説明

トナー及び画像形成方法

【課題】多種多様な品種の転写材の使用においても画像欠陥を生じることなく、安定した画像品質を得ることができるトナーの提供。
【解決手段】帯電された静電荷像担持体に静電荷像を形成し、静電荷像を現像スリーブ上のトナーによって現像してトナー像を形成し、静電荷像担持体上のトナー像を転写搬送手段上に搬送させた転写材に当接させて転写する画像形成方法において使用されるトナーであって、該静電荷像担持体は光導電層と、水素化アモルファス炭化珪素で形成されている表面層とを順次積層した感光体であり、該感光体の表面層の珪素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm3以上であり、該トナーが磁性トナー粒子と無機微粉末を有する磁性トナーであり、該磁性トナーの重量平均粒径が5.0μm以上9.0μm以下、該磁性トナー粒子のBET比表面積が0.90m2/g以上1.50m2/g以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真,静電荷像を顕像化するための画像形成方法及びトナージェットに使用される現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を用いた画像形成装置は、より高速化,より高信頼性が厳しく追及されてきている。例えば、グラフィックデザインの如き高細密画像のプリント、さらにはより信頼性が要求される軽印刷(パソコンによる文書の編集からコピー、製本までの多品種少量印刷が可能なプリント・オン・デマンド用途)向け(以下PODとする)に画像形成装置は使われはじめた。
【0003】
POD用途としてこのような画像形成装置を用いた場合、特に従来技術から改善を求められる性能としては、プリント画像の高画質性,高速プリント性,高信頼性,高耐久性等が挙げられる。更にさまざまな特性(例えば材質,厚さ,サイズ)を持つ転写材に対して、安定した搬送性を維持し、且つ過不足なく感光体上のトナー像を転写材上に転写する必要性がある。
【0004】
特許文献1では、転写ベルトの感光体表面に対する侵入量を一定の範囲に制御し、且つトナーの粉体特性を制御することで、転写ベルトと感光体の当接部位でのトナー凝集による転写中抜けを防止すると共に、転写ベルト汚染を効果的に抑制し、特に、高速且つ長期継続的にプリント画像を得るような場合においても、高信頼性で、高精細、高画質なプリント品質を維持し続けることが可能となる提案がなされている。しかし、軽印刷用途を前提とした場合、転写中抜け防止効果の低下や転写起因の画質劣化(画像のガサツキ性等)、即ち、長期安定的に様々な特性の転写材に対して高画質なプリント品質を維持し続けるという点でさらなる改良の余地がある。
【0005】
特許文献2では、中間転写体の弾性変形率とトナーの弾性変形率の関係を制御することで、良好な転写効率を得ることができ、転写中抜けや転写起因の画質劣化を防止し且つ、良好なクリーニング性が得られるという提案がなされている。しかし、軽印刷用途を前提としたプリント速度の高速化や多種多様な品種の転写材に対応するためには改善の余地がある。
【0006】
特許文献3では、トナーの形状係数及び結着樹脂の分子量を制御することで高画像濃度・潜像再現性を保持しつつ、転写中抜け及び転写効率を向上させることができる提案がなされている。さらに、特許文献4,5,6ではトナーに添加した無機粒子(シリカ粒子)のスペーサー効果を利用し、長期間にわたる画像安定性や転写性が達成できる技術が開示されている。しかし、いずれの場合でも軽印刷用途を前提としたプリント速度の高速化や多種多様な品種の転写材に対応するためにはやはり改善の余地がある。
【0007】
以上のように、多種多様な品種の転写材の使用においても印刷機並の画像品質を達成するための技術的課題は非常に多く、多くの改良の余地を有する。
【0008】
【特許文献1】特開2006−145811号公報
【特許文献2】特開2005−338808号公報
【特許文献3】特開平08−272139号公報
【特許文献4】特開平5−142849号公報
【特許文献5】特開2002−108001号公報
【特許文献6】特開2003−322998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は上記問題点を解消したトナーを提供することにある。
【0010】
本発明の目的は上記問題点を解消した画像形成方法を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は多種多様な品種の転写材の使用においても画像欠陥を生じることなく、安定した画像品質を得ることができるトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、静電荷像を担持するための静電荷像担持体を帯電し、帯電された静電荷像担持体に静電荷像を形成し、静電荷像を現像スリーブ上のトナーによって現像してトナー像を形成し、静電荷像担持体上のトナー像を転写搬送手段上に搬送させた転写材に当接させて転写する画像形成方法において使用されるトナーであって、
該静電荷像担持体は少なくとも光導電層と、水素化アモルファス炭化珪素で形成されている表面層(以下a−SiC表面層とする)とを順次積層した感光体であり、該感光体の表面層の珪素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm3以上であり、
該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄を含有する磁性トナー粒子と、少なくとも無機微粉末を有する磁性トナーであり、該磁性トナーの重量平均粒径が5.0μm以上9.0μm以下であり、該磁性トナー粒子のBET比表面積が0.90m2/g以上1.50m2/g以下であることを特徴とするトナーに関する。
【0013】
本発明は、静電荷像を担持するための静電荷像担持体を帯電し、帯電された静電荷像担持体に静電荷像を形成し、静電荷像を現像スリーブ上のトナーによって現像してトナー像を形成し、静電荷像担持体上のトナー像を転写搬送手段上に搬送させた転写材に当接させて転写する画像形成方法において、
該静電荷像担持体は少なくとも光導電層と、水素化アモルファス炭化珪素で形成されている表面層とを順次積層した感光体であり、該感光体の表面層の珪素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm3以上であり、
該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄を含有する磁性トナー粒子と、少なくとも無機微粉末を有する磁性トナーであり、該磁性トナーの重量平均粒径が5.0μm以上9.0μm以下であり、該磁性トナー粒子のBET比表面積が0.90m2/g以上1.50m2/g以下であることを特徴とする画像形成方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、静電荷像を担持するための静電荷像担持体を帯電し、帯電された静電荷像担持体に静電荷像を形成し、静電荷像を現像スリーブ上のトナーによって現像してトナー像を形成し、静電荷像担持体上のトナー像を転写搬送手段上に搬送させた転写材に当接させて転写する画像形成方法において、感光体の表面層の珪素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和を制御し、且つ、少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄を含有する特定のBET比表面積を有する磁性トナー粒子と、少なくとも無機微粉末を有する特定の重量平均粒径の磁性トナーを用いることで、多種多様な紙種において高速で且つ長期連続的にプリント作業を行うような使用状態においても長期安定的に高精細,高画質なプリント品質を維持することが出来、転写ラチテュードの広い磁性トナーを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
軽印刷用途として高速で且つ多彩な紙種に対応するためには転写材の材質や厚み及びサイズに関係なく転写することが出来る転写ベルトが必要不可欠である。転写ベルトを用いてプリントスピードの高い場合においても転写ズレを発生させないためには転写ベルトと感光体との当接圧力を高め、感光体への吸着領域(転写ニップ)を増やす必要がある。又、感光体との当接部位において感光体側に転写電流の供給を行う必要があることから任意の圧力で圧接する必要がある。
【0016】
一方、高耐久安定性,高信頼性が求められる高速機においては、アモルファスシリコン感光体が好ましく用いられる。アモルファスシリコン感光体は、可視光領域の全般にわたって高い感度を有し、表面硬度が高くて耐久性、耐熱性及び環境安定性に優れるという長所を持っている。しかし、高硬度な故に上記転写ベルトと組み合わせて所望の転写性能を達成しようとすると、当接部位において局所的にかかる圧力は非常に高いものとなる。その結果、トナーの劣化による現像性の低下や、転写中抜け等の画像欠陥の発生が見られる。
【0017】
このように、軽印刷用途として高耐久性,高画質性等の性能を達成するためには高耐久・高硬度な感光体と転写ベルトの組み合わせによる構成が必須となるが、従来は軽印刷用途であるこのような構成において所望の性能を達成できるものがなかった。
【0018】
本発明者らは、これらを達成するために感光体(特にアモルファスシリコンドラムのような高硬度の感光体)の当接部位(転写ニップ)でのトナーの挙動について検討した。その結果、転写ニップ間で起こるトナーと感光体の相互作用を制御することにより転写効率が制御可能であることを見出した。本発明者らは、転写ニップ間で働くトナー層と感光体表面層に存在する活性部位との間の静電的な作用を如何に均一に制御するかが重要であることを見出した。
【0019】
即ち、本発明者らは、感光体表面層に存在する活性の高い部位を少なく、均一に制御した感光体とトナーの形状をコントロールすることで、感光体との接触面積、接触機会を均一に制御したトナーの両者を併せ持つことで初めて上記課題を解決した性能を達成できることを見出した。
【0020】
即ち、本発明は感光体のa−SiC表面層の珪素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm3以上であることを特徴とし、好ましくは6.81×1022原子/cm3以上であることが良い。a−SiC表面層を構成する珪素原子及び炭素原子の原子密度を高くすることにより、(1)珪素原子と炭素原子との結合を切れにくくすること、(2)炭素原子と酸化物質との反応確率を低減させることが可能となると考えられる。更に、表面層の構成原子の結合力が高くなるため、高硬度な表面層が得られ、その結果、軽印刷用途のような高耐久が達成可能となる。
【0021】
このa−SiC表面層での炭素原子の酸化を抑制することが、所望の性能を達成するにあたり非常に重要であることが明らかになった。即ち、炭素原子と酸化物質が反応することにより、表面層の珪素原子と炭素原子との結合が切断され、新たに珪素原子のダングリングボンドが生成する。表面層に存在するダングリングボンドは非常に活性が高いため、トナーと感光体の間に強い相互作用を生じその結果、転写時に影響を与えることが明らかとなった。
【0022】
感光体のa−SiC(水素化アモルファス炭化珪素)表面層の珪素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm3未満の場合、珪素原子と炭素原子との結合が切れやすくなり、且つ、炭素原子と酸化物質との反応確率が高まる。その結果、炭素原子と酸化物質が反応し、表面層の珪素原子と炭素原子との結合が切断され、新たに珪素原子のダングリングボンドが生成する。表面層に存在するダングリングボンドは非常に活性が高いため、感光体の表面層に活性の高い部分と活性の低い部分が局在化することになる。さらに、これらの現象は感光体の使用時間が長いほど進行していく傾向があるため、耐久後半になるに従って、傾向が顕著になってくる。このような状態で転写ニップ内に転写バイアスを印可すると、トナーを均一に転写材に転写させること困難となり(転写効率が低下する。)、転写中抜け等の画像欠陥の発生が見られる。
【0023】
本発明において用いられる、感光体の一例について、概略を説明する。
【0024】
図1は、本発明のa−Si系感光体を作製するための高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図である。
【0025】
この装置は大別すると、反応容器1110を有する堆積装置1100、原料ガス供給装置1200、および、反応容器1110内を減圧する為の排気装置(図示せず)から構成されている。堆積装置1100中の反応容器1110内にはアースに接続された導電性基体1112、導電性基体加熱用ヒーター1113、および、原料ガス導入管1114が設置されている。さらにカソード電極1111には高周波マッチングボックス1115を介して高周波電源1120が接続されている。原料ガス供給装置1200は、SiH4,H2,CH4,NO,B26等の原料ガスボンベ1221〜1225、バルブ1231〜1235、圧力調整器1261〜1265、流入バルブ1241〜1245、流出バルブ1251〜1255およびマスフローコントローラ1211〜1215から構成されている。各原料ガスを封入したガスのボンベは補助バルブ1260を介して反応容器1110内の原料ガス導入管1114に接続されている。
【0026】
次にこの装置を使った堆積膜の形成方法について説明する。まず、あらかじめ脱脂洗浄した導電性基体1112を反応容器1110に受け台1123を介して設置する。次に、排気装置(図示せず)を運転し、反応容器1110内を排気する。真空計1119の表示を見ながら、反応容器3110内の圧力がたとえば1Pa以下の所定の圧力になったところで、基体加熱用ヒーター1113に電力を供給し、導電性基体1112を例えば50℃から350℃の所望の温度に加熱する。このとき、ガス供給装置1200より、Ar、He等の不活性ガスを反応容器1110に供給して、不活性ガス雰囲気中で加熱を行うこともできる。
【0027】
次に、ガス供給装置1200より堆積膜形成に用いるガスを反応容器1110に供給する。すなわち、必要に応じバルブ1231〜1235、流入バルブ1241〜1245、流出バルブ1251〜1255を開き、マスフローコントローラ1211〜1215に流量設定を行う。各マスフローコントローラの流量が安定したところで、真空計1119の表示を見ながらメインバルブ1118を操作し、反応容器1110内の圧力が所望の圧力になるように調整する。所望の圧力が得られたところで高周波電源1120より高周波電力を印加すると同時に高周波マッチングボックス1115を操作し、反応容器1110内にプラズマ放電を生起する。その後、速やかに高周波電力を所望の電力に調整し、堆積膜の形成を行う。
【0028】
所定の堆積膜の形成が終わったところで、高周波電力の印加を停止し、バルブ1231〜1235、流入バルブ1241〜1245、流出バルブ1251〜1255、および補助バルブ1260を閉じ、原料ガスの供給を終える。同時に、メインバルブ1118を全開にし、反応容器1110内を1Pa以下の圧力まで排気する。
【0029】
以上で、堆積層の形成を終えるが、複数の堆積層を形成する場合、再び上記の手順を繰り返してそれぞれの層を形成すれば良い。原料ガス流量や、圧力等を光導電層形成用の条件に一定の時間で変化させて、接合領域の形成を行うこともできる。
【0030】
すべての堆積膜形成が終わったのち、メインバルブ1118を閉じ、反応容器1110内に不活性ガスを導入し大気圧に戻した後、導電性基体1112を取り出す。
【0031】
本発明の電子写真感光体は、従来周知の電子写真感光体の表面層に比べてa−SiCを構成している珪素原子及び炭素原子の原子密度を上げて、原子密度の高い膜構造の表面層を形成している。上述したように、本発明の原子密度の高いa−SiC表面層を作製する場合には、表面層作成時の条件にもよるが、一般的に、ガス量と高周波電力とのバランスが重要で、反応容器に供給するガス量が少ない方が良く、高周波電力は高い方が良い。又、反応容器内の圧力が高い方が良く、更に、導電性基板の温度が高い方が良い。
【0032】
まず、反応容器内に供給するガス量を減らし、且つ高周波電力を上げることにより、ガスの分解を促進させることができる。これにより、珪素原子供給源(例えば、SiH4)よりも分解し難い炭素原子供給源(例えば、CH4)を効率良く分解することができる。その結果、水素原子の少ない活性種が生成され、基体上に堆積した膜中の水素原子が減少するため原子密度の高いa−SiC表面層が形成可能となる。
【0033】
また、反応容器内の圧力を高めることで、反応容器内に供給された原料ガスの滞留時間が長くなる、また、原料ガスの分解により生じた水素原子により弱結合水素の引き抜き反応が生じるために、珪素原子と炭素原子のネットワーク化が促進したためだと考えている。
【0034】
更に、導電性基板の温度を上げることにより、導電性基板に到達した活性種の表面移動距離が長くなり、より安定した結合をつくることができる。その結果、a−SiC表面層として、より構造的に安定した配置に各原子が結合しているためであると考えている。
【0035】
また、本発明の感光体は、a−SiC表面層の珪素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を0.61以上0.75以下であることが好ましい。
【0036】
a−SiC表面層において、珪素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を0.61よりも小さい場合、特に、原子密度の高いa−SiCを作製した場合、a−SiCの抵抗が低下する場合がある。このような場合、転写材の材質や厚み及びサイズを変化させたときの転写性が変わりやすい。特に、高温高湿下における厚紙の転写効率が低下する傾向がある。また、珪素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を0.75より大きくすると、炭素原子と酸化物質との反応確率が高まる。そのため炭素原子と酸化物質が反応し、表面層の珪素原子と炭素原子との結合が切断され、新たに珪素原子のダングリングボンドが生成しやすくなる。その結果、転写ニップ内でのトナーと感光体の相互作用に偏りが生じやすくなり、画像欠陥や転写効率の低下といった現象が起こりやすくなる。
【0037】
また、本発明の感光体は珪素原子の原子数、炭素原子の原子数及び水素原子の原子数の和に対する水素原子の原子数の比を0.30以上0.45以下にすることが好ましい。水素原子をa−SiC表面層中に0.30未満存在させた場合、原子密度の高いa−SiC表面層において、光学的バンドギャップが狭くなり、光吸収が増加することにより感度が悪化する場合がある。その結果、特に微小な文字での画質の劣化が発生する場合がある。一方、水素原子をa−SiC表面層中に0.45より多く含有させると、a−SiC表面層中には、メチル基のような水素原子の多い終端基が増加する傾向がみられる。メチル基のような複数の水素原子を有する終端基がa−SiC表面層中に存在すると、a−SiCの構造中に大きな空間を形成するとともに、周囲に存在する原子間の結合にひずみを生じさせる。このような構造上弱い部分は、酸化に対して非常に弱い部分となってしまうと考えられる。
【0038】
また、水素原子をa−SiC表面層中に多量に含有させると、a−SiC表面層における骨格原子である珪素原子と炭素原子のネットワーク化の促進が図りづらくなる。その結果、炭素原子と酸化物質との反応確率が高まるため炭素原子と酸化物質が反応し、表面層の珪素原子と炭素原子との結合が切断され、新たに珪素原子のダングリングボンドが生成しやすくなる。その結果、転写ニップ内でのトナーと感光体の相互作用に偏りが生じやすくなり、画像欠陥や転写効率の低下といった現象が起こりやすくなる。
【0039】
以下に本発明で用いる感光体の原子密度及び原子比の測定法を示す。
【0040】
(C/(Si+C)の測定、Si+C原子密度、H原子比の測定)
まず、表1の電荷注入阻止層及び光導電層のみを積層させたリファレンス電子写真感光体を作製し、任意の周方向における長手方向の中央部を15mm□で切り出し、リファレンス試料を作製した。次に、電荷注入阻止層、光導電層及び表面層を積層させた電子写真感光体を同様に切り出し、測定用試料を作製した。リファレンス試料と測定用試料を分光エリプソメトリー(J.A.Woollam社製:高速分光エリプソメトリー M−2000)により測定し、表面層の膜厚を求めた。
【0041】
分光エリプソメトリーの具体的な測定条件は、入射角:60°、65°、70°、測定波長:195nmから700nm、ビーム径:1mm×2mmである。
【0042】
まず、リファレンス試料を分光エリプソメトリーにより各入射角で波長と振幅比Ψ及び位相差Δの関係を求めた。
【0043】
次に、リファレンス試料の測定結果をリファレンスとして、測定用試料をリファレンス試料と同様に分光エリプソメトリーにより各入射角で波長と振幅比Ψ及び位相差Δの関係を求めた。
【0044】
そして、電荷注入阻止層及び光導電層、表面層を順次積層し、最表面に表面層と空気層の体積比が8:2となる粗さ層を有する層構成を計算モデルとして用いて、解析ソフト:WVASE32により各入射角における波長とΨ及びΔの関係を計算により求めた。更に、この計算により求めた波長とΨ及びΔの関係と、測定用試料を測定して求めた波長とΨ及びΔの関係の平均二乗誤差が最小となるときの表面層の膜厚を算出し、この値を表面層の膜厚とした。
【0045】
分光エリプソメトリーによる測定が終了した後、上記測定用試料をRBS(ラザフォード後方散乱法)(日新ハイボルテージ(株)製:後方散乱測定装置 AN−2500)により表面層中の珪素原子及び炭素原子の原子数を測定し、C/(Si+C)を求めた。次に、測定した珪素原子及び炭素原子の原子数、RBS測定面積及び分光エリプソメトリーにより求めた表面層の膜厚を用いて、珪素原子の原子密度、炭素原子の原子密度及びSi+C原子密度を求めた。
【0046】
RBSと同時に、上記測定用試料をHFS(水素前方散乱法)(日新ハイボルテージ(株)製:後方散乱測定装置 AN−2500)により表面層中の水素原子の原子数を測定した。HFSにより求められた水素原子の原子数と、RBSにより求められた珪素原子の原子数及び炭素原子の原子数により、H原子比を求めた。次に、測定した水素原子の原子数、HFS測定面積及び分光エリプソメトリーにより求めた表面層の膜厚を用いて、水素原子の原子密度を求めた。
【0047】
RBS及びHFSの具体的な測定条件は、入射イオン:4He+、入射エネルギー:2.3MeV、入射角:75°、試料電流:35nA、入射ビーム経:1mmであり、RBSの検出器は、散乱角:160°、アパーチャ径:8mm、HFSの検出器は、反跳角:30°、アパーチャ径:8mm+Slitで測定を行った。
【0048】
以上のように、軽印刷用途を前提としたプリント速度の高速化や多種多様な品種の転写材に対応するためには特に転写ニップ内での感光体表面層の反応性を制御することが重要であることを述べてきた。しかし、感光体表面層を完全に均一に制御することは技術的にも困難であり、さらに本発明の課題を解決するためには、感光体表面の制御に加えて、トナーの形状即ち、転写ニップ間でのトナーと感光体の接触面積、接触機会(均一性)を制御することが必須となる。
【0049】
即ち、本発明は該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄を少なくとも含有する磁性トナー粒子と、少なくとも無機微粉末を有する磁性トナーであり、該磁性トナーの重量平均粒径が5.0μm以上9.0μm以下、好ましくは5.0μm以上8.0μm以下であり、該磁性トナー粒子のBET比表面積が0.90m2/g以上1.50m2/g以下、好ましくは、0.93m2/g以上1.20m2/g以下であることを特徴とする。
【0050】
従来から、転写性を向上させるためにはトナー形状が重要であることが知られており、特に円形度を上げる方向が好ましいことが提案されている。本発明者らは、軽印刷用途を前提としたプリント速度の高速化や多種多様な品種の転写材に対応するためにトナー形状と転写性能の関わりを検討してきた。その結果、従来よりも高速で且つ多種多様な品種の転写材に対応するためには従来技術である形状を丸くするだけでは不十分であるという根拠を見出すに至った。
【0051】
重量平均粒径は転写ニップ内のトナー層の厚み、トナー粒子の個数を制御するために重要である。重量平均粒径が5.0μm未満の場合、同じトナー層の厚みであったとしてもトナー粒子の個数が多くなり、且つ感光体とトナーが面で接触するため、感光体表面の反応性に対する影響を受けやすい。このような状態で転写ニップ内に転写バイアスを印可すると、トナーを均一に転写材に転写させることが困難となり(転写効率が低下する。)、転写中抜け等の画像欠陥の発生が見られ、特に耐久後半に顕著に影響が出る。重量平均粒径が9.0μmよりも大きい場合、感光体表面の影響は受けにくいものの、厚紙と薄紙での転写性が大きく変わり、特に厚紙での画像欠陥が顕著となる。
【0052】
磁性トナー粒子のBET比表面積は転写ニップ内での感光体との接触機会を制御するために重要である。BET比表面積が0.90m2/g未満の場合、トナー粒子1個あたりの感光体との接触点が減少する。その結果、感光体表面の影響は受けにくいものの、厚紙と薄紙での転写性が大きく変わり、特に厚紙での画像欠陥が顕著となる。BET比表面積が1.50m2/gよりも大きい場合、トナー粒子1個あたりの感光体との接触点が増加するため感光体表面の反応性に対する影響を受けやすくなる。このような状態で転写ニップ内に転写バイアスを印可すると、トナーを均一に転写材に転写させることが困難となり(転写効率が低下する。)、転写中抜け等の画像欠陥の発生が見られ、特に耐久後半に顕著に影響が出る。
【0053】
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
【0054】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0055】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
【0056】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0057】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0058】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0059】
本発明における磁性トナー粒子の比表面積は、脱ガス装置バキュプレップ061(マイクロメソティック社製)、BET測定装置ジェミニ2375(マイクロメソティック社製)等公知の装置を用いてBET比表面積多点法により比表面積を求めた。測定の概略は、操作マニュアルに記載されており、以下の通りである。
【0060】
空のサンプルセルの質量を測定した後、測定試料を例えば2g充填する。さらに、脱ガス装置に、試料が充填されたサンプルセルをセットし、室温で24時間脱ガスを行う。脱ガス終了後、サンプルセル全体の質量を測定し、空サンプルセルとの差から試料の正確な質量を算出する。次に、BET測定装置のバランスポートおよび分析ポートに空のサンプルセルをセットする。所定の位置に液体窒素の入ったデュワー瓶をセットし、飽和蒸気圧(P0)測定コマンドにより、P0を測定する。P0測定終了後、分析ポートに脱ガス調製されたサンプルセルをセットし、サンプル質量およびP0を入力後、BET測定コマンドにより測定を開始する。後は自動でBET比表面積が算出される。
【0061】
以上述べてきたように、感光体表面層に存在する活性の高い部位を少なく、均一に制御した感光体とトナーの形状をコントロールすることで、感光体との接触面積、接触機会を均一に制御したトナーの両者を併せ持つことで初めて上記課題を解決することが出来る。
【0062】
本発明の磁性トナーは、平均円形度が0.930以上0.970以下、より好ましくは0.930以上0.955以下であることが良い。平均円形度が0.930未満の場合、トナー粒子1個あたりの感光体との接触点が増加する傾向があり、感光体表面の反応性に対する影響を受けやすくなる。このような状態で転写ニップ内に転写バイアスを印可すると、トナーを均一に転写材に転写させることが困難になる傾向がある。平均円形度が0.970よりも大きい場合、トナー粒子1個あたりの感光体との接触点が減少する傾向がある。その結果、感光体表面の影響は受けにくいものの、厚紙と薄紙での転写性が大きく変わり、特に厚紙での画像欠陥が発生する可能性がある。
【0063】
本発明の平均円形度とは、画像処理解像度512×512画素(1画素あたり0.37μm×0.37μm)のフロー式粒子像測定装置によって計測された円形度を、0.200乃至1.000の円形度範囲に800分割し解析されたトナーの平均円形度のことをいう。
【0064】
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
【0065】
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
【0066】
円形度C=2×(π×S)1/2/L
【0067】
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200乃至1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
【0068】
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
【0069】
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0070】
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
【0071】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0072】
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0073】
本発明に使用される結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン;ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエ−テル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂。
【0074】
本発明においては、トナーの形状を効果的に制御するという点で、過粉砕が起こりにくいポリエステル樹脂,あるいは粉砕性を制御しやすい、ポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂が好ましい。
【0075】
本発明に用いられるポリエステル樹脂の成分は以下の通りである。
【0076】
2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、2、3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:
【0077】
【化1】

(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0乃至10である。)
および式(2)で示されるジオール類。
【0078】
【化2】

【0079】
これら中でも、トナー粒子内の帯電制御の点で脂肪族アルコールが好ましく、特にネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0080】
2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が上げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸の如きアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル。特にテレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0081】
さらに、本発明に用いられるハイブリッド樹脂のポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットの混合比は50/50質量比以上であることが好ましい。ポリエステルユニットが50質量%より少ない場合には過粉砕が起こりやすくなり、トナーの形状が制御しにくくなる傾向がある。
【0082】
また、該結着樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPCによるピーク分子量Mptが5000以上10000以下、重量平均分子量Mwtが5000以上300000以下、重量平均分子量Mwtと数平均分子量Mntとの比Mwt/Mntが5以上50以下であることが好ましい。Mpt、Mwtが小さく分布がシャープである場合には、高温オフセットが発生しやすい。また、Mpt、Mwtが大きく分布がブロードである場合には、低温定着性が低下する。
【0083】
また、該結着樹脂のガラス転移温度は、定着性及び保存性の観点から45以上60℃以下、より好ましくは45以上58℃以下が良い。
【0084】
また、該結着樹脂のフローテスターによる軟化温度が120乃至150℃、より好ましくは125℃乃至145℃であることが、トナーの形状を制御する上で好ましい。
【0085】
また、これらの樹脂は軟化温度の異なる2種類の樹脂を混合して使用しても良い。
【0086】
以下に本発明で用いられる結着樹脂中のポリエステルユニットに用いられるモノマーについて説明する。
【0087】
該ポリエステル樹脂に用いられる脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、及びこれらの誘導体及びそれらの酸無水物が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール。
【0088】
3価以上の多価カルボン酸またはその無水物としては以下のものが挙げられる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物又は低級アルキルエステル。3価以上の多価アルコールとしては、1,2,3−プロパントリオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールが挙げられる。好ましくは1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及びその無水物である。
【0089】
次に結着樹脂に用いられる2価のアルコール成分としては、前述の脂肪族ジオールの他に水素化ビスフェノールA、又は下記式(A)で示されるビスフェノール誘導体、及び下記式(B)で示されるジオール類が挙げられる。
【0090】
【化3】

(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2乃至10である。)
【0091】
【化4】

【0092】
2価のカルボン酸としては、前述の脂肪族ジカルボン酸の他にフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如き芳香族ジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。
本発明の結着樹脂に用いられるビニル系共重合ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては次のようなスチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーが挙げられる。
【0093】
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体。
【0094】
アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸及びアクリル酸エステル類や、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸及びそのエステル類や、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体。
【0095】
さらに、ビニル系共重合ユニットのモノマーとしては、以下のものが挙げられる。2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシル基を有するモノマー。
【0096】
ビニル系共重合ユニットには、ビニル重合が可能な種々のモノマーを必要に応じて併用することができる。このようなモノマーとしては、以下のものが挙げられる。エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸の酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー。
【0097】
また、前記ビニル系共重合ユニットは、必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体であってもよい。架橋性モノマーとしては以下のものが挙げられる。芳香族ジビニル化合物、アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、ポリエステル型ジアクリレート類、及び多官能の架橋剤。
【0098】
芳香族ジビニル化合物としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられる。
【0099】
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの。
【0100】
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、以下のものが挙げられる。ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの。
【0101】
芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、以下のものが挙げられる。ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの。ポリエステル型ジアクリレート類としては、商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
【0102】
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート。
【0103】
これらの架橋性モノマーは、他のモノマー成分100質量%に対して、0.01以上10質量%以下(さらに好ましくは0.03以上5質量%以下)用いることができる。またこれらの架橋性モノマーのうち、定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)や、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0104】
前記ビニル系共重合ユニットは、重合開始剤を用いて製造された樹脂であっても良い。これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05以上2質量部以下で用いるのが好ましい。
【0105】
このような重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−カーバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロビルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート。
【0106】
本発明における結着樹脂としてより好ましく用いられるハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニット及びビニル系共重合ユニットが直接又は間接的に化学的に結合している樹脂である。ハイブリッド樹脂を得る方法としては、ポリエステルユニットの原料モノマーとビニル系共重合ユニットの原料モノマーを同時に、もしくは順次反応させることにより得ることができる。
【0107】
また、本発明で用いられる磁性酸化鉄は795.8kA/m印加での磁気特性が抗磁力1.6以上12.0kA/m以下飽和磁化、50以上150Am2/kg以下(好ましくは50以上100Am2/kg以下)、残留磁化2以上20Am2/kg以下のものが好ましい。磁性酸化鉄の磁気特性は、25℃,外部磁場769kA/mの条件下において振動型磁力計、例えばVSM P−1−10(東英工業社製)を用いて測定することができる。
【0108】
また、本発明の磁性酸化鉄の個数平均粒子径としては、0.05以上0.60μm以下が好ましく、更に好ましくは0.10以上0.40μm以下が良い。
【0109】
また、本発明の磁性酸化鉄はトナー粒子中への微分散性を向上させる目的で、製造時のスラリーにせん断をかけ、磁性酸化鉄を一旦ほぐす処理を施すことが好ましい。
【0110】
本発明においてトナーに含有させる磁性酸化鉄の量は、トナー中に25以上45質量%以下が好ましく、より好ましくは30以上45質量%以下である。
【0111】
本発明においては、トナーに離型性を与えるために必要に応じてワックスを用いることができ、該ワックスとしては、トナー中での分散のしやすさ、離型性の高さから、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましく用いられるが、必要に応じて一種または二種以上のワックスを、少量併用してもかまわない。例としては次のものが挙げられる。
【0112】
酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの)、また、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;また、ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、また、植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0113】
本発明において特に好ましく用いられる離型剤としては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。このような脂肪族炭化水素系ワックスとしては、例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合し、又は低圧下でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス及びそれを水素添加して得られる合成炭化水素ワックス;これらの脂肪族炭化水素系ワックスをプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別したもの;が挙げられる。
【0114】
前記脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、例えば、金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレン等のアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素;が挙げられる。このような炭化水素の中でも、本発明では、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であることが好ましく、特にアルキレンの重合によらない方法により合成された炭化水素がその分子量分布からも好ましい。
【0115】
使用できる具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精蝋株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等があげられる。
【0116】
該離型剤を添加するタイミングは、トナー製造中の溶融混練時において添加しても良いが結着樹脂製造時であっても良く、既存の方法から適宜選ばれる。また、これらの離型剤は単独で使用しても併用しても良い。
【0117】
該離型剤は結着樹脂100質量部に対して、1乃至20質量部添加することが好ましい。1質量部未満の場合は望まれる離型効果が十分に得られず、20質量部を超える場合はトナー中での分散も悪く、感光体へのトナー付着や、現像部材・クリーニング部材の表面汚染などが起こり、トナー画像が劣化するなどの問題を引き起こし易くなる。
【0118】
本発明のトナーには、その帯電性を安定化させるために電荷制御剤を用いることができる。電荷制御剤は、その種類や他のトナー粒子構成材料の物性等によっても異なるが、一般に、トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1乃至10質量部含まれることが好ましく、0.1乃至5質量部含まれることがより好ましい。このような電荷制御剤としては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効で、その例としては、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩;が挙げられる。その他にも、トナーを負帯電性に制御するものとしては、例えば芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩や無水物;エステル類やビスフェノール等のフェノール誘導体;等が挙げられる。
【0119】
使用できる具体的な例としては、Spilon Black TRH、T−77、T−95、TN−105(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、E−84、E−88(オリエント化学社)があげられ、また、電荷制御樹脂も用いることができ、上述の電荷制御剤と併用することもできる。
【0120】
また本発明のトナーにおいては、無機微粉末としてトナー粒子表面への流動性付与能が高い、一次粒子の個数平均粒径のより小さいBET比表面積が50m2/g以上300m2/g以下の流動性向上剤を使用することを特徴とする。該流動性向上剤としては、磁性トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものならば使用可能である。例えば、以下のものが挙げられる。フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、それらシリカをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、又はシリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ。好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、反応式は次の様なものである。
【0121】
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
【0122】
また、この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタンの如き他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって得られたシリカと他の金属酸化物の複合微粉体でも良い。その粒径は、平均の一次粒径として、0.001μm以上2μm以下の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.002μm以上0.2μm以下の範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。
【0123】
さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることが好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって滴定された疎水化度が30以上80以下の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
【0124】
疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。そのような有機ケイ素化合物としては、以下のものが挙げられる。ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1−ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0125】
該無機微粉末は、シリコーンオイル処理されても良く、また、上記疎水化処理と併せて処理されても良い。
【0126】
好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30mm2/s以上1000mm2/s以下のものが用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが特に好ましい。
【0127】
シリコーンオイル処理の方法としては、以下の方法が挙げられる。シランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合する方法;ベースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法;あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法。シリコーンオイル処理シリカは、シリコーンオイルの処理後にシリカを不活性ガス中で温度200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し表面のコートを安定化させることがより好ましい。
【0128】
好ましいシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
【0129】
本発明においては、シリカをあらかじめ、カップリング剤で処理した後にシリコーンオイルで処理する方法、または、シリカをカップリング剤とシリコーンオイルで同時に処理する方法によって処理されたものが好ましい。
【0130】
無機微粉末は、トナー粒子100質量部に対して0.01質量部以上8質量部以下、好ましくは0.1質量部以上4質量部以下使用するのが良い。
【0131】
本発明のトナーには、必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラー定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
【0132】
滑剤としては、ポリ弗化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。中でもポリフッ化ビニリデン粉末が好ましい。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。これらの外添剤はヘンシェルミキサー等の混合機を用いて十分混合し本発明のトナーを得ることができる。
【0133】
本発明のトナーを作製するには、結着樹脂、着色剤、その他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後粉砕及び分級を行い、更に必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合し、本発明のトナーを得ることが出来る。
【0134】
その中でもトナー形状制御のために、粉砕あるいは分級後に連続的に機械的衝撃力を加える表面処理装置内を通過させる表面処理工程を有することが好ましい。
【0135】
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0136】
本発明のトナーに係る物性の測定方法は以下に示す通りである。後述の実施例もこの方法に基づいている。
【0137】
[樹脂の軟化点測定方法]
トナーの軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行なう。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
【0138】
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
【0139】
測定試料は、約1.0gのトナーを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
【0140】
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード :昇温法
開始温度 :50℃
到達温度 :200℃
測定間隔 :1.0℃
昇温速度 :4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間 :300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ :1.0mm
【0141】
[樹脂のガラス転移温度(Tg)及びワックスの融点の測定]
ワックスおよびトナーの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
【0142】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0143】
具体的には、トナー約10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30乃至200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明のトナーのDSC測定における吸熱曲線の最大吸熱ピークとする。また、この昇温過程で、温度40℃乃至100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度Tgとする。
【0144】
<磁性酸化鉄粒子の磁気特性の測定>
東英工業製振動試料型磁力計VSM−P7を使用し、試料温度25℃、外部磁場795.8kA/mにて測定した。
【0145】
<磁性酸化鉄粒子の平均一次粒子径の測定>
平均一次粒子径は走査型電子顕微鏡(倍率40000倍)で磁性酸化鉄粒子を観察し、200個の粒子のフェレ径を計測し個数平均粒子径を求める。本実施例においては、走査型電子顕微鏡としては、S−4700(日立製作所製)を用いた。
【0146】
以下に、本発明における転写工程について図2の概略図を元に説明する。
【0147】
無端状弾性転写ベルト2120は、転写材の搬送方向にほぼ直交する方向に互いに並行に配設された2本以上のローラ(図2では2本のローラ、駆動ローラ2130、従動ローラ2140)により支張されており、図示しない駆動モータにより矢印の方向へ回転駆動される。無端状弾性転写ベルト2120は、転写材2170を矢印の方向へ搬送しながら感光体2110との当接部位(すなわち転写ニップ部)において、感光体2110上のトナーを転写材2170上に圧接条件下のもとで転写する。
【0148】
本発明において、無端状弾性転写ベルト2120は、感光体2110との当接部位において無端状弾性転写ベルト2120側から適度の押圧で感光体側へ圧接される事が好ましい。即ち、図2に示すように感光体2110表面に対する無端状弾性転写ベルト2120の侵入量iが、感光体2110の直径dに対し0%<i≦5%の範囲である必要がある。その結果、転写ニップ間でのトナーと感光体の接触の仕方を制御することが容易となる。このとき、感光体上のトナー像のトナー層形成状態及び帯電状態を一定の状態に保つことが、転写ニップ間でのトナーと感光体の相互作用を制御するためには非常に重要である。感光体上のトナー像の状態を一定に保つためには、現像スリーブ上のトナー層の帯電状態を制御することが好ましく、現像スリーブの算術平均表面粗さRaを0.3μm以上1.5μm以下にすることが好ましい。
【0149】
無端状弾性転写ベルト2120の材質としては、クロロプレーンゴム、ウレタンゴム、EPDMゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等、吸湿性が少なく抵抗値が安定した材質から選択することが好ましい。この場合、基材を有する構成がより好ましい。
無端状弾性転写ベルトには、転写バイアスを印加して転写電荷を付与する転写電荷付与手段としてのバイアスローラ2150、及びバイアスローラ2150に電圧を印加する高圧電源2160が付帯する。バイアスローラ2150は、無端状弾性転写ベルト2120の回転方向において転写ニップ部のやや下流側の位置で無端状弾性転写ベルト2120の内側へ接触するように設けられている。このバイアスローラ2150は、無端状弾性転写ベルトに対して感光体2110上に現像されたトナーの帯電極性と逆極性の電荷を付与するための接触電極を構成している。本発明における実施の形態では、トナーの帯電極性と逆極性側に絶対値で6kVのバイアスを印加した。尚、転写電荷付与手段としては、コロナ放電を利用した帯電器やブラシ状の帯電器を用いても良い。また、転写電荷付与手段の設置位置は、転写ニップ部に対し、無端状弾性転写ベルト回転方向の下流側に限られるものではなく、上流方向に設置しても良い。
【0150】
尚、図2に示す転写工程の概略図は、説明の簡略化のため、無端状弾性転写ベルト2120を感光体2110に対して常に圧接させる構造とした。さらに具体的な実施形態としては、転写を行う時のみ、つまり転写材が感光体と接する時のみ転写ベルトを感光体側へ圧接しニップを形成するようないわゆる離接機能を持たせたものも好ましい。本実施形態としては、画像形成装置が起動動作中、及び停止動作中の間(つまり装置本体のプロセススピード(=感光体表面速度)が不安定な間)を除き、無端状弾性転写ベルト2120を感光体2110側に圧接させた。また、本実施形態において、無端状弾性転写ベルトの周速度は感光体の周速度と同じ設定とした。
【実施例】
【0151】
以上本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下実施例にもとづいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、これによって本発明の実施の態様がなんら限定されるものではない。実施例中の部数は質量部である。
【0152】
<結着樹脂B−1の製造例>
シクロヘキサンジメタノール :40.8mol%
ネオペンチルグリコール :18.5mol%
テレフタル酸 :33.8mol%
イソフタル酸 :6.9mol%
上記のモノマーをエステル化触媒とともに5リットルオートクレーブに仕込み、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管,温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で重縮合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して軟化点138℃の結着樹脂B−1を得た。
【0153】
<結着樹脂B−2の製造例>
プロポキシ化ビスフェノールA(2.2mol付加物) :25mol%
エトキシ化ビスフェノールA(2.2mol付加物) :23.5mol%
テレフタル酸 :34.5mol%
無水トリメリット酸 :5.5mol%
アジピン酸 :6.0mol%
アクリル酸 :4mol%
フマル酸 :1.0mol%
上記ポリエステルモノマーをエステル化触媒と共に4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて135℃で攪拌する。本発明において所望の架橋構造を得るために本製造例においては反応の初期と後期にフマル酸を分割添加した。そこに、ビニル系共重合モノマー(スチレン:85mol%と2エチルヘキシルアクリレート:13mol%)と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2mol%及びフマル酸:0.5mol%(ポリエステルモノマーとして)を混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。その後、135℃で5時間反応した後、重合時の過剰に高い反応温度により両反応性物質から生じるゲル化を抑制するために重縮合時の反応温度を210℃に昇温して縮重合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して軟化温度145℃の結着樹脂B−2を得た。
【0154】
<結着樹脂B−3の製造例>
プロポキシ化ビスフェノールA(2.2mol付加物) :25.0mol%
エトキシ化ビスフェノールA(2.2mol付加物) :25.0mol%
テレフタル酸 :36.2mol%
無水トリメリット酸 :13.8mol%
上記のモノマーをエステル化触媒とともに5リットルオートクレーブに仕込み、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管,温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で重縮合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して軟化温度120℃の結着樹脂B−3を得た。
【0155】
<結着樹脂B−4の製造例>
結着樹脂B−3の処方を反応時間を調整することで、軟化温度150℃の結着樹脂B−4を得た。
【0156】
<結着樹脂(B−5L)の製造例>
四つ口フラスコ内にキシレン300部を投入し、攪拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、昇温して還流させる。
【0157】
この還流下で、スチレン76部,アクリル酸−n−ブチル24部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド(開始剤1)2部の混合液を4時間かけて滴下した後、2時間保持し重合を完了し、低分子量重合体溶液(B−5L)を得た。
【0158】
<結着樹脂(B−5H)の製造例>
四つ口フラスコ内にキシレン300部を投入し、攪拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、昇温して還流させる。
【0159】
この還流下で、まず、スチレン73部,アクリル酸−n−ブチル27部,ジビニルベンゼン0.005部及び2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(開始剤2,半減期10時間温度;92℃)0.8部の混合液を4時間かけて滴下する。全てを滴下した後、2時間保持し重合を完了し、結着樹脂(B−5H)溶液を得た。
【0160】
<結着樹脂B−5の製造>
四つ口フラスコ内に、上記低分子量成分(B−5L)のキシレン溶液200部(低分子量成分30部相当)を投入し、昇温して還流下で攪拌する。一方、別容器に上記高分子量成分(B−5H)溶液200部(高分子量成分70部相当)を投入し、還流させる。上記低分子量成分(B−5L)溶液と高分子量成分(B−5H)溶液を還流下で混合した後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷却、固化後粉砕し軟化温度135℃の結着樹脂B−5を得た。
【0161】
<結着樹脂B−6の製造>
四つ口フラスコ内に、上記低分子量成分(B−5L)のキシレン溶液300部(低分子量成分45部相当)を投入し、昇温して還流下で攪拌する。一方、別容器に上記高分子量成分(B−5H)溶液157部(高分子量成分55部相当)を投入し、還流させる。上記低分子量成分(B−5L)溶液と高分子量成分(B−5H)溶液を還流下で混合した後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷却、固化後粉砕し軟化温度119℃の結着樹脂B−6を得た。
【0162】
<結着樹脂B−7の製造例>
結着樹脂B−3の処方を反応時間を調整することで、軟化温度153℃の結着樹脂B−7を得た。
【0163】
<現像スリーブS−1の製造>
下記原材料を準備した。
・レゾール型フェノール樹脂 :300部
(J−325(大日本インキ化学工業株式会社製;商品名)、メタノール40%含有; 固形分180部)
・黒鉛化粒子 :54部
(石炭系重質量油を熱処理することで得られたメソカーボンマイクロビーズを、洗浄・乾燥した後に、アトマイザーミルで機械的に分散を行い、窒素雰囲気下において800℃で一次加熱処理を行い炭化させた。次いで、アドマイザーミルで二次分散を行った後、窒素雰囲気下において2800℃で熱処理し、更に分級して作製した。得られた黒鉛化粒子の体積平均粒径4.5μm、黒鉛化度P(002)0.28)
・カーボンブラック :6部
(トーカブラック#5500(東海カーボン株式会社製;商品名)、1次粒子径25n m)
・メタノール :240部
・凹凸形成粒子(ニカビーズPC1020(日本カーボン社製) :10部
【0164】
まず、レゾール型フェノール樹脂溶液(メタノール40%含有)100部に黒鉛化粒子を54部、カーボンブラックを6部、凹凸形成粒子を10部及びメタノールを80部添加した。さらに、直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として加えて横型サンドミルにて分散して塗料中間体を得た。この塗料中間体に、残りのレゾール型フェノール樹脂溶液(メタノール40%含有)200部とメタノール160部を加え、直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として加えて縦型サンドミルにて分散して導電性樹脂層形成用塗工液(樹脂層塗工液)を得た。
【0165】
前記樹脂層塗工液を用いてエアースプレー法により、外径24.5mmφに研削加工したアルミニウム製基体に導電性樹脂層を形成した。このときの塗工領域は少なくとも現像領域に導電性樹脂層が形成されるように行った。続いて熱風乾燥炉により150℃、30分間加熱して導電性樹脂層を硬化させて現像スリーブ1を作製した。このとき作製した現像スリーブ1の導電性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)は0.9μmであり、導電性樹脂層の層厚は8.2μmであった。
【0166】
<現像スリーブS−4,6の製造>
現像スリーブS−1を#3000の研磨テープにより表面処理を施し算術平均粗さ(Ra)を調整し現像スリーブ4及び6を作製した。このとき作製した現像スリーブの導電性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)はスリーブ4が0.4μmでありスリーブ6が0.2μmであった。
【0167】
<現像スリーブS−2,3,5の製造>
現像スリーブS−1の製造方法と同様にスリーブ2,3,5を作製した。このとき、凹凸形成粒子(ニカビーズPC1020(日本カーボン社製)の添加量を15、20、30部と振ることにより算術平均粗さ(Ra)を調整した。このとき作製した現像スリーブの導電性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)はスリーブ2が1.2μmでありスリーブ3が1.5μm、スリーブ5が1.7μmであった。
【0168】
<感光体Dr−1の製造>
図1に示す、周波数としてRF帯の高周波電源を用いたプラズマ処理装置を用いて、円筒状基体(直径80mm、長さ358mm、厚さ3mmの鏡面加工を施した円筒状のアルミニウム基体)上に下記表1に示す条件でプラス帯電a−Si感光体を作製した。その際、電荷注入阻止層、光導電層、表面層の順に成膜を行い、表面層作製時の高周波電力、SiH4流量及びCH4流量を下記表2に示す条件とした。また、電子写真感光体の作製本数は、各成膜条件で2本ずつ作製した。作製した各成膜条件2本ずつの電子写真感光体のうち1本の電子写真感光体を用いて、珪素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和(以下、「Si+C原子密度」と称する)、珪素原子の原子数と炭素原子の原子数と水素原子の原子数の和に対する水素原子の原子数の比(以下、「H原子比」と称する)、珪素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比(以下、C/(Si+C)と称する)を測定しその結果を表3に示す。表3中の原子密度の単位は「×1022原子/cm3」である。そして、もう1本の電子写真感光体により、画像評価を行った。
【0169】
<感光体Dr−2乃至12の製造>
感光体Dr−1の製造と同様に表1、2に示す条件で感光体Dr−2乃至12を製造した。表3に原子密度等の分析結果を示す。
【0170】
[実施例1]
・結着樹脂B−1 100部
・磁性酸化鉄粒子(平均粒径0.15μm、Hc=11.5kA/m、σs=88Am2 /kg、σr=14Am2/kg) 70部
フィッシャートロプシュワックス(融点:101℃) 4部
荷電制御剤−b−1 2部
【0171】
【化5】

上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。
【0172】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、図3に示す機械式粉砕機301で微粉砕し、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級した。その後図4に示す表面改質装置にて表面改質し重量平均粒径(D4)7.1μmの負帯電性の磁性トナー粒子を得た。
【0173】
本実施例では、機械式粉砕機301の回転子314及び固定子310の粉砕面を粗面化処理することによりその表面粗さ、中心線粗さRaを6.0μm、最大粗さRyを32.4μm、十点平均粗さを21.5μmとし、窒化により耐摩耗処理を行った。また、回転子314の周速を117m/s、回転子314と固定子310の間隙を1.3mmとして粉砕した。尚、この際、出口温度T2は45℃であった。表面処理の具体的な方法としては、各々のローターを周速115m/sで回転させ、ブロア風量15.0m3に吸引した状態で、投入量を20kgとし、サイクルタイムを30secとして表面処理を行った。また、この時の装置の排気出口気流温度は45℃であった。
【0174】
磁性トナー粒子100部に対し、無機微粉末として、疎水性シリカ微粉体1[BET比表面積150m2/g、シリカ微粉体100部に対しヘキサメチルジシラザン(HMDS)30部及びジメチルシリコンオイル10部で疎水化処理]を1.0部と研磨剤としてチタン酸ストロンチウム微粉体(D50:1.0μm)3.0部を外添混合し目開き150μmのメッシュで篩い、トナーT−1を得た。トナーの物性を表3に記す。
【0175】
市販のデジタル複写機iR5075(75cpm、a−Si感光体ドラム搭載、磁性一成分ジャンピング現像方式採用、キヤノン(株)社製)の転写装置周辺部を図2に示した転写ベルト型に改造した。さらに、a−Si感光体を本発明の感光体Dr−1に交換し、マシン本体のプロセススピード(=感光体ドラムの周速度)を550mm/secになるように改造し使用した。プリントスピードは110cpmとした。
【0176】
本実施例において、現像器はiR5075に搭載の現像器の現像スリーブをS−1に交換して使用した。現像条件としては、マグネットローラを内包した回転可能な現像ローラに本発明の磁性トナーを薄層にコートさせ、+150VのDCバイアス、およびVpp=1.5kV、周波数2.7kHz、Duty50%の矩形波ACバイアスを印加した。現像器の設定条件としては、磁性ドクターブレードと現像ローラとの間隔を220乃至230μmとし、現像ローラからa−Si感光体ドラム表面までの距離を220乃至230μmに設定し、非接触現像条件とした。尚、感光体ドラムの表面電位は、VDを+380乃至+420V、VLを+40乃至+60Vに設定し、現像を行った。
【0177】
転写ベルトの表層材質にはクロロプレーンゴムを用い、感光体に対する転写ベルトの侵入量iを3%に設定した。また、本実施例では、転写ベルトの周速度は感光体の周速度と同じ設定とした。
【0178】
トナーT−1を用い、23℃/50%RH環境(表5中NNと表記)、23℃/5%RH環境(表5中NLと表記)、そして30℃/80%RH環境(表5中HHと表記)の順で、画像比率4%の文字画像をA4横送りで各100,000枚連続でプリントを行う耐久試験を実施した。各耐久試験終了時に、転写中抜け、転写効率の評価を行った。尚、評価は、以下に示した指標に従い実施した。表5に結果を示す。
【0179】
<転写中抜けの評価>
各環境における耐久試験終了時に、縦横ライン共に、200μm、500μm、1mm、2mmの線幅の繰り返しで構成された8mm方眼状の升目チャートを250g/m2(A4)紙に両面プリントした。その2面目プリントの任意の10箇所を目視及びルーペ(×30)で観察し、以下に示す評価ランクに分類した。
A;転写中抜けなし
B;30倍ルーペを使った観察で、視野の一部に転写中抜けが確認される
C;目視で一部に転写中抜けが確認される
D;目視で全体的に転写中抜けが確認できる
【0180】
<転写効率の評価>
各環境、初期及び10万枚耐久後の転写性変動を評価した。転写紙としてはオフィスプランナーA4紙(坪量68g/m2)及び250g/m2(A4)紙、また、凹凸のある紙としてレザック66(151g/m2)を使用した。転写性はべた黒の感光体上の転写残トナー及び転写前トナーをポリエステルテープによりテーピングして剥ぎ取り、紙上に貼ったもののマクベス濃度からテープのみを貼ったもののマクベス濃度を差し引いた数値から計算して評価した。
A:非常に良好(90%以上)
B:良好(85%乃至90%未満)
C:普通(80%乃至85%未満)
D:悪い(80%未満)
【0181】
[実施例2乃至18、比較例1乃至7]
結着樹脂の種類、磁性酸化鉄の含有量を表3に記載の処方、表4に記載の製造条件とした他は実施例1と同様にトナーT−2を作製した。トナーの物性を表3に記す。
【0182】
また、同様に評価した結果を表5に示す。尚、用いた感光体、現像スリーブ、設定した転写ベルトの針入量は表3に記載の通りである。
【0183】
【表1】

【0184】
【表2】

【0185】
【表3】

【0186】
【表4】

【0187】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明の電子写真感光体の作製に用いられるプラズマCVD装置の一例の模式図である。
【図2】本発明の転写工程の概略図である。
【図3】本発明のトナーの粉砕工程において使用される一例の機械式粉砕機の概略断面図である。
【図4】本発明で用いた表面処理装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0189】
1100 堆積装置
1110 反応容器
1111 カソード電極
1112 導電性基体
1113 基体加熱用ヒーター
1114 ガス導入管
1115 高周波マッチングボックス
1116 ガス配管
1117 リークバルブ
1118 メインバルブ
1119 真空計
1120 高周波電源
1121 絶縁材料
1123 受け台
1200 ガス供給装置
1211〜1215 マスフローコントローラ
1221〜1225 ボンベ
1231〜1235 バルブ
1241〜1245 流入バルブ
1251〜1255 流出バルブ
1260 補助バルブ
1261〜1265 圧力調整器
2110 感光体
2120 転写ベルト
2130 駆動ローラ
2140 従動ローラ
2150 バイアスローラ
2160 高圧電源
2170 クリーニングバックアップローラ
2180 ファーブラシ
2190 転写材
3212:渦巻室
3219:パイプ
3220:デイストリビュータ
3222:バグフィルター
3224:吸引ブロワー
3229:捕集サイクロン
3241,3242: 側壁
3243,3244: 分級エッジブロック
3245: コアンダブロック
3246,3247: 分級エッジ
3248,3249: 原料供給管
3250:分級室上部壁
3251: 入気エッジ
3252,3253: 入気管
3255: 気体導入調節手段
3256,3257: 静圧計
3258,3259,3260: 排出口
3301: 機械式粉砕機
3302: 粉体排出口
3310: 固定子
3311: 粉体投入口
3312: 回転軸
3313: ケーシング
3314: 回転子
3315: 第1定量供給機
3316: ジャケット
3317: 冷却水供給口
3318: 冷却水排出口
3320: 後室
4300:ケーシング
4310:分級ローター
4320:微粉回収
4330:原料供給口
4340:ライナー(固定体)
4350:冷風導入口
4360:分散ローター(回転体)
4370:製品排出口
4380:排出弁
4390:ガイドリング(案内手段)
4400:角型ディスク
4410:第一の空間
4420:第二の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電荷像を担持するための静電荷像担持体を帯電し、帯電された静電荷像担持体に静電荷像を形成し、静電荷像を現像スリーブ上のトナーによって現像してトナー像を形成し、静電荷像担持体上のトナー像を転写搬送手段上に搬送させた転写材に当接させて転写する画像形成方法において使用されるトナーであって、
該静電荷像担持体は少なくとも光導電層と、水素化アモルファス炭化珪素で形成されている表面層とを順次積層した感光体であり、該感光体の表面層の珪素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm3以上であり、
該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄を含有する磁性トナー粒子と、少なくとも無機微粉末を有する磁性トナーであり、該磁性トナーの重量平均粒径が5.0μm以上9.0μm以下であり、該磁性トナー粒子のBET比表面積が0.90m2/g以上1.50m2/g以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
該磁性トナーの平均円形度が、0.930以上0.970以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
静電荷像を担持するための静電荷像担持体を帯電し、帯電された静電荷像担持体に静電荷像を形成し、静電荷像を現像スリーブ上のトナーによって現像してトナー像を形成し、静電荷像担持体上のトナー像を転写搬送手段上に搬送させた転写材に当接させて転写する画像形成方法において、
該静電荷像担持体は少なくとも光導電層と、水素化アモルファス炭化珪素で形成されている表面層とを順次積層した感光体であり、該感光体の表面層の珪素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和が6.60×1022原子/cm3以上であり、
該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄を含有する磁性トナー粒子と、少なくとも無機微粉末を有する磁性トナーであり、該磁性トナーの重量平均粒径が5.0μm以上9.0μm以下であり、該磁性トナー粒子のBET比表面積が0.90m2/g以上1.50m2/g以下であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項4】
該現像スリーブの算術平均表面粗さRaが0.3μm以上1.5μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
該転写搬送手段は転写ベルトであり、該転写ベルトが該静電荷像担持体と当接する部位において、該転写ベルトの静電荷像担持体の表面に対する侵入量iが静電荷像担持体の直径dの0%<i≦5%であることを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
該感光体の表面層の珪素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比が0.61以上0.75以下であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
該感光体の表面層において、珪素原子の原子数、炭素原子の原子数及び水素原子の原子数の和に対する水素原子の原子数の比が0.30以上0.45以下であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−32592(P2010−32592A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191895(P2008−191895)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】