説明

データ記録装置

【課題】保存しておく必要性の低い運転状態を示すデータの保存を防止することができ、
また、保存しておく必要性の高い運転状態を示すデータの保存を確実に行うことができ、
より適切なデータの保存制御を行うことができるデータ記録装置を提供すること。
【解決手段】車両状態を検出する手段から取得したデータを記録する記録手段(S3)と
、車両のブレーキの踏み込み状態を検出するブレーキ踏込状態検出手段(S4)と、ブレ
ーキ踏込状態検出手段により検出されたブレーキの踏み込み状態に基づいて、車両の加速
度から所定の運転状態を判定するための加速度閾値の設定を切り換える閾値設定切換手段
(S5、S6)と、閾値設定切換手段により切り換えられた加速度閾値の設定状態におい
て、車両の加速度が所定の条件を満たした場合に、記録手段により記録されたデータを保
存するデータ保存手段(S12)とを装備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ記録装置に関し、より詳細には、車両等の移動体に搭載され、走行時等
の運転状態を把握するための各種データを記録することができるデータ記録装置に関する

【背景技術】
【0002】
従来より、事故直前の車両状況を把握するために、事故直前に得られた車速、操舵角、
ブレーキ圧力、加速度、画像等のデータをフラッシュメモリに保存して、事故後に前記フ
ラッシュメモリに保存されたデータを読み出して、事故発生状況の把握を可能にしたデー
タ記録装置、所謂、車両用ドライブレコーダが提案されている(例えば、下記の特許文献
1参照)。
【0003】
従来のデータ記録装置では、加速度センサ(Gセンサ)で検出された車両の加速度(減
速度)が、所定の閾値を超え、かつ該閾値を超えた状態が所定期間継続した等の条件が成
立した場合にフラッシュメモリへのデータ保存が開始されるようになっている。
【0004】
また、近年では、前記閾値として、衝突には至らない急ブレーキ等の危険な運転状態を
判定するための低めの閾値(低G閾値)と、衝突に至る運転状態を判定するための高めの
閾値(高G閾値)とを設定し(いずれも固定値)、衝突直前のデータだけでなく、急ブレ
ーキ等の危険運転が行われたときのデータも保存することが可能な装置も提案されている

【0005】
図1は、上記低G閾値と高G閾値とが固定値として設定されている従来のデータ記録装
置で行われるフラッシュメモリへのデータ保存動作を説明するためのタイミング図であり
、(a)はイグニッションスイッチ(IG)の状態、(b)はデータをRAMへ記録する
動作、(c)は加速度センサで検出された加速度(減速度)、(d)は高G検出用カウン
タと低G検出用カウンタのカウント状態、(e)はRAMに記録されたデータをフラッシ
ュメモリへ保存する動作を示している。
【0006】
データ記録装置は、時刻t1において、イグニッションスイッチのONを検出すると、
各種センサ等で検出されたデータをRAMへ記録する処理を開始する。その後の時刻t2
〜t4を含む区間は、ブレーキをかけずに衝突した場合の動作状態を示しており、時刻t
2において、車両の加速度(減速度)が低G閾値を超えたことを検出すると、低G検出用
カウンタのカウントを開始し、その後、時刻t3において、加速度が高G閾値を超えたこ
とを検出すると、高G検出用カウンタのカウントを開始し、高G検出用カウンタのカウン
トが2となった時刻t4において、衝突と判定し、RAMに記録されている衝突前のデー
タをフラッシュメモリに転送して保存する処理を開始する。
【0007】
次の時刻t5〜t6を含む区間は、ブレーキをかけながら衝突した場合の動作状態を示
しており、時刻t5において、車両の加速度(減速度)が低G閾値を超えたことを検出す
ると、低G検出用カウンタのカウントを開始する。その後、ブレーキをかけてある程度減
速した状態で衝突したため、加速度は、高G閾値を超えることなく、また、低G検出用カ
ウンタのカウント数も判定値(5回)に達することなく、時刻t6において低G閾値以下
となり、実際には衝突が発生したにも関わらず、衝突前のデータをフラッシュメモリに保
存することを実行しない。この区間では、衝突前のデータをフラッシュメモリに保存しな
ければならないのに保存しないという問題となる現象が発生している。
【0008】
次の時刻t7〜t8を含む区間は、急ブレーキをかけた場合の動作状態を示しており、
時刻t7において、車両の加速度(減速度)が低G閾値を超えたことを検出すると、低G
検出用カウンタのカウントを開始し、低G検出用カウンタのカウントが5となった時刻t
8において、急ブレーキと判定し、RAMに記録されている急ブレーキ前のデータをフラ
ッシュメモリに転送して保存する処理を開始する。
【0009】
次の時刻t9〜t10を含む区間は、ブレーキをかけていない状態で悪路(凸凹道)を走
行している場合の動作状態を示しており、時刻t9において、車両の加速度(減速度)が
低G閾値を超えたことを検出すると、低G検出用カウンタのカウントを開始し、その後、
時刻t9〜t10にかけて、カウント周期と同期して、断続的に加速度が低G閾値を超えた
ことを検出すると、低G検出用カウンタのカウントが継続され、カウントが5となった時
刻t10において、急ブレーキと判定(誤判定)し、保存する必要性の低いデータがフラッシュメモリに保存されるという問題となる現象が発生する区間となっている。
【0010】
上記高G閾値は、事故等の衝突に至る運転状態の判定に用いられ、検出された車両の加
速度(減速度)が、高G閾値を所定のカウント数、連続して超えた場合に、フラッシュメ
モリへのデータの保存が開始されるようになっている。ところが、事故等による衝突の場
合、上記したように衝突直前にブレーキをかけてある程度減速した状態で衝突する場合も
多いと考えられる。
【0011】
ブレーキをかけながら衝突した場合、上記したように検出された車両の加速度が、高G
閾値を超えず衝突を判定できない場合も想定され、また、衝突は事象の時間が短いため、
低G閾値を使用した判定においても、低G検出用カウンタのカウント数が判定値に達する
ことができず、このような場合、保存する必要性の高い衝突直前のデータを保存すること
ができないという問題が発生する虞があった。
【0012】
また、上記低G閾値は、主に急ブレーキ等の危険な運転状態の判定に用いられ、検出さ
れた車両の加速度(減速度)が、低G閾値を所定のカウント数、連続して超えた場合に、
フラッシュメモリへのデータの保存が開始されるようになっている。しかしながら、路面
状況が悪い凸凹道のような悪路においては、上記したようにブレーキ操作を行っていない
にもかかわらず、路面からの強い衝撃により、低G閾値を超える加速度がある程度の期間
、断続的に検出される場合もあり、かかる場合には、急ブレーキをかけていないにも関わ
らず、データが保存されることとなり、フラッシュメモリが無駄に使用される虞があると
いう問題があった。
【0013】
また、下記の特許文献2では、上記と同様な問題、すなわち、加速度判定の基準値が高
いため、衝突した場合でも衝突直前の走行データを保存することができない場合があると
いう問題に対して、車両の加速度の大きさが基準値以上であると判定された時点より所定
の時間以内に、車速が基準値以下(実質的に0)であると判定されたときに車両の異常状
態(衝突)と判定して、直前の走行データを保存するように構成された車両用データ記録
装置が開示されている。
【0014】
しかしながら、特許文献2記載の技術では、加速度の基準値(閾値)が固定された値と
して設定されているため、基準値の設定によっては、減速しながら衝突した際の直前のデ
ータを保存することができない場合が発生する虞があり、また、特許文献2には、悪路等
で低G閾値を超える加速度が検出された場合の対策についての記載は特になく、かかる場
合における走行データの不必要な保存を防ぐことができないという問題は依然として残さ
れていた。
【特許文献1】特開2000−6854号公報
【特許文献2】特開2000−335450号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、保存しておく必要性の低い運転状態を
示すデータの保存を防止することができる一方、保存しておく必要性の高い運転状態を示
すデータの保存を確実に行うことができ、より適切なデータの保存制御を行うことができ
るデータ記録装置を提供することを目的としている。
【0016】
上記目的を達成するために本発明に係るデータ記録装置(1)は、車両状態を検出する
手段から取得したデータを記録する記録手段と、車両のブレーキの踏み込み状態を検出す
るブレーキ踏込状態検出手段と、該ブレーキ踏込状態検出手段により検出されたブレーキ
の踏み込み状態に基づいて、車両の加速度から所定の運転状態を判定するための加速度閾
値の設定を切り換える閾値設定切換手段と、該閾値設定切換手段により切り換えられた前
記加速度閾値の設定状態において、車両の加速度が所定の条件を満たした場合に、前記記
録手段により記録されたデータを保存するデータ保存手段とを備えていることを特徴とし
ている。
【0017】
上記データ記録装置(1)によれば、前記ブレーキ踏込状態検出手段により検出された
ブレーキの踏み込み状態に基づいて、車両の加速度から所定の運転状態を判定するための
加速度閾値の設定が切り換えられるので、前記加速度閾値が常時固定値に設定されていた
従来の装置と比較して、前記ブレーキの踏み込み状態に対応させて前記加速度閾値の設定
状態を切り換えることができる。
【0018】
したがって、前記ブレーキの踏み込み状態に対応させて前記加速度閾値の設定を適切に
切り換えることにより、前記データを保存しておく必要性が高い運転状態を示すデータの
保存をより確実に行うことが可能になる一方、前記データを保存しておく必要性の低い運
転状態を示すデータの保存を防止することができ、データの保存制御をより適切に行うこ
とができると共に、前記データを保存する記憶手段をより有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るデータ記録装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。図2は、
実施の形態に係るデータ記録装置の要部を概略的に示したブロック図である。
図中1は、データ記録装置を示しており、データ記録装置1は、A/D変換器2、デコ
ーダ3、画像処理部4、RAM5、ROM6、CPU7、フラッシュメモリ8、エンコー
ダ9を含んで構成されている。
【0020】
また、走行時の前方状況を撮像するためのCCDカメラ11が、データ記録装置1のA
/D変換器2に接続されており、車両に設置されたCCDカメラ11で撮像された画像デ
ータは、A/D変換器2においてディジタル信号に変換され、デコーダ3で処理され、画
像処理部4で画像圧縮された後、RAM5に記録されるようになっている。
【0021】
また、車速を検出する車速センサ12、ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサ13
、ブレーキ圧力を検出するブレーキ圧力センサ14、車両の加速度を検出する加速度セン
サ15、車両の現在位置を検出するGPS受信機16、方向指示器の操作信号を出力する
方向指示スイッチ17、及び計時手段18が、データ記録装置1のCPU7に接続されて
おり、CPU7は、車両状態を検出するこれら検出手段12〜18からの信号を取り込み
、CCDカメラ11で撮像された画像データとともにRAM5に記録するようになってい
る(記録手段)。なお、これら検出手段12〜18からの信号は、車内LANで接続され
たエンジン制御装置等の他の制御装置を介して取得する構成としてもよい。
【0022】
また、CPU7は、ブレーキ圧力センサ14からの信号に基づいて、ブレーキの踏み込
みの有無を検出する機能(ブレーキ踏込状態検出手段)と、該ブレーキの踏み込みの有無
に基づいて、衝突には至らない急ブレーキ等の危険な運転状態を判定するための第1の加
速度閾値(すなわち、低G閾値)の使用を許可する設定、又は使用を禁止する設定に切り
換えるとともに、衝突に至る運転状態を判定するための第2の加速度閾値(すなわち、高
G閾値)の設定値を切り換える機能(閾値設定切換手段)と、該閾値設定切換手段により
切り換えられた低G閾値や高G閾値の設定状態において、加速度センサ15で検出された
車両の加速度(減速度)が所定の条件を満たした場合に、RAM5に記録されているデー
タをフラッシュメモリ8に保存する機能(データ保存手段)とを有している。なお、RO
M6には、CPU7で実行されるプログラムや、低G閾値と高G閾値の設定情報など、制
御に必要な各種データが記憶されている。なお、フラッシュメモリ8の代わりに、電源断
でもデータが消えない他の不揮発性メモリを採用することもできる。
【0023】
なお、フラッシュメモリ8に保存されたデータは、解析時にエンコーダ9において圧縮
画像データの伸張等の信号処理が施され、出力端子10より画像及びセンサ情報として再
生出力可能な構成となっている。
【0024】
図3は、実施の形態に係るデータ記録装置1におけるCPU7が行うフラッシュメモリ
8へのデータ保存動作を説明するためのタイミング図であり、(a)はイグニッションス
イッチ(IG)の状態、(b)はデータをRAM5へ記録する動作、(c)は加速度セン
サ15で検出された加速度(減速度)、(d)はブレーキ信号(Hで踏み込みあり、Lで
踏み込みなし)、(e)は高G検出用カウンタと低G検出用カウンタのカウント状態、(
f)はRAM5に記録されたデータをフラッシュメモリ8へ保存する動作を示している。
【0025】
特徴点は、ブレーキの踏み込み状態に基づいて、高G閾値と低G閾値との設定が切り換
わるように構成されている点にあり、ブレーキが踏まれていないとき(すなわち、ブレー
キ信号がLのとき)は、低G閾値の使用を禁止する設定にする(すなわち、検出された加
速度(減速度)が低G閾値を超えても、低G検出用カウンタのカウントを行わない設定と
する)とともに、高G閾値にはTh1を設定する。なお、図3(c)においては、低G閾
値の使用を禁止する設定状態を一点鎖線で示している。
【0026】
一方、ブレーキが踏まれているとき(すなわち、ブレーキ信号がHのとき)は、低G閾
値の使用を許可する設定にする(すなわち、検出された加速度(減速度)が低G閾値を超
えた場合、低G検出用カウンタのカウントを行う設定とする)とともに、高G閾値にはT
1よりも低いTh2を設定するようになっている。なお、高G閾値のTh2の値は、ブ
レーキをかけながらある程度減速した状態での衝突が検出可能となるように、基準値とな
るTh1よりも低い値に設定されている。高G閾値Th1、Th2、低G閾値Tlの各設
定値は、車種毎に最適な値となるように設定されている。
【0027】
データ記録装置1は、時刻t11において、イグニッションスイッチのONを検出すると、各種の検出手段11〜18で検出されたデータをRAM5へ記録する処理を開始する。その後の時刻t12〜t14を含む区間は、ブレーキをかけずに衝突した場合の動作状態を示している。
【0028】
この場合、時刻t12において、車両の加速度(減速度)が低G閾値を超えるが、ブレーキ信号がLであるので、低G閾値の使用を禁止する設定となっており、低G検出用カウンタのカウントが開始されることはなく、その後、時刻t13において、車両の加速度が高G閾値(Th1)を超えたことを検出すると、高G検出用カウンタのカウントを開始し、カウンタが2となった時刻t14において、衝突と判定し、RAM5に記録されている衝突前のデータをフラッシュメモリ8に転送して保存する処理を開始する。
【0029】
次の時刻t15〜t18を含む区間は、ブレーキをかけながら衝突した場合の動作状態を示しており、時刻t15において、ブレーキ信号のHを検出すると、加速度閾値の設定が切り換えられる。すなわち、低G閾値は、その使用を禁止する設定から使用を許可する設定に切り換えられ(すなわち、検出された加速度が低G閾値を超えると低G検出用カウンタのカウントを開始する)、一方、高G閾値は、Th1からTh2に設定値が切り換えられる。
【0030】
その後、時刻t16において、車両の加速度(減速度)が低G閾値(Tl)を超えたことを検出すると、低G検出用カウンタのカウントを開始し、その後、時刻t17において、車両の加速度が高G閾値(Th2)を超えたことを検出すると、高G検出用カウンタのカウントを開始し、高G検出用カウンタが2となった時刻t18において、衝突(ブレーキをかけながらの衝突)と判定し、RAM5に記録されている衝突前のデータをフラッシュメモリ8に転送して保存する処理を開始する。このように、ブレーキを踏み込んでいる時は、高G閾値がTh1よりも低いTh2に切り換えて設定されるので、ブレーキをかけながらの衝突も正確に判定することが可能となり、衝突前のデータを確実に保存することが可能となっている。
【0031】
次の時刻t19〜t20を含む区間は、急ブレーキをかけた場合の動作状態を示しており、時刻t19において、車両の加速度(減速度)が低G閾値(Tl)を超えたことを検出すると、低G検出用カウンタのカウントを開始し、低G検出用カウンタが5となった時刻t20において、急ブレーキと判定し、RAM5に記録されている急ブレーキ前のデータをフラッシュメモリ8に転送して保存する処理を開始する。
【0032】
次の時刻t21〜t23を含む区間は、ブレーキをかけていない状態で悪路を走行している場合の動作状態を示しており、時刻t21において、ブレーキ信号のLを検出すると、加速度閾値の設定が切り換えられる、すなわち、低G閾値は、その使用を許可する設定から使用を禁止する設定に切り換えられ(すなわち、検出された加速度が低G閾値を超えても、低G検出用カウンタのカウントを行わない)、高G閾値は、Th2からTh1に設定値が切り換えられる。
【0033】
その後、時刻t22〜t23にかけて、断続的に、加速度が低G閾値を超えるが、低G閾値の使用を禁止する設定となっているので、低G検出用カウンタのカウントが開始されることはなく、ブレーキが踏まれていない状態で、断続的に加速度が低G閾値を超える悪路等でのデータの不必要な保存が防止される。
【0034】
また、次の時刻t24〜t26を含む区間は、ブレーキをかけた状態で悪路を走行している場合の動作状態を示しており、時刻t24において、ブレーキ信号のHを検出すると、加速度閾値の設定が切り換えられる。すなわち、低G閾値は、その使用を禁止する設定から使用を許可する設定に切り換えられ(すなわち、検出された加速度が低G閾値を超えると低G検出用カウンタのカウントを開始する)、高G閾値は、Th1からTh2に設定値が切り換えられる。
【0035】
その後、時刻t25〜t26にかけて、断続的に、加速度のピークが検出されるが、ブレーキをかけているため、加速度が低G閾値(Tl)未満となっており、低G検出用カウンタのカウントが開始されることはなく、データの保存は行われないようになっている。
【0036】
次に実施の形態に係るデータ記録装置1におけるCPU7の行う処理動作を図4に示し
たフロ−チャ−トに基づいて説明する。なお、本処理動作は、イグニッションスイッチが
ONされた後、繰り返し実行される。
【0037】
まず、ステップS1では、低G検出用のカウンタ(m)と、高G検出用のカウンタ(n
)とをリセットし、次のステップS2では、各種の検出手段11〜18からのデータを取
得し、次のステップS3では、検出されたデータをRAM5に記録し、その後ステップS
4に進む。なお、RAM5内の記録用の空容量がなくなると、古いデータの上に新しいデ
ータが上書き記録されるようになっている。
【0038】
ステップS4では、ブレーキが踏まれているか否かを判断し、ブレーキが踏まれている
と判断すればステップS5に進み、ステップS5では、低G閾値(Tl)の使用を許可す
る設定にする一方、高G閾値の設定値をTh2に設定し、その後ステップS6に進む。
【0039】
ステップS6では、加速度センサ15で検出された加速度(検出G)が、低G閾値(T
l)を超えたか否かを判断し、検出Gが低G閾値(Tl)を超えたと判断すればステップ
S7に進み、ステップS7では、低G検出用のカウンタ(m)に1を加算し、その後ステ
ップS8に進む。
【0040】
ステップS8では、低G検出用のカウンタ(m)が、判定値Mになったか否かを判断し
、低G検出用のカウンタ(m)が、判定値Mになっていないと判断すればステップS9に
進み、ステップS9では、検出Gが高G閾値(Th2)を超えたか否かを判断し、高G閾
値(Th2)を超えたと判断すればステップS10に進み、ステップS10では、高G検
出用のカウンタ(n)に1を加算し、その後ステップS11に進む。
【0041】
ステップS11では、高G用のカウンタ(n)が判定値Nになったか否かを判断し、高
G用のカウンタ(n)が判定値Nになっていないと判断すればステップS2に戻る一方、
高G用のカウンタ(n)が判定値Nになったと判断すればステップS12に進む。
【0042】
ステップS12では、RAM5に記録されているデータをフラッシュメモリ8に保存す
る処理を開始し、その後処理を終える。一方ステップS8において、低G検出用のカウン
タ(m)が、判定値Mになったと判断すればステップS12に進み、RAM5に記録され
ているデータをフラッシュメモリ8に保存する処理を開始し、その後処理を終える。
【0043】
一方ステップS6において、検出された加速度が低G閾値(Tl)を超えていないと判
断した場合、ステップS13に進み、低G検出用のカウンタ(m)をリセットし、その後
ステップS2に戻り処理を繰り返す。また、ステップS9において、検出された加速度が
高G閾値(Th2)を超えていないと判断した場合、ステップS14に進み、高G検出用
のカウンタ(n)をリセットし、その後ステップS2に戻り処理を繰り返す。
【0044】
また、一方ステップS4において、ブレーキが踏まれていないと判断すればステップS
15に進み、ステップS15では、低G閾値(Tl)の使用を禁止する設定にする一方、
高G閾値の設定値をTh1に設定し、その後ステップS16に進む。
【0045】
ステップS16では、低G検出用のカウンタ(m)をリセットし、その後ステップS1
7に進み、ステップS17では、検出された加速度が、高G閾値(Th1)を超えたか否
かを判断し、高G閾値(Th1)を超えたと判断すればステップS18に進み、ステップ
S18では、高G検出用のカウンタ(n)に1を加算し、その後ステップS19に進む。
【0046】
ステップS19では、高G用のカウンタ(n)が判定値Nになったか否かを判断し、高
G用のカウンタ(n)が判定値Nになっていないと判断すればステップS2に戻る一方、
高G用のカウンタ(n)が判定値Nになったと判断すればステップS12に進み、RAM
5に記録されたデータをフラッシュメモリ8に保存する処理を開始し、その後処理を終え
る。
【0047】
一方ステップS17において、検出された加速度が、高G閾値(Th1)を超えていな
いと判断すればステップS20に進み、ステップS20では、高G検出用のカウンタ(n
)をリセットし、その後ステップS2に戻り処理を繰り返す。
【0048】
上記実施の形態に係るデータ記録装置1によれば、ブレーキの踏み込みが有る状態(ブ
レーキ信号H)から無い状態(ブレーキ信号L)への切り換えが検出された場合、低G閾
値(第1の加速度閾値)の使用を禁止する設定に切り換えるとともに、高G閾値(第2の
加速度閾値)がTh1に切り換えられるので、ブレーキが踏まれていない場合には、低G
閾値の使用を禁止する設定とすることにより、ブレーキを踏んでいないにも関わらず、低
G閾値を断続的に超えるような加速度が検出される悪路等の走行時における、保存してお
く必要性の低いデータの保存を防止することができ、フラッシュメモリ8を有効に使用す
ることができる。
【0049】
また、ブレーキの踏み込みが無い状態(ブレーキ信号L)から有る状態(ブレーキ信号
H)への切り換えが検出された場合、低G閾値の使用を許可する設定に切り換えるととも
に、高G閾値が基準となるTh1よりも低い値のTh2に切り換えられるので、ブレーキ
をかけながらある程度減速した状態で衝突した場合であっても、低い値に切り換えられた
高G閾値Th2を用いて衝突を正しく判定でき、衝突前のデータを確実に保存することが
でき、必要性の高いデータの保存制御をより適切に行うことができる。
【0050】
なお上記実施の形態では、ブレーキが踏まれているか否かを、ブレーキ圧力センサ14
からの信号に基づき判断するようになっているが、別の実施の形態では、ブレーキペダル
の踏み込み状態を検出するストップランプスイッチのON/OFF信号に基づいて、ブレ
ーキが踏まれているか否かを判断するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、ブレーキが踏まれているか否か(踏み込みの有無)に基づ
いて、低G閾値の使用を許可する設定、又は使用を禁止する設定に切り換えるとともに、
高G閾値の設定値を切り換えるようになっているが、別の実施の形態では、ブレーキ圧力
センサ14からの信号に基づいて、ブレーキの踏み込みの強さ(ブレーキ圧力の変化)を
算出し、ブレーキの踏み込みの強さに基づいて、低G閾値の使用を許可する設定、又は使
用を禁止する設定に切り換えるとともに、高G閾値の設定値を切り換える構成とすること
もできる。
【0052】
例えば、ブレーキの踏み込みの強さ(ブレーキ圧力の変化)が所定の強さ(変化率)A
以上であれば、低G閾値の使用を許可する設定にするとともに、高G閾値の設定値をTh
1よりも低い値Th2に設定する一方、ブレーキの踏み込みの強さが所定値B未満(但し
、所定値B≦所定値A)であれば、低G閾値の使用を禁止する設定にするとともに、高G
閾値の設定値をTh1に設定する構成とすることができる。
【0053】
かかる構成によれば、軽くブレーキを踏んだ状態(ブレーキの踏み込みの強さが所定値
B未満)で、低G閾値を断続的に超えるような加速度が検出される悪路を走行した場合で
あっても、低G閾値の使用を禁止する設定になっているので、たとえ、低G閾値を断続的
に超えるような加速度が検出されたとしても、カウントは開始されず、減速しながら悪路
を走行する場合等におけるデータの保存も防止することができ、より適切な保存制御を行
うことができる。
【0054】
さらに、ブレーキの踏み込みの強さに応じて、低G閾値の設定値と、高G閾値の設定値
とを切り換える、すなわち、ブレーキの踏み込みの強さに応じた低G閾値の設定値と、高
G閾値の設定値とをいくつか用意しておき、検出されたブレーキの踏み込みの強さに応じ
て、低G閾値の設定値と高G閾値の設定値とを適宜切り換える構成としてもよい。
【0055】
例えば、低G閾値の設定値は、ブレーキの踏み込みが強い場合を基準値とした場合に、
ブレーキの踏み込みが弱くなるに従って、前記基準値よりも値が高くなるように設定値を
切り換え、高G閾値の設定値は、ブレーキの踏み込みが弱い場合を基準値とした場合に、
ブレーキの踏み込みが強くなるに従って、前記基準値よりも値が低くなるように設定値を
切り換える構成とすることができる。
【0056】
かかる構成によれば、上記実施の形態のようにブレーキの踏み込みが無い場合に、低G
閾値の使用を禁止する設定に切り換えなくても、単に悪路を走行している場合等の必要性
の低いデータの保存を防止することができ、また、急ブレーキにより大きく減速した後、
衝突した場合等のデータもより確実に保存することが可能となる。
【0057】
また、ブレーキの踏み込みの有無に基づいて、低G閾値の設定値と、高G閾値の設定値
とを切り換える、すなわち、低G閾値の設定値は、ブレーキの踏み込みが有る場合よりも
ブレーキの踏み込みが無い場合の方が値が高くなるように切り換え、一方、高G閾値の設
定値は、ブレーキの踏み込みが無い場合よりもブレーキの踏み込みが有る場合の方が値が
低くなるように切り換える構成としてもよい。
【0058】
かかる構成によれば、ブレーキの踏み込みが無い場合、低G閾値が、ブレーキの踏み込
みが有る場合よりも高め(すなわち、悪路を走行する程度の衝撃では超えない程度の高め
の閾値)に設定されるので、上記実施の形態のようにブレーキの踏み込みが無い場合に、
低G閾値の使用を禁止する設定に切り換えなくても、悪路走行時の必要性の低いデータの
保存を防止することができ、また、ブレーキをかけながら減速した後、衝突した場合等の
データも確実に保存することができる。
【0059】
なお、上記実施の形態に係るデータ記録装置1では、加速度閾値として、低G閾値と高
G閾値とが設定される場合について説明したが、別の実施の形態では、高G閾値のみ、す
なわち、衝突に至る運転状態のデータのみ保存するように構成された装置や、低G閾値の
み、衝突には至らない危険な運転状態のデータのみ保存するように構成された装置にも上
記したデータ保存制御を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来のデータ記録装置が行うフラッシュメモリへのデータ保存動作を説明するためのタイミング図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るデータ記録装置の要部を概略的に示したブロック図である。
【図3】実施の形態に係るデータ記録装置が行うフラッシュメモリへのデータ保存動作を説明するためのタイミング図である。
【図4】実施の形態に係るデータ記録装置におけるCPUの行う処理動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 データ記録装置
5 RAM
6 ROM
7 CPU
8 フラッシュメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両状態を検出する手段から取得したデータを記録する記録手段と、
車両のブレーキの踏み込み状態を検出するブレーキ踏込状態検出手段と、
該ブレーキ踏込状態検出手段により検出されたブレーキの踏み込み状態に基づいて、車
両の加速度から所定の運転状態を判定するための加速度閾値の設定を切り換える閾値設定
切換手段と、
該閾値設定切換手段により切り換えられた前記加速度閾値の設定状態において、車両の
加速度が所定の条件を満たした場合に、前記記録手段により記録されたデータを保存する
データ保存手段とを備えていることを特徴とするデータ記録装置。
【請求項2】
前記加速度閾値には、衝突には至らない危険な運転状態を判定するための第1の加速度
閾値と、衝突に至る運転状態を判定するための第2の加速度閾値とが含まれ、
前記ブレーキ踏込状態検出手段が、前記ブレーキの踏み込みの有無を検出するものであ
り、
前記閾値設定切換手段が、
前記ブレーキ踏込状態検出手段により前記ブレーキの踏み込みが有る状態から無い状態
への切り換えが検出された場合、前記第1の加速度閾値の使用を禁止する設定に切り換え
るとともに、前記第2の加速度閾値を第1の設定値に切り換える一方、
前記ブレーキ踏込状態検出手段により前記ブレーキの踏み込みが無い状態から有る状態
への切り換えが検出された場合、前記第1の加速度閾値の使用を許可する設定に切り換え
るとともに、前記第2の加速度閾値を前記第1の設定値よりも低い値の第2の設定値に切
り換えるものであることを特徴とする請求項1記載のデータ記録装置。
【請求項3】
前記加速度閾値には、衝突には至らない危険な運転状態を判定するための第1の加速度
閾値と、衝突に至る運転状態を判定するための第2の加速度閾値とが含まれ、
前記ブレーキ踏込状態検出手段が、前記ブレーキの踏み込みの強さを検出するものであ
り、
前記閾値設定切換手段が、
前記ブレーキ踏込状態検出手段により検出された前記ブレーキの踏み込みの強さに基づ
いて、前記第1の加速度閾値の使用を許可する設定、又は使用を禁止する設定に切り換え
るとともに、前記第2の加速度閾値の設定値を切り換えるものであることを特徴とする請
求項1記載のデータ記録装置。
【請求項4】
前記加速度閾値には、衝突には至らない危険な運転状態を判定するための第1の加速度
閾値と、衝突に至る運転状態を判定するための第2の加速度閾値とが含まれ、
前記ブレーキ踏込状態検出手段が、前記ブレーキの踏み込みの強さを検出するものであ
り、
前記閾値設定切換手段が、
前記ブレーキ踏込状態検出手段により検出された前記ブレーキの踏み込みの強さに基づ
いて、前記第1の加速度閾値の設定値と、前記第2の加速度閾値の設定値とを切り換える
ものであることを特徴とする請求項1記載のデータ記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−89426(P2008−89426A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271114(P2006−271114)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】