説明

デジタル映像情報データ生成装置、デジタル映像情報記録装置、デジタル映像情報再生装置、及びデジタル映像情報データ生成方法

【課題】 デジタル放送を記録した時において、ランダムアクセスを行っても再生直後から字幕を表示することができ、また早送り・早戻し再生時において、字幕も同時に表示できるようにすること。
【解決手段】 字幕の表示開始時間と表示終了時間との間の期間に存在する、Iピクチャーを構成するTSパケットの先頭パケットと終端パケットの間に、字幕データを配置し、ランダムアクセス再生時には、最初に読み出された字幕データから、早送り・早戻し再生時には、Iピクチャーと同時に読み出される字幕データから、字幕を復号し表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デジタル放送の映像情報を映像情報記録媒体に記録し再生する映像情報装置に係わり、早送り・早戻し再生時字幕表示が可能な映像情報装置のトランスポートストリームの生成、及びその記録再生に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送をMPEG方式に準拠したフォーマットで光ディスクに書き込まれた符号化されたビデオデータ(映像データ)を再生する際に、早送り・早戻し再生時において、字幕表示を行う方法として、ビデオデータの通常再生開始時点から予め設定した時間だけ遡った時点から再生する方式が提案されている(例えば、特許文献1等)
【特許文献1】特開2002−290895号公報(図1、図2、段落0038〜0040、0043)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
衛星デジタル放送、地上デジタルテレビジョン放送の普及が高まるにつれて、これらのデジタル放送信号が記録できる記録装置も徐々に普及が進んでいる。これまでのアナログ放送と違って、これらのデジタル放送は、トランスポート・ストリーム(以降TSと省略)に、ビデオデータ、オーディオデータ、字幕・文字スーパーデータ、電子番組表のデジタル・データ等が重畳されて送出されている。このTSを記録する記録装置としては、D−VHS、DVDレコーダー、Blu-ray Disc(以降BDと省略)レコーダーがあるが、それぞれの記録装置で記録フォーマットが異なっている。例えば、D−VHSとBDレコーダーは、デジタル放送のTSをそのまま記録、またはTSの一部を選択して記録する方式を採用しており、DVDは、High Definition(以降HDと省略)のTSを一度復号処理し、その後、再びStandard Definition(以降SDと省略)のプログラム・ストリーム(以降PSと省略)に符号化を行ってから記録を行う。上記の記録装置で、字幕表示が重畳されていないデジタル放送を記録する場合には問題はないが、字幕表示が重畳されている場合、様々な問題点が生じている。
【0004】
D−VHSやBDレコーダーの場合、放送されたTSをそのまま、またはその一部を選択したパーシャルTSを記録するので、再生時には放送された時と同じTSがそのまま出力される。そのため、放送を受信している時と同様に、字幕付きの放送に対して、字幕のON/OFFを行うことができる。しかし、放送と同じTSを記録することによる弊害も生じる。一般にMPEGで符号化したビデオデータの早送り、早戻し再生は、GOPの先頭にあるIピクチャーのデータだけを読み出して復号することで実現している。字幕データが重畳されている位置は決まっていないため、早送り、早戻し再生中には、字幕を表示するためのデータをディスクから読み出すことができない。そのため、字幕を見ながら早送り早戻し再生から通常再生に戻すタイミングをはかることができなくなってしまう。また、字幕表示用のデータがTSのどの部分に重畳されているか特定できないため、ディスク機器の特徴である、所望のシーンの再生(ランダムアクセスと称される)によりTS上の任意の位置からの再生を行った場合、次の字幕表示用のデータが読み出せるまで字幕が表示できなくなるといった問題点もある。
【0005】
例えば、DVDレコーダに記録する場合、ビデオデータは解像度をHDからSDに変換し、オーディオデータはMPEG2 Audio AAC(Advanced audio coding)方式(以降AACと省略)からドルビーAC−3(Audio Code number 3)方式(以降AC−3と省略)やリニアPCM(linear pulse code modulation:以降LPCMと省略)に変換し、更にPSに変換する必要がある。
【0006】
デジタル放送信号のMPEG2で符号化されたビデオデータと字幕データはデジタルビデオ信号(以下、ビデオ信号)に復調され一旦メモリー上に展開された後、字幕が合成され、字幕が重畳されたビデオ信号が生成される。字幕が重畳されたビデオ信号はHD解像度なので、SD解像度にリサイズされた後、再びMPEG2で符号化される。
【0007】
このSD解像度にリサイズされた字幕が重畳されたビデオデータは、ビデオPSにパケッタイズされ、更に、オーディオPSと共にTSに変換された後、DVD−RまたはDVD−RWに記録される。このような記録を行った場合、常に字幕が表示されたままとなってしまい、字幕の必要のないユーザーにとって、字幕の消去ができないという不都合があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、デジタル放送を記録した場合において、常に字幕の表示のON/OFFが制御でき、早送り・早戻し再生中においても字幕を表示することができ、また、ランダムアクセス再生時においても、すぐに字幕の表示が開始可能な映像情報生成装置、及びそれを用いた映像情報記録・再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるデジタル映像情報データ生成装置は、デジタル放送のトランスポートストリームの字幕データ、ビデオデータ、オーディオデータを分離する放送データ分離手段と、前記デジタル放送のビデオデータを復号するビデオ復号手段と、前記復号されたビデオデータを記録媒体フォーマットのビデオデータに符号化するビデオ符号化手段と、前記符号化されたビデオデータをパケット化し、ビデオタイムスタンプを付加するビデオパケット化手段と、前記デジタル放送の字幕データを挿入するタイムスタンプを検出する字幕制御手段と、前記デジタル放送の字幕データを復号する字幕復号手段と、前記復号された字幕データを記録媒体フォーマットの字幕データに符号化する字幕符号化手段と、前記符号化された字幕データをパケット化し、新たな字幕タイムスタンプを付加する字幕パケット化手段と、前記字幕パケットとビデオパケットとを重畳して前記記録媒体フォーマットのトランスポートストリーム生成するトランスポートストリーム手段とを備え、
前記、トランスポートストリーム手段において、前記ビデオタイムスタンプと字幕タイムスタンプとに基づき、字幕の表示開始時間と終了時間との間に存在する、Iピクチャーを構成するビデオパケットの間に前記字幕パケットを重畳することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デジタル放送に重畳された字幕データの表示を開始する時刻と終了する時刻との間のタイムスタンプが付加されたIピクチャーを構成するTSパケットの最初のTSパケットと最後のTSパケットとの間に、記録媒体のフォーマットに符号化された字幕データを重畳して記録するので、字幕が表示された早送り再生・早戻し再生が可能となり、またランダムアクセスで任意の位置から再生をした場合においても、短時間で字幕を表示することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
デジタル放送のビデオデータを記録する方法として、放送されたビデオデータをそのまま記録する方法と、一旦圧縮されたビデオデータを復号し、ビットレートやエンコード方式を変えて再び符号化する方式とがあり、また、オーディオデータ(音声データ)についても同様に、放送されたオーディオデータをそのまま記録する方法と、一旦圧縮されたオーディオデータを復号し、符号化ビットレートや符号化方式を変えて再び符号化する方式とがある。
【0012】
以下の説明においては、放送されるTSのビデオデータはMPEG2で符号化されており、再び符号化する際の符号化方式はMPEG4として、放送されるTSの音声データはAACで符号化されており、再び符号化する際には、AC−3で符号化され、光ディスクに記録されるとして説明する。
なお、映像情報記録媒体として光ディスクを用いた光ディスク記録再生装置を例に説明するが、映像情報記録媒体がハードディスクや半導体メモリー等の記録媒体であってもよい。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるトランスポートストリーム変換装置の構成例を示すブロック図である。一般にデジタル放送におけるTSは、ビデオパケット、オーディオパケット、字幕・文字スーパーパケット、PSI(Program and System Information)パケット、電子番組ガイド(以下EPGと省略)等のデータパケットにより構成されている。入力されたTSのPSIパケットを、TS解析部1で解析を行う。PSIパケットに含まれる、PAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)の情報を元に、選択すべきPID(Packet ID)をPIDフィルター2で読み取り、PIDフィルター2の設定を行う。PIDフィルター2では、設定されたPIDの情報に基づき、ビデオデータ、オーディデータ、字幕・文字スーパーデータを抽出し、PESパケット化し、PESビデオパケット1はビデオ処理部3へ、PESオーディオパケット1はオーディオ処理部4へ、PES字幕・文字スーパーパケット1は字幕処理部5へ送出される。
【0014】
図2は図1に示すビデオ処理部3の構成を示すブロック図である。PIDフィルター2から出力されるPESビデオパケット1のビデオデータは、ビデオデコーダー7でYCbCr等のビデオフォーマット信号に復号される。復号されたビデオ信号は、ビデオエンコーダー8でMPEG4−AVCのビデオフォーマットデータに符号化され、更にビデオPESパケッタイザー9でPESパケット化され、PESビデオパケット2として出力される。
【0015】
図3は図1に示すオーディオ処理部4の構成を示すブロック図である。PIDフィルター2から出力されるPESオーディオパケット1のオーディオデータは、オーディオデコーダー10で、リニアPCMのデジタル信号に復号され、オーディオエンコーダー11でAC−3に符号化される。更に符号化されたオーディオデータは、オーディオPESパケッタイザー12でPESパケット化され、PESオーディオパケット2として出力される。
【0016】
図4は図1に示す字幕処理部の構成を示すブロック図である。字幕制御部13は、PIDフィルター2から出力されるPES字幕・文字スーパーパケット1から、字幕データを抽出する。ここで字幕とは、映像に同期して表示される情報であり、例えば映画の字幕情報がこれに相当する。文字スーパーとは、映像とは非同期に表示される情報であり、例えば、ニュース速報がこれに相当する。一般にデジタル放送を記録する時には、字幕だけを記録し、文字スーパーは記録を行わない。よって字幕制御部13では、字幕データとそのタイムスタンプが抽出され、字幕デコーダー14でYCbCr、RGB等のビデオ信号のフォーマットに復号され、字幕エンコーダー15で、記録媒体で定義された字幕データファーマットに変換される。次に、記録媒体のフォーマットで符号化されたデータは、字幕の表示時間情報が付加された後PESパケット化され、PES字幕パケット2に変換される。以下、その方法について詳細に説明を行う。
【0017】
ビデオエンコーダー8で再符号化されたビデオデータのタイムスタンプ(Presentation Time Stamp:以下PTSと略す)は、放送された時のPTSとは異なり、新しいシステムクロックに基づいた新たなビデオPTSが付加される。字幕表示はビデオ信号の再生に同期して表示されるため、再符号化された字幕データに付加されるPTSも、このビデオデータのシステムクロックに基づいて付加される。例えば、同一のフレームに対する、再符号化される前のビデオのPTS(v_before)と再符号化された後のPTS(v_after)との関係が、
PTS(v_after) = PTS(v_before) + ΔT ・・・・・・ (1)
次式である場合、再符号化される前の字幕のPTS(st_before)と、再符号化された後の字幕のPTS(st_after)との関係は、
PTS(st_after) = PTS(st_before) + ΔT ・・・・・ (2)
で示される。即ち、オーディオPESパケッタイザー12および字幕のPESパケッタイザー16では、上記のようにビデオエンコーダー8で生成されたシステムクロックを新しいシステムクロックとして、PESパケットを生成する。
【0018】
字幕PESパケッタイザー16では、字幕制御部13から抽出されたPESデータと、ビデオ処理部3から送られるシステムクロック情報とから、新たな字幕PTSを生成し、PESパケットに付加する。ここで付加されるPTSは、デジタル放送の字幕データと同様に、字幕表示を開始するタイミングとして利用される。
【0019】
次に字幕データを格納するPESパケットの生成方法について詳細に説明する。字幕を表示する期間は、デジタル放送と同様に字幕データに付随する字幕制御情報の中に記述される。以降、字幕データの表示開始時刻を“st_start_time”、表示終了時刻を“st_end_time”として説明を行う。字幕データの表示期間情報は、字幕制御部13で字幕データ中の字幕制御情報から抽出される。字幕の表示時間は、一般に数秒から10秒程度に設定されることが多い。
【0020】
図5は、IピクチャーのPTSと字幕のPESデータとの時間関係を示す図であり、字幕の表示時間とその間に表示されるIピクチャの時間関係を示している。図5中の、PTS(v_I_1)、PTS(v_I_2)、PTS(v_I_3)、PTS(v_I_4)は、4枚のIピクチャーのそれぞれのPTSを示す。
以下、字幕データの表示期間、即ち“st_start_time”と“st_end_time”の間隔が2秒であり、ビデオのGOPの長さを0.5秒、字幕が表示される間に表示されるビデオデータのIピクチャーが4枚の場合について説明する。
【0021】
字幕エンコーダー15は、表示終了時刻が“st_end_time”となる字幕データを生成し、字幕PESパケッタイザー16では、その字幕データに対してPTSが“st_start_time”となるPES字幕パケットPES(st_start_time)17を生成する。次に表示開始時間が“PTS(v_I_1)”で、表示終了時刻が“st_end_time”となるPESビデオパケットPES(v_I_1)18を作成する。ここで、この二つのPESパケットを復号して表示される字幕は全く同一であり、字幕制御情報を除いたデータは全く同一である。以下同様にして、表示開始時間が、それぞれPTS(v_I_2)、PTS(v_I_3)、PTS(v_I_4)で、表示終了時刻が “st_end_time”となるPESパケット、PES(v_I_2)19、PES(v_I_3)20、PES(v_I_4)21を順次作成する。以上のようにして、“st_start_time”のPTSが付加されたデジタル放送の字幕データに対して、記録媒体のフォーマットに変換された字幕PESパケットを生成する。
【0022】
次に上記で生成された字幕のPESパケットを、マルチプレックスする方法について詳細に説明をする。図1において、マルチプレクサ6では、符号化されたビデオデータ、オーディオデータ、字幕データを再び1本のTSにマルチプレックスされるが、再生時に映像や音声が途切れることがない様に、ビデオ処理部3、オーディオ処理部4、字幕処理部5でそれぞれPESパケット化されたPESビデオパケット2、PESオーディオパケット2PES字幕パケット2の並び替え、記録媒体のフォーマットの新たなPSIパケットの付加が行われる。
【0023】
図6は、字幕データが重畳されたGOP先頭のTSパケットの状態を示す図であり、マルチプレクサ6で、PTS(v_I_1)が付加されたPES(v_I_1)18が重畳されたTSファイルのGOPの構造を示している。図中の四角はそれぞれTSパケットを示し、網掛けされた四角はビデオおよび字幕以外のTSパケットを示す。V(I_1)からV(I_9)はGOPのIピクチャーを構成するTSパケットで、ST(1)からST(4)はPES(v_I_1)18を構成するTSパケットである。マルチプレクサ6では、次の二つの条件を満たすようにデータの重畳を行うことで図6のTSは作られる。
(1)GOPのIピクチャーの先頭を構成するTSパケットの後ろに、Iピクチャーと同じPTSが付加された字幕データのPESパケットを構成する先頭のTSパケットを配置する。
(2)GOPのIピクチャー構成する最後のTSパケットよりも前に、Iピクチャーと同じPTSが付加された字幕データのPESパケットを構成する最後のTSパケットを配置する。
即ち、図6の場合では、V(I_1)のTSパケットの後ろにST(1)のパケットが配置され、V(I_9)の前に、ST(4)が配置されるよう、マルチプレクサ6は字幕データを重畳する。上記の条件でデータを重畳するのは、IピクチャーのPTSと同じPTSが付加された字幕データだけであり、図5においては、PES(v_I_1)18、PES(v_I_2)19、PES(v_I_3)20、PES(v_I_4)21が対象であり、PES(st_start_time)17は対象外となる。
【0024】
本説明では、IピクチャーのPTSと、重畳する字幕データのPTS(PES(v_I_1)など)を同じ時刻としているが、必ずしも全く同時刻とする必要は無く、IピクチャーのPTSの近傍の時刻に設定してもかまわない。
【0025】
以上のように、デジタル放送のTSデータに含まれるビデオデータ、オーディオデータ、字幕データが記録再生装置のTSデータに変換され、記録媒体へと記録されるが、この時、デジタル放送のTSのデータだけでなく、記録再生装置に特有のランダムアクセス再生や早送り、早戻し再生等を行う際に必要な情報が記録媒体に記録される
【0026】
MPEG2などの方式で符号化されたデータの復号は、必ずGOPの先頭のIピクチャーから行う必要がある。そのため、ランダムアクセスや早送り再生等を行うためには、光ディスクに記録されたTSデータのどの位置に、Iピクチャーが存在するかを知るためのアクセス情報が必要となる。図7はランダムアクセスをするために必要なアクセス情報ファイルのデータ構造を示す図であり、TSファイルのどの位置にIピクチャーが存在するかを示すアクセス情報ファイルの構造を示す。
【0027】
“num_of_GOP”はTSファイル中に存在するGOPの総数を表す。次の行のforループは“num_of_GOP”の数だけ繰り返される。“PTS_I(k)”はk番目のGOPの先頭のIピクチャーのPTSの時間を意味し、“SPN_I(k)”は、TSファイルの先頭からIピクチャーの先頭のTSパケットまでのパケット数を意味し、“I_size(k)”は、GOP先頭のTSパケットから、Iピクチャーを構成する最後のTSパケットまでのパケット数を意味する。これらのデータをTSファイルと一緒に光ディスク記録再生装置のTS(以下DVDTSと省略)に変換し、光ディスクに記録を行う。
【0028】
次に、光ディスクに記録されたTSファイルの任意の位置から再生を行う方法について説明をする。なお、説明では光ディスク記録再生装置により光ディスク上のデータを読み出すことを前提として説明するが、FLASH等の半導体メモリー、その他の光学ドライブを使ってもよい。
【0029】
図8は、光ディスクに記録されたTSデータを再生する再生装置の構成を示す図である。ユーザーから、任意の位置からの再生指示が出されると、CPU23はドライブ22から図7のアクセス情報ファイルを読み出し、ユーザーに指定された再生時間に最も近く、且つ指定された時間よりも前に存在する、“PTS_I(k)”を探し出す。次にドライブ22に対して、再生するTSファイルの先頭から数えて“SPN_I(k)”番目のパケットから、データを読み出すように指示を出す。読み出されたDVDTSのPESパケットのデータは、PIDフィルター24で分離され、ビデオデコーダー26、オーディオデコーダー27、字幕デコーダー28に送られるが、データ分離の詳細な動作は図1の説明と同様のため省略する。ビデオデコーダー26で複合されたビデオ信号と字幕デコーダー28で復号された字幕データは、ビデオミキサー29で重畳されて、外部に接続された表示装置30へと出力される。
【0030】
図9は、再生指定位置と重畳された字幕データのPTSとの関係を示す図であり、ユーザーが再生を指定した時刻と、字幕データの表示時刻との関係を示した図である。図9に示すような時間関係に有る場合、CPU23が探してくる“PTS_I(k)”はPTS(v_I_1)となる。GOP先頭のIピクチャーからでないとビデオデータは復号ができないため、ビデオデコーダー26では、ユーザーが指定した時刻のピクチャーまでは復号された映像は出力せずに、指定された時間以降のピクチャーから映像の出力を行う。この時、PES(v_I_1)18がPTS(v_I_1)のPTSが付加されたGOPに、図6のように重畳されているため、ユーザーの指定した時間から字幕を表示することが可能となる。
【0031】
一方、本実施の形態のように、“st_start_time”から“st_end_time”の間の、時刻に含まれる各Iピクチャーに同一表示データを持った字幕データを重畳し、さらにIピクチャーを構成する先頭のTSパケット以降に字幕のTSパケットを重畳することで、ランダムアクセス直後から、字幕を表示することが可能となる。
【0032】
一方、デジタル放送に重畳された字幕データのように、PES(st_start_time)17だけがTSファイルに重畳されていると、TSファイルの先頭から再生していれば表示される字幕が、ランダムアクセスの時は表示することができなくなる。そのため、ユーザーは次の字幕の表示が始まるまで、再生表示されている映像の内容を把握することができないことがある。
【0033】
次に早送り再生・早戻し再生の再生方法について説明をする。一般に、早送り、早戻し再生では、Iピクチャーだけを復号して表示する方法が一般的である。ユーザーから早送りの指令が出されると、CPU23はアクセス情報ファイルから、現在再生をしている時間よりも後の“PTS_I(k)”を探し出し、再生中のTSファイルの先頭から“SPN_I(k)”番目のTSパケットから“I_size(k)”個のTSパケットを読み出す指令を、ドライブ22へと出す。以降の動作はランダムアクセス再生の時と同様のため説明は省略する。
【0034】
“PTS_I(k)”のIピクチャーの表示が行われると、CPU23はドライブ22に、再生中のTSファイルの先頭から“SPN_I(k+1)”番目のTSパケットから“I_size(k+1)”個のTSパケットを読み出す指令が出される。以降同様にして、Iピクチャーのデータだけが次々と読み出され、復号され表示される。但し、Iピクチャーを読み出す間隔は、ユーザーの指定した倍速数、ドライブのアクセス速度によって変わるため、必ずしもすべてのIピクチャーを再生するわけではない。以上のようにして早送り再生が行われる。
【0035】
このようにして、Iピクチャーのデータだけを選択して読み出し再生することで、早送り・早戻し再生を行う。また早戻しの動作は、読み出すIピクチャーのPTSが過去の方向に再生されることを除いて、全く動作が同じでるため説明は省略する。デジタル放送に重畳された字幕データのように、PES(st_start_time)17だけがTSファイルに重畳されていると、偶然に読み出されたIピクチャーのTSパケットの中にPES(st_start_time)17が存在する場合を除いて、字幕を表示することができない。一方、本実施の形態のように、“st_start_time”から“st_end_time”の間の、時刻に含まれる各Iピクチャーに同一表示データを持った字幕データを重畳し、さらにIピクチャーを構成する先頭のTSパケットから最終のTSパケットの間に字幕のTSパケットを重畳することで、早送り再生時においても、常に字幕を表示することが可能となる。
【0036】
以上、説明したように、デジタル放送の字幕データを、字幕が表示されている間に存在するIピクチャーに対して、Iピクチャーを構成する先頭のTSパケットと最終TSパケットとの間に重畳することで、ランダムアクセス再生には再生直後から字幕を表示することが可能となり、早送り・早戻し再生を行った場合においても、常に字幕を表示させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態1によるトランスポートストリーム変換装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のビデオ処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】図1のオーディオ処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1の字幕処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1によるIピクチャーのPTSと字幕のPESデータとの時間関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1による字幕データが重畳されたGOP先頭のTSパケットの状態を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1によるランダムアクセスをするために必要なアクセス情報ファイルのデータ構造を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1による記録媒体に記録されたTSファイルを再生する再生装置の構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態1による再生指定位置と重畳された字幕データのPTSとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 TS解析部、2 PIDフィルター、3 ビデオ処理部、6 マルチプレクサ、13 字幕制御部、 14 字幕デコーダー、 15 字幕エンコーダー、 16 字幕PESパケッタイザー、 22 DVDドライブ、 23 CPU、 26 ビデオデコーダー、 27 オーディオデコーダー、 28 字幕デコーダー、 29 ビデオミキサー、 30 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送のトランスポートストリームの字幕データ、ビデオデータ、オーディオデータを分離する第1のデータ分離手段と、
前記デジタル放送のビデオデータを復号する第1のビデオ復号手段と、
前記復号されたビデオデータを記録媒体フォーマットのビデオデータに符号化する第1のビデオ符号化手段と、
前記符号化されたビデオデータをパケット化し、ビデオタイムスタンプを付加する第1のビデオパケット化手段と、
前記デジタル放送の字幕データを挿入するタイムスタンプを検出する字幕制御手段と、
前記デジタル放送の字幕データを復号する第1の字幕復号手段と、
前記復号された字幕データを記録媒体フォーマットの字幕データに符号化する字幕符号化手段と、
前記符号化された字幕データをパケット化し、新たな字幕タイムスタンプを付加する字幕パケット化手段と、
前記字幕パケットとビデオパケットとを重畳して前記記録媒体フォーマットのトランスポートストリーム生成するトランスポートストリーム生成手段とを備え、
前記、トランスポートストリーム生成手段において、前記ビデオタイムスタンプと字幕タイムスタンプとに基づき、字幕の表示開始時間と終了時間との間に存在する、Iピクチャーを構成するビデオパケットの間に前記字幕パケットを重畳することを特徴とするデジタル映像情報データ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル映像情報データ生成装置を備えたことを特徴とするデジタル映像情報記録装置。
【請求項3】
字幕の表示開始時間と終了時間との間に存在する、Iピクチャーを構成するビデオパケットの間に前記字幕パケットが重畳され、記録媒体に記録されたトランスポートストリームから記録媒体フォーマットの字幕パケットとビデオパケットを分離する第2のデータ分離手段と、
前記記録媒体フォーマットのビデオパケットからビデオ信号を復号する第2のビデオ復号手段と、
前記記録媒体フォーマットの字幕パケットから字幕信号を復号する第2の字幕復号手段とを備えたことを特徴とするデジタル映像情報再生装置。
【請求項4】
前記デジタル放送のビデオデータを復号するビデオ復号ステップと、
前記復号されたビデオデータを記録媒体フォーマットのビデオデータに符号化するビデオ符号化ステップと、
前記符号化されたビデオデータをパケット化し、ビデオタイムスタンプを付加するビデオパケット化ステップと、
前記デジタル放送の字幕データを挿入するタイムスタンプを検出するタイムスタンプ検出ステップと、
前記デジタル放送の字幕データを復号する字幕復号ステップと、
前記復号された字幕データを記録媒体フォーマットの字幕データに符号化する字幕符号化ステップと、
前記符号化された字幕データをパケット化し、新たな字幕タイムスタンプを付加する字幕パケット化ステップと、
前記ビデオタイムスタンプと字幕タイムスタンプとに基づき、字幕の表示開始時間と終了時間との間に存在する、Iピクチャーを構成するビデオパケットの間に前記字幕パケットを重畳した後、前記字幕パケットとビデオパケットとを重畳してトランスポートストリームを生成する記録媒体フォーマットのトランスポートストリーム生成ステップとを備えたことを特徴とするデジタル映像情報データ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−193203(P2008−193203A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22923(P2007−22923)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】