説明

デジタルコヒーレント光受信器、適応等化型イコライザ及びデジタルコヒーレント光通信方法

【課題】デジタルコヒーレント光受信器において、局所収束の判定に要する時間を短縮することを目的とする。
【解決手段】デジタルコヒーレント光受信器において、光信号を変換して得られる電気信号を水平信号成分と垂直信号成分に分離する等化フィルタと、前記等化フィルタの出力の水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、水平信号成分の前記ヒストグラムと垂直信号成分の前記ヒストグラムのデータ数又は振幅値を基準値と比較して局所収束の有無を判定する判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
デジタルコヒーレント光受信器、適応等化型イコライザ及びデジタルコヒーレント光通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
40Gbps、100Gbpsの超高速通信においては、OSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio)の不足と波長分散等の線形歪みが問題となる。アナログ・デジタル・コンバータを用いたデジタルコヒーレント受信方式が、それらの問題の解決策として注目されている。
【0003】
100Gbps超級の伝送には、垂直偏波・水平偏波の直交した偏波に対して独立したデータを変調する偏波直交変調が採用される。光ファイバの中の偏波状態は10KHz以上の高速な偏波変動を生じる場合があるため、受信部ではこの高速偏波変動に追従しつつ垂直偏波・水平偏波の信号に分離する高速偏波制御が必要となる。高速偏波制御のために適応等化型イコライザが用いられる。
【0004】
図1は、適応等化型イコライザ11の一例を示す図である。適応等化型イコライザ11は、4個のFIR(Finite Impulse Response)フィルタ12−1〜12−4と、フィルタ係数適用制御回路13を有する。
【0005】
図1において、適応等化型イコライザ11の入力側の水平信号成分Eh=(Ih,Qh)と垂直信号成分Ev=(Iv,Qv)は偏波変動成分を含む信号である。出力側の水平信号成分Eh’=(Ih’,Qh’)と垂直信号成分Ev’=(Iv’,Qv’)は偏波分離された信号である。
【0006】
FIRフィルタ12−1及び12−2には、それぞれ水平信号成分Eh=(Ih,Qh)と垂直信号成分Ev=(Iv,Qv)が入力し、それらを合成した信号が偏波分離された水平信号成分E’h=(I’h,Q’h)として出力される。同様に、FIRフィルタ12−3及び12−4には、それぞれ水平信号成分Eh=(Ih,Qh)と垂直信号成分Ev=(Iv,Qv)が入力し、それらを合成した信号が偏波分離された垂直信号成分E’v=(I’v,Q’v)として出力される。
【0007】
フィルタ係数適用制御回路13は、4個のFIRフィルタ12−1〜12−4のタップ係数と合成比率を制御する回路である。
上記の適応等化型イコライザ11は、タップ係数とFIRフィルタの合成比率を、光ファイバの偏光変動よりも十分高速な更新時間でリアルタイムかつ適応的に更新することで、偏光状態の変動とPMDに対して安定な受信状態を実現することができる。PMD(Polarization Mode Dispersion)は偏波モード分散である。
【0008】
適応等化型イコライザの適応等化方法として、トレーニングシンボルを用いる方法、判定指向法(DD−LMS:Decision Directed-Least Mean Squares)、CMA(Constant Modulus Algorithm)法などが提案されている。CMA法はトレーニングシンボルを必要としないブラインド等化の一種であり、適応等化後の信号のピークパワーが一定になるようにフィルタのタップ係数を制御する方法である。CMA法は、トレーニングシンボルを用いる方法やDD−LMSと比較して回路が簡単で、タップ係数初期値に依存せずに収束可能という利点がある。
【0009】
図2は、CMA法を用いた適応等化型イコライザの構成を示す図である。適応等化型イコライザ21は、4個のFIRフィルタ22−1〜22−4と、フィルタ係数適用制御回路23とを有する。FIRフィルタ22−1のタップ係数をhhh、FIRフィルタ22−2のタップ係数をhvh、FIRフィルタ22−3のタップ係数をhhv、FIRフィルタ22−4のタップ係数をhvvで示す。
【0010】
CMA法におけるフィルタのタップ係数の更新式は、以下のように表せる。
H(n+1)=H(n)−μ・rn*(|yn|−γ)yn
rn*=(Eh*,Ev*)=((Ih,-Qh), (Iv,-Qv)) :FIR入力信号
yn=(Eh’,Ev’):FIR出力信号
H(n):タップ係数、 γ:目標振幅定数
フィルタ係数適用制御回路23は、上記の式を用いて信号のピークパワーが一定となるようにフィルタのタップ係数を制御する。
【0011】
ところで、100Gbpsを超える信号のデジタル信号処理をCMOS回路で実現する場合には、並列に多数(例えば、500レーン以上)の回路を設け、その内の数レーンを選択してフィードバックをかけている。このとき、FIRフィルタのタップ係数の初期値によっては、FIRフィルタが局所的な最小解に収束し、正しい波形整形ができない場合がある。
【0012】
図3は、水平偏波側と垂直偏波側コンスタレーションを示す図である。図3に示すように、水平(H)偏波側コンスタレーションは中心付近で収束しており、水平偏波側が局所最小解に収束している。
【0013】
FEC(forward error correction)カウンタ等を用いて局所的な最小解への収束を検出するためには、局発光周波数オフセット推定部、搬送波位相推定部、判定部及びフレーム同期部等の処理が終了してフレームの抽出が完了する必要がある。そのため、局所的な最小解の収束(これを局所収束と呼ぶ)を検出するまでに時間がかかるという問題点があった。
【0014】
また、CMA法においては、収束解の単一性が保証されないという問題点があった。すなわち、CMA法を用いた適応等化型イコライザにおいては、水平偏波信号と垂直偏波信号を2つの異なる信号に分離できる場合と、水平偏波信号と垂直偏波信号として同一の偏波信号が出力される場合がある。
【0015】
CMA法における上記の課題を解決するために、入力信号を偏波分離する偏波分離器の分離出力信号の目標確率密度関数の対数偏微分値を計算し、その対数偏微分値に基づいて、多重出力信号の分布を最適化するための目標最適化関数の勾配を計算する。さらに、計算により得られた勾配に基づいて、フィルタの係数の更新を行うことで、同値収束を回避する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0016】
また、水平偏波信号又は垂直偏波信号を出力するFIRフィルタの一方のタップ係数から他方のタップ係数を計算する技術が知られている。同値収束が発生した場合でも、タップ係数を再生成することで同値収束を避けることができる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−296596号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Initial Tap Setup of Constant Modulus Algorithm for Polarization De-multiplexing in Optical Coherent Receivers: L. Liu, Zhenning Tao, Weizhen Yan, Shoichro Oda, Takeshi Hoshidad, Jens C. Rasmussen; OFC/NFOEC' 2009, paper OMT2, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
デジタルコヒーレント光受信器において、局所収束の判定に要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
開示のデジタルコヒーレント光受信器は、光信号を変換して得られる電気信号を水平信号成分と垂直信号成分に分離する等化フィルタと、前記等化フィルタの出力の水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、水平信号成分の前記ヒストグラムと垂直信号成分の前記ヒストグラムの分布に基づいて、局所収束の有無を判定する判定手段とを備える。
【発明の効果】
【0021】
開示のデジタルコヒーレント光受信器によれば、局所収束の判定に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】適応等化型イコライザを示す図である。
【図2】CMA法を用いた適応等化型イコライザを示す図である。
【図3】水平偏波側と垂直偏波側コンスタレーションを示す図である。
【図4】デジタルコヒーレント光受信器の構成を示す図である。
【図5】第1の実施の形態の適応等化型イコライザの構成を示す図である。
【図6】ヒストグラムの一例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態の適応等化型イコライザの動作を示すフローチャートである。
【図8】ヒストグラム生成部の構成を示す図である。
【図9】第1の局所収束判定方法を用いた局所収束判定回路の構成を示す図である。
【図10】第1の局所収束判定方法の説明図である。
【図11】第2の局所収束判定方法を用いた局所収束判定回路の構成を示す図である。
【図12】第2の局所収束判定方法の説明図である。
【図13】第3の局所収束判定方法を用いた局所収束判定回路の構成を示す図である。
【図14】第3の局所収束判定方法の説明図である。
【図15】タップ係数初期値の計算方法の説明図(1)である。
【図16】タップ係数初期値の計算方法の説明図(2)である。
【図17】第2の実施の形態の適応等化型イコライザの構成を示す図である。
【図18】水平側及び垂直側のヒストグラムを示す図である。
【図19】第2の実施の形態の適応等化型イコライザの動作を示すフローチャートである。
【図20】ヒストグラムのピーク値の説明図である。
【図21】ピーク選択回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図4は、デジタルコヒーレント光受信器の構成の一例を示す図である。デジタルコヒーレント光受信器31は、90度ハイブリッド回路32と、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)33−1〜33−4と、Demux部34と、波長分散補償部35と、適応等化型イコライザ36とを有する。また、デジタルコヒーレント光受信器31は、周波数オフセット制御部37と、搬送波位相推定制御部38と、判定部39と、フレーム同期部40とを有する。上記のアナログ・デジタル・コンバータ33−1〜33−4、Demux部34、波長分散補償部35、適応等化型イコライザ36等は、例えば、CMOSIC等のハードウェア回路により実現できる。
【0024】
90度ハイブリッド回路32は、光90度ハイブリッド機能と、光電変換機能と、電流・電圧変換機能(TIA:Transimpedance Amplifier)とを有する。90度ハイブリッド回路32は、局発光を用いて信号光から局発光と同相の光信号と90度位相差を持つ光信号を抽出し、抽出した光信号を電気信号に変換し、信号のI成分、Q成分に分離する。
【0025】
アナログ・デジタル・コンバータ13−1〜13−4は、90度ハイブリッド回路32から出力されるアナログ信号を、クロック信号に同期したタイミングでサンプリングしてデジタル信号に変換する。
【0026】
Demux部34は、後段の複数の回路で信号を並列に処理できるように信号のI成分、Q成分を並列展開する。Demux部34とその後段の回路は、信号のI成分、Q成分を並列展開するため、あるいは並列展開された信号を処理するためにそれぞれ複数レーンの回路が設けられている。
【0027】
波長分散補償部35は、Demux部34から出力される偏波成分を含む水平信号成分Eh=(Ih,Qh)と垂直信号成分Ev=(Iv,Qv)の波長分散を補償する。
適応等化型イコライザ36は、フィルタのタップ係数を適応的に更新して、偏波成分を分離した水平信号成分Eh’=(Ih’,Qh’)と垂直信号成分Eh’=(Iv’,Qh’)を出力する。適応等化型イコライザ36は、並列展開された信号のI成分、Q成分を処理する複数の回路を有する。
【0028】
周波数オフセット制御部37は、送信側と受信側の局発光の周波数オフセットを補償する。搬送波位相推定制御部38は搬送波の位相差を推定して補償する。
判定部39は、I,Q平面上の信号点を判定してデータを復調する。フレーム同期部40は、復調したデータを決められたフォーマットのフレームに組み立てる。
デジタルコヒーレント光受信器31は、上記の構成の回路に限らず、公知の他の構成の回路を用いることができる。
【0029】
図5は、第1の実施の形態の適応等化型イコライザ36の構成を示す図である。適応等化型イコライザ36は、4個のFIRフィルタ42−1〜42−4と、フィルタ係数適用制御回路43と、2個のヒストグラム生成部44h、44vと、局所収束判定及びタップ係数修正回路45と、選択回路(SEL)46を有する。
【0030】
FIRフィルタ42−1及び42−3には、偏波成分を含む水平信号成分Eh=(Ih,Qh)が入力する。FIRフィルタ42−2及び42−4には、偏波成分を含む垂直信号成分Ev=(Iv,Qv)が入力する。
【0031】
FIRフィルタ42−1〜42−4は、フィルタ係数適用制御回路43又は局所収束判定及びタップ係数修正回路45によりタップ係数が修正される。その結果、FIRフィルタ42−1及び42−2の出力を合成した信号として、偏波分離された水平信号成分Eh’=(Ih’,Qh’)が得られる。同様に、FIRフィルタ42−3及び42−4の出力を合成した信号として、偏波分離された垂直信号成分Ev’=(Iv’,Qv’)が得られる。
【0032】
フィルタ係数適用制御回路43は、偏波成分を含む水平信号成分Ehと垂直信号成分Evと、偏波分離された水平信号成分Eh’と垂直信号成分Ev’とに基づいて、更新したタップ係数を選択回路46に出力する。フィルタ係数適用制御回路43は、例えば、フィルタ算出回路の一例である。
【0033】
ヒストグラム生成部44hは、水平信号成分Eh’の振幅値(例えば、信号のI、Q成分の2乗和)が、0からある値(最大値)まで等間隔に区切られた範囲のどこに存在するかを判定し、水平信号成分Eh’の振幅値のヒストグラムを生成する。
【0034】
以下、この実施の形態では、水平、垂直信号成分のそれぞれの信号のI成分とQ成分の2乗和(P=I+Q)を信号の振幅値と呼ぶ。
ヒストグラム生成部44vは、垂直信号成分Ev’の振幅値が、0からある値(最大値)まで等間隔に区切られた範囲のどこに存在するかを判定し、垂直信号成分Ev’の振幅値のヒストグラムを作成する。作成した水平信号成分Eh’及び垂直信号成分Ev’のヒストグラムのデータは、局所収束判定及びタップ係数修正回路45に出力される。
【0035】
図6は、ヒストグラム生成部44v、44hにより生成されるヒストグラムの一例を示す図である。この例では、信号振幅の最大値をINDEX_0〜INDEX_29までの30ステップに等間隔に区切ってヒストグラムを作成している。例えば、INDEX_0は振幅「0」に対応し、INDEX_29は、振幅の最大値から最大値の29/30までの範囲の値に対応する。
【0036】
図5のヒストグラム生成部44h、44vは、水平信号成分と垂直信号成分の振幅値が、INDEX_0〜INDEX_29のどの範囲の値に該当するかを判定し、該当する振幅値のデータ数を累積してヒストグラムを作成する。
【0037】
局所収束判定及びタップ係数修正回路45は、ヒストグラム生成部44h及び44vで作成されるヒストグラムの分布又はピーク値の位置に基づいて、局所収束の有無を判定する。そして、水平信号成分又は垂直信号成分に局所収束が存在する判定したときには、選択回路46に選択の切り換えを指示する切り換え信号を出力すると共に、通常収束側のタップ係数をタップ係数の初期値として出力する。
【0038】
選択回路46は、通常はフィルタ係数適用制御回路43から出力されるタップ係数を選択してFIRフィルタ42−1〜42−4に出力する。局所収束判定及びタップ係数修正回路45から切り換え信号を受け取ると、局所収束判定及びタップ係数修正回路45から出力されるタップ係数を選択してFIRフィルタ42−1〜42−4に出力する。これにより、局所収束が検出されたときには、選択回路46からは、局所収束が発生していない側のタップ係数が、局所収束が発生している側のタップ係数の初期値として出力される。
【0039】
図7は、第1の実施の形態の適応等化型イコライザの動作を示すフローチャートである。
波長分散補償部35における波長分散補償設定処理が終了したなら(S11)、適応等化型イコライザ36における適応等化処理を開始する(S12)。ステップS12の適応等化処理では、フィルタ係数適用制御回路43又は局所収束判定及びタップ係数修正回路45から出力されるタップ係数を用いてFIRフィルタ42−1〜42−4のタップ係数が更新される。
【0040】
次に、CMA収束時間が経過したか否かを判定する(S13)。CMA収束時間とは、局所収束を判定するための予め決められた時間である。
CMA収束時間が経過しているときには(S13、YES)、モニタ開始通知が出力され、ステップS14のヒストグラム累積処理が実行される。ステップS14の処理では、例えば、ヒストグラム生成部44−1、44−2がヒストグラムの累積を開始する。
【0041】
そして、モニタ完了通知が出力されると、ヒストグラムを用いて局所収束の有無を判定する(S15)。ステップS15の処理では、例えば、局所収束判定及びタップ係数修正回路45が、ヒストグラム生成部44h、44vで生成されるヒストグラムに基づいて局所収束の有無を判定する。
【0042】
局所収束であると判定したときには(S15、YES)、ステップS16に進み、タップ係数の初期値を再計算する。ステップS16の処理では、例えば、局所収束判定及びタップ係数修正回路45が、局所収束が発生していない側(水平信号成分又は垂直信号成分)のタップ係数を用いて、局所収束が発生している側のタップ係数の初期値を計算する。
【0043】
次に、それまでのタップ係数を用いたCMAを一時停止し、局所収束が発生している側のタップ係数をステップS16で再計算した初期値に変更する(S17)。ステップS17の処理では、例えば、局所収束判定及びタップ係数修正回路45が、選択回路46に局所収束の発生している側のタップ係数の切り換えを指示する。これにより、選択回路46は、局所収束判定及びタップ係数修正回路45から出力されるタップ係数の初期値を、局所収束が検出された側のFIRフィルタに出力する。
【0044】
局所収束が検出されないときには(S15、NO)、ステップS18に進み、次段の処理を開始する。次段の処理とは、例えば、周波数オフセット制御部37の周波数オフセットの補償処理等である。
【0045】
図8は、ヒストグラム生成部44h、44vの構成を示す図である。ヒストグラムの生成は複数レーンの適応等化型イコライザ36の全てで行う必要はなく、任意数のレーンでヒストグラムを生成すれば良い。そして、生成したヒストグラムを用いて、他のレーンのタップ係数を補正すれば良い。図8の例は、適応等化型イコライザ36が64レーン分設けられている場合に、3レーンにヒストグラム生成部44h、44vを設けた場合の例である。
【0046】
図8において、ヒストグラム生成部44h、44vは、それぞれパワー値算出部51h、51vと、閾値判定部52h、52vと、ヒストグラムカウンタ53h、53vと、モニタ出力用カウンタ54h、54vとを有する。また、ヒストグラム生成部44h、44vは、カウンタ監視部55と、リード(Read)監視部56とを有する。
【0047】
なお、各回路の符号の文字hは水平信号成分用の回路、文字vは垂直信号成分用の回路であることを示す。
水平信号成分用のパワー値算出部51hは、水平信号成分EhのI成分を2乗した値HIとQ成分を2乗した値HQの和を、水平信号成分Ehのパワー値(振幅値)として算出する。
【0048】
垂直信号成分用のパワー値算出部51vは、垂直信号成分EvのI成分を2乗した値VIとQ成分を2乗した値VQの和を、垂直信号成分のパワー値(振幅値)として算出する。
【0049】
水平信号成分用の閾値判定部52hは、パワー値算出部51hで算出される振幅値と、ヒストグラムの各区間の閾値を比較して、振幅値がどの区間に該当するかを判定する。そして、該当する区間のヒストグラムカウンタ53hにカウント値をインクリメントする信号を出力する。
【0050】
水平信号成分用のヒストグラムカウンタ53hは、ヒストグラムの区間数(例えば、30)に対応して30個のヒストグラムカウンタ53h−0〜53h−29を有する。垂直信号成分用のヒストグラムカウンタ53vも、同様にヒストグラムの区間数に対応して30個のヒストグラムカウンタ53v−0〜53v−29を有する。
【0051】
水平信号成分用のモニタ出力用レジスタ54hは、ヒストグラムカウンタ53h−0〜53h−29に対応する数(この例では、30個)のモニタ出力用レジスタ54h−0〜54h−29を有する。モニタ出力用レジスタ54h−0〜54h−29は、それぞれ対応するヒストグラムカウンタ53h−0〜53h−29のカウント値を保持して、水平信号成分の累積値INDEX_0〜INDEX_29として出力する。
【0052】
同様に、垂直信号成分用のモニタ出力用レジスタ54vは、ヒストグラムカウンタ53v−0〜53v−29に対応する数のレジスタ54v−0〜54v−29を有する。モニタ出力用レジスタ54h−0〜54h−29は、それぞれ対応するヒストグラムカウンタ53v−0〜53v−29のカウントを保持して、垂直信号成分の累積値INDEX_0〜INDEX_29として出力する。
【0053】
カウンタ監視部55は、モニタ開始通知を受信すると、ヒストグラムカウンタ53h、53vの監視を開始する。そして、カウンタ監視部55は、ヒストグラムカウンタ53h−0〜53h−29の内の何れかのカウント値が上限値に達したとき、あるいは全てのカウンタのカウント値の合計値が監視累積数の上限値に達したとき、モニタ完了通知を出力する。
【0054】
局所収束判定及びタップ係数修正回路45は、カウンタ監視部55からモニタ完了通知を受信すると、モニタ出力用レジスタ54h、54vの累積値を読み出し、水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムを作成する。
【0055】
リード監視部56は、モニタ出力用レジスタ54h、54vの累積値の読み出しが行われたか否かを監視し、局所収束判定及びタップ係数修正回路45により累積値の読み出しが行われたときには、ヒストグラムカウンタ53h、53vをクリアする。
【0056】
次に、局所収束判定及びタップ係数修正回路45における局所収束判定動作を説明する。
最初に、ある振幅値を判定点として、その判定点より大きい振幅値のデータ数と、判定点以下(小さい)の振幅値のデータ数を比較することで局所収束判定を行う方法(以下、これを第1の局所収束判定方法と呼ぶ)について説明する。これは、ヒストグラムの分布に基づいて局所収束の有無を判定する場合の一例である。
【0057】
図9は、上記の第1の局所収束判定方法を用いた局所収束判定回路61の構成を示す図である。
局所収束判定回路61は、例えば、水平信号成分の局所収束を判定する回路と、垂直信号成分の局所収束を判定する回路の2つを有する。局所収束判定回路61は、図5の局所収束判定及びタップ係数修正回路45の一部である。
【0058】
図9において、局所収束判定回路61は、閾値Indexの値(例えば、基準値)に基づいて、累積値INDEX_0〜INDEX_29の出力先を切り換える30個のセレクタ62−0〜62−29と、閾値Indexを保持する閾値Index保持部63を有する。また、局所収束判定回路61は、閾値Index以下の振幅値の累積値(データ数)を加算して下側合計値を算出する下側合計値算出部64と、閾値Indexより大きい振幅値の累積値を加算して上側合計値を算出する上側合計値算出部65を有する。さらに、局所収束判定回路61は、下側合計値と上側合計値を比較して局所収束の有無を判定する局所収束判定部66を有する。
【0059】
閾値Index保持部63は、INDEX_0〜INDEX_29の上側と下側の境界となるINDEX値を保持する。
セレクタ62−0〜62−29は、閾値Index保持部63に保持されている閾値Indexと、INDEX_0〜INDEX_29の内の任意のINDEX番号を比較する。そして、INDEX番号が閾値Index以下のときには、その累積値を下側合計値算出部64に出力する。また、INDEX番号Aが閾値Indexより大きいときには、その累積値を上側合計値算出部65に出力する。
【0060】
下側合計値算出部64は、セレクタ62−0〜62−29から出力される累積値を加算して下側合計値を計算する。上側合計値算出部65は、セレクタ62−0〜62−29から出力される累積値を加算して上側合計値を計算する。
【0061】
局所収束判定部66は、下側合計値と上側合計値を比較し、下側合計値が上側合計値より大きいときには局所収束と判定する。下側合計値が上側合計値以下のときには、正常収束と判定する。
【0062】
図10(A)、(B)は、第1の局所収束判定方法の説明図である。図10(A)、(B)の縦軸は振幅に対応するINDEX番号を示し、横軸はデータ数(データ度数)を示している。INDEX番号が大きくなる方向、すなわち、図10(A)、(B)に矢印で示す方向に振幅値が大きくなる。
【0063】
図10(A)、(B)は、例えば、局所収束の判定の基準となる閾値(閾値Index)としてINDEX_15を設定した場合を示している。
図10(A)に示すように、INDEX番号が閾値(例えば、INDEX_15)未満のデータ数の合計値が、閾値以上のINDEXのデータ数の合計値以下の場合には、正常収束と判定する。
【0064】
図10(B)に示すように、閾値未満のINDEXのデータ数の合計値が、閾値以上のINDEXのデータ数の合計値より大きいときには、局所収束と判定する。
次に、ある振幅値を判定点として、ヒストグラムのピーク値が判定点の上側にあるか、下側にあるかにより局所収束の有無を判定する方法(以下、この方法を第2の局所収束判定方法と呼ぶ)について説明する。これは、ヒストグラムの分布(例えば、ピーク値の位置)に基づいて、局所収束の有無を判定する場合の一例である。
【0065】
図11は、上記の第2の局所収束判定方法を用いた局所収束判定回路71の構成を示す図である。
局所収束判定回路71は、最大データ数選択部72と、閾値Index保持部73と、閾値判定部74を有する。
【0066】
最大度数選択部72は、ヒストグラム生成部44h、44vから出力されるINDEX_0〜INDEX_29のデータ数の内で最大データ数のINDEX番号(最大度数Index)を特定し、そのINDEX番号を閾値判定部74に出力する。
【0067】
閾値Index保持部73は、判定の基準となる閾値Indexを保持する。
閾値判定部74は、最大度数選択部72から出力される最大データ数のINDEX番号と、閾値Index保持部73に保持されている閾値Indexを比較して、最大データ数のINDEX番号が閾値Indexより大きいか否かを判定する。すなわち、最大データ数の振幅値が、特定の振幅値(閾値又は基準値)より大きいか否かを判定する。
【0068】
最大データ数のINDEX番号が閾値Indexより大きいときには、正常収束と判定する。すなわち、ヒストグラムにおいて、最大データ数の振幅値が、予め決められた振幅閾値より大きい(又は以上)ときには、正常収束と判定する。
【0069】
他方、最大データ数のINDEX番号が閾値Indexより小さいときには、局所収束と判定する。すなわち、ヒストグラムにおいて、最大データ数の振幅値が、上記の振幅閾値より小さいときには、局所収束と判定する。
【0070】
図12(A)、(B)は、第2の局所収束判定方法の説明図である。図12(A)、(B)の縦軸は振幅に対応するINDEX番号を示し、横軸はデータ数を示している。
図12(A)、(B)は、例えば、閾値IndexとしてINDEX_14を設定した場合の例である。
【0071】
図12(A)に示すように、ヒストグラムの振幅のピーク値が、閾値Indexの振幅値より大きい(又は以上)ときには、正常収束と判定する。
他方、図12(B)に示すように、ヒストグラムの振幅のピーク値が、閾値Indexの振幅値より小さいときには、局所収束と判定する。
【0072】
次に、振幅値0のデータ数が閾値より大きいか否かにより局所収束の有無を判定する方法(以下、この方法を第3の局所収束判定方法と呼ぶ)について説明する。これは、ヒストグラムの分布に基づいて、局所収束の有無を判定する場合の一例である。
【0073】
図13は、第3の局所収束判定方法を用いた局所収束判定回路の構成を示す図である。
局所収束判定回路81は、閾値判定部82と、閾値保持部83を有する。閾値判定部82は、INDEX_0のデータ数と、閾値保持部83に保持されている閾値を比較して局所収束の有無を判定する。閾値判定部82は、INDEX_0のデータ数が閾値以下のときには正常収束と判定する。また、閾値判定部82は、INDEX_0のデータ数が閾値より大きいときは局所収束と判定する。
【0074】
図14(A)、(B)は、第3の局所収束判定方法の説明図である。図14(A)、(B)の縦軸は振幅に対応するINDEX番号を示し、横軸はデータ数(データ度数)を示している。
【0075】
図14、(A)に示すように、INDEX_0のデータ数が閾値以下のときには、正常収束と判定する。
他方、図14、(B)に示すように、INDEX_0のデータ数が閾値より大きいときには、局所収束と判定する。
【0076】
次に、局所収束と判定されたときのタップ係数の初期値の計算方法を説明する。図15及び図16は、タップ係数初期値の計算方法の説明図である。
局所収束と判定した場合には、局所収束が発生していない側のタップ係数を用いてタップ係数初期値を設定する。
【0077】
図15は、タップ係数初期値の計算方法の説明図(1)であり、図16は、タップ係数初期値の計算方法の説明図(2)である。
以下の説明では、FIRフィルタ42−1のタップ係数をhhh、FIRフィルタ42−2のタップ係数をhvh、とする。また、FIRフィルタ42−3のタップ係数をhhv、FIRフィルタ42−4のタップ係数をhvvとする。FIRフィルタ42−1〜42−4とタップ係数の関係は、図2に示したものと同じである。
【0078】
図15は、垂直信号成分に局所収束が検出された場合に、水平信号成分を分離するFIRフィルタ42−2のタップ係数hvhから、垂直信号成分を分離するFIRフィルタ32−3のタップ係数hhvの初期値を計算する場合の例を示している。
【0079】
正常収束している水平側のFIRフィルタ42−2のタップ係数hvhは、hvh(t)=(avh(t),bvh(t))で表せる。
局所収束している垂直側のFIRフィルタ42−3のタップ係数hhvは、正常収束している水平側のFIRフィルタ42−2のタップ係数hvhから、次の式で計算することができる。
hv(t)=(−avh(−t),bvh(−t
【0080】
すなわち、局所収束している垂直側のFIRフィルタ42−3のタップ係数hhv(t)は、水平側のタップ係数hvh(t)を用いて、タップ中心を基準としてtの値を反転させ、データのI成分avhの符号を反転させた値として求めることができる。tは、タップ中心に対するタップの位置を特定する値である。
【0081】
図16は、水平側のFIRフィルタ42−1のタップ係数hhhから、垂直信号成分を分離するFIRフィルタ42−4のタップ係数hvvの初期値を計算する場合の例を示している。
【0082】
FIR42−1のタップ係数hhhは、hhh(t)=(ahh(t),bhh(t))と表せる。
局所収束している垂直側のFIRフィルタ42−4のタップ係数hvvは、正常収束している水平側のFIRフィルタ42−1のタップ係数hhhを用いて、次の式で計算することができる。
vv(t)=(ahh(-t),−bhh(-t))
【0083】
すなわち、垂直側のFIRフィルタ42−4のタップ係数hvv(t)は、水平側のタップ係数hhh(t)を用いて、タップ中心を基準にしてtの値を反転させ、データのQ成分bhhの符号を反転させた値として求めることができる。
【0084】
上述した第1の実施の形態によれば、適応等化型イコライザ36により局所収束の有無を判定することができるので、信号点を判定してフレームを組み立て後に局所収束を判定する方法に比べて判定に要する時間を短縮できる。
【0085】
次に、図17は、第2の実施の形態の適応等化型イコライザ91の構成を示す図である。図17において、図5と同じ回路ブロックには、同じ符号を付けてそれらの説明を省略する。
【0086】
適応等化型イコライザ91は、4個のFIRフィルタ42−1〜42−4と、フィルタ係数適用制御回路43と、ヒストグラム生成部44h及び44vと、局所収束・ピーク選択及びタップ係数修正回路92を有する。
【0087】
局所収束・ピーク選択及びタップ係数修正回路92は、ヒストグラムを用いて局所収束の有無を判定し、局所収束が発生しているときには、局所収束が発生していない側のタップ係数から、局所収束が発生している側のタップ係数を計算する。また、局所収束・ピーク選択及びタップ係数修正回路92は、水平側及び垂直側のヒストグラムのピーク値を比較し、ピーク値の大きい方のタップ係数を用いて他方のタップ係数初期値を計算する。
【0088】
これにより、同値収束を防止するためのタップ係数初期値の設定を、信号振幅のピーク値の大きい方、すなわち信号品質がより高いと推定される側のタップ係数を用いて行うことができる。
【0089】
図18は、水平側ヒストグラムと垂直側ヒストグラムを示す図である。図18において、縦軸は信号の振幅値に対応するINDEX番号を示し、横軸は各INDEXのデータ数を示す。
【0090】
図18の例では、水平側ヒストグラムのピーク値が、垂直側ヒストグラムのピーク値より大きいので、水平側のタップ係数を用いて垂直側のタップ係数初期値が計算される。
図19は、第2の実施の形態の適応等化型イコライザ91の動作を示すフローチャートである。
【0091】
波長分散補償部35における波長分散処理が終了したなら(S21)、適応等化処理を開始する(S22)。次に、CMA(constant modulus algorithm)の収束時間が経過したか否かを判定する(S23)。
【0092】
収束時間が経過したなら(S23、YES)、ステップS24に進み、ヒストグラムの累積を開始し、決められたサンプル数のヒストグラムを作成する。ステップS24の処理では、例えば、ヒストグラム生成部44h、44vが、それぞれ水平信号成分、垂直信号成分のヒストグラムを生成する。
【0093】
次に、局所収束か否かを判定する(S25)。ステップS25の処理では、例えば、局所収束・ピーク選択及びタップ係数修正回路92が、前述した第1、第2又は第3の局所収束判定方法を用いて局所収束の有無を判定する。
【0094】
局所収束が発生していないときには、ステップS26に進み、水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムのピーク値の比較を行ったか否かを判定する。局所収束と判定したときには(S25、YES)、ステップS28に進む。
ヒストグラムのピーク値の比較を行っていないときには(S26、NO)、ステップS27に進み、水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムのピーク値を比較する。
【0095】
次に、ステップS28においてタップ係数初期値の再計算を行う。ステップS28のタップ係数初期値の再計算は、ステップS25において、局所収束と判定されたとき(S25、YES)、あるいは、ステップS27のピーク値の比較処理の後に実行される。すなわち、ステップS25において、局所収束と判定されたときには、正常収束側のタップ係数を用いて、局所収束が発生している側のタップ係数初期値を計算する。また、ステップS27でヒストグラムのピーク値の比較が行われたときには、ピーク値の大きい方(水平信号成分又は垂直信号成分)のタップ係数を用いて、ピーク値の小さい方のタップ係数初期値を再計算する。
【0096】
図20は、ヒストグラムのピーク値の説明図である。図20の縦軸はデータ数を示し、横軸は振幅値を示す。
図20の三角印の点は水平信号成分の振幅値のヒストグラムを示し、□印の点は垂直信号成分の振幅値のヒストグラムを示す。図20の例では、水平信号成分のヒストグラムのピーク値の方が、垂直信号成分のピーク値より大きいので、水平側のタップ係数を用いて垂直側のタップ係数初期値が計算される。
【0097】
図19に戻り、ステップS29において、CMAの等化処理を一時停止して、ステップS28で計算したタップ係数初期値を用いて局所収束側のタップ係数を修正する。その後、ステップS22において、修正したタップ係数を用いて適応等化処理を開始する。
【0098】
ステップS26において、ピーク比較が既に行われていると判定された場合には(S26、YES)、ステップS30に進み、次段の処理、例えば、周波数オフセット補償処理等を実行する。
【0099】
図19のフローチャートでは、ヒストグラムのピーク値の比較を一度だけ行うようにしたが、ピーク値の比較を複数回行っても良い。
図21は、局所収束・ピーク値選択及びタップ係数修正回路92の中のピーク選択回路101の一例を示す図である。
【0100】
ピーク選択回路101は、水平信号成分のヒストグラムの最大値を選択するだ最大度数選択部102と、垂直信号成分のヒストグラムの最大値を選択する最大度数選択部103と、大小比較部104とを有する。
【0101】
最大度数選択部102は、水平信号成分の振幅値のデータ数を示すINDEX_H_0〜INDEX_H_29の内のピーク値を選択し、選択したピーク値を最大カウント値Hとして大小比較部104に出力する。INDEX_H_0〜INDEX_H_29は、例えば、図8の水平信号成分のモニタ出力用レジスタ54hから出力される。
【0102】
最大度数選択部103は、垂直信号成分の振幅値のデータ数を示すINDEX_V_0〜INDEX_V_29のINDEX値の内のピーク値を選択し、選択したピーク値を垂直最大カウント値Vsite大小比較部104に出力する。INDEX_V_0〜INDEX_V_29は、図8の垂直信号成分のモニタ出力用レジスタ54vから出力される。
【0103】
大小比較部104は、水平側の最大カウント値Hと、垂直側の最大カウント値Vとを比較し、最大カウント値の小さい方をタップ係数の修正対象として特定する。
ピーク選択回路101により修正対象の信号が選択されると、局所収束・ピーク選択及びタップ係数修正回路92は、最大カウント値の大きい方のFIRフィルタのタップ係数を用いて、修正対象の水平又は垂直側のFIRフィルタのタップ係数を修正する。
【0104】
上述した第2の実施の形態は、信号の振幅のヒストグラムのピーク値の大きい方のタップ係数を用いて他方のタップ係数の初期値を計算する。これにより、信号品質の高い信号を等化しているフィルタのタップ係数を用いて他方のタップ係数を修正することで、信号品質の低下を防止し、かつ同値収束を回避することができる。さらに、上述した第1、第2又は第3の局所収束判定方法を用いることで、より短時間で局所収束の有無を判定できる。
【0105】
上述した第1及び第2の実施の形態に関し、以下の付記を開示する。
(付記1)
光信号を変換して得られる電気信号を水平信号成分と垂直信号成分に分離する等化フィルタと、
前記等化フィルタの出力の水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、
水平信号成分の前記ヒストグラムと垂直信号成分の前記ヒストグラムの分布に基づいて、局所収束の有無を判定する判定手段とを備えるデジタルコヒーレント光受信器。
(付記2)
前記判定手段は、水平信号成分の前記ヒストグラムのピーク値と前記垂直信号成分の前記ヒストグラムのピーク値を比較し、前記ピーク値の大きい方の前記等化フィルタのタップ係数を用いて、他方のタップ係数を修正する付記1記載のデジタルコヒーレント光受信器。
(付記3)
前記判定手段は、水平信号成分の前記ヒストグラムのデータ数のピーク値を選択する水平側最大値選択部と、垂直信号成分の前記ヒストグラムのデータ数のピーク値を選択する垂直側最大値選択部と、水平側のピーク値と垂直側のピーク値を比較して、ピーク値の小さい側をタップ係数の修正対象として指定する大小比較部とを備える付記2記載のデジタルコヒーレント光受信器。
(付記4)
前記判定手段は、水平又は垂直信号成分の振幅値又は振幅値に対応する値を基準値として、前記基準値以上の前記ヒストグラムの振幅値のデータ数の和と、前記基準値未満の前記ヒストグラムの振幅値のデータ数の和を比較し、前記基準値未満のデータ数の和が前記基準値以上のデータ数の和より大きいとき局所収束と判定する付記1、2又は3記載のデジタルコヒーレント光受信器。
(付記5)
前記判定手段は、局所収束の判定の基準値を記憶する基準値記憶部と、前記ヒストグラムの複数の振幅値の内で前記準値以上の振幅値のデータ数の和を計算する上側合計値計算部と、前記ヒストグラムの複数の振幅値の内で前記基準値未満の振幅値のデータ数の和を計算する下側合計値計算部と、前記上側合計値計算部から出力される上側合計値と前記下側合計値計算部から出力される下側合計値を比較し、下側合計値が上側合計値より大きいとき局所収束と判定する局所収束判定部とを備える付記4記載のデジタルコヒーレント。
(付記6)
前記判定手段は、前記ヒストグラムの最大データ数の振幅値と基準値を比較し、最大データ数の振幅値が基準値以下のとき局所収束と判定する付記1、2又は3記載のデジタルコヒーレント光受信器。
(付記7)
前記判定手段は、局所収束の判定の基準となる基準値を記憶する基準値記憶部と、前記ヒストグラムの各振幅値のデータ数の最大値を選択する最大値選択部と、前記最大値選択部で選択された最大値と前記基準値を比較し、前記最大値が前記基準値未満のとき局所収束と判定する局所収束判定部とを備える付記6記載のデジタルコヒーレント光受信器。
(付記8)
前記判定手段は、前記ヒストグラムの一定値以下の特定の振幅値のデータ数と基準値を比較し、前記特定の振幅値のデータ数が前記基準値より大きいとき局所収束と判定する付記1、2又は3記載のデジタルコヒーレント光受信器。
(付記9)
局所収束の判定の基準となる前記基準値を記憶する基準値記憶部と、前記ヒストグラムの前記特定の振幅値のデータ数と前記基準値を比較し、前記特定の振幅値のデータ数が前記基準値より大きいとき局所収束と判定する局所収束判定部とを備える付記8記載のデジタルコヒーレント光受信器。
(付記10)
前記等化フィルタから出力される水平信号成分と垂直信号成分に基づいて、前記等化フィルタのフィルタ係数を算出してフィルタ係数算出回路と、
前記判定手段から出力されるフィルタ係数と前記フィルタ係数算出回路から出力されるフィルタ係数の一方を選択して前記等化フィルタに出力する選択回路とを有し、
前記判定手段は、前記等化フィルタから出力される水平信号成分と垂直信号成分とに基づいて、前記等化フィルタのフィルタ係数を算出し、算出したフィルタ係数を前記選択回路に出力すると共に、局所収束の有無の判定結果に基づいて、前記選択回路におけるフィルタ係数の選択の切り換えを指示する付記1乃至9の何れか1つに記載のデジタルコヒーレント光受信器。
(付記11)
前記等化フィルタは複数のFIRフィルタであり、
前記判定手段は、前記複数のFIRフィルタから出力される水平信号成分と垂直信号成分に基づいて、水平側のFIRフィルタのタップ係数と垂直側のタップ係数を算出し、正常収束している側のタップ係数を局所収束が検出された側のタップ係数の初期値として出力する付記1乃至9の何れか1つに記載のデジタルコヒーレント光受信器。
(付記12)
光信号を変換して得られる電気信号を水平信号成分と垂直信号成分に分離する等化フィルタと、
前記等化フィルタの出力の水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、
水平信号成分の前記ヒストグラムと垂直信号成分の前記ヒストグラムの分布に基づいて、局所収束の有無を判定する判定手段とを備える適応等化型イコライザ。
(付記13)
前記判定手段は、水平信号成分の前記ヒストグラムのピーク値と前記垂直信号成分の前記ヒストグラムのピーク値を比較し、前記ピーク値の大きい方の前記等化フィルタのタップ係数を用いて、他方の前記等化フィルタのタップ係数を修正する付記12記載の適応等化型イコライザ。
(付記14)
光信号を変換して得られる電気信号を等化フィルタにより水平信号成分と垂直信号成分に分離し、
前記等化フィルタの出力の水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムを作成し、
水平信号成分の前記ヒストグラムと垂直信号成分の前記ヒストグラムの分布に基づいて、局所収束の有無を判定するデジタルコヒーレント光通信方法。
(付記15)
水平信号成分の前記ヒストグラムのピーク値と垂直信号成分の前記ヒストグラムのピーク値を比較し、前記ピーク値の大きい方の前記等化フィルタのタップ係数を用いて、局所収束が発生している側の前記等化フィルタのタップ係数を修正する付記14記載のデジタルコヒーレント光通信方法。
【符号の説明】
【0106】
11 適応等化型イコライザ
12−1、12−2、12−3、12−4 FIRフィルタ
13 フィルタ係数適用制御回路
21 適応等化型イコライザ
22−1、22−2,22−3,22−4 FIRフィルタ
23 フィルタ係数適用制御回路
31 デジタルコヒーレント光受信器
32 90度ハイブリッド回路
33 アナログ・デジタル・コンバータ
34 Demux
35 波長分散補償部
36 適応等化型イコライザ
37 周波数オフセット制御部
38 搬送波位相推定制御部
39 判定部
40 フレーム同期部
42−1 FIRフィルタ
43 フィルタ係数適用制御回路
44h、44v ヒストグラム生成部
45 局所収束判定及びタップ係数修正回路
51 パワー値算出部
52 閾値判定部
53h、53v ヒストグラムカウンタ
54h、54v モニタ出力用レジスタ
55 カウンタ監視部
56 リード監視部
61 局所収束判定回路
62−1 セレクタ
63 閾値Index保持部
64 加算器
65 加算器
66 局所収束判定部
71 局所収束判定回路
72 最大度数選択部
73 閾値Index保持部
74 閾値判定部
81 局所収束判定回路
82 閾値判定部
83 閾値保持部
91 適応等化型イコライザ
92 局所収束・ピーク選択及びタップ係数修正回路
101 ピーク選択回路
102、103 最大度数選択部
104 大小比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を変換して得られる電気信号を水平信号成分と垂直信号成分に分離する等化フィルタと、
前記等化フィルタの出力の水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、
水平信号成分の前記ヒストグラムと垂直信号成分の前記ヒストグラムの分布に基づいて、局所収束の有無を判定する判定手段とを備えるデジタルコヒーレント光受信器。
【請求項2】
前記判定手段は、水平信号成分の前記ヒストグラムのピーク値と垂直信号成分の前記ヒストグラムのピーク値を比較し、前記ピーク値の大きい方の前記等化フィルタのタップ係数を用いて、他方のタップ係数を修正する請求項1又は2記載のデジタルコヒーレント光受信器。
【請求項3】
前記判定手段は、水平信号成分の前記ヒストグラムのデータ数のピーク値を選択する水平側最大値選択部と、垂直信号成分の前記ヒストグラムのデータ数のピーク値を選択する垂直側最大値選択部と、水平側のピーク値と垂直側のピーク値を比較して、ピーク値の小さい方をタップ係数の修正対象として指定する大小比較部とを備える請求項1又は2記載のデジタルコヒーレント光受信器。
【請求項4】
前記判定手段は、水平又は垂直信号成分の振幅値又は振幅値に対応する値を基準値とし、前記基準値以上の前記ヒストグラムの振幅値のデータ数の和と、前記基準値未満の前記ヒストグラムの振幅値のデータ数の和を比較し、前記基準値未満のデータ数の和が前記基準値以上のデータ数の和より大きいとき局所収束と判定する請求項1、2又は3記載のデジタルコヒーレント光受信器。
【請求項5】
前記判定手段は、局所収束の判定の基準値を記憶する基準値記憶部と、前記ヒストグラムの複数の振幅値の内で前記準値以上の振幅値のデータ数の和を計算する上側合計値計算部と、前記ヒストグラムの複数の振幅値の内で前記基準値未満の振幅値のデータ数の和を計算する下側合計値計算部と、前記上側合計値計算部から出力される上側合計値と前記下側合計値計算部から出力される下側合計値を比較し、下側合計値が上側合計値より大きいとき局所収束と判定する局所収束判定部とを備える請求項4記載のデジタルコヒーレント。
【請求項6】
前記判定手段は、前記ヒストグラムの最大データ数の振幅値と基準値を比較し、最大データ数の振幅値が前記基準値未満のとき局所収束と判定する請求項1、2又は3記載のデジタルコヒーレント光受信器。
【請求項7】
前記判定手段は、局所収束の判定の基準となる基準値を記憶する基準値記憶部と、前記ヒストグラムの各振幅値のデータ数の最大値を選択する最大値選択部と、前記最大値選択部で選択された最大値と前記基準値を比較し、前記最大値が前記基準値未満のとき局所収束と判定する局所収束判定部とを備える請求項6記載のデジタルコヒーレント光受信器。
【請求項8】
前記判定手段は、前記ヒストグラムの一定値以下の特定の振幅値のデータ数と基準値を比較し、前記特定の振幅値のデータ数が基準値より大きいとき局所収束と判定する請求項1、2又は3記載のデジタルコヒーレント光受信器。
【請求項9】
局所収束の判定の基準となる基準値を記憶する基準値記憶部と、前記ヒストグラムの一定値以下の特定の振幅値のデータ数と前記基準値を比較し、前記特定の振幅値のデータ数が前記基準値より大きいとき局所収束と判定する局所収束判定部とを備える請求項8記載のデジタルコヒーレント光受信器。
【請求項10】
光信号を変換して得られる電気信号を水平信号成分と垂直信号成分に分離する等化フィルタと、
前記等化フィルタの出力の水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、
水平信号成分の前記ヒストグラムと垂直信号成分の前記ヒストグラムの分布に基づいて、局所収束の有無を判定する判定手段とを備える適応等化型イコライザ。
【請求項11】
前記判定手段は、水平信号成分の前記ヒストグラムのピーク値と前記垂直信号成分の前記ヒストグラムのピーク値を比較し、前記ピーク値の大きい方の前記等化フィルタのタップ係数を用いて、他方のタップ係数を修正する請求項10記載の適応等化型イコライザ。
【請求項12】
光信号を変換して得られる電気信号を等化フィルタにより水平信号成分と垂直信号成分に分離し、
前記等化フィルタの出力の水平信号成分と垂直信号成分のヒストグラムを作成し、
水平信号成分の前記ヒストグラムと垂直信号成分の前記ヒストグラムの分布に基づいて、局所収束の有無を判定するデジタルコヒーレント光通信方法。
【請求項13】
水平信号成分の前記ヒストグラムのピーク値と前記垂直信号成分の前記ヒストグラムのピーク値を比較し、前記ピーク値の大きい方の前記等化フィルタのタップ係数を用いて、他方のタップ係数を修正する請求項12記載のデジタルコヒーレント通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−124782(P2012−124782A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274933(P2010−274933)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】