説明

デュアルモード送信機及び通信システム

【課題】通信時間の延長を可能としたデュアルモード送信機及び通信システムを提供する。
【解決手段】送信機は、デジタル送信部Dと、アナログ送信部Aと、電池13の電圧が予め定めた値を下回ったことを検出する制御部(電池電圧監視部)14と、この制御部14からの指令によりデジタルとアナログを切り換える切換回路3とを備える。デジタルによる通信時において、電池電圧が低下したことを制御部14が検出した場合には、切換回路3によってデジタルから消費電力の少ないアナログに切り換えて通信を行う。受信機は、受信信号の種類を検出して、復調方式をアナログとデジタルに自動的に切り換える。実施例では、中間周波数増幅器24に接続したアナログ/デジタル判別回路32の検出結果に基づいて、制御部33が切換回路25,30を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワイヤレスマイクとして使用されるデュアルモード送信機及び通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アナログ信号及びデジタル信号を選択的に送信可能なデュアルモード送信機は、特許文献1〜特許文献5に記載されるように公知である。
【0003】
このような従来のデュアルモード送信機は、送信機を使用する場所(地域などを含む)に提供されているアナログ或いはデジタル通信サービスに応じてユーザが送信機に設けられたスイッチを操作したり、使用場所に提供される通信サービスを送信機が有する検出装置によって検出して自動的にスイッチを切り換えたりすることで、アナログまたはデジタル方式で信号を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−139618号公報
【特許文献2】特開平6−188751号公報
【特許文献3】特開2002−158725号公報
【特許文献4】特開2004−64723号公報
【特許文献5】国際公開2007/063895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、この種のデュアルモード送信機は、携帯電話、ワイヤレスマイクなど携帯用送信機として、種々な用途に使用されている。このような携帯用送信機は、電池によって駆動されることから、充電や電池交換を行う設備のない場合や、充電のための時間的な余裕がない場合において、電池電圧が低下すると必要な送信を継続することが不可能になる。
【0006】
デジタルによる通信方式は、マイクロホンから入力された信号をマイクアンプで増幅した後、A/D変換し、その信号にデジタル変調を行った後、D/A変換して直交変調器による変調を行う。一方、アナログ方式は、入力信号をマイクアンプで増幅した後、コンパンダに入力し、VCOで変調する。そのため、アナログ方式に比較してデジタル方式による通信時の電池の消耗が大きく、デジタル方式で通信を継続すると、電池電圧の低下時における通信時間が短くなり、必要な情報を送信できなくなる。
【0007】
本発明の目的は、電池電圧の低下時においても、通信時間を極力確保することのできるデュアルモード送信機及び通信システムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記デュアルモード送信機において、電池電圧の低下に優先する手動の切換スイッチを設けることで、デジタルとアナログの方式を自由に選択することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデュアルモード送信機は、デジタル送信部と、アナログ送信部と、電池電圧が予め定めた値を下回ったことを検出する電池電圧監視部と、この電池電圧監視部からの指令によりデジタル送信部とアナログ送信部を切り換える切換回路とを備える。そして、デジタル送信部による通信時において、電池電圧が低下したことを監視部が検出した場合には、切換回路によってデジタル送信部から消費電力の少ないアナログ送信部に切り換える。
【0009】
この場合、手動或いは場所などに応じて自動的にデジタルとアナログの切換を行うこと、電池電圧が復帰した場合に自動的にデジタル方式に切り換えること、通信方式の切換をマイクロホンからの音声信号が途切れた場合に行うことも、本発明の一態様である。前記のようなデュアルモード送信機と、この送信機からの信号の種類に応じて、自動的にアナログ受信部とデジタル受信部とを切り換える受信機とを備えた通信システムも、本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0010】
前記のような構成を有する本発明のデュアルモード送信機及び通信システムでは、電池電圧が低下したことを監視部が検出した場合には、切換回路によってデジタル方式から消費電力の少ないアナログ方式に切り換えて通信を行うことにより、通信時間の延長を可能としたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例の送信機の構成を示すブロック図。
【図2】実施例の受信機の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
[構成]
以下、本発明の実施例を図1及び図2に従って具体的に説明する。図1は実施例の送信機の構成を示すブロック図であって、図中、符号1はマイクロホン、2はマイクロホン1からの音声信号を増幅するマイクアンプである。マイクアンプ2の出力側には、入力信号をデジタル送信部Dとアナログ送信部Aのいずれかに出力する切換回路3が設けられている。
【0013】
デジタル送信部Dは、切換回路3の出力側に順次設けられたA−D変換回路4、DSP(音声信号処理装置)5、D−A変換回路6、アナログ直交変調器7、電力増幅器(Rf AMP)8及びアンテナ9から構成されている。
【0014】
前記DSP5は、A−D変換回路4によってデジタル化された入力信号に対して、帯域制限、希望のサンプリング周波数へのアップ・サンプリング、各キャリア周波数へのデジタル直交変調を行い、同相(in-phase)搬送波及び直角位相(quadrature)搬送波を出力する。D−A変換回路6は、DSP5によって処理された同相及び直角位相のデジタル信号をアナログ直交変調器7が処理可能なアナログ信号に変換する。
【0015】
アナログ直交変調器7は、D−A変換回路6から入力された同相及び直角位相の信号に基づいて、搬送波を直交変調する。電力増幅器8は高周波増幅器として機能するもので、アナログ直交変調器7から出力された変調信号を目的のRF(Radio Frequency)周波数帯へとアップ・コンバートし、RF帯の変調波信号を出力する。電力増幅器8は、このRF帯の変調波信号を増幅し、アンテナ9から外部へ送信する。
【0016】
一方、アナログ送信部Aは、切換回路3からの音声信号を圧縮処理するためのコンパンダ10と、FM変調回路を構成する電圧制御発振器(VCO)11と、この電圧制御発振器11に局部発振信号を供給する位相同期回路(PLL)12を備えている。なお、前記アナログ直交変調器7、電力増幅器8及びアンテナ9は、このアナログ送信部Aにおいても使用される。
【0017】
前記デジタル送信部D及びアナログ送信部Aは、送信機に設けられた電池13によって駆動される。本実施例では、この送信機を制御するための制御部(CPU)14が設けられ、この制御部14によって電池13の電圧(電池残量)が常時監視されている。すなわち、本発明の電池電圧監視部は、この制御部14中に設けられている。
【0018】
制御部14には、手動でデジタルとアナログを切り換えるための選択スイッチ15が設けられている。すなわち、電池電圧が予め定めた一定値を下回ったことを制御部14が検出した場合、あるいは選択スイッチがアナログまたはデジタルに切り換えられたことを制御部14が検出した場合に、制御部14は前記切換回路3に対して、入力信号をアナログ送信部Aまたはデジタル送信部Bのいずれかに切り換えて出力するための指令を出力する。なお、制御部14を、電池電圧が充電或いは電池の交換により予め定めた一定値を上回った場合に、切換回路3をアナログ送信部側に復帰させる構成とすることができる。
【0019】
本実施例では、制御部14に、入力信号のレベルを検出する信号レベル検出部(図示せず)を設ける。この入力信号のレベルは、図1の回路のどの部分で検出しても良い。制御部14は、この信号レベル検出部によって入力信号のレベルが「0」或いは予め定めた一定値以下の場合に、前記切換回路3に対する切換指令を出力する。更に、制御部14は、前記DSP5に対してデジタル復調処理を行うために必要な種々の指令を出力すると共に、位相同期回路12にも制御用の指令を出力する。
【0020】
図2は、本実施例の通信システムの受信機の構成を示すものである。図中、受信アンテナ20、高周波増幅器として機能する電力増幅器21、周波数変換回路22、周波数変換回路22に基準発信周波数を供給する電圧制御発振器(VCO)23、中間周波数増幅器(IFアンプ)24、デジタルとアナログの切換回路25は、両方式で共用される。
【0021】
アナログ受信部Aは、切換回路24の一方の出力側に接続されたFM復調回路26、その出力側のコンパンダ27を備えている。デジタル受信部Bは、切換回路24の他の出力側に接続されたDSP28、D−A変換回路29を備えている。アナログ受信部Aのコンパンダ27の出力とデジタル受信部BのD−A変換回路29の出力は、切換回路30に接続され、この切換回路27の出力側にオーディオアンプ31が接続されている。
【0022】
前記中間周波数増幅器24には、デジタル/アナログ判別回路32が接続され、このデジタル/アナログ判別回路32が制御部33に接続されている。デジタル/アナログ判別回路32は、中間周波数増幅器24の入力信号がデジタル信号であるかアナログ信号であるかを判別して、その結果を制御部24に送信する。制御部33は、この判別結果に基づいて、前記切換回路24及び30に対して、各回路をアナログ側またはデジタル側に切り換えるための指令を出力する。
【0023】
[作用]
前記のような構成を有する本実施例において、デジタル方式で通信を行っている場合は、マイクロホン1から入力された音声信号は、デジタル送信部Dを構成する各回路(A−D変換回路4、DSP5、D−A変換回路6)によってデジタル変調され、その後アナログ直交変調器7及び電力増幅器8を通って、アンテナ9から送信される。
【0024】
受信機では、送信機から送られたデジタル信号をアンテナ20で受信し、周波数変換を行った後、中間周波数増幅器24に接続されたデジタル/アナログ判別回路33によって、受信信号の種別が判別される。デジタル信号を受信していることが判別された場合、受信機の制御部30は、切換回路25,30をデジタル側に切り換える。その結果、受信信号は切換回路24からDSP28に送られ、そこでデジタル復調処理がなされ、その後D−A変換回路29、切換回路30を通って、オーディオアンプ31から音声として出力される。
【0025】
このようなデジタル方式による送信が行われている間に、送信機の電池13の電圧が予め定められた一定値を下回ると、制御部14に設けられた電池電圧監視部がそれを検出する。制御部14は、この電池電圧の低下の検出を契機として、切換回路3に対してアナログ送信部Aに入力信号を送るように指令を出す。切換回路3がアナログ送信部A側に切り換わると、入力信号は、コンパンダ10、VCO11を経てアナログ直交変調器7に送られ、FM変調及び直交変調された後、電力増幅器8を経て、アンテナ9から送信される。
【0026】
受信機では、アナログ信号が受信されたことを、デジタル/アナログ判別回路33によって判別し、その判別結果に基づいて、制御部30が切換回路25,30をアナログ側に切り換える。その結果、受信信号は、FM復調器26、コンパンダ27を経て、オーディオアンプ31から音声出力される。
【0027】
[効果]
以上の通り、本実施例では、電池電圧が低下した場合に、それを検出して自動的にデジタルからアナログに送信方式を変更することができる。その結果、デジタルに比較して電池の消耗が少ないアナログで通信を継続することにより、長い通信時間を確保することができる。また、受信機では、送信機からの受信信号がデジタルからアナログに変化したことを判別回路33によって検出し、受信方式をそれに合わせて自動的に切り換えるので、使用者は通信方式の切換を意識せずに使用が可能である。
【0028】
本実施例では、制御部14は、この信号レベル検出部によって入力信号のレベルが「0」或いは予め定めた一定値以下の場合に、前記切換回路3に対する切換指令を出力するようにしたので、切換時に音声が途切れたり、雑音が生じる恐れがない。特に、デジタル方式はアナログ方式に比較して音声処理に時間が掛かることから、音声出力の途中で切換を行うと出力した音声が不連続になるが、本実施例ではそのような欠点がない。
【0029】
本実施例では、手動でアナログとデジタルを切り換える選択スイッチ15を設けたため、電池残量によらず、送信機の使用状況に合わせて、適切な送信方式を使用者が選択できる。例えば、音質を優先する場合や送信時の遅延を避けたい場合や、電池寿命が残っていてもより長時間の通信が要求される場合にはアナログを選択することができる。送信機の使用場所により、いずれか一方の方式でしか送信できない場合には、手動でその方式を選択することも可能である。
【0030】
一方、アナログ変調・復調を用いた送信機の場合には、弱電界時にS/N比が劣化する問題があり、弱電界時には電池寿命が少なくなっても、デジタル方式による通信が好ましい。本実施例では、手動でデジタルとアナログの切換が可能なため、制御部14が電池電圧の低下を検出しても、手動のスイッチによる指令を優先させることで、弱電界時にS/N比の優れた通信を行うことができる。なお、受信機を有する携帯用の送信機では、手動の切換スイッチの代わりに、受信機によって電界強度を自動的に検出して、電池電圧の低下に優先してデジタル送信を行わせることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…マイクロホン
2…マイクアンプ
3,25,30…切換回路
4…A−D変換回路
5,28…DSP
6,29…D−A変換回路
7…直交変調器
8,21…電力増幅器
9,20…アンテナ
10,27…コンパンダ
11,23…VCO
12…位相同期回路
13…電池
14,33…制御部
15…デジタル/アナログ選択スイッチ
22…周波数変換回路
24…中間周波数増幅器
26…FM復調回路
31…オーディオアンプ
32…デジタル/アナログ判別回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル送信部と、アナログ送信部と、電池電圧が予め定めた値を下回ったことを検出する電池電圧監視部と、この電池電圧監視部からの指令によりデジタル送信部とアナログ送信部を切り換える切換回路とを備え、
デジタル送信部による通信時において、電池電圧が低下したことを監視部が検出した場合には、切換回路によってデジタル送信部から消費電力の少ないアナログ送信部に切り換えることを特徴とするデュアルモード送信機。
【請求項2】
前記切換回路が、電池電圧監視部による送信部の切換に加えて、手動の切換スイッチを備えていることを特徴とする請求項1に記載のデュアルモード送信機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のデュアルモード送信機と、
アナログ受信部とデジタル受信部とを備え、前記デュアルモード送信機からの信号を受信し、受信信号がデジタル信号であるかアナログ信号であるかを判別する信号判別回路と、この信号判別回路の判別結果に従って、受信信号をアナログ受信部またはデジタル受信部によって復調させる復調方式切換回路とを備えた受信機とを備えていることを特徴とするデュアルモード通信システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−249929(P2011−249929A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118661(P2010−118661)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】