説明

データ信号供給装置、発光素子アレイ、及び画像形成装置

【課題】 発光素子の駆動回路に動作速度の遅いTFTを用いた場合でも十分な速度で画像形成ができる回路を提供することである。
【解決手段】 本発明に係るデータ信号供給装置は、入力されるデータ信号をサンプリングして負荷回路の駆動には不十分な電圧レベルのデータ信号を保持するサンプルホールド回路と、負荷回路に増幅されたデータ信号を供給するためにサンプルホールド回路に保持されたデータ信号を電圧増幅する増幅回路とを備えたデータ信号供給回路を有する。増幅回路は、サンプリング期間の少なくとも2倍以上の積分時間をかけて、サンプルホールド回路に保持されたデータ信号を積分することにより、保持されたデータ信号の電圧を負荷回路の駆動に十分な電圧に昇圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ状に配置されたLED、有機ELや無機EL等の発光素子を駆動するデータ信号供給装置、該データ信号供給装置を用いた発光素子アレイ、該発光素子アレイを用いた画像形成装置及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プリンタの露光光源として発光ダイオード等を数千個並べた発光素子アレイが用いられている。例えば、GaAsなどの化合物半導体基板上にいくつかのAlGaAs層による素子構造を形成し、それをアレイ化している(特許文献1)。
【0003】
プリンタ用として使用する場合、まず所望の印刷解像度にあわせて発光素子サイズおよび発光素子間隔を決定することが求められる。よって、印刷解像度が高密度になるにつれて発光素子数が多くなり、それにより発光素子サイズ及び発光素子間隔も小さくなる。さらに、プリンタ用光源として使用するためには、この発光素子を個別に駆動させることが求められる。実際には駆動方式に時分割駆動を用いることにより、必要な発光素子の電極数、駆動ICチップ数を減らしてコスト上昇を抑える工夫がなされている。時分割駆動に関する技術については、特許文献2及び3に開示されている。
【特許文献1】特許第3185049号公報
【特許文献2】特開2001−88345号公報
【特許文献3】特開2001−246780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子アレイを駆動する駆動回路を大面積かつ低コストで作製する場合、結晶Siを用いて回路を作製するよりも、有機材料やアモルファスSiを用いて回路を作製するほうが有利である。
【0005】
しかしながら、時分割駆動で発光素子を駆動する場合は、発光素子を個別に駆動する場合と比べて、一つの発光素子へデータを書き込む時間が短くなる。よって、結晶Siと比べて動作速度の遅い有機材料やアモルファスSiを発光素子アレイの駆動回路に用いた場合、動作速度の速い時分割での書き込みに追従することができないという課題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためのもので、その目的は発光素子の駆動回路(データ信号供給装置)に動作速度の遅いTFTを用いた場合でも十分な速度で画像形成ができる回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るデータ信号供給装置は、スイッチングトランジスタを有し、入力されるデータ信号をサンプリングして負荷回路の駆動には不十分な電圧レベルのデータ信号を保持するサンプルホールド回路と、前記負荷回路に増幅されたデータ信号を供給するために前記サンプルホールド回路に保持されたデータ信号を電圧増幅する増幅回路と、を備えたデータ信号供給回路を少なくとも2つ以上具備する。
【0008】
前記少なくとも2つ以上の増幅回路の各々は、サンプリング期間の少なくとも2倍以上の積分時間をかけて、前記サンプルホールド回路に保持されたデータ信号を積分することにより、当該保持されたデータ信号の電圧を前記負荷回路の駆動に十分な電圧に昇圧する積分回路を含み、前記複数のデータ信号供給回路のうち、一つの前記データ信号供給回路の前記増幅回路における前記積分時間中に、他の前記データ信号供給回路において前記データ信号をサンプリングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、発光素子の駆動回路に動作速度の遅いTFTを用いた場合でも十分な速度で発光素子を駆動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
(全体構成)
図1は、時分割駆動のためのLSI(100)とアレイ状に配置された発光素子を駆動する駆動回路であるデータ信号供給装置101と、LED素子102を示した図である。
【0012】
時分割駆動のためのLSI(100)は、発光させるLEDの数に応じた画素信号を出力する必要がある。ここでは、説明を簡単にするために4×4の配線で構成された時分割駆動のためのLSIを示しており、発光させるLEDの数を16個(LED1からLED16)としている。図中の103は4本のクロック配線、104は4本のデータ配線を示している。101はデータ信号供給装置であり、LEDの個数分この回路が設けてある。
【0013】
時分割駆動用LSI(100)のクロック配線103とデータ配線104はそれぞれデータ信号供給装置101とつながっている。具体的にはクロック配線φは4つのデータ信号供給装置と接続しており、またデータ配線Dも4つのデータ信号供給装置と接続している。例えば、LED1を駆動するデータ信号供給装置は、クロック配線φとデータ配線Dと接続している。この様にクロック配線とデータ配線を接続することで、各データ信号供給装置に画素信号を供給することができる。
【0014】
図2を用いて説明すると、クロック配線φがONとなっている間、データ信号供給装置にはD−1、D−1、D−1、D−1の画素信号が供給される。この動作によりLED1からLED4を発光することができる。同様にクロック配線φがONとなっている間、データ信号供給装置にはD−2、D−2、D−2、D−2の画素信号が供給される。この場合は、LED5からLED8を発光することができる。この様にクロック配線をφからφまで動作させることで、一行分のLEDを発光させることができる。そして、再びクロック配線をφからφまで動作させることで次の行のLEDを発光させることができる。
【0015】
時分割駆動用のLSIは比較的動作の速い材料(例えば単結晶Si)で形成されているため、データ信号供給装置には高速にデータが供給される。画素信号を時分割で送るとLSIの出力端子数は少なくてすむが、一行の画像データ書き込みに許される時間(d)はn分割するとd/nに短くしなければならなくなる。時間余裕の無い極限の場合を考えるとデータ取得用のクロックパルス幅も1/nに狭くしなければならなくなる。
【0016】
しかし、本発明では、データ信号供給装置は比較的動作速度の遅い有機TFTや非単結晶材料からなる活性層を有するTFTで形成されているため、時分割駆動LSIの動作速度に追従することが困難である。また、時分割駆動LSIからのデータ供給時間が短時間であるため、動作速度の遅いTFTでは十分に大きな画素信号を受けることも困難である。本発明では、この様な課題を解決するために高速である時分割駆動LSIからの画素信号をデータ信号供給装置で蓄積・増幅している。
【0017】
(データ信号供給装置)
次に、本発明に係るデータ信号供給装置に関して図3を用いて説明する。
【0018】
本発明に係るデータ信号供給装置は、サンプルホールド回路114と増幅回路115とを備えたデータ信号供給回路113を少なくとも2つ以上具備する。サンプルホールド回路114はスイッチングトランジスタを有し、入力されるデータ信号をサンプリングして負荷回路の駆動には不十分な電圧レベルのデータ信号を保持する。また、増幅回路115は、負荷回路に増幅されたデータ信号を供給するために、サンプルホールド回路114に保持されたデータ信号を電圧増幅する。
【0019】
少なくとも2つ以上の増幅回路の各々は、サンプリング期間の少なくとも2倍以上の積分時間をかけてサンプルホールド回路に保持されたデータ信号を積分することにより、当該保持されたデータ信号の電圧を負荷回路の駆動に十分な電圧に昇圧する。また、少なくとも2つ以上の増幅回路の各々は、複数のデータ信号供給回路のうち、一つのデータ信号供給回路の増幅回路における積分時間中に、他のデータ信号供給回路においてデータ信号をサンプリングする。
【0020】
本発明に係るサンプルホールド回路114及び増幅回路115の少なくとも1つを構成するトランジスタは、非単結晶半導体からなる活性層を有する薄膜トランジスタ又は有機トランジスタで構成されてもよい。
【0021】
図3に示すデータ信号供給装置では、一例として時分割回路からD−1のデータが供給されている場合を示す。また、この場合は一画素当たり4個の信号を蓄積することができるように構成されている。データの蓄積数に関しては、時分割回路とデータ信号供給装置の動作速度を考慮して決定してもよい。データの蓄積数に関しては任意に設定可能である。
【0022】
データ信号供給装置にはクロックφ0A、φ1A、φ2A、φ3A、φ0p、φ1p、φ2p、φ3p、φ0B、φ1B、φ2B、φ3Bが供給されるような構成となっている。ここで、φ0A、φ1A、φ2A、φ3Aはスイッチングトランジスタ(Tr0A、Tr1A、Tr2A、Tr3A)を駆動するクロックである。また、φ0p、φ1p、φ2p、φ3pは増幅回路115を駆動するクロック、φ0B、φ1B、φ2B、φ3Bはタイミングスイッチ110を駆動するクロックである。また、各クロックのタイミングチャートを図4に、画素信号D−1とクロックφ、φ0A、φ0p、φ0Bのタイミングと、V0A、V0Bの電圧変化を図5に示す。
【0023】
(サンプルホールド回路)
次にサンプルホールド回路114について説明する。
【0024】
図3において、クロックφにより選択されD−1により転送された画素信号は、クロックφ0A、φ1A、φ2A、φ3Aにより図4に示すタイミングで順番にそれぞれスイッチングトランジスタTr0A、Tr1A、Tr2A、Tr3Aをスイッチする。スイッチングトランジスタTr0A、Tr1A、Tr2A、Tr3Aは、それぞれr行目、(r+1)行目、(r+2)行目、(r+3)行目の画素信号を信号蓄積用の容量C1乃至C4に送る。ここで、容量C1乃至C4に蓄積される信号は、負荷回路の駆動には不十分な電圧レベルのデータ信号である。
【0025】
(増幅回路)
次に増幅回路115について説明する。
【0026】
図3において、Tr0Aのソースには信号蓄積用の容量C1が接続されており、その接続点をV0Aで表す。この接続点には更にTr0p1のドレイン端子とTr1のゲート端子がつながれている。Tr1のドレイン端子にはTr0p2が接続されており、Tr0p1とTr0p2のゲート端子はクロックφ0pに接続されている。Tr1のドレイン端子は容量Cp1の一方の端子と接続しており、Tr1のソース端子とCp1の他方の端子はアース電位となっている。ここで、Cp1は独立に容量を設けてもよいし、Tr1の寄生容量であってもよい。この部分が積分回路となる。
【0027】
Tr0p1は容量C1に画素信号が書き込まれる直前、つまり図4、図5に示すφ0AがONになる直前にφ0pをONにしてC1を放電させV0A点の電位を0Vにリセットする。また同じクロックφ0pのタイミングでTr0p2はONされ容量Cp1をプレチャージしV0Bの電位を電源電位(Vcc)にする。
【0028】
クロックφ、クロックφ0AでTr10、Tr0AがONされ画素信号(0 or 1のディジタル信号とする)がC1に蓄積される。しかし、この場合、Tr10、Tr0Aは応答速度が十分速くない有機TFTで作製されているため、C1には信号の一部しか蓄積されない。そのため、図5に示すV0Aの電位は信号が1であっても1の電圧レベルまでは高くはならない。この電圧レベルでは発光素子駆動用トランジスタ、TrD1を素早くONさせることはできない。
【0029】
そこで、図5に示すように、V0Aの電位でTr1を不十分ながら(チャンネル抵抗はまだ高い)ONさせ、時間をかけてV0Bの電位をアース電位(0V)にもっていく(この時Tr0p2はOFFになっている)。この場合、V0Bの電位をプレチャージの高電位(Vcc)から0電位に下げるのにある程度の時間がかかるので、この時間を確保できるだけの数のデータ信号供給回路113を設ける必要がある。
【0030】
尚、図ではCp1のV0B電位ではないほうの端子はアース電位(0V)となっているが、本発明においてはアース電位に限らずV0Bと比べて十分な電位差、すなわち、TrD1をスイッチングするのに十分な電位差であれば、アース電位以外の電位であってもよい。
【0031】
以上の動作により、データ信号供給回路は次のような信号をタイミングスイッチへ出力する。
【0032】
−1からの画素信号が1(ON)の場合は、C1に画素信号が書き込まれるためCp1にプレチャージされたV0Bは電源電位(Vcc)よりも低電位になる。よって、この場合はタイミングスイッチに0の信号が供給される。
【0033】
逆に、D−1からの画素信号が0(OFF)の場合は、C1に画素信号が書き込まれないためCp1にプレチャージされたV0Bは電源電位(Vcc)に保たれる。よって、この場合はタイミングスイッチに1の信号が供給される。
【0034】
次に、図3の回路におけるTrD1の閾値電圧等の関係について説明する。
【0035】
増幅用トランジスタにその閾値電圧より大きいオンデータ信号電圧が入力された時の増幅用トランジスタのオンドレイン電流をI(on)とする。また、増幅用トランジスタにその閾値電圧以下のオフデータ信号電圧が入力された時の前記増幅用トランジスタのオフドレイン電流をI(off)とする。また、保持容量をCp1、増幅時間をt、負荷回路のTrD1の動作閾値電圧をVthとする。このとき、増幅されたデータ信号の電圧が、
【0036】
【数1】

【0037】
を満たし、且つ、前記増幅用トランジスタに入力されるデータ信号電圧の最大値をVOAMAXとした時に、
【0038】
【数2】

【0039】
を満足する。そして、本発明のデータ信号供給装置は、複数のデータ信号供給回路のうち、一つのデータ信号提供回路の増幅時間t中に、他のデータ信号供給回路においてデータ信号をサンプルホールドする。
【0040】
尚、本発明においては上記機能を実現させるために図3に示す回路を示したが、これ以外の構成であっても本発明の機能を実現する回路であればどのよう回路でもよい。
【0041】
(タイミングスイッチ)
次にタイミングスイッチ110(Tr0B1、Tr0B2、Tr0B3、Tr0B4)について説明する。
【0042】
本発明に係るデータ信号供給装置で駆動する負荷回路は、増幅回路から出力されたデータ信号に応じてオン又はオフ状態となるスイッチングトランジスタ(タイミングスイッチ)を含む。
【0043】
タイミングスイッチ110は、各々のデータ信号供給回路113から出力される駆動信号を発光素子102に供給するタイミングを制御する。図3に示す回路のうちr行目のタイミングスイッチについて説明する。
【0044】
タイミングスイッチであるTr0B1のドレイン端子にはCp1が接続されている。Tr0B1のゲート端子にはクロックφ0Bを供給する配線が接続されている。Tr0B1のソース端子には反転入力トランジスタであるTrD1が接続されている。反転入力トランジスタTrD1は入力信号が0の時にONとなり、逆に入力信号が1の時にOFFとなる。r行目以外のタイミングスイッチも同様に接続されている。
【0045】
タイミングスイッチ110の動作について、図5を用いて説明する。r行目のクロックφ0AがONになることで、C1に電荷が蓄積されV0Aの電位が上昇する。これにより、プレチャージされたCp1の電圧V0Bは徐々に低下する。タイミングスイッチTr0B1を動作するクロックφ0Bは、電圧V0Bが十分に低下した後にTr0B1をONにする。図5の場合、r+3行目の画素信号のクロックφがONになるタイミングで、タイミングスイッチφ0BをONにする。φ0Bは一定時間ONの状態を保持し、その後Cp1に電荷がプレチャージされるタイミングφ0pの直前にOFFにする。
【0046】
全てnタイプのトランジスタで本発明に係るデータ信号供給装置を構成した回路を図6に示す。この回路では、Tr1(Tr2からTr4を有する回路についても同様)のドレイン端子とTr0B1のドレイン端子間にトランジスタTr0C1と電源端子を設ける。すなわち、Tr1のドレイン端子とTr0C1のゲート端子を接続し、Tr0C1のドレイン端子とTr0B1のドレイン端子を接続する。また、Tr0C1のドレイン端子には電源電圧Vccが供給可能な構成となっている。
【0047】
この場合の動作について具体的に説明する。Tr0C1のゲート端子にはCp1が接続されている。D−1からの画素信号が1(ON)の場合は、Cp1にプレチャージされたV0Bは電源電位(Vcc)よりも低電位になる。したがって、このときはTr0C1のゲート端子に十分な電圧が供給されないため、Tr0C1は動作しない。よって、Tr0B1のドレイン端子にはVccが印加される。このとき、タイミングスイッチのクロックφ0Bに信号が供給されることでTr0B1がONとなり、TrE1のゲート端子にVcc(ON信号)が供給される。
【0048】
逆に、D−1からの画素信号が0(OFF)の場合は、Cp1にプレチャージされたV0Bは電源電位(Vcc)に保たれる。このときはTr0C1のゲート端子に電圧が供給されるため、Tr0C1が動作する。この場合、Tr0C1のドレイン端子はGNDに接続されるため、Tr0B1のドレイン端子の電位は、GNDとなる。よって、タイミングスイッチのクロックφ0Bに信号が供給されてもTrE1のゲート端子に信号が供給されない。
【0049】
(発光素子)
図3では、発光素子であるLED素子(102)が反転入力トランジスタTrD1のドレイン端に接続されている。TrD1のソース端にはLED1を駆動するための電源が接続されている。TrD1のゲート端にはタイミングスイッチTr0B1のソース端が接続されている。
【0050】
LED1は、TrD1のゲート端子の信号が0の場合に駆動電流が供給されて発光し、TrD1のゲート端子の信号が1の場合に消灯する。
【0051】
また、図6では、反転入力トランジスタを用いない場合の例を示す。LED1は、D−1からの画素信号が1(ON)の場合にTrE1がONとなり、駆動電流が供給されて発光する。逆に、D−1からの画素信号が0(OFF)の場合は、TrE1がOFFとなり、LED1は発光しない。
【0052】
以上の回路では、TrD1を除いてn型TFTを用いた場合、全てn型TFTを用いた場合を示したが、全てp型TFTを用いて作製することもできる。またCMOSと類似のコンプリメンタリ型のTFTを用いることもできる。
【0053】
尚、発光素子は、有機EL素子であってもよい。
【0054】
(画像形成装置)
図7は本発明に係る発光素子を利用した画像形成装置の断面図である。図7において矢印方向に回転する円筒状(ドラム)の感光体201が設置される。感光体を一様帯電させる前に、クリーニングブレード206により感光体に付着したトナーを除去し、像消去手段207により前プロセスによる感光状態をクリアする。次に帯電手段202により感光体を一様に帯電させる。
【0055】
その後、像形成手段203により帯電した感光体の一部を除電することで、感光体201に静電潜像を形成する。続いて現像手段204で静電潜像にトナーを付着させる。次に転写手段205で転写材210に現像された画像を転写する。画像転写された転写材210は転写材搬送装置209で搬送され、像定着手段208により転写トナー像の定着が行われる。
【0056】
本発明に係る画像形成装置では、感光体201に静電潜像を形成する像形成手段203として、感光体の主走査方向(ドラムの回転軸と平行な方向)に配列した発光素子アレイを用いることができる。発光素子は、主走査方向の画素毎に設けられている。アレイ状に配列した発光素子は、感光体201に静電潜像を形成できる位置に設置されており、発光素子が発光することで帯電した感光体201の一部を除電することができる。また、この発光素子は上述した駆動回路で駆動することができる。
【0057】
本発明に係る画像形成装置の他の態様として、像形成手段203にスタイラス(針)を用いることもできる。スタイラスを用いる場合は、スタイラスを主走査方向にアレイ状に配置する。この場合も主走査方向の画素毎にスタイラスを設ける。スタイラスは誘電体材料を含むドラムに静電潜像を形成できる位置に設置されており、スタイラスを用いて帯電したドラムの一部を除電することで静電潜像を形成する。
【0058】
スタイラスを用いてドラムの帯電状態を変化させる方法の一例として次の方法がある。
例えば図3のLED1が設けられている位置(TrD1のドレイン側)にスタイラスを接続する。ここでドラムは負に帯電しているとする。この場合、スタイラスは帯電したドラムの近傍に設置されている。そして、TrD1がスイッチングすることでスタイラスがドラムより高電位のVcc2と接続され、その結果、帯電したドラムのうちの各スタイラスが設置された位置に相当する部分が除電される。このスタイラスを制御する回路に上述した駆動回路を用いることができる。
【0059】
以上のように、像形成手段203である発光素子やスタイラスを駆動する回路に本発明に係る駆動回路を用いることで、駆動回路として動作速度の遅いTFTを用いた場合でも十分な速度で画像形成ができる。
【0060】
(画像表示装置)
次に本発明に係る駆動回路を画像表示装置に用いる場合について、図8を用いて説明する。
【0061】
図8(a)では、簡単のために発光素子であるLEDを2次元に16×16個配列した場合について説明する。実際に画像表示装置として用いる場合は、画面の解像度分の発光素子を設ける必要がある。
【0062】
図8(a)において、データ信号供給装置101までは図1の場合と同様である。本発明を画像表示装置として用いる場合は、マトリックス状に配置された発光素子(LED)102の垂直走査方向の発光を制御する垂直走査回路105を設置する。マトリックス状に配置された発光素子102は、データ信号供給装置101と水平走査配線116を介して接続されると共に、垂直走査回路105と垂直走査配線117を介して接続されている。
【0063】
また、図8(b)に各発光素子をスイッチングするための具体的な回路例を示す。図8(b)では、発光素子1−1の場合を示すが、他の発光素子でも同様の回路となっている。水平走査配線116はスイッチングトランジスタ1(TFT1)のドレイン端子と接続しており、垂直走査配線117はTFT1のゲート端子と接続している。また、スイッチングトランジスタ2(TFT2)のゲート端子は、TFT1のソース端子と接続しており、TFT2のソース端子は接地してある。また、発光素子102はアノード側が電源Vccと接続しており、また、カソード側はTFT2のドレイン端子と接続している。
【0064】
図8(b)に示す回路では、水平走査配線116と垂直走査配線117に信号が供給された場合に、TFT1及びTFT2がONとなり発光素子102が発光する。尚、図8(b)に示す回路は、一例であり同様の機能を示す回路であればどのような回路でもよい。
【0065】
次に、発光素子102の発光タイミングについて説明する。
【0066】
データ信号供給装置101は発光素子102の水平走査方向の駆動を制御する。また、垂直走査回路105は発光素子の垂直走査方向の駆動を制御する。つまり、各データ信号供給装置101からは、垂直走査方向の画素信号が経時的に供給される。垂直走査回路105は、この垂直走査方向の画素信号を垂直方向に配列された発光素子(例えば、1−1、D2−1、・・・16−1)に供給するタイミングを制御する。
【0067】
図9を用いて具体的に説明する。図9の駆動回路の場合、r行目からr+3行目の4つの画素信号がタイミングスイッチ110により水平走査配線116に供給される。また、図9の画像表示装置では、垂直走査方向に16個の発光素子が設けられている。この場合、垂直走査回路105は、φ0B、φ1B、φ2B、φ3Bのタイミングと同期して発光素子102に垂直走査配線117を介して駆動信号を供給する。つまり、発光素子1−1を発光させる場合は、タイミングスイッチ110のタイミングφ0Bと、垂直走査回路105のタイミングφ0Cを同期させる。これにより、発光素子1−1に対応する水平走査配線116と垂直走査配線117に駆動信号が供給されて、発光素子1−1が発光する。同様に、発光素子2−1を発光させる場合は、タイミングスイッチ110のタイミングφ1Bと、垂直走査回路105のタイミングφ1Cを同期させる。以下同様に、各発光素子とタイミングスイッチのタイミングと垂直回路105のタイミングの組み合わせは次のようになる。すなわち、(LED3−1、φ2B、φ2C)、(LED4−1、φ3B、φ3C)、(LED5−1、φ0B、φ4C)、(LED6−1、φ1B、φ5C)、(LED7−1、φ2B、φ6C)、(LED8−1、φ3B、φ7C)。(LED9−1、φ0B、φ8C)、(LED10−1、φ1B、φ9C)、(LED11−1、φ2B、φ10C)、(LED12−1、φ3B、φ11C)。(LED13−1、φ0B、φ12C)、(LED14−1、φ1B、φ13C)、(LED15−1、φ2B、φ14C)、(LED16−1、φ3B、φ15C)。
【0068】
尚、垂直走査回路として高速のLSIを用いてもよいが、データ信号供給装置からの画素信号は時分割駆動用LSI(100)よりも十分遅い速度であることから、比較的低速度のトランジスタを用いても十分駆動することができる。このようなトランジスタとしては、有機トランジスタや非単結晶半導体からなる活性層を有する薄膜トランジスタが挙げられる。
【0069】
以上のような構成により、本発明に係る駆動回路を画像表示装置として用いることができる。
【0070】
(素子構成)
図10に、図3に図示した回路で用いた素子(TFT)の構造を示す。図10(a)は、半導体層225がソース電極221及びドレイン電極222の上に形成されており、このような構造はボトムコンタクト型と呼ばれる。図10(b)は、ソース電極221及びドレイン電極222が、半導体層225の上に形成されており、この構造をトップコンタクト型構造と呼ぶ。本発明の駆動回路ではいずれの構成のTFTを用いてもよい。
【0071】
図10(a)において、基板226にはプラスチック、ガラスなどの絶縁物を用いる。基板226上にゲート電極223を塗布或いは蒸着技術により作製する。ゲート電極223の上にゲート絶縁膜224を形成し、更にその上にパターン化されたソース電極221とドレイン電極222を形成する。そしてその上に半導体層225を形成する。最後にこれを被うようにパシベーション層227を形成する。図10(b)についても同様の製法で作製することができる。半導体層としては有機半導体を使う場合、ペンタセン、ポルフィリン、銅ポルフィルン、ルブレン、オリゴチオフェン、ポリチオフェン、フタロシアニン、銅フタロシアニン、メロシアニン、C60を使用することができる。また、フッ化ペンタセン、フッ化フタロシアニン、PTCDI、フッ化銅フタロシアニンなども使用することができる。
【0072】
また、無機半導体としてはアモルファスシリコン、多結晶シリコン、酸化物半導体(例えばZnO、InGaZnO、ZnSnInOなど)などを使用する事ができる。ゲート絶縁膜としては有機物ではポリイミド、フェノール樹脂、PMMA、パリレン、無機物ではSiOなどを使用することができる。パシベーション膜としてはパリレン、SiOなどを使うことができる。
【0073】
本発明が好適に用いられる、図10に示したTFTの半導体層の移動度の下限は1.0×10−2cm/Vsで上限は1.0×10cm/Vsである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】時分割駆動回路と本発明に係るデータ信号供給装置を示す図である。
【図2】時分割駆動回路からのデータ転送のタイミングを示す図である。
【図3】本発明に係るデータ信号供給装置を示す図である。
【図4】図3に示す回路の各種クロックのタイミングチャートを示す図である。
【図5】図3に示す回路の各種クロックのタイミングチャートと、V0A、V0Bの電圧の変化を示した図である。
【図6】本発明に係るデータ信号供給装置を示す図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置を示す図である。
【図8】本発明に係る画像表示装置の回路を示す図である。
【図9】本発明に係る画像表示装置の回路を示す図である。
【図10】本発明に係るデータ信号供給装置に用いるTFTの断面図である。
【符号の説明】
【0075】
100 時分割駆動用LSI
101 データ信号供給装置
102 発光素子
103 クロック配線
104 データ配線
105 垂直走査回路
110 タイミングスイッチ
113 データ信号供給回路
114 サンプルホールド回路
115 増幅回路
116 水平走査配線
117 垂直走査配線
201 感光体
202 帯電手段
203 像形成手段
204 現像手段
205 転写手段
206 クリーニングブレード
207 像消去手段
208 像定着手段
209 転写材搬送装置
210 転写材
221 ソース電極
222 ドレイン電極
223 ゲート電極
224 ゲート絶縁膜
225 半導体層
226 基板
227 パッシベーション層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングトランジスタを有し、入力されるデータ信号をサンプリングして負荷回路の駆動には不十分な電圧レベルのデータ信号を保持するサンプルホールド回路と、
前記負荷回路に増幅されたデータ信号を供給するために前記サンプルホールド回路に保持されたデータ信号を電圧増幅する増幅回路と、
を備えたデータ信号供給回路を少なくとも2つ以上具備し、
前記少なくとも2つ以上の増幅回路の各々は、
サンプリング期間の少なくとも2倍以上の積分時間をかけて、前記サンプルホールド回路に保持されたデータ信号を積分することにより、該保持されたデータ信号の電圧を前記負荷回路の駆動に十分な電圧に昇圧する積分回路を含み、
前記複数のデータ信号供給回路のうち、一つの前記データ信号供給回路の前記増幅回路における前記積分時間中に、他の前記データ信号供給回路において前記データ信号をサンプリングする、ことを特徴とするデータ信号供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路において、前記サンプルホールド回路に保持されたデータ信号を増幅する前記増幅回路は、出力端子に保持容量が設けられた増幅用トランジスタを有し、
前記増幅用トランジスタにその閾値電圧より大きいオンデータ信号電圧が入力された時の前記増幅用トランジスタのオンドレイン電流をI(on)、
前記増幅用トランジスタにその閾値電圧以下のオフデータ信号電圧が入力された時の前記増幅用トランジスタのオフドレイン電流をI(off)、
前記保持容量をCp1、
前記増幅時間をt、
前記負荷回路のTrD1の動作閾値電圧をVthとした時に、前記増幅されたデータ信号の電圧が、
【数1】

を満たし、且つ、前記増幅用トランジスタに入力されるデータ信号電圧の最大値をVOAMAXとした時に、
【数2】

を満足すると共に、前記複数のデータ信号供給回路のうち、一つの前記データ信号提供回路の増幅時間t中に、他の前記データ信号供給回路において前記データ信号をサンプルホールドする、
ことを特徴とするデータ信号供給装置。
【請求項3】
前記負荷回路は、前記増幅回路から出力されたデータ信号に応じてオン又はオフ状態となるスイッチングトランジスタを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ信号供給装置。
【請求項4】
前記サンプルホールド回路及び前記増幅回路の少なくとも1つを構成するトランジスタは、非単結晶半導体からなる活性層を有する薄膜トランジスタ又は有機トランジスタであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のデータ信号供給装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のデータ信号供給装置と、前記スイッチングトランジスタにより駆動電流が供給されて発光する発光素子とを有することを特徴とする発光素子アレイ。
【請求項6】
感光体と、
前記感光体に静電潜像を形成するための請求項5に記載の発光素子アレイと、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
誘電体材料を含むドラムと、
前記ドラムの帯電状態を変化させる位置に配置された複数のスタイラスと、
前記スタイラスの電位を変化させる請求項1乃至4のいずれか一項に記載のデータ信号供給装置とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
2次元に配置された発光素子アレイと、
前記発光素子アレイの水平走査方向に並んだ複数の水平走査配線にデータ信号を供給する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のデータ信号供給装置と、
前記発光素子アレイを垂直走査方向に走査するための垂直走査回路とを有することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−101582(P2009−101582A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275162(P2007−275162)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】