167】
この新規Δ5−デサチュラーゼはT.aureum 7091 gDNAを使用してPCR増幅により全体を単離した。単離T7091 gDNA 1μl、0.2μM dNTP mix、各プライマー50pM、10×緩衝液5μl、50mM MgSO 1.5μl及びTaq DNAポリメラーゼ0.5Uを含む50μl容量中でPCRを実施した。Perkin Elmer 9600で以下の熱サイクル条件を実施した。94℃で3分間後に95℃で45秒間、55℃で30秒間及び68℃で2分間を30サイクル実施した。PCR増幅混合物をゲル上で泳動させ、約1.3Kbの増幅フラグメントをゲル精製し、単離フラグメントをpYX242(NcoI/EcoRV)ベクターにクローニングした。2個のクローンpRAT−2a及び2cを作製し、配列決定した。(プラスミドpRAT−2cはブダペスト条約に基づき、American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209に2002年1月付けで寄託し、受託番号を付与された。)配列は4アミノ酸が異なり(図12)、翻訳配列はT.aureum(ATCC34303)Δ5−デサチュラーゼ(実施例6参照)と436アミノ酸で67.4%一致度であった。
【実施例10】
【0168】
Thraustochytrium aureum BICC7091(T7091)からのΔ6−デサチュラーゼヌクレオチド配列の単離
T7091 cDNAライブラリーからの373個の鋳型を配列決定し、ライブラリーの生存性を調べた。翻訳配列をクエリーとして使用し、tFastAアルゴリズムを使用してGenEmb1データベースを検索した。クローン602187281R1(又はクローン281と短縮)は数種の公知デサチュラーゼと一致していた。増幅用プライマーを設計するためにESTクローンの5’及び3’末端を配列決定した。付加NcoI制限部位(下線部)をもつプライマーRO1107(5’−TTT AA CAT GGG CCG CGG CGG CGA GAA AAG−3’)(配列番号41)と、付加HindIII制限部位(下線部)をもつRO1108(5’−GGG AAG AAG CTT TCT ACT GCG CCT TGG CTT TCT TTG−3’)(配列番号42)を使用してT7091 gDNAをPCR増幅した。
【0169】
PCRは上述のようなTaq DNAポリメラーゼを含む50μl容量中で実施した。PCR増幅混合物をゲル上で泳動させ、約1.3Kbの増幅フラグメントをゲル精製し、単離フラグメントをpYX242(NcoI/EcoRV)ベクターにクローニングした。2個のクローンpRAT−1a及び1bを作製し、配列決定した。配列は1アミノ酸が異なり(図13)、翻訳配列はヒトΔ5−デサチュラーゼと430アミノ酸で25%一致度であった。(プラスミドpRAT−1aはブダペスト条約に基づき、American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209に2002年1月付けで寄託し、ATCC受託番号―――を付与された。)
【実施例11】
【0170】
パン酵母におけるT.aureum 7091デサチュラーゼ遺伝子の発現
pYX242(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした全長ヒトΔ5−デサチュラーゼから構成されるクローンpRAT−2a及びpRAT−2cと、pYX242にクローニングした全長ヒトΔ6−デサチュラーゼから構成されるクローンpRAT−1a及びpRAT−1bをコンピテントSaccharomyces cerevisiae株334に形質転換した。酵母形質転換はAlkali−Cation Yeast Transformation Kit(BIO101,Vista,CA)を使用して実施した。ロイシンを欠失する培地(DOB[−Leu])で形質転換体をロイシン栄養要求性に関して選択した。pRAT−1 cDNAの翻訳配列はどの特定公知デサチュラーゼとも強い一致がないので、数種の脂肪酸基質を試験して発現酵素の活性を調べた。pRAT−1a及びpRAT−1bクローンの特異的デサチュラーゼ活性を検出するために、下記特異的脂肪酸基質100μMの存在下に形質転換体を増殖させた。
【0171】
a.リノレン酸(LA,18:2 n−6)(α−リノレン酸への変換はΔ15−デサチュラーゼ活性を示し、γ−リノレン酸への変換はΔ6−デサチュラーゼ活性を示す)。
【0172】
b.α−リノレン酸(ALA,18:3 n−3)(ステアリドン酸への変換はΔ6−デサチュラーゼ活性を示す)。
【0173】
c.ω6−エシコサジエン酸(EDA,20:2n−6)(ジホモγ−リノレン酸)への変換はΔ8−デサチュラーゼ活性を示す)。
【0174】
d.ジホモγ−リノレン酸(DGLA,20:3n−3)(アラキドン酸への変換はΔ5−デサチュラーゼ活性を示す)。
【0175】
pRAT−2クローンの基質は100μM DGLAであった。未改変pYX242ベクターを含むS.cerevisiae 334を陰性対照として使用した。pRAE−73−A3(即ち18C脂肪酸を20C脂肪酸に変換するヒトエロンガーゼ酵素を含むベクター、配列番号21)(実施例5参照)を含むS.cerevisiae 334にもpRAT−1aとpRAT−2cの両者を同時形質転換した。pRAT−1a/pRAE−73−A3クローンの基質はLAとALAであり、pRAT−2c/pRAI−73−A3クローンの基質はLA、ALA及びGLAであった。培養液を特定基質の存在下に選択培地で48時間24℃で増殖させた。実施例4に要約したように脂肪酸分析を実施した。
【0176】
表8は株334(pRAT−2c)によるAA生産を対照株334(pYX242)によるAA生産と比較した例である。AA生産量は22.98%であったが、対照株では検出可能な量ではなかった。334(pRAT−2a)株も検出可能な量のAAを生産しなかった(データは示さず)。2個のクローン間の4個のアミノ酸の相違により(図12、下線部参照)334(pRAT−2a)株から発現される酵素は不活性になった。GLAの存在下にpRAE−73−A3と同時発現させると、更にクローンpRAT−2cからのΔ5−デサチュラーゼ活性が検出された。
【0177】
表9は基質LA、ALA、EDA及びDGLAの存在下に発現させた334(pRAT−1a)及び334(pYX242)株の脂肪酸分析結果である。LAのΔ6−不飽和化はGLAを生産し、EDAのΔ8−不飽和化はDGLAを生産し、DGLAのΔ5−不飽和化はAAを生産する。対照株に比較してT7091遺伝子を含む株ではどちらからも全3種の活性が検出された。変換率によると、この酵素は基質が適正であればΔ5又はΔ8−デサチュラーゼと同様に機能することができる活性なΔ6−デサチュラーゼである。しかし、これらから夫々の不飽和化脂肪酸への変換率はΔ6−不飽和化基質に比較すると低い。2個のクローン間の単一アミノ酸変異(図13、下線部参照)は酵素活性に影響なかった(データは示さず)。変換率を表9の下欄に示す。更にpRAT−1aをLA又はALAの存在下にpRAE−73−A3と同時発現させた場合にもΔ6−デサチュラーゼ活性は検出された。新規脂肪酸の生産がデサチュラーゼの活性によるのかエロンガーゼの活性によるのか、あるいは2種の酵素の組合せによるのかを調べるのは困難であるので、同時発現実験では変換率を計算しなかった。
【0178】
T.aureum 7091からデサチュラーゼ遺伝子を同定するために、2種の新規遺伝子単離方法が開発されている。これらの方法でT7091Δ5−デサチュラーゼ及びΔ6−デサチュラーゼ遺伝子を単離した。これらの遺伝子と適当な基質の存在質に、S.cerevisiaeは対照株よりも著しく高レベルの不飽和脂肪酸を生産した。T7091B2遺伝子(pRAT−2c)とヒトエロンガーゼ遺伝子(pRAE−73−A3)を含む構築物を酵母に同時軽質転換すると、基質GLAはAAに変換された。本実験の結果、pRAT−2cから発現した酵素は(エロンガーゼにより生産された)DGLAをAAに不飽和化することが確認された。「281」遺伝子(pRAT−1a)とヒトエロンガーゼ遺伝子(pRAE−73−A3)を含む構築物を酵母に同時軽質転換すると、基質LAはDGLAに変換された。本実験の結果、pRAT−1aから発現した酵素はLAをGLAに不飽和化することが確認された。
【実施例12】
【0179】
Isochrys galbana 1323からのΔ5−デサチュラーゼヌクレオチド配列の単離
実施例1に記載した縮重プライマー対RO834/RO836を使用して部分デサチュラーゼ候補を単離した。DNeasy plant maxiキット(Qiagen,Valencia,CA)を使用してIsochrys galbana CCMP1323(Provasoli−Guillard National Center for the Culture of Marine Phytoplankton(CCMP),West Boothbay Harbor,MA)からゲノムDNAを調製した。プライマーRO834(5’−GTB TAY GAYGTB ACC GAR TGG GTB AAG CGY CAY CCB GGH GGH−3’)(配列番号1)及びRO838(5’−CAT GGT VGG RAA SAG RTG RTG YTC RAT CTG RTA GTT−3’)(配列番号10)を使用してI.galbana gDNAを増幅した。単離I.galbana gDNA 1μl、0.2μM dNTP mix、各プライマー50pM、10×緩衝液5μl、50mM MgSO 1.5μl及びTaq DNAポリメラーゼ0.5Uを含む50μl容量中でPCRを実施した。Perkin Elmer 9600で以下の熱サイクル条件を実施した。94℃で3分間後に95℃で45秒間、55℃で30秒間及び68℃で2分間を30サイクル実施した。PCR増幅混合物を1.0%アガロースゲル上で泳動させ、QiaQuick Gel Extraction Kit(Qiagen,Valencia,CA)を使用して約1.1Kbの増幅フラグメントをゲル精製した。T4DNAポリメラーゼ(LifeTechnologies,Rockville,MD)を使用してフラグメントの突出末端を「充填」し、単離フラグメントをPCR−Bluntベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングし、組換えプラスミドをTOP10スーパーコンピテント細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)に形質転換した。
【0180】
6個のクローンを調製し、ABI 373A DNA Sequencer(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用して配列決定した。全配列は同一であった。翻訳配列はクローンpRTA4(実施例6)でT.aureum(ATCC34303)Δ5−デサチュラーゼと335アミノ酸で47.5%一致度であり、クローンpRAT−2c(実施例9)でT.aureum BICC7091Δ5−デサチュラーゼと278アミノ酸で一致度45.3%であった。
【0181】
5’及び3’末端を単離するために、単離I.galbanaフラグメントの内部配列に基づいて新規プライマーを設計した。遺伝子の5’末端にはRO1235(5’−CGA AGT TGG TGA AGA TGT AGG TGC CG−3’)(配列番号43)を使用し、遺伝子の3’末端にはRO1232(5’−GAG CGA CGC GTA CAA CAA CTT TCA CGT−3’)(配列番号44)を使用した。GeneRacer(登録商標)キット(Invitrogen,Carlsbad,CA)とSuperscript II(登録商標)酵素(Invitrogen,Carlsbad,CA)に付属のcDNA末端の迅速増幅又はRACEと供に全RNA約1.4μgを製造業者の指示に従って使用して逆転写し、cDNAターゲットを生産した。末端の初期増幅には、Perkin Elmer 9600で以下の熱サイクルプロトコールを実施した。94℃で2分間初期溶融後に94℃で30秒間と72℃で3分間を5サイクル、94℃で30秒間と70℃で30秒間と72℃で3分間を10サイクル、更に94℃で30秒間と68℃で30秒間と72℃で3分間を20サイクル実施した後、72℃で10分間の伸長を実施した。この一次PCR反応は10pmolRO1235又はRO1232と、夫々GeneRacer(登録商標)5’プライマー(5’−CGA CTG GAG CAC GAG GAC ACT GA−3’)(配列番号45)又はGeneRacer(登録商標)3’プライマー(5’−GCT GTC AAC GAT ACG CTA CGT AAC G−3’)(配列番号46)と、Thermozyme(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA)1lと、cDNA1μlを最終容量50μl中で製造業者の指示に従って使用して実施した。
【0182】
初期反応物2μl、入れ子プライマーRO1234(5’−AGC TCC AGG TGA TTG TGC ACG CGC AG−3’)(配列番号47)又はRO1233(5’−GAC TTT GAG AAG CTG CGC CTC GAG CTG−3’)(配列番号48)10pmolと夫々GeneRacer(登録商標)入れ子5’プライマー(5’−GGA CAC TGA CAT GGA CTG AAG GAG TA−3’)(配列番号49)及びGeneRacer(登録商標)入れ子3’プライマー(5’−CGC TAC GTA ACG GCA TGA CAG TG−3’)(配列番号50)30pmolと、MgSOを使用するPlatinum Taq(登録商標)PCRx(Clonetech,Palo Alto,CA)を製造業者の指示に従って使用して入れ子反応を実施した。Perkin Elmer 9600で以下の熱サイクルパラメーターを実施した。94℃で2分間初期溶融後に94℃で30秒間と72℃で2分間を5サイクル、94℃で30秒間と70℃で2分間を5サイクル、更に94℃で30秒間と65℃で30秒間と68℃で2分間を20サイクル実施した後、68℃で10分間の伸長を実施した。PCR産物をアガロースゲル分析した処、5’反応で約800bpのバンドと3’反応で約1.2kbのバンドが検出された。次いでPCR Blunt(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングし、Top10スーパーコンピテント細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)に形質転換し、配列決定した処、開始コドンと停止コドンの両者をもつオープンリーディングフレームが検出された。
【0183】
クローニング用制限部位(夫々下線で示したEcoRIとSalI)を付加したプライマーRO1309(5’−ATG ATG GAA TTC ATG GTG GCA GGC AAA TCA GGC GC−3’)(配列番号51)及びRO1310(5’−AAT AAT GTC GAC CTA GTG CGT GTG CTC GTG GTA GG−3’)(配列番号52)を使用して全長遺伝子を単離した。上述のように、cDNA2μlをターゲットとしてMgSOを使用するPlatinum Taq(登録商標)PCRx(Clonetech,Palo Alto,CA)を製造業者のプロトコールに従って10pmolのプライマーRO1309及び1310と共に使用した。熱サイクルパラメーターは以下の通りで実施した。94℃で2分間初期溶融後に94℃で30秒間と72℃で2分間を5サイクル、94℃で30秒間と70℃で2分間を5サイクル、更に94℃で30秒間と65℃で30秒間と68℃で2分間を20サイクル実施した後、68℃で10分間の伸長を実施した。QiaQuickゲル精製キット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して反応の単一生成物をゲル精製し、EcoRIとSalIで切断し、Rapidライゲーションキット(Roche,Indianopolis,IN)を使用してpYX242 EcoRI/XhoI直鎖化DNAに連結し、pRIG−1と命名した。クローンpRIG−1は1329bpの全長遺伝子(配列番号34、図14)と442アミノ酸のオープンリーディングフレーム(配列番号35、図15)を含んでいた。(プラスミドpRIG−1はブダペスト条約に基づき、American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209に2002年1月付けで寄託し、ATCC受託番号―――を付与された。)
【実施例13】
【0184】
パン酵母におけるI.galbanaデサチュラーゼ遺伝子の発現
全長遺伝子を含むクローンpRIG−1を実施例4に記載したように酵母宿主S.cerevisiae 334に形質転換し、選択培地にプレーティングした。ロイシンを欠失する最少培地に基質として表10に示すように外来遊離脂肪酸50μMを加え、培養液を24℃で48時間増殖させた。基質変換はETA(20:4n−3)からEPA(20:5n−3)とDGLA(20:3n−6)からAA(20:4n−6)であった。ARAへの変換率45.4%、EPAへの変換率59.75%であり、この遺伝子はΔ5−デサチュラーゼをコードすることがわかる。表10は酵母宿主から抽出した脂質の百分率として脂肪酸の一部を示す。Δ5−デサチュラーゼ活性についてはバックグラウンド(酵母発現プラスミドpYX242を含む陰性対照で観察されるARA又はEPAの検出)は殆ど又は全くなかった。
【実施例14】
【0185】
I.galbanaデサチュラーゼ遺伝子とエロンガーゼの同時発現
実施例4に記載したような酵母発現ベクターpYES2にヒトエロンガーゼ遺伝子を含むPUFA経路付加酵素pRAE73−A3でプラスミドpRIG−1を同時形質転換し、ロイシンとウラシルを欠失する最少培地で同時形質転換体を選択した。DGLAやETA等の基質を加えると、Δ5−デサチュラーゼは活発にARA又はEPAを生成し、エロンガーゼが炭素2個を加えてADA又は3−DPAを生産できる。従って、I.galbanaΔ5−デサチュラーゼは異種発現系で生成物を生産することができ、この発現系をPUFA生合成経路からの別の異種酵素により更に利用すると予想PUFAを生産することができる。
【0186】
栄養組成物
詳細な説明に記載したPUFAは種々の栄養補給剤、乳児用調製粉乳、代用栄養剤及び他の栄養溶液で利用することができる。
【0187】
I.乳児用調製粉乳
A.Isomil(登録商標)鉄分配合調製豆乳:
用途:牛乳アレルギー又は過敏症の乳児、幼児及び成人用飲料。乳糖を避けなければならない疾患(ラクターゼ欠乏症、乳糖不耐症及びガラクトース血症)の患者への栄養。
【0188】
特徴:
−牛乳蛋白アレルギー又は過敏症の症状を避けるために大豆蛋白単離物を使用。
−乳糖に関連する下痢を避けるために無乳糖処方とした。
−浸透圧性下痢の危険を減らすために低浸透圧(240mOs/kg水)とした。
−炭水化物吸収を増進すると共に、損傷した消化管の吸収能を越える危険を減らすために複合炭水化物(コーンシロップと蔗糖)を使用。
−鉄欠乏症の予防を助長するために100カロリー当たり1.8mgの鉄(硫酸鉄として)を配合。
−推奨値のビタミンとミネラルを配合。
−推奨値の必須脂肪酸を提供するために植物油を配合。
−乳白色、乳状コンシステンシー及びよい香り。
【0189】
成分:(パルベ)水85%、コーンシロップ4.9%、糖質(蔗糖)2.6%、大豆油2.1%、大豆蛋白単離物1.9%、ヤシ油1.4%、クエン酸カルシウム0.15%、0第三リン酸カルシウム.11%、クエン酸カリウム、第一リン酸カリウム、塩化カリウム、モノ及びジグリセリド、大豆レシチン、カラギナン、アスコルビン酸、L−メチオニン、塩化マグネシウム、第二リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、タウリン、硫酸第一鉄、m−イノシトール、酢酸α−トコフェリル、硫酸亜鉛、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、ヨウ化カリウム、フィロキノン、ビオチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0190】
B.Isomil(登録商標)DF下痢用調製豆乳:
用途:乳幼児の下痢の食物管理用短期摂取食。
【0191】
特徴:
−特に下痢管理用として大豆繊維からの食物繊維を加えた最初の乳児用調製乳である。
−乳児の軽度から重度の下痢期間に水状軟便期間を短くすることが臨床的に判明した。
−乳児の栄養要件を満足するように栄養学的に完全である。
−L−メチオニンを添加した大豆蛋白単離物は乳児の全必須アミノ酸の必要値を満足するか又はこれを上回る。
−乳糖に関連する下痢を避けるために無乳糖処方とした。
−浸透圧性下痢の危険を減らすために低浸透圧(240mOs/kg水)とした。
−炭水化物吸収を増進すると共に、損傷した消化管の吸収能を越える危険を減らすために複合炭水化物(コーンシロップと蔗糖)を使用。
−米国小児科学会栄養委員会により推奨され、乳児用調製乳法に規定されるビタミン及びミネラル値を満足するか又はこれを上回る。
−鉄欠乏症の予防を助長するために100カロリー当たり1.8mgの鉄(硫酸鉄として)を配合。
−推奨値の必須脂肪酸を提供するために植物油を配合。
【0192】
成分:(パルベ)水86%、コーンシロップ4.8%、糖質(蔗糖)2.5%、大豆油2.1%、大豆蛋白単離物2.0%、ヤシ油1.4%、大豆繊維0.77%、クエン酸カルシウム0.12%、第三リン酸カルシウム0.11%、クエン酸カリウム0.10%、塩化カリウム、第一リン酸カリウム、モノ及びジグリセリド、大豆レシチン、カラギナン、塩化マグネシウム、アスコルビン酸、L−メチオニン、第二リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、タウリン、硫酸第一鉄、m−イノシトール、酢酸α−トコフェリル、硫酸亜鉛、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、ヨウ化カリウム、フィロキノン、ビオチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0193】
C.Isomil(登録商標)SF鉄分入り無蔗糖調製豆乳:
用途:牛乳蛋白アレルギーもしくは過敏症又は蔗糖不耐の乳児、幼児及び成人用飲料。乳糖と蔗糖を避けなければならない疾患の患者への栄養。
【0194】
特徴:
−牛乳蛋白アレルギー又は過敏症の症状を避けるために大豆蛋白単離物を使用。
−乳糖に関連する下痢を避けるために無乳糖処方とした(炭水化物源はPolycose(登録商標)グルコースポリマーである)。
−蔗糖不耐患者のために無蔗糖とした。
−浸透圧性下痢の危険を減らすために低浸透圧(180mOs/kg水)とした。
−鉄欠乏症の予防を助長するために100カロリー当たり1.8mgの鉄(硫酸鉄として)を配合。
−推奨値のビタミンとミネラルを配合。
−推奨値の必須脂肪酸を提供するために植物油を配合。
−乳白色、乳状コンシステンシー及びよい香り。
【0195】
成分:(パルベ)水75%、加水分解コーンスターチ11.8%、大豆油4.1%、大豆蛋白単離物4.1%、ヤシ油2.8%、改質コーンスターチ1.0%、第三リン酸カルシウム0.38%、クエン酸カリウム0.17%、塩化カリウム0.13%、モノ及びジグリセリド、大豆レシチン、塩化マグネシウム、アスコルビン酸、L−メチオニン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、カラギナン、タウリン、硫酸第一鉄、m−イノシトール、酢酸α−トコフェリル、硫酸亜鉛、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、ヨウ化カリウム、フィロキノン、ビオチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0196】
D.Isomil(登録商標)20即製鉄分配合調製豆乳、20Cal/液量オンス:
用途:大豆摂取を必要とする場合。
【0197】
成分:(パルベ)水85%、コーンシロップ4.9%、糖質(蔗糖)2.6%、大豆油2.1%、大豆蛋白単離物1.9%、ヤシ油1.4%、クエン酸カルシウム0.15%、第三リン酸カルシウム0.11%、クエン酸カリウム、第一リン酸カリウム、塩化カリウム、モノ及びジグリセリド、大豆レシチン、カラギナン、アスコルビン酸、L−メチオニン、塩化マグネシウム、第二リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、タウリン、硫酸第一鉄、m−イノシトール、酢酸α−トコフェリル、硫酸亜鉛、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、ヨウ化カリウム、フィロキノン、ビオチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0198】
E.Similac(登録商標)乳児用調製乳:
用途:乳児用調製乳を必要とする場合:1歳未満で授乳の中断を決定した場合、授乳の補完が必要な場合、又は授乳を採用しない際の日常食として。
【0199】
特徴:
−良好な成長に適した品質と量の蛋白質を使用すると共に、熱変性により乳関連腸内失血の危険を減らした。
−(二重均質化)植物油ブレンドに由来する脂肪を使用し、吸収し易い必須リノレン酸を提供する。
−人乳に似た割合の乳糖としての炭水化物を配合した。
−成長中の臓器へのストレスを最小限にするために低腎溶質負荷とした。
−粉末、濃厚液及び即製形態。
【0200】
成分:(−D)水、脱脂乳、乳糖、大豆油、ヤシ油、モノ及びジグリセリド、大豆レシチン、アスコルビン酸、カラギナン、塩化コリン、タウリン、m−イノシトール、酢酸α−トコフェリル、硫酸亜鉛、ナイアシンアミド、硫酸第一鉄、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、フィロキノン、ビオチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0201】
F.Similac(登録商標)NeoCare鉄分入り早産児用調製乳:
用途:退院後の早産児の特殊栄養要件を満たす。Similac NeoCareは成長の遅れを取り戻し、成長を助けるために必要な付加熱量、蛋白質、ビタミン及びミネラルを提供するために開発された栄養学的に完全な処方である。
【0202】
特徴:
−熱量とビタミン補給の必要を減らす。標準処方(20Cal/液量オンス)よりも高熱量(22Cal/液量オンス)。
−早産児の特殊消化要件を満足し易くするために中鎖トリグリセリド(MCToil)を加えた高吸収脂肪ブレンドを使用した。
−入院中に開始した栄養補給を延長するためにより高値の100カロリー当たり蛋白質、ビタミン及びミネラルを配合した。
−骨無鉱化を改善するためにカルシウム及びリン濃度を高くした。
【0203】
成分:−Dコーンシロップ固形分、脱脂乳、乳糖、濃縮ホエイ蛋白、大豆油、高オレイン酸サフラワー油、分留ヤシ油(中鎖トリグリセリド)、ヤシ油、クエン酸カリウム、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アスコルビン酸、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、タウリン、硫酸第一鉄、m−イノシトール、塩化コリン、パルミチン酸アスコルビル、L−カルニチン、酢酸α−トコフェリル、硫酸亜鉛、ナイアシンアミド、混合トコフェロール、クエン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、塩酸チアミン、パルミチン酸ビタミンA、βカロチン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、フィロキノン、ビオチン、亜セレン酸ナトリウム、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0204】
G.Similac Natural Care即製低鉄分母乳強化剤、24Cal/液量オンス:
用途:母乳と混合するか又は出産時体重の少ない乳児に母乳の代用として与える。
【0205】
成分:−D水、脱脂乳、加水分解コーンスターチ、乳糖、分留ヤシ油(中鎖トリグリセリド)、濃縮ホエイ蛋白、大豆油、ヤシ油、第三リン酸カルシウム、クエン酸カリウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、炭酸カルシウム、モノ及びジグリセリド、大豆レシチン、カラギナン、塩化コリン、m−イノシトール、タウリン、ナイアシンアミド、L−カルニチン、酢酸α−トコフェリル、硫酸亜鉛、塩化カリウム、パントテン酸カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸第二銅、リボフラビン、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、ビオチン、葉酸、硫酸マンガン、フィロキノン、ビタミンD3、亜セレン酸ナトリウム及びシアノコバラミン。
【0206】
本発明の種々のPUFAは上記乳児用調製乳及び当分野で公知の他の乳児用調製乳に代用及び/又は添加することができる。
【0207】
II.栄養製剤
A.ENSURE(登録商標)
用途:ENSUREは経口栄養補給剤として食事と共にもしくは食間に使用するか又は代用食として適量を使用することを主目的とする低残渣液体食品である。ENSUREは無乳糖無グルテンであり、低コレステロール食を含む調整食に使用するのに適している。主に経口補給剤であるが、経管供給することもできる。
【0208】
患者状態:
−調整食摂取患者、
−危険な栄養状態にある高齢者、
−不随意体重減少患者、
−病気又は手術から回復中の患者、
−低残渣食が必要な患者。
【0209】
成分:−D水、糖質(蔗糖)、マルトデキストリン(トウモロコシ)、カゼイン酸カルシウム及びナトリウム、高オレイン酸サフラワー油、大豆蛋白単離物、大豆油、キャノーラ油、クエン酸カリウム、第三リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、第二リン酸マグネシウム、人工フレーバー、塩化ナトリウム、大豆レシチン、塩化コリン、アスコルビン酸、カラギナン、硫酸亜鉛、硫酸第一鉄、酢酸α−トコフェリル、ゲランガム、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、葉酸、モリブデン酸ナトリウム、塩化クロム、ビオチン、ヨウ化カリウム、亜セレン酸ナトリウム。
【0210】
B.ENSURE(登録商標)BARS:
用途:ENSURE BARSは食間又は食事と共に補充する完全にバランスのとれた補助栄養である。他のスナック菓子に代用する美味しく栄養分の高い代用食である。ENSURE BARSは1本当たり乳糖含有量が<1gであり、チョコレートファッジブラウニーフレーバーは無グルテンである。(ハニーグラハムクランチフレーバーはグルテンを含む。)
患者状態:
−付加熱量、蛋白、ビタミン及びミネラルを必要とする患者。
−十分な熱量と栄養を取込めない者に特に有用である。
−噛む能力と飲込む能力のある者。
−落花生アレルギー又は任意型のナッツアレルギーのある者には使用できない。
【0211】
成分:ハニーグラハムクランチ−高果糖コーンシロップ、大豆蛋白単離物、ブラウンシュガー、蜂蜜、マルトデキストリン(トウモロコシ)、クリスプライス(米粉、糖質[蔗糖]、食塩[塩化ナトリウム]及び麦芽)、オート麦ぬか、部分加水分解解綿実油及び大豆油、大豆多糖、グリセリン、濃縮ホエイ蛋白、ポリデキストロース、果糖、カゼイン酸カルシウム、ココア粉末、人工フレーバー、キャノーラ油、高オレイン酸サフラワー油、脱脂粉乳、ホエイ粉末、大豆レシチン及びコーン油。ナッツを加工する施設で製造。
【0212】
ビタミン及びミネラル:第三リン酸カルシウム、第二リン酸カリウム、酸化マグネシウム、食塩(塩化ナトリウム)、塩化カリウム、アスコルビン酸、オルトリン酸第二鉄、酢酸α−トコフェリル、ナイアシンアミド、酸化亜鉛、パントテン酸カルシウム、グルコン酸銅、硫酸マンガン、リボフラビン、βカロチン、塩酸ピリドキシン、一硝酸チアミン、葉酸、ビオチン、塩化クロム、ヨウ化カリウム、亜セレン酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0213】
蛋白質:ハニーグラハムクランチ−蛋白源は大豆蛋白単離物と乳蛋白のブレンドである。
大豆蛋白単離物 74%
乳蛋白 26%。
【0214】
脂肪:ハニーグラハムクランチ−脂肪源は部分加水分解綿実油、大豆油、キャノーラ油、高オレイン酸サフラワー油及び大豆レシチンのブレンドである。
部分加水分解綿実油及び大豆油 76%
キャノーラ油 8%
高オレイン酸サフラワー油 8%
コーン油 4%
大豆レシチン 4%。
【0215】
炭水化物:ハニーグラハムクランチ−炭水化物源は高果糖コーンシロップ、ブラウンシュガー、マルトデキストリン、蜂蜜、クリスプライス、グリセリン、大豆多糖及びオート麦ぬかの組合せである。
高果糖コーンシロップ 24%
ブラウンシュガー 21%
マルトデキストリン 12%
蜂蜜 11%
クリスプライス 9%
グリセリン 9%
大豆多糖 7%
オート麦ぬか 7%。
【0216】
C.ENSURE(登録商標)HIGH PROTEIN:
用途:ENSURE HIGH PROTEINは食事に付加熱量、蛋白、ビタミン及びミネラルを必要とする者のための濃縮高蛋白液体食品である。経口栄養補給剤として食事と共にもしくは食間に使用するか又は代用食として適量を使用することができる。ENSURE HIGH PROTEINは無乳糖無グルテンであり、一般外科手術又は股関節骨折から回復中の者や、ストレス潰瘍の危険のある患者が使用するのに適している。
【0217】
患者状態:
−付加熱量、蛋白、ビタミン及びミネラルを必要とする患者、例えば一般外科手術又は股関節骨折から回復中の者、ストレス潰瘍の危険のある患者及び低コレステロール食患者。
【0218】
特徴:
−低飽和脂肪、
−1回分当たり総脂肪6g、コレステロール<5mg、
−濃厚でクリーミーな食感、
−優良な蛋白、カルシウム並びに他の必須ビタミン及びミネラル源、
−低コレステロール食用、
−無乳糖で消化し易い。
【0219】
成分:
バニラシュプリーム:−D水、糖質(蔗糖)、マルトデキストリン(トウモロコシ)、カゼイン酸カルシウム及びナトリウム、高オレイン酸サフラワー油、大豆蛋白単離物、大豆油、キャノーラ油、クエン酸カリウム、第三リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、第二リン酸マグネシウム、人工フレーバー、塩化ナトリウム、大豆レシチン、塩化コリン、アスコルビン酸、カラギナン、硫酸亜鉛、硫酸第一鉄、酢酸α−トコフェリル、ゲランガム、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、葉酸、モリブデン酸ナトリウム、塩化クロム、ビオチン、ヨウ化カリウム、亜セレン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0220】
蛋白質:蛋白源は生物学的価値の高い2種の蛋白であるカゼインと大豆のブレンドである。
カゼイン酸ナトリウム及びカルシウム 85%
大豆蛋白単離物 15%。
【0221】
脂肪:脂肪源は高オレイン酸サフラワー油、キャノーラ油及び大豆油の3種の油のブレンドである。
高オレイン酸サフラワー油 40%
キャノーラ油 30%
大豆油 30%。
【0222】
ENSURE HIGH PROTEINの脂肪値は米国心臓学会(AHA)ガイドラインに合致する。ENSURE HIGH PROTEIN中の脂肪6gは総熱量の24%に相当し、脂肪の2.6%は飽和脂肪酸に由来し、7.9%はポリ不飽和脂肪酸に由来する。これらの値は脂肪由来総熱量<30%、飽和脂肪酸由来熱量<10%、及びポリ不飽和脂肪酸由来総熱量<10%というAHAガイドラインの範囲内である。
【0223】
炭水化物:ENSURE HIGH PROTEINはマルトデキストリンと蔗糖の組合わせを含有している。マイルドな甘味及びフレーバーバラエティ(バニラシュプリーム、チョコレートロイヤル、ワイルドベリー及びバナナ)にピーカン、チェリー、イチゴ、レモン及びオレンジのVARI−FLABORS(登録商標)フレーバーパックを加え、風味低下を防止すると共に、患者コンプライアンスを助長する。
【0224】
バニラ及び他の非チョコレートフレーバー:
蔗糖 60%
マルトデキストリン 40%。
【0225】
チョコレート:
蔗糖 70%
マルトデキストリン 30%。
【0226】
D.ENSURE(登録商標)LIGHT
用途:ENSURE LIGHTは経口栄養補給剤として食事と共にもしくは食間に使用することを目的とする低脂肪液体食品である。ENSURE LIGHTは無乳糖無グルテンであり、低コレステロール食を含む調整食に使用するのに適している。
【0227】
患者状態:
−ENSUREよりも脂肪が50%少なく、熱量が20%少ない補給剤で付加栄養を必要とする正常体重又は超過体重患者。
−食事が適正ではなく、付加栄養を必要とする健康な成人。
【0228】
特徴:
−低脂肪及び低飽和脂肪。
−1回分当たり総脂肪3g、コレステロール<5mg。
−濃厚でクリーミーな食感。
−優良なカルシウム並びに他の必須ビタミン及びミネラル源。
−低コレステロール食用。
−無乳糖で消化し易い。
【0229】
成分:
フレンチバニラ:−D水、マルトデキストリン(トウモロコシ)、糖質(蔗糖)、カゼイン酸カルシウム、高オレイン酸サフラワー油、キャノーラ油、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第二リン酸マグネシウム、天然及び人工フレーバー、第三リン酸カルシウム、セルロースゲル、塩化コリン、大豆レシチン、カラギナン、食塩(塩化ナトリウム)、アスコルビン酸、セルロースガム、硫酸第一鉄、酢酸α−トコフェリル、硫酸亜鉛、ナイアシンアミド、硫酸マンガン、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、塩酸チアミン、パルミチン酸ビタミンA、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、塩化クロム、葉酸、モリブデン酸ナトリウム、ビオチン、ヨウ化カリウム、亜セレン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0230】
蛋白質:蛋白源はカゼイン酸カルシウムである。
カゼイン酸カルシウム 100%。
【0231】
脂肪:脂肪源は高オレイン酸サフラワー油とキャノーラ油の2種の油のブレンドである。
高オレイン酸サフラワー油 70%
キャノーラ油 30%。
【0232】
ENSURE LIGHTの脂肪値は米国心臓学会(AHA)ガイドラインに合致する。ENSURE LIGHT中の脂肪3gは総熱量の13.5%に相当し、脂肪の1.4%は飽和脂肪酸に由来し、2.6%はポリ不飽和脂肪酸に由来する。これらの値は脂肪由来総熱量<30%、飽和脂肪酸由来熱量<10%、及びポリ不飽和脂肪酸由来総熱量<10%というAHAガイドラインの範囲内である。
【0233】
炭水化物:ENSURE LIGHTはマルトデキストリンと蔗糖の組合わせを含有している。チョコレートフレーバーはコーンシロップも含有している。マイルドな甘味及びフレーバーバラエティ(フレンチバニラ、チョコレートシュプリーム、ストロベリースワール)にピーカン、チェリー、イチゴ、レモン及びオレンジのVARI−FLABORS(登録商標)フレーバーパックを加え、風味低下を防止すると共に、患者コンプライアンスを助長する。
【0234】
バニラ及び他の非チョコレートフレーバー:
蔗糖 51%
マルトデキストリン 49%。
【0235】
チョコレート:
蔗糖 47.0%
コーンシロップ 26.5%
マルトデキストリン 26.5%。
【0236】
ビタミン及びミネラル:ENSURE LIGHTの1回分8液量オンスは24種の主要ビタミン及びミネラルのRDIの少なくとも25%を提供する。
【0237】
カフェイン:チョコレートフレーバーは8液量オンス当たりカフェイン2.1mgを含有している。
【0238】
E.ENSURE PLUS(登録商標)
用途:ENSURE PLUSは通常蛋白濃度で付加熱量及び栄養を必要とする場合に使用する高熱量低残渣液体食品である。経口栄養補給剤として食事と共にもしくは食間に使用するか又は代用食として適量を使用することを主目的とする。ENSURE PLUSは無乳糖無グルテンである。主に経口栄養補給剤であるが、経管供給することもできる。
【0239】
患者状態:
−量を制限しながら通常蛋白濃度で付加熱量及び栄養を必要とする患者。
−体重増加又は健康体重の維持を必要とする患者。
【0240】
特徴:
−濃厚でクリーミーな食感、
−良好な必須ビタミン及びミネラル源。
【0241】
成分:
バニラ:−D水、コーンシロップ、マルトデキストリン(トウモロコシ)、コーン油、カゼイン酸ナトリウム及びカルシウム、糖質(蔗糖)、大豆蛋白単離物、塩化マグネシウム、クエン酸カリウム、第三リン酸カルシウム、大豆レシチン、天然及び人工フレーバー、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化コリン、アスコルビン酸、カラギナン、硫酸亜鉛、硫酸第一鉄、酢酸α−トコフェリル、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第二銅、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、パルミチン酸ビタミンA、葉酸、ビオチン、塩化クロム、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、亜セレン酸ナトリウム、フィロキノン、シアノコバラミン及びビタミンD3。
【0242】
蛋白質:蛋白源は生物学的価値の高2い種の蛋白であるカゼインと大豆のブレンドである。
カゼイン酸ナトリウム及びカルシウム 84%
大豆蛋白単離物 16%。
【0243】
脂肪:脂肪源はコーン油である。
コーン油 100%。
【0244】
炭水化物:ENSURE PLUSはマルトデキストリンと蔗糖の組合わせを含有している。マイルドな甘味及びフレーバーバラエティ(バニラ、チョコレート、ストロベリー、コーヒー、バターピーカン及びエッグノッグ)にピーカン、チェリー、イチゴ、レモン及びオレンジのVARI−FLABORS(登録商標)フレーバーパックを加え、風味低下を防止すると共に、患者コンプライアンスを助長する。
【0245】
バニラ、ストロベリー、バターピーカン、及びコーヒーフレーバー:
コーンシロップ 39%
マルトデキストリン 38%
蔗糖 23%。
【0246】
チョコレート及びエッグノッグフレーバー:
コーンシロップ 36%
マルトデキストリン 34%
蔗糖 30%。
【0247】
ビタミン及びミネラル:ENSURE PLUSの1回分8液量オンスは25種の主要ビタミン及びミネラルのRDIの少なくとも15%を提供する。
【0248】
カフェイン:チョコレートフレーバーは8液量オンス当たりカフェイン3.1mgを含有している。コーヒーフレーバーは微量のカフェインを含有している。
【0249】
F.ENSURE PLUS(登録商標)HN
用途:ENSURE PLUS HNは熱量及び蛋白必要値が高いか又は耐容量の低い者を対象とした栄養学的に完全な高熱量高窒素液体食品である。経口補充用として使用してもよいし、完全経管栄養補充用として使用してもよい。ENSURE PLUS HNは無乳糖無グルテンである。
【0250】
患者状態:
−手術又は怪我後のように熱量及び蛋白必要値 が高い患者。
−耐容量が低い早期満腹患者。
【0251】
特徴:
−補助又は完全栄養、
−経口又は経管供給、
−1.5CaVmL、
−高窒素、
−高熱量密度。
【0252】
成分:
バニラ:−D水、マルトデキストリン(トウモロコシ)、カゼイン酸ナトリウム及びカルシウム、コーン油、糖質(蔗糖)、大豆蛋白単離物、塩化マグネシウム、クエン酸カリウム、第三リン酸カルシウム、大豆レシチン、天然及び人工フレーバー、クエン酸ナトリウム、塩化コリン、アスコルビン酸、タウリン、L−カルニチン、硫酸亜鉛、硫酸第一鉄、酢酸α−トコフェリル、ナイアシンアミド、カラギナン、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第二銅、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、パルミチン酸ビタミンA、葉酸、ビオチン、塩化クロム、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、亜セレン酸ナトリウム、フィロキノン、シアノコバラミン及びビタミンD3。
【0253】
G.ENSURE(登録商標)POWDER
用途:ENSURE POWDER(水で再構成)は経口栄養補給剤として食事と共にもしくは食間に使用することを主目的とする低残渣液体食品である。ENSURE POWDERは無乳糖無グルテンであり、低コレステロール食を含む調整食に使用するのに適している。
【0254】
患者状態:
−調整食摂取患者、
−危険な栄養状態にある高齢者、
−病気/手術から回復中の患者、
−低残渣食が必要な患者。
【0255】
特徴:
−混合し易く簡便、
−低飽和脂肪、
−1回分当たり総脂肪9g、コレステロール<5mg、
−高ビタミン及びミネラル、
−低コレステロール食用、
−無乳糖で消化し易い。
【0256】
成分:−Dコーンシロップ、マルトデキストリン(トウモロコシ)、糖質(蔗糖)、コーン油、カゼイン酸ナトリウム及びカルシウム、大豆蛋白単離物、人工フレーバー、クエン酸カリウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、第三リン酸カルシウム、塩化カリウム、大豆レシチン、アスコルビン酸、塩化コリン、硫酸亜鉛、硫酸第一鉄、酢酸α−トコフェリル、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、塩酸チアミン、硫酸第二銅、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、パルミチン酸ビタミンA、葉酸、ビオチン、モリブデン酸ナトリウム、塩化クロム、ヨウ化カリウム、亜セレン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0257】
蛋白質:蛋白源は生物学的価値の高い2種の蛋白であるカゼインと大豆のブレンドである。
カゼイン酸ナトリウム及びカルシウム 84%
大豆蛋白単離物 16%。
【0258】
脂肪:脂肪源はコーン油である。
コーン油 100%。
【0259】
炭水化物:ENSURE POWDERはコーンシロップとマルトデキストリンと蔗糖の組合わせを含有している。ENSURE POWDERのマイルドな甘味にピーカン、チェリー、イチゴ、レモン及びオレンジのVARI−FLABORS(登録商標)フレーバーパックを加え、風味低下を防止すると共に、患者コンプライアンスを助長する。
【0260】
バニラ:
コーンシロップ 35%
マルトデキストリン 35%
蔗糖 30%。
【0261】
H.ENSURE(登録商標)PUDDING
用途:ENSURE PUDDINGは食事と共にもしくは食間に使用する非液体形態でバランスのとれた栄養を提供する濃厚栄養補給剤である。コンシステンシー調整食(例えば軟食、ピューレ又は全液)や、飲込み障害のある者に適している。ENSURE PUDDINGは無グルテンである。
【0262】
患者状態:
−コンシステンシー調整食(例えば軟食、ピューレ又は全液)摂取患者、
−飲込み障害のある患者。
【0263】
特徴:
−濃厚でクリーミーな良好な食感、
−良好な必須ビタミン及びミネラル源、
−冷蔵不要で簡便、
−無グルテン。
【0264】
5オンス当たり栄養プロフィル:熱量250、蛋白10.9%、総脂肪34.9%、炭水化物54.2%。
【0265】
成分:
バニラ:−D脱脂乳、水、糖質(蔗糖)、部分水素化大豆油、改質食物澱粉、硫酸マグネシウム、ラクチル酸ステアロイルナトリウム、第二リン酸ナトリウム、人工フレーバー、アスコルビン酸、硫酸亜鉛、硫酸第一鉄、酢酸α−トコフェリル、塩化コリン、ナイアシンアミド、硫酸マンガン、パントテン酸カルシウム、FD&Cイエロー#5、クエン酸カリウム、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、FD&Cイエロー#56、葉酸、ビオチン、フィロキノン、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0266】
蛋白質:蛋白源は脱脂乳である。
脱脂乳 100%。
【0267】
脂肪:脂肪源は水素化大豆油である。
水素化大豆油 100%。
【0268】
炭水化物:ENSURE PUDDINGは蔗糖と改質食物澱粉の組合わせを含有している。マイルドな甘味及びフレーバーバラエティ(バニラ、チョコレート、バタースコッチ及びタピオカ)で風味低下を防止する。製品は1回分当たり乳糖9.2gを含有している。
【0269】
バニラ及び他の非チョコレートフレーバー:
蔗糖 56%
乳糖 27%
改質食物澱粉 17%。
【0270】
チョコレート:
蔗糖 58%
乳糖 26%
改質食物澱粉 16%。
【0271】
I.ENSURE(登録商標)WITH FIBER:
用途:ENSURE WITH FIBERは強化食物繊維及び栄養を利用できる者を対象とした栄養学的に完全な繊維含有液体食品である。ENSURE WITH FIBERは低残渣食を必要としない者に適している。経口又は経管供給することができ、通常食の栄養補給剤として又は適量を代用食として使用することができる。ENSURE WITH FIBERは無乳糖無グルテンであり、低コレステロール食を含む調整食に使用するのに適している。
【0272】
患者状態:
−強化食物繊維及び栄養を利用できる患者。
【0273】
特徴:
−低飽和脂肪、高ビタミン及びミネラルの新規改良処方、
−1回分当たり総脂肪6g、コレステロール<5mg、
−濃厚でクリーミーな食感、
−良好な繊維源、
−優良な必須ビタミン及びミネラル源、
−低コレステロール食用、
−無乳糖無グルテン。
【0274】
成分:
バニラ:−D水、マルトデキストリン(トウモロコシ)、糖質(蔗糖)、カゼイン酸ナトリウム及びカルシウム、オート麦繊維、高オレイン酸サフラワー油、キャノーラ油、大豆蛋白単離物、大豆油、大豆繊維、第三リン酸カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸カリウム、セルロースゲル、大豆レシチン、第二リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、天然及び人工フレーバー、塩化コリン、リン酸マグネシウム、アスコルビン酸、セルロースガム、塩化カリウム、カラギナン、硫酸第一鉄、酢酸α−トコフェリル、硫酸亜鉛、ナイアシンアミド、硫酸マンガン、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、パルミチン酸ビタミンA、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、葉酸、塩化クロム、ビオチン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、亜セレン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD3及びシアノコバラミン。
【0275】
蛋白質:蛋白源は生物学的価値の高い2種の蛋白であるカゼインと大豆のブレンドである。
カゼイン酸ナトリウム及びカルシウム 80%
大豆蛋白単離物 20%。
【0276】
脂肪:脂肪源は高オレイン酸サフラワー油、キャノーラ油及びコーン油の3種の油のブレンドである。
高オレイン酸サフラワー油 40%
キャノーラ油 40%
コーン油 20%。
【0277】
ENSURE WITH FIBERの脂肪値は米国心臓学会(AHA)ガイドラインに合致する。ENSURE WITH FIBER中の脂肪6gは総熱量の22%に相当し、脂肪の2.01%は飽和脂肪酸に由来し、6.7%はポリ不飽和脂肪酸に由来する。これらの値は脂肪由来総熱量≦30%、飽和脂肪酸由来熱量≦10%、及びポリ不飽和脂肪酸由来総熱量≦10%というAHAガイドラインの範囲内である。
【0278】
炭水化物:ENSURE WITH FIBERはマルトデキストリンと蔗糖の組合わせを含有している。マイルドな甘味及びフレーバーバラエティ(バニラ、チョコレート及びバターピーカン)にピーカン、チェリー、イチゴ、レモン及びオレンジのVARI−FLABORS(登録商標)フレーバーパックを加え、風味低下を防止すると共に、患者コンプライアンスを助長する。
【0279】
バニラ及び他の非チョコレートフレーバー:
マルトデキストリン 66%
蔗糖 25%
オート麦繊維 7%
大豆繊維 2%。
【0280】
チョコレート:
マルトデキストリン 55%
蔗糖 36%
オート麦繊維 7%
大豆繊維 2%。
【0281】
繊維:ENSURE WITH FIBERで使用している繊維ブレンドはオート麦繊維と大豆多糖から構成される。このブレンドの結果、8液量オンス缶当たり総食物繊維約4gである。不溶性繊維と可溶性繊維の比は95:5である。
【0282】
上記各種栄養補給剤は当業者に公知であり、本発明により製造したPUFAに代用及び/又は補充することができる。
【0283】
J.Oxepa(登録商標)栄養製剤
OxepaはARDS患者又はその危険のある患者の食事管理を目的とする低炭水化物高密度熱量経腸栄養製剤である。エイコサペンタエン酸(魚油由来EPA)、γ−リノレン酸(リルヂサ油由来GLA)及び高濃度酸化防止剤を含有する特許油ブレンドを含む特殊な成分組合せをもつ。
【0284】
熱量分布:熱量密度はエネルギー要求を満たすために必要な容量を最小にするように高く、1.5Cal/mL(355Cal/8液量オンス)である。Oxepaの熱量分布を表Aに示す。
【0285】
【表1】

【0286】
脂肪:
−Oxepaは1回分8液量オンス当たり脂肪含有量22.2g(93.7g/L)である。
−脂肪源はキャノーラ油31.8%、中鎖トリグリセリド(MCT)25%、ボレージ油20%、魚油20%、及び大豆レシチン3.2%からなる油ブレンドである。Oxepaの典型的な脂肪酸プロフィルを表Bに示す。
−Oxepaは表VIに示すようにバランスのとれた量のポリ不飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸を提供する。
−脂肪ブレンドの25%に相当する中鎖トリグリセリド(MCT)は胆汁酸により乳化されずに腸管に吸収されるので胃を空にし易い。
【0287】
Oxepa(登録商標)栄養製品の各種脂肪酸成分は本発明により製造したPUFAに代用及び/又は補充することができる。
【0288】
【表2】

脂肪酸は総脂肪の約95%である。
【0289】
表C.Oxepaの脂肪プロフィル
脂肪由来総熱量% 55.2
ポリ不飽和脂肪酸 31.44g/L
モノ不飽和脂肪酸 25.53g/L
飽和脂肪酸 32.38g/L
n−6対n−3比 1.75:1
コレステロール 9.49mg/8液量オンス
40.1mg/L。
【0290】
炭水化物:
−炭水化物含量は1回分8液量オンス当たり25.0g(105.5g/L)である。
−炭水化物源はマルトデキストリン(複合炭水化物)45%と蔗糖質(単糖)55%であり、いずれも消化吸収し易い。
−Oxepaは二酸化炭素(CO2)生産を最小にするように高脂肪低炭水化物である。CO2濃度が高いと、人工呼吸器依存患者の離乳が難しくなる可能性がある。低炭水化物濃度はストレス性高血糖症患者にも有用であると思われる。
−Oxepaは無乳糖である。
【0291】
食物炭水化物、蛋白由来アミノ酸及び脂肪のグリセロール部分は体内でグルコースに変換することができる。この過程を通してグルコース依存組織(例えば中枢神経系や赤血球)の炭水化物必要量は満たされる。しかし、炭水化物を除去した食事では組織蛋白の過剰異化であるケトーシスや、水分及び電解質低下を生じる恐れがある。これらの影響は熱量摂取量が適切であるならば、食用炭水化物を毎日50〜100g摂取することにより防ぐことができる。エネルギー必要量を満足しているならばOxepaの炭水化物値は糖新生を最小にするにも十分である。
【0292】
蛋白:
−Oxepaは1回分8液量オンス当たり14.8g(62.5g/L)の蛋白を含有している。
−総熱量窒素比(150:1)はストレス患者の必要量を満たす。
−Oxepaは呼吸問題を悪化せずに同化と除脂肪体重の維持を助長するために十分な蛋白を提供する。高蛋白摂取量は呼吸不全患者で問題となる。蛋白はCO2生産に殆ど影響しないが、高蛋白食は換気欲求を増す。
−Oxepaの蛋白源はカゼイン酸ナトリウム86.8%とカゼイン酸カルシウム13.2%である。
−Oxepaの蛋白系のアミノ酸プロフィルは米国科学アカデミーにより設定された高品質蛋白標準を満たすか又はそれを上回る。
【0293】
*Oxepaは無グルテンである。
【0294】
【表3】

【0295】
【表4】

【0296】
【表5】

【0297】
【表6】

【0298】
【表7】

【0299】
【表8】

【0300】
【表9】

【0301】
【表10】

【0302】
【表11】

【0303】
【表12】

【図面の簡単な説明】
【0304】
【図1】脂肪酸生合成経路と、この経路におけるΔ5−デサチュラーゼ及びΔ6−デサチュラーゼの役割を示す。
【図2】Saprolegnia diclina(ATCC56851)のΔ6−デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号13)を示す。
【図3】Saprolegnia diclina(ATCC56851)のΔ6−デサチュラーゼのアミノ酸配列(配列番号14)を示す。
【図4】Saprolegnia diclina(ATCC56851)のΔ5−デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号19)を示す。
【図5】Saprolegnia diclina(ATCC56851)のΔ5−デサチュラーゼのアミノ酸配列(配列番号20)を示す。
【図6】Thraustochytrium aureum(ATCC34304)のΔ5−デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号28)を示す。
【図7】Thraustochytrium aureum(ATCC34304)のΔ5−デサチュラーゼのアミノ酸配列(配列番号29)を示す。
【図8】Thraustochytrium aureum(BICC7091)からのΔ5−デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号30)を示す。
【図9】Thraustochytrium aureum(BICC7091)からのΔ5−デサチュラーゼの翻訳アミノ酸配列(配列番号31)を示す。
【図10】Thraustochytrium aureum(BICC7091)からのΔ6−デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号32)を示す。
【図11】Thraustochytrium aureum(BICC7091)からのΔ6−デサチュラーゼの翻訳アミノ酸配列(配列番号33)を示す。
【図12】pRAT−2a及びpRAT−2cクローン間のΔ5−デサチュラーゼアミノ酸配列一致度を示す。
【図13】pRAT−1a及びpRAT−1bクローン間のΔ6−デサチュラーゼアミノ酸配列一致度を示す。
【図14】Isochrysis galbana CCMP1323からのΔ5−デサチュラーゼ遺伝子をコードするヌクレオチド配列(配列番号34)を示す。
【図15】Isochrysis galbana CCMP1323からのΔ5−デサチュラーゼからの翻訳アミノ酸配列(配列番号35)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デサチュラーゼ活性をもつポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むか又はこのヌクレオチド配列に相補的な単離核酸フラグメントであって、前記ポリペプチドのアミノ酸配列が配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列一致度をもつ、前記単離核酸フラグメント。
【請求項2】
配列番号19のヌクレオチド配列の少なくとも約50%を含むか又はこれに相補的な単離ヌクレオチド配列。
【請求項3】
前記配列が配列番号19のヌクレオチド配列である請求項2に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項4】
前記配列がポリ不飽和脂肪酸を基質として利用する機能的に活性なデサチュラーゼをコードする請求項2又は3に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項5】
配列番号19がSaprolegnia diclinaに由来する請求項4に記載のヌクレオチド配列。
【請求項6】
請求項1、2又は3に記載の前記ヌクレオチド配列によりコードされる精製ポリペプチド。
【請求項7】
炭素5でポリ不飽和脂肪酸を不飽和化し、配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも約50%のアミノ酸一致度をもつ精製ポリペプチド。
【請求項8】
a)配列番号19のヌクレオチド配列を単離する段階と、
b)i)前記単離ヌクレオチド配列とこれに作動的に連結したii)調節配列を含むベクターを構築する段階と、
c)デサチュラーゼの発現に十分な時間及び条件下に前記ベクターを宿主細胞に導入する段階とを含む
デサチュラーゼの製造方法。
【請求項9】
a)配列番号19のヌクレオチド配列と、b)これに作動的に連結した調節配列を含むベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の前記ベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項9に記載の前記ベクターを含み、LA、ALA、DGLA及びESPから構成される群から選択される少なくとも1種の脂肪酸を含む培地で前記細胞を増殖させて、前記ベクターの前記ヌクレオチド配列が発現されると、AA、EPA、GLA又はSTAの生産レベルが変化する哺乳動物細胞。
【請求項12】
請求項9に記載の前記ベクターを含み、前記ベクターの前記ヌクレオチド配列が発現されると、ポリ不飽和脂肪酸を生産する植物細胞、植物又は植物組織。
【請求項13】
前記ポリ不飽和脂肪酸がAA、EPA、GLA及びSTAから構成される群から選択される請求項12に記載の植物細胞、植物又は植物組織。
【請求項14】
請求項12に記載の前記植物細胞、植物又は植物組織により発現される1種以上の植物油又は酸。
【請求項15】
請求項9に記載の前記ベクターを含み、前記ベクターの前記ヌクレオチド配列が発現されると、種子でポリ不飽和脂肪酸が生産されるトランスジェニック植物。
【請求項16】
a)配列番号19のヌクレオチド配列を単離する段階と、
b)前記単離ヌクレオチド配列を含むベクターを構築する段階と、
c)Δ5−デサチュラーゼ酵素の発現に十分な時間及び条件下に前記ベクターを宿主細胞に導入する段階と、
d)前記発現したΔ5−デサチュラーゼ酵素を基質ポリ不飽和脂肪酸に暴露し、前記基質を産物ポリ不飽和脂肪酸に変換する段階とを含む、
ポリ不飽和脂肪酸の製造方法。
【請求項17】
夫々前記基質ポリ不飽和脂肪酸がDGLA又は20:4n−3であり、前記産物ポリ不飽和脂肪酸がAA又はEPAである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記産物ポリ不飽和脂肪酸をエロンガーゼに暴露し、前記産物ポリ不飽和脂肪酸を別のポリ不飽和脂肪酸に変換する段階を更に含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
夫々前記産物ポリ不飽和脂肪酸がAA又はEPAであり、前記別のポリ不飽和脂肪酸がアドレン酸又は(n−3)−ドコサペンタエン酸である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記別のポリ不飽和脂肪酸をさらなるデサチュラーゼに暴露し、前記別のポリ不飽和脂肪酸を最終ポリ不飽和脂肪酸に変換する段階を更に含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記最終ポリ不飽和脂肪酸が(n−6)−ドコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン(DHA)酸である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法により製造される前記産物ポリ不飽和脂肪酸、請求項18に記載の方法により製造される前記別のポリ不飽和脂肪酸、及び請求項20に記載の方法により製造される前記最終ポリ不飽和脂肪酸から構成される群から選択される少なくとも1種のポリ不飽和脂肪酸を含む組成物。
【請求項23】
前記産物ポリ不飽和脂肪酸がAA、EPA、GLA及びSTAから構成される群から選択される少なくとも1種のポリ不飽和脂肪酸である請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記別のポリ不飽和脂肪酸がアドレン酸、(n−3)−ドコサペンタエン酸、DGLA及びEPAから構成される群から選択される少なくとも1種のポリ不飽和脂肪酸である請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記最終ポリ不飽和脂肪酸が(n−6)−ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン(DHA)酸、AA及びEPAから構成される群から選択される少なくとも1種のポリ不飽和脂肪酸である請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
ポリ不飽和脂肪酸の摂取不全に起因する患者の状態の予防又は治療方法であって、前記予防又は治療を行うために十分な量の請求項22に記載の前記組成物を前記患者に投与する前記方法。

【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−289490(P2008−289490A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152844(P2008−152844)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【分割の表示】特願2008−125523(P2008−125523)の分割
【原出願日】平成14年1月24日(2002.1.24)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】