説明

デポジットした金及び炭素粒子を有するナノチューブチタニア基材の製造及び水の光電気分解でのそれらの使用

本発明は、複数の垂直配向酸素空孔含有二酸化チタンナノチューブから構成される二酸化チタン表面を有するナノチューブチタニア基材の製造方法に関する。本発明の方法は、自己秩序化酸化チタンナノチューブから構成される酸化チタン表面を形成するために十分な条件下、酸性フッ化物電解質中でチタン金属基材を陽極酸化する工程、酸化チタン表面に金のナノ粒子を分散する工程、非酸化性雰囲気で金のナノ粒子を有する酸化チタン表面をアニーリングする工程、及びアニーリングした酸化チタン表面に炭素をデポジットする工程を、一般的に含む。本発明は、本発明の方法で形成された金/炭素ハイブリッド電極にも関する。更に本発明は、Hを発生するために適する条件下で、光陽極と光陰極を光照射する工程を含むHを発生する光−電気分解法であって、光陽極は、金と炭素のデポジットを有するナノチューブチタニア基材である光−電気分解法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドギャップ加工(又は操作)ナノチューブ二酸化チタン光陽極を使用して、太陽光を利用する、水の光電気分解による、水素生成(又は発生)に関する。この二酸化チタンナノチューブは、酸性フッ化物電解質中でチタニア基材(又は基板)を陽極酸化することによって形成され、それは超音波音場の存在下で行ってよく、又は通常の混合により混合してよい。二酸化チタンナノチューブの電子バンドギャップは、酸素空孔(又は欠陥)を生ずる非酸化性雰囲気中でアニーリング(又は焼きなまし)することによって、及び所望により、種々の元素、例えば、炭素、窒素、リン、硫黄、フッ素、セレン等をドープすることによって加工される。バンドギャップを小さくすると、太陽光のより大きなスペクトル(可視領域を含む)の吸収を生ずるので、光電流の増加を生じ、より高率の水素生成をもたらす。更に、本発明は、本発明のナノチューブ基材(ナノチューブ状基材、ナノチューブから成る基材又はナノチューブの付いた基材)に金(又はAu)粒子をデポジットする(又は堆積させる)工程、その後ナノチューブ基材に炭素をデポジットする工程を含む、ハイブリッド(又は混合型)金/炭素(又はAu/C)電極の製造方法と、得られるAu/C電極に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光を用いる水の光電気分解は、Fujishima and Hondaによりルチル単結晶ウエハーを用いて最初に立証された。(A. Fujishima and K. Honda, Nature 238 (1972) 37-38参照)。同著者らは、後の研究論文で熱的に又は電気化学的に酸化したTi箔を陽極として使用し、0.4%を超えるエネルギー変換効率を観察した。(A. Fujishima, K. Kohayakawa and K. Honda, J. Electrochem. Soc., 122 (1975) 1487-1489参照)。最近、Khan et al.は、Ti基材上に、化学修飾したn型TiO膜を用いて最高光変換効率8.35%を立証した。(S. U. M. Khan, M. Al-Shahry, W. B. Ingel Jr., Science, 297 (2002) 2243- 2245参照)。光変換効率がより高いのは、Ti金属板の燃焼により合成される、炭素をドープしたn−TiO−xCx型膜(535nmより短い波長で光を吸収する)のバンドギャップエネルギー(band gap energy)(2.32eV)がより低いことによるものであった。バンドギャップの狭小化は、窒素をドープしたTiOナノ粒子でも見られた。(R. Asahi, T. Morikawa, T. Ohwaki, K. Aoki, Y. Taga, Science 293 (2001) 269-271参照)。色素増感ナノ多孔質TiO膜は広く研究されており、より高い効率が報告されている。(U. Bach et al., Nature 395 (1998) 583-585参照)。
【0003】
最近の研究の焦点は、高効率光電気化学電池を構築するためのナノ結晶半導体に置かれている。太陽光水分解のために可能性のある材料として、三酸化タングステン、酸化鉄、及び硫化カドミウムのナノ結晶材料が研究されている。(C. Santato, M. Ulmann and J. Augustynski, J. Phys. Chem., B105 (2001) 936- 940、S. U. M. Khan, J. Akikusa, J. Phys. Chem B103 (1999) 7184-7189、及びG. Hodes, I. D. J. Howell, L. M. Peter, J. Electrochem. Soc., 139 (1992) 3136-3140参照)。これらの材料では、電荷分離は、サイズ制限により空間電荷層が電極には存在し得ない(ナノ結晶それぞれが電極である)ため、電極ではなく、半導体−電解質界面(溶液への電荷移動速度の違いにより)で起こると想定される。ナノ結晶膜の半導体性のタイプは、電解質中に存在する電荷(正孔又は電子)捕捉剤の性質に依存すると考えられる。(M. Gratzel, Nature 414 (2001) 338-344参照)。ナノ材料の寸法を変更することにより、量子サイズ効果がバンドギャップの制御に用いられることが報告され、量子閉じ込めにより増大した吸収係数が観察されている。(W. U. Huynh, J. J. Dittmer, A. P. Alvisatos, Science 295 (2002) 2425-2427参照)。
【0004】
Al、Ti、Ta、Nb、V、Hf、W、Zrは全て、それらの表面が酸素を含有する環境に曝されるとすぐに数ナノメートルの自然酸化膜で覆われることから「バルブ金属」として分類される。これらの金属は、陽極酸化法を通じてそれぞれの金属酸化物ナノチューブを合成するために広く使用されている(G. P. Sklar, K. Paramguru, M. Misra and J. C. LaCombe, Nanotechnology, 16 (2005) 1265-1271. 、H. Tsuchiya, J. M. Macak, A. Ghicov, L. Taveira and P. Schmuki, Corrosion Science, 47 (2005) 3324-3335. 、I. Sieber, H. Hildebrand, A. Friedrich and P. Schmuki, Electrochem. Commun., 7 (2005) 97- 100. 、及びH. Tsuchiya, J. M. Macak, I. Sieber, L. Taveira, A. Ghicov, K. Sirotna and P. Schmuki, Electrochem. Commun., 7 (2005) 295-298参照)。あらゆるバルブ金属の間では、チタンに、その多用性から大きな技術的関心が高まっており、様々な利用が可能である。その一方で、酸化チタンには多くの技術的に関連する用途、例えばガスセンサー、太陽光発電、光及び熱触媒、光エレクトロクロミック素子、並びに生体分子の固定化がある(S. Liu and A. Chen, Langmuir, 21 (2005) 8409-8413. 、D. V. Bavykin, E. V. Milsom, F. Marken, D. H. Kim, D. H. Marsh, D. J. Riley, F. C. Walsh, K. H. El-Abiary and A. A. Lapkin, Electrochem. Commun., 7 (2005) 1050-1058. 、D. V. Bavykin, A. A. Lapkin, P. K. Plucinski, J. M. Friedrich and F. C. Walsh, J. Catal., 235 (2005) 10-17. 、K. S. Raja, M. Misra and K. Paramguru, Mater. Lett., 59 (2005) 2137-2141. 、S. Oh and S. Jin, Mater. Sci. Engg. C, 2006, in press. 、及びK. S. Raja, V. K. Mahajan and M. Misra, J. Power Soursec, 2006, in press参照)。
【0005】
この数年間、陽極酸化法によるナノ多孔質TiOチューブの製造は、TiOナノ粒子よりも取り扱いが容易で製造方法が簡単であることから、科学界の主要な注目点となっている。長年の間、チタンの陽極酸化のために、いくつかの電解質の組合せが用いられている(J. Zhao, X. Wang, R. Chen and L. Li, Solid State Commun., 134 (2005) 705-710. 、C. Ruan, M. paulose, O. K. Varghese, G. K. Mor and C. A. Grimes, J. Phys. Chem. B, 109 (2005) 15754-15759. 、J. M. Macak, K. Sirotna and P. Schmuki, Electrochem. Acta, 50 (2005) 3679-3684. 、H. Tsuchiya, J. M. Macak, L. Taveira, E. Balaur, A. Ghicov, K. Sirotna and P. Schmuki, Electrochem. Commun., 7 (2005) 576-580. 、J. M. Macak, H. Tsuchiya and P. Schmuki, Angew. Chem. Int. Ed., 44 (2005) 2100-2102. 、及びQ. Cai, M. Paulose, O. K. Varghese and C. A. Grimes, J. Mater. Res., 20 (2005) 230-236参照)。
【0006】
利用可能な感光性材料の間では、TiO半導体(アナターゼ及びルチル)が高度に安定であり、比較的安価である。それゆえ、二酸化チタンは光陽極用の可能性のある材料と考えられる。一般に、ナノ結晶TiO材料は、化学的経路により粉末として通常合成され、続いて、それらが導電性基材上にコーティングされる。ナノ結晶陽極は、TiOスラリーを導電性ガラス上にコーティングすること、噴霧熱分解すること、ガラス基板上を多層コロイドコーティングし、その後適当な温度で焼成することにより作られる。(J. van de Lagemaat, N.-G. Park, A. J. Frank, J. Phys. Chem B 104, (2000) 2044-2052参照)。これらの方法の不都合な点は:ガラス基板とTiOコーティングとの間の機械的結合強度が低いこと、ナノ粒子が凝集すること、コーティングパラメーター制御が不十分であること、粒子間の電気的接続性が不十分であること等である。更に、相互接続された3−Dタイプのナノ粒子の代わりに、TiOの垂直型ナノワイヤー(vertical standing nanowires)を製造することで、光変換効率を向上し得ることが示された。(S. U. M. Khan, T. Sultana, Solar Energy Materials & Solar Cells 76 (2003) 211-221参照)。酸性フッ化物溶液中でチタン金属基材を陽極酸化すると、結果としてTiOナノチューブの秩序(又は規則)配列が形成する。このような垂直に配向したTiOナノ構造は、スラリーキャスティング経路により製造されたTiOナノコーティングのものより優れた機械的完全性と光電気特性を有する。
【0007】
陽極酸化による酸化チタンナノチューブの光電気分解特性は、これまでに研究され、報告されている。(例えば、Varghese et al.の米国特許公報第2005/0224360号参照)。このような種類の研究では、直径22nm、肉厚34nm及び長さ224nmの陽極酸化酸化チタンナノチューブの光電気分解特性が報告された(G. K. Mor, K. Shankar, M. Paulose, O. K. Varghese, C. A. Grimes, Nanoletters 5 (2005) 191-195参照)。加えて、長さ6μmのTiOナノチューブでは、模擬太陽光スペクトル(AM 1.5)を用いる水の光電気分解の効率が0.4%未満であることが示された(M. Paulose, G. K. Mor, O. K. Varghese, K. Shankar, C. A. Grimes, J. Photochem. Photobio. A: Chem. 178 (2006) 8-15参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
可視光を用いる水の光電気分解による水素生成(又は発生)については研究に取り上げられてきたが、これらの方法のためのより効率的で強力なシステム(設備又は系)の必要性が残る。本発明は、2006年9月11日に出願された関連する国際特許出願番号PCT/US06/35252(これは、参照することによってその全てが本明細書に組み込まれる)を促進するために、ナノチューブ基材の使用によりその必要性に応える。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸素空孔(又は欠陥)を含有する複数の垂直に配向した(又は垂直に指向した:vertically oriented)二酸化チタンナノチューブから構成される(又はできている)二酸化チタン表面を有するナノチューブチタニア基材の製造方法に関する。この方法は、一般的に、自己秩序化(自己規則化又は自己組織化:self-ordered)酸化チタンナノチューブから構成される酸化チタン表面を形成するために十分な条件下、酸性フッ化物電解質中でチタン金属基材を陽極酸化する工程(又はステップ)と、酸化チタン表面に金のナノ粒子を分散させる工程と、非酸化性雰囲気中で金のナノ粒子を有するその酸化チタン表面をアニーリングする工程と、アニーリングされた酸化チタン表面に炭素をデポジットする工程を含む。非酸化性雰囲気は、還元性雰囲気、例えば、窒素、水素、又は分解アンモニアであってよい。
【0010】
この方法は、酸化チタン表面に第14族元素、第15族元素、第16族元素、第17族元素、又はそれらの混合物をドープする工程を更に含んでよい。電解質は、好ましくは、HF、LiF、NaF、KF、NHF、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフッ化物化合物を含み、電解質は、水溶液、又は例えばグリセロール、EG、DEG、及びそれらの混合物からなる群から選択される多価アルコール等の有機溶液であってよい。また、電解質は、通常の磁気攪拌により混合してもよく、又は超音波により攪拌してもよい。更に、初期の湿気(又は最初の水分)を利用して金の粒子を分散してよく、化学蒸着によって炭素をデポジットしてよい。本発明は、上述した方法によって形成される金/炭素ハイブリッド電極にも関する。
【0011】
本発明は更に、酸素空孔、金のナノ粒子を含む第1コーティング、及び炭素を含む第2コーティングを含有する自己秩序化二酸化チタンナノチューブから構成される二酸化チタン表面を含んで成るナノチューブチタニア基材に関する。このナノチューブチタニア基材は、好ましくは、約1.9eV〜約3.0eVの範囲のバンドギャップを有する。更に、二酸化チタンナノチューブには、第14族元素、第15族元素、第16族元素、第17族元素、又はそれらの混合物をドープしてよく、また、窒素をドープし、炭素をドープし、リンをドープし又はそれらの組合せを行ってもよい。また、炭素修飾二酸化チタンナノチューブを作るために好適な条件下で、二酸化チタンナノチューブを、更に炭素で修飾してもよい。
【0012】
本発明はまた、電極として上述のナノチューブチタニア基材を有する光電気化学電池、及び上述のナノチューブチタニア基材を使用して形成される金/炭素ハイブリッド電極にも関する。本発明は更に、Hを生成するための光電気分解方法であって、Hを生成するために好適な条件下で光陽極及び光陰極に光を照射する工程を含む方法であり、該光陽極は上述のナノチューブチタニア基材である方法に関する。この場合、光は太陽光であってよく、酸性溶液を光陰極室に用いてよく、塩基性溶液を光陽極室に用いてよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、バンドギャップ操作(又は加工)したナノチューブチタニア光陽極を使用して太陽光を用いる水の光電気分解による水素生成(又は発生)に関する。このチタニアナノチューブは、電解質中でチタン金属基材を陽極酸化することにより作製(又は製造)する。チタニアナノチューブの電子バンドギャップは、非酸化性雰囲気中でアニーリングして、酸素空孔(又は欠陥)を生成させ、所望により、種々の元素、例えば、炭素、窒素、リン、硫黄、フッ素、セレン等をドープすることにより操作する。バンドギャップを小さくすると、可視波長領域で太陽光のより大きなスペクトルの吸収が起こるため、光電流の増加が生じ、より高率での水素生成をもたらす。
【0014】
ナノチューブチタニア基材
本発明は、自己秩序化チタニアナノチューブからなる表面を有するナノチューブチタニア基材に関する。用語「自己秩序化チタニアナノチューブ」とは、例えば、図8に示すような、垂直に配向した複数のチタニアナノチューブからできているチタニア(二酸化チタン)表面を示す。利用可能な感光性材料の間では、TiOが光腐食に対して高度に安定であり、比較的安価である。TiOナノ結晶光陽極を作製する常套の方法には、チタニアスラリーを導電性ガラス上にコーティングすること、噴霧熱分解すること、ガラス基材上を多層コロイドコーティングし、その後適切な温度で焼成することを含み、各々の結果として、相互接続されたナノ粒子の3−Dネットワークが形成される。それに対して、本発明は、光変換効率を高める垂直に配向した自己秩序化TiOナノチューブに関する。このような垂直配向TiOナノ構造は、スラリーキャスティング経路により製造されたTiOナノコーティングのものより優れた機械的完全性と光電気特性を有するであろう。光電気分解のためのTiO材料使用の主な制限は、電子正孔対の光励起に高い光エネルギーが必要なより広いバンドギャップである。そのため、光電流への変換には太陽光の3〜5%(紫外部)しか利用することができない。例えば、酸素副格子中のC、N、F、P又はSのような元素の置換ドーピングは、ゲスト種のp状態とOの2p状態とが混成することから、バンドギャップを狭めると考えられた。
【0015】
加えて、本発明の自己秩序化チタニアナノチューブは酸素空孔を含む。即ち、チタニアは、+4酸化状態のチタン金属、Ti+4に対して非化学量論的量の酸素を有するが、TiO(Ti+4)がチタニアナノチューブの主要な部分である。チタニアナノチューブの二重配位架橋部位に酸素空孔が形成されると、結果として、Ti+4のTi+3への変換が起こる。言い換えれば、チタンは、チタニアにおける、酸素空孔、即ち非化学量論的量の酸素によって、+4酸化状態と+3酸化状態で存在する。これは、TiOとTi(即ち、TiO2−x)との組合せを含むチタニア表面のナノチューブと考えることもできる。図1では、Ti2p領域における(N雰囲気下でアニーリングした)ナノチューブ基材のXPSスペクトルを示す。このチタニアナノチューブは、0.5M HPO+0.4M NaF溶液中、20Vでおよそ45分間陽極酸化し、続いて、窒素雰囲気中、350℃で6時間アニーリングを行うことにより作製した。458.3eVでのTi+4ピークは非対称である。Ti+4が完全には配位結合していないことから、この非対称は酸素空孔を示す。図1のXPSスペクトルのデコンボリューションは、459.2eVあたりの小さなピーク(Ti3+)が、主要なピーク(Ti+4)に統合されていることを示す。
【0016】
本発明のナノチューブチタニア基材は、酸性フッ化物電解質中でチタン金属基材を陽極酸化して、自己秩序化チタニアナノチューブからなる表面を形成し、続いて、非酸化性アニーリングを行うことにより調製する。非酸化性アニーリングには、真空中でのアニーリング及び「還元性アニーリング」、即ち還元性雰囲気中での二酸化チタンナノチューブのアニーリングが含まれる。これにより、ナノチューブチタニア基材に約1.9〜約3.0eVの範囲のバンドギャップが与えられる。本発明のナノチューブチタニア基材は、太陽光での水の光電気分解による水素生成に有用である。水の効率的な光電気分解に好ましいバンドギャップは1.6〜2.1eVである。
【0017】
チタン金属基材
本発明のナノチューブチタニア基材を作製するために、いずれのタイプのチタン金属基材も使用してよい。チタン金属基材の唯一の制限は、チタン金属基材又はその一部を陽極酸化して、その表面にチタニアナノチューブを形成する能力である。チタン金属基材は、当技術分野で公知の、例えば、半導体基材、プラスチック基材等のような他の基材上のチタン箔、スポンジチタン又はチタン金属層であってよい。チタン金属は、当技術分野で公知の通常の膜デポジション(堆積又は蒸着)技術を用いて基材にデポジット(堆積又は蒸着)することができ、そのような技術としては、限定されるものではないが、スパッタリング、熱エネルギーを用いる蒸発、電子ビーム蒸着、イオン支援蒸着、イオンめっき、電着(電気めっきとしても知られる)、スクリーン印刷、化学蒸着、分子線エピタキシー(MBE)、レーザーアブレーション(laser ablation)等を例示できる。チタン金属基材及び/又はその表面は、当技術分野で公知のいずれのタイプの形状又は形態にも形成され得る。例えば、チタン金属基材は、平面、曲面、チューブ状、非直線、ベント、円形、正方形、長方形、三角形、平滑なもの、粗いもの、凹凸のあるもの等であり得る。チタン金属基材のサイズ(又は寸法)に制限はない。基材サイズは、陽極酸化槽のサイズによる。例えば、1平方センチメートル未満から数平方メートルまでのサイズが考えられる。同様に、厚さにも制限はない。例えば、チタン金属は、数ナノメートルほど薄くてよい。
【0018】
チタン金属基材の陽極酸化
二酸化チタン(チタニア)ナノチューブ表面を形成するためのチタン金属基材の陽極酸化は、当技術分野で公知である。(例えば、K. S. Raja, M. Misra, and K. Paramguru, Electrochem. Acta, 51, (2005) 154-165; O. K. Varghese, C. A. Grimes, J. Nanosci. Nanotech, 3 (2003) 277; D. gong, C. A. Grimes, O. K. Varghese, W. Hu, R. S. Singh, Z. Chem. J. Mater. Res. 16 (2001), 3331; R. Beranek, H. Hildebrand, P. Schmucki, Eletrochem. Solid-State Lett. 6 (2003) B12; Q. Cai, M. Paulose, O. K. Varghese, C. A. Grimes, J. Mater. Res. 20 (2005) 230; J. M. Macak, H. Tsuchiya, p. Schmucki, Angew. Chem, Int. ed. 44 (2005) 2; WO/2006/004686;及びUS 2005/0224360 A1参照。これらの各々は、引用することにより本明細書に組み込まれる。)また、チタンを陽極酸化するために、リン酸及びフッ化ナトリウム又はフッ化水素酸を用いてもよい。(K. S. Raja, M. Misra and K. Paramguru, Electrochem. Acta, 51 (2005) 154-165参照)。この手法では、一般的に言えば、磁気攪拌下で20Vを使用して陽極酸化チタンを得るのに約45分かかる。この陽極酸化アプローチでは、制御可能な孔径と、良好な均一性と、広範囲にわたる適合性を有する多孔質酸化チタン膜を低コストで構築することができる。陽極酸化時間は、超音波混合を用いて50%以上短縮し得る。本発明のこの超音波混合法(以下に記述する)は、通常の攪拌技術と比べて良好な規則性と均一性を有するTiOナノチューブももたらす。加えて、陽極酸化中に障壁層(即ちナノチューブとチタン金属との間の接合部)が形成される。この障壁層(又はバリア層)は、互いに結合したドームの形であってよい(例えば、図27参照)。
【0019】
一般に、チタニアナノチューブは、チタン金属基材の表面を酸性フッ化物電解質溶液に、100mV〜40Vの範囲から選択される電圧で、約1分〜24時間の範囲、又はそれを超える時間にわたって曝露することにより形成され得る。一般に、使用される電圧は約20Vであり、陽極酸化時間は約45分〜8時間である。酸性フッ化物電解質は、一般にpH約6未満、多くの場合ではpH<4である。これらの条件下での陽極酸化では、複数の二酸化チタンナノチューブからなるチタニア表面が形成する。本発明の実施に使用される自己組織化二酸化チタンナノチューブからなる表面を有するナノチューブチタニア基材を形成するために、チタン金属基材を陽極酸化するのに、公知の陽極酸化技術を使用してよい。例えば、水性又は有機電解質を用いてチタン金属基材を陽極酸化してよく、例えば、P原子を組み込む場合、0.5M HPO+0.14M NaF溶液を、N原子を組み込む場合、0.5〜2.0M Na(NO)+0.14M NaF溶液又はpH3.8〜6.0の0.5〜2.0M NHNO+0.14M NHFを、あるいは0.5M HPO+0.14M NaF+0.05〜1.0M Na(NO)の組合せを用いることができる。陽極酸化は、好ましくは、20〜25℃の温度で起こる。その後、チタン金属基材は、プラトー(又は平坦)電流を観察後、20Vで20分間陽極酸化される。図2では、典型的な陽極酸化装置及び陽極酸化時間を示す。ナノチューブチタニア基材を製造するためのそのような陽極酸化方法の好ましい実施形態及び新規適応を以下に記述する。例えば、例1では、直径40〜150nmの範囲のナノチューブを形成するナノチューブ二酸化チタン層の模範的な形成を記載する。図8及び9に、例1に記載の方法による陽極酸化後のチタン表面の模範的なナノチューブを示す。更に、例2では、陽極酸化に0.5M HPO+0.14M NaFの溶液を用いる陽極酸化チタンテンプレートの形成の一例を記載する。
【0020】
チタン金属基材のオプションの清浄化(又はクリーニング)
チタニアナノチューブを形成するための陽極酸化の前に、チタン金属基材を、当技術分野で公知の標準的な金属組織学的清浄化及び研磨技術を用いて清浄化し、研磨することができる。好ましくは、チタン金属基材を、当技術分野で公知のように、化学的に及び/又は機械的に清浄化し、研磨する。機械的清浄化は、好ましくは、音波処理により行われる。チタン箔は清浄化後に研磨しない。一例として、チタン金属表面は、120グリットのエメリー研磨紙から1200グリットのエメリー研磨紙までを利用することにより追加的に研磨してよく、続いて、15μmのアルミナスラリー中で湿式研磨を行ってよい。研磨後、バルブ金属基材を、当技術分野で公知のように、蒸留水で十分に洗浄し、イソプロピルアルコール中で約10分間音波処理する。そのようなオプション(又は任意)の清浄化と研磨を行うことは、本発明に使用されるチタン金属基材の一貫性を支援し、即ち、チタン金属基材が均一な出発点(例えば、望ましい場合には平面)を有することを確保する。研磨した表面を使用することが好ましいが、チタン金属基材を本発明に使用するために、チタン金属基材上の自然酸化物を必ずしもを除去する必要はない。
【0021】
酸性フッ化物電解質
陽極酸化ステップ(又は工程)に用いられる酸性フッ化物電解質は、水性電解質、有機電解質溶液、又はそれらの混合物であってよい。電解質に用い得るフッ化物化合物は、当技術分野で公知のものであり、フッ化水素、HF;フッ化リチウム、LiF;フッ化ナトリウム、NaF;フッ化カリウム、KF、フッ化アンモニウム、NH4F;等を例示できるが、これらに限定されるものではない。酸性フッ化物電解質のpHは5より低いことが好ましく、pH範囲は4〜5であることが最も好ましい。pHの調整は、当技術分野で公知のように、酸を加えることにより行ってよい。例えば、硫酸、リン酸、又は硝酸等の無機酸が一般に好ましい。以下に記述するように、リン又は窒素ドーパントを導入する場合には、リン酸及び硝酸が特に好ましい。pHを調整し、ドーパントとして炭素を導入するために、有機酸をしてよい。
【0022】
本発明の実施の際に、チタニア基材上の二酸化チタンナノチューブの陽極形成をするために、当技術分野で公知の任意の水性酸性フッ化物電解質を用いてよい。好適な酸性フッ化物電解質として、例えば、0.5M HPO+0.14M NaF溶液、0.5〜2.0M Na(NO)+0.14M NaF溶液、0.5〜2.0M NHNO+0.14M NHF、又は0.5M HPO+0.14M NaF+0.05〜1.0M Na(NO)の組合せ等を例示できる。好ましい水性酸性フッ化物電解質は以下に記述する。
【0023】
有機電解質として、フッ化物イオンを溶媒和することができ、陽極酸化条件下で安定ないずれの有機溶媒も、又は有機溶媒の混合物も使用できる。上述のように、有機電解質は、水と有機溶媒との混和性混合物であってもよい。水がナノチューブの開始及び/又は形成に関与することから、有機電解質中に少なくとも0.16重量%の水が存在することが好ましい。有機溶媒は、例えば、グリセロール、エチレングリコール、EG、又はジエチレングリコール、DEG等の多価アルコールであることが好ましい。有機電解質を用いる1つの利点は、アニーリングステップ中に、有機溶媒が揮発し、アニーリング条件下で分解するのみならず、二酸化チタンナノチューブの炭素ドーピングももたらすことである。
【0024】
例3では、エチレングリコール/グリセロール有機溶媒中でチタンを陽極酸化する方法を記載する。図10〜11は、例3で得られた結果を示す。更に、例4は、少量の一般的な錯化剤、例えば、EDTA、及びフッ化アンモニウムを用いてチタンを陽極酸化する方法を記載する。錯化剤(この錯化剤は0.1重量%の量で加えることが好ましく、0.5〜1.0重量%が最も好ましい)は、より速い速度で改善されたナノ細孔の形成を可能にする。更に、例5は、水及びエチレングリコールの中性溶液を用いてチタンを陽極酸化する方法を記載する。図13では、次の中性水溶液:(a)EG+0.5重量%NaF、(b)HO+0.5重量%NaF、(c)[HO+EG(1:1 体積比)]+0.5重量%NaF、(d)[HO+EG(1:3 体積比)]+0.5重量%NaFを用いて得られたナノチューブTiOのSEM像、及び(e)(c)の断面図を示す。上記の例示的陽極酸化法は、陽極酸化装置、例えば、図2及び7に例示したものを使用して行うことができる。
【0025】
陽極酸化中の混合
二酸化チタンナノチューブの形成は、陽極酸化中に電解質を混合又は攪拌することにより改善される。
【0026】
電解質を混合又は攪拌するための通常の技術、例えば機械的攪拌、磁気攪拌等を使用し得る。好ましい実施形態では、混合は、陽極酸化中に電解質溶液を超音波処理することにより行われる。音波処理は、市販の装置を使用して行ってよい。典型的な周波数は約40kHzである。図3に示すように、陽極酸化中の電解質の超音波処理はナノチューブ形成を助け、他の混合技術を用いて得られるよりも均一で平滑なナノチューブを与える。通常の混合は、緩やかなプロセス(又は方法)である加水分解により生成されるHイオンをもたらす。ナノチューブに沿ってpH勾配も存在する。反応し、ナノチューブを作り出すFイオンの供給力は拡散律速である。超音波処理は、形成中のナノチューブの底面へのH及びFラジカルの到達を容易にする。超音波処理により、孔形成に必要なpHも孔底部に存在する。超音波処理は、より均一なラジカル濃度及びpHを与え、陽極酸化中に生じ得る濃度及びpH勾配の存在を防止し又は少なくとも最小化する。
【0027】
超音波を用いる二酸化チタンナノチューブの製造
ウルトラソニケーター(又は超音波処理装置)を使用して完了させる陽極酸化は、通常の技術より効率的である。例えば、ウルトラソニケーターの使用により、通常の技術による混合より短時間でより良好な秩序性を有するTiOナノチューブが生み出される。このようにして、合成時間は、一般に50%まで短縮することができる。更に、孔の大きさやナノチューブの長さも超音波混合により改善することができる。例えば、ナノチューブの長さを、700〜750nmに増加させることができる。
【0028】
超音波を介する陽極酸化は、例えば、Ti箔ディスクをアセトンで洗浄し、わずかな部分だけを電解質に浸すようにそのディスクを固定することによって完了させることができる。ナノチューブTiOアレイは、Ti箔を酸性フッ化物電解質中で陽極酸化することにより形成される。TiOアレイの陽極酸化中、磁気攪拌装置の代わりにウルトラソニケーターを使用して、電解質に移動性を与えた。陽極酸化後、陽極酸化サンプルを蒸留水により洗浄して、陽極酸化溶液から吸蔵イオンを除去し、炉で乾燥させ、水の光触媒を作った。この方法の陽極酸化に用いる様々な条件を、以下の例6及び7に記載する。このために、水性媒質及び非水性媒質の両方に、種々の電解質の組合せを使用した。
【0029】
前述のとおり、例えば、リン酸及びフッ化ナトリウム電解質を用いて、外部印加電位20V下で、通常の混合技術より、超音波混合を用いて、ずっと速く(即ち20分)十分な秩序性(規則性又は配向性)を有するナノ多孔質TiOチューブを得ることができる。種々の合成パラメーター、即ち、合成媒質(無機、有機及び中性)、フッ化物源、印加電圧及び合成時間の効果は以下に記述する。例えば、陽極酸化電位及び温度等の陽極酸化処理パラメーターを変更することによって、孔径を、30〜120nmに調整することができる。孔径は、陽極酸化電位及びフッ化物濃度とともに増加し、電解質温度とともに減少する。この手法により非常に短い時間内に、300〜1000nm厚の自己組織化多孔質二酸化チタン層を製造することができる。超音波混合による陽極酸化は、通常の磁気攪拌よりも著しく効率的である。上述の陽極酸化アプローチでは、制御可能な孔径と、良好な均一性と、広範囲にわたる適合性を有する多孔質酸化チタン膜を、低コストで構築することができる。一般に、陽極酸化ステップは1〜4時間にわたって起こる。しかしながら、超音波混合技術を用いることにより、陽極酸化時間を、50%を超えて短縮することができる。また、通常の磁気攪拌を用いて報告されたものと比べて、良好な秩序性と均一性を有する二酸化チタンナノチューブももたらされる。例6及び7では、チタンの超音波を介する陽極酸化方法を記載する。例6の結果を、図14〜21に例示する。
【0030】
TiOナノチューブの形成
一般的に言えば、TiOナノチューブの形成機構を、以下のように説明することができる。水性酸性媒体中で、チタンは酸化して、TiOを形成する(反応式1)。
Ti+2HO→TiO+4H (1)
酸化物表面のピット開始は、複雑なプロセスである。TiOは、2〜12間のpH範囲で、熱力学的に安定であるが、錯化種(F)により実質的な溶解が起こる。電解質のpHは、決定的要因である。Fイオンによるピット形成の機構を、反応式2により示す;
TiO+6F+4H→[TiF2−+2HO (2)
【0031】
この錯体形成は、不動態酸化物層の破損を引き起こし、ピット形成は再不動態化が起こるまで続く。(J. M. Macak, H. Tsuchiya and P. Schmuki, Angew. Chem. Int. Ed., 44 (2005) 2100-2102., K. S. Raja, M. Misra and K. Paramguru, Electrochem. Acta, 51 (2005) 154-165.,及びG. K. Mor, O. K. Varghese, M. Paulose, N. Mukherjee and C. A. Grimes, J. Mater. Res., 18 (2003) 2588-2593参照。)。ナノチューブの形成は、Fイオンの拡散及び[TiF2−イオンの同時流出を経る。本発明による超音波を用いる、TiOナノチューブのより高速の形成は、Fイオンのナノチューブ反応チャネルへの移動性と、そのチャネルからの[TiF2−イオンの流出により説明することができる。より高率であることは、電流と時間の関係を示すプロットからも更に確認された(図29)。その図から、超音波を用いる陽極酸化の場合に観察される電流は、磁気攪拌を用いる陽極酸化方法のほぼ倍であることも分かる。磁気攪拌を用いると電流が1000〜1200秒で飽和することと比べて、超音波の場合、500〜600秒で電流が飽和するということも報告されている。経時的な電流の飽和は、ナノチューブの形成の飽和を意味する再不動態化が起こることを示す。この結果は、我々のSEM研究と一致する。フッ化アンモニウム及びフッ化カリウムのような他のフッ化物源を用いるチタンの陽極酸化も超音波を用いて行った。そのSEM像(図30)は、いずれのフッ化物源もこの目的に用いることができるということを示す。
【0032】
陽極酸化時間の影響
ナノチューブの成長は、陽極酸化時間が増加するにつれて向上し得る。例えば、図26〜28に示すように、陽極酸化の120秒後に、チタンの表面に小さなピットが形成し始める(図26)。これらのピットは、孔間領域を保持しながら、600秒後にサイズが増大する。900秒後には、表面の大部分が二酸化チタン層で覆われるが、孔はあまり明確ではない。1200秒後には、十分な秩序性を有するナノ細孔で表面は完全に満たされる。これらのナノ細孔に対する時間の効果を更に見つけ出すために、陽極酸化時間を2700秒及び4500秒に更に増加した。7200秒及び10800秒に時間を更に増加させることは、孔径やナノチューブの長さに影響しないことが観察される。比較のため、磁気攪拌下で、類似サンプルを陽極酸化した場合、1500秒後に不規則細孔表面が得られ、2700秒後にのみ秩序性ナノチューブが形成された。(図28)。ナノチューブの長さは、およそ500nmであることも分かる。この場合に用いた陽極酸化溶液は、0.5M HPO及び0.14M NaFからなり、陽極酸化は室温(22〜25℃)で、陽極酸化電圧20Vを用いて生じた。ナノ多孔質TiOチューブの成長は、FESEMによりモニタリングした(図26)。
【0033】
印加電位の影響
印加電位もまた、ナノチューブ形成及び孔径に影響を及ぼし得る。以下で、例10に記載するように、超音波を用いる混合をしながら、電解液及び時間を一定に保つことにより、印加電位を5Vから20Vまで変更した。図31では、印加電位5VではナノチューブTiOの製造に十分ではないが、10VではナノチューブTiOを製造するために十分であることを示す。しかし、例えば、15V〜20Vの増加した印加電位を系に印加すると、孔の均一性及び秩序性は増加する。より高い印加電位を加えることにより孔径も増加する。このように、TiOナノチューブの孔の大きさは、合成パラメーター(印加電圧及び/又はフッ化物イオン濃度を含む)を変更することによって、条件どおりに調整することができる。
【0034】
チタンの両面陽極酸化
本発明の別の実施形態は、チタンを2つ以上の面で陽極酸化する方法に関する。この方法は、例11に記載しており、チタン箔を電解液中に印加電圧下で所定時間吊るすことからなる。結果として得られる両面陽極酸化では、両面で0.4mAの優れた光活性を示した。一方、通常の片面陽極酸化では、ナノ多孔質チタンの処理を行わない場合、光活性はおよそ0.1mAである。
【0035】
非酸化性アニーリング及びバンドギャップ操作
陽極酸化ステップ後、非酸化性(中性又は還元性)雰囲気(例えば、窒素、水素、分解アンモニア等)中でアニーリング、その雰囲気に応じて、第14族元素、第15族元素、第16族元素、及び第17族元素、例えば、炭素、窒素、水素、リン、硫黄、フッ素、セレン等のような元素の任意の組合せをドープすることにより、ナノチューブ二酸化チタン層のバンドギャップを小さくし得る。小さくされたバンドギャップにより可視波長領域で光、特に太陽光のより大きなスペクトルの吸収が起こるため、光電流及び効率の増加が生じ、それにより、より高率での水素生成がもたらされる。
【0036】
この「非酸化性アニーリング」とは、真空、中性雰囲気、又は還元性雰囲気中での二酸化チタンナノチューブのアニーリングである。アニーリングは、任意の適するアニーリング装置でおよそ350℃の温度で約6時間にわたって生ずることが好ましい。非酸性、好ましくは、還元性雰囲気中でアニーリングすることにより、バンドギャップを操作することが可能であり、チタニアナノチューブ中により多くの酸素空孔が保持され及び/又は作り出される。中性又は還元性雰囲気には、炭素、窒素、水素、硫黄等を含有する環境が含まれる。還元性雰囲気中でのアニーリングにより、酸素空孔が作り出され、この酸素空孔により二酸化チタンナノチューブのバンドギャップが低減する。(図4参照)。アニーリングは、中性(N)環境でも、又は低O分圧を有する環境でも行い得る。これに対して、酸化性(酸素を豊富に含む)雰囲気中でのアニーリングでは、酸素空孔がTiO部位へと変換される。アニーリングの前にナノチューブ基材を洗浄し、乾燥させて、表面及びナノチューブから電解質溶液を除去してよい。
【0037】
前述のとおり、非酸化性アニーリングにより、約1.9〜約3.0eVの範囲のバンドギャップが与えられる。本発明のナノチューブチタニア基材の減少したバンドギャップは、太陽光での水の光電気分解による水素生成に有用である。水の効率的な光電気分解に好ましいバンドギャップは1.6〜2.1eVである。図5では、陽極酸化したチタニアナノチューブ(「TiOナノチューブ(陽極酸化)」)、アニーリングしたチタニアナノチューブ(「TiOナノチューブ(アニーリング)」)、炭素ドープしたチタニアナノチューブ(「TiOナノチューブ(炭素ドープ)」)、ミスマッチ金属(又は不釣り合いな金属:mismatched metals)でコートしたナノチューブ(「TiOナノチューブ(ミスマッチ金属)」)、例えば、本発明の金/炭素ハイブリッドチタニア基材を含む、種々のチタニアナノチューブ間のバンドギャップの相違を示す。
【0038】
チタニア層のドーピング
前述のとおり、ナノチューブチタニア基材は、例えば、第14族元素、第15族元素、第16族元素、及び第17族元素、例えば、炭素、窒素、水素、リン、硫黄、フッ素、セレン等のような元素の任意の組合せでドープしてよい。ドーピングは、当技術分野で公知の通常の手段により、例えば、通常の拡散技術、例えば、固体源拡散、ガス拡散等により行うことができる。一実施形態では、ドーピングは、好ましくは、熱処理、例えば、アニーリングステップを通じて、炭素又は窒素又は硫黄含有環境で行うことができる。窒素ドーピング又は炭素ドーピングのいずれかが別々に生じ得るが、両方生ずることが好ましい。
【0039】
例えば、炭素を組み込むために、陽極酸化サンプルを、化学蒸着炉を使用して、流速20cc/分、40cc/分、及び200cc/分の各々で、アセチレン又はメタン/水素/アルゴンガスの混合物中、650〜850℃に加熱する。炭素含有ガス雰囲気中での総曝露時間は、5〜30分の種々である。炭素含有ガス混合物中での陽極酸化試料のこの熱処理は、結果としてTiOアレイナノチューブへの炭素の組込みをもたらす。このナノチューブを以下炭素修飾TiOナノチューブと呼ぶ。
【0040】
炭素修飾TiOナノチューブのサイズは、およそ200〜500nmの範囲であった。炭素環境中での曝露時間を増加させることにより、TiOナノチューブ内の炭素ナノ構造の成長がもたらされた。炭素の組込み量は、処理時間の増加とともに増加し、サンプルの色もライトグレーからダークグレーへと変化した。アセチレン中で20分より長い時間処理すると炭素ナノコーン様の特徴を有するTiOの完全被覆を生じた。
【0041】
図38では、アセチレン+水素ガス混合物中で、650℃で10分間アニーリングしたナノ構造を有する炭素のデポジションにより修飾したサンプル(炭素修飾TiOナノチューブ)と標準的なアナターゼ粉末の吸収についての比較吸収スペクトルを示す。炭素が存在することにより、酸化チタンの通常の吸収の他に、可視波長範囲において光吸収を生じた。TiOは、文献で報告されているナノ粒子又は酸化物薄層に対し、秩序性ナノチューブとして存在し、炭素は複合材料を形成する炭素ナノ構造として存在した。可視波長での吸収は、炭素処理時間の増加とともに増加した。主要なTiO吸収ピークの追加ショルダー部の幅は、炭素含有ガス雰囲気中でのサンプルの熱処理時間の増加とともに減少した。図39では、炭素修飾TiOナノチューブサンプルの典型的なC 1s XPSスペクトルを示す。288.4eVでのピークは、アセチレンガス混合物中での熱処理中にナノチューブに組み込まれたカーボネート型種によるものであり得る。
【0042】
もう1つの例として、窒素ドーピングを、炭素修飾TiOナノチューブの形成の前に行ってよい。より具体的には、(好ましくは、硝酸塩含有溶液中で)陽極酸化したTiサンプルを、窒素含有雰囲気中、350℃で3〜8時間熱処理することにより、窒素のドーピングを達成することができる。350℃に維持した炉内で、市販の純窒素/分解アンモニアを、流速150〜1000cc/分で陽極酸化Ti表面に通してよい。同様に、硫黄又はセレン粉末に組み込まれた陽極酸化サンプルを、300〜650℃で1〜6時間熱処理することにより、硫黄又はセレンのドーピングも、達成することができる。所望により、炭素修飾TiOナノチューブの形成後に、ナノチューブ構造にドーピングを行ってよい。
【0043】
一実施形態では、炭素修飾TiOナノチューブを、窒素ドーピング後に形成することができる。この場合、窒素のドーピングを、(好ましくは、硝酸塩含有溶液中で)陽極酸化したTiサンプルを、窒素雰囲気中、350℃で3〜8時間熱処理することにより達成することができる。350℃に維持された炉内で、市販の純窒素/分解アンモニアを流速150〜1000cc/分で通す。同様に、硫黄又はセレンのドーピングも、硫黄又はセレン粉末に組み込まれている陽極酸化サンプルを、300〜650℃で1〜6時間熱処理することにより達成することができる。もう1つの実施形態では、窒素ドーピングを、炭素修飾TiOナノチューブの形成後に、ナノチューブ構造に行ってよい。
【0044】
例17では、リンドーピングとその利益を記載する。特に、本発明のナノチューブTiOアレイを、種々のリン酸塩溶液、例えば、0.5M HPO+0.14M NaF中で陽極酸化する。表1では、この方法で達成することができる種々のバンドギャップを例示する。図47〜48に示すように、リン酸塩溶液中で陽極酸化したサンプルは、一般に、硝酸塩溶液中で陽極酸化したサンプルよりも優れた光吸収を示した。このようなことから、リン酸塩溶液、例えば、0.5M HPO+0.14M NaF中での陽極酸化により、TiOナノチューブの外壁にリン酸イオンの吸着が起こり、そしてその後のアニーリングにより、TiO格子中にリン種の拡散が起こり、それによりサブバンドギャップ又は表面状態が生み出されると思われる。図49は、高分解能P 2p XPSスペクトルを示し、133.8eVのピークは、TiOナノチューブ中にリン種が組み込まれていることを示す。
【0045】
以下の表1は、アニーリングと種々の元素のTiOへのドーピングによって達成された種々のバンドギャップを例示する。
【0046】
【表1】

【0047】
水素の光発生
水素を発生させるために、本発明のナノチューブチタン陽極とともに、当技術分野で公知の光電気化学電池を使用してよい。一般に、光電気化学電池は、陽極及び陰極に照射して、H及びOを発生させる。水素を発生させるための例示的な光電気化学電池の概略を図6に例示する。図6で分かるように、陽極用、陰極用、所望により、参照電極用の別々の分室が存在する。大型の設備では、参照電極は使用しなくてよい。これらの分室は、イオン導電率/輸送のために多孔質ガラス又はセラミックフリット又は塩橋を用いて連絡している。この技術の利点は、HとOを分離する必要がないことである。更に、光陽極と光陰極の両方を利用することにより効率の2倍の増加が得られると考えられる。図6は、陽極と陰極の側面照射を示すが、照射は、ありとあらゆる方向からの照射であってよい。また、図6は、照射に好ましい石英レンズも示す。
【0048】
光電気化学電池では、当技術分野で公知の任意の適切な電解質溶液を用いてよいが、好ましい電解質溶液として、優れたイオン導電率を有する塩基性、酸性又は塩水溶液、例えば、1M NaOH水溶液、1M KOH(pH〜14)水溶液、0.5M HSO(pH〜0.3)水溶液及び3.5重量%NaCl(pH〜7.2)水溶液を例示できる。陽極室及び陰極室の両方に、同じ電解質を充填することができる。また、陽極室に、より高いpHの溶液、例えば、KOHを入れ、陰極室に、酸性溶液、例えば、硫酸を入れることもできる。具体的には、図6に関連して、本発明に従って水素を発生するための例示的な光電気化学電池を例14に記載する。
【0049】
光陽極
当技術分野で公知の典型的な光電気化学電池で、任意の適切な光陽極を使用してよいが、本発明の光電気化学電池は、光陽極として、上述したような、本発明のナノチューブチタニア基材を利用することが好ましい。
【0050】
光陰極
一般的に言えば、当技術分野で公知の任意の光陰極を使用して、本発明に従って水素を発生し得る。しかし、2つの好ましい種類の光陰極に、(1)テルル化カドミウム(CdTe)又はテルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe、又はCZT)コーティング白金箔、及び(2)CdTe又はCdZnTeのナノワイヤーでコーティングした陽極酸化TiOナノチューブが含まれる。有機溶媒中及び不活性乾燥雰囲気中で(例えば、不活性グローブボックス中で)、元素を実質的に同時にデポジット(堆積又は蒸着)することによって、デポジション(堆積物又は蒸着物)を達成する。溶媒は、電気分解のために十分な誘電率を有するべきである。典型的な溶媒に、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
典型的な電解質組成物には、例えば、プロピレンカーボネート中の10×10−3M ZnCl+5×10−3M CdCl+0.5及び1.0×10−3M TeCl+25×10−3M NaClOが含まれる。支持電解質として、30×10−3M NaClOを用いてよい。デポジションは、グローブボックス内で制御された雰囲気中で実施し、不活性雰囲気として超高純度アルゴンを用いることが好ましい。グローブボックスの酸素含量及び水分含量は低レベルに制御した。CdZnTeのナノワイヤーは、電位をパルシングすることによりナノ多孔質TiOテンプレート上にデポジットした。典型的なパルス電位サイクルには、2回の陰極電位、2回の陽極電位及び1回の開路電位が含まれた。全ての電位をカドミウム参照電極に関して使用した。陰極のパルス電位は、−0.4V〜−1.2V間で変更することができ、例えば、1秒間パルシングすることができる。陽極のパルス電位は、全ての試験の実施において一定に保った。用いた2回の陽極電位は、0.3V 3秒間と0.7V 5秒間であった。デポジション時間は、通常およそ30分であった。
【0052】
光陽極と光陰極の両方を、上記の電着技術によりコーティングしてよい。所望により、当技術分野で公知のように、後処理を用いて、コーティングを安定化してよい。例えば、コーティングに熱処理を適用してよい。CdTe又はCdZnTeナノワイヤーの使用を、国際特許出願PCT/US06/35252に詳細に説明しているが、上述したようにこの国際出願は、参照することによって本明細書に全体として組み込まれる。
【0053】
光電気化学電池
より高率で水素発生を得るために、光電気化学電池において陽極と陰極の両方に照射することにより、又は陰極室内で酸性溶液を、陽極室内で塩基性溶液を用いることにより、電気エネルギーの外部供給源を排除又は最小化することができる。例えば、例8では、本発明における光陽極の使用を記載する。図22〜24では、例8に記載する光陽極の太陽光照射中に発生した光電流の結果を例示する。図22では、陽極酸化したままのTiO電極の種々の電位において発生した光電流(伝導1)を例示する。図23では、窒素をドープしたナノチューブTiO電極の光電流を例示する。図23に示されるように、N350/6hは、窒素中、350℃で6時間アニーリングした試料であり、N500/6hは、窒素中、500℃で6時間アニーリングした試料であった。比較のため、印加中の暗電流(照射なし)を含めている。図24では、炭素をドープしたTiOの光電流を例示する。
【0054】
図25では、炭素をドープしたナノチューブの光陽極の光変換効率を印加電位の関数として例示し、種々の印加電位における光陽極の光変換効率、ηを示す。効率は、次の関係から算出した
【0055】
【数1】

(式中、
ph=測定外部電位における測定光電流,mA/cm
ΔE=E(電解槽−光)−E(電解槽−暗),V(外部バイアス下、暗条件との比較により光照明によって陽極と陰極との間で発生した光電位)
E(電解槽−光)=光照明下での陽極と陰極との間の測定電位差(バイアス印加下、対標準参照電極)
E(電解槽−暗)=光照明なしでの陽極と陰極との間の電位差
=光陽極に照射される光強度,mW/cm
【0056】
システム(又は系)の効率は外部電位の増加とともに増加したが、これは、光陽極と光陰極との間の光電位と光電流の両方とも増加したためである。陽極に対して、印加電位に加えて光を照射した場合には、陰極での水素発生と陽極での酸素発生を目視で観察することができた。外部電位を維持して光を遮断した場合には、ガスの発生はすぐに止まり、測定電流は、数ミリアンペアから20マイクロアンペア未満のレベルに低下した。
【0057】
図14〜21は、超音波を介する陽極酸化を用いて、種々の条件下で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。本発明の超音波方法は、多くの利点を与え、それらの利点として、例えば、十分な規則性を有する二酸化チタンナノ細孔、陽極酸化時間の短縮、及び長く、十分に安定化されたナノチューブ膜を含む。
【0058】
ナノチューブチタニア基材上への金/炭素コーティングの使用
詳細に上述したように、本発明の要旨は、第一コーティングは金のナノ粒子を含み、第二コーティングは炭素を含む、酸素空孔含有自己秩序化二酸化チタンナノチューブから構成される二酸化チタン表面を含んで成るナノチューブチタニア基材に関する。金は、この態様において使用される好ましい貴金属であるが、例えば、銀、白金、パラジウム、イリジウム、タンタル、ロジウム等の他のいずれの適切な貴金属も使用することができる。複数の酸素空孔含有垂直配向二酸化チタンナノチューブから構成される二酸化チタン表面を有する上述のナノチューブチタニア基材は、自己秩序化酸化チタンナノチューブから構成される酸化チタン表面を形成するために十分な条件下、酸性フッ化物電解質中でチタン金属基材を陽極酸化する工程、酸化チタン表面に金のナノ粒子を分散する工程、非酸化性雰囲気で金のナノ粒子を有する酸化チタン表面をアニーリングする工程、及びアニーリングした酸化チタン表面に炭素をデポジットする工程を含む方法で一般的に製造することが好ましい。
【0059】
ナノチューブチタニア基材は、約1.9eV〜約3.0eVの範囲のバンドギャップを有することが好ましい。更に、二酸化チタンナノチューブを、第14属元素、第15属元素、第16属元素、第17属元素、又はそれらの混合物でドープしてよく、また、窒素ドープ、炭素ドープ、燐ドープ又はそれらの組み合わせを行って良い。更に、炭素修飾二酸化チタンナノチューブを形成するために適する条件下、二酸化チタンナノチューブを炭素で修飾することもできる。
【0060】
上述したように、チタニア基材は、酸化チタン表面に金のナノ粒子分散層と、酸化チタン表面にデポジットされた炭素層を含んで成る。例えば、金粒子は、初期の湿気(又は最初の水分)によって分散してよく、炭素は、化学蒸着によってデポジットして良い。
【0061】
図54は、通常の電極、ハイブリッドミスマッチ金属電極、ハイブリッド超音波処理電極を含む種々のハイブリッド電極の光電流vs電位の比較(Ag/AgCL)と、暗電流を示す。更に、図55は、上述のハイブリッド電極の効率vs印加電圧比較を示す。
【0062】
水を分解して水素を発生するための金/炭素ハイブリッド電極の製造と使用
本発明は、更に、陽極酸化チタン基材に金/炭素をデポジットして製造される金/炭素ハイブリッド電極に関する。この方法は、例18以下で説明するが、ナノチューブチタニア基材に金粒子を分散させることと、基材上に炭素をデポジットすることを一般的に含む。例18で達成された金粒子の分散を、図50に示し、これは、良好な光電流と活性が達成されることを示す。図51は、例18で得られた金/炭素ハイブリッド電極のXPSスペクトルを示す。288.4eVのピークは、炭化チタンの存在を示す。
【0063】
例18に示すように、チタニア基材に金のナノ粒子をデポジットする好ましい方法は、初期湿気含浸(incipient wetness impregnation)により、チタニア基材に炭素をデポジットする好ましい方法は、化学蒸着(CVD)である。これらは好ましい方法であるが、ナノ粒子を分散する他のいずれの既知の方法も使用してよい。
【0064】
水からの光触媒水素発生用金修飾TiOナノチューブ
例19は、酸性フッ化物溶液中でチタンを陽極酸化することによって、垂直配向TiOナノチューブを合成する本発明の態様を示す。その後、陽極酸化ナノチューブを金粒子で装飾し、金粒子を、TiO表面に付けた。例19は、好ましい修飾方法は制御RFスパッタリング(controlled RF sputtering)であることを述べるが、いずれの他の適する技術も使用できる。これらの金修飾TiOナノチューブの還元は、光活性の増加をもたらし、光電気化学試験は、光陽極としてこの材料を用いることで、水素を発生させることが可能であることを示す。光陽極に1太陽可視光を照射後、7.8リットル/時/mに対応する1.7mAの光電流を認めた。
【0065】
金スパッタリング及び熱処理
例20は、陽極酸化TiOサンプルを、RFスパッター(RF sputter)で金を用いてスパッタリングする本発明の他の要旨を述べる。その後、金でスパッタリングしたサンプルを水素雰囲気で還元して熱処理する。図52は、80〜100nmの孔径を有するTiOナノチューブの表面に分散させた均一サイズの金のナノ粒子のSEM像を示す。
【実施例】
【0066】
例1:ナノチューブ二酸化チタン層の形成
模範的なナノチューブ構造を以下のとおり形成する:
ステップ1:Ti金属表面を石鹸と蒸留水を用いて清浄化し、イソプロピルアルコールで更に清浄化した。
【0067】
ステップ2:そのTi材料を、以下に記載するように、室温で陽極酸化溶液に浸漬した。種々の溶液の組合せを用いて、ドーピング元素、例えば、窒素、リン等を組み込むことができる。例えば、P原子を組み込むために、0.5M HPO+0.14M NaF溶液を用いることができ、N原子を組み込むために、0.5〜2.0M Na(NO)+0.14M NaF溶液又はpH3.8〜6.0の0.5〜2.0M NHNO+0.14M NHFを用いることができる。0.5M HPO+0.14M NaF+0.05〜1.0M Na(NO)の組合せも用いることができる。
【0068】
ステップ3:40Vの電位を供給し、20mA/cmの電流密度を維持することができる直流(DC)電源を、Ti材料及び同面積以上のTi表面を有する白金箔(Ptロッド/メッシュ)に接続した。この陽極酸化装備を図7に模式的に示す。陽極酸化するTi材料を電源の陽端子に接続し、白金箔を電源の陰端子に接続した。また、陽極酸化中に実際の電位及び電流を測定するために、外部電圧計及び電流計も回路に並列及び直列に各々接続した。TiとPtとの間の距離を約4cmに維持した。
【0069】
ステップ4:陽極酸化電圧を段階的に印加する(0.5V/分)か、又は陽極酸化電圧を開路電位からより高い値、一般に10〜30Vまで0.1V/秒の割合で連続的に傾斜させた。一般に、電圧は、0.1V/秒の割合で傾斜させ、典型的な最終陽極酸化電位は20Vとした。この方法により、ナノ多孔質表面層を形成するための表面のプレコンディショニングを行った。
【0070】
ステップ5:最終的な望ましい陽極酸化電位に到達したら、電圧を維持し、表面を一定値10〜30V(20Vが好ましい)で陽極酸化して、ナノ細孔/チューブ(直径40〜150nm)を形成した。電流を連続的にモニタリングし、電流のプラトー(又は平坦)値到達からおよそ20分後に陽極酸化を停止した。陽極酸化工程では、pH<3の溶液で400nm長のナノチューブを得るために約45分かかった。pH2.0溶液では、TiOナノチューブの定常状態長さは約400nmであった。陽極酸化時間を長くしても(>45分)、より長いナノチューブ(定常状態長さより長い)は得られなかった。より高いpHの溶液では陽極酸化時間を長くすることが可能になり、その結果として、より長いナノチューブがもたらされた。例えば、pH4.0の0.5M NaNO+0.14M NaF溶液では、4時間の陽極酸化の結果として800nm長のナノチューブがもたらされた。
【0071】
ステップ6:陽極酸化工程中、電解質を連続攪拌した。
【0072】
ステップ7:陽極酸化後にチタン表面上に得られたナノ細孔を、図8及び9に示す。図8から分かるように、多孔質のサイズはおよそ60〜100ナノメートルである。
【0073】
例2:陽極酸化チタンテンプレートの製造
直径16mm、厚さ0.2mmのチタンディスク(0.2mm厚、ESPI-metals, Ashland, Oregon, USA)を、アセトン、イソプロパノール及びメタノールそれぞれでの音波処理により清浄化した後、脱イオン水ですすいだ。乾燥させた試料をテフロンホルダー(Applied Princeton Research, Oak Ridge, TN製)に入れ、陽極酸化のために0.7cmの部分だけを電解質に曝露した。陽極酸化には0.5M HPO+0.14M NaFの溶液を用い、絶えず機械的に攪拌しながら、室温にて電圧20V下で45分間行った。結果として得られたナノ多孔質酸化チタンの形態を、Hitachi S−4700電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)及びShimadzu UV−VISフォトスペクトロメーターを使用して検討した。
【0074】
例3:エチレングリコール/グリセロール有機溶媒中でのチタンの陽極酸化
第1に、陽極酸化チタンテンプレートを調製した。直径16mm、厚さ0.2mmのチタンディスク(0.2mm厚, ESPI-metals, Ashland, Oregon, USA)を、アセトン、イソプロパノール、及びメタノールそれぞれでの音波処理により清浄化した後、脱イオン水ですすいだ。乾燥させた試料を、次ぎにテフロンホルダー(Applied Princeton Research, Oak Ridge, TN製)に入れ、陽極酸化のために1cmの部分だけを電解質に曝露した。
【0075】
陽極酸化は、2種類の有機溶媒で行った。まず1つ目のものはグリセロールベースのものであり、他方はエチレングリコールベースのものであった。次の電解質組合せを用いた:
(a)グリセロール中0.5重量%NHF&8.75重量%エチレングリコール。
(b)グリセロール中0.5重量%NHF&27.5重量%エチレングリコール。
(c)エチレングリコール中0.4重量%NHF。
【0076】
陽極酸化は、電位を1V/秒の割合で20Vまで傾斜させ、その後、電位を20Vで一定に保つことにより行った。グリセロールベースの電解質の場合、陽極酸化を45分間、7時間、及び14時間のそれぞれで実施し、エチレングリコールベースの電解質の場合、45分間及び7時間実施した。上記サンプルのそれぞれを室温で陽極酸化し、結果として得られたナノ多孔質酸化チタンの形態を、Hitachi S−4700電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)を使用して検討した。
【0077】
グリセロールベースの電解質中での陽極酸化では、FESEM画像により表面への酸化チタンナノ細孔の均一な被覆が示された。チューブは、束状に配列されているように見え(図10(a))、水ベースの電解質[0.5Mリン酸(HPO)及び0.15Mフッ化ナトリウム(NaF)]中で生成されるチューブとはかなり違っているように思われた。14時間陽極酸化したサンプルでは、チューブは直径およそ40nm、長さ5μmであった(図10(c))。7時間陽極酸化したサンプルでは、3μmを超える長さが得られ(図10(b))、45分サンプルでは長さ600nmであった。これらのチューブは、とても平滑で、長く、水ベースの電解質を用いたときに一般に観察される波しわは全くないように見えた(図10(b)、10(d))。
【0078】
エチレングリコールベースの電解質中での陽極酸化では、表面はより均一に見え、チューブは表面上により均一に配置されているように思われた。また、グリセロールベースの電解質の場合に記載した束状配列は見られなかった。グリセロールベースの電解質と同様に、比較的短い陽極酸化時間7時間で長さ〜5μmのとても長いチューブを得た。図11参照。チューブは、上述のグリセロールベースの電解質の場合に得られたものと非常によく似ているが、この場合では、一部にかすかにザラザラした先端が観察された(図11(c))。そのため、チューブは、グリセロールベースのサンプルと比べて、わずかに平滑さが劣るように思われた。7時間陽極酸化したサンプルでは、チューブは直径およそ40nm、長さ5μmであり、45分サンプルでは長さ600nmであった。(図11(c)及び11(d)参照)。
【0079】
例4:有機酸(EDTA+NHF)を用いる陽極酸化
チタン金属基材をまた、有機酸であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及びフッ化アンモニウムを用いて陽極酸化した。電解質は、0.5重量%のフッ化アンモニウムをEDTA及び水の飽和溶液に混合することにより調製した。前述のとおり、より速い速度での改善されたナノ細孔の形成を可能にするために、少量の一般的な錯化剤、例えばEDTAを加えてよい。水中でのEDTAの溶解度は室温で0.5g/Ltである。溶液のpHは、モニタリングして、4.1であるようにした。図12では、たとえ溶液のpHがかなり高いとしても、秩序性ナノ細孔に関する完全陽極酸化はほんの1800秒で生じ得ることを示す。これは、錯化剤と水の混合物を電解溶媒として用いた陽極酸化についての初めての報告である。孔の大きさは60〜80nmであることが分かり、チューブの長さは900nmであることが分かった。このことは、高pHにおいて非常に短い時間でより長いチューブを製造する新規手法をもたらす。
【0080】
例5:中性溶液(水及びエチレングリコール;EG)を用いる陽極酸化
チタン金属基材は、0.5重量%フッ化ナトリウム中の無機酸(HPO)の代わりに中性溶液(水及びエチレングリコール)中でも陽極酸化し得る。溶媒としての水中での陽極酸化では、非常に無秩序なナノチューブ構造が生み出された(図13)。水とエチレングリコールの混合物(EG中33〜50%水)では、孔の大きさ及びチューブの長さがそれぞれ、50〜60nm及び1.0μの秩序性ナノチューブ構造が7200秒で生み出された。
【0081】
例6:チタンの超音波を介する陽極酸化
Ti箔(0.2mm厚、99.9%純度、ESPI−metals, Ashland, Oregon, USA)のストックから16mmディスクを打ち抜き、そのディスクをアセトンで洗浄し、ポリテトラフルオロエテレン(PTFE)ホルダー内に固定して、0.7cmの部分だけを電解質に曝露した。以下に記載する種々の電解質の様々な濃度の電解質溶液300mL中でTi箔を陽極酸化することにより、ナノチューブTiOアレイを形成した。
【0082】
陽極酸化には二電極配置を使用した。旗型Pt電極(厚さ:1mm;面積:3.75cm)を陰極とした。陽極酸化は種々の電圧で実施した。陽極酸化電流は、連続的にモニタリングした。陽極酸化中、磁気攪拌装置の代わりに、ウルトラソニケーター(又は超音波処理装置)を使用して、電解質に移動性を与えた。超音波処理中に用いられる振動数は、およそ40〜45kHzであり、振動数約42kHzが好ましい。合計の陽極酸化時間は、15分から75分まで変更した。陽極酸化サンプルを蒸留水によりしっかりと洗浄して、陽極酸化溶液から吸蔵イオンを除去し、炉で乾燥させ、水の光触媒に作り上げた。
【0083】
陽極酸化に用いた様々の条件は、以下のとおりであった:
(a)手段(又は方法)=超音波;電圧=20V;時間=15分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NaF:0.14M)
孔径分布=80〜100nm;チューブ長=300〜400nm(SEM;図14)。
(b)手段=超音波;電圧=20V;時間=30分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NaF:0.14M)
孔径分布=80〜100nm(SEM;図15)。
(c)手段=超音波;電圧=20V;時間=45分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NaF:0.14M)
孔径分布=80〜100nm;チューブ長=600〜700nm(SEM;図16)。
(d)手段=超音波;電圧=20V;時間=60分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NaF:0.14M)
孔径分布=80〜100nm(SEM;図17)。
(e)手段=超音波;電圧=20V;時間=75分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NaF:0.14M)
孔径分布=80〜100nm(SEM;図18)。
(f)手段=超音波;電圧=10V;時間=45分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NaF:0.14M)
孔径分布=50〜60nm(SEM;図19)。
(g)手段=超音波;電圧=10V;時間=45分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NaF:0.07M)
孔径分布=40〜50nm(SEM;図20)。
(h)手段=超音波;電圧=10V;時間=45分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NHF:0.14M)
孔径分布=50〜60nm(SEM;図21)。
【0084】
例7:超音波を用いるナノチューブチタニア基材の更なる製造
この実施例に用いられる化学薬品には、リン酸(HPO、Sigma-Aldrich、水中85%);フッ化ナトリウム(NaF、Fischer、99.5%);フッ化カリウム(KF、Aldrich、98%);フッ化アンモニウム(NHF、Fischer、100%)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、Fischer、99.5%)、及びエチレングリコール(EG、Fischer)が含まれる。
【0085】
ナノ多孔質TiOテンプレートは、Ti箔(0.2mm厚、99.9%純度、ESPI-metals, USA)のストックから16mmディスクを打ち抜き、そのディスクをアセトンで洗浄し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホルダー内に固定して、0.7cmの部分だけを電解質に曝露することにより形成した。ナノチューブTiOアレイは、周波数およそ40〜45kHz(約42kHzが好ましい)の超音波を用いて電解質溶液(0.5M HPO+0.14M NHF)300mL中でTi箔を陽極酸化することにより形成した。陽極酸化には二電極配置を使用した。旗型Pt電極(厚さ:1mm;面積:3.75cm)を陰極とした。陽極酸化は、5Vから20Vまでの様々な印加電位により実施した。陽極酸化中、磁気攪拌装置の代わりに、超音波を溶液に当てて、溶液内のイオンに移動性を与えた。陽極酸化電流は、連続的にモニタリングした。電流は初期増減過渡現象後に定常値に達した。低pH電解質中での定常電流値到達から20分後に陽極酸化を停止した。陽極酸化サンプルを蒸留水でしっかりと洗浄して、陽極酸化溶液から吸蔵イオンを除去し、空気炉で乾燥させ、走査電子顕微鏡(SEM;Hitachi, S-4700)により更に特定した。上記のものの各々を、超音波を用いて混合した。
【0086】
例8:光陽極
本発明を例示するために、1cmの陽極を、例えば、太陽光スペクトルで照射し、陰極はコーティングされていない表面積7.5cmのPtとし、室内光は別として、特別な光照射を行わなかった。一般に、試験用の光陽極の表面積は0.7cm〜16cmの範囲であり、Pt−陰極は約10cmであった。大規模装置を使用して、面積のより大きなナノチューブ二酸化チタン−陽極を製造することができる。
【0087】
光源は、Newport Inc製造の300Wキセノンランプであり、AM1.5フィルターを使用して、1−太陽強度 〜100mW/cmをシミュレートした。陽極への入射光強度は〜87mW/cmであった。
【0088】
光陽極を次の条件で調査した:
(a)0.5M HPO+0.14M NaF溶液中で陽極酸化したナノチューブTiO、(陽極酸化したまま)。
(b)上記のように陽極酸化し、N雰囲気中、350℃で6時間アニーリングした
(c)条件(a)と同じように陽極酸化し、N雰囲気中、500℃で6時間アニーリングした
(d)条件(a)と同じように陽極酸化し、650℃で5分間炭素をドープした(C650/5m)
(e)条件(a)と同じように陽極酸化し、650℃で10分間炭素をドープした(C650/10m)
(f)条件(a)と同じように陽極酸化し、650℃で15分間炭素をドープした(C650/15m)
(g)条件(a)と同じように陽極酸化し、650℃で20分間炭素をドープした(C650/20m)
(h)0.5M NaNO+0.14M NaF、pH4及び5中で陽極酸化し、窒素中、350℃で6時間+アニーリングした。
【0089】
図22〜24では、上記の光陽極の太陽光照射中に発生した光電流の結果を例示する。ナノチューブ二酸化チタン電極の電位を、陽極方向にその開路電位から1.2Vまで5mV/秒の割合で増加させた。外部電気エネルギーの供給(陽極電位の印加による)を与えて、TiOの光応答を特徴付けた。この場合では、光陰極に光を照射しなかった。より高率での水素発生を得るために、陽極と陰極の両方に照射することにより、又は陰極室内で酸性溶液を用い、陽極室内で塩基性溶液を用いることにより、電気エネルギーの外部供給源を除去又は最小化することができる。
【0090】
図22では、陽極酸化したままのTiO電極の種々の電位において発生した光電流(伝導1)を例示する。図23では、窒素をドープしたナノチューブTiO電極の光電流を例示する。サンプルN350/6hは、窒素中、350℃で6時間アニーリングした試料であり、サンプルN500/6hは、窒素中、500℃で6時間アニーリングした試料である。比較のため、印加中の暗電流(照射なし)を含める。図24では、炭素をドープしたTiOの光電流を例示する。
【0091】
図25では、炭素をドープしたナノチューブの光陽極の光変換効率を印加電位の関数として例示し、種々の印加電位における光陽極の光変換効率、ηを示す。システムの効率は外部電位の増加とともに増加したが、これは、光陽極と陰極との間の電位と光電流の両方も増加したためである。印加電位に加えて光を陽極に対し照射した場合には、陰極での水素発生、そして陽極での酸素発生を明白に(又は目視で)観察することができた。外部電位を維持して光を遮断した場合には、ガスの発生はすぐに止まり、測定電流は、数ミリアンペアから20マイクロアンペア未満のレベルに低下した。
【0092】
1時間に1mA/cmの電流が流れる場合には、発生する水素の総量は0.4mlを超えるであろう。本発明で観察される最大電流は、1−太陽光強度を用いて電位0.7V(Ag/AgCl)では約2.5mA/cmであった。水素発生速度は、1時間につき光陽極面積1m当たり10リットルを超えるであろう。この速度は、光陰極にも照明することにより何倍も高めることができる。
【0093】
例9:陽極酸化時間の影響
図26〜28では、陽極酸化時間の増加に伴って観察されるナノチューブの成長を例示する。用いた陽極酸化溶液は、0.5M HPO及び0.14M NaFからなり、陽極酸化は室温(22〜25℃)で陽極酸化電圧20Vを用いて実施した。ナノ多孔質TiOチューブの成長はFESEMによりモニタリングした(図26)。
【0094】
図から、陽極酸化の120秒後に、チタンの表面に小さなピットが形成し始めることが分かる(図26)。これらのピットは、孔間領域を保持しながら、600秒後にサイズが増大する。900秒後には、表面の大部分が二酸化チタン層で覆われるが、孔はあまり明確ではない。酸化物層の長さはおよそ300nmであることが分かった。1200秒後には、十分な秩序性を有するナノ細孔で表面は完全にいっぱいになっている。外孔の大きさ(又は開口部)は60〜100nmの範囲であり、チューブの長さはおよそ700〜750nmであることが分かった。ナノ細孔壁は15〜20nm厚であることが分かった。障壁層(即ちナノチューブと金属表面との間の接合部)は、互いに結合したドームの形である(図27)。更に、これらのナノ細孔に対する時間の効果を更に見つけ出すために、陽極酸化時間を2700秒及び4500秒まで更に増加させた。例えば、7200秒及び10800秒へと時間を更に増加させることでは、孔径やナノチューブの長さへの影響はないことが観察される。磁気攪拌下で完了させた場合には、類似サンプルで1500秒後に無秩序細孔表面が得られ、2700秒後に初めて秩序化ナノチューブが形成された(図28)。ナノチューブの長さはおよそ500nmであることが分かった。よって、陽極酸化に超音波を用いることによって、合成時間を50%まで短縮することができ、ナノチューブの長さを700〜750nmに増加させることもできる。また、超音波処理したナノチューブは、磁気攪拌により製造されるナノチューブより良好な秩序性を有することも観察される。
【0095】
例10:印加電位の影響
ナノチューブの均一性及び孔径は、印加電位の増加とともに改善するように思われる。ナノ多孔質TiO構造の形成に対する印加電位の効果を確認するために、電解液(0.5M HPO+0.14M HF)と時間(2700秒)を一定に保ち、超音波下で陽極酸化を行うことにより、5Vから20Vまでの種々の印加電位についてのデータを集めた。図31では、印加電位5VではナノチューブTiOの製造に十分ではないが、一方、10VではナノチューブTiOを製造するのに十分であることを示す。しかしながら、15V及び20Vを系に印加すると、孔の均一性及び秩序性は増加する。また、印加電位の増加とともに平均の孔の大きさ(又は開口部)も増加した。また、興味深いことには、孔の大きさ30〜40nmのナノチューブは、0.5M HPO及び0.07M HF(又はNaF)の陽極酸化溶液に10Vを印加することにより合成することができる(図31(d))。従って、上記の観察は、TiOナノチューブの孔の大きさは合成パラメーター(印加電圧及びフッ化物イオン濃度等)を変更することにより要件どおりに製造可能であることを示す。
【0096】
次の表では、バンドギャップ及び光触媒研究から得られた結果を示す。
【0097】
【表2】

【0098】
これらの結果より、超音波を介する(又は超音波手段による)陽極酸化は磁気攪拌による陽極酸化より良好な成果を生ずることを示す。超音波サンプルは、低印加電位において、高電位で磁気攪拌したサンプルとほぼ同様の光活性を与える。
【0099】
例11:チタンの両面陽極酸化
電極は、1.5cmの面積のチタン箔を使用し、チタン箔を小銅箔及び導電性エポキシ樹脂を介して銅ワイヤーに接続することにより調製した。それを、次ぎに、蒸留水中0.5M HPO及び0.14M NaFの電解液中に45分間、印加電位20Vで吊るした。この場合には、両面で0.4mAの非常に優れた光活性を示し、一方、片面陽極酸化を用いて、ナノ多孔質チタンの処理を行わない場合、およそ0.1mAを示した。
【0100】
例12:超音波処理下でTiOナノチューブを製造するための種々のフッ化物の使用
Ti箔(0.2mm厚、99.9%純度、ESPI-metals, Ashland, Oregon, USA)のストックから16mmディスクを打ち抜き、そのディスクをアセトンで洗浄し、ポリテトラフルオロエテレン(PTFE)ホルダー内に固定して、0.7cmの部分だけを電解質に曝露した。リン酸及び種々のフッ化塩の電解質溶液300mL中でTi箔を陽極酸化することにより、ナノチューブTiOアレイを形成した。陽極酸化には二電極配置を使用した。旗型Pt電極(厚さ:1mm;面積:3.75cm)を陰極とした。陽極酸化は異なる電圧で実施した。陽極酸化電流は、連続的にモニタリングした。陽極酸化中、磁気攪拌装置の代わりに、超音波処理を使用して、電解質に移動性を与えた。総陽極酸化時間は、15分から75分まで変更した。陽極酸化サンプルを蒸留水により適切に洗浄して、陽極酸化溶液から吸蔵イオンを除去し、炉で乾燥し、水の光触媒に作り上げた。SEM画像(図32)は、種々のフッ化塩をこのために使用可能であることを示した。NaFを用いる速度は、KF及びNHFよりも速かった(図33;電流と時間の関係を示すプロット)。
【0101】
陽極酸化に用いた種々の条件は以下のとおりであった:
a.手段(又は方法)=超音波;電圧=20V;時間=30分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NaF:0.14M)
孔径分布=80〜100nm(SEM;図32(a))。
b.手段=超音波;電圧=20V;時間=30分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;KF:0.14M)
孔径分布=80〜100nm(SEM;図32(b))。
c.手段=超音波;電圧=20V;時間=30分;溶液量=300mL
電解質=(蒸留水中、HPO:0.5M;NHF:0.14M)
孔径分布=80〜100nm;(SEM;図32(c))。
【0102】
前述のとおり、超音波処理下でチタンを陽極酸化するために、種々のフッ化物を用いることができる。NaFは、材料の迅速合成に最も望ましいように思われるが、水素の光電気化学的発生を考えた場合には、NHFは、NaFよりも優れた供給源であるように思われる(図34)。
【0103】
例13:エチレングリコールを介するTiOナノチューブアレイ合成
エチレングリコールと超音波処理とを組み合わせることにより、孔の大きさが非常に小さい(20〜40nm)極めて高品質の秩序性(六角)ナノチューブ(図35a)が得られる。例えば、0.5重量%のフッ化アンモニウムを300mLのエチレングリコール(EG)に溶かし、それを電解液として用いた場合には、ナノチューブの長さは1μであることが分かった。比較のため、エチレングリコールを磁気攪拌条件下で用いた(図35b)。超音波を介する陽極酸化(この陽極酸化中には周波数およそ40〜45kHz(周波数約42kHzが好ましい)を適用した)では、TiOナノチューブを製造するために1800秒かかったが、一方、磁気攪拌を用いると3600秒より長くかかる。希釈エチレングリコール溶液(水中)及びジエチレングリコールの場合にも同じ方法を用いることができる。XPS研究(図36)では、ほぼ66%の炭素はカーボネート種としてTiと結合しており、そのため、水からの水素の電気化学的発生についてより良い成果を出すために役立つことが示された(図37)。比較のため、N処理したTiO材料の結果も示した(表3)。
【0104】
【表3】

【0105】
前述のとおり、高品質のナノチューブを、エチレングリコール、希釈エチレングリコール及びジエチレングリコールから超音波媒介下で製造することができる。種々のフッ化物源を用いることができるが、グリコール媒体へのNHFの溶解度は他のものより優れているため、NHFは有機媒体中へのより優れた供給源である。また、超音波処理した材料の光活性は通常の磁気攪拌方法より高いことも観察される。
【0106】
例14:水素発生のための光電気化学電池
図6では、本発明に従って水素を生成させるための模範的な光電気化学電池を模式的に例示する。光化学電池には、光陽極(ナノチューブTiO試料)及び陰極(白金箔)用の独立した(又は別々の)分室を有するガラスセルが含まれる。これらの分室は、微細多孔質ガラスフリットにより連絡していてもよい。参照電極(Ag/AgCl)は、塩橋(飽和KCl)−ルギンプローブ管を用いて陽極に近接して配置され得る。このセルには、光入射用の直径60mmの石英窓が備わっていた。用いた電解質は、1M NaOH、1M KOH(pH〜14)、0.5M HSO(pH〜0.3)及び3.5重量%NaCl(pH〜7.2)水溶液であった。電解質は、試薬用化学薬品と2倍の蒸留水を用いて調製した。電解質に溶解したガスをパージアウトするために、通気も脱気も行わなかった。コンピュータ制御のポテンシオスタット(モデル:SI 1286、Schlumberger, Farnborough, England)を使用して、電位を制御し、光電流を記録した。300W 太陽光シミュレーター(モデル:69911、Newport-Oriel Instruments, Stratford, CT)を光源として用いた。160Wの電力レベルの光をAM1.5フィルターに通した。光電気化学的研究は、バンドパスフィルターの種々の組合せで実施した:1.AM 1.5フィルター 2.AM 1.5+UVフィルター(250〜400nm、Edmund Optics、U330、中心波長330nm及びFWHM:140nm)及び3.AM 1.5+可視バンドパスフィルター(Edmund Optics、VG−6、中心波長520nm及びFWHM:92nm)。光の強度は、ラジアントパワーアンドエネルギーメーター(a radiant power and energy meter)(モデル 70260、Newport Corporation, Stratford, CT, USA)及び熱電対列センサー(モデル: 70268、Newport)により測定した。補正を行っていない入射光強度は、AM 1.5フィルター、AM 1.5+UVフィルター、及びAM 1.5+VISフィルターそれぞれに関して、174mW/cm、81mW/cm及び66mW/cmであった。照明下、走査速度5mV/秒でサンプルを陽極分極させ、光電流を記録した。光変換効率の算出のため、光陽極及び陰極の電位も記録した。
【0107】
例15:アニーリングしたリン酸塩含有TiOナノチューブの光電流−電位特性
図40では、520nmに中心波長(CWL)を有し、FWHMが92nmである可視光でのみ照明されたアニーリングしたリン酸塩(フォスフェート:phosphate)含有TiOナノチューブの光電流−電位特性を示す。UV成分の不在下では、TiOナノチューブの光活性は大幅に低下した。バイアス電位0.2Vでの光電流密度は約0.2mA/cmであった。この値が同じようなバイアス条件を用いて窒素をドープしたナノチューブで報告された値よりも高かったことには注目すべきである。
【0108】
例16:炭素修飾TiOサンプルの印加電位の関数としての光電流結果
図41では、炭素修飾TiOサンプルの光電流結果を印加電位の関数として示す。太陽光からUV成分を除去した場合、複合電極は、適用陽極電位下で光電流密度0.45mA/cmを示した。可視光(UVを含まない)照明で測定した光電流密度は、異なる経路によって製造されたTiO2−x材料についてBardと共同研究者により報告されているものと同様であった。
【0109】
PO+NaF中で陽極酸化した後、650℃でおよそ5分間炭素をドープした炭素修飾ナノチューブTiOの複合電極は、太陽光照明下、より高い陽極電位で光電流密度2.75mA/cmを示した。この光電流密度は、1m面積の光陽極での水素発生速度11リットル/時間に相当する。陰極室及び陽極室で発生したガスは、ガスクロマトグラフィーを用いて別々に分析し、水素と酸素の比は2:1であった。これは、炭素修飾TiOサンプル中の炭素が安定であることを示す。更に、水素生成は72時間より長い間安定していた。長時間の試験は、ランプの寿命制限により中断された。幾何学的表面積0.5〜16.0−cmの炭素修飾TiOナノチューブサンプルを評価し、光電流密度は、陽極の表面積に関係なく一定であった。
【0110】
図42では、光電流(Iph)値に基づくバンドギャップ測定結果を、光エネルギーの関数として示す。(Iphhν)1/2とhνとの間に直線関係を観察することができ、これは、遷移が間接的であることを示す。図から、炭素修飾TiOナノチューブアレイのバンドギャップは、<2.4eVであると考えることができた。光エネルギーは、可視領域においてバンドパスフィルターを50nmずつ進めて使用することにより変更した。そのため、バンド遷移エネルギーレベルの測定精度は限定された。サンプルの光電気化学的挙動は光学的吸収の結果と一致し、バンドギャップ修飾だけでは光活性の増加は起こらないということが確認される。
【0111】
PO+NaF中で陽極酸化した後、650℃でおよそ5分間炭素をドープした炭素修飾サンプルは、不活性雰囲気でアニーリングしたサンプルよりも優れた光電気化学的挙動を示した。この改善された挙動は、2つの理由、即ち、1.炭素によってもたらされるバンドギャップ状態と、2.還元性環境によってもたらされる三価Tiの格子間分子の存在及び酸素空孔状態とに起因する可能性がある。この研究では、可視波長での吸収増加は、炭素修飾により局所バンドギャップ状態がもたらされたことを示唆する。窒素/水素アニーリングサンプル及び炭素修飾TiOナノチューブサンプルで実施した高分解能XPS研究では、Ti3+種の存在が示唆された。TiOにおけるTi3+陽イオンの存在は、電気的中性を維持するために、酸素空孔と関連するはずである。
【0112】
本発明のTiOナノチューブは、n型半導体であると考えられる。図43〜46に示されるように、Mott−Schottky結果もn型挙動を示す。Mott−Schottky分析を、暗(室内光照明)状態と、(模擬太陽光による)照明状態の両方で実施した。図43〜44では、比較のため、陽極酸化したままのナノチューブアレイとN−アニーリングナノチューブアレイについての電位と1/Cの関係を示す。陽極酸化したままのサンプルは、HPO+NaF中で陽極酸化し、N−アニーリングサンプルは、N中、650℃で5〜10分間アニーリングした。電荷キャリア密度は、Mott−Schottkyプロットの直線部分の傾きから算出することができる。Mott−Schottkyの関係によれば、電荷キャリア密度は、N=2/(eεεm);(式中、e=基本電子電荷、ε=比誘電率、ε=真空での誘電率、m=Eと1/Cの関係を示すプロットの傾き)として与えられる。この関係から、傾きの値が小さくなるほど電荷キャリア密度が高くなることが分かる。
【0113】
Mott−Schottky分析に基づいて算出した電荷キャリア密度は、炭素修飾ナノチューブサンプルと窒素−アニーリングナノチューブサンプルの両方の場合には1〜3×1019cm−3の範囲であった。陽極酸化したままのサンプルと酸素−アニーリングサンプルの電荷キャリア密度は、それぞれ、5×1017cm−3及び1.2×1015cm−3であった。暗状態と照明状態では、N−アニーリング試料を除き、(桁数ではなく)電荷キャリア密度において有意差はなかった。この理由は、入射光の紫外部の割合が少ないことにあると考えることができる。UV照射は、Ti3+状態及び酸素空孔を作り出すことによりTiOの親水性を改善すると考えられる。このように、電荷キャリア密度はUV光照明により高まる可能性がある。窒素又は水素雰囲気中でのアニーリング中に酸素空孔が生じた場合、電荷キャリア密度は増加すると予想され、アニーリング処理後のこのように予想される電荷密度の増加は、不活性環境又は還元性環境でのアニーリング後にもたらされた酸素空孔に起因する可能性がある。しかしながら、本発明の方法では、その代わりに光照明によって電荷キャリア密度の低下を示し、フラットバンド電位には大きな変化はなかった。加えて、O−アニーリング試料によって生じた光電流密度(〜1.4mA/cm)が、電荷キャリア密度がかなり低いにもかかわらず陽極酸化したままの試料のものよりも著しく高いことから、測定光電流密度はナノチューブの電荷キャリア密度と直接関係していないことが示された。種々の相、例えば非晶質の、アナターゼ、及びルチルの存在が、電荷キャリア密度より光活性に影響を与えているように思われる。
【0114】
例17:ホスフェート溶液中で陽極酸化されたナノチューブTiOアレイの光吸収
図47は、0.5MHPO+0.14MNaF(即ち、ホスフェート又はリン酸塩)溶液中で陽極酸化したナノチューブTiOアレイの光吸収スペクトルを示す。アニーリングした試料(窒素雰囲気中350℃で6時間アニーリングした)は、陽極酸化したままの試料と比較して、吸収ピークの30nm赤方偏移を示した。不活性な(N)雰囲気又は還元性の(H)雰囲気中でアニーリングすると、同様の光吸収特性を生じた。ナイトレート(又は硝酸)含有溶液中での陽極酸化は、ナノチューブ構造に吸着された窒素種をもたらし、表面状態を作り得る。図48は、硝酸溶液中で陽極酸化され、窒素雰囲気中でアニ―リングされたTiOナノチューブ試料の典型的なN1sXPSスペクトルを示す。400eVに分子状に化学吸着した窒素のピークのみを観察した。Ti−N結合に関連して396eVの極めて弱いピークが観察され、それは、TiO中に窒素種の組み込みを示した。
【0115】
従って、ホスフェート溶液中で陽極酸化した試料は、ナイトレート溶液中で陽極酸化した試料と比較して、相当良好な光吸収を示した。0.5MHPO+0.14MNaF溶液中での陽極酸化は、TiOナノチューブの外壁でホスフェートイオンの吸着を生じ、低酸素圧でのその後のアニーリングは、サブ−バンドギャップ又は表面状態を作るTiO格子中に燐種の拡散を生じ得る。図49は、高分解能P2pXPSスペクトルを示し、133.8eVのピークは、TiOナノチューブにリン種が組み込まれていることを示す。
【0116】
例18:水を分解して水素を発生させるための金/炭素ハイブリッド電極の製造と使用
この方法では、初期湿気法(incipient wetness method)によって、(本発明の超音波法を用いて製造した)ナノチューブチタニア基材上に金粒子を分散後、化学蒸着(CVD)法によってその上に炭素をデポジットした。少量の金粒子をイソプロパノールに分散し、一滴の溶液を活性化(2時間、473K、空気)陽極酸化チタン試料に置いた。その後、乾燥し、923Kで5分間CVD法によって炭素デポジションのために使用した。金粒子のディスパージョン(又は分散物)を図50に示した。それは、良好な光活性を示し、高電位(1.3V)で優れた活性(10mAの光電流)を示した。この結果は光を消す(又は切る)ことで確認した。光を消すと、全く光電流又は活性を示さず、光がない場合、水素の発生も観察されなかった。図51は、金/炭素ハイブリッド電極のXPSスペクトルである。288.4eVのピークは、炭化チタンの存在を示す。
【0117】
例19:水からの光触媒水素発生用金修飾ナノチューブ
垂直配向TiOナノチューブを酸性フッ化物溶液中で陽極酸化することで合成した。得られたナノチューブは、直径50〜80nmで、長さ500nmと認められた。これらの陽極酸化ナノチューブを金粒子で修飾した。制御されたRFスパッタリングによって、TiO表面上に、金のナノ粒子を付けた。SEMの結果は、TiO表面上に8〜10nmの金のナノ粒子を示した。金修飾TiOナノチューブの還元は、光活性の増加をもたらした。金のナノ粒子の存在は、EDSによる評価によって確認された。光電気化学試験は、この材料を光陽極として使用することで水素の発生が可能であることを示した。光陽極に1太陽可視光(1 sun visible light)を照射後、7.8リットル/時/mに対応する1.7mAの光電流を認めた。
【0118】
例20:金スパッタリング及び熱処理
陽極酸化TiO試料を、RFスパッターで金を用いてスパッタリングした。スパッタリングは、12Vで、特定のターゲット距離で、5秒間、10秒間及び15秒間行った。水素雰囲気中で、金スパッタリング試料を還元した。アルゴンをキャリアガスとして用いた。650℃で15分間熱処理を行った。
【0119】
SEM像は、TiOナノチューブの表面に分散した、均一寸法の金のナノ粒子を示した。TiOの孔径は80〜100nmであった。ナノ粒子の寸法は、10nmであった。図52は、ナノ金スパッタリング処理TiOナノチューブのSEM像を示す。
【0120】
例21:電気光化学試験(PEC)
300ワットのハロゲンランプを有するニューポート太陽シミュレーター(newport sun simulator)を、可視光で陽極表面を照射するために用いた。この研究のために3−電極電気化学電池を用いた。参照電極として飽和カロメル電極を用いた。1MKOH溶液中で、PEC試験を行った。ソルルトトロン1286ゲイン・フェイズ。アナライザー(Solrtotron 1286 gain phase analyzer)と1260電気化学インターフェイスを用いて電気化学試験を行った。コルウェア(corrware)とコルビュー(corrview)ソフトウェアを用いて試験中の電位と電流をモニターした。図53は、TiO/金ナノ複合物に関するPEC試験結果を示す。電極面積は、0.7cmである。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、Ti2p領域における(N雰囲気下でアニーリングした)TiOのXPSスペクトルを示す。
【図2】図2は、典型的な陽極酸化装置及び陽極酸化時間を例示する。
【図3】図3は、陽極酸化中の電解質の超音波処理によりナノチューブ形成を助け、他の混合技術によって得られるよりも均一で平滑なナノチューブを与える方法を例示する。
【図4】図4は、還元性雰囲気中でのアニーリングによるTiO伝導性バンドへの影響を例示する。
【図5】図5は、本発明によるアニーリング前後のバンドギャップの違いを示す。
【図6】図6は、光電気化学電池及び太陽光を用いる水素発生装備の実験室規模配置(又はアレンジメント)の概略図である。
【図7】図7は、本発明とともに使用し得る陽極酸化装備の概略図である。
【図8】図8は、陽極酸化後のナノ多孔質チタン表面の上面図の電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)画像である。
【図9】図9は、陽極酸化後のナノ多孔質チタン表面の側面図のFESEM画像である。
【図10】図10は、グリセロールベースの(又はグリセロール系)電解質中での陽極酸化により形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図11】図11は、エチレングリコールベースの(又はエチレングリコール系)電解質中での陽極酸化により形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図12】図12は、EDTA及び0.5重量%NHFを用いるナノチューブTiOのSEM画像を示す。
【図13】図13は、次の中性水溶液:(a)EG+0.5重量%NaF、(b)HO+0.5重量%NaF、(c)[HO+EG(1:1 体積比)]+0.5重量%NaF、(d)[HO+EG(1:3 体積比)]+0.5重量%NaFを用いて得られたナノチューブTiOのSEM画像、及び(e)(c)の横断面図を示す。
【図14】図14は、超音波を用いる陽極酸化を用いて、種々の条件下で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図15】図15は、超音波を用いる陽極酸化を用いて、種々の条件下で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図16】図16は、超音波を用いる陽極酸化を用いて、種々の条件下で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図17】図17は、超音波を用いる陽極酸化を用いて、種々の条件下で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図18】図18は、超音波を用いる陽極酸化を用いて、種々の条件下で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図19】図19は、超音波を介する陽極酸化を用いて、種々の条件下で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図20】図20は、超音波を用いる陽極酸化を用いて、種々の条件下で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図21】図21は、超音波を用いる陽極酸化を用いて、種々の条件下で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図22】図22は、本発明の種々の光陽極に太陽光を照射する間に発生した光電流の結果を例示する。
【図23】図23は、本発明の種々の光陽極に太陽光を照射する間に発生した光電流の結果を例示する。
【図24】図24は、本発明の種々の光陽極に太陽光を照射する間に発生した光電流の結果を例示する。
【図25】図25は、異なる印加電位における光陽極の光変換効率、ηを示す。
【0122】
【図26】図26は、超音波を介する陽極酸化を用いて、種々の陽極酸化時間で形成された酸化チタンナノ細孔のFESEM画像を示す。
【図27】図27は、多孔質酸化チタンナノチューブのSEM画像、(a)細孔表面、(b)ナノチューブ、(c)障壁層(又はバリア層)及び(d)チタン表面を示す。
【図28】図28は、(a)1800秒後及び(b)2700秒後に磁気攪拌を用いた酸化チタンナノチューブのSEM画像を示す。
【図29】図29は、リン酸及びフッ化ナトリウム中でTiの陽極酸化の間の、電流と時間の関係を示すグラフ(a)磁気攪拌及び(b)超音波攪拌である。
【図30】図30は、0.5M HPO及び0.14Mフッ化塩を用いたナノチューブTiOのSEM画像を示す。(a)フッ化アンモニウム及び(b)フッ化カリウム。
【図31】図31は、ナノチューブの形成における印加電位の効果を示す、秩序性(又は規則性)ナノ多孔質TiOチューブのSEM画像を示す。
【図32】図32は、(a)NaF(b)KF及び(c)NHFを用いる陽極酸化の結果のSEM画像を示す。
【図33】図33は、リン酸と種々のフッ化物媒質(a)KF、(b)NHF及び(c)NaF中で、チタンの陽極酸化の間の、電流と時間のプロットを示す。
【図34】図34は、NaF及びNHFの光電流密度のプロットを示す。
【図35】図35は、(a)超音波及び(b)磁気攪拌により調製したエチレングリコール+0.5重量%NHF溶液を用いたナノチューブTiOのSEM画像を示す。
【図36】図36は、大部分のCがカーボネート種としてTiに付着する(又は結合する)ことを示す、超音波−EG−TiOナノチューブアレイのXPSスペクトルを示す。
【図37】図37は、種々の処置済TiOナノチューブアレイを用いる水からの光電気化学的水素発生についてのプロットを示す。
【図38】図38は、炭素修飾TiOナノチューブのデポジション(堆積又は蒸着)により修飾したサンプルの比較吸収スペクトルを示す。
【図39】図39は、炭素修飾TiOナノチューブサンプルの典型的なC 1s XPSスペクトルを示す。
【図40】図40は、520nmに中心波長(CWL)を有し、FWHMが92nmである可視光でのみ照明されたアニーリングしたリン酸塩含有TiOナノチューブの光電流−電位特性を示す。
【図41】図41は、炭素修飾TiOサンプルの光電流結果を、印加電位の関数として示す。
【図42】図42は、光電流(Iph)値に基づくバンドギャップ測定結果を光エネルギーの関数として示す。
【図43】図43は、TiOナノチューブのn型挙動を示す、Mott−Schottky(又はモット−ショットキー)結果を例示する。
【図44】図44は、TiOナノチューブのn型挙動を示す、Mott−Schottky結果を例示する。
【図45】図45は、TiOナノチューブのn型挙動を示す、Mott−Schottky結果を例示する。
【図46】図46は、TiOナノチューブのn型挙動を示す、Mott−Schottky結果を例示する。
【図47】図47は、0.5M HPO+0.14M NaF(即ち、リン酸塩)溶液中で陽極酸化したナノチューブTiOアレイの光吸収スペクトルを示す。
【図48】図48は、硝酸塩溶液中で陽極酸化し、窒素雰囲気中でアニーリングしたTiOナノチューブサンプルの典型的なN 1s XPSスペクトルを示す。
【図49】図49は、リンをドープしたTiOナノチューブの高分解能P 2p XPSスペクトルを示す。
【図50】図50は、ナノチューブTiO表面上の金粒子の分散を示すSEM像を示す。
【図51】図51は、金/炭素ハイブリッド電極のXPSスペクトルである。
【図52】図52は、ナノ金スパッタTiOナノチューブのSEM像を示す。
【図53】図53は、電極面積が、0.7cmである、TiO/Auナノ複合体のためのPEC試験の結果を示す。
【図54】図54は、種々のハイブリッド電極の光電流vs電位比較(Ag/AgCl)を示す。
【図55】図55は、種々のハイブリッド電極の効率vs印加電位比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素空孔を含む垂直に配向した複数の二酸化チタンナノチューブから構成される二酸化チタン表面を有するナノチューブチタニア基材の製造方法であって、
自己秩序化酸化チタンナノチューブから構成される酸化チタン表面を形成するために十分な条件下、酸性フッ化物電解質中でチタン金属基材を陽極酸化する工程、
酸化チタン表面に金のナノ粒子を分散する工程、
非酸化性雰囲気で金のナノ粒子を有する酸化チタン表面をアニーリングする工程、及び
アニーリングした酸化チタン表面に炭素をデポジットする工程
を含んで成る製造方法。
【請求項2】
非酸化性雰囲気は、還元性雰囲気である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
還元性雰囲気は、窒素、水素及び分解アンモニアの少なくとも一種を含んで成る雰囲気である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第14属元素、第15属元素、第16属元素、第17属元素、又はそれらの混合物で、酸化チタンの表面をドープする工程を更に含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項5】
電解質は、HF、LiF、NaF、KF、NHF、及びそれらの混合物から成る群から選択されるフッ化物化合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電解質は、水溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
電解質は、有機溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
有機溶液は、グリセロール、EG、DEG、及びそれらの混合物から成る群から選択される多価アルコールである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
電解質を、超音波で攪拌する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
金の粒子を、初期の湿気を用いて分散させる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
炭素を化学蒸着によってデポジットする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ナノチューブチタニア基材に熱処理を更に行うことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
得られる酸化チタンナノチューブは、約80〜100nmの細孔径を有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって形成された金/炭素ハイブリッド電極。
【請求項15】
酸素空孔を含む自己秩序化二酸化チタンナノチューブから構成される二酸化チタン表面;
金のナノ粒子を含む第1コーティング;及び
炭素を含む第2コーティング
を含んで成るナノチューブチタニア基材。
【請求項16】
約1.9eVから約3.0eVの範囲のバンドギャップを有する請求項15に記載のナノチューブチタニア基材。
【請求項17】
二酸化チタンナノチューブは、第14属元素、第15属元素、第16属元素、第17属元素、又はそれらの混合物で、ドープされている請求項15に記載のナノチューブチタニア基材。
【請求項18】
二酸化チタンナノチューブは、窒素でドープされている請求項15に記載のナノチューブチタニア基材。
【請求項19】
二酸化チタンナノチューブは、炭素でドープされている請求項15に記載のナノチューブチタニア基材。
【請求項20】
二酸化チタンナノチューブは、リンでドープされている請求項15に記載のナノチューブチタニア基材。
【請求項21】
二酸化チタンナノチューブは、炭素、窒素、及びリンの少なくとも二種でドープされている請求項15に記載のナノチューブチタニア基材。
【請求項22】
炭素修飾二酸化チタンナノチューブを形成するために、適する条件下、二酸化チタンナノチューブを、更に炭素で修飾する請求項15に記載のナノチューブチタニア基材。
【請求項23】
請求項15に記載のナノチューブチタニア基材を電極として有する光電気化学電池。
【請求項24】
請求項15に記載のナノチューブチタニア基材を用いて形成された金/炭素ハイブリッド電極。
【請求項25】
を発生させるために適切な条件下で、光陽極と光陰極に光を照射する工程を含んで成るHを発生する光電気分解方法であって、
光陽極は、請求項15に記載のナノチューブチタニア基材である光電気分解方法。
【請求項26】
光は、太陽光である請求項25に記載の光電気分解方法。
【請求項27】
光陰極室に、酸性溶液を用いる請求項25に記載の光電気分解方法。
【請求項28】
光陽極室に、塩基性溶液を用いる請求項25に記載の光電気分解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26(a−f)】
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【図26(g−i)】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【公表番号】特表2009−519204(P2009−519204A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545731(P2008−545731)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/047349
【国際公開番号】WO2008/060293
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508071146)ユニバーシティ・オブ・ネバダ・リノ (2)
【氏名又は名称原語表記】University of Nevada, Reno
【Fターム(参考)】