説明

トナー供給ローラ

【課題】トナーの掻き取り性を維持しつつ,トナー溜りの抑制および亀裂の抑制を図るトナー供給ローラを提供すること。
【解決手段】トナー供給ローラは,最表面に位置する発泡弾性体層32の表面に,周方向に連続した凹凸を形成する凸部33を有する。さらに,凸部33の側面34は,その付根部が外側に広がるように湾曲し,連続した曲面をなす。また,凸部33の1個当たりの径方向断面積S1が,隣り合う凸部33,33間に形成される凹部38の1個当たりの径方向断面積S2よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置の現像装置に組み込まれ,現像ローラにトナーを供給するトナー供給ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ,ファクシミリ等の画像形成装置においては,電子写真用感光体や静電記録用誘電体等の像担持体上に形成された静電潜像を現像して可視化する現像装置が利用されている。現像装置は,大別して,主としてトナーとキャリアとからなる2成分現像剤にて現像を行う2成分現像方式と,主として1成分現像剤にて現像を行う1成分現像方式とが知られている。
【0003】
1成分現像方式の現像装置は,トナーを像担持体(例えば,感光体ドラム)に搬送する現像ローラと,現像ローラ上のトナー層の層厚を規制するとともにトナーを摩擦帯電する規制部材と,現像ローラと当接して現像ローラ上へトナーを供給するとともに現像後に現像ローラ上に残留するトナーの剥離を行うトナー供給ローラとを備えている。現像ローラは,その両端部に設けられたスペーサ部材に回転可能に支持されており,感光体ドラムに対して軸方向に対向配置されている。また,トナー供給ローラは,バネ等の付勢部材によって現像ローラに強く当接するように配置されている。
【0004】
トナー供給ローラの機能として,現像ローラへのトナーの搬送は勿論必要であるが,それとともに感光体ドラムに現像されず,現像ローラ上に残留したトナーの掻き取りも必要となる。すなわち,トナー供給ローラは,トナーの供給機能とトナーの剥離機能とを兼ねていなければならない。トナー供給ローラとしては,ソリッドゴム材,ブラシ材,発泡ゴム材等の提案が数多くなされている。
【0005】
トナーの供給機能に着目すると,ソリッドゴム材は表面が平滑であるために十分なトナー搬送性を得ることができない。ブラシ材は,トナー搬送性に優れているものの,ブラシ繊維の抜け,切断,および倒れ等の問題が生じる。これらに対し,発泡ゴム材は,表面に形成された発泡孔により,トナー搬送性がソリッドゴム材に比べて大幅に向上し,トナー供給ローラの材料として好適である。
【0006】
発泡ゴム材を利用してトナー搬送性を向上させたトナー供給ローラとしては,例えば特許文献1に開示されたトナー供給部材がある。このトナー供給部材の発泡弾性体表面には,周方向に連続した凹凸が形成されている。詳細には,熱線カット法によりフォーム体を加工し,ロール表面に凹凸を形成する。このトナー供給部材では,凹部を形成することにより,より多くのトナーを取り込むことができ,トナーの搬送性が向上する。
【0007】
また,近年,画像形成装置にて利用されるトナーは,画質の向上とプリント速度の向上とのニーズから,小粒径化および低温定着化の傾向にある。それに伴い,帯電や長期放置によってトナーが凝集し易くなっている。そのため,現像ローラ上に凝集・付着したトナーがトナー供給ローラにて掻き取られず,現像ローラ上に残存する。そして,それに起因して画像ムラが生じる。
【0008】
そのため,さらなるトナーの小粒径化および低温定着化に備え,トナーの掻き取り性能を向上させる必要がある。解決策としては,現像ローラへの侵入量を増やす,ニップ幅を増やす,発泡弾性体ローラの回転数を増やす等,機械的な力を増す方法が考えられる。しかし,何れの場合も,トナーの掻き取り性は向上するものの,現像ローラとの摩擦力が大きくなる。そのため,ローラの摩耗や損傷が発生したり,トナーの劣化が促進されて異常帯電が惹起される。従って,長期使用において,濃度低下,地汚れ等の画像不良を発生させる。
【0009】
また,静電気的な力を利用してトナーの掻き取り性能を向上させることも考えられる。しかし,静電気的な力を利用する場合は,発泡弾性体ローラを導電化しなければならない。そのため,導電物の添加により発泡弾性体としての必要な物性が阻害されやすい。また,バイアス電源等が必要となり,構成が複雑でかつ高コスト化を招く。
【0010】
そこで,特許文献1に開示されたトナー供給ローラのように,発泡弾性体の表面に凹凸形状を持たせたトナー供給ローラが注目される。トナー供給ローラの表面に凹凸形状を持たせると,凸部によってトナーが掻き取られることから,トナーの搬送性の加えてトナーの掻き取り性も向上する。しかしながら,凹凸形状であるがゆえに,凹部と凸部とで掻き取り力に差が生じる。また,凹凸の形状にばらつきがあっては安定した掻き取り性は期待できない。そのため,現像ローラに対して適切な条件で当接および回転させなければ,トナーの掻き取り不良によるムラが生じる。
【0011】
これらの問題に着目したトナー供給ローラとして,例えば特許文献2に開示されたトナー供給ローラがある。特許文献2では,発泡弾性体の表面に凹凸形状を持たせた上で,その凹凸の形状を規定するトナー供給ローラが開示されている。そして,凹凸の形状を規定することで,静電気的な力を利用せず,トナー劣化および現像ローラの劣化を招くことなく,トナーの搬送性を維持しつつトナーの掻き取り性を向上させることができるとしている。
【特許文献1】特開平5−61350号公報
【特許文献2】特開平11−52707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら,前記した従来のトナー供給ローラには,次のような問題があった。特許文献2に開示されたトナー供給ローラの表面は,図9に示すように,凹凸形状をなす凸部39の断面が台形をなしている。図9中,矢印Aはトナー供給ローラの回転方向を,矢印Bはトナー供給ローラと当接する現像ローラの回転方向をそれぞれ示している。特許文献2では,凸部39の形状を規定しているが,それだけでは近年の高速印字化,トナーの小粒径化・低温定着化に伴って生じた次のような問題に十分に対処できない。
【0013】
第1に,凸部39の回転方向Aの下流側の麓に,トナー溜りが生じる(図9中のP1)。すなわち,凸部39の麓周辺(凹部のエッジ周辺)では,トナーの流れが悪い。そのため,トナーが滞留し易く,トナーが凝集する。トナーは,凸部39の傾斜角度(図9中のα)が大きいほど滞留し易くなる。無論,凸部39の傾斜角度を小さくすればトナーの流れは改善されるが,トナーの掻き取り性が改悪されてしまう。トナーの滞留は,トナーが小粒径であるほど生じ易い。また,トナーの凝集は,トナーの軟化点温度が低いほど生じ易い。
【0014】
第2に,同じく凸部39の回転方向Aの下流側の麓に,亀裂が生じる(図9中のP2)。すなわち,凸部39の麓周辺では現像ローラとの当接によってせん断応力を受け,凸部39の傾斜角度(図9中のα)が大きいほどせん断応力による影響が強くなる。無論,凸部39の傾斜角度を小さくすれば応力集中を緩和することができるが,トナーの掻き取り性が改悪されてしまう。また,小粒径かつ低温定着のトナーを使用すると,トナーが発泡セル中に入り込み易く,さらにセル中で凝集し易い。トナーがセル中で凝集すると,当該箇所が硬化し当該箇所の柔軟性を失わせる。そのため,より亀裂が生じ易くなる。また,各ローラの回転速度が速くなるほどせん断応力は大きくなる。そのため,近年の高速印字化の傾向からこの問題が顕著となっている。
【0015】
本発明は,前記した従来のトナー供給ローラが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,トナーの掻き取り性を維持しつつ,トナー溜りの抑制および亀裂の抑制を図るトナー供給ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題の解決を目的としてなされたトナー供給ローラは,芯材と,芯材の外周面上に位置する発泡弾性体層とを備え,発泡弾性体層の表面には,ローラの周方向に連続した凹凸を形成し,ローラの軸方向に延びる凸部が設けられ,トナーの搬送に供するトナー供給ローラであって,凸部は,ローラの外周側に向かって幅が狭くなる形状をなし,凸部の少なくとも一方の側面は,側面中の所定の位置Pから凸部の付根に至る部分が外側に広がるように連続した曲面であり,凸部の1個当たりの径方向断面積S1と,隣り合う凸部間に形成される凹部の1個当たりの径方向断面積S2との関係が次の式(A)を満たすことを特徴としている。
S1≦S2 (A)
【0017】
本発明のトナー供給ローラは,現像ローラと当接する発泡弾性体層の表面に,ローラの周方向に連続した凹凸を形成する凸部が設けられている。凸部は,ローラの外周側に向かって周方向の幅が狭くなる山形形状をなしている。さらに,凸部の少なくとも一方の付根部(麓周辺)は,裾野が外側に広がるように連続して湾曲した形状をなしている。このため,従来の形態である台形形状の凸部と比較して,凸部の付根部が付根に向かうに連れて緩やかに傾斜する形状となる。よって,トナーの滞留が緩和され,トナーの凝集を抑制することができる。また,凸部の裾野を広げることで,付根周辺での応力集中が緩和されるとともに凸部の付根部が補強される。そのため,凸部の付根部の亀裂を抑制することができる。
【0018】
また,凸部の1個当たりの径方向断面積S1と,隣り合う凸部間に形成される凹部の1個当たりの径方向断面積S2との関係が上記式(A)を満たしている。これにより,凹部に十分の広さが確保され,トナーのセル中への流出がスムーズに行われる。よって,トナーの掻き取り性が安定する。
【0019】
さらに,本発明のトナー供給ローラは,小粒径(平均粒径:5.5μm〜7.0μm)で低温定着(軟化点温度:80℃〜85℃)のトナーの利用に適する。すなわち,このようなトナーを利用する際にはトナー溜りや付根部の亀裂が特に問題となる。本発明のトナー供給ローラではトナーの流れを向上させ,凸部の付根部周辺を補強することから,これらの問題を回避することができる。
【0020】
また,本発明のトナー供給ローラの凸部の形状は,次の式(B)を満たすこととするとよりよい。
c/4≦h≦c (B)
c:凸部の高さ。
h:凸部の側面中の位置Pの高さ。
【0021】
また,本発明のトナー供給ローラの凸部の形状は,次の式(C)を満たすこととするとよりよい。
b/3≦w≦b (C)
b:凸部の頂上面の幅。
w:凸部の側面中の位置Pから凸部の付根までの周方向の距離。
【0022】
すなわち,上記式(B)と式(C)との少なくとも一方を満たすことで,凹部のエッジが確実に解消されるとともに凸部の麓が十分に補強される。よって,トナーの凝集および付根部の亀裂を確実に回避することができる。なお,式(B)および式(C)にて規定する「高さ」とは,トナー供給ローラの径方向の距離を意味し,「幅」とはトナー供給ローラの周方向の距離を意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば,トナーの掻き取り性を維持しつつ,トナー溜りの抑制および亀裂の抑制を図るトナー供給ローラが実現している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,本実施の形態は,非磁性の1成分トナーを収容・供給する現像装置を備えた電子写真方式の画像形成装置に本発明を適用したものである。
【0025】
実施の形態の画像形成装置100は,図1に示すように,像担持体である感光体ドラム11を有し,その感光体ドラム11の周囲に,感光体ドラム11の表面を一様に帯電するための帯電装置12と,感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成するための露光装置13と,感光体ドラム11上の静電潜像を可視像(トナー像)とするための現像装置14と,感光体ドラム11上のトナー像を用紙に転写するための転写装置15と,転写残トナーを感光体ドラム11から取り除くためのクリーニング装置16とを感光体ドラム11の回転方向に沿って備えている。さらに,用紙搬送路には,転写位置への用紙の搬送タイミングを調節するためのタイミングローラ17および転写されたトナー像を用紙に定着させるための定着装置18が設けられている。本形態では,帯電装置12,転写装置15,定着装置18はいずれもローラ形状のものを用いている。また,クリーニング装置16には,クリーニングブレードを用いる。
【0026】
続いて,画像形成装置100による画像形成の動作について簡単に説明する。画像形成装置100は,スタート信号や画像データ等を受信することにより動作を開始する。感光体ドラム11は,図1中の矢印方向に回転駆動される。そして,帯電装置12と対向する位置で,帯電ローラによって一様に帯電される。次に,露光装置13によって露光され,表面上に画像データに基づいた静電潜像が形成される。
【0027】
次に,静電潜像が現像装置14の位置に達すると,現像ローラに印加された現像バイアス電圧と感光体ドラム11の静電潜像との間で形成される電界により帯電したトナーが移動し,静電潜像がトナーによって現像される。
【0028】
一方,用紙搬送路を搬送されてきた用紙は,タイミングローラ17にて画像先端位置にタイミングを合わせられ,感光体ドラム11と転写装置15との間に搬送される。そして,転写装置15によって感光体ドラム11上のトナー像が用紙に転写される。さらに,転写されたトナー像を保持した用紙はさらに搬送され,定着装置18によって熱と圧力とが加えられることにより,トナー像が用紙に定着される。また,転写装置15によって用紙に転写されず,感光体ドラム11上に残った転写残トナーはクリーニング装置16によって掻き取られる。これにより,1枚分の画像形成が終了する。
【0029】
続いて,現像装置14について詳説する。現像装置14は,図2に示すように,1成分現像剤である非磁性のトナーを収容する現像容器1と,トナーを担持しトナーを感光体ドラム11に向けて搬送する現像ローラ2と,現像ローラ2へのトナーの供給および現像ローラ2上のトナーの掻き取りを行うトナー供給ローラ3と,現像ローラ2上のトナーの厚みを規制するトナー量規制部材4と,トナー漏れを防止するとともに現像後に現像ローラ2上に残留するトナーを除電するトナー除電部材5とを備えている。また,現像ローラ2には,電源が接続され,現像のためのバイアスが印加される。
【0030】
現像装置14では,トナー供給ローラ3と現像ローラ2との電位差および表面が発泡体であるトナー供給ローラ3の機械的搬送力により,現像容器1内のトナーをトナー供給ローラ3から現像ローラ2に搬送する。現像ローラ2に供給されたトナーは,現像ローラ2の回転に伴ってトナー量規制部材4により摩擦帯電されつつ薄層化され,感光体ドラム2との対向部にて静電潜像を可視化する。
【0031】
現像後,現像ローラ2上に残留するトナーは,カウンタ回転するトナー供給ローラ3とのニップ部にて,現像ローラ2の表面から掻き取られる。掻き取られたトナーは,現像容器1内に回収される。この残留トナーの掻き取りとともにトナー供給ローラ3の回転によって現像ローラ2上に新たなトナーが供給される。
【0032】
トナー供給ローラ3は,図3に示すように,回転軸となる芯金31と,その芯金31の周囲に位置し,発泡部材からなる発泡弾性体層32とを有している。芯金31には,鉄,ステンレス,アルミ等の材料が使用される。なお,芯金31としては,防錆処理を行った金属であれば適用可能である。また,発泡弾性体層32は,ポリウレタン,エポキシ樹脂,アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂の発泡体により形成される。また,ポリエチレン,ポリスチレン等の熱可塑性樹脂のゴム発泡体により形成することも可能であるが,耐久性に優れたポリウレタン発泡体が好ましい。本形態では,ポリウレタン発泡体を使用した。なお,本形態では,非導電性である材料を使用しているが,発泡弾性体層32には必要に応じて導電性物質を含有させてもよい。
【0033】
また,発泡弾性体層32の表面には,図4に示すように,周方向に連続した凹凸を形成する凸部33が設けられている。さらに凸部33は,所定のピッチでストライプ状をなすように,ローラの軸方向に実質的に平行になるように形成されている。なお,凸部33は,ローラの軸方向に延びる形状であればよく,直線状に限らず,螺旋状に延びる形状であってもよい。
【0034】
図5は,発泡弾性体層32の表面を拡大し,微視的に見た状態を示している。発泡弾性体層32は,その表面に全体として連続した面を形成するスキン層321を有している。スキン層321には,その直下に位置する各セル35を外部に開口させる開口部323が設けられている。さらに,開口部323は,スキン層321の厚さが最も薄くなる部位,すなわちセル35の中央部に相当する部位に形成されている。本形態では,スキン層321における開口部323の占める面積の割合が20%以上となるように構成されている。なお,セル35は,相互に独立した独立気泡タイプであっても,相互に連通した連続気泡タイプであってもよい。
【0035】
続いて,回転軸方向と直交する断面における凸部33の外形について,図6乃至図7を基に詳説する。なお図6中,矢印Aはトナー供給ローラの回転方向を,矢印Bはトナー供給ローラと当接する現像ローラの回転方向をそれぞれ示している。凸部33は,図6に示すように,頂上部に山頂面331を備え,山頂面331に向かうほど幅が狭く,その山頂面331を上底とする山形形状をなしている。
【0036】
また,凸部33の側面34は,図7に示すように,所定の位置Pを境に,凸部33の山頂部側に位置し平面である山頂側面34aと,凸部33の山麓部側に位置し外側に広がるように連続した曲面である山麓側面34bとによって構成されている。つまり,凸部33は,側面34の一部が外側に広がるように湾曲し,裾野が広がった形状をなしている。山麓側面34bの傾斜は,山頂側面34aの傾斜よりも緩く,麓に近づくにつれて徐々に傾斜が緩くなっている。つまり,凸部33は,山頂側面34aと山麓側面34bとの境界Pから凸部33の麓に向かって緩やかに傾斜する形状となっている。従って,完全な台形とは異なる。この点,完全な台形である従来の形態(図9参照)と異なる。
【0037】
本形態のトナー供給ローラ3は,凸部33の麓が緩やかに傾斜する形状となることで,次のような利点を有する。
【0038】
第1の利点として,凸部33の麓を連続した曲面で徐々に傾斜させることで,トナーの流れが改善される。つまり,従来の形態のように,凸部33の側面が急斜面のまま麓まで達すると,凸部33,33間に形成される凹部38の底面のエッジ部でトナーが滞留してしまう。また,凸部33の付根部周辺のセル35に侵入したトナーを流出し難い。一方,本形態のように,凸部33の側面をその傾斜角度が徐々に変化する緩斜面とする,すなわち凹部38のエッジに丸みを持たせることで,トナーの滞留が抑制されるとともにセル内のトナーの流出がスムーズになる。そのため,トナー溜りが解消され,トナーの凝集を回避することができる。
【0039】
第2の利点として,凸部33の麓を広げることで,凸部33の付根部(麓周辺)が補強される。つまり,本形態の凸部33は,従来の形態と比較して,図7中のハッチング部分33a(以下,「補強部33a」とする)が補填される。そのため,凸部33の倒れが抑制される。また,本形態では,凸部33の麓が曲面で構成されることから,凸部33の付根部の応力集中が緩和される。すなわち,凸部33が補強されるとともに付根部の応力集中も緩和されることから,凸部33の付根部の亀裂を抑制することができる。
【0040】
また,本形態のトナー供給ローラ3は,凸部33の形状を次の式(1)〜式(3)のように規定する。
【0041】
なお,式(1)〜式(3)中,bは凸部33の山頂面331の幅を示し,cは凸部33の高さを示す(図6参照)。なお,凹凸形状を規定する「高さ」とはトナー供給ローラ3の径方向の距離を意味し,「幅」とはトナー供給ローラ3の周方向の距離を意味する。さらに,S1は凸部33の断面積を示し,隣り合う凸部33,33間に位置する凹部38の断面積を示している(図8参照)。また,hは凸部33の麓から山頂側面34aと山麓側面34bとの境界Pまでの高さ(以下,「山麓部の高さ」とする)を示し,wは凸部33の麓から山頂側面34aと山麓側面34bとの境界Pまでの幅(以下,「山麓部の幅」とする)を示す(図7参照)。
【0042】
より具体的に,凸部33の断面積S1は,凸部33の輪郭線(両側面34,34および山頂面331によってなる線)と,凸部33の付根部を結ぶ線(ローラの内径円の一部となる線)によって囲まれた部分の断面積である。凹部38の断面積S2は,凹部38の輪郭線(凸部33の両側面34,34および凹部38の底面によってなる線)と,凸部33の頂上部を結ぶ線(ローラの外形円の一部となる線)によって囲まれた部分の断面積である。
【0043】
まず,本形態のトナー供給ローラ3の凸部33は,次の式(1)を満たす形状となっている。
S1≦S2 (1)
【0044】
すなわち,凸部断面積S1を凹部断面積S2よりも小さくする(1)。これにより,凹部38に十分の広さが確保され,トナーの流出がスムーズに行われる。よって,トナーの掻き取り性が安定する。仮に,凸部断面積S1を凹部断面積S2よりも大きくすると,耐久印字にてカブリ,ゴースト等の画像不良が生じるおそれがある。また,トナーが高密度で密集し,発泡弾性体層32の硬度が上昇するおそれがある。
【0045】
つまり,凸部33にて掻き取られたトナーの一部は,凸部33のセル35内に侵入する。このとき,セル35内のトナーが凸部33から押し出され,凹部38へスムーズに流出することで,トナーの滞留を免れて良好なトナーの掻き取り性が得られる。しかし,凹部38が小スペースの場合,初期の掻き取り性は良好であるものの,凸部33内のトナーを十分に流出できず,凸部33内にトナーが残留してしまう。そのため,連続印字によって残留するトナーが増し,次第にトナーの密度が高くなる。よって,トナーの流れは鈍化し,トナーの掻き取り性に悪影響を与える。従って,ゴースト画像が発生する。また,トナーが密集することで,発泡弾性体層32の硬度が上昇する。よって,トナーへのストレスが増し,トナーが劣化する。従って,カブリ画像が発生する。
【0046】
また,本形態のトナー供給ローラ3の凸部33の麓周辺は,次の式(2)および式(3)を満たす形状となっている。
c/4≦h≦c (2)
b/3≦w≦b (3)
【0047】
すなわち,山麓部の高さhを凸部高さc/4以上とする(2)。また,山麓部の幅wを凸部山頂面の幅b/3以上とする(3)。これにより,凸部33の麓が緩やかに傾斜する形状となるとともに十分なサイズの補強部33aが得られる。よって,トナーの凝集および付根部の亀裂を確実に回避することができる。仮に,山麓部の高さhを凸部高さc/4よりも小さくする,あるいは山麓部の幅wを凸部山頂面の幅b/3よりも小さくすると,凸部33の麓が急斜面となるとともに補強部33aのサイズが小さくなる。そのため,山麓側面34bを曲面とする効果が十分に得られない。
【0048】
なお,本形態では,凸部33の麓のうち,回転方向Aの上流側および下流側の両側ともに連続した曲面で徐々に傾斜させているが,いずれか一方のみであってもよい。すなわち,上記した第1の利点に着目すれば,回転方向Aの下流側(図6の左側)の麓にのみ緩斜面を設けることでトナー溜りを解消することができる。
【0049】
また,上記した第2の利点に着目すれば,少なくもと一方の側の麓に補強部33aを形成することで付根部の亀裂を抑制することができる。つまり,回転方向Aの下流側の麓に補強部33aを形成することで付根部を補強するとともに応力集中の回避が図られる。よって,付根部の亀裂が抑制できる。一方,回転方向Aの上流側の麓に補強部33aを形成することで凸部33の倒れを抑制することができ,結果として下流側の麓の亀裂を抑制できる。
【0050】
以上詳細に説明したように本形態のトナー供給ローラ3は,最表面に位置する発泡弾性体層32の表面に,ローラの周方向に連続した凹凸を形成し,ローラの軸方向に延びる凸部33を有することとしている。さらに,凸部33の少なくとも一方の側面34の付根部(山麓側面34b)は,凸部33の外側に広がるように連続して湾曲した形状をなすこととしている。このため,図9に示したような台形形状の凸部39と比較して,凸部33の裾野が広く,傾斜が緩やかである。その結果,トナーの滞留が緩和され,トナーの凝集を抑制することができる。また,付根周辺での応力集中が緩和されるとともに,凸部33の付根部が補強される。そのため,凸部33の付根部の亀裂を抑制することができる。
【0051】
また,凸部33の1個当たりの径方向断面積S1が,隣り合う凸部33,33間に形成される凹部38の1個当たりの径方向断面積S2以下となるように凸部33を設計することとしている。これにより,凹部38に十分の広さが確保され,トナーの流出がスムーズに行われる。よって,トナーの掻き取り性が安定する。
【0052】
さらに,トナー供給ローラ3は,小粒径(平均粒径:5.5μm〜7.0μm)で低温定着(軟化点温度:80℃〜85℃)のトナーの利用に適する。すなわち,このようなトナーを利用する際にはトナー溜りや付根部の亀裂が特に問題となる。本形態のトナー供給ローラ3では,トナーの流れを向上させ,凸部33の付根部を補強することから,これらの問題を回避することができる。
【0053】
また,本形態の現像装置14のトナー供給ローラ3は,トナーを機械的な力によって掻き取っており,静電的な力を利用していない。そのため,構成がシンプルでかつコストアップを招くことはない。
【0054】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本発明は,カラープリンタ,モノクロプリンタ,コピー機,ファクシミリ等の各種の画像形成装置に適用可能である。
【0055】
また,像担持体としてローラ形状の感光体ドラムを用いているが,ベルト状の感光体ベルトを使用してもよい。また,帯電装置は,ローラ帯電方式のほか,コロナ放電方式の帯電チャージャ,ブレード,ブラシ等を使用してもよい。また,露光装置は,レーザによるものでもLEDによるものでもよい。また,転写装置は,転写ローラのほか,転写チャージャを使用してもよい。あるいは,感光体から用紙へ直接トナー像を転写する方式のほか,中間転写体を備え,2段階以上の転写を行う方式であってもよい。また,クリーニング装置は,クリーニングブレードのほか,クリーニングブラシ,クリーニングローラまたはそれらの組合せでもよい。あるいは,現像装置によって転写残トナーの回収を行うものであってもよい。また,定着装置は,定着ローラのほか,定着ベルトを用いてもよいし,非接触方式のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施の形態にかかる画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態にかかる現像装置の概略構成を示す図である。
【図3】実施の形態にかかるトナー供給ローラの概略構成を示す図である。
【図4】図3に示したトナー供給ローラの発泡弾性体層の表面断面および斜視表面を示す図である。
【図5】トナー供給ローラの発泡弾性体層の表面を微視的に示す図である。
【図6】実施の形態にかかるトナー供給ローラの表面断面を示す図である。
【図7】発泡弾性体層の凸部の側面を示す図である。
【図8】トナー供給ローラと現像ローラとのニップ部の状態を示す断面図である。
【図9】従来の形態にかかるトナー供給ローラの表面断面を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
2 現像ローラ(トナー担持ローラ)
3 トナー供給ローラ
31 芯金(芯材)
32 発泡弾性体層
33 凸部
34 凸部の側面
35 セル
38 凹部
11 感光体ドラム
14 現像装置
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と,前記芯材の外周面上に位置する発泡弾性体層とを備え,前記発泡弾性体層の表面には,ローラの周方向に連続した凹凸を形成し,ローラの軸方向に延びる凸部が設けられ,トナーの搬送に供するトナー供給ローラにおいて,
前記凸部は,ローラの外周側に向かって幅が狭くなる形状をなし,
前記凸部の少なくとも一方の側面は,側面中の所定の位置Pから凸部の付根に至る部分が外側に広がるように連続した曲面であり,
前記凸部の1個当たりの径方向断面積S1と,隣り合う凸部間に形成される凹部の1個当たりの径方向断面積S2との関係が次の式(A)を満たすことを特徴とするトナー供給ローラ。
S1≦S2 (A)
【請求項2】
請求項1に記載するトナー供給ローラにおいて,
前記凸部の形状は,次の式(B)を満たすことを特徴とするトナー供給ローラ。
c/4≦h≦c (B)
c:前記凸部の高さ。
h:前記凸部の側面中の位置Pの高さ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するトナー供給ローラにおいて,
前記凸部の形状は,次の式(C)を満たすことを特徴とするトナー供給ローラ。
b/3≦w≦b (C)
b:前記凸部の頂上面の幅。
w:前記凸部の側面中の位置Pから前記凸部の付根までの周方向の距離。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−40257(P2008−40257A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216053(P2006−216053)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】