説明

デジタル衛星放送受信チューナ及びそれを有する衛星放送受信機

【課題】オートサーチの時間が短縮されたデジタル衛星放送受信チューナを提供する。
【解決手段】衛星放送受信機5の初期設置時に実行される、衛星毎の受信可能チャンネルの検証において、PLL9の周波数は固定のまま、QPSK復調IC15の周波数引き込み範囲を、通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲となるように設定し、上記通常使用時より広い周波数引き込み範囲内で、QPSK復調IC15の周波数オフセットを設定する機能により、周波数ステップFstep’でオフセットをシフトしながら、受信周波数範囲全体について信号サーチを行う機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル衛星放送受信チューナ及びそれを有する衛星放送受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8に従来のデジタル衛星放送システム101のブロック図を示す。衛星からの信号102をDISHアンテナ103で受信し、LNB(Low Noise Block Converter)104で周波数変換される。周波数変換後の信号は、衛星放送受信機105に入力される。衛星放送受信機105は、例えばセットトップボックス(STB:Set Top Box)である。衛星放送受信機105に入力されるRF信号106は、チューナ部107へ入力され、チューナ部107が有するAMP108により信号レベルを調整される。信号レベルを調整後のRF信号は、ローカル周波数F_loの信号を出力するPLL109、周波数F_loの信号の位相を90°シフトする90度位相器(90deg shifter)110、並びに信号レベルを調整後のRF信号と位相を90°シフトされた周波数F_loの信号とを混合するミキサ111及びミキサ112によりベースバンド信号に変換される。上記ベースバンド信号は、LPF113及びLPF114により帯域外の不必要な信号を除去された後、QPSK復調IC115が有するQPSK復調部116に入力される。QPSK復調IC115には、振動子127が接続され、振動子127によりQPSK復調IC115に基準周波数が提供される。振動子127には、通常水晶振動子が用いられる。
【0003】
希望信号の選局は、通常、バックエンド・デコーダ部117が有するMPEG復調IC118に搭載されるCPU119が、QPSK復調IC115を制御し、ユーザが指定した選局情報を元に、QPSK復調部116経由で、PLL109にPLL制御信号120を送信することにより、選局周波数情報を設定することで行われる。LPF113及びLPF114から出力され、QPSK復調部116に入力された、ベースバンド信号(I信号)121及びベースバンド信号(Q信号)122は、バックエンド・デコーダ部117からのQPSK復調部制御信号123により、デジタル復調が行われ、TS(トランスポートストリーム)信号124として出力される。TS信号124は、MPEG復調IC118により、映像/音声信号125に復調される。
【0004】
信号を受信する場合、受信される信号条件に応じて、チューナ部107及びQPSK復調部116を制御する必要がある。信号の受信は、選局周波数の設定と、QPSK復調部116での信号サーチとによって行われる。チューナ部107及びQPSK復調部116の制御は、バックエンド・デコーダ部117に搭載されるCPU119により行われ、制御プログラムは、予めMPEG復調IC118の外部に設けられたメモリ126等に記憶されているものを使用する。
【0005】
図9に、チューナに入力されるRF信号の概略図を示す。横軸を周波数として、チューナが受信する信号の周波数の範囲950MHz〜2150MHzに、QPSK変調された信号TP(トランスポンダ)が、衛星毎に決められた周波数テーブルに従って存在する。仕様上、各TPのシンボルレートは、1Msps〜45Mspsの範囲の値を取りうることになる。
【0006】
衛星放送における信号受信において、受信地域毎に、地理的要因等から信号状況が異なることから、同じ衛星からの信号においても、受信できるTP信号の数が異なってくる場合がある。このため、デジタル衛星放送システムが有するアンテナ及びチューナの初期設置時において、衛星毎に受信可能チャンネルの可否の検証、即ちオートサーチを行う必要がある。視聴時は、このオートサーチの情報を元にチャンネル選択を行うことになる。
【0007】
上記オートサーチにおいて、図10に示すように、まず、選局周波数を受信周波数範囲の下端Fmin(950MHz)に設定した後、QPSK復調部116が設定された選局周波数を中心に信号サーチを行う。QPSK復調部116は、上記信号サーチにより、予め設定されたQPSK復調の周波数引き込み範囲(±Fqpsk/2)内に存在する、中心周波数及びシンボルレートが定められているQPSK信号を再生することで復調を行う。
【0008】
QPSK復調の周波数引き込み範囲は、通常±5MHz程度に設定されている。これは、衛星からの信号(C-Band :4G-8GHz/Ku-band:12G-18GHz)を受信するDISHアンテナ103に取り付けられたLNB104によって、周波数がチューナ受信帯域(950MHz〜2150MHz)にダウンコンバートされるが、ダウンコンバートの際に使用されるLNB104のローカル発振周波数F_lnb_loが、屋外の温度変動等によりドリフトすることにより、コンバート後のチューナ入力周波数にオフセットが生じる。このオフセット周波数の想定量から、QPSK復調の周波数引き込み範囲を±5MHz程度としている。
【0009】
QPSK復調部116の機能としての引き込み能力としては、通常、上記周波数引き込み範囲よりも広い範囲が設定可能である。たとえば、現行チューナとして搭載されているQPSK復調IC115が有するQPSK復調部116の周波数引き込み範囲は、仕様上、±Fmclk/2=100MHz、即ちFmclk=100MHzとなっており、±50MHzの周波数引き込み範囲があることになる。
【0010】
しかし、実際の信号サーチにおいて、この周波数引き込み範囲を広く設定しすぎると、隣接したTP信号を誤って引き込んでしまう弊害が想定される。
【0011】
また、実際に広い周波数引き込み範囲を設定したとしても、特に低シンボルレートの信号を受信する場合、コンバート後のチューナ入力周波数に生じるオフセットが大きすぎる場合、上記低シンボルレートの信号を正しくロックできず、予め周波数引き込み範囲を制限したほうが、確実にロックすることができる。
【0012】
以上のように、QPSK復調における周波数引き込み範囲としては、QPSK復調部116が実際に持つ周波数引き込み範囲能力よりも狭い値が設定され、QPSK復調の周波数引き込み範囲内に信号が存在する場合、QPSK復調部での信号サーチにより、受信信号の復調動作を行うことになる。
【0013】
上記オートサーチ動作は、チューナが受信する信号の周波数の範囲950MHz〜2150MHzについて、受信信号をロックできるか否かの判定、即ち上述した選局周波数をFminに設定後の信号サーチを、選局周波数を特定の周波数ステップFstepでシフトしながら行うことで実行される。例えば、図10において、周波数範囲RANGE101に含まれる周波数F101を選局後、RANGE101の範囲をQPSK復調の周波数引き込み範囲として信号サーチを行う。このとき、周波数範囲RANGE101内に、信号TP101の中心周波数が存在しているので、信号TP101をロックすることになり、信号TP101についての番組情報等を読み取り、別途メモリに蓄積する。
【0014】
次に、周波数範囲RANGE102について信号サーチを行うために、選局周波数を周波数ステップFstepだけシフトさせ、周波数F102を選局する。そして、上記と同様、再選局した選局周波数F102を中心に、再度周波数範囲RANGE102内の信号をサーチすることになる。この時、周波数範囲RANGE102内には信号は存在しないので、次の周波数F103を選局し、周波数範囲RANGE103について信号サーチを行うことになる。このように選局及び信号サーチを繰り返しながら、受信信号周波数範囲の上端Fmax(2150MHz)まで信号サーチ、即ちスイープを行う。
【0015】
従来のデジタル衛星放送システム101と同様に、チャンネルあるいは放送のサーチを行うものとして、特許文献1では、全チャンネルを自動的にサーチすることによりオートプリセットが行なわれ、全チャネルのオートプリセット動作速度の向上が図られた選局装置が開示されている。また、特許文献2では、チャンネルサーチ時間を短縮できる受信装置が開示されている。さらに、特許文献3では、受信可能な放送のサーチを確実に行うと共に所要時間を短縮したディジタル音声放送受信機が開示されている。
【特許文献1】特開平6−85616号公報(平成6年3月25日公開)
【特許文献2】特開平10−145188号公報(平成10年5月29日公開)
【特許文献3】特開平10−313285号公報(平成10年11月24日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記構成において、従来のデジタル衛星放送システム101は、受信周波数範囲において、規定の周波数ステップFstep毎に信号サーチを行うが、周波数ステップ毎に選局した後、選局PLLのループを安定させるためのウェイト時間が必要になる。上記ウェイト時間は、通常100ms程度の値を設定している。
【0017】
例えば、チューナが受信する信号の周波数の範囲950MHz〜2150MHzを、Fstep=2MHzで信号サーチを行う場合を考えると、(2150−950)/2*100=60000〔ms〕=60秒となり、合計すると、上記ウェイト時間として1分程度費やしていることになる。通常、オートサーチに要する時間は5分程度であり、上記ウェイト時間が1分程度の場合、オートサーチにおけるウェイト時間の割合は、約20%となる。従って、ウェイト時間が、オートサーチにおける他の動作に要する時間と比較して長いものとなるので、従来のデジタル衛星放送システム101では、オートサーチに要する時間が長くなるという問題点を有している。
【0018】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、衛星放送受信機において、オートサーチの時間が短縮されたデジタル衛星放送受信チューナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の衛星放送受信チューナは、上記課題を解決するために、ベースバンド信号をデジタル復調するQPSK復調ICと、衛星放送受信機の初期設置時に、衛星毎の受信可能チャンネルの検証であるオートサーチを実行するオートサーチ実行手段とを備えた衛星放送受信チューナにおいて、上記オートサーチ実行手段は、選局PLLの周波数は固定のまま、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲を、通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲となるように設定する周波数引き込み範囲設定手段と、上記通常使用時より広い周波数引き込み範囲内で、上記QPSK復調ICの信号サーチ開始周波数を設定する信号サーチ開始周波数設定手段と、特定の周波数ステップで上記信号サーチ開始周波数をシフトしながら、信号サーチを行う信号サーチ手段とを有することを特徴とする。
【0020】
上記発明によれば、上記QPSK復調ICは、通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲、及び信号サーチ開始周波数のオフセットを設定する機能を有している。
【0021】
受信周波数範囲をサーチするにあたって、上記QPSK復調ICの内部で、信号サーチ開始周波数のオフセットを設定する機能を利用して、このオフセット値を特定の周波数ステップでシフトさせる。
【0022】
上記通常使用時よりも広い引き込み範囲内において、通常、引き込み範囲の中心からスタートし、予め設定された周波数範囲について信号をサーチするが、上記QPSK復調ICは、信号サーチ開始周波数を任意に設定することが可能である。この機能及び上記通常使用時よりも広い引き込み範囲を最大限利用し、この引き込み範囲全域を、信号サーチ開始周波数を特定ステップでシフトさせながら信号サーチを行う。
【0023】
このように、上記発明によれば、上記選局PLLの周波数は固定のまま、上記通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲を主に利用して信号サーチを行っているので、上記選局PLLの選局回数を減らすことが可能となり、上記選局PLLの周波数の固定時に必要なウェイト時間が短縮される。従って、オートサーチ時間を短縮することが出来る。
【0024】
上記衛星放送受信チューナでは、前記オートサーチ実行手段は、上記選局PLLの周波数を、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲毎にシフトさせることで、受信周波数範囲全体について信号サーチを行ってもよい。
【0025】
これにより、受信周波数全域について信号サーチを行う場合、まず、上記通常使用時よりも広い引き込み範囲で信号サーチを行い、上記より広い引き込み範囲の信号サーチ終了後に、選局周波数のシフトを行う。選局周波数のシフトを行う周波数ステップは、上記より広い引き込み範囲をオフセット周波数分だけシフトすればよいことになる。
【0026】
以上のように、オートサーチにおいて、受信周波数範囲を信号サーチする場合、実際の選局周波数のシフトと、上記QPSK復調ICのオフセット設定機能による信号サーチ開始周波数のシフトとを組み合わせて利用することで、選局回数を減らすことが出来る。
【0027】
従って、選局回数を減らすことにより、選局時のウェイト時間を短縮させることが出来るので、オートサーチ時間を短縮することが出来る。
【0028】
上記衛星放送受信チューナでは、上記周波数引き込み範囲設定手段は、上記選局PLLの周波数のシフトによる周波数シフト範囲を、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲よりも狭く設定し、上記オートサーチ実行手段は、上記周波数シフト範囲と上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲との間に、最大受信帯域分を重複する領域を持たせる領域重複手段を有してもよい。
【0029】
これにより、領域毎に信号サーチを行う信号帯域を分担することで、複数回、狭い帯域の信号を確認することを避けることが出来、効率良く信号サーチを行うことができる。
【0030】
上記衛星放送受信チューナでは、上記オートサーチ実行手段は、上記QPSK復調部で受信する信号帯域幅の範囲を任意に設定する信号帯域幅設定手段を有してもよい。
【0031】
これにより、上記重複する領域におけるサーチにおいて、それぞれの領域におけるサーチが、同じ信号条件とならなくなる。領域毎に信号サーチを行う信号帯域を分担することで、複数回、狭い帯域の信号を確認することを避けることが出来、効率良く信号サーチを行うことが出来る。
【0032】
上記衛星放送受信チューナでは、上記オートサーチ実行手段は、チューナRF部に用意されている帯域フィルタの帯域幅を上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲よりも広く設定する帯域フィルタ帯域幅設定手段を有し、上記オートサーチ実行手段は、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲を広げた状態でオートサーチを実施してもよい。
【0033】
これにより、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲を最大限利用出来る、効率的な信号サーチが可能になる。
【0034】
上記衛星放送受信チューナでは、上記QPSK復調ICは、上記いずれかの各手段を有してもよい。
【0035】
これにより、効率良く信号サーチを行うことが出来、選局回数を減らし、選局時のウェイト時間を短縮させることが出来るので、オートサーチ時間を短縮することが出来る。
【0036】
上記衛星放送受信チューナでは、上記QSKP復調ICから出力されたデジタル復調信号から記録信号を復調するMPEG復調ICを備え、前記MPEG復調ICは、上記いずれかの各手段を有してもよい。
【0037】
これにより、オートサーチを行う手段を有するQPSK復調ICと、上記MPEG復調ICとを一体化することが出来、効率的な処理及びICの小型化が可能になる。
【0038】
本発明の衛星放送受信機は、上記のいずれかの衛星放送受信チューナを搭載しているので、オートサーチの時間を短縮出来る。
【発明の効果】
【0039】
本発明のデジタル衛星放送受信チューナは、以上のように、上記オートサーチ実行手段によって実行されるオートサーチ時に、選局PLLの周波数は固定のまま、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲を、通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲となるように設定する周波数引き込み範囲設定手段と、上記オートサーチ時に、上記通常使用時より広い周波数引き込み範囲内で、上記QPSK復調ICの信号サーチ開始周波数を設定する信号サーチ開始周波数設定手段と、上記オートサーチ時に、特定の周波数ステップで上記信号サーチ開始周波数をシフトしながら、信号サーチを行う信号サーチ手段とを有するものである。
【0040】
それゆえ、オートサーチの時間が短縮されたデジタル衛星放送受信チューナを提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の一実施形態について図1〜図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0042】
図1に本発明に係るデジタル衛星放送システム1のブロック図を示す。衛星からの信号2をDISHアンテナ3で受信し、LNB4で周波数変換される。周波数変換後の信号は、衛星放送受信機5に入力される。衛星放送受信機5は、例えばセットトップボックス(STB:Set Top Box)である。衛星放送受信機5に入力されるRF信号6は、チューナ部7へ入力され、チューナ部7が有するAMP8により信号レベルを調整される。信号レベルを調整後のRF信号は、ローカル周波数F_loの信号を出力するPLL9、周波数F_loの信号の位相を90°シフトする90度位相器10、並びに信号レベルを調整後のRF信号と位相を90°シフトされた周波数F_loの信号とを混合するミキサ11及びミキサ12によりベースバンド信号に変換される。上記ベースバンド信号は、LPF(ローパスフィルタ)13及びLPF14により帯域外の不必要な信号を除去された後、QPSK復調IC15が有するQPSK復調部16に入力される。QPSK復調IC15には、振動子27が接続され、振動子27によりQPSK復調IC15に基準周波数が提供される。振動子27には、通常水晶振動子が用いられる。
【0043】
希望信号の選局は、通常、バックエンド・デコーダ部17が有するMPEG復調IC18に搭載されるCPU19が、QPSK復調IC15を制御し、ユーザが指定した選局情報を元に、QPSK復調部16経由で、PLL9にPLL制御信号20を送信することにより、選局周波数情報を設定することで行われる。LPF13及びLPF14から出力され、QPSK復調部16に入力された、ベースバンド信号(I信号)21及びベースバンド信号(Q信号)22は、バックエンド・デコーダ部17からのQPSK復調部制御信号23により、デジタル復調が行われ、TS(トランスポートストリーム)信号24として出力される。TS信号24は、MPEG復調IC18により、映像/音声信号25に復調される。
【0044】
図2に、QPSK復調IC15の内部構成を示すブロック図を示す。CPU19から信号線33を介してQPSK復調部制御信号23が伝送され、QPSK復調IC15内部のスレーブICマネージャ34及びクロックマネジメント35を介して、PLL9にPLL制御信号20が伝送される。信号線33は、信号線SCL及び信号線SDAを有している。
【0045】
LPF13及びLPF14から出力されたベースバンド信号(I信号)21及びベースバンド信号(Q信号)22は、QPSK復調部36にて復調処理が施された後、誤り訂正部37及びTS信号マネージャ38を介して、TS信号24としてQPSK復調IC15の外部に出力される。誤り訂正部37では、リードソロモン符号を用いた復号化処理やデインターリーブ処理等が施される。
【0046】
信号を受信する場合、受信される信号条件に応じて、チューナ部7及びQPSK復調部15を制御する必要がある。信号の受信は、選局周波数の設定と、QPSK復調部15での信号サーチとによって行われる。チューナ部7及びQPSK復調部15の制御は、バックエンド・デコーダ部17に搭載されるCPU19により行われ、制御プログラムは、予めMPEG復調IC18の外部に設けられたメモリ26等に記憶されているものを使用する。
【0047】
図3に、チューナに入力されるRF信号の概略図を示す。横軸を周波数として、チューナが受信する信号の周波数の範囲950MHz〜2150MHzに、QPSK変調された信号TP(トランスポンダ)が、衛星毎に決められた周波数テーブルに従って存在する。仕様上、各TPのシンボルレートは、1Msps〜45Mspsの範囲の値を取りうることになる。
【0048】
衛星放送における信号受信において、受信地域毎に、地理的要因等から信号状況が異なることから、同じ衛星からの信号においても、受信できるTP信号の数が異なってくる場合がある。このため、デジタル衛星放送システムが有するアンテナ及びチューナの初期設置時において、衛星毎に受信可能チャンネルの可否の検証、即ちオートサーチを行う必要がある。視聴時は、このオートサーチの情報を元にチャンネル選択を行うことになる。
【0049】
QPSK復調の周波数引き込み範囲は、通常±5MHz程度に設定されている。これは、衛星からの信号(C-Band :4G-8GHz/Ku-band:12G-18GHz)を受信するDISHアンテナ3に取り付けられたLNB4によって、周波数がチューナ受信帯域(950MHz〜2150MHz)にダウンコンバートされるが、ダウンコンバートの際に使用されるLNB4のローカル発振周波数F_lnb_loが、屋外の温度変動等によりドリフトすることにより、コンバート後のチューナ入力周波数にオフセットが生じる。このオフセット周波数の想定量から、QPSK復調の周波数引き込み範囲を±5MHz程度としている。
【0050】
QPSK復調部16の機能としての引き込み能力としては、通常、上記周波数引き込み範囲よりも広い範囲が設定可能である。たとえば、現行チューナとして搭載されているQPSK復調IC15が有するQPSK復調部116の周波数引き込み範囲は、仕様上、±Fmclk/2=100MHz、即ちFmclk=100MHzとなっており、±50MHzの周波数引き込み範囲があることになる。
【0051】
図4を参照して、デジタル衛星放送システム1がオートサーチを行う方法を示す。
【0052】
図4におけるRF信号周波数の概略図において、受信周波数範囲の下端Fmin=950MHz、受信周波数範囲の上端Fmax=2150MHz、QPSK復調部の引き込み範囲を±Fqpsk_max/2とする。また、950MHz〜2150MHzのチューナが受信する信号の周波数の範囲内において信号サーチを行うにあたって、QPSK復調部15において、信号サーチ開始周波数をシフトさせながら実施するが、この信号サーチ開始周波数のシフトは周波数ステップFstep’ずつ行われるものとする。選局周波数、即ち各QPSK引き込み周波数のセンタをF〔N〕、各QPSK引き込み周波数の下端をFmin〔N〕、及び各QPSK引き込み周波数の上端をFmax〔N〕(N=0,1,・・・)とする。
【0053】
上述した信号サーチを行う具体的な方法を示す。QPSK復調を行うQPSK復調IC15には、レジスタが用意されていて、指定の信号サーチ開始周波数に相当するレジスタ値を計算式により求め、このレジスタ値をQPSK復調IC15のレジスタに書き込むことで上記信号サーチが実行される。通常、上記レジスタに上記レジスタ値を書き込むことで信号サーチが開始される。また、信号サーチ開始周波数を中心とした信号サーチを行う場合の周波数範囲についても、別途上記レジスタを設定することにより規定することができる。
【0054】
例えば、最初に受信周波数範囲の下端Fminに対応する周波数範囲について信号サーチする場合、この信号サーチを行うために、選局周波数F〔0〕=Fmin+Frange_max/2に対して選局を行う。次に、周波数引き込み範囲RANGE_F1内において、信号サーチ開始周波数を中心周波数F1に設定する。これに伴い、信号サーチ範囲RANGE1を、中心周波数F1を中心として±F_qpsk/2の範囲に設定する。
【0055】
信号サーチ範囲RANGE1における信号サーチが終了後、信号サーチ開始周波数を、中心周波数F1から+Fstep’だけシフトした中心周波数F2として、同様に±F_qpsk/2の範囲において信号サーチを行う。このように信号サーチを繰り返し、信号サーチ開始周波数を周波数ステップFstep’ずつシフトし、周波数引き込み範囲RANGE_Fmまで信号サーチを行う。この時点で、信号サーチ範囲が、周波数引き込み範囲の上端Fmax〔0〕に達することとなり、周波数引き込み範囲の下端Fmin〔0〕から周波数引き込み範囲の上端Fmax〔0〕までの周波数引き込み範囲(センタ周波数F〔0〕)についての信号サーチが終了する。
【0056】
次に、隣の周波数引き込み範囲について信号サーチを行うために、選局周波数F〔1〕の選局を行う。選局周波数F〔1〕は、周波数引き込み範囲を加味して、F〔1〕=F〔0〕+Fstep’とする。ここで、周波数ステップFstep’=Frange_maxである。
【0057】
上記隣の周波数範囲において、周波数F〔0〕での信号サーチと同様、信号サーチ開始周波数を中心周波数F1〜中心周波数Fmまで周波数ステップFstep’ずつシフトさせながら、周波数引き込み範囲RANGE_F1から周波数引き込み範囲RANGE_Fmまで信号サーチを行う。
【0058】
以上を繰り返し、周波数引き込み範囲が、受信周波数範囲の上限Fmax=2150MHzに達する選局周波数F〔N〕=Fmin+Frange_max*Nに対応信号サーチ範囲まで信号サーチを行うことで、受信周波数範囲の下端Fmin=950から受信周波数範囲の上端Fmax=2150MHzまでの受信周波数範囲について信号サーチを実行することができる。
【0059】
通常、チューナ部7において、QPSK復調部15に入力される、ベースバンド信号(I信号)21及びベースバンド信号(Q信号)22は、チューナフロントエンド部28において、LPF13及びLPF14により帯域制限をかけられ、余分な高周波成分が排除される。LPF13及びLPF14の帯域幅は通常、受信信号帯域幅に応じて調整が行えるよう、可変となっている。しかし、オートサーチが実行されるに当たっては、受信信号条件(信号周波数・帯域幅)は未知の状態であるため、LPF13及びLPF14の設定は最も広く設定しておく必要がある。
【0060】
LPF13及びLPF14の帯域幅について、信号帯域の仕様が1Msps〜45Mspsであることから、LPF13及びLPF14は、45Msps以上の信号を受ける必要が無い。このため、通常、チューナフロントエンド部28の仕様としては、この信号を受信するにあたって必要なLPFバンド幅BW_MAX=45Msps×α程度が最大帯域幅となっている。ここで、αはロールオフファクタ(roll-off factor)であり、α=1.35とする。
【0061】
このため、図5に示すように、QPSK復調IC15が±50MHz程度の周波数引き込み範囲の能力を有しているにもかかわらず、実際には、チューナフロントエンド部28のLPF13及びLPF14による制約のため、±BW_MAX/2(≒±30MHz程度)を超える部分は、サーチできない領域となる。
【0062】
この影響を避けるため、LPF13及びLPF14の帯域を無限大に設定するモードを用意しておくことで、QPSK復調IC15の周波数引き込み範囲を最大限利用出来る、効率的な信号サーチが可能になる。
【0063】
通常、チューナフロントエンド部28とQPSK復調部15とは別々のブロック、もしくは別々のICとして構成され、QPSK復調部15から、チューナフロントエンド部28へ、オートサーチ時と通常サーチ時とでLPF13及びLPF14の帯域のモードを切り替える命令を送信する必要がある。フロントエンド部をQPSK復調に取り込み一体化することで、一括した処理で対応が可能となる。
【0064】
実際にチューナフロントエンド部28について、LPF13及びLPF14がある場合を想定する。
【0065】
図6に示すように、チューナフロントエンド部28の受信帯域が設定されている状態を考えると、例えば、中心周波数F1に存在する信号TP1を受信する場合、信号TP1は全て受信帯域内に入っているので、問題なく受信できることが可能になる。
【0066】
信号TP2を受信する場合、信号の帯域自体は信号TP1と同等であるが、存在する周波数がF2となっているため、受信帯域外に信号成分がはみ出してしまっている。このため、実際の受信にあたっては、性能劣化が引き起こされる。
【0067】
信号TP2’については、中心周波数F2に存在するが、信号帯域が狭いため、受信性能劣化は引き起こされない。
【0068】
以上のように、チューナフロントエンド部28にLPF13及びLPF14がある場合、受信帯域のエッジの部分近くに存在する信号は、信号成分が受信帯域をはみ出してしまうことにより受信性能が劣化する弊害が想定される。信号サーチにおいては、受信範囲の周辺部に近いほど、受信できる信号帯域幅を制限する必要がある。
【0069】
従って、受信帯域が制限された周波数引き込み周波数範囲内における信号サーチでは、信号サーチする周波数の位置に応じて、受信可能な信号帯域幅の最大値を変化させる機能を設けることで対応する。受信可能な信号帯域幅を変化させる場合、QPSK復調部15にて設定するものとする。
【0070】
この場合、上記受信範囲の周辺部でサーチ出来なかった広い帯域の信号成分に対しては、受信帯域を次のエリアにシフトさせるに当たって、信号サーチ範囲を重なるように設定することで対応するものとする。
【0071】
上記信号サーチ範囲が重なっている部分の信号サーチについて、図7に示す。図7のチューナフロントエンド部28の受信帯域である受信帯域29の領域において、信号TP1_1の信号帯域を規定の信号帯域の最大値bw_MAX=45Mspsとすると、信号成分は全て受信帯域29の内側に入っているので、信号TP1_1の中心周波数F1_1においては、規定の信号帯域、即ち1Msps〜45Mspsの信号が受信可能であることが分かる。
【0072】
信号帯域がbw_MAXである信号が、受信帯域29において、問題なく受信できる周波数は、信号帯域の右端が、受信帯域の右端と一致する、信号TP1_2の位置が限界となる。信号TP1_2に関しては、信号TP1_2の信号帯域bw1_2=45Mspsの右端と、受信帯域29の右端とが一致している。中心周波数F1_2より右側の領域に中心周波数が存在する場合、この領域の信号サーチを行う場合において、帯域の広い信号は、信号成分が受信帯域29からはみ出ることとなるため、受信性能が劣化することになる。このため、中心周波数F1_2より右側の領域31は、帯域の広い信号の受信が制約される領域となる。従って、この領域の信号サーチを行う場合、図7において、符号TP1_3で示す信号のように、その中心周波数F1_3と受信帯域29の右端との間隔bw1_3/2を考慮して、間隔bw1_3/2より狭い信号帯域の信号のみを受信できることを前提に信号サーチする必要がある。
【0073】
受信帯域29において、該帯域内の右側の部分で受信帯域が制約されていたため、サーチ出来なかった広い帯域の信号については、次に信号サーチを行う受信帯域、即ちチューナフロントエンド部28の受信帯域である受信帯域30でサーチする。受信帯域30では、既に狭い帯域の信号サーチは終了しているので、QPSK復調部15にて、特定の帯域の信号以上をサーチさせる設定にするものとする。
【0074】
受信帯域29の中心周波数F1から、受信帯域30の中心周波数F2へ、選局周波数をΔFだけシフトさせる。この場合、ΔFは次式で表すことが出来る。
【0075】
ΔF=BW_MAX−bw_MAX
ここで、BW_MAXはチューナ受信帯域であり、bw_MAXは信号帯域の最大値である。本実施形態ではbw_MAX=45Mspsである。
【0076】
受信帯域30において、受信帯域29で受信帯域が制約され始める中心周波数F1_2に相当する中心周波数F2_1を中心とする領域をサーチする。しかし中心周波数F2_1では、受信帯域29において信号帯域bw_max以外の信号帯域は信号サーチが終了しているので、信号帯域bw_maxの信号をサーチするだけでよい。同様に、受信帯域が重なる部分においては、狭い信号帯域の信号のサーチは済んでおり、周波数が高い帯域に進むほど、信号サーチ済みの帯域が狭くなっている。信号サーチが済んでいない帯域については、領域32で信号サーチを行うことで補うものとする。
【0077】
つまり、領域32において、中心周波数F2_2、即ち、領域31で、中心周波数F1_3に相当する周波数において信号サーチを行う場合、既に領域31において、信号帯域bw1_3より狭い帯域の信号のサーチは済んでいるので、領域32では、信号帯域bw1_3より広い帯域の信号のみをサーチするだけでよい。
【0078】
上記を繰り返し、領域が重なっている部分のサーチが終了後、信号帯域に制約がない領域においては、通常の信号帯域1Msps〜45Mspsで信号サーチを行う。
【0079】
領域が重なっている部分で、信号帯域を制限して信号サーチをしているが、通常、狭い帯域の信号をサーチする場合、広い帯域の信号をサーチする場合より信号サーチに時間がかかる。このため、領域毎に信号サーチを行う信号帯域を分担することで、複数回、狭い帯域の信号を確認することを避けることが出来、効率良く信号サーチを行うことができる。従って、オートサーチの時間が短縮される。
【0080】
以上の処理は、通常、バックエンド・デコーダ部17が有するCPU19に組み込まれたソフトウェアによって行われるが、オートサーチを行う機能をQPSK復調IC15自体に組み込むことで、CPU19の負荷を減らすことができる。
【0081】
また、オートサーチを行う機能を有するQPSK復調IC15と、MPEG復調IC18とを一体化することで、効率的な処理及びICの小型化が可能になる。
【0082】
上述した機能を有するデジタル衛星放送受信チューナを搭載することで、オートサーチに要する時間が従来と比較して短い衛星放送受信機を提供することが可能になる。
【0083】
また、例えば、受信周波数範囲の下端Fmin=950、受信周波数範囲の上端Fmax=2150MHz、周波数引き込み範囲Frange_max=±50MHz(=100MHz)の場合を想定すると、周波数選局に伴うウェイト時間の合計は、下記となる。
【0084】
(Fmax−Fmin)/Frange_max*100〔ms〕
=(2150−950〔MHz〕)/50〔MHz〕*100〔ms〕
=2400〔ms〕=2.4秒
となり、従来例におけるウェイト時間である60秒と比較して大きく短縮されることがわかる。
【0085】
このように、衛星放送受信機5は、PLL9の周波数は固定のまま、QPSK復調IC15の通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲を主に利用して信号サーチを行っているので、PLL9の選局回数を減らすことが可能となり、PLL9の周波数の固定時に必要なウェイト時間が短縮される。従って、オートサーチ時間を短縮することが出来る。
【0086】
〔実施形態の総括〕
本発明の実施形態に係る衛星放送受信チューナは、ベースバンド信号をデジタル復調するQPSK復調IC15と、衛星放送受信機5の初期設置時に、衛星毎の受信可能チャンネルの検証であるオートサーチを実行するオートサーチ実行手段とを備えた衛星放送受信チューナにおいて、上記オートサーチ実行手段は、PLL9の周波数は固定のまま、QPSK復調IC15の周波数引き込み範囲を、通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲となるように設定する周波数引き込み範囲設定手段と、上記通常使用時より広い周波数引き込み範囲内で、QPSK復調IC15の信号サーチ開始周波数を設定する信号サーチ開始周波数設定手段と、特定の周波数ステップで上記信号サーチ開始周波数をシフトしながら、信号サーチを行う信号サーチ手段とを有することを特徴とする。
【0087】
上記発明によれば、QPSK復調IC15は、通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲、及び信号サーチ開始周波数のオフセットを設定する機能を有している。
【0088】
受信周波数範囲をサーチするにあたって、選局周波数をシフトすることで行うのではなく、QPSK復調IC15の内部で、信号サーチ開始周波数のオフセットを設定する機能を利用して、このオフセット値を周波数ステップFstep’でシフトさせる。
【0089】
上記通常使用時よりも広い引き込み範囲内において、通常、引き込み範囲の中心からスタートし、予め設定された周波数範囲について信号をサーチするが、QPSK復調IC15は、信号サーチ開始周波数を任意に設定することが可能である。この機能及び上記通常使用時よりも広い引き込み範囲を最大限利用し、この引き込み範囲全域を、信号サーチ開始周波数を特定ステップでシフトさせながら信号サーチを行う。
【0090】
このように、上記発明によれば、PLL9の周波数は固定のまま、上記通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲を主に利用して信号サーチを行っているので、PLL9の選局回数を減らすことが可能となり、PLL9の周波数の固定時に必要なウェイト時間が短縮される。従って、オートサーチ時間を短縮することが出来る。
【0091】
上記衛星放送受信チューナでは、前記オートサーチ実行手段は、PLL9の周波数を、QPSK復調IC15の周波数引き込み範囲毎にシフトさせることで、受信周波数範囲全体について信号サーチを行ってもよい。
【0092】
これにより、受信周波数全域について信号サーチを行う場合、まず、上記通常使用時よりも広い引き込み範囲で信号サーチを行い、上記より広い引き込み範囲の信号サーチ終了後に、選局周波数のシフトを行う。選局周波数のシフトを行う周波数ステップFstep’は、上記より広い引き込み範囲をオフセット周波数分だけシフトすればよいことになる。
【0093】
以上のように、オートサーチにおいて、受信周波数範囲を信号サーチする場合、実際の選局周波数のシフトと、QPSK復調IC15のオフセット設定機能による信号サーチ開始周波数のシフトとを組み合わせて利用することで、選局回数を減らすことが出来る。
【0094】
従って、選局回数を減らすことにより、選局時のウェイト時間を短縮させることが出来るので、オートサーチ時間を短縮することが出来る。
【0095】
上記衛星放送受信チューナでは、上記周波数引き込み範囲設定手段は、PLL9の周波数のシフトによる周波数シフト範囲を、QPSK復調IC15の周波数引き込み範囲よりも狭く設定し、上記オートサーチ実行手段は、上記周波数シフト範囲とQPSK復調IC15の周波数引き込み範囲との間に、最大受信帯域分を重複する領域を持たせる領域重複手段を有してもよい。
【0096】
これにより、領域毎に信号サーチを行う信号帯域を分担することで、複数回、狭い帯域の信号を確認することを避けることが出来、効率良く信号サーチを行うことができる。
【0097】
上記衛星放送受信チューナでは、上記オートサーチ実行手段は、QPSK復調部16で受信する信号帯域幅の範囲を任意に設定する信号帯域幅設定手段を有してもよい。
【0098】
これにより、上記重複する領域におけるサーチにおいて、それぞれの領域におけるサー
チが、同じ信号条件とならなくなる。領域毎に信号サーチを行う信号帯域を分担することで、複数回、狭い帯域の信号を確認することを避けることが出来、効率良く信号サーチを行うことが出来る。
【0099】
上記衛星放送受信チューナでは、上記オートサーチ実行手段は、チューナフロントエンド部28に用意されている帯域フィルタの帯域幅をQPSK復調IC15の周波数引き込み範囲よりも広く設定する帯域フィルタ帯域幅設定手段を有し、上記オートサーチ実行手段は、QPSK復調IC15の周波数引き込み範囲を広げた状態でオートサーチを実施してもよい。
【0100】
これにより、QPSK復調IC15の周波数引き込み範囲を最大限利用出来る、効率的な信号サーチが可能になる。
【0101】
上記衛星放送受信チューナでは、QPSK復調IC15は、上記いずれかの各手段を有してもよい。
【0102】
これにより、効率良く信号サーチを行うことが出来、選局回数を減らし、選局時のウェイト時間を短縮させることが出来るので、オートサーチ時間を短縮することが出来る。
【0103】
上記衛星放送受信チューナでは、QSKP復調IC15から出力されたデジタル復調信号から記録信号を復調するMPEG復調IC18を備え、MPEG復調IC18は、上記いずれかの各手段を有してもよい。
【0104】
これにより、オートサーチを行う手段を有するQPSK復調IC15と、上記MPEG復調IC18とを一体化することが出来、効率的な処理及びICの小型化が可能になる。
【0105】
本発明の衛星放送受信機は、上記のいずれかの衛星放送受信チューナを搭載しているので、オートサーチの時間を短縮出来る。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のデジタル衛星放送受信チューナは、オートサーチの時間を短縮出来るので、デジタル衛星放送システムに好適に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタル衛星放送システムを示すブロック図である。
【図2】QPSK復調ICの内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るデジタル衛星放送システムが有するチューナ部に入力されるRF信号の概略図である。
【図4】RF信号周波数の概略図であり、本発明のデジタル衛星放送システムのオートサーチによりRF信号を受信していることを示す図である。
【図5】チューナフロントエンド部の受信帯域が設定されている状態を示す図である。
【図6】チューナフロントエンド部の受信帯域が設定されている状態を示す図である。
【図7】信号サーチ範囲が重なっている部分の信号サーチを示す図である。
【図8】従来のデジタル衛星放送システムを示すブロック図である。
【図9】従来のデジタル衛星放送システムが有するチューナ部に入力されるRF信号の概略図である。
【図10】従来のデジタル衛星放送システムのオートサーチによりRF信号を受信していることを示す図である。
【符号の説明】
【0108】
1 デジタル衛星放送システム
2 信号
3 DISHアンテナ
4 LNB
5 衛星放送受信機
6 RF信号
7 チューナ部
8 AMP
9 PLL(選局PLL)
10 度位相器
11、12 ミキサ
13、14 LPF
15 QPSK復調IC(オートサーチ実行手段、周波数引き込み範囲設定手段、信号サーチ開始周波数設定手段、信号サーチ手段、オートサーチ実行手段、領域重複手段、信号帯域幅設定手段、帯域フィルタ帯域幅設定手段)
16 QPSK復調部
17 バックエンド・デコーダ部
18 MPEG復調IC
19 CPU
20 PLL制御信号
21、22 ベースバンド信号
23 QPSK復調部制御信号
24 TS信号
25 映像/音声信号
26 メモリ
27 振動子
28 チューナフロントエンド部(チューナRF部)
29、30 受信帯域
31、32 領域
BW LPFバンド幅
F1、F2 中心周波数
Fstep、Fstep’ 周波数ステップ
TP、TP1、TP2、TP2’ 信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド信号をデジタル復調するQPSK復調ICと、
衛星放送受信機の初期設置時に、衛星毎の受信可能チャンネルの検証であるオートサーチを実行するオートサーチ実行手段とを備えた衛星放送受信チューナにおいて、
上記オートサーチ実行手段は、選局PLLの周波数は固定のまま、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲を、通常使用時よりも広い周波数引き込み範囲となるように設定する周波数引き込み範囲設定手段と、
上記通常使用時より広い周波数引き込み範囲内で、上記QPSK復調ICの信号サーチ開始周波数を設定する信号サーチ開始周波数設定手段と、
特定の周波数ステップで上記信号サーチ開始周波数をシフトしながら、信号サーチを行う信号サーチ手段とを有することを特徴とする衛星放送受信チューナ。
【請求項2】
前記オートサーチ実行手段は、上記選局PLLの周波数を、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲毎にシフトさせることで、受信周波数範囲全体について信号サーチを行うことを特徴とする請求項1に記載の衛星放送受信チューナ。
【請求項3】
上記周波数引き込み範囲設定手段は、上記選局PLLの周波数のシフトによる周波数シフト範囲を、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲よりも狭く設定し、
上記オートサーチ実行手段は、上記周波数シフト範囲と上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲との間に、最大受信帯域分を重複する領域を持たせる領域重複手段を有することを特徴とする請求項2に記載の衛星放送受信チューナ。
【請求項4】
上記オートサーチ実行手段は、上記QPSK復調部で受信する信号帯域幅の範囲を任意に設定する信号帯域幅設定手段を有することを特徴とする請求項3に記載の衛星放送受信チューナ。
【請求項5】
上記オートサーチ実行手段は、チューナRF部に用意されている帯域フィルタの帯域幅を上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲よりも広く設定する帯域フィルタ帯域幅設定手段を有し、
上記オートサーチ実行手段は、上記QPSK復調ICの周波数引き込み範囲を広げた状態でオートサーチを実施することを特徴とする請求項1または2に記載の衛星放送受信チューナ。
【請求項6】
上記QPSK復調ICは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の各手段を有することを特徴とする衛星放送受信チューナ。
【請求項7】
上記QSKP復調ICから出力されたデジタル復調信号から記録信号を復調するMPEG復調ICを備え、
前記MPEG復調ICは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の各手段を有することを特徴とする衛星放送受信チューナ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の衛星放送受信チューナを搭載したことを特徴とする衛星放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−105859(P2009−105859A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278138(P2007−278138)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】