デューティ・サイクルひずみを減少させる回路
【課題】デューティ・サイクルひずみを補正する方法および回路を提供する。
【解決手段】デューティ・サイクルひずみを補正する方法および回路。遅延挿入ゲートは、CMOSフリップ−フロップ回路で生じたデータ依存遅延ひずみを補正する。遅延挿入ゲートは、2つの電界効果トランジスタおよびカレント・ミラーを含む。2つのトランジスタのそれぞれは、上流の回路から入力信号をそれぞれ受け取る。これらのトランジスタの少なくとも1つは出力ノードに結合される。出力ノードは、遅延挿入ゲートの中の電圧状態を一時的に保持し、入力信号のデューティ・サイクルのひずみがあればそれを補正する。
【解決手段】デューティ・サイクルひずみを補正する方法および回路。遅延挿入ゲートは、CMOSフリップ−フロップ回路で生じたデータ依存遅延ひずみを補正する。遅延挿入ゲートは、2つの電界効果トランジスタおよびカレント・ミラーを含む。2つのトランジスタのそれぞれは、上流の回路から入力信号をそれぞれ受け取る。これらのトランジスタの少なくとも1つは出力ノードに結合される。出力ノードは、遅延挿入ゲートの中の電圧状態を一時的に保持し、入力信号のデューティ・サイクルのひずみがあればそれを補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、シグマ−デルタ・デジタル−アナログ変換器(DAC)、位相ロック・ループ(PLL)、遅延ロック・ループ(DLL)、および他のタイミング発生器の分野に関する。
【0002】
米国政府は、陸軍省により与えられた契約番号第DAAE30−01−0−0100号に従って、この発明における特定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
データ通信システムやシグマ−デルタ・デジタル−アナログ変換器(DAC)などの多くの用途において、情報を含むのはデジタル波形のデューティ・サイクルであるので、この波形のディーティ・サイクルを正確に制御することが重要である。一般に、2つの方法の1つで、即ち、立上りおよび立下り時間のデータ依存の変化(deta dependent variations)か、又はデータ依存の遅延(deta dependent delays)かの何れにより、デジタル波形のデューティ・サイクルに誤差が加わることがある(即ち、波形が歪むことがある)。
【0004】
図1は、デジタル波形のデューティ・サイクルにおいて、立上り時間および立下り時間の差がどのようにしてひずみ、即ち、誤差を生じさせ得るかを示す。図1において、3つの異なる立上り時間、即ち、速い、通常の、および遅い時間が示されている。立上り波形が任意のデジタル閾値VTを横切る時点は、tR1か、tR2か、tR3かの何れかとして、それぞれ示される。同様の様式で、速い、通常の、または遅い立下り波形が同じVT閾値を横切る時点は、tF1か、tF2か、tF3かの何れかとして、それぞれ示される。通常のパルス10の幅は、
tW22=tF2−tR2
である。
【0005】
しかし、立上り時間が速いが(即ち、立上り時間=tR1)、立下り時間が遅いとき(即ち、立下り時間=tF3)、パルス10の幅はtW13に等しくなり、ここでは、
tW13=tF3−tR1
である。
【0006】
同様に、立上り時間が遅いが(即ち、立上り時間=tR3)、立下り時間が速いとき(即ち、立下り時間=tF1)、パルス10の幅はtW31に等しくなり、ここでは、
tW31=tF1−tR3
である。
【0007】
何れかのひずみにより生じる誤差は、tW13(または、tW31)とtW22との差である。検査により、これは、
t誤差=tW13−tW22=(tF3−tF2)−(tR1−tR2)
または、
t誤差=tW31−tW22=(tF1−tF2)−(tR3−tR2)
である。
【0008】
一般に、ΔFは、立下り時間の変化(tF2に対する)を表し、ΔRは、立上り時間の変化(tR2に対する)を表すことができる。従って、t誤差は、
t誤差=ΔF−ΔR
として定義される。
【0009】
従って、ΔFが正でΔRが負の場合、結果として得られるt誤差は正である。また、ΔFが負でΔRが正の場合、結果として得られるt誤差は負である。ΔF=ΔRの場合、結果として得られる誤差はゼロであることに留意されたい。
【0010】
ひずみの他の原因は、データ依存遅延が等しくないことに起因する。図2は、通常のパルス12と、1から0への遷移または0から1への遷移により生じる遅延に起因するひずみとを示す。0から1への論理遷移の遅延はΔRにより定められ、1から0への論理遷移の遅延はΔFにより定められる(上記で定義された式を参照されたい)。
【0011】
典型的に、パルス12のエッジの位置は、パルス12を生成するフリップ−フロップ回路を駆動するシステム・クロックに対して確実かつ正確に測定される。CMOSシステムでは、データ依存ひずみの根源は、通常、フリップ−フロップ素子自体である。CMOSフリップ−フロップのクロック入力からそのQ出力(または、代替例として、Q「バー」出力)への遅延は、出力が0から1になるか、それとも1から0になるかに依存して、2つの値のうちの1つを取る。
【0012】
この型のデータ依存ひずみも、立上りと立下りの不一致も、CMOSシステムでは重要なことである。高周波シグマ−デルタDACでは、特にそうである。立上り時間と立下り時間の不一致またはデータ依存フリップ−フロップ遅延の何れかに起因するt誤差が400ピコ秒であり、システム・クロックの周期が100ナノ秒(10MHz)である場合の数値例を考えてみる。中間スケールで動作するシグマ−デルタDACでは、1の50%密度要求は、通常、繰返す「01」パターン、即ち、方形波につながる。これは、結果として、シグマ−デルタ波形が低域通過フィルタ処理された後で、200ナノ秒の時間期間に400ピコ秒の誤差、即ち、0.2%の電圧誤差となる。この誤差は、DACの精度を約9ビットに限定するので、大きい誤差である。16ビット精度のシグマ−デルタDACを必要とする場合、クロック周波数(およびシステム帯域幅)を128分の1に下げ、かつ/または、複雑なデータ符号化方式を使用しなければならない。明らかに、t誤差が減少されると、それはシステム性能およびコストに大きな影響を及ぼす。この非現実的ではない例では、t誤差を2桁減らして4ピコ秒にすることで、帯域幅の減少もなく、また複雑なデータ符号化方法もなしに、ほぼ16ビット精度が可能になる。
【0013】
第1の型のデューティ・サイクルひずみ(即ち、立上り時間と立下り時間との不一致による)は、立上り時間と立下り時間を一致させるために出力バッファを注意深く設計することにより、または立上り時間と立下り時間の不一致を補償するように受信側装置の閾値電圧を設定することにより、または、差動駆動回路および受信回路を使用することにより、減少または軽減され得る。しかし、これらの手法は、データ依存遅延によるひずみを減少または軽減するときには有効でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
デューティ・サイクルひずみを補正する方法および回路が示される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの実施例では、遅延挿入ゲートは、上流のデータ・ラッチなどのような上流の回路から第1および第2の信号を受け取るようにそれぞれ結合されたゲートを有する第1および第2の電界効果トランジスタを含む。第1および第2の信号は、位相差によりオフセットされ、互いの補数である。遅延挿入ゲートは電流ミラー(カレント・ミラー)を更に含み、このカレント・ミラーは、第1および第2のトランジスタのドレイン端子に結合される。遅延挿入ゲートの出力ノードは、デューティ・サイクルが補正された信号を生成し、この信号は、上流の回路によるデータ依存スイッチング遅延があれば、それが補正されている。
【0016】
代替例として、例示的な方法は、遅延挿入ゲートを設けるステップと、上流の回路から第1および第2の信号を受け取るステップと、第1のトランジスタのゲートに第1の信号でバイアスを加えるステップと、第2のトランジスタのゲートに第2の信号でバイアスを加えるステップと、第1または第2のトランジスタのドレイン端子にて、デューティ・サイクルが補正されたタイミング信号を出力するステップとを含む。
【0017】
述べられる実施例では、第1および第2のトランジスタは、上流の回路内の少なくとも1つのトランジスタとマッチ(一致)されるべきである。また、遅延挿入ゲートの出力は、キャパシタンスに対してである。1つの実施例では、キャパシタンスは、遅延挿入ゲートから下流のデバイスに関連する寄生キャパシタンスを含み得る。
【0018】
追加の実施例では、遅延挿入ゲートは、第1および第2のトランジスタに関連するソース端子に結合された電流源を更に含むことができる。この電流源は、カレント・ミラーに関連するスイッチング遅延を軽減するように調整され得る。
【0019】
これら並びに他の態様および利点は、適切に添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。更に、この概要は単なる例であり、特許請求されている本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。
【0020】
特定の実施形態の例が、添付の図面に関連して以下で説明され、様々な図において同様の参照数字は同様の要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
述べられている遅延挿入ゲートは、CMOSフリップ−フロップ回路で生じたデータ依存遅延ひずみを補正する。遅延挿入ゲートは、上流の回路(例えば、ラッチやフリップ−フロップ)から2つの相補的な信号を受け取り、これらの信号を使用してデューティ・サイクルが補正された信号を生成する。遅延挿入ゲートは、上流の回路から受け取られた2つの信号に関連するデータ依存ひずみがあれば、それを補正する。
【0022】
ここで図を参照すると、図3は、スタティックD型マスタ−スレーブ・フリップ−フロップ14および遅延挿入ゲート15の概略図である。フリップ−フロップ14は、「D」入力で入力波形を受け取り、出力「Q」および「Qb」を生成する。フリップ−フロップ14は、インバータ16およびNAND論理ゲート17〜20を含むマスタ・ラッチを備える。フリップ−フロップ14は、また、NOR論理ゲート21〜24を含むスレーブ・ラッチを備える。マスタ・ラッチとスレーブ・ラッチの両方とも、クロック信号「CLKb」により動作し(サイクルし)、このクロック信号CLKbは、例えば、マスタ・クロック信号「CLK」(図示せず)を反転することにより供給できる。
【0023】
フリップ−フロップ14は、追加のセット、リセット、または他の入力のない、また、相補的なQおよびQb以外の出力もない、基本設計であるが、これは、フリップ−フロップがどのように遅延挿入ゲートに結合されるかを一般的に伝えるものである。従って、様々な他の型のフリップ−フロップや他のタイミング回路が、ここに述べられる遅延挿入ゲートを組み込めることを理解されたい。更に、例示の目的のために、この開示のタイミング図は、全ての論理ゲートの立上りおよび立下り時間が全ての可能な入力遷移に対して等しいものとして表している。
【0024】
図4A〜図4Bは、標準RSラッチとして接続されたNORゲート23〜24の出力におけるデータ依存遅延現象を示すタイミング図である。最初に、CLKbがハイであるとき、出力RSラッチへのRおよびS入力はローである。このことは、NORゲート21〜22により保証されるものであり、NORゲート21〜22は、図3および図4A〜Bで「R_s」および「S_s」と示されたRおよびS入力を駆動する。CLKbの1から0への遷移の前に、マスタ・ラッチの「Q_m」および「Qb_m」出力は安定している。CLKb信号がローになってから1ゲート遅延後に、マスタ・ラッチからのQ_mおよびQb_m信号の状態に依存してR_sかS_sかの何れかがハイになる。次に、CLKb信号がローになってから2ゲート遅延後に、Q出力がローになるか(Q出力が前にハイであり、かつR_sがちょうどハイになった場合)、またはQb出力がローになるか(Qb出力が前にハイであり、かつS_sがちょうどハイになった場合)の何れかである。最後に、CLKb信号がローになってから3ゲート遅延後に、Qb出力がハイになるか(Qb出力が前にローであり、かつR_sがハイになった場合)、またはQ出力がハイになるか(Q出力が前にローであり、かつS_sがハイになった場合)の何れかである。データ依存遅延現象はまた、下の表1で見ることができる。
【0025】
【表1】
【0026】
Q出力が1から0に変化するとき、これは、CLKbがローになってから2ゲート遅延後に起きるが、Q出力が0から1に変化するとき、これは、CLKbがローになってから3ゲート遅延後に起きることに、留意されたい。同様に、Qb出力が0から1に変化するとき、これは、CLKbがローになってから2ゲート遅延後に起きるが、Qb出力が1から0に変化するとき、これは、CLKbがローになってから3ゲート遅延後に起きる。
【0027】
データ依存遅延現象を軽減するために、遅延挿入ゲート15は、Q出力の1から0への遷移で、余分のゲート遅延を挿入するが、Q出力の0から1への遷移では挿入しない。遅延挿入ゲート15は、フリップ−フロップ出力QおよびQbに続き、フリップ−フロップ遅延を補償する信号出力「XQ」を供給して、クロック・エッジから出力までの全体の遅延が本質的にデータ自体と無関係であるようにする。図4C〜Dは、1から0への遷移と0から1への遷移との両方において等しい遅延を有するように補正された出力XQを示すタイミング図である。
【0028】
図5は、遅延挿入ゲート30の概略図を示す。遅延挿入ゲート30は、電界効果トランジスタ32〜33およびカレント・ミラー回路34を備える。電界効果トランジスタ35〜36を備えるカレント・ミラー回路34は、トランジスタ32〜33のそれぞれのドレイン端子に結合される。
【0029】
好ましくは、トランジスタ32〜33は、上流の回路で使用されるトランジスタの実装(即ち、チャネル幅、チャネル長、閾値電圧など)に厳密にマッチすべきである。例えば、フリップ−フロップ14のデューティ・サイクルひずみを補正するために、トランジスタ32〜33は、NORゲート23〜24に使用されるトランジスタと同じ実装であるべきである(図3を参照されたい)。従って、トランジスタはNMOSトランジスタである。代替例として、NANDゲートがトランジスタ32〜33の上流である場合、トランジスタ32〜33は、PMOSである必要があろう。その場合、カレント・ミラー回路34は、NMOSトランジスタを備えることになる。この実装は、カレント・ミラー回路34のスイッチング速度を高め得る。
【0030】
図6A〜図6Bは、遅延挿入ゲート30の動作を示すタイミング図である。遅延挿入ゲート30は、トランジスタ32〜33のゲートで2つの入力信号QおよびQbをそれぞれ受け取る。これらの信号QおよびQbは互いの補数である。また、これらの信号はデータ依存ひずみを有し、これは、ローからハイへの遷移中およびハイからローへの遷移中に生じることに留意されたい。例えば、Q出力の1から0の遷移では、Qbは、CLKb信号がローになってから3ゲート遅延後にハイになる。しかし、Q出力の0から1の遷移では、Qbは、CLKb信号がローになってから2ゲート遅延後にローになる。
【0031】
図6Aにおいて、Qがハイであるとき、電流I1がトランジスタ32を流れる。トランジスタ33がオフであり、電流I1は、カレント・ミラー34によりXQ出力へ反射され、それにより出力XQがハイにとどまる。後に、Qがローになるとき、このプルアップ電流は無くなるが(I1=0)、XQ出力は、XQ出力でのキャパシタンス38があるので一時的にハイにとどまる。このデータ状態の一時的な保持が、QおよびQb信号のデータ依存遅延ひずみを補償する遅延40を生成する。一般に、XQ出力は、ハイかローかに駆動される前に全ゲート遅延に対してフローティング(浮いた)状態である。
【0032】
Qがローになってから1ゲート遅延後に、Qbはハイになる。トランジスタ33がオンになり、トランジスタ32がオフになる。そして、電流I2がトランジスタ33を流れる。電流I2は、XQ出力ノードをローへと引っ張る。コンデンサ38が放電されたとき、電流I2はゼロになる。トランジスタ33は、QbがローになるまでXQをローに保持し続ける。
【0033】
図6Bは、Qbがハイからローへ遷移するとき何が起きるかを示す。この遷移の始めに、トランジスタ36はオフである。トランジスタ33がオフになるとき、XQ出力は、このノードのキャパシタンスにより一時的にローに保持される。データ状態のこの一時的な保持が遅延41を生成し、この遅延41が、QおよびQb信号のデータ依存遅延ひずみを補償する。1ゲート遅延の後、Qはハイになる。
【0034】
多くの実装において、コンデンサが、遅延挿入ゲート30に必ずしも追加される必要はない。一般に、遅延挿入ゲートに続く下流の回路の寄生キャパシタンスは十分に大きいので、回路にコンデンサをあからさまに追加する必要はない。また、図6A〜Bは、I2の最大可能電流(XQが電圧源に短絡された場合)を示すことに留意されたい。流れる実際のI2電流は点線で示されている。電流I1およびI2は重ならないことに留意されたい。
【0035】
挿入ゲートの重要なエレメントはカレント・ミラーである。理想的には、カレント・ミラーは、上流の回路(即ち、駆動フリップ−フロップ)に関連する遅延時間よりも遥かに速い応答時間を持つべきである。しかし、実際は、この要求は、満たすのが困難であり、図5に示された2トランジスタ・カレント・ミラー構造は、ゆっくりしたターン・オフを有し、このことが追加の遅延ひずみをもたらす。
【0036】
図7は、2トランジスタ・カレント・ミラーの応答時間を改善するために使用され得るカレント・ミラー44を示す。ここで、カレント・ミラー44は、2つの段を備える。一方の段は、電界効果トランジスタ47〜48を含む。他方の段は、電界効果トランジスタ49〜50を含み、これらのトランジスタは2の電流利得を有する。この段に入る電流は、プラスI/2かマイナスI/2かの値である。従って、カレント・ミラー34と同様に、正味の結果は、出力電流がIまたはゼロかの何れかであるがトランジスタ49〜50のゲート電圧は積極的に放電される。
【0037】
2トランジスタ・カレント・ミラーの応答時間を改善する代替の手法は、入力トランジスタ(即ち、図5のトランジスタ32〜33)のソース端子へ供給される電流を制限することにより、これらの入力トランジスタの応答を遅くすることである。これを行うとき、2つの電流源をマッチ(一致)させる(即ち、トランジスタ32にマッチ(適合)する電流源およびトランジスタ33に適合する電流源)ことが重要である。
【0038】
図8は、電流源54を備える遅延挿入ゲート52を示す。電流源54は、電界効果トランジスタ55〜56のソース端子に結合される。電流源54は、本質的に、調節器として作用し、出力キャパシタンス58の両端間の電圧変化のレート(dV/dt)(即ち、立上りおよび立下りの時間)を制限する。両方のトランジスタ55〜56がオフのとき各遷移の前に常に或る時間があるので、両方のトランジスタが共通電流源54を共用することができ、従って、完全なマッチが確実になる。更に、電流供給源を通じての電流量は、カレント・ミラーに関連するスイッチング遅延を軽減するように調整することができる。
【0039】
当業者であれば、特許請求の範囲で定義される本発明の真の範囲および精神から逸脱することなしに、これらの実施例に変更および改造を加えることができることを理解するであろう。従って、提示されている図は、遅延挿入ゲートの例示的な構成を一般的に伝えることを意図している。従って、本発明の説明は、単に例示するだけのものとして解釈されるべきであり、本発明を実施する最善の態様を当業者に教示するためのものである。本発明の精神から実質的に逸脱することなしに、細部は変えることができ、添付の特許請求の範囲内にある全ての改造物の排他的な使用が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、立上り時間と立下り時間の差がどのようにしてデジタル波形のデューティ・サイクルに誤差を生じさせるかを示す図である。
【図2】図2は、通常のパルスと、1から0への遷移および0から1への遷移で生じる遅延に起因するひずみとを示す図である。
【図3】図3は、実施例による論理回路および遅延挿入ゲートの論理図である。
【図4A】図4Aは、図3の論理回路で生成される信号を示すタイミング図である。
【図4B】図4Bは、図3の論理回路で生成される信号を示すタイミング図である。
【図4C】図4Cは、実施例による、図3の遅延挿入ゲートにより生成される出力信号を示すタイミング図である。
【図4D】図4Dは、実施例による、図3の遅延挿入ゲートにより生成される出力信号を示すタイミング図である。
【図5】図5は、実施例による遅延挿入ゲートの概略図である。
【図6A】図6Aは、実施例による、図5の遅延挿入ゲートにより生成される信号を示すタイミング図である。
【図6B】図6Bは、実施例による、図5の遅延挿入ゲートにより生成される信号を示すタイミング図である。
【図7】図7は、遅延挿入ゲート内で使用され得るカレント・ミラーの例の概略図である。
【図8】図8は、実施例による電流源を含む遅延挿入ゲートの概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、シグマ−デルタ・デジタル−アナログ変換器(DAC)、位相ロック・ループ(PLL)、遅延ロック・ループ(DLL)、および他のタイミング発生器の分野に関する。
【0002】
米国政府は、陸軍省により与えられた契約番号第DAAE30−01−0−0100号に従って、この発明における特定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
データ通信システムやシグマ−デルタ・デジタル−アナログ変換器(DAC)などの多くの用途において、情報を含むのはデジタル波形のデューティ・サイクルであるので、この波形のディーティ・サイクルを正確に制御することが重要である。一般に、2つの方法の1つで、即ち、立上りおよび立下り時間のデータ依存の変化(deta dependent variations)か、又はデータ依存の遅延(deta dependent delays)かの何れにより、デジタル波形のデューティ・サイクルに誤差が加わることがある(即ち、波形が歪むことがある)。
【0004】
図1は、デジタル波形のデューティ・サイクルにおいて、立上り時間および立下り時間の差がどのようにしてひずみ、即ち、誤差を生じさせ得るかを示す。図1において、3つの異なる立上り時間、即ち、速い、通常の、および遅い時間が示されている。立上り波形が任意のデジタル閾値VTを横切る時点は、tR1か、tR2か、tR3かの何れかとして、それぞれ示される。同様の様式で、速い、通常の、または遅い立下り波形が同じVT閾値を横切る時点は、tF1か、tF2か、tF3かの何れかとして、それぞれ示される。通常のパルス10の幅は、
tW22=tF2−tR2
である。
【0005】
しかし、立上り時間が速いが(即ち、立上り時間=tR1)、立下り時間が遅いとき(即ち、立下り時間=tF3)、パルス10の幅はtW13に等しくなり、ここでは、
tW13=tF3−tR1
である。
【0006】
同様に、立上り時間が遅いが(即ち、立上り時間=tR3)、立下り時間が速いとき(即ち、立下り時間=tF1)、パルス10の幅はtW31に等しくなり、ここでは、
tW31=tF1−tR3
である。
【0007】
何れかのひずみにより生じる誤差は、tW13(または、tW31)とtW22との差である。検査により、これは、
t誤差=tW13−tW22=(tF3−tF2)−(tR1−tR2)
または、
t誤差=tW31−tW22=(tF1−tF2)−(tR3−tR2)
である。
【0008】
一般に、ΔFは、立下り時間の変化(tF2に対する)を表し、ΔRは、立上り時間の変化(tR2に対する)を表すことができる。従って、t誤差は、
t誤差=ΔF−ΔR
として定義される。
【0009】
従って、ΔFが正でΔRが負の場合、結果として得られるt誤差は正である。また、ΔFが負でΔRが正の場合、結果として得られるt誤差は負である。ΔF=ΔRの場合、結果として得られる誤差はゼロであることに留意されたい。
【0010】
ひずみの他の原因は、データ依存遅延が等しくないことに起因する。図2は、通常のパルス12と、1から0への遷移または0から1への遷移により生じる遅延に起因するひずみとを示す。0から1への論理遷移の遅延はΔRにより定められ、1から0への論理遷移の遅延はΔFにより定められる(上記で定義された式を参照されたい)。
【0011】
典型的に、パルス12のエッジの位置は、パルス12を生成するフリップ−フロップ回路を駆動するシステム・クロックに対して確実かつ正確に測定される。CMOSシステムでは、データ依存ひずみの根源は、通常、フリップ−フロップ素子自体である。CMOSフリップ−フロップのクロック入力からそのQ出力(または、代替例として、Q「バー」出力)への遅延は、出力が0から1になるか、それとも1から0になるかに依存して、2つの値のうちの1つを取る。
【0012】
この型のデータ依存ひずみも、立上りと立下りの不一致も、CMOSシステムでは重要なことである。高周波シグマ−デルタDACでは、特にそうである。立上り時間と立下り時間の不一致またはデータ依存フリップ−フロップ遅延の何れかに起因するt誤差が400ピコ秒であり、システム・クロックの周期が100ナノ秒(10MHz)である場合の数値例を考えてみる。中間スケールで動作するシグマ−デルタDACでは、1の50%密度要求は、通常、繰返す「01」パターン、即ち、方形波につながる。これは、結果として、シグマ−デルタ波形が低域通過フィルタ処理された後で、200ナノ秒の時間期間に400ピコ秒の誤差、即ち、0.2%の電圧誤差となる。この誤差は、DACの精度を約9ビットに限定するので、大きい誤差である。16ビット精度のシグマ−デルタDACを必要とする場合、クロック周波数(およびシステム帯域幅)を128分の1に下げ、かつ/または、複雑なデータ符号化方式を使用しなければならない。明らかに、t誤差が減少されると、それはシステム性能およびコストに大きな影響を及ぼす。この非現実的ではない例では、t誤差を2桁減らして4ピコ秒にすることで、帯域幅の減少もなく、また複雑なデータ符号化方法もなしに、ほぼ16ビット精度が可能になる。
【0013】
第1の型のデューティ・サイクルひずみ(即ち、立上り時間と立下り時間との不一致による)は、立上り時間と立下り時間を一致させるために出力バッファを注意深く設計することにより、または立上り時間と立下り時間の不一致を補償するように受信側装置の閾値電圧を設定することにより、または、差動駆動回路および受信回路を使用することにより、減少または軽減され得る。しかし、これらの手法は、データ依存遅延によるひずみを減少または軽減するときには有効でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
デューティ・サイクルひずみを補正する方法および回路が示される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの実施例では、遅延挿入ゲートは、上流のデータ・ラッチなどのような上流の回路から第1および第2の信号を受け取るようにそれぞれ結合されたゲートを有する第1および第2の電界効果トランジスタを含む。第1および第2の信号は、位相差によりオフセットされ、互いの補数である。遅延挿入ゲートは電流ミラー(カレント・ミラー)を更に含み、このカレント・ミラーは、第1および第2のトランジスタのドレイン端子に結合される。遅延挿入ゲートの出力ノードは、デューティ・サイクルが補正された信号を生成し、この信号は、上流の回路によるデータ依存スイッチング遅延があれば、それが補正されている。
【0016】
代替例として、例示的な方法は、遅延挿入ゲートを設けるステップと、上流の回路から第1および第2の信号を受け取るステップと、第1のトランジスタのゲートに第1の信号でバイアスを加えるステップと、第2のトランジスタのゲートに第2の信号でバイアスを加えるステップと、第1または第2のトランジスタのドレイン端子にて、デューティ・サイクルが補正されたタイミング信号を出力するステップとを含む。
【0017】
述べられる実施例では、第1および第2のトランジスタは、上流の回路内の少なくとも1つのトランジスタとマッチ(一致)されるべきである。また、遅延挿入ゲートの出力は、キャパシタンスに対してである。1つの実施例では、キャパシタンスは、遅延挿入ゲートから下流のデバイスに関連する寄生キャパシタンスを含み得る。
【0018】
追加の実施例では、遅延挿入ゲートは、第1および第2のトランジスタに関連するソース端子に結合された電流源を更に含むことができる。この電流源は、カレント・ミラーに関連するスイッチング遅延を軽減するように調整され得る。
【0019】
これら並びに他の態様および利点は、適切に添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。更に、この概要は単なる例であり、特許請求されている本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。
【0020】
特定の実施形態の例が、添付の図面に関連して以下で説明され、様々な図において同様の参照数字は同様の要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
述べられている遅延挿入ゲートは、CMOSフリップ−フロップ回路で生じたデータ依存遅延ひずみを補正する。遅延挿入ゲートは、上流の回路(例えば、ラッチやフリップ−フロップ)から2つの相補的な信号を受け取り、これらの信号を使用してデューティ・サイクルが補正された信号を生成する。遅延挿入ゲートは、上流の回路から受け取られた2つの信号に関連するデータ依存ひずみがあれば、それを補正する。
【0022】
ここで図を参照すると、図3は、スタティックD型マスタ−スレーブ・フリップ−フロップ14および遅延挿入ゲート15の概略図である。フリップ−フロップ14は、「D」入力で入力波形を受け取り、出力「Q」および「Qb」を生成する。フリップ−フロップ14は、インバータ16およびNAND論理ゲート17〜20を含むマスタ・ラッチを備える。フリップ−フロップ14は、また、NOR論理ゲート21〜24を含むスレーブ・ラッチを備える。マスタ・ラッチとスレーブ・ラッチの両方とも、クロック信号「CLKb」により動作し(サイクルし)、このクロック信号CLKbは、例えば、マスタ・クロック信号「CLK」(図示せず)を反転することにより供給できる。
【0023】
フリップ−フロップ14は、追加のセット、リセット、または他の入力のない、また、相補的なQおよびQb以外の出力もない、基本設計であるが、これは、フリップ−フロップがどのように遅延挿入ゲートに結合されるかを一般的に伝えるものである。従って、様々な他の型のフリップ−フロップや他のタイミング回路が、ここに述べられる遅延挿入ゲートを組み込めることを理解されたい。更に、例示の目的のために、この開示のタイミング図は、全ての論理ゲートの立上りおよび立下り時間が全ての可能な入力遷移に対して等しいものとして表している。
【0024】
図4A〜図4Bは、標準RSラッチとして接続されたNORゲート23〜24の出力におけるデータ依存遅延現象を示すタイミング図である。最初に、CLKbがハイであるとき、出力RSラッチへのRおよびS入力はローである。このことは、NORゲート21〜22により保証されるものであり、NORゲート21〜22は、図3および図4A〜Bで「R_s」および「S_s」と示されたRおよびS入力を駆動する。CLKbの1から0への遷移の前に、マスタ・ラッチの「Q_m」および「Qb_m」出力は安定している。CLKb信号がローになってから1ゲート遅延後に、マスタ・ラッチからのQ_mおよびQb_m信号の状態に依存してR_sかS_sかの何れかがハイになる。次に、CLKb信号がローになってから2ゲート遅延後に、Q出力がローになるか(Q出力が前にハイであり、かつR_sがちょうどハイになった場合)、またはQb出力がローになるか(Qb出力が前にハイであり、かつS_sがちょうどハイになった場合)の何れかである。最後に、CLKb信号がローになってから3ゲート遅延後に、Qb出力がハイになるか(Qb出力が前にローであり、かつR_sがハイになった場合)、またはQ出力がハイになるか(Q出力が前にローであり、かつS_sがハイになった場合)の何れかである。データ依存遅延現象はまた、下の表1で見ることができる。
【0025】
【表1】
【0026】
Q出力が1から0に変化するとき、これは、CLKbがローになってから2ゲート遅延後に起きるが、Q出力が0から1に変化するとき、これは、CLKbがローになってから3ゲート遅延後に起きることに、留意されたい。同様に、Qb出力が0から1に変化するとき、これは、CLKbがローになってから2ゲート遅延後に起きるが、Qb出力が1から0に変化するとき、これは、CLKbがローになってから3ゲート遅延後に起きる。
【0027】
データ依存遅延現象を軽減するために、遅延挿入ゲート15は、Q出力の1から0への遷移で、余分のゲート遅延を挿入するが、Q出力の0から1への遷移では挿入しない。遅延挿入ゲート15は、フリップ−フロップ出力QおよびQbに続き、フリップ−フロップ遅延を補償する信号出力「XQ」を供給して、クロック・エッジから出力までの全体の遅延が本質的にデータ自体と無関係であるようにする。図4C〜Dは、1から0への遷移と0から1への遷移との両方において等しい遅延を有するように補正された出力XQを示すタイミング図である。
【0028】
図5は、遅延挿入ゲート30の概略図を示す。遅延挿入ゲート30は、電界効果トランジスタ32〜33およびカレント・ミラー回路34を備える。電界効果トランジスタ35〜36を備えるカレント・ミラー回路34は、トランジスタ32〜33のそれぞれのドレイン端子に結合される。
【0029】
好ましくは、トランジスタ32〜33は、上流の回路で使用されるトランジスタの実装(即ち、チャネル幅、チャネル長、閾値電圧など)に厳密にマッチすべきである。例えば、フリップ−フロップ14のデューティ・サイクルひずみを補正するために、トランジスタ32〜33は、NORゲート23〜24に使用されるトランジスタと同じ実装であるべきである(図3を参照されたい)。従って、トランジスタはNMOSトランジスタである。代替例として、NANDゲートがトランジスタ32〜33の上流である場合、トランジスタ32〜33は、PMOSである必要があろう。その場合、カレント・ミラー回路34は、NMOSトランジスタを備えることになる。この実装は、カレント・ミラー回路34のスイッチング速度を高め得る。
【0030】
図6A〜図6Bは、遅延挿入ゲート30の動作を示すタイミング図である。遅延挿入ゲート30は、トランジスタ32〜33のゲートで2つの入力信号QおよびQbをそれぞれ受け取る。これらの信号QおよびQbは互いの補数である。また、これらの信号はデータ依存ひずみを有し、これは、ローからハイへの遷移中およびハイからローへの遷移中に生じることに留意されたい。例えば、Q出力の1から0の遷移では、Qbは、CLKb信号がローになってから3ゲート遅延後にハイになる。しかし、Q出力の0から1の遷移では、Qbは、CLKb信号がローになってから2ゲート遅延後にローになる。
【0031】
図6Aにおいて、Qがハイであるとき、電流I1がトランジスタ32を流れる。トランジスタ33がオフであり、電流I1は、カレント・ミラー34によりXQ出力へ反射され、それにより出力XQがハイにとどまる。後に、Qがローになるとき、このプルアップ電流は無くなるが(I1=0)、XQ出力は、XQ出力でのキャパシタンス38があるので一時的にハイにとどまる。このデータ状態の一時的な保持が、QおよびQb信号のデータ依存遅延ひずみを補償する遅延40を生成する。一般に、XQ出力は、ハイかローかに駆動される前に全ゲート遅延に対してフローティング(浮いた)状態である。
【0032】
Qがローになってから1ゲート遅延後に、Qbはハイになる。トランジスタ33がオンになり、トランジスタ32がオフになる。そして、電流I2がトランジスタ33を流れる。電流I2は、XQ出力ノードをローへと引っ張る。コンデンサ38が放電されたとき、電流I2はゼロになる。トランジスタ33は、QbがローになるまでXQをローに保持し続ける。
【0033】
図6Bは、Qbがハイからローへ遷移するとき何が起きるかを示す。この遷移の始めに、トランジスタ36はオフである。トランジスタ33がオフになるとき、XQ出力は、このノードのキャパシタンスにより一時的にローに保持される。データ状態のこの一時的な保持が遅延41を生成し、この遅延41が、QおよびQb信号のデータ依存遅延ひずみを補償する。1ゲート遅延の後、Qはハイになる。
【0034】
多くの実装において、コンデンサが、遅延挿入ゲート30に必ずしも追加される必要はない。一般に、遅延挿入ゲートに続く下流の回路の寄生キャパシタンスは十分に大きいので、回路にコンデンサをあからさまに追加する必要はない。また、図6A〜Bは、I2の最大可能電流(XQが電圧源に短絡された場合)を示すことに留意されたい。流れる実際のI2電流は点線で示されている。電流I1およびI2は重ならないことに留意されたい。
【0035】
挿入ゲートの重要なエレメントはカレント・ミラーである。理想的には、カレント・ミラーは、上流の回路(即ち、駆動フリップ−フロップ)に関連する遅延時間よりも遥かに速い応答時間を持つべきである。しかし、実際は、この要求は、満たすのが困難であり、図5に示された2トランジスタ・カレント・ミラー構造は、ゆっくりしたターン・オフを有し、このことが追加の遅延ひずみをもたらす。
【0036】
図7は、2トランジスタ・カレント・ミラーの応答時間を改善するために使用され得るカレント・ミラー44を示す。ここで、カレント・ミラー44は、2つの段を備える。一方の段は、電界効果トランジスタ47〜48を含む。他方の段は、電界効果トランジスタ49〜50を含み、これらのトランジスタは2の電流利得を有する。この段に入る電流は、プラスI/2かマイナスI/2かの値である。従って、カレント・ミラー34と同様に、正味の結果は、出力電流がIまたはゼロかの何れかであるがトランジスタ49〜50のゲート電圧は積極的に放電される。
【0037】
2トランジスタ・カレント・ミラーの応答時間を改善する代替の手法は、入力トランジスタ(即ち、図5のトランジスタ32〜33)のソース端子へ供給される電流を制限することにより、これらの入力トランジスタの応答を遅くすることである。これを行うとき、2つの電流源をマッチ(一致)させる(即ち、トランジスタ32にマッチ(適合)する電流源およびトランジスタ33に適合する電流源)ことが重要である。
【0038】
図8は、電流源54を備える遅延挿入ゲート52を示す。電流源54は、電界効果トランジスタ55〜56のソース端子に結合される。電流源54は、本質的に、調節器として作用し、出力キャパシタンス58の両端間の電圧変化のレート(dV/dt)(即ち、立上りおよび立下りの時間)を制限する。両方のトランジスタ55〜56がオフのとき各遷移の前に常に或る時間があるので、両方のトランジスタが共通電流源54を共用することができ、従って、完全なマッチが確実になる。更に、電流供給源を通じての電流量は、カレント・ミラーに関連するスイッチング遅延を軽減するように調整することができる。
【0039】
当業者であれば、特許請求の範囲で定義される本発明の真の範囲および精神から逸脱することなしに、これらの実施例に変更および改造を加えることができることを理解するであろう。従って、提示されている図は、遅延挿入ゲートの例示的な構成を一般的に伝えることを意図している。従って、本発明の説明は、単に例示するだけのものとして解釈されるべきであり、本発明を実施する最善の態様を当業者に教示するためのものである。本発明の精神から実質的に逸脱することなしに、細部は変えることができ、添付の特許請求の範囲内にある全ての改造物の排他的な使用が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、立上り時間と立下り時間の差がどのようにしてデジタル波形のデューティ・サイクルに誤差を生じさせるかを示す図である。
【図2】図2は、通常のパルスと、1から0への遷移および0から1への遷移で生じる遅延に起因するひずみとを示す図である。
【図3】図3は、実施例による論理回路および遅延挿入ゲートの論理図である。
【図4A】図4Aは、図3の論理回路で生成される信号を示すタイミング図である。
【図4B】図4Bは、図3の論理回路で生成される信号を示すタイミング図である。
【図4C】図4Cは、実施例による、図3の遅延挿入ゲートにより生成される出力信号を示すタイミング図である。
【図4D】図4Dは、実施例による、図3の遅延挿入ゲートにより生成される出力信号を示すタイミング図である。
【図5】図5は、実施例による遅延挿入ゲートの概略図である。
【図6A】図6Aは、実施例による、図5の遅延挿入ゲートにより生成される信号を示すタイミング図である。
【図6B】図6Bは、実施例による、図5の遅延挿入ゲートにより生成される信号を示すタイミング図である。
【図7】図7は、遅延挿入ゲート内で使用され得るカレント・ミラーの例の概略図である。
【図8】図8は、実施例による電流源を含む遅延挿入ゲートの概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デューティ・サイクルのひずみを補正する方法であって、
第1および第2の電界効果トランジスタおよびカレント・ミラーを備える遅延挿入ゲートを設けるステップであって、前記第1および第2のトランジスタのドレイン端子が前記カレント・ミラーに結合される、ステップと、
上流の回路から第1および第2の信号を受け取るステップであって、前記第1および第2の信号が位相差により互いにオフセットされる、ステップと、
前記第1のトランジスタのゲートに前記第1の信号でバイアスを加えるステップと、
前記第2のトランジスタのゲートに前記第2の信号でバイアスを加えるステップと、
前記第1および第2のトランジスタの少なくとも1つのトランジスタのドレイン端子にて、デューティ・サイクルの補正されたタイミング信号を出力するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第1および第2のトランジスタが、前記上流の回路の中の少なくとも1つのトランジスタとマッチさせる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記遅延挿入ゲートが電流源を更に備え、前記電流源は、前記第1および第2のトランジスタに関連するソース端子に結合される、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記電流源が、前記カレント・ミラーに関連するスイッチング遅延を軽減するように調整される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記第2のトランジスタのドレイン端子がキャパシタンスに結合される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記キャパシタンスが、前記遅延挿入ゲートから下流のデバイスに関連する寄生キャパシタンスを含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記第1および第2の信号がデータ・ラッチから出力される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記第1および第2の信号のそれぞれがデータ依存スイッチング遅延を有する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記データ依存スイッチング遅延が、データ・ラッチ内のゲート伝播遅延によるものである、方法。
【請求項10】
デューティ・サイクルのひずみを補正する遅延挿入ゲートであって、
第1および第2の電界効果トランジスタであって、それぞれのゲートが上流の回路から第1および第2の信号を受け取るようにそれぞれ結合され、前記第1および第2の信号は位相差により互いにオフセットされ、前記第1および第2の信号のそれぞれが、前記上流の回路内のゲート伝播遅延によるデータ依存スイッチング遅延を有している、第1および第2の電界効果トランジスタと、
前記第1および第2のトランジスタのドレイン端子が結合されるカレント・ミラーと、
前記第1および第2のトランジスタのドレイン端子の少なくとも1つに結合され、デューティ・サイクルの補正されたタイミング信号を生成するように構成された出力ノードと、
を備える遅延挿入ゲート。
【請求項11】
請求項10に記載の遅延挿入ゲートであって、前記上流の回路がデータ・ラッチを備える、遅延挿入ゲート。
【請求項12】
請求項10に記載の遅延挿入ゲートであって、前記第1および第2のトランジスタが、前記上流の回路内の少なくとも1つのトランジスタとマッチされている、遅延挿入ゲート。
【請求項13】
請求項10に記載の遅延挿入ゲートであって、電流源を更に備え、前記電流源は、前記第1および第2のトランジスタに関連するソース端子に結合される、遅延挿入ゲート。
【請求項14】
請求項13に記載の遅延挿入ゲートであって、前記電流源が、前記カレント・ミラーに関連するスイッチング遅延を軽減するように調整される、遅延挿入ゲート。
【請求項15】
前請求項10に記載の遅延挿入ゲートであって、前記第1および第2のトランジスタのドレイン端子の少なくとも1つに結合されたキャパシタンスを更に備える、遅延挿入ゲート。
【請求項16】
請求項15に記載の遅延挿入ゲートであって、前記キャパシタンスは、前記遅延挿入ゲートから下流のデバイスに関連する寄生キャパシタンスを含む、遅延挿入ゲート。
【請求項1】
デューティ・サイクルのひずみを補正する方法であって、
第1および第2の電界効果トランジスタおよびカレント・ミラーを備える遅延挿入ゲートを設けるステップであって、前記第1および第2のトランジスタのドレイン端子が前記カレント・ミラーに結合される、ステップと、
上流の回路から第1および第2の信号を受け取るステップであって、前記第1および第2の信号が位相差により互いにオフセットされる、ステップと、
前記第1のトランジスタのゲートに前記第1の信号でバイアスを加えるステップと、
前記第2のトランジスタのゲートに前記第2の信号でバイアスを加えるステップと、
前記第1および第2のトランジスタの少なくとも1つのトランジスタのドレイン端子にて、デューティ・サイクルの補正されたタイミング信号を出力するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第1および第2のトランジスタが、前記上流の回路の中の少なくとも1つのトランジスタとマッチさせる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記遅延挿入ゲートが電流源を更に備え、前記電流源は、前記第1および第2のトランジスタに関連するソース端子に結合される、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記電流源が、前記カレント・ミラーに関連するスイッチング遅延を軽減するように調整される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記第2のトランジスタのドレイン端子がキャパシタンスに結合される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記キャパシタンスが、前記遅延挿入ゲートから下流のデバイスに関連する寄生キャパシタンスを含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記第1および第2の信号がデータ・ラッチから出力される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記第1および第2の信号のそれぞれがデータ依存スイッチング遅延を有する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記データ依存スイッチング遅延が、データ・ラッチ内のゲート伝播遅延によるものである、方法。
【請求項10】
デューティ・サイクルのひずみを補正する遅延挿入ゲートであって、
第1および第2の電界効果トランジスタであって、それぞれのゲートが上流の回路から第1および第2の信号を受け取るようにそれぞれ結合され、前記第1および第2の信号は位相差により互いにオフセットされ、前記第1および第2の信号のそれぞれが、前記上流の回路内のゲート伝播遅延によるデータ依存スイッチング遅延を有している、第1および第2の電界効果トランジスタと、
前記第1および第2のトランジスタのドレイン端子が結合されるカレント・ミラーと、
前記第1および第2のトランジスタのドレイン端子の少なくとも1つに結合され、デューティ・サイクルの補正されたタイミング信号を生成するように構成された出力ノードと、
を備える遅延挿入ゲート。
【請求項11】
請求項10に記載の遅延挿入ゲートであって、前記上流の回路がデータ・ラッチを備える、遅延挿入ゲート。
【請求項12】
請求項10に記載の遅延挿入ゲートであって、前記第1および第2のトランジスタが、前記上流の回路内の少なくとも1つのトランジスタとマッチされている、遅延挿入ゲート。
【請求項13】
請求項10に記載の遅延挿入ゲートであって、電流源を更に備え、前記電流源は、前記第1および第2のトランジスタに関連するソース端子に結合される、遅延挿入ゲート。
【請求項14】
請求項13に記載の遅延挿入ゲートであって、前記電流源が、前記カレント・ミラーに関連するスイッチング遅延を軽減するように調整される、遅延挿入ゲート。
【請求項15】
前請求項10に記載の遅延挿入ゲートであって、前記第1および第2のトランジスタのドレイン端子の少なくとも1つに結合されたキャパシタンスを更に備える、遅延挿入ゲート。
【請求項16】
請求項15に記載の遅延挿入ゲートであって、前記キャパシタンスは、前記遅延挿入ゲートから下流のデバイスに関連する寄生キャパシタンスを含む、遅延挿入ゲート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−236724(P2008−236724A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−328682(P2007−328682)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328682(P2007−328682)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
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