説明

デジタル放送受信機

【課題】デジタル放送波の受信が途絶えても、映像や音声を連続的に再生することができるデジタル放送受信機を提供する。
【解決手段】記憶部4に所定量のトランスポートストリームが蓄積すると、記憶部4から分離化部5へトランスポートストリームを出力させるとともに、記憶部へ入力される一連のトランスポートストリームに欠落が生じると、記憶部4へのトランスポートストリームの入力に同期するPCRより遅らせたクロックに同期させて記憶部4から分離化部5へ一連のトランスポートストリームを出力させて再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デジタル放送受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタル放送受信機は、例えば移動体に搭載されて建築物の陰や放送電波の受信が困難なエリアに移動すると、一時的に受信電波が途絶え、映像や音声が不規則、不連続的に途切れてしまう。このような不具合を解消する従来の技術として、特許文献1に開示されたテレビ受信機がある。このテレビ受信機では、放送波の受信が途絶えると、映像や音声が途切れる前の一定時間の映像や音声データに基づいて途切れた箇所を補間することにより、再生した映像や音声の乱れを低減している。
【0003】
【特許文献1】特開2002−320156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のデジタル放送受信機では、映像や音声が途切れた箇所を、途切れる以前の映像や音声のデータを単にプレイバック再生することで補間しており、連続的な再生がされないという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、デジタル放送波の受信が途絶えても、映像や音声を連続的に再生することができるデジタル放送受信機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るデジタル放送受信機は、デジタル放送信号からトランスポートストリームを復調する復調部と、復調部により復調されたトランスポートストリームを入力し蓄積する記憶部と、記憶部から出力されたトランスポートストリームより映像データ及び音声データを分離する分離化部と、記憶部に所定量のトランスポートストリームが蓄積すると、記憶部から分離化部へトランスポートストリームを出力させるとともに、記憶部へ入力される一連のトランスポートストリームに欠落が生じた場合、記憶部へのトランスポートストリームの入力に同期するクロックより遅らせたクロックに同期させて記憶部から分離化部へトランスポートストリームを出力させる制御を行う制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、記憶部に所定量のトランスポートストリームが蓄積すると、記憶部から分離化部へトランスポートストリームを出力させるとともに、記憶部へ入力される一連のトランスポートストリームに欠落が生じると、記憶部へのトランスポートストリームの入力に同期するクロックより遅らせたクロックに同期させて記憶部から分離化部へ一連のトランスポートストリームを出力させる。これにより、デジタル放送受信機が、移動中に建築物の陰や電波が受信困難な特定のエリアに入ってデジタル放送信号の受信が途絶え、一連のトランスポートストリームに欠落が生じても、記憶部から入力クロックより遅らせたクロックで一連のトランスポートストリームを出力させて再生処理が行われる。このため、上記のようなトランスポートストリームの欠落が生じても、連続的に映像及び音声が再生され、映像及び音声の途切れによる視聴者の不快感を低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるデジタル放送受信機の構成を概略的に示す図であり、車載用等、移動体に搭載されるデジタル放送受信機に適用した場合を示している。図1において、実施の形態1によるデジタル放送受信機は、受信アンテナ1、チューナ2、復調部3、記憶部4、分離化部5、映像デコーダ部6、音声デコーダ部7、制御部8、及び操作部9を備える。
【0009】
受信アンテナ1は、デジタル放送波を受信する。チューナ2は、制御部8からの選局指令aに従って、受信アンテナ1で受信されたデジタル放送波から所望のチャンネルを選局する。復調部3では、チューナ2から出力される変調されたデジタル放送波を復調して、トランスポートストリームc1を出力する。
【0010】
トランスポートストリームはパケットに分割され送信されており、パケットに欠落がないかを示すカウンタ(0〜15の値をとりパケットごとに1ずつ増える)及び100[ms]以下の間隔でPCR(Program Clock Reference)がパケット内に含まれることが規定されている。PCRとは、不図示のデジタル放送送信機と実施の形態1によるデジタル放送受信機との時刻同期を行う際の基準となるクロックであり27MHz(27,000,000=1[sec])で表される。復調部3では、パケットカウンタが連番になっていない場合、又は送信されてきたPCRと直前のPCRを比較し100[ms]=2,700,000以上差が有る場合にトランスポートストリームに欠落が生じたと判断し、エラー信号bを制御部8に出力する。
【0011】
記憶部4では、復調部3で復調されたトランスポートストリームc1を蓄積する。記憶部4で蓄積されるデータは、一定データ量(あるいは一定時間量)であり、常に更新しつつ、制御部8からの入出力制御命令dに従って記憶部4から出力される。なお、記憶部4は、制御部8のメモリあるいはフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等のデータ読み書きを自由に行える外部蓄積装置で実現される。
【0012】
分離化部5は、記憶部4から出力されたトランスポートストリームc2のデータを映像データf、音声データg及びその他のデータ(再生時刻、番組付加情報等)eに分離する。分離されたデータのうち、映像データf及び音声データgは、映像デコーダ部6及び音声デコーダ部7に出力され、その他のデータeは制御部8に出力される。映像デコーダ部6及び音声デコーダ部7は、分離化部5から入力した映像データf及び音声データgをデコードし、映像信号データh及び音声信号データiを出力する。
【0013】
制御部8は、この車載用のデジタル放送受信機の各構成要素を制御するマイクロコンピュータである。また、制御部8は、記憶部4に格納されているデータを読み出し可能に接続されており、復調部3から入力したエラー信号bや記憶部4に蓄積されたデータが一定データ量に達しているか否かに基づいて、記憶部4からのデータ出力を制御する。
【0014】
例えば、制御部8は、放送電波の受信開始時には記憶部4からのデータ出力を行わず、記憶部4の蓄積データが一定データ量になるまでトランスポートストリームc1のデータを蓄積させる。記憶部4の蓄積データが一定データ量になると、制御部8は、記憶部4のデータ出力を制御し、PCRに同期させたクロックで記憶部4からデータを出力させる。
【0015】
なお、実施の形態1によるデジタル放送受信機から表示装置(不図示)及びスピーカ(不図示)へ出力される映像及び音声は、記憶部4に蓄積しながら後追いで再生される、いわゆる追っかけ再生がなされたものである。
【0016】
また、建築物の陰などで受信アンテナ1により受信されるべき電波が途絶え、復調部3からエラー信号bが制御部8へ出力された場合、制御部8は、PCRより僅かに遅らせたクロックで、記憶部4から蓄積データを出力させる。
【0017】
一方、再び電波が受信可能になった場合、制御部8は、上記PCRより僅かに遅らせたクロックで記憶部4から蓄積データを出力させる。このとき、記憶部4には、PCRに同期したクロックでデータ入力がなされる。従って、記憶部4は、上記PCRより僅かに遅らせたクロックでデータを出力しつつ、この出力データと入力データとの差分が蓄積される。記憶部4の蓄積データが一定データ量に達すると、制御部8は、記憶部4からのデータ出力に用いるクロックをPCRと同期させる。このように、制御部8では、記憶部4のデータ出力とクロックを制御する。
【0018】
操作部9では、外部からの設定情報を入力して制御部8に設定する構成要素であって、例えばキースイッチやリモコンユニット、タッチパネル等の入力装置を用い、外部から選局や音量調節、記憶部4に蓄積させるデータ量、クロックの遅延量等を制御部8に設定する。制御部8は、操作部9を介して設定された情報に基づいて各構成要素の動作を制御することができる。
【0019】
次に動作について説明する。
以降では、実施の形態1によるデジタル放送受信機を搭載した移動体の移動に伴って、デジタル放送が一時的に受信不可になった場合に対応したデータ出力制御について主に説明する。図2は、実施の形態1のデジタル放送受信機による動作の流れを示すフローチャートであり、制御部8による記憶部4のデータ出力制御を示している。先ず、復調部3で復調されたトランスポートストリームc1のデータは、記憶部4に蓄積される。この放送の電波の受信が開始された時点で、記憶部4は、制御部8からの入出力制御命令dに従って、蓄積データが一定データ量に達するまで、データ出力は行わず、トランスポートストリームc1のデータを蓄積する(ステップST1)。
【0020】
記憶部4の蓄積データが一定データ量に達すると、制御部8は、PCRと同期させたクロックで、記憶部4からデータを蓄積された時間順に出力するよう制御する(ステップST2)。このとき、記憶部4から出力されるトランスポートストリームc2のデータは、記憶部4に入力されて蓄積されるトランスポートストリームc1のデータより一定データ量だけ遅れたデータとなっている。
【0021】
制御部8では、記憶部4のデータ出力制御にあたり、復調部3からのエラー信号bの入力有無に基づいて、受信アンテナ1で当該放送の電波受信が不可となったか否かを判定する(ステップST3)。ここで、復調部3からエラー信号bを受けず、受信アンテナ1で当該放送の電波が受信されている場合、制御部8は、ステップST2の処理に戻り、上記のデータ出力制御を継続する。
【0022】
一方、実施の形態1によるデジタル放送受信機を搭載した移動体が、建築物の陰や電波の受信が困難な特定のエリアに移動して、これまで受信していた放送の電波受信が途絶えると、受信アンテナ1からチューナ2へ出力されるデータが途切れる。これにより、チューナ2から復調部3へのデータも途切れ、トランスポートストリームに欠落が生じるため、復調部3は、制御部8にエラー信号bを出力する。
【0023】
復調部3からのエラー信号bを入力すると、制御部8は、新たな入出力制御命令dを記憶部4に送信し、PCRより僅かに遅らせたクロックで記憶部4から蓄積データが出力されるように制御する(ステップST4)。このようにPCRより遅らせたクロックに同期させて記憶部4からデータを出力させている間、制御部8は、記憶部4に蓄積されたデータが全て出力されたか否かを判定する(ステップST5)。ここで、記憶部4から蓄積データが全て出力された場合、制御部8は、受信アンテナ1を介して当該放送の電波が受信可能になるまで待機する(ステップST6)。
【0024】
一方、ステップST5において記憶部4に蓄積データが残っている場合、制御部8は、受信アンテナ1を介して当該放送の電波が受信可能になったか否かを判定する(ステップST7)。ここで、未だに受信不可である場合、制御部8は、ステップST4の処理に戻り、PCRより遅らせた上記クロックで記憶部4からデータ出力されるように制御を継続する。
【0025】
また、受信アンテナ1を介した当該放送の電波受信が再開され、ステップST7において電波が受信可能になったと判定すると、制御部8は、上述したPCRより僅かに遅らせたクロックで記憶部4からデータを出力させるとともに、記憶部4にデータを入力させ、上記出力データと上記入力データとの差分のデータ量のデータを記憶部4に蓄積させる(ステップST8)。
【0026】
この後、制御部8は、復調部3からのエラー信号bの有無に基づいて、当該放送の電波の受信が不可となったか否かを判定する(ステップST9)。ここで、再度受信不可になったと判定される場合、制御部8は、ステップST4の処理に戻って、上述のPCRより遅らせたクロックで記憶部4からデータ出力されるように制御を継続する。
【0027】
一方、ステップST9で当該放送の電波が受信されている場合、制御部8は、記憶部4のデータ蓄積量をモニタして一定データ量に達したか否かを判定する(ステップST10)。なお、上述の一定データ量は、PCRに同期させた通常のデータ出力を行える記憶部4の蓄積データ量である。ここで、上記一定データ量に達していなければ、制御部8は、ステップST8の処理に戻る。また、上記一定データ量に達していれば、制御部8は、ステップST2の処理に戻って、PCRに同期させたクロックで、記憶部4からのデータ出力を制御する。
【0028】
図3は、図1中の記憶部におけるデータ蓄積量と受信開始からの経過時間との関係を示す図であり、当該放送の電波の受信状態、データ出力クロックの状態、記憶部4から出力されるデータ及び記憶部4に入力されるデータを概略的に示している。図3において、入力されるデータ及び出力されるデータにそれぞれ付した通し番号は、記憶部4へのデータ蓄積順を示している。ここで、放送の電波受信が途絶えた箇所(時間帯)では、図3に示すように、入力されるべきデータ(10,11番目に入力されるべきデータ)が途切れるので、再生の際には、これら受信できなかったデータを飛ばして出力する。
【0029】
時刻t10で当該放送の電波の受信が開始されると、制御部8は、記憶部4におけるデータ入出力を制御し、記憶部4の蓄積データが一定データ量に達するまで、復調部3から入力されるデータの蓄積のみを行わせ、データ出力は行わせない。図3の例では、番号1〜3までのデータ容量が上記一定データ量となる。時刻t11において上記一定データ量まで蓄積データが達すると、制御部8は、当該放送の電波が受信可能な間、入力データと同じクロック(PCRに同期したクロック)で蓄積された順に記憶部4からデータを出力させる。
【0030】
時刻t12において当該放送の電波が受信不可能になると、制御部8は、記憶部4からデータを出力するクロックをPCRより遅らせる。このときのデータ出力は、PCRに同期したクロックで出力した場合と同様に、記憶部4に蓄積された順に行う。例えば、図3では、番号6のデータが出力された時点で電波受信が不可となったが、後続の番号7以降のデータが、PCRより遅らせたクロックで記憶部4から出力される。このようにすることで、デジタル放送の受信が途絶えても、映像や音声を連続的に再生することができる。
【0031】
この後、時刻t13で当該放送の電波が受信再開されても、制御部8は、記憶部4の蓄積データが一定データ量に満たなければ、PCRより遅らせたクロックでのデータ出力を継続させる。このとき、図3に示すように、記憶部4には、PCRに同期したクロックでデータが入力されて蓄積される(番号12以降のデータ)。これにより、記憶部4には、PCRに同期したクロックで入力されるデータとPCRより遅らせたクロックで出力されるデータとの差分が蓄積される。
【0032】
時刻t13以降のデータ蓄積が進み、時刻t14で記憶部4の蓄積データが一定データ量に達すると、制御部8は、PCRに同期したクロックで記憶部4の蓄積データを出力させる。例えば、1秒間に入力されるトランスポートストリームc1のデータが16.8(Mbps)=2.1(MByte/s)の地上デジタルテレビ放送を受信する場合を考える。この場合、蓄積データ量を計算すると、記憶部4で1分間データを蓄積したい場合、記憶部4の容量は、2.1(MByte/s)×60(sec)=126(MByte)必要となる。
【0033】
また、PCRは27(MHz)であることから、放送電波の受信が途絶えた場合や記憶部4の蓄積データが一定データ量に満たない場合に、制御部8が、クロックをΔCLK(MHz)遅らせたとすると、記憶部4から出力されるデータは1秒間に2.1×{(27−ΔCLK)/27}(MByte)となる。
【0034】
このとき、放送電波の受信が再開して記憶部4に蓄積されるデータ量は、PCRに同期して入力されるデータ2.1(MByte)との差分2.1×ΔCLK/27(MByte)である。ここで、ΔCLKを9(MHz)とした場合、PCRよりクロックを遅らせたときに記憶部4から1秒間に出力されるデータ量は、1.4(MByte)となり、蓄積されるデータ量は0.7(MByte)である。
【0035】
以上のように、この実施の形態1によれば、デジタル放送信号からトランスポートストリームc1を復調する復調部3と、復調部3により復調されたトランスポートストリームc1を入力し蓄積する記憶部4と、記憶部4から出力されたトランスポートストリームc2より映像データf及び音声データgを分離する分離化部5と、分離化部5で分離された映像データf及び音声データgをデコードする映像デコーダ部6及び音声デコーダ部7と、記憶部4に所定量のトランスポートストリームc1が蓄積すると、記憶部4から分離化部5へトランスポートストリームc2を出力させるとともに、記憶部4へ入力されるトランスポートストリームc1に欠落が生じると、記憶部4へのトランスポートストリームc1の入力に同期するクロック(PCR)より遅らせたクロックに同期させて記憶部4から分離化部5へトランスポートストリームc2を出力させる制御を行う制御部8とを備えたので、デジタル放送信号の受信が途絶え、トランスポートストリームc1に欠落が生じても、記憶部4からPCRより遅らせたクロックでトランスポートストリームc2を出力させて再生処理が行われる。このため、上記のような復調エラーが生じても、連続的に映像及び音声が再生され、映像及び音声の途切れによる視聴者の不快感を低減することができる。
【0036】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、デジタル放送の電波受信開始時に記憶部4の蓄積データが一定データ量に達するまでデータ出力を行わない態様を説明した。この実施の形態2は、受信開始時からPCRよりクロックを遅らせて再生し、入力データとの差分を記憶部に蓄積させる。このように制御することにより、電波受信開始時に一定時間待たずとも、デジタル放送を視聴することができる。
【0037】
実施の形態2によるデジタル放送受信機は、上記実施の形態1における図1と基本的な構成は同一であるが、制御部が放送電波の受信開始時からPCRより遅らせたクロックでデータを出力させる点で異なる。そこで、実施の形態2によるデジタル放送受信機の構成の説明については図1を用いることとする。
【0038】
次に動作について説明する。
図4は、この発明の実施の形態2によるデジタル放送受信機による動作の流れを示すフローチャートであり、制御部8による記憶部4のデータ出力制御を示している。なお、図4において、上記実施の形態1の図2と同じ処理については、同一のステップ符号を付して示し、原則としてその説明は省略する。
【0039】
先ず、受信アンテナ1を介してチューナ2で選局された放送の電波の受信が開始され、復調部3で復調されたトランスポートストリームc1のデータは、PCRに同期したクロックで記憶部4に入力される。一方、制御部8は、記憶部4のデータ出力を制御して、PCRより僅かに遅らせたクロックで記憶部4からトランスポートストリームc2のデータを出力させる。これにより、記憶部4には、PCRに同期したクロックで入力されるデータとPCRより遅らせたクロックで出力されるデータとの差分が蓄積される(ステップST1−1)。
【0040】
この後、制御部8は、復調部3からのエラー信号bの有無に基づいて、当該放送の電波の受信が不可となったか否かを判定する(ステップST1−2)。ここで、受信不可になったと判定された場合、制御部8は、ステップST4の処理に移行して、PCRより遅らせたクロックで記憶部4からデータ出力されるように制御を継続する。
【0041】
一方、ステップST1−2で当該放送の電波が受信されている場合、制御部8は、記憶部4のデータ蓄積量をモニタして一定データ量に達したか否かを判定する(ステップST1−3)。ここで、上記一定データ量に達していなければ、制御部8は、ステップST1−1の処理に戻る。また、上記一定データ量に達していれば、制御部8は、ステップST2の処理に移行して、PCRに同期させたクロックで、記憶部4からのデータ出力を制御する。ステップST2以降の処理は、上記実施の形態1の図2と同様である。
【0042】
図5は、実施の形態2による記憶部のデータ蓄積量と受信開始からの経過時間との関係を示す図であり、当該放送の電波の受信状態、データ出力クロックの状態、記憶部4から出力されるデータ及び記憶部4に入力されるデータを概略的に示している。図5において、入力されるデータ及び出力されるデータにそれぞれ付した通し番号は、図3と同様に、記憶部4へのデータ蓄積順を示している。ここで、放送の電波受信が途絶えた箇所(時間帯)では、図5に示すように、入力されるべきデータ(12,13番目に入力されるべきデータ)が途切れるので、再生の際には、これら受信できなかったデータを飛ばして出力する。
【0043】
時刻t20で当該放送の電波の受信が開始されると、制御部8は、記憶部4におけるデータ入出力を制御し、記憶部4の蓄積データが一定データ量に達するまで、PCRより遅らせたクロックで記憶部4からデータ出力させる。このとき、図5に示すように、記憶部4には、PCRに同期したクロックでデータ(番号1〜9までのデータ)が入力されつつ、PCRより遅らせたクロックでデータ(番号1〜6までのデータ)が出力される。これにより、記憶部4には、PCRに同期したクロックで入力されるデータとPCRより遅らせたクロックで出力されるデータとの差分が蓄積される。
【0044】
時刻t21において記憶部4の蓄積データが一定データ量(3データ分)に達すると、制御部8は、当該放送の電波が受信可能な間、入力データと同じクロック(PCRに同期したクロック)で蓄積された順に記憶部4からデータを出力させる。この時刻t21以降は、図3で示した時刻t11以降の処理と同様である。
【0045】
以上のように、この実施の形態2によれば、制御部8が、デジタル放送信号の受信が開始されると、記憶部4へのトランスポートストリームc1の入力に同期するクロックより遅らせたクロックに同期させて記憶部4から分離化部5へトランスポートストリームc2を出力させる制御を行うので、電波受信開始時から映像及び音声の再生を行うことができる。これにより、電波受信開始時から一定データ量蓄積されるまでの待ち時間を解消することができる。
【0046】
実施の形態3.
上記実施の形態1及び上記実施の形態2では、当該放送の電波の受信が不可となった場合、PCRより一定クロック遅らせて記憶部4からデータ出力を行う態様を説明した。この実施の形態3は、記憶部4に蓄積されているデータ量に基づいてPCRより遅らせるクロック量を制御する点が異なる。このように制御することにより、クロックの遅れによる違和感を低減することができる。
【0047】
実施の形態3によるデジタル放送受信機は、上記実施の形態1及び上記実施の形態2における図1と基本的な構成は同一であるが、制御部が記憶部に蓄積されているデータ量に基づいてPCRより遅らせるクロックを制御する点で異なる。そこで、実施の形態3によるデジタル放送受信機の構成の説明については図1を用いることとする。
【0048】
次に動作について説明する。
図6は、この発明の実施の形態3による記憶部のデータ蓄積量と受信開始からの経過時間との関係を示す図であり、当該放送の電波の受信状態、データ出力クロックの状態、記憶部4から出力されるデータ及び記憶部4に入力されるデータを概略的に示している。図6において、入力されるデータ及び出力されるデータにそれぞれ付した通し番号は、図3及び図5と同様に、記憶部4へのデータ蓄積順を示している。ここで、放送の電波受信が途絶えた箇所(時間帯)では、図6に示すように、入力されるべきデータ(12,13番目に入力されるべきデータ)が途切れるので、再生の際には、これら受信できなかったデータを飛ばして出力する。
【0049】
時刻t30で当該放送の電波の受信が開始されると、制御部8は、記憶部4におけるデータ入出力を制御し、記憶部4の蓄積データが一定データ量に達するまで、PCRより遅らせたクロックで記憶部4からデータ出力させる。このとき、図6に示すように、記憶部4には、PCRに同期したクロックでデータ(番号1〜9までのデータ)が入力されつつ、PCRより遅らせたクロックでデータ(番号1〜6までのデータ)が出力される。遅らせるクロックは記憶部4の蓄積データ量に基づいて制御部8で制御されており、蓄積量が少ない場合は大きくクロックを遅らせ(番号1〜3までのデータ)、蓄積量が多い場合は小さくクロックを遅らせる(番号4〜6までのデータ)制御が行われる。これにより、記憶部4には、PCRに同期したクロックで入力されるデータとPCRより遅らせたクロックで出力されるデータとの差分が蓄積される。
【0050】
時刻t31において記憶部4の蓄積データが一定データ量(3データ分)に達すると、制御部8は、当該放送の電波が受信可能な間、入力データと同じクロック(PCRに同期したクロック)で蓄積された順に記憶部4からデータを出力させる。
【0051】
時刻t32において当該放送の電波が受信不可能になると、制御部8は、記憶部4からデータを出力するクロックをPCRより蓄積データ量に基づいて遅らせる。このときのデータ出力は、PCRに同期したクロックで出力した場合と同様に、記憶部4に蓄積された順に行う。例えば、図6では、番号8のデータが出力された時点で電波受信が不可となったが、後続の番号9以降のデータが、PCRより蓄積データ量に基づいて遅らせたクロックで記憶部4から出力される。このようにすることで、デジタル放送の受信が途絶えても、徐々に出力クロックを遅くしていくことでクロック遅れによる映像や音声の違和感を低減できる。
【0052】
この後、時刻t33で当該放送の電波が受信再開されても、制御部8は、記憶部4の蓄積データが一定データ量に満たなければ、PCRより蓄積データ量に基づいて遅らせたクロックでのデータ出力を継続させる。このとき、図6に示すように、記憶部4には、PCRに同期したクロックでデータが入力されて蓄積される(番号14以降のデータ)。これにより、記憶部4には、PCRに同期したクロックで入力されるデータとPCRより蓄積データ量に基づいて遅らせたクロックで出力されるデータとの差分が蓄積される。
【0053】
時刻t34において記憶部4の蓄積データが一定データ量(3データ分)に達すると、制御部8は、当該放送の電波が受信可能な間、入力データと同じクロック(PCRに同期したクロック)で蓄積された順に記憶部4からデータを出力させる。
【0054】
以上のように、この実施の形態3によれば、制御部8が、記憶部4へのトランスポートストリームc1の入力に同期するクロックより記憶部4の蓄積データ量に基づいて遅らせたクロックに同期させて記憶部4から分離化部5へトランスポートストリームc2を出力させる制御を行うので、クロックを遅らせたことによる映像及び音声の違和感を解消することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態3の構成は、上記実施の形態1の構成に適用してもよい。例えば、上記実施の形態1と同様に、制御部8が、受信開始時に記憶部4の蓄積データが一定データ量になるまでデータ出力を停止してもよい。
【0056】
実施の形態4.
上記実施の形態1から上記実施の形態3では、放送電波の受信が途絶えて映像や音声に不連続な箇所が生じた場合、特別な処理を施すことなく、映像や音声を再生する構成を示した。これに対し、この実施の形態4では、放送電波の受信が途絶えて映像や音声に不連続な箇所が生じた場合、フェードアウトやフェードイン等の画像処理を行って再生する。
【0057】
図7は、この発明の実施の形態4によるデジタル放送受信機の構成を概略的に示す図であり、車載用等、移動体に搭載されるデジタル放送受信機に適用した場合を示している。図7において、図1と同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態4によるデジタル放送受信機は、記憶部10、映像処理部11、音声処理部12、及び制御部13を備える点で、上記実施の形態1から上記実施の形態3で示したデジタル放送受信機と相違する。
【0058】
ここで、記憶部10は、受信アンテナ1で受信されるべき電波が途絶え、復調部3から制御部13にエラー信号bが出力された際、トランスポートストリームc1のデータが途切れた箇所にフラグを設ける。映像処理部11及び音声処理部12は、制御部13からの制御に従って、映像信号データh及び音声信号データiに予め設定されたフェードアウト時間及びフェードイン時間でフェードアウト及びフェードイン処理を実行する。制御部13は、データが不連続な箇所が再生される前後で、映像処理部11及び音声処理部12を制御してフェードアウト及びフェードイン処理を実行させる。
【0059】
なお、映像のフェードアウト処理とは、入力されてくる映像信号データhの輝度を時間が経過するごとに徐々に暗く変化させることを言い、フェードイン処理とは、入力されてくる映像信号データhの輝度を徐々に通常の輝度に変化させることを言う。また、音声信号データiについては、映像信号データhのフェードアウト、フェードイン処理に対応して音声の大きさ(音量)を徐々に小さくあるいは大きくすることを言う。
【0060】
次に動作について説明する。
以降では、放送電波の受信が途絶えて映像や音声に不連続な箇所が生じた場合の処理について主に説明する。
図8は、実施の形態4のデジタル放送受信機による動作の流れを示すフローチャートであり、受信エラーによって映像や音声に不連続な箇所が生じた場合の処理を示している。
建築物の陰等で受信アンテナ1により受信されるべき電波が途絶え、トランスポートストリームに欠落が生じると復調部3はエラー信号bを制御部13へ出力する(ステップST1a)。
【0061】
制御部13は、エラー信号bを入力すると、記憶部10を制御して、電波受信が途絶えたことによりトランスポートストリームc1のデータが途切れた箇所にフラグを設けて蓄積させる(ステップST2a)。この後、記憶部10から上記フラグを含むデータが出力されて、分離化部5、映像デコーダ部6及び音声デコーダ部7による処理が完了することで、映像信号データhが映像処理部11へ入力され、音声信号データiが音声処理部12へ入力される。
【0062】
映像処理部11及び音声処理部12は、制御部13からの制御命令j1,j2により、入力した映像信号データh及び音声信号データiから上記フラグを読み取ると、データが不連続な箇所であると判断して、この不連続な箇所よりも予め設定された所定時間前からフェードアウト処理を施した映像信号データk及び音声信号データlを不図示の表示装置及びスピーカに出力する(ステップST3a)。
【0063】
この後、制御部13は、映像処理部11及び音声処理部12から上記フラグが設けられた箇所のデータが出力されたか否かを判定する(ステップST4a)。このとき、後続する映像信号データh及び音声信号データiに上記フラグが存在し、上記フラグが付された箇所の処理が完了していないと判断される場合、制御部13は、制御命令j1,j2で映像処理部11及び音声処理部12を制御して、ステップST3aの処理を繰り返す。
【0064】
一方、上記フラグが設けられた全ての不連続な箇所のデータ再生が完了すると、映像処理部11及び音声処理部12は、制御部13からの制御に従って、不連続な箇所以降のデータに対しフェードイン処理を実行して通常時の映像信号データk及び音声信号データlに戻していく(ステップST5a)。
【0065】
以上のように、この実施の形態4によれば、映像デコーダ部6によりデコードされた映像信号データhの輝度を変化させるフェードアウト、フェードイン処理を行う映像処理部11と、音声デコーダ部7によりデコードされた音声信号データgの音量を変化させるフェードアウト、フェードイン処理を行う音声処理部12とを備え、制御部13が、一連の映像信号データhに欠落した信号があると映像処理部11によって欠落前後の映像信号データhの輝度を変化させるフェードアウト、フェードイン処理を行わせ、一連の音声信号データgに欠落した信号があると音声処理部12によって欠落前後の音声信号データgの音量を変化させるフェードアウト、フェードイン処理を行わせる制御を行うので、データが不連続な箇所が再生される前後でフェードアウト及びフェードイン処理を行うので、不連続な箇所が再生されるときの映像や音声の急な変化を抑え、ユーザの不快感を低減することができる。
【0066】
なお、上記実施の形態4の構成は、上記実施の形態1から上記実施の形態3のいずれの構成に適用してもよい。例えば、上記実施の形態1と同様に、制御部13が、受信開始時に記憶部10の蓄積データが一定データ量になるまでデータ出力を停止してもよく、上記実施の形態2と同様に、制御部13が、受信開始時に蓄積データが一定データ量になるまで、PCRより遅らせたクロックで記憶部10からデータを出力させてもよい。
【0067】
実施の形態5.
上記実施の形態4では、記憶部10に蓄積するデータ量、データ出力クロック、及び映像処理部11及び音声処理部12によるフェードアウト処理及びフェードイン処理の実行時間が予め設定した値となるように制御部13が制御する構成を示した。これに対し、この実施の形態5では、過去にエラー信号bが出力された時間及び頻度、ナビゲーションシステム等の検出部からの位置情報に応じて、記憶部10に蓄積するデータ量、データ出力クロック、及び映像処理部11及び音声処理部12によるフェードアウト処理及びフェードイン処理の実行時間を決定する。
【0068】
図9は、この発明の実施の形態5によるデジタル放送受信機の構成を概略的に示す図であり、車載用等、移動体に搭載されるデジタル放送受信機に適用した場合を示している。図9において、図7と同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態5によるデジタル放送受信機は、操作部9a、検出部14及びこれらにより得られた情報で記憶部10や映像処理部11、音声処理部12の制御を行う制御部13aを備える点で、上記実施の形態4で示したデジタル放送受信機と相違する。
【0069】
ここで、操作部9aは、操作入力により外部から制御部13aに情報設定するための構成要素であり、各種設定の自動化をするか否かを制御部13aに設定することができる。検出部14は、実施の形態5による車載用のデジタル放送受信機が存在する場所を示す位置情報を取得する構成要素であり、例えばナビゲーションシステムが考えられる。制御部13aは、検出部14からの位置情報m、復調部3からエラー信号bを入力した時間及び頻度に応じて、記憶部10における蓄積データ量、データ出力クロックの遅延量、及び、映像処理部11及び音声処理部12によるフェードアウト処理、フェードイン処理の実行時間を制御する。
【0070】
上記実施の形態4では、ユーザが操作部9を用いて入力操作することにより、記憶部10で蓄積するデータ量を予め設定する態様となる。しかしながら、電波があまり途絶えない地域と、電波が途絶えやすい地域では、適切な蓄積データ量は異なってくるため、その都度、ユーザが設定するのは困難な場合がある。
【0071】
そこで、この実施の形態5では、制御部13aが、復調部3からエラー信号bが出力された時間及び頻度、検出部14からの位置情報mに応じて、記憶部10の適切な蓄積データ量、データ出力クロック、及び、映像処理部11及び音声処理部12によるフェードアウト、フェードイン処理時間を自動的に設定する。
【0072】
次に動作について説明する。
ここでは、制御部13aによる、記憶部10の適切な蓄積データ量、データ出力クロック、及び、映像処理部11及び音声処理部12によるフェードアウト、フェードイン処理時間の設定処理について説明する。
先ず、制御部13aは、復調部3からエラー信号bを入力する度にその通知時間及び頻度を内部のメモリに記憶する。また、検出部14は、実施の形態5によるデジタル放送受信機を搭載する車両の位置を検出し、位置情報mとして制御部13aに通知する。
【0073】
ここで、操作部9aの入力操作により制御部13aに上記各種設定の自動化を指示する設定がなされると、制御部13aは、復調部3からエラー信号bが出力された時間及び頻度、及び検出部14からの位置情報mに基づいて、上記各種設定、すなわち記憶部10の適切な蓄積データ量、データ出力クロック、及び、映像処理部11及び音声処理部12によるフェードアウト、フェードイン処理時間を自動的に設定する。
【0074】
具体例を挙げて説明する。実施の形態5によるデジタル放送受信機を搭載する車両が、建築物の多い地域を走行することにより、建築物の陰等を次々に移動する場合を考える。この場合、短い時間だが電波が途絶える頻度が高くなる。そこで、制御部13aは、検出部14からの位置情報mや、エラー信号bが出力された時間及び頻度から判断して、記憶部10のデータ出力クロックを遅らせる量(クロック遅延量ΔCLK)を減少させ、フェードアウト及びフェードイン処理時間を短くする制御を行う。
【0075】
また、上記車両がトンネルの多い地域を走行し、長時間電波が途絶えてしまう場合であれば、制御部13aは、記憶部10の蓄積データ量(一定データ量)を増加させ、データ出力クロックのクロック遅延量を増加させ、フェードアウト及びフェードイン処理時間を長くする制御を行う。このときの制御は、下記式(1)〜(3)に基づいて行われる。
Data=2.1×TAVR±DAREA ・・・(1)
CLK=PCR−TAVR×106±CLKAREA ・・・(2)
FADE=(TAVR/2)±TAREA ・・・(3)
ここで、TAVRはエラー信号bが出力された時間及び頻度から算出した平均エラー時間(sec)、Dataは記憶部10の蓄積データ量(MByte)、CLKはPCRより遅らせたクロック(MHz)、TFADEはフェードアウト及びフェードイン処理時間(sec)である。また、DAREA、CLKAREA、TAREAは、位置情報による蓄積データ量(MByte)、データ出力クロック(MHz)、フェードアウト及びフェードイン時間の補正値(sec)である。
【0076】
以上のように、この実施の形態5によれば、制御部13aが、検出部14からデジタル放送受信機の位置を示す位置情報を入力し、この位置情報で特定される位置での復調部3の復調エラーの時間及び頻度に基づいて、上記各種設定、すなわち記憶部10の適切な蓄積データ量、データ出力クロック、及び、映像処理部11及び音声処理部12によるフェードアウト、フェードイン処理時間を自動的に設定するので、ユーザが環境に合わせて上記各種設定を行う必要がなく、より使い勝手のよいデジタル放送受信機を得ることができる。
【0077】
なお、上記実施の形態5の構成は、上記実施の形態1及び上記実施の形態3のいずれの構成に適用してもよい。例えば、上記実施の形態1と同様に、制御部13aが、受信開始時に記憶部10の蓄積データが一定データ量になるまでデータ出力を停止してもよく、上記実施の形態2と同様に、制御部13aが、受信開始時に蓄積データが一定データ量になるまで、PCRより遅らせたクロックで記憶部10からデータを出力させてもよい。
【0078】
また、図1や上記実施の形態2及び上記実施の形態3で示した構成に対して検出部14を追加し、制御部8及び操作部9の代わりに制御部13a及び操作部9aを設けることにより、制御部13aが、復調部3からエラー信号bが出力された時間及び頻度、及び検出部14からの位置情報mに基づいて、記憶部10の適切な蓄積データ量及びデータ出力クロックを自動的に設定するように構成してもよい。
【0079】
実施の形態6.
上記実施の形態1〜5では、デジタルテレビ放送を受信するデジタル放送受信機を示したが、この実施の形態6は、デジタル音声放送(デジタルラジオ放送)を受信するデジタル放送受信機を示す。なお、デジタルテレビ放送のデータは、映像データf、音声データg及びその他のデータ(再生時刻、番組付加情報等)eで構成されるが、デジタル音声放送のデータは、音声データg及びその他のデータeで構成される。
【0080】
図10は、この発明の実施の形態6によるデジタル放送受信機の構成を概略的に示す図であり、車載用等、移動体に搭載されるデジタル放送受信機に適用した場合を示している。図10において、図9と同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。実施の形態5によるデジタル放送受信機は、デジタル放送の番組付加情報nを映像信号データk1に変換する映像処理部11a及び分離化部5から出力されるその他のデータeに基づいて番組付加情報nを映像処理部11aに設定する制御部13bを備える点で、上記実施の形態4で示したデジタル放送受信機と相違する。
【0081】
次に動作について説明する。
チューナ2は、制御部13bからの選局指令aに従って、受信アンテナ1で受信されたデジタル音声放送から所望のチャンネルを選局する。復調部3は、チューナ2から入力したデジタル音声放送を復調したトランスポートストリームc1aを出力する。記憶部10は、復調部3で復調されたトランスポートストリームc1aを蓄積する。記憶部10で蓄積されるデータは、一定データ量(あるいは一定時間量)であり、常に更新しつつ、制御部13bからの入出力制御命令dに従って記憶部10から出力される。
【0082】
分離化部5は、記憶部10から出力されたトランスポートストリームc2aのデータを音声データg及びその他のデータeに分離する。分離されたデータのうち、音声データgは音声デコーダ部7に出力され、その他のデータeは制御部13bに出力される。音声デコーダ部7は、分離化部5から入力した音声データgをデコードして音声信号データiを音声処理部12に出力する。
【0083】
音声処理部12では、制御部13bからの制御命令j2により、入力した音声信号データiから不連続箇所を示すフラグを読み取ると、この不連続な箇所よりも予め設定された所定時間前からフェードアウト処理を施した音声信号データlを不図示のスピーカに出力する。
【0084】
また、制御部13bは、分離化部5から入力したその他のデータeから番組付加情報(チャンネル名、楽曲名等)nを取り出し、映像処理部11aに出力する。映像処理部11aでは、番組付加情報nに基づいて不図示の表示装置に表示させたい情報の画像データを映像信号データk1に変換する。映像処理部11aより出力された変換後の映像信号データk1は、D/A変換されてアナログ映像信号に変換され、上記表示装置に表示される。
【0085】
以上のように、この実施の形態6によれば、デジタル放送信号からトランスポートストリームc1aを復調する復調部3と、復調部3により復調されたトランスポートストリームc1aを入力し蓄積する記憶部10と、記憶部10から出力されたトランスポートストリームc2aより音声データgを分離する分離化部5と、分離化部5で分離された音声データgをデコードする音声デコーダ部7と、記憶部10に所定量のトランスポートストリームc1aが蓄積すると、記憶部10から分離化部5へトランスポートストリームc2aを出力させるとともに、記憶部10へ入力される一連のトランスポートストリームc1aに欠落が生じると、記憶部10へのトランスポートストリームc1aの入力に同期するクロック(PCR)より遅らせたクロックに同期させて記憶部10から分離化部5へ一連のトランスポートストリームc2aを出力させる制御を行う制御部13bとを備えたので、デジタル放送信号の受信が途絶え、トランスポートストリームc1aに欠落が生じる復調エラーが生じても、記憶部10からPCRより遅らせたクロックでトランスポートストリームc2aを出力させて再生処理が行われる。このため、上記のような復調エラーが生じても、連続的に音声が再生され、音声の途切れによる試聴者の不快感を低減することができる。
【0086】
また、この実施の形態6によれば、分離化部5が、記憶部10から出力されたトランスポートストリームc2aより音声データg及びその他のデータ(番組付加情報データ)eを分離し、分離化部5で分離されたその他のデータ(番組付加情報データ)eに基づいて番組付加情報の映像信号データk1を生成する映像処理部11aを備えたので、デジタル音声放送の番組付加情報を表示装置に表示することができ、現在の放送内容を視覚的にも捉えることができる。
【0087】
なお、上記実施の形態6の構成は、上記実施の形態1から上記実施の形態3のいずれの構成に適用してもよい。例えば、上記実施の形態1と同様に、制御部13bが、受信開始時に記憶部10の蓄積データが一定データ量になるまでデータ出力を停止してもよく、上記実施の形態2と同様に、制御部13bが、受信開始時に蓄積データが一定データ量になるまで、PCRより遅らせたクロックで記憶部10からデータを出力させてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態1〜6では、車載用デジタル放送受信機を例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、移動体であれば車載用に限らず、携帯電話やPDAであってもよい。
【0089】
さらに、上記実施の形態1〜6は、インターネット等を介したストリーミングメディア(映像及び音声の少なくとも一方)をIP(インターネットプロトコル)放送ストリームとして受信し再生するデジタル放送受信機に適用してもよい。この場合、インターネットのストリーミングにおいて、ストリーミング中にダウンロード速度が低下した場合やパケット伝送エラーが多い場合に、記憶部からのデータ出力クロックを遅くして記憶部のデータ出力を制御することにより、ストリーミングデータが連続的に再生される。例えば、復調部3が、ストリーミング中のダウンロード速度低下やパケット伝送エラーに応じて、エラー信号bを制御部に出力するように構成することで、インターネットのストリーミングにおいても上記実施の形態1〜6で示した構成をそのまま適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】この発明の実施の形態1によるデジタル放送受信機の構成を概略的に示す図である。
【図2】実施の形態1のデジタル放送受信機による動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】図1中の記憶部におけるデータ蓄積量と受信開始からの経過時間との関係を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2のデジタル放送受信機による動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2による記憶部のデータ蓄積量と受信開始からの経過時間との関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3による記憶部のデータ蓄積量と受信開始からの経過時間との関係を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態4によるデジタル放送受信機の構成を概略的に示す図である。
【図8】実施の形態4のデジタル放送受信機による動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態5によるデジタル放送受信機の構成を概略的に示す図である。
【図10】この発明の実施の形態6によるデジタル放送受信機の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 受信アンテナ、2 チューナ、3 復調部、4,10 記憶部、5 分離化部、6 映像デコーダ部、7 音声デコーダ部、8,13,13a,13b 制御部、9,9a 操作部、11,11a 映像処理部、12 音声処理部、14 検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送信号からトランスポートストリームを復調する復調部と、
前記復調部により復調されたトランスポートストリームを入力し蓄積する記憶部と、
前記記憶部から出力されたトランスポートストリームより映像データ及び音声データを分離する分離化部と、
前記記憶部に所定量のトランスポートストリームが蓄積すると、前記記憶部から前記分離化部へトランスポートストリームを出力させるとともに、前記記憶部へ入力される一連のトランスポートストリームに欠落が生じた場合、前記記憶部へのトランスポートストリームの入力に同期するクロックより遅らせたクロックに同期させて前記記憶部から前記分離化部へトランスポートストリームを出力させる制御を行う制御部とを備えたデジタル放送受信機。
【請求項2】
デジタル放送信号からトランスポートストリームを復調する復調部と、
前記復調部により復調されたトランスポートストリームを入力し蓄積する記憶部と、
前記記憶部から出力されたトランスポートストリームより映像データ及び音声データを分離する分離化部と、
前記記憶部に所定量のトランスポートストリームが蓄積するまで、前記記憶部へのトランスポートストリームの入力に同期するクロックより遅らせたクロックに同期させて前記記憶部から分離化部へトランスポートストリームを出力させるとともに、前記記憶部へ入力される一連のトランスポートストリームに欠落が生じた場合、前記記憶部へのトランスポートストリームの入力に同期するクロックより遅らせたクロックに同期させて前記記憶部から前記分離化部へトランスポートストリームを出力させる制御を行う制御部とを備えたデジタル放送受信機。
【請求項3】
制御部は、記憶部に蓄積されたトランスポートストリームのデータ量に基づいて、トランスポートストリームの入力に同期するクロックより遅らせるクロックの遅延量の制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のデジタル放送受信機。
【請求項4】
分離化部により分離された映像データをデコードする映像デコーダ部と、前記映像デコーダ部によりデコードされた映像信号データの輝度を変化させる処理を行う映像処理部とを備え、
制御部は、一連の映像信号データに欠落した信号があると前記映像処理部によって欠落前後の映像信号データの輝度を変化させる制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のデジタル放送受信機。
【請求項5】
分離化部により分離された音声データをデコードする音声デコーダ部と、前記音声デコーダ部によりデコードされた音声信号データの音量を変化させる処理を行う音声処理部とを備え、
制御部は、一連の音声信号データに欠落した信号があると前記音声処理部によって欠落前後の音声信号データの音量を変化させる制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のデジタル放送受信機。
【請求項6】
外部から欠落前後のデータを変化させる実行時間制御に要する情報を制御部に設定するための操作部を備え、
前記制御部は、前記操作部を介して外部から設定された情報に基づいて制御を行うことを特徴とする請求項4又は請求項5記載のデジタル放送受信機。
【請求項7】
制御部は、デジタル放送受信機の位置を示す位置情報を入力し、前記位置情報で特定される位置でのトランスポートストリームの欠落時間及び頻度に基づいて、前記位置情報で特定される位置に対応した欠落前後のデータを変化させる実行時間の制御を行うことを特徴とする請求項4から請求項6のうちのいずれか1項記載のデジタル放送受信機。
【請求項8】
デジタル放送信号からトランスポートストリームを復調する復調部と、
前記復調部により復調されたトランスポートストリームを入力し蓄積する記憶部と、
前記記憶部から出力されたトランスポートストリームより音声データを分離する分離化部と、
前記記憶部に所定量のトランスポートストリームが蓄積するまで、前記記憶部へのトランスポートストリームの入力に同期するクロックより遅らせたクロックに同期させて前記記憶部から分離化部へトランスポートストリームを出力させると共に、前記記憶部へ入力される一連のトランスポートストリームに欠落が生じた場合、前記記憶部から前記分離化部へ前記一連のトランスポートストリームを出力させる制御を行う制御部とを備えたデジタル放送受信機。
【請求項9】
分離化部は、記憶部から出力されたトランスポートストリームより音声データ及び番組付加情報データを分離し、
前記分離化部で分離された番組付加情報データに基づいて番組付加情報の映像信号データを生成する映像処理部を備えたことを特徴とする請求項8記載のデジタル放送受信機。
【請求項10】
分離化部により分離された音声データをデコードする音声デコーダ部と、前記音声デコーダ部によりデコードされた音声信号データの音量を変化させる処理を行う音声処理部とを備え、
制御部は、一連の音声信号データに欠落した信号があると前記音声処理部によって欠落前後の音声信号データの音量を変化させる制御を行うことを特徴とする請求項8又は請求項9記載のデジタル放送受信機。
【請求項11】
外部から欠落前後のデータを変化させる実行時間制御に要する情報を制御部に設定するための操作部を備え、
前記制御部は、前記操作部を介して外部から設定された情報に基づいて、音声処理部によって欠落前後の音声信号データの音量を変化させる実行時間の制御を行うことを特徴とする請求項10記載のデジタル放送受信機。
【請求項12】
制御部は、デジタル放送受信機の位置を示す位置情報を入力し、前記位置情報で特定される位置でのトランスポートストリームの欠落時間及び頻度に基づいて、前記位置情報で特定される位置に対応した欠落前後のデータを変化させる実行時間の制御を行うことを特徴とする請求項10又は請求項11記載のデジタル放送受信機。
【請求項13】
デジタル放送信号は、IP放送信号であり、
復調部は、前記IP放送信号からトランスポートストリームとしてIP放送ストリームを復調することを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のデジタル放送受信機。
【請求項14】
外部から記憶部にトランスポートストリームを蓄積する量の制御に要する情報を制御部に設定するための操作部を備え、
前記制御部は、前記操作部を介して外部から設定された情報に基づいて制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれか1項記載のデジタル放送受信機。
【請求項15】
制御部は、デジタル放送受信機の位置を示す位置情報を入力し、前記位置情報で特定される位置でのトランスポートストリームの欠落時間及び頻度に基づいて、前記位置情報で特定される位置に対応した、記憶部に前記トランスポートストリームを蓄積する量及びクロックの遅延量の制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項14のうちのいずれか1項記載のデジタル放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−141652(P2009−141652A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315664(P2007−315664)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】