説明

デュアルクラッチ式変速機及びその変速方法

【課題】大きなレシオ幅を得ることができ、ギヤ段切換え装置のシンクロ機構を小型で簡易なものにできるデュアルクラッチ式変速機を提供する。
【解決手段】同軸に設けられ、エンジン側の回転がデュアルクラッチ2を介して各々伝達される第一及び第二入力軸5、6と、第一及び第二入力軸5、6と同軸になるように配置された出力軸7と、第一及び第二入力軸5、6及び出力軸7に対して並行に設けられた中間軸8と、第一入力軸5及び出力軸7と中間軸8間に設けられた複数の変速用歯車列14、15、16、17と、変速用歯車列14、15、16、17を個々に切り替える変速歯車切換装置34、35、36、37とを備え、さらに第二入力軸6、中間軸8間に減速比の異なる入力減速歯車列11、12を設けると共に入力減速歯車列11、12を切り替える減速歯車切換装置24を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルクラッチに接続されるデュアルクラッチ式変速機及びデュアルクラッチ式変速機の変速方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、一般的なアウトプットリダクション形式を用いたデュアルクラッチ式変速機51は、デュアルクラッチ2の第一クラッチ3に接続された第一入力軸52と、デュアルクラッチ2の第二クラッチ4に接続された第二入力軸53と、第一入力軸52及び第二入力軸53と同軸になるように配置された出力軸55と、第一入力軸52、第二入力軸53及び出力軸55に対して並行に設けられた中間軸61と、第一入力軸52と中間軸61との間に設けられると共に第二入力軸53と中間軸61との間に設けられた変速用歯車列56、57、58、59、60と、中間軸61と出力軸55の間に設けられ中間軸61と出力軸55を常時接続する出力軸減速歯車列62とを備えている。また、変速用歯車列56、57、58、59、60は、奇数段と偶数段とにグループ分けされており、第一入力軸52と中間軸61を接続する変速用歯車列56、57が奇数段に設定され、第二入力軸53と中間軸61を接続する変速用歯車列58、59、60が偶数段に設定されている。これにより、例えば車両に搭載されたデュアルクラッチ式変速機51で順次シフトアップしながら加速するとき、使用していない側の入力軸に予め次の段の変速用歯車列を接続しておくことができ、2つのクラッチ3、4を繋ぎ替えることでスムーズかつ迅速にシフトアップできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−320054号公報
【特許文献2】特許第4274209号広報
【特許文献3】特許第4274210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、変速機のレシオ幅(1速レシオと最高ギヤ段レシオとの比)は、その値が大きいほどハイギヤードでの走行が可能となり、車両燃費性能の点で有利である。上述の一般的なデュアルクラッチ式変速機51の構造では、そのレシオ幅は、1速歯車列57及び6速歯車列60の歯数比で決定されるが、より大きなレシオ幅を得ようとすると、一方の歯車の歯底径は小さくなり、その限界のため一定以上のレシオ幅を得るのは困難であるという課題があった。
【0005】
また、変速機の歯車切換装置は内部にシンクロ機構を備えている。各軸のイナーシャが大きいほど、同期のためのシンクロ容量が必要となる。上述の一般的なデュアルクラッチ式変速機51の構造では2つの入力軸はいずれもクラッチに常時接続されているため、シンクロ容量は、クラッチ部まで含めたイナーシャを同期させるため大容量が必要となり、大型かつ複雑なシンクロ機構が必要となるという課題があった。特にクラッチがイナーシャが大きい乾式の場合、シンクロへの負担はより顕著となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、大きなレシオ幅を得ることができ、歯車切換装置のシンクロ機構を小型で簡易なものにできるデュアルクラッチ式変速機及びデュアルクラッチ式変速機の変速方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、同軸に設けられ、エンジン側の回転がデュアルクラッチを介して各々伝達される第一及び第二入力軸と、該第一及び第二入力軸と同軸になるように配置された出力軸と、前記第一及び第二入力軸及び前記出力軸に対して並行に設けられた中間軸と、前記第一入力軸及び前記出力軸と前記中間軸間に設けられた複数の変速用歯車列と、該変速用歯車列を個々に切り替える変速歯車切換装置とを備え、さらに前記第二入力軸、前記中間軸間に減速比の異なる入力減速歯車列を設けると共にこれら入力減速歯車列を切り替える減速歯車切換装置を設けたものである。
【0008】
いずれか一つの前記入力減速歯車列は、発進段の変速用歯車列の減速比に合わせて入力軸側と中間軸側の歯車の歯数比が設定されるとよい。
【0009】
他の一つの前記入力減速歯車列は、最高段の変速用歯車列の減速比に合わせて入力軸側と中間軸側の歯車の歯数比が設定されるとよい。
【0010】
前記中間軸には、発進段の変速用歯車列の歯車が設けられると共に最高段の変速用歯車列の歯車が設けられるとよい。
【0011】
前記第一入力軸と前記中間軸との間に設けられた前記変速用歯車列が前記中間軸に対して回転自在に形成され、この変速用歯車列には2速段の変速用歯車列が一体に回転するように設けられるとよい。
【0012】
また、請求項1記載のデュアルクラッチ式変速機を用いてエンジン側の回転を変速するデュアルクラッチ式変速機の変速方法において、前記中間軸と前記出力軸を前記変速用歯車列で接続するとき、前記第一、第二入力軸又は前記中間軸から前記入力減速歯車列の各々を切断するように前記減速歯車切換装置を予め切り替えておくものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大きなレシオ幅を得ることができ、歯車切換装置のシンクロ機構を小型で簡易なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係るデュアルクラッチ式変速機のスケルトン図である。
【図2】図1のデュアルクラッチ式変速機の要部側断面図である。
【図3】(a)は本実施の形態に係るデュアルクラッチ式変速機の同期対象イナーシャの説明図であり、(b)は従来のデュアルクラッチ式変速機の同期対象イナーシャの説明図である。
【図4】従来のデュアルクラッチ式変速機のスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、デュアルクラッチ式変速機1は、インプットリダクション方式であると共に6段変速であり、デュアルクラッチ2に接続される。
【0016】
デュアルクラッチ2は、図示しないエンジンからの回転動力を断接可能にデュアルクラッチ式変速機1に伝達するものであり、2組のクラッチ3、4を有する。第一クラッチ3と第二クラッチ4は、それぞれ入力側をエンジンの出力軸に接続されており、個別に断接可能に形成されている。第一クラッチ3と第二クラッチ4は、軸方向に離間して配置されており、それぞれ制御装置30によって断接されるようになっている。
【0017】
デュアルクラッチ式変速機1は、第一クラッチ3の出力側に接続された第一入力軸5と、第二クラッチ4の出力側に接続された第二入力軸6と、第一入力軸5及び第二入力軸6と同軸に、かつ、軸方向に連なるように配置された出力軸7と、第一入力軸5、第二入力軸6及び出力軸7に対して並行に設けられた中間軸8と、第一入力軸5及び出力軸7と中間軸8との間に設けられた変速用歯車列10、14、15、16、17と、変速用歯車列14、15、16、17を個々に切り替える変速歯車切換装置34、35、36、37とを備えている。また、第二入力軸6、中間軸8間には、減速比の異なる第一及び第二入力減速歯車列11、12が設けられると共に第一及び第二入力減速歯車列11、12を切り替える減速歯車切換装置24が設けられている。
【0018】
第一入力軸5と第二入力軸6は同軸上に設けられている。具体的には、第二入力軸6は筒状に形成されており、第一入力軸5は第二入力軸6内に挿通されている。第二入力軸6は、デュアルクラッチ式変速機1の外殻を形成するハウジング13に軸受を介して枢支されており、第一入力軸5は第二入力軸6に軸受を介して枢支されている。
【0019】
出力軸7は、一端を第一入力軸5に軸受を介して枢支されると共に他端側をハウジング13に軸受を介して枢支されている。出力軸7は、プロペラシャフト等の動力伝達手段を介して車両の駆動輪(図示せず)に接続されている。
【0020】
中間軸8は、ハウジング13に軸受を介して枢支されている。
【0021】
変速用歯車列10、14、15、16、17は、変速段を構成する。変速用歯車列10、14、15、16、17は、入力側2速歯車列10と、出力側2速歯車列14と、3/5速歯車列15と、1速歯車列16と、6速歯車列17とからなる。
【0022】
入力側2速歯車列10は、入力減速歯車列を構成し、第一入力軸5と中間軸8との間に設けられると共に中間軸8に対して回転自在に設けられている。入力側2速歯車列10は、第二入力軸6から露出する第一入力軸5に一体に設けられた第一入力側歯車18と、中間軸8に回転自在に設けられると共に第一入力側歯車18と噛合された第一出力側歯車19とからなる。第一出力側歯車19は、中間軸8に沿って軸方向に延びる副回転軸部9を有する。出力側2速歯車列14は、互いに噛合する一対の歯車からなり、一方の歯車が第一出力側歯車19の副回転軸部9に一体に設けられると共に他方の歯車が出力軸7に回転自在に設けられている。
【0023】
3/5速歯車列15と、1速歯車列16と、6速歯車列17は、各々互いに噛合する一対の歯車からなり、各々一方の歯車が中間軸8に一体に設けられると共に他方の歯車が出力軸7に回転自在に設けられている。
【0024】
変速歯車切換装置34、35、36、37は、出力軸7と出力側2速歯車列14との接続、切断を切り替える2速歯車切換装置34と、出力軸7と3/5速歯車列15との接続、切断を切り替える3/5速歯車切換装置35と、出力軸7と1速歯車列16との接続、切断を切り替える1速歯車切換装置36と、出力軸7と6速歯車列17との接続、切断を切り替える6速歯車切換装置37とからなる。2速歯車切換装置34、3/5速歯車切換装置35、1速歯車切換装置36及び6速歯車切換装置37は、後述する第一及び第二ドグクラッチ25、26と同様のドグクラッチからなり、それぞれシンクロ機構を有する。4速段は、第一入力軸5と出力軸7を直結用ドグクラッチ38を介して断接可能に直結する直結段となっている。また、中間軸8と出力軸7との間には、リバース歯車列41が中間軸8と出力軸7を断接可能に接続するように設けられている。なお、ハウジング13内には潤滑油が、少なくとも各変速用歯車列14、15、16、17の一方の歯車が浸かる程度に溜められている。
【0025】
第一入力減速歯車列11は、第二入力軸6と中間軸8との間に設けられると共に、第二入力軸6に対して回転自在に設けられている。具体的には、第一入力減速歯車列11は、第二入力軸6の端部に臨む第一入力軸5に回転自在に枢支されることで第二入力軸6に対して回転自在に形成された第二入力側歯車20と、中間軸8に一体に設けられると共に第二入力側歯車20と噛合された第二出力側歯車21とからなる。第一入力減速歯車列11は、発進段(1速)、3速段及びリバース段用であり、後述する1速歯車列16の減速比に合わせて第二入力側歯車20と第二出力側歯車21との歯数比を設定されている。すなわち、第一入力減速歯車列11は、発進性を確保するように歯数比を設定されている。
【0026】
第二入力減速歯車列12は、第二入力軸6と中間軸8との間に設けられると共に、第二入力軸6に対して回転自在に設けられている。具体的には、第二入力減速歯車列12は、第二入力軸6に回転自在に枢支された第三入力側歯車22と、中間軸8に一体に設けられると共に第三入力側歯車22と噛合された第三出力側歯車23とからなる。第二入力減速歯車列12は、5速段及び最高段(6速)用であり、発進性の考慮が不要であることから後述する6速歯車列17の減速比に合わせて第三入力側歯車22と第三出力側歯車23の歯数比を設定されている。すなわち、第二入力減速歯車列12は、より増速設定となるように第一入力減速歯車列11より増速となる歯数比に設定されている。
【0027】
減速歯車切換装置24は、第二入力側歯車20と第二入力軸6を接続する第一ドグクラッチ25と、第三入力側歯車22と第二入力軸6を接続する第二ドグクラッチ26とからなる。第一ドグクラッチ25は、第二入力軸6に設けられたハブ27と、第二入力側歯車20に設けられた第一ドグ28と、ハブ27に軸方向スライド可能に設けられると共にスプライン係合されたスリーブ29とを備える。第一ドグクラッチ25は、スリーブ29が第一ドグ28とハブ27とにスプライン係合したとき第二入力軸6と第一入力減速歯車列11とを接続するようになっている。また、第一ドグクラッチ25は、スリーブ29が第一ドグ28とスプライン係合するとき第一ドグ28の回転をハブ27の回転に同期させる第一シンクロ機構31を有している。第二ドグクラッチ26は、第一ドグクラッチ25と共通のハブ27及びスリーブ29と、第三入力側歯車22に設けられた第二ドグ32とを備える。第二ドグラッチ26は、スリーブ29が第二ドグ32とハブ27とにスプライン係合したとき第二入力軸6と第三入力側歯車22とを接続するようになっている。また、第二ドグクラッチ26は、スリーブ29が第二ドグ32とスプライン係合するとき第二ドグ32の回転をハブ27の回転に同期させる第二シンクロ機構33を有している。
【0028】
また、減速歯車切換装置24、2速歯車切換装置34、3/5速歯車切換装置35、1速歯車切換装置36、6速歯車切換装置37及び直結用ドグクラッチ38は、それぞれアクチュエータ40によって切換操作されるようになっている。アクチュエータ40は制御装置30により自動制御されるようになっている。
【0029】
次に本実施の形態の作用とデュアルクラッチ式変速機の変速方法について述べる。
【0030】
デュアルクラッチ式変速機1を備えた車両を発進させるとき、制御装置30はアクチュエータ40を制御することで1速歯車切換装置36を操作して1速歯車列16と出力軸7とを接続すると共に、減速歯車切換装置24を操作して第二入力軸6と第一入力減速歯車列11とを接続し、かつ、2速歯車切換装置34を操作して出力側2速歯車列14と出力軸7とを接続する。この後、制御装置30は、第二クラッチ4を徐々に接続する。エンジンからの動力は第二クラッチ4、第二入力軸6、第一入力減速歯車列11、中間軸8及び1速歯車列16を介して出力軸7に伝達され、出力軸7から駆動輪に伝達される。このとき、1速のギヤレシオは、第一入力減速歯車列11の歯数比と1速歯車列16の歯数比とで決定される。第一入力減速歯車列11は発進性を確保するように歯数比を設定されているため、駆動輪に十分なトルクを伝達することができ、車両はスムーズに発進する。
【0031】
2速へのシフトアップは、制御装置30が第二クラッチ4を切断すると共に第一クラッチ3を接続することで行われる。これにより、エンジンからの動力は第一クラッチ3、第一入力軸5、入力側2速歯車列10、副回転軸部9及び出力側2速歯車列14を介して出力軸7に伝達される。
【0032】
3速へのシフトアップは、アクチュエータ40を制御することで減速歯車切換装置24のスリーブ29を中立位置(スリーブ29がハブ27にのみスプライン係合する位置)に移動させたのち、3/5速歯車切換装置35を操作して3/5速歯車列15と出力軸7とを接続し、減速歯車切換装置24を操作して第二入力軸6と第一入力減速歯車列11とを接続し、第一クラッチ3を切断しつつ第二クラッチ4を徐々に接続することで行う。3/5速歯車列15と出力軸7とを接続するとき、減速歯車切換装置24は中立位置となっており、クラッチイナーシャが切り離されている。このため、図3(a)に示すように、3/5速歯車切換装置35のシンクロ機構に作用する同期対象イナーシャAは、図3(b)に示す従来のデュアルクラッチ式変速機51の同期対象イナーシャBより十分小さい。
【0033】
4速へのシフトアップは、第一入力軸5と出力軸7を直結用ドグクラッチ38で接続し、第二クラッチ4を切断しつつ第一クラッチ3を徐々に接続することで行う。
【0034】
5速へのシフトアップは、減速歯車切換装置24のスリーブ29を中立位置に移動させたのち、3/5速歯車切換装置35の操作により3/5速歯車列15と出力軸7とを接続し、減速歯車切換装置24の操作により第二入力軸6と第二入力減速歯車列12とを接続し、第一クラッチ3を切断しつつ第二クラッチ4を徐々に接続することで行う。減速歯車切換装置24を中立位置とし、クラッチイナーシャが切り離された状態で3/5速歯車列15と出力軸7とを接続するため、3/5速歯車切換装置35のシンクロ機構に作用する慣性力は小さい。
【0035】
6速へのシフトアップは、第二クラッチ4を一旦切断すると共に減速歯車切換装置24のスリーブ29を中立位置に移動させ、3/5速歯車切換装置35の操作により3/5速歯車列15と出力軸7とを切断し、6速歯車切換装置37の操作により6速歯車列17と出力軸7とを接続し、減速歯車切換装置24の操作により第二入力軸6と第二入力減速歯車列12とを接続し、第二クラッチ4を徐々に接続することで行う。減速歯車切換装置24を中立位置とし、クラッチイナーシャが切り離された状態で6速歯車列17と出力軸7とを接続するため、6速歯車切換装置37のシンクロ機構に作用する慣性力は小さい。
【0036】
6速のギヤレシオは第二入力減速歯車列12の歯数比と6速歯車列17の歯数比とで決定される。第二入力減速歯車列12は第一入力減速歯車列11より増速となる歯数比に設定されているため、出力軸7をより高速に回転させることができ、レシオ幅を増加させることができる。
【0037】
次に、レシオ幅の増加の一例として、図4に示す従来のアウトプットリダクション方式のデュアルクラッチ式変速機51と図1に示す本実施の形態に係るデュアルクラッチ式変速機1との比較について述べる。
【0038】
従来のアウトプットリダクション方式のデュアルクラッチ式変速機51にて、
1速歯車列57の歯数比を43/13、
6速歯車列60の歯数比を21/50、
出力軸減速歯車列62の歯数比を47/26に設定した場合、
1速のギヤレシオは、43/13×47/26=5.979となり、
6速のギヤレシオは、21/50×47/26=0.759となり、
レシオ幅は7.88となる。
【0039】
一方、本実施の形態に係るインプットリダクション方式のデュアルクラッチ式変速機1にて、
第一入力減速歯車列11(1速、3速、リバース用)の歯数比を47/26、
第二入力減速歯車列12(5速、6速用)の歯数比を44/29、
1速歯車列16の歯数比を43/13、
6速歯車列17の歯数比を21/50に設定した場合、
1速のギヤレシオは、47/26×43/13=5.979となり、
6速のギヤレシオは、44/29×21/50=0.637となり、
レシオ幅は9.38となる。
【0040】
本実施の形態に係るデュアルクラッチ式変速機1は、1速および6速歯車列16、17の歯数比が従来と同一であっても、1速と6速に対して異なる歯数の入力減速歯車列11、12を個々に設定できるため、より広範のレシオ幅確保が可能となる。
【0041】
このように、デュアルクラッチ式変速機1をインプットリダクション方式とし、切換可能な複数の入力減速歯車列11、12を設定するものとしたため、すなわち、デュアルクラッチ式変速機1が、同軸に設けられ、エンジン側の回転がデュアルクラッチ2を介して伝達される第一及び第二入力軸5、6と、第一及び第二入力軸5、6と同軸になるように配置された出力軸7と、第一及び第二入力軸5、6及び出力軸7に対して並行に設けられた中間軸8と、第一入力軸5及び出力軸7と中間軸8間に設けられた複数の変速用歯車列10、14、15、16、17と、変速用歯車列14、15、16、17を個々に切り替える変速歯車切換装置34、35、36、37とを備え、さらに第二入力軸6、中間軸8間には減速比の異なる第一及び第二入力減速歯車列11、12が設けられると共に第一及び第二入力減速歯車列11、12を切り替える減速歯車切換装置24が設けられるものとしたため、発進段と最高段とでそれぞれ個別に入力減速歯車列11、12を設定することができ、より広いレシオ幅を確保でき、車両燃費性能の改善ができる。
【0042】
また、第一入力減速歯車列11は、発進段を形成する1速歯車列16の減速比に合わせて第二入力軸6側の歯車と中間軸8側の歯車との歯数比が設定されるものとしたため、発進段の減速比を自由に設定できる。
【0043】
第二入力減速歯車列12は、最高段を形成する6速歯車列17の減速比に合わせて第二入力軸6側の歯車と中間軸8側の歯車との歯数比が設定されるものとしたため、最高段の減速比を自由に設定できる。
【0044】
中間軸8には、1速歯車列16の歯車が設けられると共に6速歯車列17の歯車が設けられるものとしたため、デュアルクラッチ式変速機1を簡易な構造にできる。
【0045】
入力側2速歯車列10が中間軸8に対して回転自在に形成され、入力側2速歯車列10には出力側2速歯車列14が一体に回転するように設けられるものとしたため、発進時に出力側2速歯車列14を予め接続しておくことができ、1速から2速へのシフトアップを迅速かつスムーズに行うことができる。
【0046】
また、中間軸8と出力軸7を3/5速歯車列15又は6速歯車列17で接続するとき、第二入力軸6から第一入力減速歯車列11及び第二入力減速歯車列12を切断するように減速歯車切換装置24を予め切り替えておくため、クラッチイナーシャを中間軸8から切り離した上でギヤ段の切換えを行うことができ、3/5速歯車切換装置35内及び6速歯車切換装置37内のシンクロ容量の小型化・簡素化ができる。
【0047】
なお、第二入力軸6と中間軸8の間に2つの入力減速歯車列11、12を設けるものとしたが、3つ以上の複数設けるものとしてもよい。
【0048】
また、第一入力減速歯車列11と第二入力減速歯車列12は第二入力軸6に対して回転自在に設けるものとしたが、中間軸8に対して回転自在に設けてもよい。この場合、減速歯車切換装置24は中間軸8に設けるとよい。
【0049】
第一入力減速歯車列11は、第二入力側歯車20が第一入力軸5に枢支されるものとしたが、第二出力側歯車21が第二入力軸6に枢支されるものとしてもよい。
【0050】
入力側2速歯車列10の第一入力側歯車18は、第一入力軸5に一体に設けられるものとしたが、第一入力軸5に回転自在に設けられると共に歯車切換装置(ドグクラッチ)を介して断接されるものとしてもよい。2速にシフトダウンするとき予め第一入力軸5から入力側2速歯車列10を切断しておくことができ、クラッチイナーシャが切り離された状態で出力側2速歯車列14と出力軸7を接続できる。
【符号の説明】
【0051】
1 デュアルクラッチ式変速機
2 デュアルクラッチ
5 第一入力軸
6 第二入力軸
7 出力軸
8 中間軸
10 入力側2速歯車列(変速用歯車列)
11 第一入力減速歯車列
12 第二入力減速歯車列
14 出力側2速歯車列(変速用歯車列)
15 3/5速歯車列(変速用歯車列)
16 1速歯車列(変速用歯車列)
17 6速歯車列(変速用歯車列)
24 減速歯車切換装置
34 2速歯車切換装置(変速歯車切換装置)
35 3/5速歯車切換装置(変速歯車切換装置)
36 1速歯車切換装置(変速歯車切換装置)
37 6速歯車切換装置(変速歯車切換装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸に設けられ、エンジン側の回転がデュアルクラッチを介して各々伝達される第一及び第二入力軸と、該第一及び第二入力軸と同軸になるように配置された出力軸と、前記第一及び第二入力軸及び前記出力軸に対して並行に設けられた中間軸と、前記第一入力軸及び前記出力軸と前記中間軸間に設けられた複数の変速用歯車列と、該変速用歯車列を個々に切り替える変速歯車切換装置とを備え、さらに前記第二入力軸、前記中間軸間に減速比の異なる入力減速歯車列を設けると共にこれら入力減速歯車列を切り替える減速歯車切換装置を設けたことを特徴とするデュアルクラッチ式変速機。
【請求項2】
いずれか一つの前記入力減速歯車列は、発進段の変速用歯車列の減速比に合わせて入力軸側と中間軸側の歯車の歯数比が設定される請求項1記載のデュアルクラッチ式変速機。
【請求項3】
他の一つの前記入力減速歯車列は、最高段の変速用歯車列の減速比に合わせて入力軸側と中間軸側の歯車の歯数比が設定される請求項2記載のデュアルクラッチ式変速機。
【請求項4】
前記中間軸には、発進段の変速用歯車列の歯車が設けられると共に最高段の変速用歯車列の歯車が設けられる請求項3記載のデュアルクラッチ式変速機。
【請求項5】
前記第一入力軸と前記中間軸との間に設けられた前記変速用歯車列が前記中間軸に対して回転自在に形成され、この変速用歯車列には2速段の変速用歯車列が一体に回転するように設けられた請求項4記載のデュアルクラッチ式変速機。
【請求項6】
請求項1記載のデュアルクラッチ式変速機を用いてエンジン側の回転を変速するデュアルクラッチ式変速機の変速方法において、前記中間軸と前記出力軸を前記変速用歯車列で接続するとき、前記第一、第二入力軸又は前記中間軸から前記入力減速歯車列の各々を切断するように前記減速歯車切換装置を予め切り替えておくことを特徴とするデュアルクラッチ式変速機の変速方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−159093(P2012−159093A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17031(P2011−17031)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】