説明

デジタルコヒーレント光受信装置

【課題】従来のデジタルコヒーレント光受信装置における局部発振光は、それぞれが独立した光源から発生されていた。このため、各光受信部において局部発振光の光位相に関する情報を特定することができなかった。各コヒーレント検波手段から出力される電気信号の相互の位相関係から、波長多重信号光における各チャネルの信号光の光位相関係を正確に把握することもできなかった。
【解決手段】本発明のデジタルコヒーレント光受信装置では、複数の局部発振光は、各局部発振光の光電界の位相がロックされたマルチキャリア局部発振光源から発生される。さらに、各チャネルのコヒーレント検波手段から出力される複数の電気信号が、結合された信号処理部に入力される。各チャネルにおける各複素時系列出力(AnX、AnY)は、本発明に特有のクロストーク補償段へ入力され、隣接チャネルからのクロストークに関する情報を利用して、より正確な信号光チャネルの推定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、波長多重された光信号をデジタルコヒーレント受信する光受信装置に関する。
【0002】
基幹光ネットワークにおける通信トラフィックの増大に伴い、光通信システムの伝送容量のさらなる大容量化が進んでいる。この大容量化に向けた基幹技術として、波長多重方式における多重数を増加させることによる多チャンネル化、チャネル間周波数間隔の低減化、および1チャネルあたりのビットレートの高速化が求められている。
【0003】
これらの基幹技術の実現にあたっては、様々な問題点が存在している。例えば、波長多重数を増やして多チャンネル化をするのにともなって、相互位相変調および4光波混合等に起因する非線形クロストークが顕著になる。また、ビットレートの高速化とともに生じる信号帯域の増大およびチャネル間の周波数間隔の低減にともなって、隣接チャネルからの線形クロストークが増大する。さらに、信号帯域の増大は、波長分散および偏波分散による信号波形の劣化をもたらす。従って、光通信システムの伝送容量をさらに大容量化するためには、これらの伝送条件を制限する各問題への対策が必要である。
【0004】
近年では、送信および受信回路に超高速電子回路によるデジタル信号処理を適用した、いわゆるデジタルコヒーレント伝送技術が大容量光通信の有力な手段となりつつある。最初に、このデジタルコヒーレント伝送技術の概要を説明する。
【0005】
図1は、従来のデジタルコヒーレント光受信装置を用いたデジタルコヒーレント光伝送システムの構成を示す図である(非特許文献1を参照)。図1のデジタルコヒーレント光伝送システムは、全体としては、デジタルコヒーレント光送信装置1とデジタルコヒーレント光受信装置2とから構成されている。デジタルコヒーレント光送信装置1は、チャネル1、2・・、NのNチャネル分の光送信部から構成されている。チャネル1に注目すると、デジタルコヒーレント光送信装置1の光送信部3−1において、送信する情報にしたがって光周波数ν1のキャリア光の振幅および/または位相が変調される。さらに同一波長の信号光を偏波多重することによって当該チャネル光周波数の信号光12−1が得られる。光送信部3−1からの信号光12−1は、光合波器4によって他のチャネルからの信号光と波長多重され、波長多重信号光18として光伝送路17上で受信側へ伝送される。他のチャネル2・・・Nの光周波数(ν2、..、νN)についても、チャネル1と同様に動作する。
【0006】
デジタルコヒーレント光受信装置2においては、受信された波長多重信号光18は光分波器5によって分波される。。分波された各信号光13−1〜13−Nは、コヒーレント検波手段7−1において局部発振光(局発光とも略される)14−1とミキシングされて電気信号15に変換される。各チャネルの動作は同じなので、以下、チャネル1の動作に注目する。信号光13−1は、局部発振光源8−1からの局部発振光(以下、局部発振光とする)とのビート信号を検出することによって、電気信号15に変換される。コヒーレント検波手段7−1は、通常、偏波ダイバーシティおよび位相ダイバーシティのための光学系ならびに光検出器から構成される。従って、コヒーレント検波手段7−1からの電気信号出力数は、各偏波成分(X、Y)に対するI成分、Q成分の各々に対応し、合計で4出力(2×2)となる。コヒーレント検波手段7−1からの4つの電気信号出力は、さらに信号処理部9−1に入力される。信号処理部9−1からは、復調された信号光16−1が得られる。
【0007】
図2は、従来のデジタルコヒーレント光受信装置における信号処理部の構成を示した図である。図2には、コヒーレント検波手段7も含まれている。コヒーレント検波手段7では、光合分波器20および4つの位相検波器21によって、4つの電気信号が得られ、信号処理部9へ渡される。コヒーレント検波手段7からの4つの入力信号は、信号処理部9において、それぞれAD変換器22−1〜22−4でデジタル信号に変換され、X偏波成分のI成分およびQ成分と、Y偏波成分のI成分およびQ成分とが得られる。これらの各偏波のI成分およびQ成分は結合されて、以降複素デジタル時系列として処理される。
【0008】
AD変換器22−1〜22−4に後続する波長分散補償段23−1、23−2において、伝送路17の波長分散が、偏波成分毎に粗く補償される。2つの波長分散補償段23−1、23−2からの各複素時系列出力(AX、AY)は、送信側で偏波多重された偏波成分が混合された状態のままで、偏波多重分離段24に入力される。偏波多重分離段24は、入出力関係が式(1)によって表される適応型FIRフィルタである。
【0009】
【数1】

【0010】
式(1)の中で、*は畳み込み演算を表す。4つのフィルタ係数hXX(k)、hXY(k)、hYX(k)、hYY(k)は、偏波多重分離段24への入力時系列(AX、AY)の値に従って逐次推定される。推定アルゴリズムとしては、CMA(Constant Modulus Algorithm)法、またはその変形版が用いられる。例えば、CMA法の場合は、k番目のフィルタ係数hXX(k)、hXY(k)、hYX(k)、hYY(k)が、偏波多重分離段24の複素時系列出力BX、BYの制御目標からの誤差ε(BX)、ε(BY)を0に近づけるように、次の漸化式を繰り返すことによって与えられる。
【0011】
【数2】

【0012】
式(2)において、μは漸化式のステップサイズを表す。
【0013】
偏波多重分離段24では、偏波多重分離だけではなく偏波分散補償および微調整レベルの波長分散補償も行われる。偏波多重分離段24で分離された各偏波成分出力は、さらにクロック抽出段25において、信号光−局部発振光間の光周波数ずれが補正される。さらに、続くキャリア位相推定段26において、I成分およびQ成分それぞれの位相補正を施され、周波数および位相の同期が行われる。最後に、シンボル識別段27において、シンボルの識別が行われ、復調された信号光であるX偏波出力およびY偏波出力16−1が得られる。
【0014】
図3は、波長多重伝送する場合のデジタルコヒーレント光受信装置の信号処理部全体の構成を示した図である。コヒーレント検波手段7および信号処理部9は、キャリア光周波数と一対一に対応する。したがって、チャネル1〜Nの各信号を波長多重するシステムの場合は、図3に示したように、波長多重数分の信号処理部が並列して設けられる。
【0015】
デジタルコヒーレント受信系よりも前のコヒーレント受信技術では、局部発振光を信号光に対して光位相同期させることが不可欠であった。上述のデジタルコヒーレント技術の登場によって、信号光の光位相に対して同期していないフリーラン状態の局部発振光を用いても、信号光を受信することが可能となった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Jens C. Rasmussen他2名「100 Gbps光伝送システムのためのデジタルコヒーレント受信技術」2009年9月、FUJITSU、60、5、p.476-483、インターネットURL:http://img.jp.fujitsu.com/downloads/jp/jmag/vol60-5/paper18.pdf
【非特許文献2】Seb J. Sabory, "Digital filters for coherent optical receivers," Optics Express, vol. 16, no. 2, pp. 804-817 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
既に述べたとおり、波長多重伝送方式の場合、受信されるチャネルの信号光は隣接チャネルから線形クロストークおよび非線形クロストークの影響を受ける。従来のデジタルコヒーレント光受信装置においては、受信した信号光から得られる当該チャネルの時系列情報のみに基づいて信号を推定していた。このため、上述の隣接チャネルからのクロストークを正確に補償することができなかった。
【0018】
また、上述のクロストークの影響を正確に推定しこの影響を補償するには、光受信部において、波長多重信号光における互いに独立な各チャネルの信号光の振幅だけでなく光位相を知る必要がある。ここで、波長多重信号光における各チャネルの信号光の位相をθ1、..、θN、各チャネルに対応する局部発振光の電界の位相をφ1、..、φNとする。このとき、コヒーレント検波手段から出力される電気信号の位相は、θ1−φ1、..、θN−φNとなる。従って、各チャネルの信号光の位相を知るためには、コヒーレント検波手段から出力される出力電気信号で検出される位相だけではなく、局部発振光の電界の位相または各局部発振光の相互の位相関係も知る必要がある。
【0019】
しかしながら、従来のデジタルコヒーレント光受信装置において、各チャネルに対応する局部発振光はそれぞれが独立した光源から発生されていた。このため、各光受信部6−1、6−2、・・6−Nにおいて、局部発振光の光位相に関する情報を特定することはできなかった。従って、各コヒーレント検波手段から出力される電気信号の相互の位相関係から、波長多重信号光における各チャネルの信号光の光位相関係を正確に把握することもできなかった。
【0020】
上述の問題点に鑑み、本発明は波長多重信号光における互いに独立な各チャネルの信号光の光位相関係を把握することを可能とし、隣接チャネルからの線形クロストークおよび非線形クロストークの影響を正確に推定しおよびこれを補償することができるコヒーレント光伝送方式を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、波長多重信号光の中に含まれるNチャネルの信号光を復調するデジタルコヒーレント光受信装置において、波長多重分離され、前記Nチャネルの各々のチャネルに対応する光周波数を有する信号光をそれぞれコヒーレント受信するN個のコヒーレント光受信部と、前記N個のコヒーレント光受信部の各々に対して、コヒーレント検波を行うための対応するN個の局部発振光を供給するマルチキャリア光源であって、前記N個の局部発振光の光電界相互の位相差が固定されているマルチキャリア光源と、前記N個のコヒーレント光受信部の中の所定のチャネルに対応するコヒーレント光受信部からの出力検波信号と、前記所定のチャネルに隣接する少なくとも1つのチャネルに対応するコヒーレント光受信部からの出力検波信号とに基づいてクロストーク補償を行なう1つの信号処理部とを備えたことを特徴とするデジタルコヒーレント光受信装置である。また、好ましくは、前記信号光は、光電界の振幅または位相について多値変調されている。
【0022】
すべてのチャネルのコヒーレント光受信部からの出力検波信号に基づいてクロストーク補償を行なうことが可能となる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1のデジタルコヒーレント光受信装置であって、前記信号処理部は、nを1≦n≦Nである整数とし、mを1≦m≦Nの整数とするとき、前記コヒーレント光受信部から出力される、X偏波およびY偏波に対応する複素時系列入力AnX、AnYと、X偏波およびY偏波に対応するk番目の複素出力BnX(k)、BnY(k)との関係が、k番目のフィルタ係数hmnXX(k)、hmnXY(k)、hmnYX(k)、hmnYY(k)を介して、式
【0024】
【数3】

【0025】
で与えられる適応型FIRフィルタから構成されるクロストーク補償部を含むことを特徴とする。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項2のデジタルコヒーレント光受信装置であって、前記k番目のフィルタ係数hmnXX(k)、hmnXY(k)、hmnYX(k)、hmnYY(k)は、複素時系列出力BnX、BnYの制御目標からの誤差ε(BnX)、ε(BnY)を0に近づけるように、漸化式
【0027】
【数4】

【0028】
を繰返すことによって与えられることを特徴とする。
【0029】
請求項4に記載の発明は、請求項3のデジタルコヒーレント光受信装置であって、前記k番目のフィルタ係数hmnXX(k)、hmnXY(k)、hmnYX(k)、hmnYY(k)は、複素時系列出力BnX、BnYの制御目標からの誤差ε(BnX)、ε(BnY)を0に近づけるように、漸化式
【0030】
【数5】

【0031】
を繰返すことによって与えられ、前記漸化式のδmnが少なくとも1以上である整数vに対して
|m−n|≦vのとき、δmn=1 および
|m−n|>vのとき、δmn=0
であることを特徴とする。このとき、対角上要素および少なくとも前記対角要素に隣接する要素を除いた他の行列要素は、0と設定される。請求項4に記載の発明は、すべてのチャネルからのクロストークを考慮して、すべてのフィルタ係数を求める請求項3に記載の発明の特別な形態である。
【0032】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4いずれかのデジタルコヒーレント光受信装置であって、前記波長多重信号光の中に含まれる信号光が偏波多重されていることを特徴とする。
【0033】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5いずれかのデジタルコヒーレント光受信装置であって、前記マルチキャリア光源は、少なくとも1つの種光源と、前記種光源から供給された光に対して、前記波長多重化されたNチャネルの前記信号光の光周波数間隔に等しい間隔で1つ以上のサイドバンド光を生じさせる光強度変調器または光位相変調器とを含むことを特徴とする。
【0034】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至5いずれかのデジタルコヒーレント光受信装置であって、前記マルチキャリア光源は、少なくとも1つの種光源と、前記種光源から供給された光に対して位相変調を施す第1の光位相変調器と、前記第1の光位相変調器からの出力光が入射される分散性媒質と、前記分散性媒質からの出力光に対して、周波数チャープを与える第2の光位相変調器とを含むことを特徴とする。
【0035】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至5いずれかのデジタルコヒーレント光受信装置であって、前記マルチキャリア光源は、前記信号光の光周波数間隔に等しい繰返し周波数の光パルスを出力する少なくとも1つの種パルス光源と、前記種パルス光源の出力光パルスが入射され、前記出力光パルスのサイドバンドを増加させる光非線形媒質とを含むことを特徴とする。
【0036】
請求項9に記載の発明は、請求項6乃至8いずれかのデジタルコヒーレント光受信装置であって、前記マルチキャリア光源は、前記光強度変調器もしくは前記光位相変調器または前記種パルス光源へ、前記信号光の光周波数間隔に等しい周波数の信号を供給する発振器をさらに含むことを特徴とする。
【0037】
請求項10に記載の発明は、2個以上であってN個以下の単一波長光源または請求項6乃至8いずれかに記載のマルチキャリア光源を備え、前記単一波長光源または前記マルチキャリア光源からの各々の局部発振光の光電界相互の位相差が固定されていることを特徴とするデジタルコヒーレント光受信装置である。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、波長多重信号光における互いに独立な各チャネルの信号光の光位相関係を把握することを可能となる。さらに、隣接チャネルからの線形クロストークおよび非線形クロストークの影響を正確に推定しおよびこれを補償することができるコヒーレント光伝送方式を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来のデジタルコヒーレント光受信装置を用いたデジタルコヒーレント光伝送システムの構成を示した図である。
【図2】従来のデジタルコヒーレント光受信装置の受信側における1つの信号処理部の構成を示した図である。
【図3】波長多重伝送する場合のデジタルコヒーレント光受信装置の信号処理部全体の構成を示した図である。
【図4】本発明のデジタルコヒーレント光受信装置に関わる第1の実施形態の構成を示した図である。
【図5】第1の実施形態の本発明のデジタルコヒーレント光受信装置における光受信部のさらに詳細な構成を示した図である。
【図6】本発明のデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第1の実施例の構成を示す図である。
【図7】本発明のデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第2の実施例の構成を示す図である。
【図8】本発明のデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第3の実施例の構成を示す図である。
【図9】本発明のデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第4の実施例の構成を示す図である。
【図10】本発明のデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第5の実施例の構成を示す図である。
【図11】本発明のデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第6の実施例の構成を示す図である。
【図12】本発明のデジタルコヒーレント光受信装置におけるクロストーク補償段の動作を表すフィルタ行列を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明のデジタルコヒーレント光受信装置は、従来技術のデジタルコヒーレント光受信装置と比べて、次の点に特徴がある。
【0041】
第1に、各チャネルの信号光がコヒーレント受信される複数の光受信器にそれぞれ対応する複数の局部発振光は、各局部発振光の光電界の位相がロックされたマルチキャリア局部発振光源から発生される。これに対し、従来技術のデジタルコヒーレント光受信装置においては、波長多重数分の独立した局部発振光源から局部発振光源が発生されていた。
【0042】
第2に、各チャネルのコヒーレント検波手段から出力される複数の電気信号が、結合された信号処理部に入力される。これに対し、従来技術のデジタルコヒーレント光受信装置においては、コヒーレント検波手段からの複数の電気信号出力は、対応する別個の信号処理部にそれぞれ入力されていた。
【0043】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態の本発明のデジタルコヒーレント光受信装置の構成を示した図である。本実施形態のデジタルコヒーレント光受信装置は、図1に示した従来のデジタルコヒーレント光受信装置の構成と比べると、局部発振光源の構成およびコヒーレント光検波手段よりも後段の信号処理部の構成の点で相違している。以下、これらの相違点を中心に説明する。
【0044】
図4に示したデジタルコヒーレント光受信装置において、送信側の構成については、図1の従来技術の構成と同一である。これに対し受信側においては、第1に、局部発振信号の供給方法が図1の従来技術の構成と異なっている。すなわち、各チャネルの光受信部6−1、6−2、・・6−Nへ供給される局部発振信号14−1、14−2、・・14−Nは、マルチキャリア局部発振回路41において生成され、光分波器40を経由して供給される。受信側の光分波器5において分波されたNチャネルの信号光は、それぞれ対応するN波の局部発振光とミキシングされてコヒーレント受信される。本発明においては、N波の局部発振光は、各々の光位相がロックされたマルチキャリア光源41から発生されるため、各局部発振光間で相互の光位相関係が確定される。ここで、各々の光位相がロックされたとは、各局部発振光の相互の位相差が固定されていることを意味する。従って、コヒーレント検波手段7−1、7−2、・・7−Nの各出力電気信号15−1、15−2、・・15−Nの位相関係から、波長多重信号光における各チャネルの信号光の光位相関係を推定することが可能となる。各局部発振光の光位相がロックされたマルチキャリア光源41の具体的な構成は、後述の実施例で示される。
【0045】
第2に、コヒーレント検波手段7−1、7−2、・・7−Nの各出力電気信号15−1、15−2、・・15−Nは、共通のマルチチャネル信号処理部42へ入力される点で、図1の従来技術の構成と相違している。従来技術のデジタルコヒーレント光受信装置では、Nチャネルの信号光に対応したコヒーレント検波手段の各出力は、それぞれ対応するN個の独立した別個の信号処理部に入力されていた。このため各信号処理部では他のチャネルの信号を相互に利用することができず、他のチャネルからのクロストークの精密な補償ができなかった。
【0046】
これに対し、本発明のデジタルコヒーレント光受信装置では、各チャネルの信号光にそれぞれ対応したコヒーレント検波手段の各出力は、各チャネルの信号光を相互に利用するため、各チャネルからの信号光が結合され統合された信号処理部へ入力される。次に、この統合された信号処理部の構成および動作について説明する。
【0047】
図5は、第1の実施形態の本発明のデジタルコヒーレント光受信装置における光受信部のさらに詳細な構成を示した図である。マルチキャリア信号処理部42は、図3に示した従来技術の構成における個々の偏波多重分離段21−1、24−2、・・24−Nに代えて、結合されたクロストーク補償段50を備えている。クロストーク補償段50に対しては、後述するように各チャネルからの信号光が入力され、隣接チャネルからのクロストークの補償のために利用される。すなわち、他のチャネルからの線形クロストークおよび非線形クロストークの影響を正確に推定しおよびこれを補償することができる。クロストーク補償段50以外の部分は、従来技術の構成とほぼ同様である。次に、クロストーク補償段50の構成および動作についてさらに説明する。
【0048】
チャネル1に着目すれば、コヒーレント検波手段7−1からのコヒーレントの4つの入力信号は、それぞれAD変換器22によってデジタル信号に変換され、X偏波成分のI成分およびQ成分と、Y偏波成分のI成分およびQ成分とが得られる。これらの各信号成分は結合されて、以降複素デジタル時系列信号として処理される。
【0049】
AD変換器22の次段の波長分散補償段23−1、23−2において、伝送路の波長分散が、偏波成分毎に粗く補償される。2つの波長分散補償段23−1、23−2からの各複素時系列出力(A1X、A1Y)は、送信側で偏波多重された偏波成分が混合した状態のままで、クロストーク補償段50へ入力される。同様に、チャンネル2からの複素時系列出力(A2X、A2Y)もクロストーク補償段50へ入力され、合計Nチャネルのすべての複素時系列出力がクロストーク補償段50へ入力される。
【0050】
クロストーク補償段50にX偏波およびY偏波に対応する複素時系列AnX、AnYが入力されるとき(1≦n≦N)、X偏波およびY偏波にそれぞれ対応するk番目の複素出力BnX(k)、BnY(k)は、次式で与えられる。
【0051】
【数6】

【0052】
ここで、hmnXX(k)、hmnXY(k)、hmnYX(k)、hmnYY(k)は、k番目のフィルタ係数である(1≦m≦N)。式(3)は、適応型FIRフィルタを表している。
【0053】
従来技術と同様に、フィルタ係数hmnXX(k)、hmnXY(k)、hmnYX(k)、hmnYY(k)は、入力時系列(AnX、AnY)の値に従って逐次推定される。推定アルゴリズムとしては、CMA(Constant Modulus Algorithm)法、またはその変形版が用いられる。例えば、CMA法の場合は、k番目のフィルタ係数hXX(k)、hXY(k)、hYX(k)、hYY(k)が、複素時系列出力BX、BYの制御目標からの誤差ε(BX)、ε(BY)を0に近づけるように、次式の漸化式を繰り返すことによって与えられる。
【0054】
【数7】

【0055】
式(4)から容易に理解されるように、本発明のデジタルコヒーレント光受信装置では、各フィルタ係数は、すべてのチャネルからの複素時系列入力および出力が考慮される。フィルタ係数は、図12の(a)の行列形式で表される。これによって、隣接チャネルからの線形クロストークおよび非線形クロストークの影響を正確に推定しおよびこれを補償することができる。
【0056】
上述のように、本発明は、マルチキャリア局部発振光源を使用することによって、各局部発振光の光位相をロックしている。すなわち、異なる局部発振光の位相差が固定されており、これによって、波長多重信号の各チャネルの信号光間の光位相関係をコヒーレント検波手段からの出力の位相関係に反映させることができる。
【0057】
波長多重伝送方式の場合、受信されるチャネルの信号光は隣接チャネルから線形クロストークおよび非線形クロストークの影響を受ける。従来のデジタルコヒーレント光受信装置においては、受信した信号光から得られる当該チャネルの時系列情報のみに基づいて信号を推定していた。このため、上述の隣接チャネルからのクロストークを正確に補償することができなかった。本発明では、各キャリア光出力の光位相がロックされたマルチキャリア局部発振光源を用いることによって、光受信部において、波長多重信号光における互いに独立な各チャネルの信号光の振幅だけでなく光位相を知ることができ、上述のクロストークの影響を正確に推定しこの影響を補償することが可能となる。すなわち、波長多重信号光における各チャネルの信号光の位相をθ1、..、θN、各チャネルに対応するマルチキャリア局部発振光の電界の位相をφ1、..、φNとする。このとき、コヒーレント検波手段から出力される電気信号の位相は、θ1−φ1、..、θN−φNとなる。マルチキャリア局部発振光の電界の位相が確定し既知の情報となることによって、コヒーレント検波手段から出力される電気信号は、波長多重信号光における各チャネルの信号の振幅および位相をともに反映した情報となる。
【0058】
さらに、すべてのまたは複数のチャネルからの複素時系列信号を利用する統合したクロストーク補償段50を利用して、隣接チャネルからのクロストークに関する情報を得ることによって、より正確な信号光チャネルの推定が可能となる。
【0059】
本発明では、キャリア光の振幅だけではなく位相を変調して発生させた信号光に対しても適用可能である。また、本発明は直交した2つの偏波状態に多重して得られた、いわゆる偏波多重信号光に対しても適用可能である。
【0060】
第1の実施形態では、フィルタ係数に関して、1〜Nのすべての(m、n)について計算したため、計算量がN2に比例して増大する。しかし、ある所定のチャネルにおいて、当該チャネル近傍のチャネルからのクロストークが支配的である場合は、(m、n)の対角成分近傍の係数だけについて考慮して計算することができる。これによって、フィルタ係数を求めるための計算量をほぼチャネル数Nに比例する程度にまで減少させることが可能である。図12の(b)に示したように、各チャネルについて、行列の対角線近傍上の4つのフィルタ係数hmnXX(k)、hmnXY(k)、hmnYX(k)、hmnYY(k)を計算すれば良い。例えば、対角成分の要素に直接隣接する要素のみを考慮することができる。言い換えると、式(4)におけるδmnが、少なくとも1以上である整数vに対して、次式
|m−n|≦vのとき、δmn=1
|m−n|>vのとき、δmn=0
を満たせば良い。これによって、ほぼチャネル数Nに比例した計算量まで削減することができる。
【0061】
図5に示した第1の実施形態の構成における信号処理ブロックの順序・組み合わせは、これに限定されない。例えば、クロック抽出部25とキャリア位相推定部26のブロックをまとめて1つの機能ブロックとした構成も可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、波長多重された光信号の1〜Nチャネル全てのチャネルを信号処理の対象としたが、本発明は、波長多重された全光信号の内の一部のチャネル群を信号処理の対象としても良い。次に、マルチキャリア光源の様々な実施例について述べる。
【0063】
(マルチキャリア光源の第1の実施例)
図6は、本発明に係るデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第1の実施例の構成を示す図である。本実施例では、マルチキャリア局部発振光は、以下のように発生される。種光源61から出力される単一光周波数の光65を、発振器62の出力によって駆動される光変調器63で変調することによって、複数のサイドバンド光64を発生させる。光変調器63は、光強度変調器または光位相変調器のいずれかが用いられる。マルチキャリア光の周波数間隔Δfと等しい周波数を有する周期的信号が、発振器62から光変調器63に与えられる。この周期的信号による単一光周波数光の変調を経て、光変調器63からマルチキャリア局部発振光が発生される。図6には、種光源61および光変調器63の光周波数スペクトラムも示されている。
【0064】
(マルチキャリア光源の第2の実施例)
図7は、本発明に係るデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第2の実施例の構成を示す図である。本実施例では、上述の第1の実施例における種光源を複数備えることを特徴とする。さらに、複数の種光源の光位相が互いにロックされている。すなわち、ν1の光周波数を発生する第1の種光源71−1と、ν2の光周波数を発生する第2の種光源71−2とを備え、それぞれの単一光周波数の光は光合波器74−2で合波される。ここで、2つの光周波数の差ν2−ν1は、発振器72の出力の周波数、すなわち発生するマルチキャリアの周波数間隔Δfの整数(n)倍となるように設定されている。
【0065】
複数のマルチキャリア光の光位相をロックする方法は非特許文献1に開示されている。例えば、光変調器73の出力光の一部を光分岐器74−1で分岐し、光位相監視制御部75へフィードバックして、複数の種光源71−1、71−2の光周波数を制御する。上述の2つの光周波数の差ν2−ν1の関係および光位相のロック条件を満たすことによって、単一のマルチキャリア局部発振光源を用いる場合と同様に、周波数間隔Δfで等間隔に配列され、かつ光位相関係がロックされたマルチキャリア局部発振光75を発生することができる。
【0066】
サイドバンドの発生数は、光位相変調器または後述する光非線形媒質によって種光源からの光に与えられるチャープ(歪み量)に概ね比例し、周波数間隔 Δfに反比例する。したがって、光位相変調器などの条件によっては、サイドバンドの発生数が十分でなく、発生できるキャリア数の制限が生じ得る。本実施例によれば、1つの種光源から発生させることのできるキャリア数が少ない場合でも、より多くのキャリア数を確保することが可能となる。
【0067】
種光源の数Mは、キャリア数をN(1以上)とすれば、1以上N/2以下の整数とすることができる。例えば、Nを10とすると、種光源の数Mは最大5となる。第1の実施例は、M=1の場合に相当する。また、第2の実施例はM=2の場合に相当する。Mの値には様々な選択が可能であることに注意されたい。
【0068】
(マルチキャリア光源の第3の実施例)
図8は、本発明に係るデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第3の実施例の構成を示す図である。本実施例の構成のマルチキャリア局部発振光源は、種光源81に加え光強度変調器83および光位相変調器84を備えている。種光源81の出力光85は、光強度変調器83によってパルス変調を受けてパルス化され、パルス変調によって生じるサイドバンドを有する出力光87が得られる。さらに、光強度変調器83によってパルス化された出力光に、光位相変調器84によって周波数チャープを与えることで、第1の実施例のマルチキャリア局部発振光源と比べキャリア数がより増加し、かつ各キャリア間の強度偏差がより小さいマルチキャリア光87を発生することができる。光強度変調器84へのバイアス条件の調節によっては、光強度変調器83の出力光86のスペクトルは図8に示したような3キャリアではなく2キャリアとなり得るが、この場合でも、同じ構成を用いてキャリア数を増やすことができる。
【0069】
(マルチキャリア光源の第4の実施例)
図9は、本発明に係るデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第4の実施例の構成を示す図である。本実施例のマルチキャリア局部発振光源は、種光源91に加え、2つの光位相変調器93−1、93−2および分散性媒質94を備えている。第1の光位相変調器93−1およびその出力光が入力される分散性媒質94は、第2の実施例のマルチキャリア局部発振光源における光強度変調器73と同様なパルス変調動作を行う。本実施例においても、分散性媒質94から出力さえるパルス化された出力光に、第2の光位相変調器93−2によって周波数チャープを与えることによって、マルチキャリア局部発振光95を発生させることができる。
【0070】
ここで分散性媒質としては、例えば、単一モードファイバもしくはファイバ型回折格子または光干渉計などを利用することができる。
【0071】
(マルチキャリア光源の第5の実施例)
図10は、本発明に係るデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第5の実施例の構成を示す図である。本実施例のマルチキャリア局部発振光源は、繰返し光パルスを出力する種パルス光源101と、種パルス光源101からのパルス出力光が入力される光非線形媒質103とを備えている。さらに、発振器102は、マルチキャリア光の周波数間隔と等しい周波数の周期的信号を種パルス光源101に供給する。種パルス光源101からの出力光105のスペクトルは、光非線形媒質103の中で拡大し、拡大されたスペクトルの幅に比例して、マルチキャリア局部発振光104に含まれるキャリア数も増加する。
【0072】
種パルス光源101としてはパルス光を発生するレーザ光源を用いる。具体的には、モード同期レーザ(半導体、固体、導波路型)がある。光非線形媒質103としては、例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、KTa1-xNbx3(KTN)等の化合物デバイス、もしくはこれらに擬似位相整合用の構造を設けたもの、単一モードファイバまたはフォトニック結晶ファイバ等を利用することができる。
【0073】
上述のいずれの実施例においても、種光源としては、CW(連続波)光を発生する単一モードレーザ光源を用いることができ、具体的には半導体レーザ、固体レーザ、導波路型レーザを使用することができる。その光周波数は、例えば、1530〜1600nmの間である。発振器としては、正弦波発振器を使用することができ、その周波数は、例えば、1〜50GHzの間である。光位相変調器および光強度変調器としては、半導体またはLiNbO3のものを使用することができる。
【0074】
(マルチキャリア光源の第6の実施例)
図11は、本発明に係るデジタルコヒーレント光受信装置で使用されるマルチキャリア局部発振光源の第6の実施例の構成を示す図である。上述の実施例1〜5のマルチキャリア局部発振光源は、単独で使用するだけでなく、異なるまたは同一実施例のマルチキャリア局部発振光源の組合わせにより実施することも可能である。図11に示すように、異なる複数マルチキャリア局部発振光源111−1、111−2、・・111−Nからの各キャリアを光合波器112によって組み合わせることによって、マルチキャリア光115を得る。本実施例の場合も、第2の実施例のように、光分岐器113によってキャリアの一部を光位相監視制御部114へフィードバックして、異なるマルチキャリア光源間の光位相を同期させる。
【0075】
また、上述の各実施例におけるマルチキャリア局部発振光源の出力強度を増大させるために、マルチキャリア局部発振光源の後段に光増幅器を設けることもできる。
【0076】
また、上述のマルチキャリア光源の各キャリアの強度レベルを補正するために、マルチキャリア局部発振光源の後段に光レベル等化手段を設けることもできる。
【0077】
以上詳細に述べたように、本発明により波長多重信号光における互いに独立な各チャネルの信号光の光位相関係を把握することが可能となる。さらに、隣接チャネルからの線形クロストークおよび非線形クロストークの影響を正確に推定しおよびこれを補償することができるコヒーレント光伝送方式を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、一般的に光通信システムに利用することができる。特に、波長多重された光信号の光受信装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
3−1、3−2、3−N 光送信部
4、 74−2、112 光合波器
5、40 光分波器
6−1、6−2、6−N 光受信部
7、7−1、7−2、7−N コヒーレント検波手段
8−1、8−2、8−N 局部発振光源
9−1、9−2、9−N 信号処理部
24、24−1、24−2、24−N 偏波多重分離段
41、111−1、111−2、111−N マルチキャリア局部発振光源
42 マルチチャネル信号処理部
50 クロストーク補償部
61、71−1、71−2、81 種光源
63、73、93−1、93−2 光変調器
75、114 光位相監視制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重信号光の中に含まれるNチャネルの信号光を復調するデジタルコヒーレント光受信装置において、
波長多重分離され、前記Nチャネルの各々のチャネルに対応する光周波数を有する信号光をそれぞれコヒーレント受信するN個のコヒーレント光受信部と、
前記N個のコヒーレント光受信部の各々に対して、コヒーレント検波を行うための対応するN個の局部発振光を供給するマルチキャリア光源であって、前記N個の局部発振光の光電界相互の位相差が固定されているマルチキャリア光源と、
前記N個のコヒーレント光受信部の中の所定のチャネルに対応するコヒーレント光受信部からの出力検波信号と、前記所定のチャネルに隣接する少なくとも1つのチャネルに対応するコヒーレント光受信部からの出力検波信号とに基づいてクロストーク補償を行なう1つの信号処理部と
を備えたことを特徴とするデジタルコヒーレント光受信装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、
nを1≦n≦Nである整数とし、mを1≦m≦Nの整数とするとき、前記コヒーレント光受信部から出力される、X偏波およびY偏波に対応する複素時系列入力AnX、AnYと、X偏波およびY偏波に対応するk番目の複素出力BnX(k)、BnY(k)との関係が、k番目のフィルタ係数hmnXX(k)、hmnXY(k)、hmnYX(k)、hmnYY(k)を介して、式
【数1】

で与えられる適応型FIRフィルタから構成されるクロストーク補償部を含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタルコヒーレント光受信装置。
【請求項3】
前記k番目のフィルタ係数hmnXX(k)、hmnXY(k)、hmnYX(k)、hmnYY(k)は、複素時系列出力BnX、BnYの制御目標からの誤差ε(BnX)、ε(BnY)を0に近づけるように、漸化式
【数2】

を繰返すことによって与えられることを特徴とする請求項2に記載のデジタルコヒーレント光受信装置。
【請求項4】
前記k番目のフィルタ係数hmnXX(k)、hmnXY(k)、hmnYX(k)、hmnYY(k)は、複素時系列出力BnX、BnYの制御目標からの誤差ε(BnX)、ε(BnY)を0に近づけるように、漸化式
【数3】

を繰返すことによって与えられ、前記δmnが少なくとも1以上である整数vに対して
|m−n|≦vのとき、δmn=1 および
|m−n|>vのとき、δmn=0
であることを特徴とする請求項2に記載のデジタルコヒーレント光受信装置。
【請求項5】
前記波長多重信号光の中に含まれる信号光が、偏波多重されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のデジタルコヒーレント光受信装置。
【請求項6】
前記マルチキャリア光源は、
少なくとも1つの種光源と、
前記種光源から供給された光に対して、前記波長多重化されたNチャネルの前記信号光の光周波数間隔に等しい間隔で1つ以上のサイドバンド光を生じさせる光強度変調器または光位相変調器と
を含むことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のデジタルコヒーレント光受信装置。
【請求項7】
前記マルチキャリア光源は、
少なくとも1つの種光源と、
前記種光源から供給された光に対して位相変調を施す第1の光位相変調器と、
前記第1の光位相変調器からの出力光が入射される分散性媒質と、
前記分散性媒質からの出力光に対して、周波数チャープを与える第2の光位相変調器と
を含むことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のデジタルコヒーレント光受信装置。
【請求項8】
前記マルチキャリア光源は、
前記信号光の光周波数間隔に等しい繰返し周波数の光パルスを出力する少なくとも1つの種パルス光源と、
前記種パルス光源の出力光パルスが入射され、前記出力光パルスのサイドバンドを増加させる光非線形媒質と
を含むことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のデジタルコヒーレント光受信装置。
【請求項9】
前記マルチキャリア光源は、
前記光強度変調器もしくは前記光位相変調器または前記種パルス光源へ、前記信号光の光周波数間隔に等しい周波数の信号を供給する発振器をさらに含むことを特徴とする請求項6乃至8いずれかに記載のデジタルコヒーレント光受信装置。
【請求項10】
2個以上であってN個以下の単一波長光源または請求項6乃至8いずれかに記載のマルチキャリア光源を備え、前記単一波長光源または前記マルチキャリア光源からの各々の局部発振光の光電界相互の位相差が固定されていることを特徴とするデジタルコヒーレント光受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−44626(P2012−44626A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186650(P2010−186650)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】