説明

トナー粒子の製造方法

【課題】重合性単量体中に着色剤を均一かつ微細に分散させた微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得ることのできる重合トナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】重合性単量体、シナジスト、該シナジストへ配位可能な電子供与化合物を含有している単量体混合物に着色剤を分散させ微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得る分散工程を有し、該分散工程は、メディア式分散機へ送液し分散処理するものであって、該分散機は、液体導入口29と液体排出口30を備えた円筒状容器2の内部にメディア粒子分離セパレータ37と回転ロータ35を具備し、該円筒状容器内にはメディア粒子38が複数充填され、該メディア粒子の粒子径、及び該分離セパレータの開口率が、下記式1及び式2を満たすことを特徴とする。
式1:0.20mm≦(メディア粒子径)≦0.50mm
式2:5≦開口率/メディア粒子径≦49
(開口率は%単位、粒子径はmm単位。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤が微細かつ均一に分散されている重合トナーを効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合法により製造されるトナーを用いて高精細な画像を得るためには、トナー粒子中に着色剤が微細且つ均一に分散していることが求められる。そのため、懸濁重合法により重合トナー粒子を製造する場合には、重合性単量体及び着色剤を含有する単量体混合物を分散する工程において、重合性単量体中に着色剤を微細に分散させる必要がある。微粒状着色剤分散液状単量体中での着色剤の分散が不十分であると、着色剤の粒径分布が広くなり、粗大な着色剤が存在する。微粒状着色剤分散液状単量体混合物に離型剤等を加えた重合性単量体組成物を水系分散媒体中で分散させてトナー粒子を形成する工程において、水系分散媒体中で重合性単量体組成物の均一に分散したトナー粒子を形成することが困難となる。その結果、トナー粒子の粒径分布がブロードになったり、トナー粒子中に着色剤を含有しないトナー粒子が生成するため、得られた画質が低下する。さらに、着色剤が微細且つ均一に分散されても、重合性単量体と着色剤の馴染みが悪いと、分散終了後の微粒状着色剤分散液状単量体混合物の分散安定性が低下し、着色剤が再凝集し易くなる。
【0003】
従来から、重合性単量体中に着色剤を分散させる方法として、各種メディア式分散機を用いる方法が提案されており、近年は、0.10mm未満の微小メディア粒子を使用し、着色剤を重合性単量体中へ微分散する方法も検討されている。メディア粒子径が小さいほど、分散機内容積当たりに充填できるメディア粒子数が増加する。すなわち、メディア粒子同士の衝突回数が増加するため、着色剤分散液状単量体混合物中の着色剤が微粒化される。しかし、メディア粒子径が小さくなると、メディア式分散機の駆動軸の回転に伴いメディア粒子に生じる遠心力が、低下する。メディア粒子に生じる遠心力が低下すると、高粘度の処理物を処理した場合、メディア粒子の遠心力に比べ、メディア粒子を分散機の出口方向へ処理物と共に送液する力が大きくなり、分散機内部出口付近で、メディア粒子のパッキングが生じやすくなり、分散効率が著しく低下する。また、メディア粒子に生じる遠心力が低下すると、分散機への着色剤分散液状単量体混合物の送液量を低下させないと、上記同様に分散機内部出口付近において、メディア粒子のパッキングが生じやすくなり、分散効率が著しく低下する。更には、メディア粒子の遠心力が小さくなることは、メディア同士の衝突力が低下することを意味し、凝集の強固な着色剤や1次粒径が大きい着色剤等の重合性単量体中への微分散を行なうことが困難となる。
【0004】
上記の問題を解決するため、例えば、特許文献1では、重合性単量体中に着色剤を分散させる分散工程において、0.01mm以上0.30mm以下、好ましくは0.05mm以上0.10mm以下の微小メディア粒子を使用する例が開示されている。特許文献1では、分散機内部の微小メディア粒子と微粒状着色剤分散液状単量体混合物を分離するメディア粒子分離スクリーンの開口率とメディア粒子径の比率を50以上260未満に規定している。これにより、微小メディア粒子でも、パッキング等の問題を発生させずに分散可能であることが提示されている。
【0005】
しかし、上記発明でも、着色剤の種類によっては、着色剤を微分散した結果、微粒状着色剤分散液状単量体混合物の粘度が高くなり、メディア粒子が、分散機内部出口付近でパッキングを生じる場合がある。その結果、微粒状着色剤分散液状単量体混合物の過度の昇温による品質低下や分散機動力過負荷で装置の停止、また、分散機内部及びメディア粒子の磨耗が促進されてしまう。
【0006】
一方で、該パッキングの原因と考えられる、微粒状着色剤分散液状単量体混合物の粘度上昇を抑制しつつ、着色剤の微分散を行なうために着色剤分散剤の検討が行われている。着色剤分散剤は、その機能を発揮するためには、着色剤に強固に吸着する化学構造と、着色剤を分散する際に用いる溶媒や樹脂への親和性を持ち、着色剤の再凝集を防ぐための立体障害となりうる化学構造が必要である。着色剤に強固に吸着する材料として、フタロシアニン系着色剤やカーボンブラックには、フタロシアニン系色素の誘導体、キナクリドン系着色剤には、キナクリドン系色素の誘導体が用いられている。上記した、着色剤に対して吸着性を持つ材料と、溶媒や樹脂への親和性を持ち立体障害となりうる高分子分散剤とを混合し、それぞれを酸塩基相互作用により結合させて調製した着色剤分散剤が知られている。
【0007】
しかしながら、このような2種類の着色剤分散剤を用いる場合には、両者を結合している酸塩基による結合を切断しない条件で着色剤分散体を作製し、その条件を維持することが必要である。特に、添加される樹脂の官能基、また、水系溶媒での着色剤の分散においては、溶媒のpHに十分な注意が必要となり、処方や製法上の制限が生じてしまう(特許文献2.3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−206286号公報
【特許文献2】特開平09−005989号公報
【特許文献3】特表2002−514263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決した、重合性単量体中に着色剤を均一かつ微細に分散させた微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得ることのできる重合トナーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、
重合性単量体、シナジスト、該シナジストへ配位可能な電子供与化合物を少なくとも含有している単量体混合物に着色剤を分散させ微粒状着色剤分散液状単量体混合物得る分散工程を少なくとも有するトナー粒子の製造方法であり、該分散工程は、メディア式分散機へ送液し、分散処理するものであって、
該メディア式分散機は、液体導入口と液体排出口を備えた円筒状容器の内部にメディア粒子分離セパレータと駆動軸の回転により回転する回転ロータを具備し、該円筒状容器内にはメディア粒子が複数充填されており、該メディア粒子の粒子径、及び該メディア粒子分離セパレータの開口率が、下記式1及び式2を満たすことを特徴とする。
式1:
0.20mm≦(メディア粒子径)≦0.50mm
式2:
5≦開口率/メディア粒子径≦49
(式2において、開口率は%単位で表示した数値であり、粒子径はmm単位で表示した数値である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、重合性単量体中に着色剤を均一かつ微細に分散し、かつ、放置安定性が高く着色剤の再凝集を抑制した微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得ることのできる重合トナーの製造方法を提供できる。さらには、重合法によるトナーの製造において、大容量かつ低コストな製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】分散システム1の説明図である。
【図2】分散システム2の説明図である。
【図3】図1の分散機の側面図である。
【図4】図1のA−A’線に沿うケーシング内の断面図である。
【図5】図3のB−B’断面図である。
【図6】図1の分散機に使用する回転ロータの拡大図である。
【図7】図1の分散機内部に位置するメディア粒子分離セパレータの拡大図である。
【図8】図2のケーシング内の断面図である。
【図9】図2の分散機内部に位置するメディア粒子分離セパレータの拡大図である。
【図10】分散システム3の説明図である。
【図11】図10のホールディングタンク内の断面図である。
【図12】図10のホールディングタンク内部に位置するメディア粒子分離セパレータの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
重合性単量体、シナジスト、該シナジストへ配位可能な電子供与化合物を少なくとも含有している単量体混合物に着色剤を分散させ微粒状着色剤分散液状単量体混合物得る分散工程を少なくとも有するトナー粒子の製造方法であり、
該分散工程は、メディア式分散機へ送液し、分散処理するものであって、
該メディア式分散機は、液体導入口と液体排出口を備えた円筒状容器の内部にメディア粒子分離セパレータと駆動軸の回転により回転する回転ロータを具備し、該円筒状容器内にはメディア粒子が複数充填されており、該メディア粒子の粒子径、及び該メディア粒子分離セパレータの開口率が、下記式1及び式2を満たすことを特徴とする。
0.20mm≦(メディア粒子径)≦0.50mm 式1
5≦開口率/メディア粒子径≦49 式2
(式2において、開口率は%単位で表示した数値であり、粒子径はmm単位で表示した数値である。)
【0015】
<着色剤分散工程>
本発明者らは、鋭意検討の結果、重合性単量体中に着色剤を均一かつ微細に分散し、かつ、放置安定性が高く着色剤の再凝集を抑制した微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得るためには、以下のことが重要であることを見出した。すなわち、重合性単量体、シナジスト、該シナジストへ配位可能な電子供与化合物を少なくとも含有している単量体混合物に着色剤を分散させることが、必要であることを見出した。
【0016】
本発明において、シナジストとは、着色剤とファンデルワールス力を有す、又は、着色剤と共通の骨格を持ち、着色剤とπーπ相互作用を有し、着色剤表面に強固に吸着する化合物を意味する。また、シナジストは、着色剤を分散する際に用いる溶媒や樹脂への親和性を持ち、着色剤の再凝集を防ぐための立体障害となりうる高分子分散剤とも強い相互作用を有する化合物を意味する。
【0017】
本発明において、好ましいシナジストは、化合物の中心が金属原子であり、金属原子を中心にフタロシアニン構造を成す化合物である。本発明では、シナジストと高分子分散剤が、従来のような酸塩基相互作用により結合するのではなく、シナジストの中心金属原子に対し配位可能な電子供与化合物(高分子分散剤)が、金属原子に対し電子を供与し、配位結合により強固に結合する。そのため、溶媒のpHや添加される樹脂の官能基の影響を受けずに、強固に結合することが可能となる。また、該シナジストへ配位可能な電子供与化合物は、分散媒に対しては、親和性を示し、かつ立体障害を示すため、着色剤の再凝集を抑制し、重合性単量体と着色剤を含有する微粒状着色剤分散液状単量体混合物の粘度を低減することが可能となる。
【0018】
本発明で用いるシナジストは、中心金属が[Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Mn、Mg、Al]のいずれかである金属フタロシアニン及び/又は金属フタロシアニン誘導体(以下、これらを「金属フタロシアニン類」と称す)であることが好ましい。そして、大環状化合物であるフタロシアニン環、また、六角板状結晶を持つカーボンブラック、及びキナクリドン等の多環式着色剤に対し、axial方向に配位子を配位することが可能な5配位構造又は6配位構造をとることが可能である。
【0019】
これに対し、本発明で用いるシナジストへ配位可能な電子供与化合物は、アミド基を有する特定の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体であることが好ましい。即ち少なくとも下記構造式(1)で表される重合性単量体から誘導される構成単位0.5乃至20質量%を含む重合体(以下、「高分子配位子」と称す)が好ましい。該着色剤分散剤は、非共有電子対を有するため、フタロシアニン環等に対して高分子配位子として作用する。従って、両者を共存させることにより高分子錯体の形成が可能となる。
【0020】
【化1】

【0021】
本発明で用いる金属フタロシアニン類に高分子配位子が配位して得られる高分子錯体は、フタロシアニン環の部位が着色剤と良好な親和性を呈する。また、重合体部位は結着樹脂や他のトナー構成材料との親和性を呈し且つ立体障害により再凝集も防止するので、トナー中の着色剤の良好な分散状態を生み出すことができると思われる。
【0022】
本発明に用いられる金属フタロシアニン類は、5配位構造又は6配位構造である必要性から、2価の金属、又は3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を中心金属とするものである。具体的には、[Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Mn、Mg、Al]からなる群から選ばれるいずれかである。上記金属フタロシアニン類の中心金属は軸配位子の取り込み易さを考慮すると[Cr、Fe、Co、Zn、Mn]のいずれかであることが好ましい。更には、着色剤との吸着能を考慮すると、5配位構造をとることが可能なZnを中心金属にもつZnフタロシアニン(亜鉛フタロシアニン)が特に好ましく選択される。
【0023】
本発明に用いられる金属フタロシアニン類としては公知のものを用いることができる。即ち、フタロシアニン骨格を有するものであれば特に限定されず、例えば、4つあるイソインドール部分にカルボン酸やスルホン酸等の置換基を導入したものや、芳香族系、脂肪族系、エーテル、アルコール等の置換基を導入したものが用いられる。但し、それ自身が、フタロシアニン環と着色剤の吸着性や軸配位子の取り込み易さに影響を及ぼすものは好ましくない。
【0024】
本発明において、金属フタロシアニン類は、後述するアミド基を有する特定の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体を高分子配位子として高分子錯体を形成し、着色剤に対して分散剤として作用するため、非常に少ない添加量で本発明の目的が達成される。その量は、金属フタロシアニン類自体が持つ着色力の効果が無視できる範囲である。具体的な添加量は、同時に用いられる着色剤の種類と添加量にもよるが、結着樹脂100質量部に対して0.01乃至0.5質量部、好ましくは0.03乃至0.3質量部である。
【0025】
一方、本発明で用いる金属フタロシアニン類に対し、高分子配位子として用いられるアミド基を有する特定の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体は、少なくとも、上記構造式(1)で表される重合性単量体から誘導される構成単位0.5乃至20質量%を含む重合体である。
【0026】
このような重合体中には、少なくとも上記構造式(1)で表される重合性単量体の分子構造中に非共有電子対を有するので、上記金属フタロシアニン類に対して高分子配位子として作用することが可能であり、該金属フタロシアニン類と共に高分子錯体を形成する。
【0027】
上記構造式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アリール基又はC1乃至C10のアルキル基、アルケニル基若しくはアルコキシ基を示し、Xは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又は4級アンモニウム塩を示し、nは1乃至10の整数を示す。
【0028】
上記構造式(1)で表される重合性単量体として、具体的には、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ヘキサンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−n−オクタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−n−ドデカンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2,2,4−トリメチルペンタンスルホン酸、又はこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらのうち、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(上記構造式(1)において、Rが水素原子、RとRがメチル基、Xが水素原子で、nが1の場合に相当)等が好ましく用いられる。
【0029】
次いで、本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明において、好ましく用いられるメディア式分散機は、液体導入口と液体排出口を備えた円筒状容器の内部にメディア粒子分離セパレータと駆動軸の回転により回転する回転ロータを具備し、該円筒状容器内にはメディア粒子が複数充填されており、該メディア粒子の粒子径、及び該メディア粒子分離セパレータの開口率が、下記式1及び式2を満たすことが、重要であることを見出した。
0.20mm≦(メディア粒子径)≦0.50mm 式1
5≦開口率/メディア粒子径≦49 式2
(式2において、開口率は%単位で表示した数値であり、粒子径はmm単位で表示した数値である。)
【0030】
本発明における好ましい分散システムの一例を図1、2に示す。
【0031】
図1の分散機は、該液体導入口を有する第1の壁面と該液体排出口を有する第2の壁面とを有する該円筒状容器の内部に、スリットを有する円筒状のメディア粒子分離セパレータによって内室と外室とが設けられている。そして、該内室内に回転ロータとメディア粒子が充填された分散機であり、該単量体混合物を該メディア式分散機へ送液し該微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得ることを特徴とする分散機である。
【0032】
図2の分散機は、該液体導入口を有する第1の壁面と該液体排出口を有する第2の壁面とを有する該円筒状容器の内部に、水平方向に具備された駆動軸の回転によって回転可能な回転ロータとメディア粒子が充填されている。そして、該メディア粒子と該単量体混合物を分離するメディア粒子分離セパレータが、該回転ロータの中心部に具備された分散機であり、該単量体混合物を該メディア式分散機へ送液し微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得ることを特徴とする分散機である。
【0033】
図3は、図1の分散機の側面図である。図4は、図1中のA−A’線に沿うケーシング内の断面図を示す。図5は、図3中のB−B’断面図を示す。図6は、図1の分散機に使用する回転ロータの斜視図である。図7は、図1の分散機内部に位置し、メディア粒子と微粒状着色剤分散液状単量体混合物を分離するメディア粒子分離セパレータである。
【0034】
図8は、図2中のケーシング32内の断面図を示す。図9は、図2の分散機内部に位置し、メディア粒子と微粒状着色剤分散液状単量体混合物を分離するメディア粒子分離セパレータ69である。
【0035】
図1の分散システムを使用した分散工程について図1及び図3乃至図7を用いて以下に説明する。
【0036】
図1中の分散機1は本体ケーシング2の内部に、メディア粒子38撹拌用の回転ロータ35、その外周にメディア粒子38と微粒状着色剤分散液状単量体混合物を分離するためのスリット36を有するメディア粒子分離セパレータ37がある。駆動軸31により、回転ロータ35を回転させると遠心力が発生し、メディア粒子38は外周のメディア粒子分離セパレータ37上に層を形成すると共に、回転ロータ35の回転力によって回転運動も行うため、強力なせん断力を発生して着色剤の分散が行われる。
【0037】
その後、微粒状着色剤分散液状単量体混合物は、メディア粒子分離セパレータ37でメディア粒子38と分離されてから液体排出口30より排出され、冷却手段11を経由してホールディングタンク21へもどる。ホールディングタンク21内の微粒状着色剤分散液状単量体混合物は、分散機とホールディングタンク21との間の循環を繰り返しながら、均一にかつ効率よく着色剤の重合性単量体中への分散が行われる。
【0038】
本発明で使用するメディア粒子の直径は、0.20mmから0.50mmの範囲が好ましい。
【0039】
メディア粒子の直径が0.20mm未満の場合は、分散機容積当たりのメディア粒子量が増えるため、メディア粒子同士の衝突回数が増加する。その結果、着色剤の最終到達粒径は、微細になるが、一方で、メディア粒子に生じる遠心力は、重量に反比例し小さくなる。そのため、着色剤に粗大な粒子が含まれていたり、着色剤の凝集力が大きい場合、分散時間が増大し、分散効率が著しく低下してしまう。
【0040】
また、メディア粒子が小粒径になるほど遠心力が低下するため、メディア粒子が処理物に押し流され、メディア粒子分離セパレータ(分散機出口)付近にパッキングしやすくなる。そこで、パッキングを防止するためには、メディア粒子が、パッキングしない程度に処理物の送液量を制限しなくてはならず、分散時間が増大し、分散効率が著しく低下してしまう。
【0041】
メディア粒子の直径が0.50mmを超える場合は、メディア粒子に生じる遠心力は、着色剤に粗大な粒子が含まれていたり、着色剤の凝集力が大きい場合でも十分に分散可能な値である。しかし、分散機容積当たりのメディア粒子量が減少するため、メディア粒子同士の衝突回数も減少し、最終到達粒径までの時間が増大してしまい好ましくない。
【0042】
メディア粒子の材質としては、ガラス、スチール、クロム合金、アルミナ、ジルコニア、ジルコン、チタニア等が挙げられる。上述のメディア材質の中でも、耐摩耗性の点からジルコニア又はチタニアがより好ましい。
【0043】
本発明において、開口率/メディア粒子径は、5から49の範囲が好ましい。
【0044】
メディア粒子径が一定の場合、開口率を大きくするためには、開口幅を大きくするとメディア粒子漏れの可能性が増えるため、メディア粒子分離セパレータを構成するスリットもしくはワイヤー等の線形を細くしなければならない。
【0045】
しかし、開口率/メディア粒子径が、49を超えると、メディア粒子分離セパレータを構成するスリットもしくはワイヤー等の線形が細くなりすぎてしまう。その結果、メディア粒子分離セパレータの磨耗及び磨耗による微粒状着色剤分散液状単量体混合物中へのコンタミ、更にはメディア粒子漏れ等が生じるため好ましくない。一般的に分散機内部の構成部材は、ステンレス鋼等の金属が使用されるが、メディア粒子分離セパレータ等の磨耗が激しい場合、トナー粒子中に金属がコンタミし、トナーの帯電特性に影響をあたえてしまう。特にトナーから電荷がリークしやすくなるため、かぶり等の画像弊害が悪化する傾向にある。
【0046】
開口率/メディア粒子径が5未満の場合、重合性単量体、シナジスト、該シナジストへ配位可能な電子供与化合物を含有した微細な低粘度の微粒状着色剤分散液状単量体混合物であっても、開口率が小さすぎるため、目詰まりを生じやすい。目詰まりによる分散機内部圧力の上昇に伴い、処理物の品温の変動も大きくなり、トナーの品質を低下させるため好ましくない。また、目詰まりにより分散機内部圧力が上昇すると、処理物がメディア粒子をメディア粒子分離セパレータへ押し流す圧力が増加し、メディア粒子が、パッキング気味となり、分散機内部の磨耗による損傷が激しくなるため好ましくない。
【0047】
本発明においては、メディア粒子分離セパレータのスリット間、またはワイヤー間の着色剤等の詰まりを防止するため、メディア式分散機の液体排出口30から液体導入口29方向に一定時間圧力をかけ、詰まりを防止しながら分散を行なうことが好ましい。詰まり防止を行なう際は、液体導入口29とポンプ10間に逆止弁9を設置する。逆止弁9によりポンプへメディア粒子が流入し、ポンプが破損するのを防止することできる。
【0048】
詰まり防止の手順としては、分散途中、もしくは、分散終了後、ポンプ10を停止した状態で、三方弁3により圧力源と分散機方向を開とし、処理物を液体排出口30から液体導入口29方向へ押し出し、メディア粒子分離セパレータの目詰まりを除去する。圧力源は、エアー、好ましくは窒素ガス等の不活性ガスが好ましい。メディア式分散機の液体排出口30から液体導入口29方向への圧力は、軸シール液タンク22の内部圧力以下、好ましくは、軸シール液タンク22の内部圧力より0.10MPa程度低い圧力が好ましい。軸シール液タンク22により圧力が大きい場合、軸シールへ処理物が侵入し、装置が破損してしまうため好ましくない。
【0049】
以上により本発明は、メディア粒子分離セパレータの目詰まりによる分散機内部圧力の上昇に伴う、メディア粒子のパッキングによる分散効率の低下や処理物の昇温を防止することが可能となる。すなわち、トナー品質の低下を防止することが可能となり、均一な品質でかつ微細に着色剤を分散することができる。
【0050】
本発明における分散機のメディアの充填率は、70乃至130%の充填率であることが好ましい。尚、ここでいうメディア充填率とは、回転ロータ35とメディア粒子分離セパレータ37との間の空間容積に対するメディア粒子の総容積の占める割合を示す。
【0051】
メディア充填率が70%未満の場合、分散機内部容積に対するメディア粒子数が低すぎるため、メディア粒子同士の衝突回数が低下し、分散効率が低下するため好ましくない。また、130%を超えた場合、分散機内部容積に対するメディア粒子数が多すぎるため、パッキング気味となるため、メディア粒子の動きが低下し、分散効率が低下するため好ましくない。
【0052】
メディア粒子の総容積は、メディア粒子をメスシリンダーに投入することで正確に測定する。
【0053】
着色剤の分散性やメディア粒子の摩耗、装置自体の安定的な運転の点で、回転ロータ先端部の周速を8乃至25m/sの範囲で用いることが好ましく、さらに12乃至20m/sの範囲で用いることがより好ましい。
【0054】
上記範囲を逸脱した、周速が8m/sより小さい場合、メディア粒子遠心力が低下する為、分散効率が著しく悪化する。また、メディアの動きの悪さが単量体組成物の流れを妨げる為、装置内の圧力の過度な上昇を誘発してしまう。一方、周速が25m/sを超える場合、メディア粒子同士の磨耗及びメディア粒子と装置の磨耗が激しくなる為、メディア粒子破片の混入による画像性能の低下を招いてしまう。
【0055】
次いで、図2の分散システムを使用した場合について以下に説明する。尚、図8は、図2中のケーシング内の断面図を示す。図9は、図2の分散機内部に位置し、メディア粒子と微粒状着色剤分散液状単量体混合物を分離するメディア粒子分離セパレータである。
【0056】
図2の分散機41は、円筒状のベッセルの内部に、ベッセルと同軸に配置され、駆動軸71により回転可能な円筒状ロータ69、及びメディア粒子72と微粒状着色剤分散液状単量体混合物を分離するためのメディア粒子分離セパレータ70が設けられている。分散機内に充填されたメディア粒子は、回転する円筒状ロータ69に設置されたロータピン73とベッセルに設置されたベッセルピン74の作用により激しく撹拌される。微粒状着色剤分散液状単量体混合物は、粉砕室75を通過することで、微分散・粉砕が促進される。その後、粉砕室75を通過した微粒状着色剤分散液状単量体混合物は、メディア粒子分離セパレータ70を通過し、液体排出口77より排出される。この際、微粒状着色剤分散液状単量体混合物の流れと共にメディア粒子分離セパレータ70付近に流動したメディア粒子72は、円筒状ロータ69の回転により生じる遠心力により、メディア粒子排出口79を通過し、粉砕室75へと戻される。この遠心分離作用により、微粒状着色剤分散液状単量体混合物の大流量循環が可能となり、着色剤の効率的な分散が達成される。
【0057】
図2の分散システムの場合も図1の分散システム同様、本発明において使用するメディア粒子の直径は、0.20mmから0.50mmの範囲が好ましい。
【0058】
また、開口率/メディア粒子径に関しても、図1の分散システム同様、5から49の範囲で用いることが好ましい。
【0059】
本発明において、メディア粒子分離セパレータ間の着色剤等の詰まりを防止するため、メディア式分散機の該液体排出口77から該液体導入口76方向に一定時間圧力をかけ、詰まりを防止しながら分散を行なうことが好ましい。詰まり防止を行なう際は、液体導入口76とポンプ50間に逆止弁49を設置する。逆止弁49によりポンプへメディア粒子が流入し、ポンプが破損するのを防止することできる。
【0060】
詰まり防止の手順としては、ポンプ50を停止した状態で、三方弁60により圧力源と分散機方向を開とし、処理物を該液体排出口77から該液体導入口76方向へ押し出し、メディア粒子分離セパレータ70の目詰まりを除去する。圧力源は、エアー、好ましくは窒素ガス等の不活性ガスが好ましい。メディア式分散機の液体排出口から液体導入口方向への圧力は、軸シール液タンク62の内部圧力以下、好ましくは、軸シール液タンク62の内部圧力より0.1MPa程度低い圧力が好ましい。軸シール液タンク62により圧力が大きい場合、軸シールへ処理物が侵入し、装置が破損してしまうため好ましくない。
【0061】
以上により本発明は、メディア粒子分離セパレータの目詰まりによる分散機内部圧力の上昇に伴う、メディア粒子のパッキングによる分散効率の低下や処理物の昇温を防止することが可能となる。すなわち、トナー品質の低下を防止することが可能となり、均一な品質でかつ微細に着色剤を分散することができる。
【0062】
本発明における分散機の円筒状ロータ69の周速は、8乃至25m/sの範囲内であることが好ましい。上記範囲を逸脱した周速が8m/sより小さい場合、メディア粒子と着色剤の衝突確率が低下する為、分散効率が悪化する。また、25m/sを超える場合、メディア粒子同士の磨耗及びメディア粒子と装置の磨耗が激しくなる為、メディア粒子破片の混入による画像性能の低下を招いてしまう。
【0063】
本発明における分散機のメディア粒子の充填率は、60乃至90%の充填率であることが好ましい。尚、ここでいうメディア粒子充填率とは、粉砕室の容積に対するメディア粒子の総容積の占める割合を示す。メディア粒子の総容積は、メディア粒子をメスシリンダーに投入することで正確に測定する。
【0064】
メディア充填率が60%未満の場合、分散機内部容積に対するメディア粒子数が低すぎるため、メディア粒子同士の衝突回数が低下し、分散効率が低下するため好ましくない。また、90%を超えた場合、分散機内部容積に対するメディア粒子数が多すぎるため、パッキング気味となるため、メディア粒子の動きが低下し、分散効率が低下するため好ましくない。
【0065】
分散機における円筒状ロータ及びベッセルの材質は、強度的な面から、ステンレス鋼、超硬、炭素鋼、アルミナ、セラミック、ジルコニアが好ましく用いられる。また、磨耗の観点からステンレス鋼、または、超硬を用いることがより好ましい。
【0066】
上記したように図1の分散システムや図2の分散システムにより着色剤を重合性単量体中に微細に分散することが可能となる。
【0067】
また、分散の際に発生した熱は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物に悪影響を与えやすいので、循環システムのライン中に冷却手段として熱交換器を設置して熱交換を行いながら運転することが好ましい。分散機もしくは分散機を通過した後の経路内に熱交換器を設置することが好ましい。その際、微粒状着色剤分散液状単量体混合物の液温は、10乃至50℃に調整するのが好ましい。
【0068】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物の液温が10℃より小さい場合、微粒状着色剤分散液状単量体混合物中に結露による水分が混入する可能性があり、分散効率を低下させる怖れがあるので好ましくない。液温が50℃を超える場合、重合性単量体が熱重合により変質を起こす可能性があり、画像特性に問題が生じてしまうので好ましくない。
【0069】
≪トナーの製造方法≫
本発明の重合法トナーの製造方法は、懸濁重合法、乳化凝集法に好適に用いることができる。懸濁重合法の一例を以下に説明する。
【0070】
分散工程において、上記の分散方法により重合性単量体に少なくとも着色剤を分散させ微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得る。
【0071】
該分散工程において得られた微粒状着色剤分散液状単量体混合物と離型剤等の添加剤を混合する調整工程において、重合性単量体組成物を得る。該調整工程において得られた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水相中にクレアミックス又はホモミキサー等の高せん断力を有する撹拌機により分散を行なう。この時、重合性単量体組成物からなる液滴が所望のトナーのサイズを有するように撹拌速度および時間を調製し造粒する。
【0072】
懸濁重合法においては、通常、重合性単量体組成物100質量部にたいして水100乃至3000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持されるため、粒子の沈降が起こらない程度の撹拌を行えば良い。
【0073】
重合温度は40℃以上、一般的には50乃至90℃の温度に設定して重合を行う。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温しても良く、更に、未反応の重合性単量体,副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を蒸留操作により留去しても良い。蒸留操作は常圧もしくは減圧下で行うことができる。重合反応または引き続く蒸留操作終了後、生成したトナー粒子をろ過/洗浄するが、この工程の前段もしくは後段で酸および/またはアルカリ処理により、得られた粒子状表面の分散安定剤の除去を行うこともできる。最終的に液相と分離されたトナー粒子は、公知の方法により乾燥・分級・外添される。
【0074】
以下に本発明で好適に用いられる材料について説明する。
【0075】
〔着色剤〕
本発明で用いられる着色剤としては、公知のものを使用することが出来る。
【0076】
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー。
【0077】
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254。
【0078】
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194。
【0079】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト。上記イエロー系着色剤/マゼンタ系着色剤/シアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
【0080】
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。該着色剤は、好ましくは重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下添加して用いられる。
【0081】
本発明においては重合法を用いてトナーを得る場合には、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは、重合阻害のない物質による疎水化処理を着色剤に施しておいたほうが良い。特に、染料系着色剤やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。
【0082】
また、染料系着色剤の重合阻害性を抑制する方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を重合性単量体組成物に添加する。
【0083】
また、カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質(例えば、ポリオルガノシロキサン等)で処理を行っても良い。
【0084】
〔重合性単量体〕
本発明のトナーに用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;上記のアクリル系重合性単量体のアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトンが挙げられる。
【0085】
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレートの如きアクリレート系重合性単量体;テトラメチロールメタンテトラアクリレート、上記のアクリル系重合性単量体のアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリレート系重合性単量体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
【0086】
本発明においては、上記した単官能性重合性単量体を単独或いは、2種以上組み合わせて、又は、上記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組合せて使用する。上述の単量体の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を単独もしくは混合して、又はそれらとほかの単量体と混合して使用することが、トナーの現像特性及び耐久性などの点から好ましい。
【0087】
〔低分子量樹脂〕
本発明のトナーの製造においては、トナーの形状や材料の分散性や定着性、あるいは画像特性の改良を目的として、重合性単量体組成物中に樹脂を添加して重合することができる。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できない親水性官能基含有の単量体成分をトナー中に導入したい時には、以下のように行う。即ち、上記親水性官能基含有の単量体成分と、スチレンあるいはエチレンの如きビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体の如き共重合体の形で使用が可能である。また、上記親水性官能基含有の単量体成分と、ポリエステル及びポリアミドの如き重縮合体、あるいは、ポリエーテル及びポリイミンの如き付加重合体の形で使用も可能である。なお、親水性官能基としては、アミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、及びニトリル基が挙げられる。
【0088】
上記以外に重合性単量体組成物中に添加することができる低分子量樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。なお、上記低分子量樹脂は単独或いは混合して使用できる。
【0089】
これらの低分子量樹脂の中でも、低分子量樹脂のガラス転移点が40℃以上100℃以下であることが好ましい。ガラス転移点が40℃未満であると、トナー全体の強度が低下して多数耐久試験時に転写性や現像特性の低下を招きやすい。さらに、高温多湿環境下においてトナー同士が凝集し、保存安定性が低下するという問題も生じる。一方、ガラス転移点が100℃を超えると、定着不良という問題が生じ易くなる。
【0090】
低温定着性、高グロス画像が得られるといった点から、該低分子量樹脂のガラス転移点は40℃以上70℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上65℃以下である。
【0091】
〔極性樹脂〕
懸濁重合のように水系分散媒を用いる重合法の場合には、該重合性単量体組成物に極性樹脂を添加することにより、離型剤の内包化の促進を図ることができる。水系媒体中の重合性単量体組成物中に極性樹脂が存在した場合、親水性の違いから極性樹脂が水系媒体と重合性単量体組成物の界面付近に移行しやすいため、トナー表面に極性樹脂が偏在することになる。その結果トナーはコア−シェル構造を有し、多量の離型剤を含有する場合でも、離型剤の内包性が良好になる。
【0092】
該極性樹脂としては、トナー表面に偏在しシェルを形成した際に、極性樹脂自身の流動性が期待できることから、特にポリエステル系樹脂が好ましい。
【0093】
本トナーに用いることができる極性樹脂としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、しょうのう酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸の如き酸性分単量体と;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、等のアルキレングリコール類及びポリアルキレングリコール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如き多価アルコール単量体とを縮合重合したものを挙げることができる。
【0094】
〔重合開始剤〕
トナーを重合法で製造する際に用いる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系、又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドの如き過酸化物系重合開始剤。これらの重合開始剤は、重合性単量体に対して0.5乃至20質量%の添加が好ましく、単独でも又は併用してもよい。
【0095】
〔離型剤〕
本発明に係るトナーに使用可能なワックス成分としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコーン樹脂。
【0096】
〔荷電制御剤〕
本発明のトナーは荷電制御剤を含有してもよい。
【0097】
荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、例えばトナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
【0098】
また、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、ノンメタルカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0099】
トナーを正荷電性に制御するものとしては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類;これらを単独で或は2種類以上組合せて用いることができる。これらの中でも、ニグロシン系、4級アンモニウム塩の如き荷電制御剤が特に好ましく用いられる。
【0100】
これらの荷電制御剤は、樹脂成分100質量部に対して、0.01乃至20質量部(より好ましくは0.5乃至10質量部)使用するのが良い。
【0101】
〔架橋剤〕
架橋性モノマーとしては、2官能の架橋剤として以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
【0102】
また、多官能の架橋性モノマーとしては以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート等。架橋剤の好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001乃至15質量部である。
【0103】
〔分散安定剤〕
重合性単量体組成物を水性媒体中に良好に分散させるための分散安定剤として、例えば無機系酸化物であるリン酸三カルシウム,リン酸マグネシウム,リン酸アルミニウム,リン酸亜鉛,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化マグネシウム,水酸化アルミニウム,メタケイ酸カルシウム,硫酸カルシウム,硫酸バリウム,ベントナイト,シリカ,アルミナ,チタニア、磁性体,フェライト等が挙げられる。有機系化合物としては例えばポリビニルアルコール,ゼラチン,メチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩,デンプン等が水相に分散させて使用される。分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2乃至10.0質量部を使用することが好ましい。
【0104】
これら分散安定剤は、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい均一な粒度を有する分散粒子を得るために、分散媒中高速撹拌下にて該無機化合物を生成させることもできる。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下の水中に、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を投入混合することで懸濁重合方法に好適な分散剤を得ることができる。また、これら分散剤の微細化のため0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン,アニオン,カチオン型の界面活性剤が利用でき、例えばドデシル硫酸ナトリウム,テトラデシル硫酸ナトリウム,ペンタデシル硫酸ナトリウム,オクチル硫酸ナトリウム,オレイン酸ナトリウム,ラウリル酸ナトリウム,ステアリン酸カリウム,オレイン酸カルシウム等が好ましく用いられる。
【0105】
〔外添剤〕
本発明により製造されるトナーを使用するにあたっては、各種特性付与を目的として外添剤を使用することができる。外添剤は、トナーに添加した時の耐久性の点から、トナーの重量平均径の1/10以下の粒径であることが好ましい。この添加剤の粒径とは、電子顕微鏡による観察から求めたその平均粒径を意味する。外添剤としては、たとえば、
金属酸化物(酸化アルミニウム,酸化チタン,チタン酸ストロンチウム,酸化セリウム,酸化マグネシウム,酸化クロム,酸化錫,酸化亜鉛など)・窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)・金属塩(硫酸カルシウム,硫酸バリウム,炭酸カルシウムなど)・脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウムなど)・カーボンブラック・シリカ
などが用いられる。
【0106】
これら外添剤は、トナー100質量部に対し、0.01乃至10質量部が用いられ、好ましくは、0.05乃至5質量部が用いられる。外添剤は、単独で用いても、また、複数併用しても良いが、それぞれ、疎水化処理を行ったものがより好ましい。
【0107】
本発明のトナーは、一成分及び二成分系現像剤として、いずれの現像方式にも使用できる。たとえば、一成分系現像剤として、磁性体をトナー中に含有せしめた磁性トナーの場合には、現像スリーブ中に内蔵せしめたマグネットを利用し、磁性トナーを搬送及び帯電せしめる方法がある。また、磁性体を含有しない非磁性トナーを用いる場合には、ブレード及びファーブラシを用い、現像スリーブにて強制的に摩擦帯電しスリーブ上にトナーを付着させることで搬送せしめる方法がある。
【0108】
一方、一般的に利用されている二成分系現像剤として用いる場合には、本発明のトナーと共に、キャリアを用いる。本発明に使用されるキャリアとしては特に限定されるものではないが、主として、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム元素からなる単独及び複合フェライト状態で構成される。また、磁性体を樹脂中に分散させた磁性微粒子分散型樹脂キャリアであってもよい。飽和磁化、電気抵抗を広範囲にコントロールできる点からキャリア形状も重要であり、たとえば球状、扁平、不定形などを選択し、更にキャリア表面状態の微細構造、たとえば表面凸凹性をもコントロールすることが好ましい。
【0109】
上記キャリアの表面を樹脂等で被覆する系は、特に好ましい。その方法としては、樹脂等の被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて塗布しキャリアに付着せしめる方法、単に粉体で混合する方法等、従来公知の方法がいずれも適用できる。
【0110】
上記化合物の処理量は、一般には総量でキャリア100質量部に対し0.1乃至30質量部、好ましくは0.5乃至20質量部である。
【0111】
これらキャリアの平均粒径は10乃至100μm、好ましくは20乃至50μmを有することが好ましい。
【0112】
本発明におけるトナーと混合して二成分現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2質量部乃至15質量部、好ましくは4質量部乃至13質量部にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量部未満では画像濃度が低く実用不可となり、15質量部を超えるとカブリや機内飛散を増加せしめ、現像剤の耐用寿命を短める。
【0113】
さらに、該キャリアの磁性特性は以下のものが良い。磁気的に飽和させた後の1000エルステッドにおける磁化の強さ(σ1000)は30〜300emu/cmであることが必要である。さらに高画質化を達成するために、好ましくは100〜250emu/cmであることがよい。300emu/cmより大きい場合には、高画質なトナー画像が得られにくくなる。30emu/cm未満であると、磁気的な拘束力も減少するためにキャリア付着を生じやすい。
【0114】
<分散機安定性評価>
着色剤分散時、メディア粒子分離セパレータの開口率が小さいほど、メディア粒子分離セパレータ詰まりが生じやすく、分散開始時と分散終了後の分散機内部圧力の変化が大きくなる。圧力変化が大きいほど、メディア粒子がパッキング気味になるため、メディア粒子分離セパレータの磨耗が激しくなり好ましくない。評価に関しては、着色剤分散工程における、分散開始時の分散機内部圧力と分散終了時の分散機内部圧力を測定し評価した。すなわち、分散開始時と分散終了時の圧力差が、小さいほど、安定した分散状態であり好ましい。
評価基準:(圧力差=分散終了時圧力−分散開始時圧力 単位:MPa)
ランクA:0.10未満
ランクB:0.10以上0.15未満
ランクC:0.15以上0.20未満
ランクD:0.20以上
【0115】
<グロス(光沢度)測定>
着色剤分散工程における微粒状着色剤分散液状単量体混合物中の顔料の分散状態については、微粒状着色剤分散液状単量体混合物のグロス(光沢度)を測定することにより測定した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物のグロスは、スーパーアート紙<金藤180kg80×160(セイブンドー社製)上部に直線上に塗布した後、ワイヤーバー(#10)を用いて均一にアート紙上に塗布する。十分に乾燥させた後、平滑なガラス板の上に塗布試料を置いて測定した。測定にあたっては、HORIBA社製のGLOSS CHECKER IG320を用いて3点測定し、その平均値を微粒状着色剤分散液状単量体混合物のグロス(光沢度)とした。
【0116】
着色剤が良好に分散すると、塗布表面が平滑になり、またつやが高まり、グロス値が高くなる。逆に着色剤の分散が不良な場合、塗布表面に凹凸が残り、くすむことからグロス値が低くなる。
評価基準:
ランクA:80以上
ランクB:80未満72以上
ランクC:72未満65以上
ランクD:65未満
【0117】
<耐久画像濃度測定>
フルカラーレーザービームプリンター(LBP−2510、キヤノン製)の改造機(プロセススピード:190mm/sec、定着温度190℃)を使用する。このプリンターで常温常湿(24℃/60%RH)の環境下においてトナー350gをプロセスカ−トリッジにセットし、プリントアウトして評価を行った。具体的には、2%の印字比率の画像を15000枚まで記録紙(75mg/cm)を用いてプリントアウトして、初期と15000枚出力時ベタ画像濃度の評価を行った。
評価基準:
ランクA:1.40以上
ランクB:1.40未満1.30以上
ランクC:1.30未満1.20以上
ランクD:1.19未満
【0118】
<かぶり測定>
フルカラーレーザービームプリンター(LBP−2510、キヤノン製)の改造機(プロセススピード:190mm/sec、定着温度190℃)を使用する。H/H環境下での耐久試験において、7000枚耐久後のカブリを測定した。方法としては、画出し前の普通紙の平均反射率Dr(%)をグリーンフィルターを搭載したリフレクトメーター(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER ODEL TC−6DS」)によって測定した。一方、普通紙上にベタ白画像を画出しし、次いでベタ白画像の反射率Ds(%)を測定した。カブリ(%)は下記式
Fog(%)=Dr(%)−Ds(%)
から算出する。
評価基準:
ランクA:非常に良好(1.1%未満)
ランクB:良好(1.1%以上乃至2.5%未満)
ランクC:普通(2.5%以上乃至4.0%未満)
ランクD:悪い(4%以上)
【0119】
以下、具体的な製造方法、実施例、比較例をもって本発明をさらに詳細に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て質量部である。
【実施例】
【0120】
着色剤分散工程における微粒状着色剤分散液状単量体混合物の作製方法について述べる。
【0121】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例〕
図1の分散システムを使用して、着色剤分散工程を行った。尚、図3は、図1の分散機の側面図。図4は、図1中のA−A’線に沿うケーシング内の断面図を示す。図5は、図3中のB−B’断面図を示す。図6は、図1の分散機に使用する回転ロータの斜視図である。図7は、図1の分散機内部に位置し、メディア粒子と微粒状着色剤分散液状単量体混合物を分離するメディア粒子分離セパレータである。
【0122】
分散機として、メディア分散方式のSC100(三井鉱山社製)を用いた。
【0123】
まず、ホールディングタンク21内に、
・スチレン単量体 400部
・銅フタロシアニン(C.Iピグメントブルー15:3) 70部
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(1質量%)を構成成分として含有するSt−2EHA共重合体 8部
・亜鉛フタロシアニン 0.4部
の割合で着色剤として銅フタロシアニンを含有している単量体混合物40kgを導入し、撹拌を行いながら、単量体混合物を調製した。その際、ジャケットに冷却水を導入・排出することにより、単量体組成物の液温を約20℃に調整した。調製された単量体混合物を循環ポンプ10で送ることによりホールディングタンク21、循環ポンプ10、分散機の循環を繰り返し、分散を行った。また、分散機内部圧力を分散機入口圧力計5により、常時監視し、メディア粒子分離セパレータ21の詰まり状態をモニタリングしながら分散を行なった。
【0124】
図1の分散システムにおける分散機の装置構成・分散条件は以下のとおりである。
・メディア径:0.30mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:2.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.180mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:8.3%
・開口率/メディア粒子径:28
・回転ロータ周速:15m/s
・メディア充填率:90%
・分散機背圧:0.1MPa
・循環流量:5L/minであった。
・分散時間:120min
【0125】
上記の条件で分散を行い、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1を作製した。その後、同上件で連続して20バッチ分散工程を行ない、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物1を次工程に送液した。また、3バッチごとに三方弁3により、加圧源(窒素ガス:0.3MPa)と分散機方向を開とし、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1を液体排出口62から液体導入口61方向へ押し出し、メディア粒子分離セパレータ37の詰まりを除去した。1バッチ分散終了後と20バッチ分散終了後の圧力は、ほぼ同等であり、メディア粒子分離セパレータに目詰まりは生じなかった。
【0126】
分散機微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の物性及び分散条件を表1に示す。
【0127】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物2の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.20mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:12.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.120mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:1.0%
・開口率/メディア粒子径:5
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物2を次工程に送液した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物2の物性及び分散条件を表1に示す。
【0128】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物3の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.20mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:1.15mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.125mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:9.8%
・開口率/メディア粒子径:49
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物3を次工程に送液した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物3の物性及び分散条件を表1に示す。
【0129】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物4の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.50mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:12.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.310mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:2.5%
・開口率/メディア粒子径:5
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物4を次工程に送液した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物4の物性及び分散条件を表1に示す。
【0130】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物5の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.50mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:1.15mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.370mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:24.3%
・開口率/メディア粒子径:49
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物5を次工程に送液した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物5の物性及び分散条件を表1に示す。
【0131】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の製造例〕
図2の分散システムを使用して、着色剤分散工程を行った。尚、図8は、図2中のケーシング内の断面図を示す。図9は、図2の分散機内部に位置し、メディア粒子と微粒状着色剤分散液状単量体混合物を分離するメディア粒子分離セパレータである。
【0132】
分散機として、メディア分散方式のスターミルLMZ2型(アシザワ・ファインテック社製)を用いた。
【0133】
まず、ホールディングタンク51内に、
・スチレン単量体 400部
・銅フタロシアニン(C.Iピグメントブルー15:3) 70部
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(1質量%)を構成成分として含有するSt−2EHA共重合体 8部
・亜鉛フタロシアニン 0.4部
の割合で着色剤として銅フタロシアニンを含有している単量体混合物40kgを導入し、撹拌を行いながら、単量体混合物を調製した。その際、ジャケットに冷却水を導入・排出することにより、単量体混合物の液温を約13℃に調整した。調製された単量体混合物を循環ポンプ40で送ることによりホールディングタンク、循環ポンプ、分散機の循環を繰り返し、分散を行った。また、分散機内部圧力を分散機入口圧力計35により、常時監視し、メディア粒子分離セパレータの詰まり状態をモニタリングしながら分散を行なった。
【0134】
図2の分散システムにおける分散機の装置構成・分散条件は、以下のとおりである。
・回転ロータ周速:15m/s
・メディア径:0.30mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータウェッジワイヤー幅:1.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.090mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:8.3%
・開口率/メディア粒子径:28
・メディア充填率:80%
・分散機背圧:0.1MPa
・循環流量:5L/minであった。
・分散時間:120min
【0135】
上記の条件で分散を行い、微粒状着色剤分散液状単量体混合物6を作製した。その後、同上件で連続して20バッチ分散工程を行ない、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物6を次工程に送液した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の物性及び分散条件を表1に示す。
【0136】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物7の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.20mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータウェッジワイヤー幅:6.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.060mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:1.0%
・開口率/メディア粒子径:5
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物7を次工程に送液した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物7の物性及び分散条件を表1に示す。
【0137】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物8の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.20mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータウェッジワイヤー幅:0.60mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.065mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:9.8%
・開口率/メディア粒子径:49
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物8を次工程に送液した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物8の物性及び分散条件を表1に示す。
【0138】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物9の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.50mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータウェッジワイヤー幅:6.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.150mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:2.4%
・開口率/メディア粒子径:5
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物9を次工程に送液した。た。微粒状着色剤分散液状単量体混合物9の物性及び分散条件を表1に示す。
【0139】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物10の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.50mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータウェッジワイヤー幅:0.60mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.195mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:24.5%
・開口率/メディア粒子径:49
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物10を次工程に送液した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物10の物性及び分散条件を表1に示す。
【0140】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物11の製造例〕
図10の分散システムを使用して、着色剤分散工程を行った。尚、図11は、図10中のホールディングタンク90内の断面図を示す。図12は、図10の粉砕タンク81内部に位置し、メディア粒子と微粒状着色剤分散液状単量体混合物を分離するメディア粒子分離セパレータである。
【0141】
分散機として、メディア分散方式のハンディーミル(三井鉱山社製)を用いた。
【0142】
まず、ホールディングタンク90内に、
・スチレン単量体 400部
・銅フタロシアニン(C.Iピグメントブルー15:3)
70部
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(1質量%)を構成成分として含有するSt−2EHA共重合体 8部
・亜鉛フタロシアニン 0.4部
の割合で着色剤として銅フタロシアニンを含有している単量体混合物40kgを導入した。主撹拌部材86の回転により、単量体混合物を撹拌しながら、ジャケットに冷却水を導入・排出することにより、単量体混合物の液温を約13℃に調整した。流入口82と流出口83を開とし、調製された単量体混合物を循環ポンプ40で送ることによりホールディングタンク、循環ポンプ間の循環を繰り返し、分散を行った。
【0143】
図10の分散システムにおける分散機の装置構成・分散条件は、以下のとおりである。
・主撹拌部材86周速:13m/s
・メディア径:0.30mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:2.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.180mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:8.3%
・開口率/メディア粒子径:28
・メディア充填率:60%
・循環流量:5L/minであった。
・分散時間:120min
【0144】
上記の条件で分散を行い、微粒状着色剤分散液状単量体混合物11を作製した。微粒状着色剤分散液状単量体混合物11の物性及び分散条件を表1に示す。
【0145】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物12の製造例〕
メディア粒子分離セパレータ69の詰まり除去を行なわないで、20バッチ連続で分散を行なった以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物10を次工程に送液した。
【0146】
1バッチ終了時の圧力:0.14MPaに比べ、50バッチ終了後の圧力は、0.35MPaまで上昇しており、メディア粒子分離セパレータに着色剤等が、詰まったことにより、分散機内部圧力が上昇したものと思われる。
【0147】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物12の物性及び分散条件を表1に示す。
【0148】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物13の製造例〕
亜鉛フタロシアニン:0.4部を鉄フタロシアニン:0.4部に変更した以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物13を次工程に送液した。
【0149】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物13の物性及び分散条件を表1に示す。
【0150】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物14の製造例〕
亜鉛フタロシアニン:0.4部をアルミニウム系カップリング剤(アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート;味の素ファインテクノ社製、商品名「AL−M」):0.4部に変更した。上記以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物14を次工程に送液した。
【0151】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物14の物性及び分散条件を表2に示す。
【0152】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物15の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.05mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:2.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.030mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:1.5%
・開口率/メディア粒子径:30
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物15を次工程に送液した。
【0153】
分散終了後、グロスを測定したところ、アート紙上がざらついており、グロス値は、58であった。メディア粒子が小さすぎたため、メディア粒子の遠心力が足りず、十分に粗大粒子を分散できなかったことが原因と思われる。
【0154】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物15の物性及び分散条件を表2に示す。
【0155】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物16の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.60mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:2.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.390mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:16.3%
・開口率/メディア粒子径:27
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物16を次工程に送液した。
【0156】
分散終了後、グロスを測定したところ、アート紙上がざらついており、グロス値は、61であった。メディア粒子が大きすぎため、メディア粒子同士の衝突回数が足りず、分散不十分であったと思われる。
【0157】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物16の物性及び分散条件を表2に示す。
【0158】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物17の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.30mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:20.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.150mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:0.7%
・開口率/メディア粒子径:2
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物17を次工程に送液した。
【0159】
分散開始時圧力:0.14MPaに対し、分散終了時の圧力は、0.36MPaまで昇圧しており、メディア粒子分離セパレータの開口率が小さすぎたことが原因と思われる。また、分散終了後、分散機を分解清掃し、分散機内部を確認したところ、メディア粒子分離セパレータが、激しく磨耗していた。分散機内部が昇圧し、メディア粒子がパッキングしたことが原因と思われる。また、メディア粒子分離セパレータが、激しく磨耗したため、微粒状着色剤分散液状単量体混合物中へステンレス鋼(メディア粒子分離セパレータの材質)がコンタミしたと思われる。
【0160】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物17の物性及び分散条件を表2に示す。
【0161】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物18の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径 :0.30mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータスリット幅:0.70mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.150mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:17.6%
・開口率/メディア粒子径:59
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物1の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物18を次工程に送液した。
【0162】
分散終了後、分散機を分解清掃し、分散機内部を確認したところ、メディア粒子分離セパレータが、激しく磨耗しており、メディア粒子分離セパレータのスリットの厚みが薄すぎたため、強度不足によるものと思われる。
【0163】
また、メディア粒子分離セパレータが、激しく磨耗したため、微粒状着色剤分散液状単量体混合物中へステンレス鋼(メディア粒子分離セパレータの材質)がコンタミしたと思われる。微粒状着色剤分散液状単量体混合物18の物性及び分散条件を表2に示す。
【0164】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物19の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.05mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータウェッジワイヤー幅:1.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.015mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:1.5%
・開口率/メディア粒子径:30
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物19を次工程に送液した。
【0165】
分散終了後、グロスを測定したところ、アート紙上がざらついており、グロス値は、60であった。メディア粒子が小さすぎたため、メディア粒子の遠心力が足りず、十分に粗大粒子を分散できなかったことが原因と思われる。
【0166】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物19の物性及び分散条件を表2に示す。
【0167】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物20の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.60mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータウェッジワイヤー幅:1.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.200mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:16.7%
・開口率/メディア粒子径:28
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物20を次工程に送液した。
【0168】
分散終了後、グロスを測定したところ、アート紙上がざらついており、グロス値は、62であった。メディア粒子が大きすぎため、メディア粒子同士の衝突回数が足りず、分散不十分であったと思われる。
【0169】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物20の物性及び分散条件を表2に示す。
【0170】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物21の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.30mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータウェッジワイヤー幅:15.00mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.090mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:0.6%
・開口率/メディア粒子径:2
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物21を次工程に送液した。
【0171】
分散開始時圧力:0.12MPaに対し、分散終了時の圧力は、0.35MPaまで昇圧しており、メディア粒子分離セパレータの開口率が小さすぎたことが原因と思われる。また、分散終了後、分散機を分解清掃し、分散機内部を確認したところ、メディア粒子分離セパレータが、激しく磨耗していた。分散機内部が昇圧し、メディア粒子がパッキングしたことが原因と思われる。また、メディア粒子分離セパレータが、激しく磨耗したため、微粒状着色剤分散液状単量体混合物中へステンレス鋼(メディア粒子分離セパレータの材質)がコンタミしたと思われる。
【0172】
微粒状着色剤分散液状単量体混合物21の物性及び分散条件を表2に示す。
【0173】
〔微粒状着色剤分散液状単量体混合物22の製造例〕
分散工程の条件を
・メディア径:0.30mmビーズ(材質:ジルコニア)
・メディア粒子分離セパレータウェッジワイヤー幅:0.40mm
・メディア粒子分離セパレータ開口幅:0.090mm
・メディア粒子分離セパレータ開口率:18.4%
・開口率/メディア粒子径:61
に変更したこと以外は、微粒状着色剤分散液状単量体混合物6の製造例と同様の装置構成・条件にて分散を行い、20バッチ目の微粒状着色剤分散液状単量体混合物22を次工程に送液した。
【0174】
分散終了後、分散機を分解清掃し、分散機内部を確認したところ、メディア粒子分離セパレータが、激しく磨耗しており、メディア粒子分離セパレータのスリットの厚みが薄すぎたため、強度不足によるものと思われる。
【0175】
また、メディア粒子分離セパレータが、激しく磨耗したため、微粒状着色剤分散液状単量体混合物中へステンレス鋼(メディア粒子分離セパレータの材質)がコンタミしたと思われる。微粒状着色剤分散液状単量体混合物22の物性及び分散条件を表2に示す。
【0176】
<実施例1>
イオン交換水332部にNa3PO4・12H2Oを5部を投入し60℃に加温した後、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて3,500回転/分にて撹拌した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液27部を添加し、Ca3(PO4)2を含む水系媒体を得た。
【0177】
その後、分散質系として、
・スチレン単量体 30部
・n−ブチルアクリレート 30部
・飽和ポリエステル樹脂 5部
<プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(重合モル比10:12)、Tg=68℃、Mw=10000、Mw/Mn=5.12>
・低分子スチレン樹脂(Mw:3200、Mw/Mn:1.25、Tg:53℃)
10部
・フィッシャートロプシュワックス:融点78.0℃ 12部
・微粒状着色剤分散液状単量体混合物1 45部
上記処方を、60℃に加温し30分間溶解混合した。これに、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0178】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃,N2雰囲気下において、クレアミックスにて4500rpmで15分間撹拌し、重合性単量体混合物を造粒した。
【0179】
その後、フルゾーン撹拌翼(神鋼パンテック社製)で撹拌しつつ、70℃に昇温し、10時間反応させた。重合反応終了後、フルゾーン撹拌翼で撹拌を続けながら飽和水蒸気(ピュアスチーム/スチーム圧力205kPa/温度120℃)を導入した。飽和水蒸気の導入を開始から20分後、容器内の内容物の温度は100℃に達し、蒸留留分が出始めた。所定量の留分を得ることで残存モノマーを留去し、冷却してトナー粒子分散液を得た。
【0180】
トナー粒子分散液に塩酸を加えてトナー粒子表面のリン酸カルシウム塩を溶解した後、濾過・水洗・解砕・乾燥を行ないトナー粒子を得た。この得られたトナー粒子を、前述した画像濃度の評価方法に従い、評価を行った。結果を表1に示す。
【0181】
<実施例2乃至13>
実施例1の分散質系の処方の中で、単量体組成物を表1に示すように変更した以外は、全て実施例1と同様の操作を行ない、トナーを得た。画像濃度の評価結果を表1に示す。
【0182】
<比較例1乃至9>
実施例1の分散質系の処方の中で、単量体組成物を表2に示すように変更した以外は、全て実施例1と同様の操作を行ない、トナーを得た。画像濃度の評価結果を表2に示す。
【0183】
【表1】

【0184】
【表2】

【符号の説明】
【0185】
1:分散機、2:ケーシング、3:三方弁、4:分散機入口圧調整バルブ、5:分散機入口圧力計、6:ストレーナー、7:分散機入口温度計、8:分散機出口温度計、9:逆出弁、10:循環ポンプ、11:冷却手段、12:分散機出口圧力計、13:撹拌モーター、14、16:冷却水供給口、15、17:冷却水排出口、18:冷却ジャケット、19:分散機背圧調整バルブ、20:三方弁、21:ホールディングタンク、22:軸シール液タンク、23:エアー圧力計、24:レギュレーター、25:エアー投入口、26:軸シール液タンク圧力計、27:軸シール液注入ライン、28:軸シール液戻りライン、29:液体導入口、30:液体排出口、31:駆動軸、32:内室、33:外室、34:分散機回転ロータ突起、35:分散機回転ロータ、36:スリット、37:メディア粒子分離セパレータ、38:メディア粒子、41:分散機、42:ケーシング、43:三方弁、44:分散機入口圧調整バルブ、45:分散機入口圧力計、46:ストレーナー、47:分散機入口温度計、48:分散機出口温度計、49:逆出弁、50:循環ポンプ、51:冷却手段、52:分散機出口圧力計、53:撹拌モーター、54、55:冷却水供給口、56、57:冷却水排出口、58:冷却ジャケット、59:分散機背圧調整バルブ、60:三方弁、61:ホールディングタンク、62:軸シール液タンク、63:エアー圧力計、64:レギュレーター、65:エアー投入口、66:軸シール液タンク圧力計、67 軸シール液注入ライン、68:軸シール液戻りライン、69:円筒状ロータ、70:メディア粒子分離セパレータ(遠心分離スクリーン)、71:駆動軸、72:メディア粒子、73:ロータピン、74:ベッセルピン、75:粉砕室、76:液体導入口、77:液体排出口、78:ウェッジワイヤー、79:メディア粒子排出口、81:粉砕タンク、82:流入口、83:流出口、84:メディア粒子、85:駆動軸、86:主撹拌部材、87:メディア粒子分離セパレータ、88:支持軸、89:掻揚げ羽根、90:ホールディングタンク、91:冷却ジャケット、92:冷却水供給口、93:冷却水排出口、94:三方弁、95:循環ポンプ、96:分散機、97:温度計、98:圧力計、99:スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体、シナジスト、該シナジストへ配位可能な電子供与化合物を少なくとも含有している単量体混合物に着色剤を分散させ微粒状着色剤分散液状単量体混合物得る分散工程を少なくとも有するトナー粒子の製造方法であり、
該分散工程は、メディア式分散機へ送液し、分散処理するものであって、
該メディア式分散機は、液体導入口と液体排出口を備えた円筒状容器の内部にメディア粒子分離セパレータと駆動軸の回転により回転する回転ロータを具備し、該円筒状容器内にはメディア粒子が複数充填されており、該メディア粒子の粒子径、及び該メディア粒子分離セパレータの開口率が、下記式1及び式2を満たすことを特徴とするトナー粒子の製造方法。
式1:
0.20mm≦(メディア粒子径)≦0.50mm
式2:
5≦開口率/メディア粒子径≦49
(式2において、開口率は%単位で表示した数値であり、粒子径はmm単位で表示した数値である。)
【請求項2】
該メディア式分散機が、該液体導入口を有する第1の壁面と該液体排出口を有する第2の壁面とを有する該円筒状容器の内部に、スリットを有する円筒状のメディア粒子分離セパレータによって内室と外室とが設けられており、該内室内に回転ロータとメディア粒子が充填された分散機であり、該単量体混合物を該メディア式分散機へ送液し該微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得ることを特徴とする請求項1に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項3】
該メディア式分散機が、該液体導入口を有する第1の壁面と該液体排出口を有する第2の壁面とを有する該円筒状容器の内部に、水平方向に具備された駆動軸の回転によって回転可能な回転ロータとメディア粒子が充填され、
該メディア粒子と該単量体混合物を分離するメディア粒子分離セパレータが、該回転ロータの中心部に具備された分散機であり、該単量体混合物を該メディア式分散機へ送液し微粒状着色剤分散液状単量体混合物を得ることを特徴とする請求項1に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項4】
該分散工程は、該メディア式分散機の該液体排出口から該液体導入口方向に一定時間圧力をかけ、該メディア粒子分離セパレータのスリット間の詰まりを除去しながら、着色剤の分散を行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項5】
該シナジストが、亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−81220(P2011−81220A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233988(P2009−233988)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】