デジタル画像の補正方法
電気信号に変換され、デジタル撮像装置に送られる、X線を含む電磁放射を用いて得られる、デジタル画像の補正のための方法が提供され、方法は、デジタル画像の、詳細および近似画像へのピラミッド分解と、画像の近似部分における、散乱した放射線の除去と、画像の詳細部分における、コントラスト強化と、処理された詳細および近似画像の合成と、その後の最終画像の再構築および生成と、を備える。この方法の実施形態の結果は、散乱した放射線成分の除去(減少)、雑音減少、出力装置のダイナミックレンジに応じた出力画像のダイナミックレンジの補正、および元画像のダイナミックレンジに応じた出力画像のダイナミックレンジのスケーリング、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル画像処理の分野に属し、X線放射を含む高エネルギー放射の使用により得られたデジタル画像を処理するタスクに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
物体への照射は、散乱した放射線を生じさせ、これは、得られる画像の詳細の検出可能性に強い影響を持つ。散乱は、コントラストの減少、濃度測定の不正確性、および画像の鮮明度の劣化をもたらす。散乱した放射線の影響を処理する標準的な方法は、通常、画像検出器に到達する、散乱した放射線の強度を減少する方向に向けられている(ソレンソン(Sorenson, J.A.)およびニクラソン(Niklason, L.T.)、1988、医療撮像における進歩(Progress in Medical Imaging)、V. L. Newhouse (New York: Springer)編集、第159〜194頁)。多くの例において、このような方法の実施は、線量の増加(3倍またはそれ以上)および得られた画像の雑音の増加をもたらし得る。
【0003】
標準的な方法は、一次画像における散乱の影響を減少するタスクを、散乱線除去グリッド、エアギャップ、およびビームコリメーションによって解決している。これらの手法は、検出器での合計信号の散乱成分を減少させる。しかし、これらの手法は、散乱成分を完全には除去せず、ベイリンググレア成分にも直接影響しない。また、散乱線除去グリッドまたはエアギャップの使用は、線量(患者の被曝)の著しい増加をもたらす(ソレンソン(Sorenson, J.A.)およびニクラソン(Niklason, L.T.)、1988、医療撮像における進歩(Progress in Medical Imaging)、V. L. Newhouse (New York: Springer)編集、第159〜194頁)。
【0004】
散乱の影響の補償は、デジタル放射線および蛍光透視システムなどでのような、画像検出器に接続されたコンピュータ化された画像プロセッサの使用によって容易にすることができる(メイハー(Maher, K.P.)およびマローン(Malone, J.F.), 1986, Contemp. Phys., 27, 533)。これまでに開発された方法は、通常、散乱した放射電磁界の推定、およびこれを元の画像から減算することを含む(ラブ(Love. L.A.)およびクルーガー(Kruger, R.A.)、1987、医療物理学(Medical Physics)14, 178)。
【0005】
本特許請求の範囲に最も密接に関係する方法は、電気信号に変換され、デジタル撮像装置に送られる、X線放射を含む電磁放射によって得られるデジタル画像補正の方法(2009年11月18日公開の欧州特許第2120040A1号公報)であり、方法は、最初のデジタル画像の、詳細(高周波数帯域)画像および近似(低周波数帯域)画像へのピラミッド(ラプラシアンピラミッド)分解と、画像の近似部分における、散乱した放射線の除去と、画像の詳細部分における、コントラストの強化と、処理された近似および詳細画像の再合成と、を含み、その後に、結果画像の再構築および生成が続く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の方法の欠点は、画像の振幅および周波数特性の補正、雑音減少、散乱の影響の除去、および出力装置のダイナミックレンジに応じた画像のダイナミックレンジの補正の可能性を、提供しないことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気信号に変換され、デジタル撮像装置に送られる、X線放射を含む電磁放射によって得られる、デジタル画像の補正のための方法であって、元のデジタル画像の、詳細および近似画像へのピラミッド分解と、画像の近似部分における、散乱除去と、詳細画像のコントラスト強化と、処理された詳細および近似画像の再合成と、同時の再構築および出力画像取得と、を含む方法における、この技術的結果は、以下の手段によって達成される。画像分解の前記動作の前に、画像のダイナミックレンジが決定され、振幅特性が調整され、画像分解の前記動作の後に、信号対雑音比が決定され、詳細画像において雑音削減が行われ、詳細画像は、周波数特性調整係数に応じて調整され、周波数特性調整係数は、出力装置のダイナミックレンジ、元の撮像装置のMTF、詳細画像の補正の所定の(設定)度数、および先に決定された信号対雑音比、によって決定される。この後に、予め設定された調整係数および近似画像の輝度に応じた詳細画像の調整と、詳細画像内のエッジアーティファクトの補正が続き、画像の前記再構築を行った後に、出力画像のダイナミックレンジが、元のデジタル画像のダイナミックレンジに応じてスケーリングされ、出力画像が出力装置に送られる。
【0008】
元のデジタル画像の分解は、ラプラス法(Laplace's method)またはウェーブレット変換法(Wavelet transform method)に従って行うことができる。
【0009】
信号対雑音比は、近似画像における最大および最小信号の差と、詳細画像についての雑音値との比として決定することができる。
【0010】
エッジアーティファクト補正は、シグマ関数によって行われ、シグマ関数のパラメータは、詳細画像の最大および最小値と、周波数特性補正係数の決定において使用された、デジタル撮像装置のMTF値と、に依存する。
【0011】
図1〜図13は、本発明の実施形態の例であり、特許請求される発明の背後にある原理を示しており、特許請求される技術的結果の技術的実現および達成の可能性を例示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、X線画像取得の概略図である。
【図2】図2は、アルゴリズムの第1の部分である。
【図3】図3は、アルゴリズムの第2の部分である。
【図4】図4は、アルゴリズムの第3の部分である。
【図5】図5は、元のデジタル画像である。
【図6】図6は、特許請求の範囲の方法に従い処理された画像である。
【図7】図7は、特許請求の範囲の方法に従い処理された画像である。
【図8】図8は、特許請求の範囲の方法に従い処理された画像である。
【図9】図9は、全体画像の断片の位置である。
【図10】図10は、特許請求される方法に従って処理された画像の断片である。
【図11】図11は、特許請求される方法に従って処理された画像の断片である。
【図12】図12は、特許請求される方法に従って処理された画像の断片である。
【図13】図13は、特許請求される方法に従って処理された画像の断片である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されるように、コリメータ4を有するX線管1は、X線ビーム3を放射し、ビームは、調査されている物体2を通過する。X線放射は、デジタル撮像装置(検出器)6によって検出され、そこからディスプレイへと送られる。
【0014】
その後、方法は、以下に述べる動作(図2〜図4)のシーケンスで行われる。
【0015】
検出器6のMTFが、決定される。
【0016】
処理されるべき画像が入力される(“元画像”)。
【0017】
元画像のダイナミックレンジ(最小〜最大)が、決定される(図2の位置8)。
【0018】
画像の振幅特性が調整される(任意)(図2の位置9)。対数法を用いて、画像の振幅特性を調整することができる。元画像の信号は、以下の値を持つ。
【数1】
ただし、Uは“元”信号、U0は放射線量(被曝)、μは物体材料のX線吸収係数、tは物体の厚さである。対数化の後、この式は、
【数2】
となる。
【0019】
従って、出力信号は、X線減衰係数の合計値に比例するようになる。
【0020】
画像は、ラプラスピラミッド法に従って分解され(図2および図3の位置10〜12)、画像は、低周波数(LF)(近似)部分11と、高周波数(HF)(詳細)部分12とに分割される。これらの部分は、LFおよびHF部分等に、同時に分割される。
【0021】
信号対雑音比(SNR)が、以下のように決定される(図3)。
【0022】
ラプラスピラミッドの最低周波数レベルについて、信号の最小(Min)および最大(Max)値が決定される(図3の位置13)。
【0023】
ラプラスピラミッドの最高周波数レベルについて、標準偏差が決定される(これは、このレベルでの雑音を測定するのに等しい)(図3の位置14)。
【0024】
SNRは、以下の式に従って計算される。
【数3】
【0025】
雑音減少は、次のように行われる。ラプラスピラミッドの各レベルにおいて、高周波数部分が、個別の雑音減少アルゴリズムにより処理され(図3の位置16)、この処理は、ウェーブレット変換、局部平均、双方向性変換方法等、およびこれらの組み合わせに基づくことができる。雑音減少の程度は、0%〜100%の範囲内で、予め設定することができる。
【0026】
周波数特性補正係数の決定のサブルーチンが、以下のパラメータによって制御される(図3の位置17)。
a)画像の元のダイナミックレンジが、出力装置(フィルムプリンタ、コンピュータモニタ等)のダイナミックレンジに応じて制限されている、ダイナミックレンジ。
b)元画像を得た検出器のMTF。
c)高周波数(HF利得)の調整の度数(%増加/減少で設定)(図3の位置16)。
d)前に決定されたSNRの値(図3の位置15)。
【0027】
ピラミッドの各レベルでのHF画像は、特定の関数による振幅特性補正(図2の位置9)の段階で得られた、周波数特性補正係数によって調整される。この補正は、次の2つのパラメータによって制御される。
e)元画像のダイナミックレンジの決定(図3の位置17)の間に得られた補正係数。
f)ピラミッドの同一レベルにおける、画像のLF部分の明るさ(HF利得は、いくつかの関数または線形依存を通して、明るさに反比例する)
【0028】
画像構造のエッジ過強調(エッジアーティファクト)を避けるために、最小および最大値が、各HF部分において決定され、これらに基づき、画像のHF部分の処理に用いられるシグマ関数のパラメータが決定される(図3の位置18)。
【0029】
ラプラスピラミッドからの画像の逆構築が、行われる(図3および図4の位置20)。
【0030】
結果として生じる画像のダイナミックレンジが、元画像のダイナミックレンジに応じてスケーリングされる(図4の位置21)。
【0031】
処理された画像が、出力装置に送られる(図4の位置22)。
【0032】
〔好適な実施形態の詳細な説明〕
技術的結果の達成の可能性が、図5〜図13に例示されている。元のデジタル画像を示す図5では、骨構造の一部が見えていない(暗い領域)。軽処理による画像(図6)では、骨構造のほぼ全てを見ることが可能である。中処理(図7)による画像では、骨構造のほぼ全てと、軟組織の一部を見ることが可能である。重処理による画像(図8)では、骨構造の全てと、軟組織のほぼ全てを見ることが可能である。
【0033】
図9は、全体画像の断片の位置を示している。
【0034】
全体画像の断片(図10)では、雑音と、詳細化の不足を見ることができる。
【0035】
軽処理による画像の断片(図11)では、雑音は除去され、詳細化は強調されている。
【0036】
中(標準)処理による画像の断片(図12)では、詳細化は、標準レベルまで強調されている。
【0037】
重処理による画像の断片(図13)では、骨構造の全てが、許容可能な雑音レベルと共に詳細に見えている。
【0038】
特許請求の範囲の方法を用いた画像処理の例が、図5〜図13に示されており、これらは、フィルタの2つの主なパラメータの効果を示している。第1のパラメータは、任意の単位での出力画像のダイナミックレンジであり、単位は、その意味において、値Smax/Sminに関連し、ここで、Smaxは、画像における信号の最大値であり、Sminは、最小値である。値の範囲は、16〜2048である。
【0039】
第2のパラメータは、パーセントでの雑音減少の程度である。値の範囲は、0〜100%であり、0%は、雑音減少がないこと、100%は、全ての雑音が除去されることである。
【0040】
図における画像のパラメータは、次の通りである。
1.軽処理:出力画像のダイナミックレンジは256、雑音減少の程度は30%
2.標準処理:出力画像のダイナミックレンジは64、雑音減少の程度は60%
3.重処理:出力画像のダイナミックレンジは32、雑音減少の程度は90%
【産業上の利用可能性】
【0041】
このように、本発明の技術的結果―画像の振幅および周波数特性の補正、雑音減少、散乱した放射線の影響の減少、および予期される出力装置のダイナミックレンジに応じた、画像のダイナミックレンジの補正―が達成される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル画像処理の分野に属し、X線放射を含む高エネルギー放射の使用により得られたデジタル画像を処理するタスクに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
物体への照射は、散乱した放射線を生じさせ、これは、得られる画像の詳細の検出可能性に強い影響を持つ。散乱は、コントラストの減少、濃度測定の不正確性、および画像の鮮明度の劣化をもたらす。散乱した放射線の影響を処理する標準的な方法は、通常、画像検出器に到達する、散乱した放射線の強度を減少する方向に向けられている(ソレンソン(Sorenson, J.A.)およびニクラソン(Niklason, L.T.)、1988、医療撮像における進歩(Progress in Medical Imaging)、V. L. Newhouse (New York: Springer)編集、第159〜194頁)。多くの例において、このような方法の実施は、線量の増加(3倍またはそれ以上)および得られた画像の雑音の増加をもたらし得る。
【0003】
標準的な方法は、一次画像における散乱の影響を減少するタスクを、散乱線除去グリッド、エアギャップ、およびビームコリメーションによって解決している。これらの手法は、検出器での合計信号の散乱成分を減少させる。しかし、これらの手法は、散乱成分を完全には除去せず、ベイリンググレア成分にも直接影響しない。また、散乱線除去グリッドまたはエアギャップの使用は、線量(患者の被曝)の著しい増加をもたらす(ソレンソン(Sorenson, J.A.)およびニクラソン(Niklason, L.T.)、1988、医療撮像における進歩(Progress in Medical Imaging)、V. L. Newhouse (New York: Springer)編集、第159〜194頁)。
【0004】
散乱の影響の補償は、デジタル放射線および蛍光透視システムなどでのような、画像検出器に接続されたコンピュータ化された画像プロセッサの使用によって容易にすることができる(メイハー(Maher, K.P.)およびマローン(Malone, J.F.), 1986, Contemp. Phys., 27, 533)。これまでに開発された方法は、通常、散乱した放射電磁界の推定、およびこれを元の画像から減算することを含む(ラブ(Love. L.A.)およびクルーガー(Kruger, R.A.)、1987、医療物理学(Medical Physics)14, 178)。
【0005】
本特許請求の範囲に最も密接に関係する方法は、電気信号に変換され、デジタル撮像装置に送られる、X線放射を含む電磁放射によって得られるデジタル画像補正の方法(2009年11月18日公開の欧州特許第2120040A1号公報)であり、方法は、最初のデジタル画像の、詳細(高周波数帯域)画像および近似(低周波数帯域)画像へのピラミッド(ラプラシアンピラミッド)分解と、画像の近似部分における、散乱した放射線の除去と、画像の詳細部分における、コントラストの強化と、処理された近似および詳細画像の再合成と、を含み、その後に、結果画像の再構築および生成が続く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の方法の欠点は、画像の振幅および周波数特性の補正、雑音減少、散乱の影響の除去、および出力装置のダイナミックレンジに応じた画像のダイナミックレンジの補正の可能性を、提供しないことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気信号に変換され、デジタル撮像装置に送られる、X線放射を含む電磁放射によって得られる、デジタル画像の補正のための方法であって、元のデジタル画像の、詳細および近似画像へのピラミッド分解と、画像の近似部分における、散乱除去と、詳細画像のコントラスト強化と、処理された詳細および近似画像の再合成と、同時の再構築および出力画像取得と、を含む方法における、この技術的結果は、以下の手段によって達成される。画像分解の前記動作の前に、画像のダイナミックレンジが決定され、振幅特性が調整され、画像分解の前記動作の後に、信号対雑音比が決定され、詳細画像において雑音削減が行われ、詳細画像は、周波数特性調整係数に応じて調整され、周波数特性調整係数は、出力装置のダイナミックレンジ、元の撮像装置のMTF、詳細画像の補正の所定の(設定)度数、および先に決定された信号対雑音比、によって決定される。この後に、予め設定された調整係数および近似画像の輝度に応じた詳細画像の調整と、詳細画像内のエッジアーティファクトの補正が続き、画像の前記再構築を行った後に、出力画像のダイナミックレンジが、元のデジタル画像のダイナミックレンジに応じてスケーリングされ、出力画像が出力装置に送られる。
【0008】
元のデジタル画像の分解は、ラプラス法(Laplace's method)またはウェーブレット変換法(Wavelet transform method)に従って行うことができる。
【0009】
信号対雑音比は、近似画像における最大および最小信号の差と、詳細画像についての雑音値との比として決定することができる。
【0010】
エッジアーティファクト補正は、シグマ関数によって行われ、シグマ関数のパラメータは、詳細画像の最大および最小値と、周波数特性補正係数の決定において使用された、デジタル撮像装置のMTF値と、に依存する。
【0011】
図1〜図13は、本発明の実施形態の例であり、特許請求される発明の背後にある原理を示しており、特許請求される技術的結果の技術的実現および達成の可能性を例示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、X線画像取得の概略図である。
【図2】図2は、アルゴリズムの第1の部分である。
【図3】図3は、アルゴリズムの第2の部分である。
【図4】図4は、アルゴリズムの第3の部分である。
【図5】図5は、元のデジタル画像である。
【図6】図6は、特許請求の範囲の方法に従い処理された画像である。
【図7】図7は、特許請求の範囲の方法に従い処理された画像である。
【図8】図8は、特許請求の範囲の方法に従い処理された画像である。
【図9】図9は、全体画像の断片の位置である。
【図10】図10は、特許請求される方法に従って処理された画像の断片である。
【図11】図11は、特許請求される方法に従って処理された画像の断片である。
【図12】図12は、特許請求される方法に従って処理された画像の断片である。
【図13】図13は、特許請求される方法に従って処理された画像の断片である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されるように、コリメータ4を有するX線管1は、X線ビーム3を放射し、ビームは、調査されている物体2を通過する。X線放射は、デジタル撮像装置(検出器)6によって検出され、そこからディスプレイへと送られる。
【0014】
その後、方法は、以下に述べる動作(図2〜図4)のシーケンスで行われる。
【0015】
検出器6のMTFが、決定される。
【0016】
処理されるべき画像が入力される(“元画像”)。
【0017】
元画像のダイナミックレンジ(最小〜最大)が、決定される(図2の位置8)。
【0018】
画像の振幅特性が調整される(任意)(図2の位置9)。対数法を用いて、画像の振幅特性を調整することができる。元画像の信号は、以下の値を持つ。
【数1】
ただし、Uは“元”信号、U0は放射線量(被曝)、μは物体材料のX線吸収係数、tは物体の厚さである。対数化の後、この式は、
【数2】
となる。
【0019】
従って、出力信号は、X線減衰係数の合計値に比例するようになる。
【0020】
画像は、ラプラスピラミッド法に従って分解され(図2および図3の位置10〜12)、画像は、低周波数(LF)(近似)部分11と、高周波数(HF)(詳細)部分12とに分割される。これらの部分は、LFおよびHF部分等に、同時に分割される。
【0021】
信号対雑音比(SNR)が、以下のように決定される(図3)。
【0022】
ラプラスピラミッドの最低周波数レベルについて、信号の最小(Min)および最大(Max)値が決定される(図3の位置13)。
【0023】
ラプラスピラミッドの最高周波数レベルについて、標準偏差が決定される(これは、このレベルでの雑音を測定するのに等しい)(図3の位置14)。
【0024】
SNRは、以下の式に従って計算される。
【数3】
【0025】
雑音減少は、次のように行われる。ラプラスピラミッドの各レベルにおいて、高周波数部分が、個別の雑音減少アルゴリズムにより処理され(図3の位置16)、この処理は、ウェーブレット変換、局部平均、双方向性変換方法等、およびこれらの組み合わせに基づくことができる。雑音減少の程度は、0%〜100%の範囲内で、予め設定することができる。
【0026】
周波数特性補正係数の決定のサブルーチンが、以下のパラメータによって制御される(図3の位置17)。
a)画像の元のダイナミックレンジが、出力装置(フィルムプリンタ、コンピュータモニタ等)のダイナミックレンジに応じて制限されている、ダイナミックレンジ。
b)元画像を得た検出器のMTF。
c)高周波数(HF利得)の調整の度数(%増加/減少で設定)(図3の位置16)。
d)前に決定されたSNRの値(図3の位置15)。
【0027】
ピラミッドの各レベルでのHF画像は、特定の関数による振幅特性補正(図2の位置9)の段階で得られた、周波数特性補正係数によって調整される。この補正は、次の2つのパラメータによって制御される。
e)元画像のダイナミックレンジの決定(図3の位置17)の間に得られた補正係数。
f)ピラミッドの同一レベルにおける、画像のLF部分の明るさ(HF利得は、いくつかの関数または線形依存を通して、明るさに反比例する)
【0028】
画像構造のエッジ過強調(エッジアーティファクト)を避けるために、最小および最大値が、各HF部分において決定され、これらに基づき、画像のHF部分の処理に用いられるシグマ関数のパラメータが決定される(図3の位置18)。
【0029】
ラプラスピラミッドからの画像の逆構築が、行われる(図3および図4の位置20)。
【0030】
結果として生じる画像のダイナミックレンジが、元画像のダイナミックレンジに応じてスケーリングされる(図4の位置21)。
【0031】
処理された画像が、出力装置に送られる(図4の位置22)。
【0032】
〔好適な実施形態の詳細な説明〕
技術的結果の達成の可能性が、図5〜図13に例示されている。元のデジタル画像を示す図5では、骨構造の一部が見えていない(暗い領域)。軽処理による画像(図6)では、骨構造のほぼ全てを見ることが可能である。中処理(図7)による画像では、骨構造のほぼ全てと、軟組織の一部を見ることが可能である。重処理による画像(図8)では、骨構造の全てと、軟組織のほぼ全てを見ることが可能である。
【0033】
図9は、全体画像の断片の位置を示している。
【0034】
全体画像の断片(図10)では、雑音と、詳細化の不足を見ることができる。
【0035】
軽処理による画像の断片(図11)では、雑音は除去され、詳細化は強調されている。
【0036】
中(標準)処理による画像の断片(図12)では、詳細化は、標準レベルまで強調されている。
【0037】
重処理による画像の断片(図13)では、骨構造の全てが、許容可能な雑音レベルと共に詳細に見えている。
【0038】
特許請求の範囲の方法を用いた画像処理の例が、図5〜図13に示されており、これらは、フィルタの2つの主なパラメータの効果を示している。第1のパラメータは、任意の単位での出力画像のダイナミックレンジであり、単位は、その意味において、値Smax/Sminに関連し、ここで、Smaxは、画像における信号の最大値であり、Sminは、最小値である。値の範囲は、16〜2048である。
【0039】
第2のパラメータは、パーセントでの雑音減少の程度である。値の範囲は、0〜100%であり、0%は、雑音減少がないこと、100%は、全ての雑音が除去されることである。
【0040】
図における画像のパラメータは、次の通りである。
1.軽処理:出力画像のダイナミックレンジは256、雑音減少の程度は30%
2.標準処理:出力画像のダイナミックレンジは64、雑音減少の程度は60%
3.重処理:出力画像のダイナミックレンジは32、雑音減少の程度は90%
【産業上の利用可能性】
【0041】
このように、本発明の技術的結果―画像の振幅および周波数特性の補正、雑音減少、散乱した放射線の影響の減少、および予期される出力装置のダイナミックレンジに応じた、画像のダイナミックレンジの補正―が達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号に変換され、デジタル撮像装置に送られる、X線を含む電磁放射による撮像に適用可能な、デジタル画像補正方法であって、
デジタル画像の、詳細および近似画像へのピラミッド分解と、
前記画像の近似部分における、散乱した放射線の除去と、
前記画像の詳細部分における、コントラスト強化と、
処理された詳細および近似画像の合成と、
最終画像の再構築および生成と、を備えた方法において、
画像分解の前記動作の前に、画像のダイナミックレンジが決定され、振幅特性が補正され、
画像分解の前記動作の後に、信号対雑音比が決定され、詳細画像における雑音削減が行われ、詳細画像は、周波数特性補正係数に応じて補正され、
前記周波数特性補正係数は、出力装置のダイナミックレンジ、元のデジタル画像形成装置の変調転送関数、詳細画像の補正の設定度数、および予め決定された信号対雑音比、に応じて決定され、
次いで、詳細画像が、先に決定された補正係数および近似画像の明るさに応じて補正され、詳細画像内のエッジアーティファクトが補正され、画像の再構築の後に、出力画像のダイナミックレンジが、元のデジタル画像のダイナミックレンジに応じてスケーリングされ、出力画像が出力装置に送られる、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
元のデジタル画像の前記分解は、ラプラスピラミッド法(Laplace pyramid method)によって行われる、ことを特徴とする請求項1に記載のデジタル画像補正方法。
【請求項3】
元のデジタル画像の前記分解は、ウェーブレット変換法(Wavelet transform method)によって行われる、ことを特徴とする請求項1に記載のデジタル画像補正方法。
【請求項4】
前記信号対雑音比は、前記近似画像における信号の最大および最小値の差と、前記詳細画像における雑音の値との比として、決定される、ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のデジタル画像補正方法。
【請求項5】
詳細画像におけるエッジアーティファクトの補正は、シグマ関数によって行われ、
前記シグマ関数のパラメータは、詳細画像の最小および最大値に応じて、および、周波数特性補正係数の計算のために決定された、デジタル撮像装置の変調転送関数の値に応じて、決定される、
ことを特徴とする請求項4に記載のデジタル画像補正方法。
【請求項1】
電気信号に変換され、デジタル撮像装置に送られる、X線を含む電磁放射による撮像に適用可能な、デジタル画像補正方法であって、
デジタル画像の、詳細および近似画像へのピラミッド分解と、
前記画像の近似部分における、散乱した放射線の除去と、
前記画像の詳細部分における、コントラスト強化と、
処理された詳細および近似画像の合成と、
最終画像の再構築および生成と、を備えた方法において、
画像分解の前記動作の前に、画像のダイナミックレンジが決定され、振幅特性が補正され、
画像分解の前記動作の後に、信号対雑音比が決定され、詳細画像における雑音削減が行われ、詳細画像は、周波数特性補正係数に応じて補正され、
前記周波数特性補正係数は、出力装置のダイナミックレンジ、元のデジタル画像形成装置の変調転送関数、詳細画像の補正の設定度数、および予め決定された信号対雑音比、に応じて決定され、
次いで、詳細画像が、先に決定された補正係数および近似画像の明るさに応じて補正され、詳細画像内のエッジアーティファクトが補正され、画像の再構築の後に、出力画像のダイナミックレンジが、元のデジタル画像のダイナミックレンジに応じてスケーリングされ、出力画像が出力装置に送られる、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
元のデジタル画像の前記分解は、ラプラスピラミッド法(Laplace pyramid method)によって行われる、ことを特徴とする請求項1に記載のデジタル画像補正方法。
【請求項3】
元のデジタル画像の前記分解は、ウェーブレット変換法(Wavelet transform method)によって行われる、ことを特徴とする請求項1に記載のデジタル画像補正方法。
【請求項4】
前記信号対雑音比は、前記近似画像における信号の最大および最小値の差と、前記詳細画像における雑音の値との比として、決定される、ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のデジタル画像補正方法。
【請求項5】
詳細画像におけるエッジアーティファクトの補正は、シグマ関数によって行われ、
前記シグマ関数のパラメータは、詳細画像の最小および最大値に応じて、および、周波数特性補正係数の計算のために決定された、デジタル撮像装置の変調転送関数の値に応じて、決定される、
ことを特徴とする請求項4に記載のデジタル画像補正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−518858(P2012−518858A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519496(P2012−519496)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/RU2010/000612
【国際公開番号】WO2011/155867
【国際公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(511146853)
【氏名又は名称原語表記】ZAKRYTOE AKCIONERNOE OBSHCHESTVO IMPUL’S
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/RU2010/000612
【国際公開番号】WO2011/155867
【国際公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(511146853)
【氏名又は名称原語表記】ZAKRYTOE AKCIONERNOE OBSHCHESTVO IMPUL’S
【Fターム(参考)】
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