説明

デッキクロスメンバの固定構造

【課題】本発明は、ブラケットによるデッキクロスメンバの支持剛性を向上させ、かつ部品点数の増加を抑制することができるデッキクロスメンバの固定構造を提供する。
【解決手段】デッキクロスメンバの固定構造10は、デッキクロスメンバ40と、ブラケット50と、を備える。デッキクロスメンバ40は、車幅方向に延びる。ブラケット50は、フロントピラー30に固定されるとともにデッキクロスメンバ40の車幅方向端部40aが固定される。ブラケット50は、押し出し成形によって形成される面52を備える。面52とデッキクロスメンバ40の端面47とが対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばステアリングシャフトを支持するデッキクロスメンバの車体への固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、一般に、ステアリングシャフトは、車幅方向に互いに向かい合うフロントピラー間に渡されるデッキクロスメンバに支持されている。デッキクロスメンバは、ブラケットを介して、フロントピラーに固定されている。
【0003】
このようなブラケットとして、例えば特許文献1のように、ピラーインナーにブラケットを介してステアリングメンバーの端部を固定するステアリングメンバー支持構造がある。このブラケットは、ステアリングメンバーの支持剛性を向上させるために、ピラーインナーの内側にパッチとブレースを設けてピラーインナーを補強している。
【特許文献1】特開平7−81614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されたブラケットでは、パッチとブレースを設けることでブラケットを支持するピラーの剛性を向上させているが、ブラケットとステアリングメンバーの固定部の支持剛性を向上させるものではない。また、ブラケットの支持剛性を向上させるための部品点数が増加してしまう。
【0005】
本発明の目的は、ブラケットによるデッキクロスメンバの支持剛性を向上させ、かつ部品点数の増加を抑制することができるデッキクロスメンバの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のデッキクロスメンバの固定構造は、車幅方向に延びるデッキクロスメンバと、車体のフロントピラーに固定されるとともに前記デッキクロスメンバの車幅方向端部が固定されるブラケットとを具備し、前記ブラケットは、前記デッキクロスメンバの端部と対向する面と、前記面より突出して互いに向かい合うように一対形成され前記端部が固定されるフランジ部と、を有するとともに、前記一対の端部は、前記フランジ部に対応する平面が一対形成されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ブラケットの面より突出して互いに向かい合うように一対形成されたフランジ部にデッキクロスメンバが固定されることにより、ブラケットとデッキクロスメンバの支持剛性を向上させることができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、ブラケットとは別に形成されて前記ブラケットに固定されると共に前記フロントピラーに当接する固定座部を更に備える。
【0009】
この構成によれば、固定座部の高さを調整することによって、車体のフロントピラーが平面でなくてもブラケットの姿勢を安定して車体の壁部に固定することができる。また、固定座部の高さを調整することによって、車体形状の異なるフロントピラーに対してブラケットを固定することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記フランジ部を、前記車体の前後方向に沿うように配置する。
【0011】
この構成によれば、ブラケットの車体前後方向における長さを小さくすることができ、車体前後方向の長さが小さいフロントピラーに取付けやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブラケットによるデッキクロスメンバの支持剛性を向上させ、かつ部品点数の増加を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るデッキクロスメンバの固定構造を、図1から図8を用いて説明する。本実施形態では、デッキクロスメンバの固定構造10は、例えば自動車20に用いられている。図1は、自動車20の車体21の前部を一部切り欠いて示す概略図である。図1は、デッキクロスメンバの固定構造10を示している。
【0014】
図1に示すように、デッキクロスメンバの固定構造10は、フロントピラー30と、デッキクロスメンバ40と、ブラケット50と、を備えている。
【0015】
フロントピラー30は、車体21の前部において、車幅方向外側に左右1つずつ配置されている。車幅方向右側に配置されるフロントピラー30の構造と車幅方向左側に配置されるフロントピラー30の構造は、互いに車幅方向に対称な構造であってもよい。なお、車幅方向左側に配置されるフロントピラー30は、一部省略されている。
【0016】
フロントピラー30は、アウタパネル31と、インナパネル32と、を備えている。フロントピラー30は、アウタパネル31とインナパネル32とが互いに溶接されることによって、構成されている。アウタパネル31は、インナパネル32に対して車幅方向外側に配置されている。
【0017】
フロントピラー30の剛性を高めるために、インナパネル32は、壁部32aと、閉断面部32bと、を有している。閉断面部32bは、壁部32aに対して車内内側に突出している。閉断面部32bは、車内内側に向かって段状になっている。
【0018】
同様に、アウタパネル31は、壁部31aと、閉断面部31bと、を有している。閉断面部31bは、壁部31aに対して車幅方向外側に突出している。
【0019】
アウタパネル31とインナパネル32とは、壁部32a,31aが互いに溶接されている。そして、閉断面部31bと閉断面部32bとによって閉断面33が形成される。それゆえ、フロントピラー30の断面が閉断面状になるので、フロントピラー30の剛性は、向上する。
【0020】
デッキクロスメンバ40は、車幅方向左側に配置されるフロントピラー30と車幅方向右側に配置されるフロントピラー30とに、後述されるブラケット50を介して、固定されている。
【0021】
デッキクロスメンバ40には、ステアリングシャフト41が支持されている。ステアリングシャフト41には、ステアリングホイール42が取り付けられている。
【0022】
図2は、車幅方向右側に配置されるフロントピラー30とデッキクロスメンバ40との固定構造を分解して示す一部断面図である。なお、車幅方向左側に配置されるフロントピラー30とデッキクロスメンバ40との固定構造は、車幅方向右側に配置されるフロントピラー30とデッキクロスメンバ40との固定構造と同様であってよい。図5は、デッキクロスメンバ40の長手方向を横切る断面図である。図5に示すように、デッキクロスメンバ40の断面形状は、略矩形である。
【0023】
図2と図5とに示すように、デッキクロスメンバ40は、上壁部43と、下壁部44と、前壁部45と、後壁部46と、を有している。なお、図5では、図中上方が車体上方を示し、図中下方が車体下方を示している。図中右側が車体後方を示している。図中左側が車体前方を示している。
【0024】
上壁部43は、デッキクロスメンバ40がブラケット50を介してフロントピラー30に固定された状態のときに、車体21の上方に面する壁部である。下壁部44は、デッキクロスメンバ40がブラケット50を介してフロントピラー30に固定された状態のときに、車体21の下方に面する壁部である。
【0025】
上壁部43の上部表面43aと下壁部44の下部表面44aとは、互いに平行である。上部表面43aと下部表面44aとは、本発明で言う、ブラケットのフランジ部に対応する平面である。
【0026】
前壁部45は、デッキクロスメンバ40がブラケット50を介してフロントピラー30に固定された状態のときに、車体前方に面する壁部である。後壁部46は、デッキクロスメンバ40がブラケット50を介してフロントピラー30に固定された状態のときに、車体後方に面する壁部である。
【0027】
図3は、ブラケット50を示す斜視図である。ブラケット50は、ここでは押し出し成形により成形される例について説明するが、これに限られることはなく、鍛造やダイカストにより成形することもできる。
【0028】
図2と図3とに示すように、ブラケット50は、押し出し成形によって形成される面52と、第1のフランジ部53と、第2のフランジ部54と、第1の固定座部61と、第2の固定座部62と、第3の固定座部63と、を備えている。
【0029】
ブラケット50は押出し成形により形成される。ブラケット50を成型するダイ(図示せず)を変更することによって、面52や第1のフランジ部53、第2のフランジ部54の厚みを必要とされる強度や形状に応じて任意に変更することができる。
【0030】
面52は、ブラケット50において車幅方向内側に向く面であり、上下方向に延びる平面である。面52から第1のフランジ部53と第2のフランジ部54とが突出している。面52は、デッキクロスメンバ40の端面47を覆う大きさを有している。図3は、ブラケット50を第2の面51側から見る斜視図である。第2の面51とは、ブラケット50においてフロントピラー30と向かい合う面である。
【0031】
第1のフランジ部53は、ブラケット50に一体に形成されている。第1のフランジ部53は、面52から車幅方向内側に向かって突出するとともに、押出し成形による押出し方向(車体前後方向)に延びている。
【0032】
第2のフランジ部54は、第1のフランジ部53と同様に形成されており、第1のフランジ部53よりも車体下方に配置されている。
【0033】
図4は、図1に示されるF4−F4線に沿う断面図である。図4は、ブラケット50と第1,2のフランジ部53,54とを、車幅方向に沿って断面している。図4に示すように、第1,2のフランジ部53,54の断面形状は、略矩形である。
【0034】
図5は、図4に示されるF5―F5線に沿う断面図である。図5に示すように、第1のフランジ部53の下面53aは、例えば車体前後方向と車幅方向とによって規定される平面に平行な平面である。第2のフランジ部54の上面54aは、前記下面53aと平行である。
【0035】
図3に示すように、第1〜3の固定座部61,62,63は、第2の面51から車幅方向外側に向かって突出している。図6は、第1〜3の固定座部61,62,63が分解された状態を示す斜視図である。図3と図6とに示すように、第1〜3の固定座部61,62,63は、ブラケット50とは別途に形成された第1〜3の固定座部材71,72,73がブラケット50に固定されることによって、形成されている。
【0036】
第2の面51に第1の固定座部材71が例えば溶接によって固定されることによって、第1の固定座部61が形成される。第1の固定座部材71は、例えば円筒状であって、その内面部に第1の雌ねじ部71aが形成されている。面52には、第1の固定座部材71の内側と連通する第1の貫通孔56が形成されている。
【0037】
図4は、第1の固定座部61を通る断面図である。第2の面51において第1の固定座部材71が配置される位置は、インナパネル32の閉断面部32bのうち車幅方向外側に位置する部位と対向する位置である。第1の固定座部材71は、第2の面51からインナパネル32の閉断面部32bに達する長さを有している。
【0038】
図6に示すように、面51に第2の固定座部材72が例えば溶接によって固定されることによって、第2の固定座部62が形成される。第2の固定座部材72は、例えば円筒状であって、その内面部に第2の雌ねじ部72aが形成されている。面52には、第2の固定座部材72の内側と連通する第2の貫通孔57が形成されている。
【0039】
第2の固定座部62は、第1の固定座部61よりも上方であってかつ車体前方に位置している。図7は、図1に示されるF7−F7線に沿う断面図である。図7は、第2の固定座部62と第3の固定座部63とを通る、フロントピラー30とブラケット50とデッキクロスメンバ40との上下方向に沿う断面図である。図7に示すように、第2の固定座部材72は、第2の面55からインナパネル32の閉断面部32bに達する長さを有している。
【0040】
図6に示すように、面51に第3の固定座部材73が例えば溶接によって固定されることによって、第3の固定座部63が形成される。第3の固定座部材73は、例えば円筒状であって、その内面部に第3の雌ねじ部73aが形成されている。面52には、第3の固定座部材73の内側と連通する第3の貫通孔58が形成されている。
【0041】
第3の固定座部63の位置は、第1の固定座部61の下方であって第2の固定座部62と車体前後方向に重なる位置である。
【0042】
上記のように構成されるブラケット50は、図2に示すように、ボルト80によってフロントピラー30に固定される。
【0043】
図7に示すように、インナパネル32の閉断面部32bにおいて車内内側に突出した部位とアウタパネル31の閉断面部31bとの間には、第2の固定座部62と連通する筒状の第1のスペーサ81が設けられている。第1のスペーサ81の両端面は、インナパネル32とアウタパネル31とに例えば溶接されることによって固定されている。アウタパネル31とインナパネル32とには、第1のスペーサ81の内側と連通するように、第4の貫通孔82と第5の貫通孔83とが形成されている。第4の貫通孔82は、アウタパネル31を貫通している。第5の貫通孔83は、インナパネル32を貫通している。
【0044】
同様に、インナパネル32の閉断面部32bにおいて車内内側に突出した部位とアウタパネル31の閉断面部31bとの間には、第3の固定座部63と連通する筒状の第2のスペーサ84が設けられている。
【0045】
図4に示すように、インナパネル32の閉断面部32bとアウタパネル31の閉断面部31bとには、第1の固定座部61の内側と連通する第8の貫通孔87と第9の貫通孔88とが形成されている。第8の貫通孔87は、インナパネル32を貫通している。第9の貫通孔88は、アウタパネル31を貫通している。また、インナパネル32の閉断面部32bとアウタパネル31の閉断面部31bとの間には、第1の固定座部61と連通する筒状の第3のスペーサ85が設けられている。
【0046】
図7に示すように、ボルト80は、それぞれ第1のスペーサ81および第2の固定座部材72あるいは第2のスペーサ84および第3の固定座部材73を通りブラケット50をフロントピラー30に締結している。ボルト80はそれぞれ第2の雌ねじ部72aあるいは第3の雌ねじ部73aと螺合する。また、図4に示すように、別のボルト80は、第1の固定座部材71を通って第1の雌ねじ部71aに螺合してブラケット50をフロントピラー30に固定する。
【0047】
図2に示すように、デッキクロスメンバ40の車幅方向端部40aは、第1のフランジ部53と第2のフランジ部54との間に挿入される。図4と図5とに示すように、デッキクロスメンバ40は、端部40aにおける上壁部43の上部表面43aが第1のフランジ部53の下面53aと対向して互いに面接触し、端部40aにおける下壁部44の下部表面44aが第2のフランジ部54の上面54aと対向して互いに面接触するように、配置されている。
【0048】
上記のように、上部表面43aと下部表面44aと第1のフランジ部53の下面53aと第2のフランジ部54の上面54aとは、車体前後方向と車幅方向とによって規定される平面に平行な平面である。
【0049】
ここで、デッキクロスメンバ40の端面47と第1〜3の固定座部61〜63との配置について説明する。図3に示すように、第2,3の固定座部62,63は、第1,2のフランジ部53,54によって囲まれる範囲(端部40aが挿入される範囲)の外側に位置する。
【0050】
そして、図1に示すように、端面47は、第1の固定座部61よりも車体前方に位置している。つまり、端面47は、第1〜3の固定座部61〜63によって囲まれる。
【0051】
図4に示すように、第1のフランジ部53の先端縁53bと上部表面43aとが互いに接触する範囲は、全域溶接されている。同様に、第2のフランジ部54の先端縁54bと下部表面44aとが互いに接触する範囲は、全域溶接されている。図中、Pは、溶接部を示している。
【0052】
図8に示すように、面52と第1,2のフランジ部53,54とは、押し出し方向Aに沿うように一体に押し出される。それゆえ、下面53aと上面54aとは、押し出し方向Aに延びる。ブラケット50は、例えばマグネシウム合金製またはアルミニウム合金製である。
【0053】
ブラケット50は、押し出し方向に略垂直な方向Bに切断されることによって、形成される。ブラケット50の車体前後方向の大きさ(長さ)は、ブラケット50が切断される際に調整される。
【0054】
このように構成されるデッキクロスメンバの固定構造10では、第1,2のフランジ部53,54にデッキクロスメンバ40が固定されることにより、ブラケット50とデッキクロスメンバ40の支持剛性を向上させることができる。
【0055】
さらに、デッキクロスメンバ40と第1,2のフランジ部53,54の固定には、ブラケット50だけが用いられるので、部品点数の増加を抑制することができる。
【0056】
また、ブラケット50が第1〜3の固定座部61〜63を備えるとともに第1〜3の固定座部61〜63の高さを調整することによって、本実施形態のようにブラケット50がフロントピラー30の閉断面部32bと壁部32aとにわたって固定される場合であっても、ブラケット50の姿勢を安定してフロントピラー30に固定することができる。
【0057】
また、異なる自動車に対して調整された第1〜3の固定座部材71〜73を用いることによって、ブラケット50を異なる自動車にも共通して用いることができるようになる。それゆえ、ブラケット50を共通に用いることによって、デッキクロスメンバの固定構造10のコストを削減することができる。
【0058】
また、固定座部がデッキクロスメンバ40を囲むように少なくとも3箇所(第1〜3の固定座部61〜63)設けられることによって、ブラケット50を安定してフロントピラー30に固定することができる。
【0059】
また、ブラケット50に、固定部としての第1,2のフランジ部53,54が形成されることによって、デッキクロスメンバ40を強固にブラケット50に固定されるようになる。
【0060】
また、第1のフランジ部53が下面53aを有し、第2のフランジ部54が上面54a
aを有し、デッキクロスメンバ40が上部表面43aと下部表面44aとを有し、かつこれら面53a,54a,43a,44aが平面であって、下面53aと上部表面43aとが互いに面接触し、上面54aと下部表面44aとが互いに面接触することによって、デッキクロスメンバ40とブラケット50との接触面積が大きくなる。したがって、デッキクロスメンバ40とブラケット50とは、互いに強固に固定されるようになり、デッキクロスメンバ40の支持剛性が向上する。
【0061】
デッキクロスメンバ40とブラケット50とが接触する各面53a,54a,43a,44aは、互いに平行であればよく、どのような平面でも良い。要は、面53aと面43aとが互いに面接触し、かつ面54aと面44aとが互いに面接触すればよい。また、デッキクロスメンバの上部表面43aと下部表面44aとは、全域に渡って平面である必要はない。要は、第1,2のフランジ部53,54と面接触する範囲だけ平面であればよい。
【0062】
また、第1,2のフランジ部43,44が車体前後方向に沿うことによって、デッキクロスメンバ40に対して車体前後方向に作用する荷重は、第1のフランジ部53の下面53aとデッキクロスメンバ40の上部表面43aとの間および第2のフランジ部54の上面54aと下部表面44aとの間にせん断荷重として作用する。せん断荷重は、車体前後方向に沿うフランジ部43,44によって支持されるため、せん断荷重が発生する原因となるステアリング42の支持剛性を向上させることができる。
【0063】
また、第1,2のフランジ部43,44が車体前後方向に沿うことによって、つまり、ブラケット50の押し出し方向を車体前後方向に沿わせることによってブラケット50の車体前後方向に沿う長さを調整できるようになる。それゆえ、ブラケット50の車体前後方向における長さを小さくすることができる。したがって、ブラケット50は、フロントピラー30の車体前後方向の長さが小さい場合においても、該フロントピラー30に取り付けやすくなる。
【0064】
また、第1〜3の固定座部61〜63のそれぞれ内周部に第1〜3の雌ねじ部71a〜73aが形成されることによって、第1〜3の固定座部61〜63は、ブラケット50の姿勢を調整する機能に加えて、ボルト80と係合するナットとしての機能を有する。それゆえ、別途にナットを必要としないので、デッキクロスメンバの固定構造10の部品点数が削減される。なお、必要に応じて、固定座部に雌ねじ部を形成せず別途にナットを用いても良い。さらに固定座部の数や位置も、車体の形状や必要とされる強度に応じて適宜変更可能である。
【0065】
また、第1,2のフランジ部53,54は、固定部としての機能に加えてブラケット50の剛性を向上するためのリブとしても機能するので、ブラケット50の剛性が向上する。
【0066】
また、デッキクロスメンバ40が第1,2のフランジ部53,54間に挿入されることによって、デッキクロスメンバの固定構造10は、デッキクロスメンバ40の長さの誤差を吸収することができる。例えば、デッキクロスメンバ40に寸法誤差があった場合であっても、上部表面43aと第1のフランジ部53の下面53aとが面接触できればよいので、第1のフランジ部53の車幅方向内側への突出長さの分だけ、デッキクロスメンバ40の長さの誤差を吸収することができる。第2のフランジ部54でも同様である。
【0067】
なお、ブラケット50の押し出し成形の方向と取り付け方向は、デッキクロスメンバ40およびフロントピラー30の形状に合わせて適宜設定できる。例えば、フロントピラー形状に合わせて、車体上下方向に沿う方向で押し出し成形されたブラケットをフロントピラーに取り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のデッキクロスメンバの固定構造を備える自動車の車体の前部を一部切り欠いて示す概略図。
【図2】図1に示された車幅方向右側に配置されるフロントピラーとデッキクロスメンバとの固定構造を一部切り欠いて示す分解斜視図。
【図3】図1に示されたブラケットを示す斜視図。
【図4】図1に示されるF4−F4線に沿う断面図。
【図5】図4に示されるF5―F5線に沿う断面図。
【図6】図3に示されたブラケットが分解された状態を示す斜視図。
【図7】図1に示されるF7−F7線に沿う断面図。
【図8】図1に示されるブラケットの押し出される方向を示す斜視図。
【符号の説明】
【0069】
10…デッキクロスメンバの固定構造、21…車体、30…フロントピラー、40…デッキクロスメンバ、40a…車幅方向端部、43a…上部表面(平面)、44a…下部表面(平面)、47…端面、50…ブラケット、52…面、53…第1のフランジ部(フランジ部)、54…第2のフランジ部(フランジ部)、61…第1の固定座部、62…第2の固定座部、63…第3の固定材部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるデッキクロスメンバと、
車体のフロントピラーに固定されるとともに前記デッキクロスメンバの車幅方向端部が固定されるブラケットとを具備し、
前記ブラケットは、
前記デッキクロスメンバの端部と対向する面と、
前記面より突出して互いに向かい合うように一対形成され前記端部が固定されるフランジ部と、を有するとともに、
前記端部は、前記一対のフランジ部に対応する平面が一対形成されることを特徴とするデッキクロスメンバの固定構造。
【請求項2】
前記ブラケットとは別に形成されて前記ブラケットに固定されると共に前記フロントピラーに当接する固定座部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のデッキクロスメンバの固定構造。
【請求項3】
前記フランジ部は、前記車体の前後方向に沿うように配置されることを特徴とする請求項1に記載のデッキクロスメンバの固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−161160(P2007−161160A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362139(P2005−362139)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)
【Fターム(参考)】