説明

トナー用ポリエステル樹脂の製造方法

【課題】 低温定着性と耐ブロッキング性に優れたトナー用ポリエステル樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】 工程[1] 芳香族ジカルボン酸(x1)を含有するポリカルボン酸成分(x)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y1)を含有するポリオール成分(y)とを、触媒存在下で、常圧又は加圧下150〜240℃でエステル化を行い、さらに減圧下150〜240℃でエステル化を行い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるTHF可溶分のピークトップ分子量が1000〜7000であるポリエステル前駆体(a)を製造する工程、
工程[2] (a)に、3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(x3)を、常圧、減圧、又はその両方下で150〜240℃で反応させ、反応後、15℃/分以上の速度で30℃以下まで冷却する工程、
を有するトナー用ポリエステル樹脂(A)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナー用ポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等における画像の定着方式として一般的に採用されている熱定着方式用の電子写真用トナーバインダーは、高い定着温度でもトナーが熱ロールに融着せず(耐ホットオフセット性)、定着温度が低くてもトナーが定着できること(低温定着性)が要求されている。
トナーの低温定着性能を向上させる目的で、バインダーとしてポリエステル樹脂を用いることが従来より知られている。また、定着性改良の目的で、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合反応させて得られたポリエステルを5時間より長い時間をかけて40℃まで冷却する冷却工程を含むトナー用ポリエステル樹脂の製造方法が提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−108251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような冷却工程は工程時間が長くなるため、生産性において不利である。また、近年、複写機・プリンターのカラー化・高速・高信頼性・コンパクト・低コスト・省エネがますます求められている。特に、環境負荷低減(省エネ)の要求から、トナーのさらなる低温定着性と耐ブロッキング性の両立に対する対応が急務である。
本発明の目的は、長時間にわたる冷却工程を必要とせず、工程中の温度、圧力、樹脂の分子量などを最適化することで、低温定着性と耐ブロッキング性に優れたトナーを与えるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
工程[1] 芳香族ジカルボン酸(x1)を含有するポリカルボン酸成分(x)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y1)を含有するポリオール成分(y)とを、触媒存在下で、常圧又は加圧下150〜240℃でエステル化を行い、さらに減圧下150〜240℃でエステル化を行い、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるピークトップ分子量が1000〜7000であるポリエステル前駆体(a)を製造する工程、
工程[2] ポリエステル前駆体(a)に、3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(x3)を、常圧、減圧、又はその両方下で150〜240℃で反応させ、反応後、20℃/分以上の速度で30℃以下まで冷却する工程、
を有するトナー用ポリエステル樹脂(A)の製造方法;
並びに、上記の製造方法で得られたトナー用ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーと着色剤、並びに必要により、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤から選ばれる1種以上の添加剤を含有するトナー組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法により得られたトナー用樹脂をトナーバインダーとして用いることにより、耐ブロッキング性の良好な、低温定着性および耐ホットオフセット性(定着温度幅)が格段に優れたトナーが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂(A)の製造方法は、前記の工程[1]〜[2]を有する。
工程[1]で用いるポリカルボン酸成分(x)は、芳香族ジカルボン酸(x1)を必須成分として含有する。(x)中には、必要により、脂肪族ジカルボン酸(x2)および/または3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(x3)を含有してもよい。
【0008】
芳香族ジカルボン酸(x1)としては、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル、イソフタル、テレフタル、ナフタレンジカルボン酸等)、およびこれらのエステル形成性誘導体〔低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜4:メチル、エチル、n−プロピル等)エステル、および酸無水物、以下のエステル形成性誘導体も同様。〕等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これらのうち好ましいものは、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸であり、さらに好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、および/またはそれらの低級アルキル(アルキル基の炭素数:1〜4)エステルである。
【0009】
必要により用いる脂肪族ジカルボン酸(x2)としては、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(例えばコハク、アジピン、およびセバシン酸);炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔例えばダイマー酸(2量化リノール酸)〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(例えば、ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン、フマル、シトラコン、およびメサコン酸);およびこれらのエステル形成性誘導体〔低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜4:メチル、エチル、n−プロピル等)エステル、および酸無水物〕;等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルカンジカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体であり、さらに好ましくは、アジピン酸である。
【0010】
工程[1]で必要により用い、工程[2]で用いる3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(x3)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット、およびピロメリット酸等)、炭素数6〜36の脂肪族ポリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)、およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これらのうち好ましいものはトリメリット酸およびピロメリット酸、並びにこれらのエステル形成性誘導体である。なお、工程[2]において好ましいものは、無水トリメリット酸、および無水ピロメリット酸である。
【0011】
工程[1]におけるポリカルボン酸成分(x)中の芳香族ジカルボン酸(x1)の含有量は、保存安定性の観点から、好ましくは85〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%である。
また、芳香族ジカルボン酸(x1)中のテレフタル酸および/またはその低級アルキルエステルと、イソフタル酸および/またはその低級アルキルエステルのモル比は、樹脂の機械的強度の観点から、好ましくは20:80〜80:20、さらに好ましくは30:70〜70:30である。
【0012】
工程[1]で用いるポリオール成分(y)は、炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y1)を必須成分として含有する。(y)中には、必要により、(y1)以外のジオール(y2)および/または3〜8価もしくはそれ以上のポリオール(y3)を含有してもよい。
炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y1)としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、および1,6−ヘキサンジオール、炭素数4〜10のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これらのうち好ましいものは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびこれらの併用であり、さらに好ましくはエチレングリコールである。
【0013】
(y1)以外のジオール(y2)としては、炭素数11〜36のアルキレングリコール(1,12−ドデカンジオール等);炭素数11〜36のアルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレン〔アルキレン基の炭素数2〜4(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)、以下のポリオキシアルキレン基も同じ〕エーテル〔オキシアルキレン単位(以下AO単位と略記)の数1〜30〕;および2価フェノール〔単環2価フェノール(例えばハイドロキノン)、およびビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)〕のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0014】
3〜8価もしくはそれ以上のポリオール(y3)としては、炭素数3〜36の3〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、およびジペンタエリスリトール;糖類およびその誘導体、例えばショ糖およびメチルグルコシド);上記脂肪族多価アルコールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(AO単位の数1〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等、平均重合度3〜60)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0015】
これらの(y2)および(y3)うち好ましいものは、3〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコールおよびノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)であり、特に好ましいものはノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)である。
【0016】
ポリオール成分(y)中の炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y1)の割合〔重縮合反応中に系外に留去されるものは除く、以下同様。〕は、機械的強度の観点から、好ましくは85〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%である。
特に、(y1)中のエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールの含有量は機械的強度の観点から、好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%、とくに好ましくは100モル%である。
【0017】
また、ポリカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)との合計〔工程[2]で用いる(x3)を含める。〕中の、3〜6価もしくはそれ以上ののポリカルボン酸(x3)および/または3〜8価もしくはそれ以上の多価アルコール(y3)の割合は、0.1〜15モル%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜14モル%である。0.1モル%以上ではトナーの保存性が良好となり、15モル%以下ではトナーの帯電特性が良好となる。
【0018】
工程[1]における反応温度は、常圧または加圧下の反応時、およびそれに続く減圧下の反応時共、エステル化反応の促進と熱分解反応の防止の観点から、通常150〜240℃、好ましくは170〜230℃、さらに好ましくは180℃〜220℃である。また、工程[1]初期に常圧又は加圧下にて反応を行う際の圧力は、反応副生物である水の除去と原料のポリオール成分の蒸発による枯渇防止の観点から、好ましくは100(常圧)〜600kPa、さらに好ましくは、反応温度が200℃以下で常圧〜400kPa、反応温度が200〜220℃で200〜500kPa、反応温度が220〜240℃で300〜600kPaである。工程[1]の減圧時の圧力は、反応副生物である水の除去を促すため、好ましくは10kPa以下、さらに好ましくは5kPa以下、とくに好ましくは0.1〜2kPa以下である。
また、常圧または加圧下の反応時間は、好ましくは2〜15時間であり、減圧下の反応時間は、好ましくは1〜12時間である。
【0019】
工程[1]で得られるポリエステル前駆体(a)の酸価は、製品の品質安定化のため、好ましくは5mgKOH/g以下、さらに好ましくは2mgKOH/g以下である。
本発明におけるポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
なお、試料に架橋にともなう溶剤不溶解分がある場合は、以下の方法で溶融混練後のものを試料として用いる。
混練装置 : 東洋精機(株)製 ラボプラストミル MODEL4M150
混練条件 : 130℃、70rpmにて30分
【0020】
工程[1]で得られるポリエステル前駆体(a)のTHF可溶分の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるピークトップ分子量は、低温定着性および粉砕性の観点から、通常1000〜7000、好ましくは1500〜6500、さらに好ましくは2000〜3000である。
上記および以下においてポリエステル樹脂のTHF可溶分の分子量は、以下の条件で測定される。
装置(一例) :東ソー製 HLC−8120
カラム(一例):TSKgelGMHXL(2本)
TSKgelMultiporeHXL−M(1本)
測定温度 :40℃
測定溶液 :0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 :100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :TSK標準ポリスチレン(東ソー製)
分子量=4480000、2890000、1090000、355
000、190000、96400、37900、1810
0、9100、2800、1050、500の計12点
【0021】
工程[2]における反応温度は、エステル化反応の促進と熱分解反応の防止の観点から、通常150〜240℃、好ましくは170〜230℃、さらに好ましくは180℃〜220℃である。工程[2]においては、常圧、減圧またはその両方下で反応を行うが、減圧時の圧力は、工程[1]と同様である。
また、工程[2]の反応時間は、好ましくは2〜48時間である。
また、反応後は、余剰なエステル化反応および結晶化を抑制し製品の品質を安定化させるため、通常15℃/分以上、好ましくは20℃/分以上で30℃以下まで冷却する。
【0022】
工程[2]で用いる3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸成分(x3)には、未反応の酸の残留を防止し製品の品質を安定化させるため、反応性の高いポリカルボン酸無水物を用いて、常圧で無水カルボキシル基の開環反応を行った後、減圧下でエステル化反応を行うのが好ましい。
【0023】
上記の方法で重縮合してポリエステル樹脂(A)を得る際に、反応性と環境保護の点から、チタン、アンチモン、ジルコニウム、ニッケル、およびアルミニウムから選ばれる一種以上の金属を含有する重合触媒を用いるのが好ましく、チタン含有触媒を用いるのがさらに好ましい。
チタン含有触媒としては、チタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006−243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、およびそれらの分子内重縮合物等〕、および特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、およびチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等が挙げられ、中でもテレフタル酸チタン、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、およびそれらの分子内重縮合物等の使用が好ましい。
アンチモン含有触媒としては、三酸化アンチモン等が挙げられる。
ジルコニウム含有触媒としては、酢酸ジルコニル等が挙げられる。
ニッケル含有触媒としては、ニッケルアセチルアセトナート等が挙げられる。
アルミニウム含有触媒としては、水酸化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド等が挙げられる。
【0024】
触媒の添加量は、反応速度が最大になるように適宜決定することが望ましい。添加量としては、全原料に対し、好ましくは10ppm〜1.9%、さらに好ましくは100ppm〜1.7%である。添加量を10ppm以上とすることで反応速度が大きくなる点で好ましい。上記および以下において、%は、特に断りのない場合は、重量%を意味する。
【0025】
本発明の製造方法で得られるポリエステル樹脂(A)のTHF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるピークトップ分子量は、低温定着性および粉砕性および環境安定性の観点から、好ましくは2000〜10000、更に好ましくは3000〜8000、特に好ましくは4000〜6000である。
【0026】
また、ポリエステル樹脂(A)の軟化点は95〜170℃が好ましく、さらに好ましくは120〜160℃である。この範囲では耐ホットオフセット性と低温定着性のバランスが良好となる。
なお、本発明における軟化点は、次のように測定される値である。
降下式フローテスター{たとえば、(株)島津製作所製、CFT−500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)を軟化点とする。
【0027】
本発明で得られるポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、保存安定性の観点から45℃以上であることが好ましい。また、低温定着性の観点から、75℃以下、とくに65℃以下であることが好ましい。
なお、上記および以下において、Tgはセイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0028】
本発明のトナー組成物は、本発明の製造方法で得られるトナー用ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーと、着色剤、および必要により、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動化剤等の1種以上の添加剤を含有する。
【0029】
本発明のトナー組成物に含有される、本発明の製造方法により得られるトナー用ポリエステル樹脂(A)以外のトナー用樹脂としては、通常トナーバインダーとして用いられる樹脂であれば特に限定されないが、好ましくは、Tgが45〜70℃、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーのピークトップ分子量が3000〜20000、軟化点が80〜170℃である1種または2種以上のポリエステル樹脂である。
【0030】
本発明のトナー組成物に用いるトナーバインダー中の本発明で得られるポリエステル樹脂(A)の含有量は、好ましくは5〜100%、さらに好ましくは20〜100%、特に好ましくは40〜100%、最も好ましくは60〜100%である。
【0031】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンBおよびオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明の製造方法で得られるトナー用ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダー100部に対して、好ましくは1〜40部、さらに好ましくは3〜10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150部、さらに好ましくは40〜120部である。上記および以下において、部は重量部を意味する。
【0032】
離型剤としては、軟化点が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸およびこれらの混合物等が挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるものおよび熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素および/またはオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸およびその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等]および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステルおよびマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、およびサゾールワックス等が挙げられる。
【0033】
天然ワックスとしては、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックスおよびライスワックスが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、例えばトリアコンタノールが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0034】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
【0035】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末等が挙げられる。
【0036】
本発明のトナー組成物の組成比は、トナー重量に基づき、本発明の製造方法により得られるトナー用ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーが、好ましくは30〜97%、さらに好ましくは40〜95%、とくに好ましくは45〜92%;着色剤が、好ましくは0.05〜60%、さらに好ましくは0.1〜55%、とくに好ましくは0.5〜50%;添加剤のうち、離型剤が、好ましくは0〜30%、さらに好ましくは0.5〜20%、とくに好ましくは1〜10%;荷電制御剤が、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0.1〜10%、とくに好ましくは0.5〜7.5%;流動化剤が、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%、とくに好ましくは0.1〜4%である。また、添加剤の合計含有量は、好ましくは3〜70%、さらに好ましくは4〜58%、とくに好ましくは5〜50%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
【0037】
本発明のトナー組成物は、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、さらに分級することにより、粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒とした後、流動化剤を混合して製造することができる。なお、平均粒径(D50)(粉体の体積粒径分布において,ある粒子径より大きい個数が,全粉体の個数の50%をしめるときの粒子径をD50とする。)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解または分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
【0038】
本発明のトナー組成物は、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイトおよび樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリアー粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリアー粒子との重量比は、通常1/99〜100/0である。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
【0039】
本発明のトナー組成物は、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステル フィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
【実施例】
【0040】
以下実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
[チタン含有触媒の合成]
冷却管、撹拌機及び液中バブリング可能な窒素導入管の付いた反応槽中に、酢酸エチル2000部とテレフタル酸1000部を入れ、窒素にて液中バブリング下、60℃まで徐々に昇温し、チタンテトライソプロポキシド600部を滴下しながら60℃で4時間反応させスラリー状物である反応混合物を得た。反応混合物をろ紙でろ別し40℃/20kPaで乾燥させることで、チタントリイソプロポキシテレフタレートと未反応のテレフタル酸の混合物(t)(チタントリイソプロポキシテレフタレートの濃度65%)を得た。
【0042】
実施例1
[ポリエステル樹脂(A1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸278部、イソフタル酸417部、アジピン酸32部、エチレングリコール547部、重合触媒として(t)0.5部を入れ、195℃、常圧で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、195℃、1kPaの減圧下で1時間反応させ、ポリエステル前駆体(a1)を得た。ポリエステル前駆体(a1)に、無水トリメリット酸151部を加え、190℃、常圧下で1時間反応させた後、190℃、1kPaの減圧下で反応させ、軟化点が133℃となった時点で取り出した。回収されたエチレングリコールは250部であった。得られた樹脂をスチールベルト冷却機を用いて20℃/分で30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A1)とする。
(a1)のピークトップ分子量は2900、酸価は1mgKOH/g、(A1)のTgは60℃、軟化点は135℃であった。
【0043】
実施例2
[ポリエステル樹脂(A2)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸290部、イソフタル酸435部、エチレングリコール541部、重合触媒として(t)0.5部を入れ、220℃、200kPaの加圧下で窒素気流下に生成する水を留去しながら3時間反応させた後、220℃、5kPaの減圧下で2時間反応させ、ポリエステル前駆体(a2)を得た。ポリエステル前駆体(a2)に、無水トリメリット酸152部を加え、180℃、常圧下で1時間反応させた後、180℃、5kPaの減圧下で反応させ、軟化点が139℃となった時点で取り出した。回収されたエチレングリコールは285部であった。得られた樹脂をスチールベルト冷却機を用いて25℃/分で30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A2)とする。
(a2)のピークトップ分子量は2000、酸価は2mgKOH/g、(A2)のTgは62℃、軟化点は140℃であった。
【0044】
実施例3
[ポリエステル樹脂(A3)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸305部、イソフタル酸458部、エチレングリコール545部、重合触媒として(t)0.5部を入れ、200℃、300kPaの加圧下で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、200℃、10kPaの減圧下で3時間反応させ、ポリエステル前駆体(a3)を得た。ポリエステル前駆体(a3)に、無水トリメリット酸79部を加え、200℃、10kPa以下の減圧下で反応させ、軟化点が137℃となった時点で取り出した。回収されたエチレングリコールは216部であった。得られた樹脂をスチールベルト冷却機を用いて20℃/分で30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A3)とする。
(a3)のピークトップ分子量は2000、酸価は0mgKOH/g、(A3)のTgは50℃で、軟化点は140℃であった。
【0045】
実施例4
[ポリエステル樹脂(A4)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸306部、イソフタル酸458部、1,3−プロピレングリコール663部、重合触媒として(t)0.5部を入れ、190℃、常圧下で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、190℃、2kPaの減圧下で1時間反応させ、ポリエステル前駆体(a4)を得た。次いで、無水トリメリット酸98部を加え、180℃、常圧下で1時間反応させた後、180℃、2kPaの減圧下で反応させ、軟化点が137℃となった時点で取り出した。回収された1,3−プロピレングリコールは349部であった。得られた樹脂をスチールベルト冷却機を用いて20℃/分で30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A4)とする。
(a4)のピークトップ分子量は2500、酸価は5mgKOH/g、(A4)のTgは55℃、軟化点は139℃であった。
【0046】
実施例5
[ポリエステル樹脂(A5)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸290部、イソフタル酸435部、エチレングリコール541部、重合触媒として(t)0.5部を入れ、220℃、600kPaの加圧下で窒素気流下に生成する水を留去しながら3時間反応させた後、220℃、2kPaの減圧下で1時間反応させ、ポリエステル前駆体(a5)を得た。次いで、無水トリメリット酸152部を加え、220℃、常圧下で1時間反応させた後、220℃、2kPaの減圧下で反応させ、軟化点が133℃となった時点で取り出した。回収されたエチレングリコールは285部であった。得られた樹脂をスチールベルト冷却機を用いて30℃/分で30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A5)とする。
(a5)のピークトップ分子量は2000、酸価は1mgKOH/g、(A5)のTgは60℃、軟化点は135℃であった。
【0047】
実施例6
[ポリエステル樹脂(A6)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸393部、イソフタル酸393部、アジピン酸21部、エチレングリコール606部、重合触媒として(t)0.5部を入れ、220℃、550kPaの加圧下で窒素気流下に生成する水を留去しながら4時間反応させた後、220℃、2kPaの減圧下で1時間反応させ、ポリエステル前駆体(a6)を得た。次いで、無水トリメリット酸58部を加え、200℃、常圧下で1時間反応させた後、200℃、2kPaの減圧下で反応させ、軟化点が147℃となった時点で取り出した。回収されたエチレングリコールは286部であった。得られた樹脂をスチールベルト冷却機を用いて25℃/分で30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A6)とする。
(a6)のピークトップ分子量は6500、酸価は0mgKOH/g、(A6)のTgは60℃、軟化点は147℃であった。
【0048】
比較例1
[ポリエステル樹脂(RA1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸328部、イソフタル酸493部、エチレングリコール613部、重合触媒として(t)0.5部を入れ、200℃、常圧下で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、210℃、5kPaの減圧下で2時間反応させ、ポリエステル前駆体(Ra1)を得た。次いで、無水トリメリット酸46部を加え、常圧下で1時間反応させた後、210℃、5kPaの減圧下で反応させ、軟化点が124℃となった時点で取り出した。回収されたエチレングリコールは287部であった。得られた樹脂を金属製の容器に取り出し、5時間より長い時間をかけて30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(RA1)とする。
(Ra1)のピークトップ分子量は8000、酸価は1mgKOH/g、(RA1)のTgは60℃、軟化点は134℃であった。
【0049】
比較例2
[ポリエステル樹脂(RA2)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸418部、イソフタル酸418部、エチレングリコール624部、重合触媒として(t)0.5部を入れ、210℃、400kPaの加圧下で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、210℃、10kPaの減圧下で2時間反応させ、ポリエステル前駆体(Ra2)を得た。次いで、無水トリメリット酸32部を加え、200℃、常圧下で1時間反応させた後、200℃、10kPaの減圧下で反応させ、軟化点が128℃となった時点で取り出した。回収されたエチレングリコールは287部であった。得られた樹脂をスチールベルト冷却機を用いて25℃/分で30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(RA2)とする。
(Ra2)のピークトップ分子量は11000、酸価は1mgKOH/g、(RA2)のTgは60℃、軟化点は130℃であった。
【0050】
比較例3
[ポリエステル樹脂(RA3)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸664部、アジピン酸87部、1,3−プロピレングリコール699部、重合触媒として(t)0.5部を入れ、240℃、300kPaの加圧下で窒素気流下に生成する水を留去しながら3時間反応させた後、5kPaの減圧下で2時間反応させ、ポリエステル前駆体(Ra3)を得た。次いで、無水トリメリット酸53部を加え、210℃、常圧下で1時間反応させた後210℃、5kPaの減圧下で反応させ、軟化点144℃となった時点で取り出した。回収された1,3−プロピレングリコールは330部であった。得られた樹脂をスチールベルト冷却機を用いて20℃/分で30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(RA3)とする。
(Ra3)のピークトップ分子量は8000、酸価は0mgKOH/g、(RA3)のTgは65℃、軟化点は147℃であった。
【0051】
比較例4
[ポリエステル樹脂(RA4)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸265部、無水トリメリット酸62部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物:ニューポールBP−3P(三洋化成工業製:エチレンオキサイド2モル付加物約34%、3モル付加物約38%、4モル付加物約17%、5モル以上付加物約5%)750部、重合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート3部を入れ、230℃、3kPaの減圧下で3時間反応させ、軟化点が126℃となった時点で取り出した。得られた樹脂を5時間より長い時間をかけて30℃以下までまで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(RA4)とする。
(Ra4)のTgは58℃、軟化点は142℃であった。
【0052】
製造例1
[ポリエステル樹脂(B1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸275部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物:ニューポールBP−2P(三洋化成工業製:プロピレンオキサイド2モル付加物)740部、重合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート4部を入れ、230℃、5kPaの減圧下で3時間反応させ、ポリエステル前駆体(b1)を得た。次いで、無水トリメリット酸42部を加え、170℃、常圧下で1時間反応させた後、取り出した。得られた樹脂を金属製の容器に取り出し、5時間より長い時間をかけて30℃以下まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(B)とする。
(b1)のピークトップ分子量は3000、酸価は1mgKOH/g、(B)のTgは65℃、軟化点は100℃であった。
【0053】
以下の表1に、実施例1〜6で得られたポリエステル樹脂(A1)〜(A6)、および比較例1〜4で得られたポリエステル樹脂(RA1)〜(RA4)の分析値をまとめた。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例7〜14、比較例5〜8
実施例1〜6、比較例1〜4で得られた、ポリエステル樹脂(A1)〜(A6)、および比較のポリエステル樹脂(RA1)〜(RA4)とポリエステル樹脂(B1)とを、表2の割合で混合した後プラストミルに入れ、140℃で5分間撹拌して溶融混合し、本発明の製造方法により得られたトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーバインダー(TB2)〜(TB8)、および比較のトナーバインダー(RTB9)〜(RTB12)を得た。また、ポリエステル樹脂(A1)をトナーバインダー(TB1)とした。各トナーバインダー100部に対して、シアニンブルーKRO(山陽色素製)8部、カルナバワックス5部を加え。下記の方法でトナー化した。
まず、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、体積平均粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部にコロイダルシリカ(アエロジルR972:日本アエロジル製)0.5部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー組成物(T1)〜(T8)、および比較のトナー組成物(RT9)〜(RT12)を得た。
下記評価方法で評価した評価結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
[評価方法]
〔1〕最低定着温度(MFT)
市販複写機(AR5030;シャープ製)を用いて現像した未定着画像を、市販複写機(AR5030;シャープ製)の定着機を用いて評価した。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって最低定着温度とした。
〔2〕ホットオフセット発生温度(HOT)
上記MFTと同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。ホットオフセットが発生した定着ロール温度をもってホットオフセット発生温度とした。
〔3〕保存安定性
トナー組成物をそれぞれポリエチレン製の瓶に入れ、45℃の恒温水槽に8時間保持した後、42メッシュのふるいに移し、ホソカワミクロン(株)製パウダーテスターを用いて、振動強度5で10秒間振とうし、ふるいの上に残ったトナーの重量%を測定し、下記基準で判定し、保存安定性を評価した。
残存トナー重量%
◎ : 0%以上15%未満
○ : 15%以上25%未満
△ : 25%以上30%未満
× : 30%以上
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法により得られたトナー用ポリエステル樹脂(A)を用いた本発明のトナー組成物は、上記のように、定着温度幅(HOTとMFTの差)、保存安定性等に優れるので、電子写真用トナーとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程[1] 芳香族ジカルボン酸(x1)を含有するポリカルボン酸成分(x)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y1)を含有するポリオール成分(y)とを、触媒存在下で、常圧又は加圧下150〜240℃でエステル化を行い、さらに減圧下150〜240℃でエステル化を行い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるTHF可溶分のピークトップ分子量が1000〜7000であるポリエステル前駆体(a)を製造する工程、
工程[2] ポリエステル前駆体(a)に、3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(x3)を、常圧、減圧、又はその両方下で150〜240℃で反応させ、反応後15℃/分以上の速度で30℃以下まで冷却する工程、
を有するトナー用ポリエステル樹脂(A)の製造方法。
【請求項2】
工程[2]で用いる3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(x3)がポリカルボン酸無水物であり、常圧で無水カルボキシル基の開環反応を行った後、減圧下でエステル化反応を行う請求項1記載のトナー用ポリエステル樹脂(A)の製造方法
【請求項3】
工程[1]で得られるポリエステル前駆体(a)の酸価が5mgKOH/g以下である請求項1または2記載トナー用ポリエステル樹脂(A)の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で得られたトナー用ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーと着色剤、並びに必要により、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤から選ばれる1種以上の添加剤を含有するトナー組成物。

【公開番号】特開2010−237399(P2010−237399A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84632(P2009−84632)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】