説明

データ保護装置

【課題】容易に停電等に対応可能なシステムを構築できるデータ保護装置を提供する。
【解決手段】オペレーティングシステムを搭載したシステムから保存データを逐次、取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記保存データを逐次、保存する保存手段と、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムの起動時に、前記保存手段に保存された前記保存データを前記オペレーティングシステムを搭載したシステムに付与する付与手段と、を備える。前記取得手段、前記保存手段および前記付与手段は、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムとは別のハードウェアとして構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレーティングシステムが扱う保存データを保護する機能を有するデータ保護装置に関し、とくに保存データを停電から保護できるデータ保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、OS(オペレーティングシステム)は停電に対する対応が完全でないものが多く、例えば、停電時にフォーマット情報が壊れると、正常な再起動ができなくなるなどの問題が発生する。しかし、例えば、大規模な制御システムや信頼性が求められる各種のシステムでは、システム全体として停電対策が施されることが望まれる。
【0003】
一方、停電に対応可能なコンピュータシステムとして、バックアップ電源を備え、停電時にはバックアップ電源から供給される電力によって、動作を継続するように構成したシステムが開示されている(特開平8−328702号公報)。このシステムでは、バックアップ電源から電力が供給されている経過時間を監視し、バックアップ電源が有効な間にコンピュータをシャットダウン処理することで、再起動時の問題を解消している。このようなシステムによれば、停電時においても継続的な動作ないしは正常なシャットダウンが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−328702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、バックアップ電源はサイズ、重量が大きくなり、装置の小型化、軽量化を図ることが難しい。また、他の半導体部品に比べて寿命も短く定期的な交換が必要となるため、メンテナンスコストがかさむという問題がある。
【0006】
一方、コンピュータに実装されるファイルシステムを、停電に対応可能となるように作り込むことも考えられる。しかし、この場合には、ファイルシステムがコンピュータに実装されるOS(オペレーティングシステム)の下で機能することになるため、このOS自体が停電に対応したものでない限り、実際にはファイルシステムの作り込みにより停電対応可能なシステムを構築することには無理があるという事情がある。
【0007】
本発明の目的は、容易に停電等に対応可能なシステムを構築できるデータ保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデータ保護装置は、オペレーティングシステムが扱う保存データを保護する機能を有するデータ保護装置において、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムから前記保存データを逐次、取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記保存データを逐次、保存する保存手段と、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムの起動時に、前記保存手段に保存された前記保存データを前記オペレーティングシステムを搭載したシステムに付与する付与手段と、を備え、前記取得手段、前記保存手段および前記付与手段は、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムとは別のハードウェアとして構成されることを特徴とする。
このデータ保護装置によれば、取得された保存データを逐次、保存し、オペレーティングシステムを搭載したシステムの起動時に、保存された前記保存データを前記オペレーティングシステムを搭載したシステムに付与するので、容易に停電等に対応可能なシステムを構築できる。
【0009】
前記保存手段はバイト単位で前記保存データを保存する不揮発性メモリであってもよい。
【0010】
停電時に前記取得手段および前記保存手段の電源として機能するバッテリを備えてもよい。
【0011】
前記保存手段には停電直前における前記保存データが保存され、前記付与手段は、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムの停電解消後の起動時に、前記保存手段に保存された停電直前における前記保存データを、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムに付与してもよい。
【0012】
前記オペレーティングシステムを搭載したシステムはフィールド制御を行うためのシステムであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のデータ保護装置によれば、取得された保存データを逐次、保存し、オペレーティングシステムを搭載したシステムの起動時に、保存された前記保存データを前記オペレーティングシステムを搭載したシステムに付与するので、容易に停電等に対応可能なシステムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態のデータ保護装置を機能的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるデータ保護装置の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のデータ保護装置を機能的に示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、制御装置1は、上位から下位に向けて順次、アプリケーション11、OS(オペレーティングシステム)がサポートするAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)12、OS搭載ファイルシステム13、各種ドライバ14、OSカーネル15、およびハードウェア16が実装された構成として表現することができる。ハードウェア16には、プロセッサ16a、主記憶部16b、周辺入出力部16cおよびディスク装置16dが含まれる。
【0018】
また、図1に示すように、制御装置1には、本発明に関連する要素として、アプリケーション11の下位に位置付けられる専用アクセスファイルラッパーAPI17と、その下位に位置付けられる通信ドライバ18とが実装されている。
【0019】
制御装置1は、例えば、不図示のPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)群の上位に配置される装置であり、PLC群とともにフィールド制御システム等を構成することができる。
【0020】
一方、本発明に関連する機能ブロック2として、制御装置1の通信ドライバ18との間での通信を実行する通信ドライバ21と、制御装置1から取得したデータが格納されるディスク装置22と、ディスク装置22からのデータの読み出しおよびディスク装置22へのデータの書込みを制御するファイルシステム23とが構成される。ファイルシステム23には、不揮発性メモリがキャッシュとして設けられ、データをバイト単位で取り扱う。ファイルシステム23は不揮発性メモリを介してバイト単位でディスク装置22への書込み、読み込みを行うことができる。
【0021】
機能ブロック2は、制御装置1とは異なるハードウェアとして構成される。例えば、両者は同一筐体内の互いに異なるCPUを用いて構成され、あるいは別個のコンピュータとして構成される。
【0022】
また、機能ブロック2のファイルシステム23は、取得手段、保存手段および付与手段として、通信ドライバ21は取得手段および付与手段として、それぞれ機能する。
【0023】
なお、図1に示すように、必要に応じて、停電時に通信ドライバ21、ディスク装置22およびファイルシステム23に電力を供給するためのバッテリ3を設けてもよい。この場合、バッテリ3は停電の際にごく短時間電力を供給できればよいため、小型のバッテリを使用できメンテナンス等のコストもかからない。
【0024】
次に、制御装置1および機能ブロック2の動作について説明する。
【0025】
制御装置1の動作時には、制御装置1のOS搭載ファイルシステム13で管理される保存データ、すなわち制御装置1に実装されたOSが使用するデータは、通信ドライバ18および通信ドライバ21の間の通信を介して順次、機能ブロック2に送信される。機能ブロック2に送信された保存データはファイルシステム23で管理され、バイト単位でディスク装置22へ書込まれ、順次更新される。この場合、ファイル(データファイル)の更新中、更新前のファイルはディスク装置22あるいはファイルシステム23の不揮発性メモリに保持されているため、ファイルの更新中に保存データの転送が中断しても、更新前のファイルが最新のファイルとして維持される。また、ファイルの保存先等を示すフォーマット情報はファイルシステム23で管理され、ファイルの更新が途中で停止した場合であっても、更新前のファイル、その他のファイルについてのフォーマット情報は正しく保持される。このため、停電解消後における制御装置1の起動時には、最新のファイルをディスク装置22あるいはファイルシステム23から取得し、制御装置1に引き渡すことが可能となる。
【0026】
次に、停電時には制御装置1の動作が停止し、機能ブロック2への保存データの転送も停止する。この場合、機能ブロック2には、制御装置1に実装されたOSが使用するデータとして、停電直前におけるデータが保存されている。また、上記のように、ファイルの更新中に保存データの転送が中断された場合には、直前のファイルおよびフォーマット情報が保存される。
【0027】
停電解消後、制御装置1は起動のための処理として、通信ドライバ18を介して機能ブロック2の通信ドライバ21に対して保存データの送信を要求し、通信ドライバ21は送信要求をファイルシステム23に転送する。ファイルシステム23は、転送要求を受けると、ディスク装置22あるいはファイルシステム23に記憶されている最新のファイル、すなわち停電直前に完全な状態で維持されているファイル、その他の保存データを通信ドライバ21および通信ドライバ18を介して制御装置1へ転送する。制御装置1は転送されてきたファイル等を用いて起動し、停電により中断していた制御を継続することができる。
【0028】
なお、必要な一部のデータのみを機能ブロック2に保存し、他のデータは制御装置1の側(ディスク装置16d等)に保存するようにしてもよい。
【0029】
また逆に、更新の対象となるすべてのデータを機能ブロック2に保存するようにすれば、ディスク装置16dをROMにより構成することもできる。この場合には、ディスク装置16dには起動時に必要なデータないしファイルのみを格納すればよく、停電発生時の問題を完全に回避できる。また、例えば、ファイルの書込みを実際には行わないような設定を行える機能(例えば、Windows(登録商標) Embedded Standard の Enhanced Write Filter など)をもつOSを使用する場合には、その機能と組み合わせることで、最低限の保存したいデータはすべて停電に対応可能な状態で機能ブロック2に保存し、それ以外のシステムなどのデータはその機能(フィルタ)を通してアクセスするようにしてもよい。これにより、コンピュータシステムのすべてのファイルシステムについて完全な停電対応が可能となる。
【0030】
以上のように、本実施形態のデータ保護装置によれば、制御装置1とは別のハードウェアとして構成された機能ブロック2において、制御装置1に実装されたOSで使用される保存データを逐次保存するため、停電解消後における制御装置1の起動時に機能ブロック2に保存された保存データを使用することが可能となる。このため、制御装置1に実装されたOSないしそのOSの下で機能するファイルシステム13が停電に対応していない場合であっても、制御装置1は、停電解消後に機能ブロック2に保存されたファイル等を使用して起動することが可能となる。
【0031】
また、通常のシステムでは、セクタまたはクラスタなどの単位となっており、停電時にはそのような単位でしかデータが残らないのに対し、本実施形態のデータ保護装置では、ファイルシステム23に不揮発性メモリを使用することにより、1バイト単位でのデータの保存を保障することができる。
【0032】
また、機能ブロック2を制御装置1と別個のハードウェアとして構築しているので、制御装置1に実装されたOSと無関係に機能ブロック2のファイルシステム23を設計できる。このため、停電時においても必要な保存データを確実に維持可能なファイルシステム23を容易に設計することが可能となる。
【0033】
さらに、バックアップ電源を使用する必要がないため、システムの小型、軽量化を図ることができ、メンテナンスコストも軽減できる。
【0034】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、オペレーティングシステムが扱う保存データを保護する機能を有するデータ保護装置に対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
21 通信ドライバ(取得手段、付与手段)
23 ファイルシステム(取得手段、保存手段、付与手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレーティングシステムが扱う保存データを保護する機能を有するデータ保護装置において、
前記オペレーティングシステムを搭載したシステムから前記保存データを逐次、取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記保存データを逐次、保存する保存手段と、
前記オペレーティングシステムを搭載したシステムの起動時に、前記保存手段に保存された前記保存データを前記オペレーティングシステムを搭載したシステムに付与する付与手段と、
を備え、
前記取得手段、前記保存手段および前記付与手段は、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムとは別のハードウェアとして構成されることを特徴とするデータ保護装置。
【請求項2】
前記保存手段はバイト単位で前記保存データを保存する不揮発性メモリであることを特徴とする請求項1に記載のデータ保護装置。
【請求項3】
停電時に前記取得手段および前記保存手段の電源として機能するバッテリを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のデータ保護装置。
【請求項4】
前記保存手段には停電直前における前記保存データが保存され、前記付与手段は、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムの停電解消後の起動時に、前記保存手段に保存された停電直前における前記保存データを、前記オペレーティングシステムを搭載したシステムに付与することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデータ保護装置。
【請求項5】
前記オペレーティングシステムを搭載したシステムはフィールド制御を行うためのシステムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のデータ保護装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−64002(P2012−64002A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208003(P2010−208003)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】