説明

データ処理装置

【課題】消費電力を抑えつつフォトカプラの耐用寿命を延ばすことができるデータ処理装置を提供すること。
【解決手段】フォトカプラの入出力データを処理するデータ処理装置は、フォトカプラの入力側と出力側の間で伝送されるデータを構成する所定ビットのパケットデータ群の過半数が「1」のビットか「0」のビットかを判断する過半数ビット判断部と、「1」のビットが過半数を占めると判断されたパケットデータ群を構成する各ビットの値を反転する入力信号処理部と、過半数ビット判断部が判断した結果に応じた制御情報を、過半数を「0」のビットが占めるパケットデータ群又は各ビットの値が反転されたパケットデータ群に付加して、フォトカプラに出力する制御情報付加部と、フォトカプラの受光部で得られた制御情報に応じて、受光部が受信したパケットデータ群を構成する各ビットの値を反転し、制御情報を除くデータを出力する出力信号処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトカプラの耐用寿命の長期化を図るデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁が必要な回路において信号伝達を実現するためのフォトカプラ回路が開示されている。当該フォトカプラ回路は、寿命延長のために発光部への通電電流を低レベルに抑制しておき、その後、経年劣化の増大時に発光部への通電電流を増大する。なお、経年劣化の増大は、発光部の累積オン時間が所定のしきい値時間を超えたか否かによって判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−172513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記説明した特許文献1のフォトカプラ回路では、経年劣化の増大後に発光部への通電電流を増大するため、経年劣化が増大した発光部での消費電力は大きい。しかし、消費電力の増加は望ましくない。
【0005】
本発明の目的は、消費電力を抑えつつフォトカプラの耐用寿命を延ばすことができるデータ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の発明のデータ処理装置は、発光部(例えば、実施の形態での発光素子101)及び受光部(例えば、実施の形態での受光素子103)を有するフォトカプラ(例えば、実施の形態でのフォトカプラ100)の入出力データを処理するデータ処理装置であって、前記フォトカプラの入力側と出力側の間で伝送されるデータを構成する所定ビットのパケットデータ群の過半数が「1」のビットか「0」のビットかを判断する過半数ビット判断部(例えば、実施の形態での発光回数カウント部113)と、前記過半数ビット判断部によって「1」のビットが過半数を占めると判断されたパケットデータ群を構成する各ビットの値を反転する入力信号処理部(例えば、実施の形態での入力信号処理部115)と、前記過半数ビット判断部が判断した結果に応じた制御情報を、過半数を「0」のビットが占めるパケットデータ群又は前記信号処理部によって各ビットの値が反転されたパケットデータ群に付加して、前記フォトカプラに出力する制御情報付加部(例えば、実施の形態での制御情報付加部117)と、前記フォトカプラの前記受光部で得られた制御情報に応じて、前記受光部が受信したパケットデータ群を構成する各ビットの値を反転し、前記制御情報を除くデータを出力する出力信号処理部(例えば、実施の形態での出力信号処理部119)と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
さらに、請求項2に記載の発明のデータ処理装置では、前記フォトカプラの入力側と出力側の間で伝送されるデータを前記所定ビット数のパケットに分割して前記パケットデータ群とするパケット化部(例えば、実施の形態でのパケット化部111)を備えたことを特徴としている。
【0008】
さらに、請求項3に記載の発明のデータ処理装置では、前記制御情報付加部は、過半数を「0」のビットが占めるパケットデータ群又は前記信号処理部によって各ビットの値が反転されたパケットデータ群のフッタに前記制御情報を付加することを特徴としている。
【0009】
さらに、請求項4に記載の発明のデータ処理装置では、前記制御情報は1ビットであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜4に記載の発明のデータ処理装置によれば、フォトカプラの発光部に送られるパケットデータ群は常に「0」が過半数を占める。したがって、消費電力を抑えることができると共に、フォトカプラの耐用寿命を延ばすことができる。
【0011】
請求項4に記載の発明のデータ処理装置によれば、フォトカプラが伝送するデータ量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】低電圧系と高電圧系を備えた電動車両の内部構成を示すブロック図
【図2】フォトカプラ及び一実施形態のデータ処理装置の内部構成を示すブロック図
【図3】(a)はパケットデータ群の過半数を「1」のビットが占める場合の例を示す図であり、(b)はパケットデータ群の過半数を「0」のビットが占める場合の例を示す図
【図4】図2に示したデータ処理装置のデータ伝送前の動作を示すフローチャート
【図5】図2に示したデータ処理装置のデータ伝送後の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るデータ処理装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、データ処理装置が利用するフォトカプラは、低電圧系と高電圧系を絶縁しつつ両系間でデータを伝送するために用いられる。図1は、低電圧系と高電圧系を備えた電動車両の内部構成を示すブロック図である。図1に示すように、電動車両では、低電圧系に属するモータECUから高電圧系に属するモータドライバECUへのデータ伝送がフォトカプラを介して行われ、モータドライバECUから低電圧系に属するマネジメントECUへのデータ伝送が別のフォトカプラを介して行われる。
【0014】
図2は、フォトカプラ及び一実施形態のデータ処理装置の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、データ処理装置は、フォトカプラ100の入力側にパケット化部(Packetizing portion)111、発光回数カウント部113、入力信号処理部115及び制御情報付加部117を備え、フォトカプラ100の出力側に出力信号処理部119を備える。なお、フォトカプラ100は、デジタル信号を伝送するために用いられ、デジタル信号の1/0に応じて発光する発光素子101と、発光素子101からの光を受光する受光素子103とから構成される。図2には、発光素子101としてLEDが示され、受光素子103としてフォトトランジスタが示されている。受光素子103としては、フォトトランジスタの他に、フォトサイリスタやフォトトライアック、CdSセル等が用いられても良い。
【0015】
以下、データ処理装置の各構成要素について説明する。なお、フォトカプラ100の発光素子101は、シリアル通信情報であるデジタル信号のビットが「1」のときに発光し、「0」のときは発光しない。
【0016】
パケット化部111は、例えば高電圧系から低電圧系に送られるシリアル通信情報であるデジタル信号を所定ビット数のパケットに分割する。なお、所定のビット数は奇数であり、例えば15ビットである。
【0017】
発光回数カウント部113は、パケット化部111によって分割された所定ビットのパケットデータ群に含まれる「1」のビット数をカウントする。さらに、発光回数カウント部113は、当該カウント数がパケットデータ群を構成する所定ビット数の半数を超えるか否かを判断する。すなわち、発光回数カウント部113は、パケットデータ群の過半数が「1」のビットか「0」のビットかを判断する。発光回数カウント部113は、判断結果を入力信号処理部115及び制御情報付加部117に通知する。なお、「過半数」とは、全体の半数を超える数であって、例えば、全体の5割5分でも、6割でも、8割でも、9割5分5厘に相当する数であっても良い。
【0018】
入力信号処理部115は、発光回数カウント部113からの通知内容が、パケット化部111によって区切られた所定ビットのパケットデータ群の過半数を「1」のビットが占めることを示すとき、図3(a)に示すように、当該パケットデータ群を構成する各ビットの値(1/0)を反転し、当該各ビットの値が反転されたパケットデータ群を制御情報付加部117に送る。一方、入力信号処理部115は、パケットデータ群の過半数を「0」のビットが占めることを示すとき、図3(b)に示すように、パケットデータ群の各ビットの値をそのままとし、当該パケットデータ群を制御情報付加部117に送る。
【0019】
制御情報付加部117は、入力信号処理部115から送られたパケットデータ群に1ビットの制御情報であるフッタを付加して、フォトカプラ100に出力する。フッタのビット値は、発光回数カウント部113からの通知内容が、図3(a)に示すようにパケットデータ群の過半数を「1」のビットが占めることを示すときには「1」であり、図3(b)に示すようにパケットデータ群の過半数を「0」のビットが占めることを示すときには「0」である。なお、当該制御情報はヘッダであっても良い。
【0020】
出力信号処理部119は、フォトカプラ100の受光素子103が光電変換して得られたデジタル信号に基づいて、受光素子103が受信したパケットデータ群に付加されたフッタの値が「1」か「0」かを判断する。当該判断の結果、フッタの値が「1」の場合、出力信号処理部119は、当該パケットデータ群を構成する各ビットの値(1/0)を反転し、フッタの値を除くデータを出力する。一方、フッタの値が「0」の場合、出力信号処理部119は、ビット値の反転は行わず、フッタの値を除くデータを出力する。
【0021】
図4は、図2に示したデータ処理装置のデータ伝送前の動作を示すフローチャートである。図4に示すように、パケット化部111は、シリアル通信情報であるデジタル信号を所定ビット数のパケットに分割する(ステップS101)。次に、発光回数カウント部113は、ステップS101で分割された所定ビットの各パケットデータ群の過半数が「1」のビットか「0」のビットかを判断する(ステップS103)。ステップS103の判断において、「1」のビットが過半数を占めるパケットデータ群に関してはステップS105に進み、「0」のビットが過半数を占めるパケットデータ群に関してはステップS109に進む。
【0022】
ステップS105では、入力信号処理部115は、パケットデータ群を構成する各ビットの値(1/0)を反転する。次に、制御情報付加部117は、ステップS105で反転されたパケットデータ群に「1」のフッタを付加する(ステップS107)。一方、ステップS109では、入力信号処理部115は何も行わず、制御情報付加部117は、パケットデータ群に「0」のフッタを付加する。ステップS107又はステップS109の後、制御情報付加部117は、パケットデータ群をフッタと共にフォトカプラ100に出力する(ステップS111)。
【0023】
図5は、図2に示したデータ処理装置のデータ伝送後の動作を示すフローチャートである。図5に示すように、出力信号処理部119は、フォトカプラ100の受光素子103が受信したパケットデータ群に付加されたフッタの値が「1」か「0」かを判断する(ステップS151)。ステップS151の判断において、フッタの値が「1」の場合はステップS153に進み、「0」の場合はステップS155に進む。ステップS153では、出力信号処理部119は、パケットデータ群を構成する各ビットの値を反転する。次に、出力信号処理部119は、フッタの値を除くデータを出力する(ステップS155)。
【0024】
以上説明したように、本実施形態のデータ処理装置は、フォトカプラ100に送られる前のパケットデータ群の過半数を「1」のビットが占める際には、当該パケットデータ群を構成する各ビットの値(1/0)を反転した上で、当該反転したパケットデータ群のデータをフォトカプラ100に送る。その結果、フォトカプラ100に送られるパケットデータ群は常に「0」が過半数を占める。上述したように、フォトカプラ100の発光素子101は「1」のビットのときに発光するため、常に「0」が過半数を占めるパケットデータ群に応じた発光素子101の発光頻度は、上述した各ビットの値の反転を行わない場合よりも低い。
【0025】
フォトカプラ100の耐用寿命は、発光素子101の累積発光時間に左右される。すなわち、発光素子101の累積発光時間が短ければフォトカプラ100の耐用寿命は延びる。本実施形態では、発光素子101の発光頻度が低いために累積発光時間を短くでき、結果として、フォトカプラ100の耐用寿命を延ばすことができる。また、累積発光時間が短いためフォトカプラ100における消費電力を抑えることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、パケットデータ群を構成するビット数が奇数であると説明したが、偶数であっても良い。但し、パケットデータ群を構成する「1」のビット数と「0」のビット数が同数であるとき、入力信号処理部115は、上記説明した反転処理を行うか行わないかを予め決定しておく必要がある。
【符号の説明】
【0027】
100 フォトカプラ
101 発光素子
103 受光素子
111 パケット化部
113 発光回数カウント部
115 入力信号処理部
117 制御情報付加部
119 出力信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部及び受光部を有するフォトカプラの入出力データを処理するデータ処理装置であって、
前記フォトカプラの入力側と出力側の間で伝送されるデータを構成する所定ビットのパケットデータ群の過半数が「1」のビットか「0」のビットかを判断する過半数ビット判断部と、
前記過半数ビット判断部によって「1」のビットが過半数を占めると判断されたパケットデータ群を構成する各ビットの値を反転する入力信号処理部と、
前記過半数ビット判断部が判断した結果に応じた制御情報を、過半数を「0」のビットが占めるパケットデータ群又は前記信号処理部によって各ビットの値が反転されたパケットデータ群に付加して、前記フォトカプラに出力する制御情報付加部と、
前記フォトカプラの前記受光部で得られた制御情報に応じて、前記受光部が受信したパケットデータ群を構成する各ビットの値を反転し、前記制御情報を除くデータを出力する出力信号処理部と、
を備えたことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ処理装置であって、
前記フォトカプラの入力側と出力側の間で伝送されるデータを前記所定ビット数のパケットに分割して前記パケットデータ群とするパケット化部を備えたことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデータ処理装置であって、
前記制御情報付加部は、過半数を「0」のビットが占めるパケットデータ群又は前記信号処理部によって各ビットの値が反転されたパケットデータ群のフッタに前記制御情報を付加することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のデータ処理装置であって、
前記制御情報は1ビットであることを特徴とするデータ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−205265(P2012−205265A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70649(P2011−70649)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】