説明

トナー供給ローラ

【課題】トナーの供給性や掻き取り性を確保したまま,トナー劣化を抑制したトナー供給ローラを提供すること。
【解決手段】トナー供給ローラは,芯金の外周面上に設けられた発泡弾性体層32を備え,発泡弾性体層32の最外表面および最外表面で開口するセル33の内表面に微粒子34が付与されている。さらに,微粒子34の付与後における発泡弾性体層32の硬度(直径が10mmの金属円板を発泡弾性体層32の外周面に押し当て,発泡弾性体層32を厚さ方向に30%圧縮させるために必要な力)は,0.2Nから0.7Nの範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置の現像装置に組み込まれ,現像ローラにトナーを供給するトナー供給ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ,ファクシミリ等の画像形成装置においては,電子写真用感光体や静電記録用誘電体等の像担持体上に形成された静電潜像を現像して可視化する現像装置が利用されている。現像装置は,大別して,主としてトナーとキャリアとからなる2成分現像剤にて現像を行う2成分現像方式と,主として1成分現像剤にて現像を行う1成分現像方式とが知られている。
【0003】
1成分現像方式の現像装置は,トナーを像担持体(例えば,感光体ドラム)に搬送する現像ローラと,現像ローラ上のトナー層の層厚を規制するとともにトナーを摩擦帯電する規制部材と,現像ローラと当接して現像ローラ上へトナーを供給するとともに現像後に現像ローラ上に残留するトナーの剥離を行うトナー供給ローラとを備えている。現像ローラは,その両端部に設けられたスペーサ部材に回転可能に支持されており,感光体ドラムに対して軸方向に対向配置されている。また,トナー供給ローラは,バネ等の付勢部材によって現像ローラに強く当接するように配置されている。
【0004】
トナー供給ローラは,トナーの供給機能とトナーの剥離機能とを兼ねる。そのため,トナー供給ローラの表層は発泡弾性体をなし,表面のセル(気泡)によって現像剤を保持したり,セルの縁部でトナーを掻き落としたりし,トナーの供給性と掻き取り性とを両立させている(例えば,特許文献1,特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−70839号公報
【特許文献2】特開2003−287951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の現像装置には,次のような問題があった。すなわち,トナーの供給性や掻き取り性に着目し,特許文献1や特許文献2のように発泡弾性体の表面に添加物を付与したものが開示されている。このようにトナー供給ローラの表面弾性層に添加物を付与すると,その条件によってはローラの硬度を上昇させてしまうことがある。
【0006】
一方,現像装置内のトナーは,トナー供給ローラから現像ローラに供給される。そして,現像後に現像ローラ上に残ったトナーは,トナー供給ローラによって現像ローラから掻き取られて回収される。現像装置内のトナーは,その過程で機械的なストレスを受ける。そして,外添剤の埋没やトナー母体の割れ等の不具合が生じる。トナーへの機械的なストレスは,トナー供給ローラの表面硬度が大きいとより強くなる傾向にある。
【0007】
つまり,トナーの供給性に着目して発泡弾性層に添加物を付与すると,条件によってはトナー劣化を助長してしまう。近年,高画質化および高速化の要求に応えるためには,小粒径で低温定着が可能なトナーの利用が不可避である。このようなトナーを利用した場合,トナー劣化はより生じ易くなる。そのため,トナー供給ローラのトナー耐劣化性がさらに要求される。
【0008】
本発明は,前記した従来の現像装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,トナーの供給性や掻き取り性を確保したまま,トナー劣化を抑制したトナー供給ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされたトナー供給ローラは,芯材と,その芯材の外周面上に位置する発泡弾性体層とを備えたトナー供給ローラであって,発泡弾性体層には微粒子が添加され,発泡弾性体層の最外表面で開口するセルの表面は,微粒子によって凹凸をなし,発泡弾性体層の外周面から発泡弾性体層を厚さ方向に30%圧縮させるのに必要な力が0.2Nから0.7Nの範囲内となることを特徴としている。具体的に発泡弾性体層は,直径が10mmの金属円板を発泡弾性体層の外周面に押し当て,発泡弾性体層の厚さ方向に30%圧縮させるために必要な力が0.2Nから0.7Nの範囲内となる硬さを有している。
【0010】
本発明のトナー供給ローラでは,発泡弾性体層に微粒子が添加され,その微粒子によってセルの表面が凹凸粗面をなしている。そのため,トナーの保持力が高く,微粒子を添加しないものと比較して,トナーの供給性が良好である。
【0011】
また,微粒子が添加された発泡弾性体層の,その外周面から厚さ方向に30%圧縮したときの力が0.2N未満の発泡体の場合(すなわち,ローラ表面の硬度が低い場合),トナーへの機械的ストレスは小さいが,一方でトナーの掻き取り量も少ない。そのため,現像ローラにトナーが残留し,結果としてトナー劣化が生じる。また,30%圧縮したときの力が0.7Nを越える発泡体の場合(すなわち,ローラ表面の硬度が高い場合),トナーへの機械的ストレスが大きくなり,トナー劣化が生じる。よって,微粒子の付与後における発泡弾性体層を30%圧縮させた時の力が0.2N以上でかつ0.7N以下となるトナー供給ローラとすることで,掻き取り性を悪化させることなくトナー劣化を回避することができる。
【0012】
また,本発明のトナー供給ローラは,発泡弾性体層の最外表面で開口するセルの表面のうち,微粒子の占める面積の割合は,20%から90%の範囲内であることとするとよりよい。
【0013】
発泡弾性体層の最外表面で開口するセルの表面のうち,微粒子の占める面積の割合が20%未満の場合,微粒子による供給効果が発揮されない。すなわち,トナーを常に供給するような画像(高印字率の画像,例えばベタ画像)を印字すると,用紙の先端部から後端部へと画像濃度が低下する。すなわち,いわゆるベタ画像濃度追随性が悪くなる。一方,その割合が90%を越える場合,セル内に占める微粒子の割合が多くなり過ぎるため,セル内に保持するトナー量が低下するとともに微粒子の隙間にトナーの外添剤やトナー自体が埋没してしまい,同様にベタ画像濃度追随性が悪くなる。よって,本発明のトナー供給ローラは,発泡弾性体層の最外表面で開口するセルの表面のうち,微粒子の占める面積の割合を20%以上でかつ90%以下とすることで画像濃度の変動を抑制することができる。
【0014】
また,本発明のトナー供給ローラは,微粒子の平均体積粒径が0.05μmから10μmの範囲内であることとするとよりよい。
【0015】
発泡弾性体層に添加する微粒子の平均体積粒径が0.05未満の場合,セル内に侵入したトナーにより,微粒子が容易に埋没してしまう。そのため,微粒子の供給効果が発揮されず,トナー供給量の絶対値が低下する。一方,平均体積粒径が10μmを越える場合,使用していくにつれて微粒子の割れや離脱が生じる。よって,本発明のトナー供給ローラは,微粒子の平均体積粒径が0.05μm以上でかつ10μm以下とすることで長期間にわたって微粒子の効果を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,トナーの供給性や掻き取り性を確保したまま,トナー劣化を抑制したトナー供給ローラが実現している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,本実施の形態は,非磁性の1成分トナーを収容・供給する現像装置を備えた電子写真方式の画像形成装置に本発明を適用したものである。
【0018】
実施の形態の画像形成装置100は,図1に示すように,像担持体である感光体ドラム11を有し,その感光体ドラム11の周囲に,感光体ドラム11の表面を一様に帯電するための帯電装置12と,感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成するための露光装置13と,感光体ドラム11上の静電潜像を可視像(トナー像)とするための現像装置14と,感光体ドラム11上のトナー像を用紙に転写するための転写装置15と,転写残トナーを感光体ドラム11から取り除くためのクリーニング装置16とを感光体ドラム11の回転方向に沿って備えている。さらに,用紙搬送路には,転写位置への用紙の搬送タイミングを調節するためのタイミングローラ17および転写されたトナー像を用紙に定着させるための定着装置18が設けられている。本形態では,帯電装置12,転写装置15,定着装置18はいずれもローラ形状のものを用いている。また,クリーニング装置16には,クリーニングブレードを用いる。
【0019】
続いて,画像形成装置100による画像形成の動作について簡単に説明する。画像形成装置100は,スタート信号や画像データ等を受信することにより動作を開始する。感光体ドラム11は,図1中の矢印方向に回転駆動される。そして,帯電装置12と対向する位置で,帯電ローラによって一様に帯電される。次に,露光装置13によって露光され,表面上に画像データに基づいた静電潜像が形成される。
【0020】
次に,静電潜像が現像装置14の位置に達すると,現像ローラに印加された現像バイアス電圧と感光体ドラム11の静電潜像との間で形成される電界により帯電したトナーが移動し,静電潜像がトナーによって現像される。
【0021】
一方,用紙搬送路を搬送されてきた用紙は,タイミングローラ17にて画像先端位置にタイミングを合わせられ,感光体ドラム11と転写装置15との間に搬送される。そして,転写装置15によって感光体ドラム11上のトナー像が用紙に転写される。さらに,転写されたトナー像を保持した用紙はさらに搬送され,定着装置18によって熱と圧力とが加えられることにより,トナー像が用紙に定着される。また,転写装置15によって用紙に転写されず,感光体ドラム11上に残った転写残トナーはクリーニング装置16によって掻き取られる。これにより,1枚分の画像形成が終了する。
【0022】
続いて,現像装置14について詳説する。現像装置14は,図2に示すように,1成分現像剤である非磁性のトナーを収容する現像容器1と,トナーを担持しトナーを感光体ドラム11に向けて搬送する現像ローラ2と,現像ローラ2へのトナーの供給および現像ローラ2上のトナーの掻き取りを行うトナー供給ローラ3と,現像ローラ2上のトナーの厚みを規制するトナー量規制部材4と,トナー漏れを防止するとともに現像後に現像ローラ2上に残留するトナーを除電するトナー除電部材5とを備えている。また,現像ローラ2には,電源が接続され,現像のためのバイアスが印加される。
【0023】
現像装置14では,トナー供給ローラ3と現像ローラ2との電位差および表面が発泡体であるトナー供給ローラ3の機械的搬送力により,現像容器1内のトナーをトナー供給ローラ3から現像ローラ2に搬送する。現像ローラ2に供給されたトナーは,現像ローラ2の回転に伴ってトナー量規制部材4により摩擦帯電されつつ薄層化され,感光体ドラム2との対向部にて静電潜像を可視化する。
【0024】
トナー供給ローラ3は,図3に示すように,芯金31と,その芯金31の周囲に位置し,発泡部材からなる発泡弾性体層32とを有している。芯金31には,鉄,ステンレス,アルミ,樹脂等の材料が使用される。なお,芯金31としては,防錆処理を行った金属であれば適用可能である。また,発泡弾性体層32は,ポリウレタン,エポキシ樹脂,アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂の発泡体により形成される。また,ポリエチレン,ポリスチレン等の熱可塑性樹脂のゴム発泡体により形成することも可能であるが,耐久性に優れたポリウレタン発泡体が好ましい。本形態では,ポリウレタンフォームを使用した。なお,本形態では,非導電性である材料を使用しているが,発泡弾性体層32には必要に応じて導電性物質を含有させてもよい。
【0025】
また,発泡弾性体層32の表面形状は円柱状である。なお,例えば,ローラの軸方向に沿った溝が所定のピッチでストライプ状に形成されたものや,軸方向に複数の切り込みが所定のピッチで形成されたものや,多角柱状のものであってもよく,発泡弾性体であればその表面形状を限定するものではない。
【0026】
また,発泡弾性体層32の表面には,図4ないし図5に示すように,発泡弾性体層32の表面で開口しているセル33内に微粒子34が付与されている。そのため,発泡弾性体層32の最外表面で開口するセル33の内表面は,微粒子34によって凹凸粗面をなしている。微粒子34としては,ナイロンパウダー,ポリメチルメタアクリレート(PMMA),シリコンパウダー等が適用可能である。また,複数の材料を混在させてもよい。本形態では,微粒子34の材料としてPMMAを使用し,粉砕することで所望の平均体積粒径に調節した。平均体積粒径の詳細については後述する。
【0027】
トナー供給ローラ3は,発泡弾性体層32に少なくとも1種類の微粒子34を付与し,トナーや現像ローラ2と接触しても微粒子34の離脱が生じないように発泡弾性体層32に固定することで最終形態となる。微粒子34の付与方法ないし固定方法は限定しない。例えば,発泡弾性体層32の材料とともに微粒子34を付与し,発泡弾性体層32を成形した後にその表面を切削もしくは研磨する方法や,微粒子34をバインダ樹脂等に分散させた溶剤を,成形後の発泡弾性体層32の表面に塗布して加熱する方法や,微粒子34が樹脂からなる場合には成形後の発泡弾性体層32の直接樹脂微粒子34を塗布して加熱する方法がある。
【0028】
本形態では,微粒子34の効果をより発揮させるため,次の方法により微粒子34を固定した。まず,発泡弾性体層32と樹脂微粒子34との接着層として,発泡弾性体層32の表面に高分子エマルジョンをスプレー塗布する。その後,微粒子34を所定の添加量付与し,100℃で熱風循環式乾燥炉中で乾燥させる。これにより,図6に示すように,セル33の表面に高分子エマルジョンによる接着層35が形成され,その接着層35に微粒子34が固定される。このように,接着層を塗布した後に微粒子を付与する固定方法は,原料に微粒子を分散させて発泡成形する固定方法と比較して,発泡弾性体層32の表面およびセル表面に微粒子が突出した状態で固定できるため,微粒子を付与した効果がより発揮できる。なお,微粒子は1種類に限らず,複数種類の微粒子を付与してもよい。例えば,図7に示すように,2種類の微粒子34,36を付与してもよい。
【0029】
[実施の形態の評価]
続いて,実施の形態にかかる現像ローラの評価結果について説明する。本評価では,コニカミノルタ社製の「magicolor5440」(以下,「評価機」とする)を利用し,トナー供給ローラの構成を変えて評価を行った。なお,第4の評価を除いて,評価機用のトナー(平均体積粒径:6.5μm,軟化点:110℃,以下,「A」タイプのトナーとする)を使用した。
【0030】
本評価では,ウレタンフォームを40mm×40mm×300mmの直方体にカットし,そのウレタンフォームに芯金を挿し込むための直径2mmの穴を開ける。そして,あらかじめホットメルト接着剤を塗布した直径3mmの鉄製芯金を,先ほどのウレタンフォームに通す。その後,電磁誘導加熱機にて芯金を加熱し,接着剤を溶融させてウレタンフォームと芯金とを接着する。芯金を冷却し,接着が完了した後,外径が11.6mmとなるようにウレタンフォームを切削加工する。
【0031】
このようにして得られた発泡弾性体層の表面に,平均体積粒径,添加量を調節したPMMA微粒子を前述の固定方法にて付与し,評価用のトナー供給ローラを作成した。なお,ウレタンフォームとして,イノアックコーポレーション社製のウレタンフォームであるECA(通常のフォーム,密度:26±2[kg/m3],硬さ:127.5±24.5[N]),EMM(ハードタイプのフォーム,密度:52±3[kg/m3],硬さ:225.6±39.2[N]),EFF(ソフトタイプのフォーム,密度:21±2[kg/m3],硬さ:58.8±19.6[N]),EFS(スーパーソフトタイプのフォーム,密度:20±2[kg/m3],硬さ:19.6±9.8[N])の4種類を用意した。
【0032】
本評価では,トナー供給ローラの発泡弾性体層の「硬度」,「被覆率」,「平均体積粒径」のそれぞれについて評価を行った。なお,「硬度」は,プッシュプルゲージ(株式会社イマダ製)を用い,直径が10mmのアルミ製円板によって発泡弾性体層を厚さ方向に30%圧縮させたとき(すなわち,発泡弾性体層の最小層厚が通常時の層厚の70%となるまでアルミ製円板を押し込んだとき。本評価では,層厚4.3mmの発泡弾性体層を最小層厚3.01mmとなるように圧縮したとき)の測定値を硬度とした。「被覆率」は,発泡弾性体層の表面に位置するセルをSEM(Scanning Electron Microscope)により20個以上観察し,セル表面における微粒子の占める面積の割合を意味している。「平均体積粒径」は,シスメックス株式会社製のFPIA−2100により測定した。
【0033】
[第1の評価]
第1の評価では,トナーの掻き取り性に関する評価を行った。本評価では,評価機用のカラートナーカートリッジを用い,現像ローラ上にトナー薄層を形成した後,トナー薄層の重量Aを測定する。その後,トナー供給ローラのみを当接し,現像ローラを1回転させた後,トナー薄層の重量Bを測定する。そして,回転前の重量Aと回転後の重量Bを基に,次の式(1)で表される掻き取り率(%)でトナー供給ローラに掻き取られるトナー量を計算した。
掻き取り率(%)=((A−B)/A)×100 (1)
【0034】
第1の評価の評価結果を図8に示す。本掻き取り性評価では,前述の式(1)で示した掻き取り率が,80%以上で◎,70%以上80%未満で○,50%以上70%未満で△,50%未満で×とした。なお,図8中,実施例とするものは評価結果が良好であったものを意味し,比較例とするものは不良であったものを意味する。
【0035】
実施例1〜実施例7では,高い掻き取り性を示し,優良な結果が得られた。また,実施例8〜実施例13,比較例1〜比較例4でも,良好な結果が得られた。一方,比較例5〜9では,掻き取り性が悪い結果となった。これは,発泡弾性体層の硬度(30%圧縮に必要な力)が0.19N以下と低すぎるため,トナーを掻き取る能力が不足していると推測される。そのため,発泡弾性体層の硬度は,0.2N以上でなければならないことがわかった。
【0036】
また,第1の評価では,トナー耐劣化性に関する評価も行った。本トナー耐劣化性評価では,白紙画像印刷枚数1000枚後および白紙画像印刷枚数5000枚後の現像ローラ上のトナーをSEMにより観察した。本トナー耐劣化性評価では,SEMによる観察で外添剤の埋没やトナー割れがなければ◎,埋没・割れがほぼなければ○,埋没はあるが割れはない,あるいは埋没はないが割れがあるときは△,埋没・割れともに散見されれば×とした。
【0037】
実施例1〜実施例13では,良好な結果が得られた。また,発泡弾性体層の硬度が低い比較例6〜9においても良好な結果が得られた。一方,発泡弾性体層の硬度が高い比較例1〜4では,埋没・割れが散見され,トナー耐劣化性が悪い結果となった。これは,発泡弾性体層の硬度が0.72N以上と高すぎるため,トナーに過剰な機械的ストレスが加わるためと推測される。そのため,発泡弾性体層の硬度は,0.7N以下でなければならないことがわかった。この第1の評価により,発泡弾性体層の硬度は,0.2N〜0.7Nの範囲内が好ましいことがわかった。
【0038】
また,図9に,図8に示した評価結果をウレタンフォームの材料別に並べ変えたものを示す。図9に示すように,いずれの材料も,発泡弾性体層の硬度が0.2N以上0.7N以下の範囲内であれば,掻き取り性とトナー耐劣化性とがともに良好であることがわかる。このことから,発泡弾性体層の材料の違いは,評価結果に影響を与えないことがわかる。
【0039】
[第2の評価]
第2の評価では,トナー供給ローラの供給性に関する評価を行った。本評価では,初期および耐久後(白紙画像印刷枚数5000枚後)のトナー供給ローラを用いて,評価機用の外部駆動機に評価機用のカラートナーカートリッジを取り付け,システムスピードを評価機仕様の3倍の状態として,現像ローラ上にトナー薄層を形成した。そして,そのトナー薄層の重量を測定した。
【0040】
第2の評価の評価結果を図10に示す。本供給性評価では,トナー薄層の重量が3g/m2未満で×,3g/m2以上6g/m2未満で△,6g/m2以上8g/m2未満で○,8g/m2以上で◎とした。なお,図10中,実施例とするものは評価結果が良好であったものを意味し,比較例とするものは不良であったものを意味する。
【0041】
実施例14〜実施例20では,高い供給性を示し,良好な結果が得られた。一方,比較例10〜15では,耐久後にトナー薄層の重量が少ない結果となった。特に,比較例12,13,15では,初期においてもトナー薄層の重量が低く,トナー薄層にムラが観察された。これは,微粒子の平均体積粒径が0.03μm以下と小さすぎるため,トナーを供給する能力が不足していると推測される。そのため,微粒子の大きさは,その平均体積粒径が0.05μm以上でなければならないことがわかった。
【0042】
また,第2の評価では,微粒子の離脱性の評価も行った。本微粒子離脱評価では,評価機にて白紙画像を5000枚印字し,その後のトナー供給ローラをSEMより観察した。本微粒子離脱評価では,微粒子の離脱・割れが発見された場合には×,離脱・割れともに発見されなければ○とした。
【0043】
実施例14〜実施例20では,微粒子の離脱・割れは無く,良好な結果が得られた。また,微粒子のサイズが小さい比較例12,13,15においても良好な結果が得られた。一方,微粒子のサイズが大きい比較例10,11,14では,微粒子の離脱・割れを確認した。そのため,微粒子の大きさは,その平均体積粒径が10μm以下でなければならないことがわかった。この第2の評価により,微粒子の平均体積粒径は,0.05μm以上10μm以下の範囲内が好ましいことがわかった。
【0044】
[第3の評価]
第3の評価では,ベタ画像追随性に関する評価を行った。本評価では,初期時および白紙画像を5万枚印刷した後,評価機のトナー供給ローラと現像ローラとの間のバイアスを同電位の状態としてベタ画像を印刷した。そして,そのベタ画像の先端部と後端部との透過濃度変化率を求めた。
【0045】
第3の評価の評価結果を図11に示す。本ベタ画像追随性評価では,透過濃度変化率が20%未満で○,20%以上50%未満で△,50%以上で×とした。なお,図11中,実施例とするものは評価結果が良好であったものを意味し,比較例とするものは不良であったものを意味する。
【0046】
実施例21〜実施例27では,高いベタ画像追随性を示し,良好な結果が得られた。一方,比較例16〜比較例21では,透過濃度変化率が高く,ベタ画像追随性が低い結果となった。具体的に,比較例16,17では,被覆率が10%以下(すなわち微粒子が少量)のため,微粒子による効果が発揮されていないことがわかった。また,比較例18,19のように,被覆率が95%以上ある(すなわち微粒子が多い)と,5万枚印字後のベタ画像追随性で良好な結果が得られなかった。これは,微粒子の隙間にトナーの外添剤やトナー自体が埋没し,結果として微粒子の効果が発揮されていないと推測される。この第3の評価により,セル内表面の微粒子の被覆率は,20%以上90%以下の範囲内が好ましいことがわかった。
【0047】
[第4の評価]
第4の評価では,第1の評価とは異なるトナーを使用して第1の評価と同様の評価を行った。具体的に,本評価では,第1の評価で使用したAタイプのトナーよりも,小粒径かつ低温定着が可能なトナー(平均体積粒径:4.5μm,軟化点:100℃,以下,「B」タイプのトナーとする)を使用した。小粒径,低温定着用のトナーは,掻き取り難く,機械的ストレスの影響を受け易い傾向にある。
【0048】
第4の評価の結果を図12に示す。図12中,実施例とするものは評価結果が良好であったものを意味し,比較例とするものは不良であったものを意味する。実施例28〜実施例31では,掻き取り性およびトナー耐劣化性はともに良好な結果が得られた。一方,比較例22〜25では,掻き取り性とトナー耐劣化性とのいずれか一方で良好な結果が得られなかった。すなわち,発泡弾性体層の硬度が0.3Nよりも小さい場合(比較例23,25)や,硬度が0.5Nよりも大きい場合(比較例22,24)に良好な結果が得られなかった。この評価結果から,小粒径・低温定着トナーを使用する際には,発泡弾性体層の硬度(30%圧縮に必要な力)が0.3N〜0.5Nの範囲内であれば,掻き取り性とトナー耐劣化性とを両立させることができることがわかった。
【0049】
[第5の評価]
第5の評価では,平均体積粒径が異なる2種類の微粒子を付与して第1の評価,第2の評価および第3の評価と同様の評価を行った。なお,微粒子Cの材料としてナイロンパウダーを使用し,微粒子Dの材料としてスチレンアクリル樹脂を使用した。
【0050】
第5の評価の結果を図13に示す。実施例32〜実施例35では,掻き取り性評価,トナー耐劣化性評価,供給性評価,微粒子離脱性評価,ベタ追随性評価,いずれも良好な結果が得られた。これらの実施例は,いずれも第1の評価で規定した硬度の範囲(0.2N〜0.7N),第2の評価で規定した微粒子の平均体積粒径の範囲(0.05μm〜10μm),第3の評価で規定した被覆率の範囲(20%〜90%)を満たしている。一方,比較例26,27,29は,硬度の範囲を満たしていない。そのため,掻き取り性評価あるいはトナー耐劣化性評価の結果が悪い。また,比較例27では,微粒子の平均体積粒径が規定の範囲よりも大きい。そのため,微粒子の離脱性評価の結果が悪い。また,比較例28では,微粒子の平均体積粒径が規定の範囲よりも小さい。そのため,供給性評価の結果が悪い。これらの結果から,複数種類の微粒子を付与した場合であっても,第1の評価,第2の評価,第3の評価で規定した範囲を満たせば良好な結果が得られることがわかった。
【0051】
以上詳細に説明したように本形態のトナー供給ローラ3は,芯金31と,芯金31の外周面上に設けられた発泡弾性体層32とを備え,発泡弾性体層32の最外表面および最外表面で開口するセル33の内表面に微粒子34を付与することとしている。すなわち,微粒子34によってセル33の表面が凹凸粗面をなしている。そのため,トナーの保持力が高く,微粒子を添加しないものと比較して,トナーの供給性が良好である。
【0052】
さらに,微粒子34の付与後における発泡弾性体層32の硬度(30%圧縮に必要な力)が0.2Nから0.7Nの範囲内であることとしている。硬度が0.2N未満の発泡体の場合,トナーへの機械的ストレスは小さいが,一方でトナーの掻き取り量も少ない。そのため,現像ローラ2にトナーが残留し,結果としてトナー劣化が生じる。また,硬度が0.7Nを越える発泡体の場合,トナーへの機械的ストレスが大きくなり,トナー劣化が生じる。よって,微粒子34の付与後における発泡弾性体層32の硬度を0.2N以上でかつ0.7N以下とすることで,掻き取り性を悪化させることなくトナー劣化を回避することができる。
【0053】
また,発泡弾性体層32の表面セル33に占める微粒子34の被覆率が20%から90%の範囲内であることとしている。被覆率が20%未満の場合,微粒子による供給効果が発揮されない。すなわち,トナーを常に供給するような画像(高印字率の画像,例えばベタ画像)を印字すると,用紙の先端部から後端部へと画像濃度が低下する。一方,被覆率が90%を越える場合,セル33内に占める微粒子34の割合が多くなり過ぎるため,セル33内に保持するトナー量が低下するとともに微粒子34の隙間にトナーの外添剤やトナー自体が埋没してしまい,同様にベタ画像濃度追随性が悪化してしまう。よって,発泡弾性体層32の表面セル33に占める微粒子34の被覆率を20%以上でかつ90%以下とすることで画像濃度の変動を抑制することができる。
【0054】
また,発泡弾性体層32に付与する微粒子34の平均体積粒径が0.05μmから10μmの範囲内であることとしている。平均体積粒径が0.05未満の場合,セル33内に侵入したトナーにより,容易に微粒子34が埋没してしまう。そのため,微粒子34の供給効果が発揮されず,トナー供給量の絶対値が低下する。一方,平均体積粒径が10μmを越える場合,使用していくにつれて微粒子34の割れや離脱が生じる。よって,発泡弾性体層32に付与する微粒子34の平均体積粒径が0.05μm以上でかつ10μm以下とすることで長期間にわたって微粒子34の効果を発揮させることができる。
【0055】
なお,小粒径・低温定着トナーは,掻き取り難く,機械的ストレスの影響を受け易い傾向にある。そのため,そのようなトナーを使用する際には,微粒子34の付与後における発泡弾性体層32の硬度を0.3N以上でかつ0.5N以下とすることで,掻き取り性を悪化させることなくトナー劣化を回避することができる。
【0056】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本発明は,カラープリンタ,モノクロプリンタ,コピー機,ファクシミリ等の各種の画像形成装置に適用可能である。
【0057】
また,像担持体としてローラ形状の感光体ドラムを用いているが,ベルト状の感光体ベルトを使用してもよい。また,帯電装置は,ローラ帯電方式のほか,コロナ放電方式の帯電チャージャ,ブレード,ブラシ等を使用してもよい。また,露光装置は,レーザによるものでもLEDによるものでもよい。また,転写装置は,転写ローラのほか,転写チャージャを使用してもよい。あるいは,感光体から用紙へ直接トナー像を転写する方式のほか,中間転写体を備え,2段階以上の転写を行う方式であってもよい。また,クリーニング装置は,クリーニングブレードのほか,クリーニングブラシ,クリーニングローラまたはそれらの組合せでもよい。あるいは,現像装置によって転写残トナーの回収を行うものであってもよい。また,定着装置は,定着ローラのほか,定着ベルトを用いてもよいし,非接触方式のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施の形態にかかる画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態にかかる現像装置の概略構成を示す図である。
【図3】実施の形態にかかるトナー供給ローラの概略構成を示す図である。
【図4】図3のX部分の拡大図である。
【図5】図4のY視点からのセル内表面を示す図である。
【図6】トナー供給ローラの発泡弾性体層の詳細を示す図(微粒子1種類)である。
【図7】トナー供給ローラの発泡弾性体層の詳細を示す図(微粒子2種類)である。
【図8】第1の評価の評価結果を示す図である。
【図9】第1の評価の評価結果(ウレタンフォームの材質別)を示す図である。
【図10】第2の評価の評価結果を示す図である。
【図11】第3の評価の評価結果を示す図である。
【図12】第4の評価の評価結果を示す図である。
【図13】第5の評価の評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 現像容器
2 現像ローラ
3 トナー供給ローラ
31 芯金(芯材)
32 発泡弾性体層
33 セル
34 微粒子
11 感光体ドラム
14 現像装置
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と,その芯材の外周面上に位置する発泡弾性体層とを備えたトナー供給ローラにおいて,
前記発泡弾性体層には微粒子が添加され,
前記発泡弾性体層の最外表面で開口するセルの表面は,前記微粒子によって凹凸をなし,
前記発泡弾性体層の外周面から前記発泡弾性体層を厚さ方向に30%圧縮させるのに必要な力が0.2Nから0.7Nの範囲内となることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載するトナー供給ローラにおいて,
前記発泡弾性体層の最外表面で開口するセルの表面のうち,前記微粒子の占める面積の割合は,20%から90%の範囲内であることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するトナー供給ローラにおいて,
前記微粒子の平均体積粒径は,0.05μmから10μmの範囲内であることを特徴とするトナー供給ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−293122(P2007−293122A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122319(P2006−122319)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】