説明

デンプン質食品の製造

【課題】揚げ製品の新規な製造方法の提供。
【解決手段】麺、揚げ製品およびスナック製品などのデンプン質食品の性質を、原料を脂肪分解酵素で処理することにより向上させることができる。酵素処理は、処理中の生地取扱い、テクスチャー、パリパリ感、食感および外観を向上させる。前記酵素処理は、揚げ製品の油含量を低減し、硬度を増し、揚げ製品の嵩高さを増す(嵩密度を下げる)こともできる。前記脂肪分解酵素は、ホスホリパーゼ活性、ガラクトリパーゼ活性および/またはトリアシルグリセロール活性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用粉系食品、揚げ食品、麺、スナック製品および朝食用シリアルなどの性質が向上したデンプン質食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の刊行物、WO 9844804, EP 575133, EP 585988, WO 9404035, WO 0032758, US 4567046, EP 171995, WO 9953769, EP 1057415およびUS 5378623は、デンプン質食品の製造における種々の脂肪分解酵素の使用を開示している。
【発明の開示】
【0003】
発明の概要
発明者らは、デンプン質食品のさまざまな性質が、原料を脂肪分解酵素で処理することにより向上することを見出した。そのような酵素処理により、処理中の生地取扱い、テクスチャー、パリパリ感、食感および外観が向上する。前記酵素処理は、製品の油含量または揚げている中の油の取り込みを低減し、製品の破損を減らし、表面の滑らかさを増し、表面硬度を増し、中心硬度を増し、耐破損性を向上させ、さらなる処理における形態保持力を向上させることもできる。前記酵素処理は、揚げ製品の嵩高さを増し(嵩密度を下げ)、添加する乳化剤の量を低減し、あるいは乳化剤を無くすことができる。
【0004】
したがって、本発明は、原料が脂肪分解酵素で処理される方法によるデンプン質食品の製造を提供する。前記脂肪分解酵素は、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼおよび/またはトリアシルグリセロールリパーゼ活性を有する。前記酵素は、特にプロテアーゼ活性のない状態で使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
発明の詳細な説明
デンプン質食品
デンプン質(すなわちデンプン系)食品とは、穀類系(例えば小麦系)またはジャガイモ系である。例としては、揚げ食品、麺(揚げ即席麺、乾燥即席麺および生麺)、揚げスナック製品、ポテトチップ、トルティヤチップ、コーンチップ、押し出されたシリアル、フレークシリアルおよび細片状シリアルがある。
【0006】
揚げ食用粉(穀粉)系製品
食用粉(穀粉)系揚げ製品は、
a)食用粉、水ならびにホスホリパーゼおよび/またはガラクトリパーゼ活性を有する脂肪分解酵素を含んでなる生地を調製し、
b)混合の間および/またはその後に、前記生地を休ませ、そして
c)前記生地を油で揚げて、揚げ製品を得る、
工程を含む方法により調製できる。
【0007】
本発明の方法により、脂肪分解酵素による処理を行わない類似方法に比べ、油で揚げている間の油の取り込みを、例えば製品重量に対して少なくとも1%、特に1〜10%など、少なくとも2%低減することができる。
揚げ後の製品は、10重量%未満の水分含量を有する。揚げ食用粉系製品は、揚げ即席麺、揚げスナック製品またはドーナツである。
【0008】

麺は、以下の工程を含んでなる方法:
a)食用粉、水およびホスホリパーゼまたはガラクトリパーゼ活性を有しプロテアーゼ活性を持たない脂肪分解酵素を含んでなる麺生地を調製し、
b)前記生地を圧延し、麺線を作り、
c)前記生地または麺線を、工程b)の前、その間またはその後に、休ませ、そして
d)前記麺線を熱処理する、
により製造できる。
【0009】
生地の調製は、原料の混合(捏和)により実施してもよい。生地の圧延は、生地をローラーで圧延し(例えば手作業の圧延)シート状にして、そのシートを切り出して麺線にしてもよい。
熱処理は、揚げ、乾燥、煮沸または蒸しを含み、最終製品は、例えば即席麺(揚げ即席麺または乾燥即席麺)、生麺、乾麺、加熱済み麺または蒸し麺、例えば日本麺または中華麺の形態で販売できる。
【0010】
前記生地を、混合の後または圧延工程の間寝かせ、脂肪分解酵素を働かせることができる。混合、その後の寝かせおよび圧延の間にかかる寝かせ時間全体は、通常15分から2時間、例えば30〜60分である。
乾燥即席麺の製造において、前記麺を以下に述べるとおり蒸し、次いで例えば70〜80℃の熱風で例えば35〜40分間乾燥してもよい。
【0011】
麺生地
生地の調製に使用される食用粉は、小麦、ライ麦、大麦、燕麦、メイズ/トウモロコシ、米、モロコシ、キビおよびソバならびにその混合物などの穀類由来でよい。その他の植物から得られる食用粉、例えばジャガイモ、サツマイモ、ヤムイモ、タロイモ、タピオカならびに大豆および緑豆などの豆類を用いてもよい。例としては、小麦粉、デュラム小麦粉、ライ麦粉、大豆粉、燕麦粉、ソバ粉、米粉;ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、コーンスターチなどのデンプン類がある。
【0012】
麺生地は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは水酸化ナトリウムなどのアルカリ(かん水)を含んでもよい。生地のpHは、8〜12、例えば10〜11でもよい。生地はさらに、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カリウムなどの化学膨張剤を含んでいてもよい。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウムが存在する場合、その個別の塩またはこれらの塩の混合物の含量は、食用粉に対して通常最大1.5%(w/w)であり、例えば最大1%(w/w)または最大0.5%(w/w)であり、例えば0.1〜1.5%(w/w)、特に0.1〜0.5%(w/w)の範囲、約0.3%(w/w)などである。
【0013】
脂肪分解酵素は、食用粉中の基質(脂質)に対して働くが、脂質(リン脂質、糖脂質または脂肪)を、食用粉のkgあたり0.05〜20 gの量で、例えば0.1〜10 g/kgの量で生地に加えてもよい。リン脂質は、レシチンまたはケファリンなどのジアシルグリセロリン脂質でよい。
生地は、乳化剤、例えばモノグリセリドならびにモノグリセリドおよびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステルを添加して作っても、添加せずに作ってもよい。脂肪分解酵素の添加により、乳化剤の量を減らせるか、あるいは乳化剤をなくすことが有利である。
【0014】
揚げ即席麺
麺線を、油で揚げる前に、例えば大気圧において95〜100℃で、またはそれより高い圧力において100〜120℃で蒸してもよい。麺線は、蒸しの前に、例えば生の状態または半乾燥状態でよい。蒸しは、例えば30秒から5分の時間行うことができる。別法としては、電子レンジによる処理を利用すれば類似の結果が得られる。蒸しは、揚げる前の麺線に行っても、麺線に切り出す前の麺シートに行ってもよい。
【0015】
揚げは、パーム油、部分硬化パーム油、精製パーム油、純ラード、調整ラードなどの食用油で行われ、これらの混合物が使用される。麺線は、例えば約1/2分から3分間、約130〜170℃の温度で揚げられる。揚げの前に、麺をプレスして麺塊にしてもよい。
本発明による脂肪分解酵素を用いて作られた揚げ即席麺は、油含量が低減しており、この方法を利用して、比較的タンパク質含量が低い小麦粉から作られる揚げ即席麺の質を向上させることができる。したがって、生地は、タンパク質が15重量%未満、例えば12%未満または10%未満の小麦粉からつくってもよい。
【0016】
この方法は、揚げの前に、生地を所望の形態に成形して、例えば波状の麺を形成する工程を含んでもよい。
揚げ即席麺は、揚げの後で油含量が低く、かつ/またはテクスチャーが改善されている。揚げ即席麺(例えば麺塊の形態)は、耐破損性が向上している。
【0017】
揚げ即席麺は出荷および保存でき、再水和のあと、例えば非常に熱い湯につけるか、0.5〜6分など例えば1〜3分間の短時間湯で煮ることによりすぐに食べることができる。再水和の後、前記即席麺は、前記酵素を使用せずにつくられた麺に比べ、表面硬度が高く、中心硬度が高く、テクスチャーが改善され、表面の滑らかさが増しており、食感が改善され、調理された麺の外観が改善され、形態保持性が改善され(例えば波状の麺の場合)および/または油の含量が低い。
【0018】
本方法を利用して、中国式の揚げ即席麺;揚げ即席ラーメンなどの日本式の揚げ即席麺;揚げ即席ラーメン、揚げパック麺、揚げカップ麺、揚げボール麺などの韓国式の揚げ即席麺および欧州式の揚げ即席麺などの揚げ即席麺を製造できる。
【0019】
スナック製品
揚げスナック製品は、ポテトチップ、コーンチップ、ナーチョおよびエビクラッカーまたはスナックペレット(第三世代または3G製品としても知られる)である。これらの実際上膨張されていない製品は、通常一軸または二軸スクリュー押出機中で調理・押出しされており、貯蔵安定性がある。これらは、後の段階、通常最終製造者により調味および包装される直前に油で揚げられる。
【0020】
押し出されたスナック製品は、
a)食用粉、水および脂肪分解酵素を含んでなる生地を調製し、
b)混合の間、またはその後に、前記生地を休ませ、
c)前記生地を加熱し押し出して、ペレットを形成し、
d)乾燥し、そして
e)前記ペレットを油で揚げる、
工程を含んでなる方法により製造される。
【0021】
揚げスナック製品は、食用粉、任意に単離されたデンプンおよび脂肪分解酵素を含んでなるスナックペレットを揚げる方法により作ることができる。原料混合物は、通常32%までの水(例えば20〜32%)を含み、例えば最高95℃で20〜240秒加熱することにより任意に前処理してもよい。
押出調理は、滞留時間30〜90秒で一軸スクリューまたは二軸スクリュー押出機中で行うことができる。押出機は一般的に、80〜150℃の調理区域および65〜90℃の成形区域を含んでなる。加熱を伴う押出の後、混合物は成形され、典型的には60〜100℃(特に70〜95℃)の温度および25〜30%または20〜28%の水分含量を有する。
【0022】
ペレットの乾燥は、70〜95℃で1〜3時間実施でき、スナックペレットの出口水分が6〜8%に達する。
乾燥されたスナックペレットは保存されるか、あるいはスナック処理業者に配送される。次いで、スナックペレットは、油中で揚げることにより加熱されて膨張する。
【0023】
ポテトチップ
ポテトチップは、
a)ホスホリパーゼまたはガラクトリパーゼ活性を有する脂肪分解酵素を含んでなる水溶液に、ジャガイモのスライスを接触させ、
b)前記スライスをブランチングし、そして
c)前記スライスを油で揚げる、
工程を含んでなる方法により製造される。
【0024】
本プロセスは以下のとおり実施してもよい。ジャガイモを洗浄し、区分けして皮をむく。グルコース濃度を測定する。ジャガイモを調整し、洗浄の前にグルコース濃度を低下させてもよい。ジャガイモの皮をむき、スライスして洗浄する。スライスを脂肪分解酵素の溶液に浸し、次いでブランチングする。厚さは、油の取込み量に相関がある。ジャガイモを165〜190℃で90〜200秒揚げ、水分量2%未満にする。次いでポテトチップはドリップおよび乾燥区域に行く。ポテトチップを区分けし、調味して包装する。
【0025】
トルティヤチップおよびコーンチップ
トルティヤチップおよびコーンチップは、
a)マーサ、水および脂肪分解酵素を含んでなる生地を調製し、
b)混合の間またはその後に、前記生地を休ませ、そして
c)前記生地を油で揚げてチップを得る、
工程を含んでなる方法により製造できる。
【0026】
トルティヤチップは、マーサ(トウモロコシ生地)または製粉所から得られる乾燥マーサ粉から直接作ることもできる。これは、以下の工程からなる伝統的なマーサプロセスに基づいてつくってもよい:トウモロコシ粒をpH 11の石灰溶液中で5〜50分間調理する工程、溶液に一晩(12〜16時間)浸す工程。10〜21℃で1〜3分間、水で洗浄して、皮、石灰および可溶分を除く工程。マーサの粉砕。層状にし、圧延して、トルティヤまたはコーンチップを切出す(水分51〜53%)。トルティヤチップを、揚げる前に300〜332℃で15〜30分焙焼する(水分35〜37%)。トルティヤチップおよびコーンチップ(揚げる前に焼かれていないもの)を揚げる前に平衡化させる(150℃で10〜15分)。最終的な水分は2%未満である。
【0027】
押し出されたシリアル
押し出されたシリアルは、
a)食用粉、水および脂肪分解酵素を含んでなる生地を調製し、
b)混合の間またはその後に、前記生地を休ませ、
c)前記生地を押し出し、そして
d)押し出された生地を焙焼し、シリアルを得る、
工程を含んでなる方法により製造できる。
【0028】
前記方法は以下のとおりでよい。原料を混合し、0〜2時間(室温近くで)テンパリングし、生地を95〜180℃またはそれより高温で4〜30秒押し出す。水分は10〜27%である。温度、時間および水分は処理の種類(一軸スクリュー/二軸スクリュー押出機)に依存する。製品はフレーク状にしてもしなくてもよく、包装の前に焼いて調味する。最終水分は1.5〜3%である。
【0029】
フレークシリアル
コーンフレークなどのフレークシリアルは、
a)脂肪分解酵素の水溶液に食用類粗粉を接触させ、
b)前記粗粉を調理し、
c)乾燥し、そして
d)フレーク状にする、
工程を含んでなる方法により製造できる。
【0030】
この方法は、以下のとおりでもよい。原料を混合し、調理して、デンプンを完全にゼラチン化する。トウモロコシを砕き(臨界水分28%)乾燥する(120℃より低温で60分間)。乾燥器の後、冷却またはテンパリング工程が続き、フレーク化の前に穀粒の温度を室温まで下げる(原料により水分10〜18%)。テンパリングの後、非常に大きい数組の金属ロール(ロール温度43〜46℃)の間に通すことにより粗粉を圧延して薄いフレークにする。最後の加工プロセスは、焙焼である(275〜330℃で90秒。最終水分は1.5〜3%である)。
【0031】
細片状シリアル
細片状シリアルは、
a)脂肪分解酵素の水溶液に、穀物粒を接触させ、
b)前記穀物粒を調理し、
c)細片にし、そして
d)焙焼する、
工程を含んでなる方法により製造できる。
【0032】
細片状シリアルは、全粒を調理し、その後冷却し、テンパリングし、細片にし、ビスケットに成形し、焙焼することにより製造できる。
全粒は、小麦(例えば白小麦)、米またはトウモロコシでよい。調理は、大気圧または2000 hPaで30〜35分間行ってよく、余分な水分を除いた後水分45〜50%に達する。寝かせ(またはテンパリング)は、15〜30℃に冷却しながら8〜28時間行ってよい。細片にした後、細片を重ねてビスケットにし、これを200〜315℃で焙焼して最終水分約4%にすることができる。
【0033】
脂肪分解酵素
本発明は、脂肪分解酵素、すなわちカルボン酸エステル結合を加水分解してカルボン酸またはカルボキシレートを放出できる酵素(EC 3.3.1)を使用する。脂肪分解酵素は、ガラクトリパーゼ活性、ホスホリパーゼ活性および/またはトリアシルグリセロールリパーゼ活性を有する。これらの活性は、好適な方法、例えば当業界に公知である検定または本明細書で後述する検定により測定できる。
【0034】
ガラクトリパーゼ活性(EC 3.1.1.26)、すなわちDGDG(ジガラクトシルジグリセリド)などの糖脂質中のカルボン酸エステル結合に対する加水分解活性。ガラクトリパーゼ活性(ジガラクトシルジグリセリド加水分解活性すなわちDGDGアーゼ活性)は、WO 02/03805(PCT/DK01/00472)中のプレートアッセイまたはWO 2000/32758中の単層アッセイ1または2により測定できる。
【0035】
ホスホリパーゼ活性(A1またはA2、EC 3.1.1.32または3.1.1.4)、すなわちレシチンなどのリン脂質中のカルボン酸エステル結合の一方または両方に対する加水分解活性。ホスホリパーゼ活性は、WO 02/03805(PCT/DK01/00472)中のプレートアッセイまたはWO 2000/32758のアッセイ、例えばPHLU、LEU、単層またはプレートアッセイ1または2により測定できる。
【0036】
トリアシルグリセロールリパーゼ活性(EC 3.1.1.3)、すなわちトリグリセリド中のカルボン酸エステルに対する加水分解活性、例えば1,3-特異的活性、特にオリーブ油などの長鎖トリグリセリドに対する活性。長鎖トリグリセリド(オリーブ油)に対する活性は、WO 00/32758に記載されているSLU法により測定できる。
脂肪分解酵素は、前記3種の基質の1種に対する活性を持ち、他の2種に対してはほとんどまたは全く活性がない狭い特異性を有する場合があるが、1種の基質に対して主な活性を持ち、他の2種の基質に対してより低い活性を持つ広い特異性を有することもある。2種以上の脂肪分解酵素の組合せを用いてもよい。
【0037】
脂肪分解酵素の源
脂肪分解酵素は、原核生物、特に細菌あるいは真核生物、例えば菌類または動物源から得られる。脂肪分解酵素は、例えば以下の属または種から誘導できる:サーモミセス(Thermomyces), サーモミセス・ラヌギノサス(T. lanuginosus)(フミコーラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)としても知られる);フミコーラ(Humicola), フミコーラ・インソレンス(H. insolens); フサリウム(Fusarium), フサリウム・オキスポルム(F. oxysporum), フサリウム・ソラニ(F. solani), フサリウム・ヘテロスポルム(F. heterosporum); アスペルギルス(Aspergillus), アスペルギルス・ツビゲンシス(A.tubigensis), アスペルギルス・ニガー(A. niger), アスペルギルス・オリゼー(A. oryzae); リソムコール(Rhizomucor); カンディダ(Candida), カンディダ・アニタルクチカ(C. antarctica), カンディダ・ルゴサ(C. rugosa), ペニシリウム(Penicillium), ペニシリウム・カメンベルティー(P. camembertii); リゾプス(Rhizopus), リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae); アブシディア(Absidia), ディクチオステリウム(Dictyostelium), ムコール(Mucor), ニューロスポラ(Neurospora), リゾプス(Rhizopus), リゾプス・アリズス(R. arrhizus), リゾプス・ヤポニクス(R. japonicus), スクレオチニア(Sclerotinia), トリコフィトン(Trichophyton), ウェツリニア(Whetzelinia), バシルス(Bacillus), シトロバクター(Citrobacter), エンテロバクター(Enterobacter), エドワートシーラ(Edwardsiella), エルウィニア(Erwinia), エシェリヒア(Escherichia), 大腸菌(E. coli), クレブシーラ(Klebsiella), プロテウス(Proteus), プロビデンシア(Providencia), サルモネラ(Salmonella), セラチア(Serratia), シゲラ(Shigella), ストレプトミセス(Streptomyces), イアルシニア(Yersinia), シュードモナス(Pseudomonas), シュードモナス・セパチア(P. cepacia)。
【0038】
脂肪分解酵素の具体例は以下のとおりである。
ハチまたはヘビ毒液あるいは哺乳類の膵臓、例えばブタの膵臓から得られるホスホリパーゼ。
アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae) (EP 575133,JP-A 10-155493), Hyphozyme (US 6127137)から得られるホスホリパーゼ。
サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus) (フミコーラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)とも呼ばれる)(EP 305216, US 5869438), アスペルギルス・ツビゲンシス(A. tubigensis) (WO 9845453), フサリウム・ソラニ(Fusarium solani) (US 5990069)から得られるリパーゼ。
フサリウム・オキスポルム(Fusarium oxysporum) (WO 98/26057) から得られるリパーゼ/ホスホリパーゼ。
フサリウム・クルモルム(F. culmorum) (US 5830736)から得られる、あるいはWO 02/00852 (PCT/DK 01/00448)またはDK PA 2001 00304に記載されている脂肪分解酵素。
【0039】
1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入により上記の酵素の1つから誘導される変種、例えばサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus) (フミコーラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)とも呼ばれる)から得られるリパーゼの変種など、WO 2000/32758、特に実施例4,5,6および13に記載のもの。
前記脂肪分解酵素は、30〜90℃、例えば30〜70℃の範囲に至適温度を有する。ある実施様態において、前記脂肪分解酵素は天然の穀粉酵素ではなく、小麦中に自然に存在する酵素ではない。
【0040】
酵素処理
酵素処理は、酵素を生地または生地に用いる食用粉に加え、混合物を休ませることにより実施される。生地の捏和は、脂肪分解酵素を生地中に均一に分散させるように働く。このプロセスは、適当な温度において適当な寝かせ時間で酵素の反応が起こるように行われる。
酵素処理は、好適なpH、例えば2〜10または5〜12などの2〜12の範囲で実施できる。脂肪分解酵素は、例えば2〜12、7〜12または8〜11の範囲の生地のpHで活性がある。この酵素処理プロセスは、例えば3〜50℃で、好適な時間、例えば少なくとも0.1時間、例えば0.1〜6時間の範囲で実施できる。
【0041】
酵素の量は、例えば、食用粉のkgあたり0.01〜50 mgの酵素タンパク質の範囲、例えば食用粉のkgあたり2〜20 mg酵素タンパク質でよい。ホスホリパーゼを有する酵素は、少なくとも食用粉のkgあたり0.5 kLEUの量で、少なくとも食用粉のkgあたり1 kLEUなどの量で、例えば食用粉のkgあたり0.5〜45 kLEUの範囲で、例えば食用粉のkgあたり0.5〜20 kLEU、例えば食用粉のkgあたり1〜20 kLEU、または例えば食用粉のkgあたり5〜20 kLEUの範囲で生地に加えてよい。ホスホリパーゼ活性のkLEU単位は、本明細書に後述するとおりに測定される。
【0042】
トリアシルグリセロールリパーゼ活性を有する酵素は、乾燥物質のkg(または穀粉のkg)あたり0.5〜50 kLU, 5〜50 kLU/kgまたは10〜30 kLU/kgの量で加えてよい。 生地はプロテアーゼ活性が事実上なくてもよく、すなわちプロテアーゼ活性がないか、最終製品(例えば麺)のテクスチャーに認識可能なほどの効果を与えないほど低い。
【0043】
脂肪分解酵素活性の検定
ホスホリパーゼ活性(LEU)
ホスホリパーゼ活性(LEU)は、レシチンからの遊離脂肪酸の放出量として測定される。50μlの4% L-アルファ−ホスファチジルコリン(Avantiから市販の植物性レシチン)、4%のTriton X-100、5mMのCaCl2を50mMのHEPES、pH7に溶かしたものを、50mMのHEPES、pH7で適当な濃度に希釈した50μlの酵素溶液に加える。試料を10分間30℃でインキュベーションし、95℃で5分間反応を停止させてから遠心分離する(7000 rpmで5分間)。遊離脂肪酸の量は、Wako Chemicals GmbHから市販のNEFA Cキットを用いて測定される。
1 LEUは、これらの条件で毎分1μモルの遊離脂肪酸を放出できる酵素の量に等しい。1 kLEUは1000 LEUである。
【0044】
リパーゼ活性(LU)
リパーゼ(トリアシルグリセロールリパーゼ)活性のLU活性単位は、WO 00/32758に以下のとおり定義されている。1 kLUは1000 LUである。
アラビアゴムを乳化剤として用いトリブチリン(グリセリントリブチラート)を乳化して、リパーゼの基質を調製する。30℃におけるpH7でのトリブチリンの加水分解を、pH-スタット滴定実験で追跡する。リパーゼ活性の1単位(1 LU)は、標準条件で毎分1μモルの酪酸を放出できる酵素の量に等しい。
【0045】
実施例
実施例1揚げ即席麺−ホスホリパーゼ処理
ホスホリパーゼ活性を有する酵素を水に溶かし、食用粉に加えて即席麺製造用の生地をつくった。使用量は、食用粉kgあたりの酵素タンパク質のmgで、またホスホリパーゼ活性として以下に示す(kLEU/kg穀粉、単位は上記で定義済み)。使用した酵素は、WO 98/26057で配列番号:2に開示されている。
酵素を添加する場合と添加しない場合の生地配合物は、300gの小麦粉(インドネシア産小麦粉、タンパク質含量9重量%)ならびに102gの水、3gのNaClおよび0.9gのかん水(炭酸ナトリウム)からなる溶液である。
【0046】
垂直ミキサー中で、前記成分を全体で10分間混合することにより捏和して生地とした。次いで、この生地を製麺ローラーに4回通すことにより複合した。複合した生地シートを1時間休ませ、その後生地シートを連続的に狭くなるローラーの間に通して薄くした。得られた生の麺線を蒸しかごにいれ、大気圧で、蒸気温度100℃で5分間蒸した。蒸した麺を冷まし(0.5分)、パーム油中で160℃において45秒揚げ、最終的な蒸した揚げ即席麺を製造した。
【0047】
希塩酸で煮沸し、濾過し、穏やかに乾燥した後、石油エーテルまたはヘキサンの溶媒蒸発の後で得られた残渣として、揚げ麺の油含量を求めた。表面硬度は、0.1 Nの力に対する貫通距離(mm)として求め、中心硬度は、最大切断力(g)として求めた。したがって、麺が硬いほど、表面硬度の値は低く、中心硬度の値は高くなる。結果を以下の表に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
この結果は、ホスホリパーゼ活性を有する酵素の添加により、より硬い麺が得られることを示している。ホスホリパーゼ活性を有する酵素の添加は、揚げ即席麺の油含量も低下させた。
【0050】
再調理のあと、すぐに食べられる麺の外観はより滑らかで光沢が増していた。
比較のため、同じ配合物に1-3特異的トリアシルグリセロールリパーゼ(US 5,869,438の配列番号:2の1-269に開示されているアミノ酸配列を有する)を30 kLU/kg食用粉(WO 00/32758で定義のとおり1 kLUは1000 LUである)で添加し、上記と同様に処理して類似の実験を行った。トリアシルグリセロールリパーゼは、揚げ麺の油含量(対照20.8%に対して21.1%)および再調理されたすぐに食べられる麺の中心硬度(対照34.6gに対して34.1g)に対して基本的に何の影響も与えなかった。
【0051】
実施例2揚げ即席麺−ホスホリパーゼ処理
小麦粉の種類を変えた(オランダ、ロッテルダムのMeneba Flour Mills製Pelikaan、 タンパク質含量11.4%w/w)以外、実施例1と同様に麺を作り評価した。ホスホリパーゼの使用量および結果は以下のとおりである。
【0052】
【表2】

【0053】
この結果は、ホスホリパーゼ活性を有する酵素の添加が、最も高い使用量で表面硬度の上昇をもたらしたことを示している。また、この結果は、ホスホリパーゼ活性を有する酵素の添加の後、麺の中心がより硬くなることも示している。ホスホリパーゼ活性を有する酵素を添加すると、前記酵素を使用しない方法に比べ、揚げ即席麺の油含量が最大で3.2%減少した。
【0054】
表面硬度にはわずかな変化しかないが、観察したところ、煮た麺はより滑らかな表面特性を有していた。表面の滑らかさの改善および中心硬度の増加により、全体的なテクスチャーまたは食感特性が向上した即席麺が得られた。
【0055】
実施例3スナックのテクスチャーに対する効果
乳化剤の一部分の代わりに脂肪分解酵素を加えて、圧延されたペレットの手順に従いスナックペレットを製造した。2種の異なる脂肪分解酵素を試験した。サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)由来のリパーゼおよびフサリウム・オキスポルム(Fusarium oxysporum)由来のリパーゼ/ホスホリパーゼである。対照は、脂肪分解酵素なしで、乳化剤をより多く入れて作った。
【0056】
以下の原料、ジャガイモ顆粒、グルコース、塩、植物油、乳化剤としてのモノグリセリドおよびジグリセリドならびにリン酸二カルシウムを混合した。脂肪分解酵素を用いる実験では、乳化剤の量を半分にした。
原料の処理は、20〜80℃で1〜2分間予備調整し、80〜130℃で30〜45秒押出し、形成(圧延)し、個々のペレットを乾燥した。膨張の前に、ペレットを少なくとも24時間寝かせ、水の移動を最適にした。膨張は、パーム油中で約180℃において9〜11秒行った。
4人の審査員団によりテクスチャーの判定を行った。エンドアミラーゼおよび使用量ならびに観察された効果は以下のとおりである。
【0057】
【表3】

酵素処理した製品は全て、膨張の後で、参照に比べて気泡が少なく、小さく、よく分散していて、見栄えよく見えた。
【0058】
実施例4スナックペレット−乳化剤の低減および油取り込みの減少
圧延されたペレットの手順に従い、フサリウム・オキスポルム(F.Oxysporum)由来の脂肪分解酵素(リパーゼ/ホスホリパーゼ)を加えてスナックペレットを製造した。
配合は、ジャガイモ顆粒、グルコース、塩、植物油およびリン酸二カルシウムおよび乳化剤(モノグリセリドおよびジグリセリド)からなっていた。脂肪分解酵素なしでブランクを作り、 脂肪分解酵素(5000 LU/kg原料)を加え乳化剤の量を50%減らして本発明によるスナックペレットを作った。
【0059】
手順は、20〜80℃で1〜2分間の予備調整、80〜130℃における30〜45秒の押出し、形成(圧延)および個々のペレットの乾燥からなっていた。ペレットを少なくとも24時間休ませ、水の移動を最適にした。膨張は、パーム油中で約180℃において9〜11秒行った。
本発明による生地およびブランクの両方を問題なく処理したが、スナックペレットの製造において配合表中の乳化剤の量を少なくとも50%低減可能であることを示している。
【0060】
最終製品の脂肪含量は、本発明の製品中で20.5重量%、ブランク中で23.2%であり、脂肪が11.6%減少した。
膨張した製品の嵩密度は、本発明の製品で66 g/L、ブランクで77 g/Lであり、すなわち膨張した両製品間で著しい体積の差がある。これは、脂肪分解酵素の添加が体積を著しく増加させ、最終製品の体積あたりの重量を14%減らしたことを示しており、より少ない製品で袋が一杯になる。
4人の審査員団により、テクスチャーを判定した。酵素処理製品はブランクよりもパリパリとしており、「非常によい製品」と呼ばれ、膨張の後で、気泡が少なく、小さく、よく分散していて、見栄えよく見えた。
【0061】
実施例5日本麺(白色塩含有麺)
日本麺の生地配合:300gの穀粉、34%の水(食用粉により調整)および3%のNaCl。
原料を、真空ミキサー中で9分間(3分間高速、6分間低速)捏和した。生地を8分間休ませ、連続的に狭くなるローラーの間に通して圧延し最終厚さ1.5 mmとした。生地シートを切出して麺線にした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用粉系揚げ製品の製造方法であって、
a)食用粉、水ならびにホスホリパーゼおよび/またはガラクトリパーゼ活性を有する脂肪分解酵素を含んでなる生地を調製し、
b)混合の間またはその後に、前記生地を休ませ、そして
c)前記生地を油で揚げて、揚げ製品を得る、
工程を含んで成る方法。
【請求項2】
油で揚げる前に蒸す工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記揚げ製品が、揚げ即席麺、揚げスナック製品またはドーナツである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
麺の製造方法であって、
a)食用粉、水およびホスホリパーゼまたはガラクトリパーゼ活性を有しプロテアーゼ活性を持たない脂肪分解酵素を含んでなる麺生地を調製し、
b)前記生地を圧延し、麺線を作り、
c)前記生地または麺線を、工程b)の前、その間またはその後に、休ませ、そして
d)前記麺線を熱処理する、
工程を含んでなる方法。
【請求項5】
前記熱処理が、揚げ、乾燥、蒸しまたは煮沸を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生地が、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物または炭酸塩からなる群から選択されるアルカリ性物質をさらに含んでなる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
スナック製品の製造方法であって、
a)食用粉、水および脂肪分解酵素を含んでなる生地を調製し、
b)混合の間またはその後に、生地を休ませ、
c)前記生地を加熱し押し出して、ペレットを形成し、
d)乾燥し、そして
e)前記ペレットを油で揚げる、
工程を含んで成る方法。
【請求項8】
ポテトチップの製造方法であって、
a)ホスホリパーゼまたはガラクトリパーゼ活性を有する脂肪分解酵素を含んでなる水溶液に、ジャガイモのスライスを接触させ、
b)前記スライスをブランチングし、そして
c)前記スライスを油で揚げる、
工程を含んでなる方法。
【請求項9】
トルティヤチップまたはコーンチップの製造方法であって、
a)マーサ、水および脂肪分解酵素を含んでなる生地を調製し、
b)混合の間またはその後に、前記生地を休ませ、そして
c)前記生地を油で揚げてチップを得る、
工程を含んでなる方法。
【請求項10】
押し出されたシリアルの製造方法であって、
a)食用粉、水および脂肪分解酵素を含んでなる生地を調製し、
b)混合の間またはその後に、前記生地を休ませ、
c)前記生地を押し出し、そして
d)押し出された生地を焙焼し、シリアルを得る、
工程を含んでなる方法。
【請求項11】
フレークシリアルの製造方法であって、
a)脂肪分解酵素の水溶液に食用粗粉を接触させ、
b)前記粗粉を調理し、
c)乾燥し、そして
d)フレーク状にする、
工程を含んでなる方法。
【請求項12】
細片状シリアルの製造方法であって、
a)脂肪分解酵素の水溶液に穀物粒を接触させ、
b)前記穀物粒を調理し、
c)細片にし、そして
d)焙焼する、
工程を含んでなる方法。
【請求項13】
前記脂肪分解酵素が、ホスホリパーゼ活性、ガラクトリパーゼ活性またはトリアシルグリセロールリパーゼ活性を有する、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2009−65984(P2009−65984A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−321445(P2008−321445)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【分割の表示】特願2002−565429(P2002−565429)の分割
【原出願日】平成14年2月21日(2002.2.21)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】