説明

トナー補給装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】補給口からトナーが排出されないような場合にでもトナー詰まりや搬送手段等の損傷を有効に防止し、現像装置に対して安定してトナーを補給することができるトナー補給装置を提供する。
【解決手段】トナーを貯留する容器本体と、前記容器本体の底面に設けられた補給口と、前記補給口を横断して配設され、少なくとも前記補給口近傍ではトナーを一方方向に搬送する第1搬送手段と、前記補給口に対応する前記第1搬送手段の上方を覆い、前記補給口に対応した覆い部分の前記第1搬送手段の搬送方向前後は開放されている覆い部材と、を備えているトナー補給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター、あるいはファクシミリ装置等の画像形成装置に適用される現像装置にトナーを供給するトナー補給装置、およびそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター等の画像形成装置においては、感光体ドラムに形成された静電潜像にトナーを供給して現像するための現像装置が該感光体ドラムに対向して取り付けられている。
【0003】
そして、この現像装置は画像形成装置に据え付けられているため、該現像装置に補給口を通して容器本体内に貯留されているトナーを補給するトナー補給装置(例えばトナーカートリッジ)が画像形成装置に着脱自在に取り付けられるのが一般的である。
【0004】
このようなトナー補給装置について、本願出願人も種々提案しており、例えば特許文献1では、上記容器本体が上記補給口を有するトナー送出部と、このトナー送出部に並設され該トナー送出部に搬送されるトナーを貯留する貯留部とに分けられたものを提案している。
【0005】
この特許文献1に開示のトナー補給装置は、上記トナー送出部に設けられ、回転駆動することにより補給口に向けてトナーを搬送する第1のトナー搬送手段と、上記貯留部に設けられ、回転駆動することによりトナーを攪拌するとともに該トナーを上記トナー送出部に搬送する第2のトナー搬送手段とを備え、画像形成装置の作動に伴い第1、第2のトナー搬送手段はともに補給口に向けてトナーを搬送するものとなされている。
【0006】
ところで、上記特許文献1に開示のトナー補給装置は、画像形成装置への取り付け前に補給口を通じたトナー漏れを防止するため、補給口を閉塞するシャッタ部材や熱シールフィルムが補給口に設けられ、トナー補給装置の取り付けに伴ってシャッタ部材をスライドさせて補給口を開放させ、或いは熱シールフィルムを剥離して補給口を開放させるように構成されている。そして、このように補給口が開放されると、容器本体の所定箇所に設けられたトナー検出器でトナーの有無を検出して容器本体に貯留されているトナーが無くなるまで、現像装置にトナーを補給し続けるように構成されている。
【特許文献1】特開2002−6610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のトナー補給装置によれば、第1及び第2のトナー搬送手段によりトナーを補給口周辺に集積するように構成されているので、例えば上記のように容器本体内のトナーが無くなるまでトナーを補給し続ける場合に現像装置内にトナーが充満して補給口を通じてトナーが排出し難い状態にあるにも拘わらず、補給口周辺にトナーが集積され続けることがあった。また、トナー補給装置を画像形成装置に取り付けた場合に、シャッタ部材が適正に動作せず、あるいは熱シールフィルムを剥離し忘れる等して、補給口が開放されず、容器本体内において補給口周辺にトナーが集積され続けることがあった。
【0008】
上記のように現像装置内にトナーが充満等して補給口からトナーが排出され難いにも拘わらず、補給口周辺にトナーが集積され続けると、補給口周辺にトナーが滞留して凝集し、トナーが詰まったり、第1のトナー搬送手段の負荷が増大しひいては該第1のトナー搬
送手段が損傷したり、この第1のトナー搬送手段を駆動させる駆動手段が損傷したりするといった不都合が発生することがあった。
【0009】
本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであり、補給口からトナーが排出されないような場合にでもトナー詰まりや搬送手段等の損傷を有効に防止し、現像装置に対して安定してトナーを補給することができるトナー補給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、トナーを貯留する容器本体と、前記容器本体の底面に設けられた補給口と、前記補給口を横断して配設され、少なくとも前記補給口近傍ではトナーを一方方向に搬送する第1搬送手段と、前記補給口に対応する前記第1搬送手段の上方を覆い、前記補給口に対応した覆い部分の前記第1搬送手段の搬送方向前後は開放されている覆い部材と、を備えているトナー補給装置。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記容器本体には、前記第1搬送手段が配設されるトナー送出部と、前記第1搬送手段と並設された第2搬送手段が配設される貯留部を有する、トナー補給装置。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または2の発明において、前記第1搬送手段の搬送方向下流端部には、還送手段が設けられている、トナー補給装置。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかのトナー補給装置を備えた画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、補給口を横断した状態でトナーを一方方向に搬送する第1搬送手段が設けられるので、この第1搬送手段によりトナーを適正に補給口に搬送することができる一方、補給口からトナーが排出されない場合でもトナーは補給口周辺に集積されず該補給口を通過して下流側に搬送されるので、補給口周辺でトナーが凝集してトナーが詰まったり、第1搬送手段の搬送負荷が増大して該第1搬送手段等が破損したりするといった不都合を効果的に防止することができる。
【0015】
また、この発明によれば、補給口に対応する第1搬送手段の上方に設けられた覆い部材を備えるので、容器本体内に貯留されているトナー残量の多少にかかわらず補給口の周辺のトナー圧が比較的安定し、現像装置に対して安定した状態でトナーを供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明に係るトナー補給装置を搭載した画像形成装置の一実施形態を示す全体概略図である。なお、本実施形態では、本発明に係るトナー補給装置を複写機に搭載した場合について説明するが、この発明に係るトナー補給装置は、例えばプリンター装置、ファクシミリ装置、スキャナ装置、そしてコピー機能、プリンター機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能等の各種機能を兼ね備えた複合機等に対しても適用可能である。
【0017】
この画像形成装置1は、装置本体2の下部に配設された給紙部100と、この給紙部100の上方に配設された用紙搬送部200と、給紙部100の上方に配設された画像形成部300と、この画像形成部300の側方に配設された定着部400と、これら画像形成部300及び定着部400の上方に配設された画像読取部500とが備えられている。
【0018】
給紙部100は、給紙カセット101に積層載置された用紙の束を、給紙ローラ115の回転動作によって最上位の用紙から1枚ずつ用紙搬送部200に給紙するものである。用紙搬送部200は、給紙部100から給紙された用紙を、各種ローラ対202によって画像形成部300に搬送し、さらに画像形成部300及び定着部400において画像形成がなされた用紙を排出ローラ対205によって装置本体2の側部に設けられた排出トレイ204に用紙を排出するものとなされている。
【0019】
画像読取部500は、コンタクトガラス上に載置された原稿に、露光ランプから光を照射し、反射鏡を介してその反射光をCCDラインセンサ等からなる光電変換部に導くことにより、原稿の画像情報を読み取るものである。画像形成部300は、上記画像読取部500の下方に配設され、電子写真プロセスによって、用紙上に所定のトナー像を形成するものであり、回転可能に軸支された光導電性を有する感光体ドラム301と、この感光体ドラム301の周囲にその回転方向に沿って、帯電装置302、露光装置303、現像装置304、転写装置305、クリーニング装置306および除電装置(図示せず)を備えている。定着部400は、上記画像形成部300の用紙搬送方向の下流側に配置され、画像形成部300においてトナー像が転写された用紙を、一対の定着ローラ401によって挟んで加熱し、用紙上にトナー像を定着させるものである。
【0020】
この画像形成装置1の基本的な作動状態を簡単に説明すると、帯電装置302により図1で時計方向に回転する感光体ドラム301が一様に帯電され、上記画像読取部500で読み取られた画像情報に基づいて露光装置303(レーザー操作装置等)からのレーザービームにより感光体ドラム301上に静電潜像が形成され、現像装置304により静電潜像に現像剤が付着されてトナー像が形成される。
【0021】
上記のようにトナー像が形成された感光体ドラム301に向けて、給紙部100から用紙搬送部200を通って用紙が画像形成部300に搬送され、この画像形成部300において転写ローラ等からなる転写装置305により感光体ドラム301の表面におけるトナー像が用紙に転写される。そして、トナー像が転写された用紙は感光体ドラム301から分離され、定着部400に搬送されてトナー像が定着される。定着部400を通過した用紙は、排出ローラ205を経て用紙排出トレイ204に排出される。
【0022】
そして、転写装置305による転写後に感光体ドラム301はクリーニング装置306及び除電装置で残留トナー、残留電荷を除去して、必要に応じて再び帯電装置302で帯電される。
【0023】
このような基本動作が繰り返し実行されると、現像装置304に収納されているトナーが消費される。この消費されたトナーを補給するため、感光体ドラム301と反対側における現像装置304の側方にトナー補給装置(トナーコンテナ)10が着脱自在に取り付けられている。なお、現像装置304は、感光体ドラム301に対して平行配置される現像ローラ304aとトナーを攪拌搬送する攪拌搬送ローラ304b,304cとを有し、トナー補給装置10からトナー取り込み口304dを通して現像装置304内に補給されたトナーを攪拌搬送ローラ304b,304cで摩擦帯電させつつ、現像ローラ304aに搬送し、該現像ローラ304aにより感光体ドラム301にトナーを供給するものとなされている。
【0024】
図2及び図3はトナー補給装置を示す斜視図であり、図4はトナー補給装置を現像装置とともに示す縦断面図である。
【0025】
このトナー補給装置10は、上方に開口する箱状の容器本体11と、この容器本体11
の上方開口部を閉塞する蓋体12とを備え、感光体ドラム301と反対側の現像装置304の側方に位置している。図5はこの容器本体を、後述する搬送スクリュー20や軒状部材132の一部を切り欠いて示す平面図である。
【0026】
容器本体11は、その幅方向(図5では上下方向)に細長い合成樹脂成形品であり、上記したように上方に開口する箱状体として形成されている。この容器本体11は、トナーを貯留する比較的大容量の貯留部14と、この貯留部14の現像装置304側に該貯留部14に連通した状態で並設されたトナー送出部13とを備える。
【0027】
トナー送出部13は、現像装置304に補給されるトナーが一時的に貯留される部分であり、現像装置304の一側部に設けられたトナー取り込み口304dの上方に位置するものとなされている。このトナー送出部13は、貯留部14との並設方向(図5では左右方向をいうが、以下単に並設方向という)に直交する幅方向(図5では上下方向をいうが、以下単に幅方向という)に細長く形成され、その底部111が後述する搬送スクリュー20に対応して円弧状に形成されている。この底部111には、現像装置304のトナー取り込み口304dと対向して所定形状(本実施形態では矩形状)のトナー補給口130が該底部111を貫通した状態で設けられている。また、本実施形態では、トナー送出部13は、貯留部14と比較して若干浅底に形成されている。
【0028】
さらに、トナー送出部13には、図4及び図5に示すように、幅方向、すなわちトナー送出部13の長手方向に沿って搬送スクリュー20(第1搬送手段)が容器本体11の幅方向の前後対向壁11a間に架設されている(図5参照)。
【0029】
この搬送スクリュー20は、トナー送出部13内のトナーをその幅方向一端(図5では上方)側から他端(図5では下方)側に向かって搬送する送りネジ状のものであり、トナー補給口130上を横断した状態で設けられる。
【0030】
具体的に、搬送スクリュー20は、容器本体11の前後対向壁11a間に回転自在に支持される第1回転軸21と、この第1回転軸21の外周面に突設されたスパイラルブレード22と、トナー搬送方向下流端部(図5では下端部)における第1回転軸21に突設された還送パドル23とを備える。この搬送スクリュー20の径は、1回転で搬送するトナー量を考慮して適宜設定される。
【0031】
第1回転軸21は、図示しない駆動手段(例えばモータ)により回転されるものであり、図4では時計方向に回転するものとなされている。スパイラルブレード22は、上記第1回転軸21の回転に伴って第1回転軸21の軸線方向一側方側から他側方側に向けて(図5では上方から下方向けて)トナーを搬送するものであり、第1回転軸21の周面に螺旋状に巻回されて構成されている。このスパイラルブレード22のピッチ等の具体的構成は、搬送するトナー量等を考慮して適宜設定される。還送パドル23は、上記スパイラルブレード22によってトナー送出部13の他端部に搬送されてきた余剰分のトナー(過搬送のトナー)を貯留部14側に還送するものであり、本実施形態では第1回転軸21の周面に複数個(本実施形態では2個)設けられている。これらの2個の還送パドル23は、図4に示すように、180°の位相差をもって第1回転軸21に突設され、トナー送出部13の他端部に集積されたトナーを効率よく貯留部14に還送するものとなされている。なお、言うまでもないが、単一の還送パドル23を第1回転軸21に設けるものとしてもよい。
【0032】
また、トナー送出部13には、容器本体11の現像装置304側の側壁11bから貯留部14の底部112に亘って上記補給口130の上方及び側方を覆うように板状の軒状部材(覆い部材)132が設けられている。具体的には、軒状部材132は、上記搬送スクリュー20の上方であって、上記トナー補給口130に対応する領域を平面視において覆い隠すように設けられ、これによりトナー補給口130の周辺に作用するトナー圧を軽減してトナー残量に基づくトナー圧のばらつきを抑制して安定した量のトナーを現像装置304に補給し得るものとなされている。本実施形態では、この軒状部材132をトナー補給口130の上方及び側方を覆った状態で湾曲して設けられているが、例えば、容器本体11の側壁11bから補給口130の開口領域に対して略水平に突設して構成したものや、容器本体11の側壁11bから貯留部14側に向かうに従い下方に傾斜した状態で突設して構成してもよく、或いは軒状部材を省略してもよい。
【0033】
なお、トナー補給口130の下方には、図2及び図3に示すように、該トナー補給口130を閉塞するシャッター部材93がスライド自在に設けられ、トナー補給装置10を装置本体2に取り付ける際に該シャッター部材93がスライドしてトナー補給口130を開放するものとなされている。
【0034】
一方、貯留部14は、トナー送出部13に搬送されるトナーを貯留する部分であって比較的大量のトナーを貯留し得るようにトナー送出部13よりも大容量に設定されている。すなわち、貯留部14は、幅方向に細長く形成されるとともに、底部112がトナー送出部13の底部111よりも曲率半径の大きい円弧状に形成され、その最下端部が上記トナー送出部13の最下端部よりも低位置となるように設定されている。
【0035】
この貯留部14には、上記幅方向、すなわちその長手方向に沿って攪拌搬送ブレード30(第2搬送手段)が配設されている。攪拌搬送ブレード30は、貯留部14に貯留されているトナーを攪拌するとともに、トナー送出部13にトナーを搬送するものであり、またこのトナーの攪拌搬送に伴って、幅方向において上記搬送スクリュー20と逆方向にトナーを搬送するものとなされている。すなわち、攪拌搬送ブレード30は、並設方向に直交する幅方向において他端側から一端側にトナーを搬送するものとなされている。
【0036】
具体的には、攪拌搬送ブレード30は、幅方向に沿って容器本体11の前後対向壁11a間に回転自在に支持される第2回転軸31と、この第2回転軸31に着脱自在に取り付けられ第2回転軸31と一体回転する搬送片32とを備える。
【0037】
第2回転軸31は、剛性を向上させて撓み変形し難いように構成され、本実施形態では断面視略コ字状に形成されている。このように第2回転軸31が撓み変形し難いように構成されると、該第2回転軸31から貯留部14の内壁面までの距離が軸線方向に沿って一定となり、搬送片32によるトナーの搬送量が第2回転軸31の軸線方向で安定する。この第2回転軸31は、一端部が対向壁11aの内壁面に突設された軸受け(図示せず)に載置される一方、他端部が対向壁11aを貫通してその突出端部に伝達ギヤ51が取り付けられ(図2参照)、この伝達ギヤ51を含むギヤ列50を介して上記第1回転軸21を回転駆動させる駆動手段により図4で時計方向に回転するものとなされている。従って、第2回転軸31は、これと一体回転する搬送片32が現像装置304側において下から上へ移動するように構成されている。
【0038】
また、第2回転軸31は、その長手方向に複数個(図5では4個)の係止爪311が設けられ、この係止爪311により搬送片32を着脱自在に係止するものとなされている。
【0039】
搬送片32は、可撓性を有する材料、例えばポリエチレンテレフタレート等の弾性を有する合成樹脂性シート又はフィルム等から第2回転軸31の軸線方向に細長い矩形状に形成されている。搬送片32の基端部には上記第2回転軸31の係止爪311に対応して複数個(本実施形態では4個)の係止孔320が設けられこの係止孔320に係止爪311が係止されることにより上記第2回転軸31に着脱自在に取り付けられる。
【0040】
また、搬送片32は、第2回転軸31から貯留部14の底部112までの最長距離よりも長く形成され、その先端部が底部112に摺接した撓み状態でトナーの掻き出しが可能となされている。本実施形態では、搬送片32の長さが、第2回転軸31と第1回転軸21との軸間距離と略同等に形成されている。従って、搬送片32は、第2回転軸31の回転に伴って撓んだ状態で貯留部14の内壁面、特に底部112に摺接するものとなされ、その回転過程で先端が貯留部14の内壁面を過ぎた際に撓み状態から弾性回復するものとなされている。
【0041】
また、搬送片32には、その先端部(遊端縁部)から第2回転軸31に取り付けられた基端部側に延びるスリット321が複数本形成され、このスリット321を傾斜した状態で設けることにより搬送片32の回転動作に伴って幅方向にトナーを搬送するものとなされている。具体的には、幅方向の一端部側(図6で上端部側)に設けられたスリット321aを除くスリット321は、先端に向かうに従い幅方向一端部側に傾斜して設けられ、この傾斜スリット321bにより上記搬送スクリュー20によるトナー搬送方向と逆方向である幅方向の一端部側にトナーを搬送するものとなされている。
【0042】
すなわち、傾斜スリット321bを設けると、この傾斜スリット321bにより区切られた領域330の先端部に鋭角部331と鈍角部332とが形成される。この鋭角部331における反発力は鈍角部332における反発力よりも弱く、従って図5に示すように搬送片32の回転に伴って鋭角部331が鈍角部332よりも遅れて回り、各領域330が傾斜して幅方向の一端部側にトナーを搬送するとともに、トナー送出部13にトナーを搬送するものとなされている。
【0043】
第2回転軸31に直交する方向に対するこの傾斜スリット321bの傾斜角度は、特に限定するものではないが、10°から50°の範囲内で設定されるのが好ましい。すなわち、この傾斜角度が小さすぎると、トナー送出部13に対するトナーの搬送効率は向上するものの幅方向におけるトナーの搬送効率が低下する。一方、傾斜角度が大きすぎると、幅方向におけるトナーの搬送効率は向上するもののトナー送出部13に対するトナーの搬送効率は低下する。従って、上記範囲内で設定すれば、トナー送出部13に対するトナーの搬送効率と幅方向におけるトナーの搬送効率とのバランスを図ることができる。
【0044】
また、上記スリット321で区切られた各領域には、幅方向の他端部(図6では下端部)の領域を除いてトナー量調整用の孔322が形成されている。このように、搬送片32にトナー量調整用の孔322を設けることによって、回転時に搬送片32に接触するトナー量が軽減され、先端部に載ったトナーのみが搬送される。これにより、一定量のトナーを確実に搬送しながら、搬送片32に作用するトナー圧が軽減されることになる。なお、搬送片32に設けられた孔322は本実施形態では矩形状のものと三角形状のものとが適宜配置されているが、その形状を特に限定するものではない。
【0045】
なお、容器本体11のギヤ列50が設けられた対向壁11aと反対側の対向壁11aには、トナー充填口が設けられ、トナー補給装置10を画像形成装置1から取り外してこのトナー充填口を通してトナー補給装置10内にトナーを補給し得るものとなされている。
【0046】
また、容器本体11の所定箇所には、トナーの存在を検知するトナー検出器(図示せず)が設けられ、このトナー検出器によってトナーの検出がなくなるまで画像形成装置1の作動に伴って搬送スクリュー20、攪拌搬送ブレード30の駆動手段を駆動するものとなされている。このトナー検出器は、公知のトナー検出器が設けられるので、ここではその説明を省略する。
【0047】
蓋体12は、上記容器本体11の上部開口部を閉塞する大きさに適宜設定され、上記容器本体に接着により取り付けられている。この蓋体12の下面には、上記軸受(図示せず)に載置された第1,第2回転軸21,31の移動を規制する規制突出部(図示せず)が設けられ、これらの回転軸21,31等を安定して回転させるものとなされている。
【0048】
次に、このトナー補給装置10の動作について説明する。
【0049】
まず、トナー補給装置10を画像形成装置1に装着する。すなわち、画像形成装置1の前面カバー(図示せず)を開放して現像装置304の側方所定箇所にトナー補給装置10をスライドさせて画像形成装置1に装着する。このとき、トナー補給装置10のシャッター部材93がスライドしトナー補給口130が開放される。なお、このトナー補給装置10には、初期状態でトナー送出部13と貯留部14との双方にトナーが充填されている。
【0050】
そして、画像形成装置1を作動させると、ギヤ列50を回転駆動させる駆動手段が作動し、ギヤ列50を介して第2回転軸31が回転駆動することにより攪拌搬送ブレード30が回転駆動するとともに、ギヤ列50を介して第1回転軸21が回転駆動することにより搬送スクリュー20が回転駆動する。
【0051】
第2回転軸31が回転駆動すると、該第2回転軸31に取り付けられている搬送片32が一体回転する。この搬送片32は、図6に示すように、その回転過程で貯留部14の底部112に撓んだ状態で摺接し、該底部112に対応して貯留されているトナーを攪拌しつつ、トナー送出部13にトナーを搬送するとともに、傾斜スリット321bにより傾斜した領域330の先端部により幅方向の他方側から一方側にトナーを徐々に搬送する。
【0052】
そして、トナー送出部13では、回転駆動している搬送スクリュー20のスパイラルブレード22が、幅方向の一方側から他方側にトナーを搬送する。このとき、図7に示すように、搬送スクリュー20がトナー補給口130を横断した状態で架設されているので、トナー補給口130が開放されている場合には、搬送スクリュー20が上流側からトナー補給口130にトナーを搬送し、図7(a)に示すように、トナー補給口130及び現像装置304のトナー取り込み口304dを通じて現像装置304内にトナーを自然落下させて現像装置304にトナーを補給する。
【0053】
一方、現像装置304内にトナーが充満している場合、或いはシャッター部材93が適正に動作しなかったり、トナー補給口130を閉塞する熱シールフィルムが剥離されていなかったり等の理由によりトナー補給口130が閉塞されている場合にはトナーがトナー補給口130を通して排出されず、この場合には図7(b)に示すように搬送スクリュー20がトナー補給口130の上流側から搬送されてきたトナーをトナー補給口130周辺に集積させることなく、そのままトナー送出部13の幅方向の他端側に搬送する。従って、トナー補給口130の周辺でトナーが凝集することがなく、これによりトナーが詰まったり、搬送スクリュー20の搬送負荷が増大して該搬送スクリュー20が破損したりするといった不都合を効果的に防止することができる。
【0054】
トナー送出部13の他端側では、上記第1回転軸21と一体回転する還送パドル23が、スパイラルブレード22により搬送されたトナーを貯留部14に効率的に還送する。従って、トナー送出部13の他端側においてもトナーの凝集を有効に防止することができる。
【0055】
そして、貯留部14では、再び攪拌搬送ブレード30が幅方向の一方側にトナーを搬送しつつ、トナー送出部13にトナーを搬送し、トナーの偏りを効果的に抑制することができる。すなわち、攪拌搬送ブレード30と搬送スクリュー20とによって、容器本体11
内でトナーを循環させ、この循環経路にトナー補給口130を設けることによって、トナー補給口130でトナーが排出されない場合でも、トナーの集積を効果的に防止し、トナーの集積に伴う凝集に起因して発生するトナー詰まりや搬送スクリュー20の損傷等の不都合を有効に防止している。
【0056】
なお、以上に本実施形態に係るトナー補給装置10について説明したが、この発明に係るトナー補給装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、以下のような変更が可能である。
【0057】
(1)上記実施形態では、還送手段としての還送パドル23を第1回転軸21に設け、この第1回転軸21と一体回転するものとなされたが、還送パドル23は第1回転軸21に設けられているものに限定されず、例えば第1回転軸21と別個の駆動手段により回転駆動するものであってもよい。ただし、上記実施形態のように、第1回転軸21に還送パドルを設ければ、駆動手段を別個設ける必要がなく、低コストで比較的簡単に還送手段を設けることができる点で有利である。
【0058】
(2)上記実施形態では第1及び第2回転軸21,31をともに同一方向で回転させるものとなされているが、ギヤ列の構成如何によって相互に逆方向に回転させることも可能である。また、第1及び第2回転軸21,31を異なる駆動手段により回転駆動させるものとしてもよい。
【0059】
以上のように本発明の実施の形態によれば、トナー送出部は、補給口を横断した状態で幅方向の一端側から他端側にトナー送出部内のトナーを搬送する第1搬送手段が設けられるので、この第1搬送手段によりトナーを適正に補給口に搬送することができる一方、補給口からトナーが排出されない場合でもトナーは補給口周辺に集積されず該補給口を通過して他端側に搬送されるので、補給口周辺でトナーが凝集してトナーが詰まったり、第1搬送手段の搬送負荷が増大して該第1搬送手段等が破損したりするといった不都合を効果的に防止することができる。
【0060】
ここで、第1搬送手段により上記幅方向の他端側にトナーを搬送した場合には、該他端側でトナーが凝集することが懸念されるが、この発明によれば、第1搬送手段の他端側にトナー送出部内のトナーを貯留部に還送する還送手段が設けられているので、過搬送されたトナーは貯留部に還送され、トナー送出部内の所定箇所にトナーが集積されて凝集するといった事態を有効に防止することができる。しかも、貯留部には、貯留されているトナーを上記トナー送出部に搬送するとともに、この搬送に応じて貯留部に貯留されているトナーを上記幅方向の他端側から一端側に搬送する第2搬送手段が設けられるので、貯留部におけるトナーの偏りを効果的に抑制することができる。
【0061】
すなわち、この本発明の実施の形態によれば、容器本体の幅方向に直交する方向にトナー送出部と貯留部とが並設され、このトナー送出部と貯留部とでは、容器本体の幅方向について互いに逆方向にトナーを搬送する第1及び第2搬送手段が設けられるとともに、トナー送出部と貯留部との間でトナーを搬送する還送手段及び第2搬送手段が設けられているので、容器本体内でトナーを循環させることができる。この循環経路上にトナーを排出する補給口を設けることにより、安定してトナーを供給することができる一方、補給口を通してトナーが排出されない場合には過搬送されるトナーを効果的に循環させてトナーの凝集を有効に防止し、この凝集に起因する上記不都合を回避することができる。
【0062】
また、還送手段と第1搬送手段とを確実に連動させることができ、第1搬送手段による搬送量に応じてトナーを貯留部に還送することができる。しかも、還送手段と第1搬送手段とを別個に設ける場合と比べて、これらの還送手段と第1搬送手段とを駆動させる駆動手段を共通化することができる等、低コストで比較的簡単な構成とすることができる。
【0063】
また、上記第1搬送手段は、上記容器本体の幅方向の対向側壁間に回転自在に支持される第1回転軸と、この第1回転軸に設けられ該第1回転軸の回転に伴って軸線一方向にトナーを搬送するスパイラルブレードとを備えるので、比較的簡単な構成で容器本体の幅方向に向かってトナーを確実に搬送することができる。しかも、還送手段が第1回転軸と一体回転するパドル状部材により構成されているので、簡単な構成で、トナー送出部の幅方向他端側に搬送されてきたトナーを確実に貯留部に還送することができる。
【0064】
また、上記第2搬送手段は、第2回転軸と、この第2回転軸に取り付けられた可撓性の搬送片とを備えるので、簡単な構成で貯留部のトナーをトナー送出部に搬送することができる。しかも、搬送片は、取付基端側から先端縁に向かって上記幅方向の他端側から一端側に傾斜するスリットが設けられているので、搬送片にスリットを設けるという簡単な構成でトナーを上記幅方向の他端側から一端側に確実に搬送することができる。
【0065】
また、上記補給口に対応する上記第1搬送手段の上方には、補給口周辺におけるトナー圧調整用の軒状部材が設けられているので、容器本体内に貯留されているトナー残量の多少にかかわらず補給口の周辺のトナー圧が比較的安定し、現像装置に対して安定した状態でトナーを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るトナー補給装置を備えた画像形成装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同トナー補給装置を示す斜視図である。
【図3】図2と異なる視点から見た場合同トナー補給装置を示す斜視図である。
【図4】同トナー補給装置を現像装置とともに示す概略断面図である。
【図5】同トナー補給装置の容器本体を示す平面図である。
【図6】同トナー補給装置の搬送片を示す平面図である。
【図7】同トナー補給装置の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
10 トナー補給装置
11 容器本体
13 トナー送出部
14 貯留部
20 搬送スクリュー(第1搬送手段)
21 第1回転軸
22 スパイラルブレード
23 還送パドル(還送手段)
30 攪拌搬送ブレード(第2搬送手段)
31 第2回転軸
32 搬送片
130 トナー補給口
132 軒状部材(覆い部材)
304 現像装置
321 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを貯留する容器本体と、
前記容器本体の底面に設けられた補給口と、
前記補給口を横断して配設され、少なくとも前記補給口近傍ではトナーを一方方向に搬送する第1搬送手段と、
前記補給口に対応する前記第1搬送手段の上方を覆い、前記補給口に対応した覆い部分の前記第1搬送手段の搬送方向前後は開放されている覆い部材と、を備えているトナー補給装置。
【請求項2】
前記容器本体には、前記第1搬送手段が配設されるトナー送出部と、
前記第1搬送手段と並設された第2搬送手段が配設される貯留部を有する、請求項1記載のトナー補給装置。
【請求項3】
前記第1搬送手段の搬送方向下流端部には、還送手段が設けられている、請求項1または2記載のトナー補給装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトナー補給装置を備えた画像形成装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−42790(P2009−42790A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298448(P2008−298448)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【分割の表示】特願2003−305964(P2003−305964)の分割
【原出願日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】