説明

トナー

【課題】アモルファスシリコン感光体を具備する画像形成装置において発生する感光体の絶縁破壊を抑えることができるトナーを提供する。
【解決手段】アモルファスシリコン感光体41を具備する画像形成装置30に用いられるトナーであり、トナー母粒子として少なくとも結着樹脂および共役系ポリマーを含み、前記共役系ポリマーの量が、結着樹脂100質量部に対して、2〜10質量部であるトナーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置における静電潜像の現像に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、これらの複合機等の画像形成装置においては、下記のようにして被転写体に画像が形成される。
感光体の表面を帯電手段によって一様に帯電させる。
露光手段によって感光体の表面を露光して静電潜像を形成する。
現像手段によって静電潜像にトナーを付着させて、トナー像として現像する。
転写手段によってトナー像を感光体から被転写体(紙等。)へ転写する。
定着手段によってトナー像を被転写体に定着させ、画像を形成する。
クリーニング手段によって感光体の表面に残留したトナーを除去し、次の画像形成に備える。
【0003】
前記感光体としては、Se系感光体、CdS感光体、OPC(有機系感光体)、アモルファスシリコン感光体等が知られている。
Se系感光体は、電子写真技術の創成期から用いられた伝統的な感光体である。しかし、環境への配慮から、廃棄の際には、セレンを回収する必要がある。
OPCは、環境安全性に優れ、低コストであるため、現在、感光体として広く用いられる。しかし、耐摩耗性および耐久性の問題を有する
アモルファスシリコン感光体は、環境安全性に優れ、また、表面硬度が高い(ビッカース硬度で1500〜2000である。)ため、長寿命が期待でき、CdS感光体の数倍の耐刷性能を有する。
【0004】
しかし、アモルファスシリコン感光体を具備し、かつブレード方式のクリーニング手段を具備した画像形成装置において従来のトナーを用いた場合、感光体の絶縁破壊による異常画像が発生する。該理由は、アモルファスシリコン感光体がOPCよりも絶縁破壊に弱いためであると考えられる。絶縁破壊の発生場所は、感光体をクリーニングするブレード稜線部(先端付近)である。ブレード稜線部に滞留し続ける同じトナー(トナー母粒子および外添剤)が、ブレードとの摩擦で過剰に帯電し(過帯電)、ある上限を超えると一気に放電を行う。そのとき、感光体に向かって1点放電する(極微小領域に放電する)ことにより感光体が絶縁破壊すると考えられる。
感光体の絶縁破壊が起こると、修復不能な不具合である、感光体の感光層の破壊が発生し、画像上に黒い点が顕著に現れてしまう。
【0005】
感光体の絶縁破壊を抑えるトナーまたは画像形成装置としては、下記のものが提案されている。
(1)遊離磁性粉の存在するトナー(特許文献1)。
(2)トナー母粒子の表面を低抵抗の酸化チタン微粒子で表面処理したトナー(特許文献2)。
(3)感光層の膜厚を規定した感光体を具備する画像形成装置(特許文献3)。
【0006】
しかし、(1)のトナーには、遊離磁性粉が現像スリーブや感光体に付着するおそれがある。現像スリーブや感光体に遊離磁性粉がごく微量でも付着すると、それを核として付着が成長し、致命的な画像欠陥を引き起こすことがよく知られている。
また、(2)のトナーでは、酸化チタン微粒子の埋没、脱離により、十分な効果が得られない。また、脱離した酸化チタン微粒子が、現像スリーブや感光体に付着することが懸念される。
【0007】
(3)の画像形成装置においては、本来、絶縁破壊の原因となっているはずのトナーには対策がとられていない。すなわち、特許文献3には、トナーに関する特別な規定がない。そのため、(3)の画像形成装置においては、今後、特性の異なるトナーを用いた場合に、感光体の絶縁破壊が発生することが懸念される。
【特許文献1】特開2003−149857号公報
【特許文献2】特開2005−017524号公報
【特許文献3】特開2002−287391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アモルファスシリコン感光体を具備する画像形成装置において発生する感光体の絶縁破壊を抑えることができるトナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のトナーは、アモルファスシリコン感光体を具備する画像形成装置に用いられるトナーであり、トナー母粒子として少なくとも結着樹脂および共役系ポリマーを含み、前記共役系ポリマーの量が、結着樹脂100質量部に対して、2〜10質量部であることを特徴とする。
前記共役系ポリマーは、ポリアセチレン系ポリマーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトナーは、アモルファスシリコン感光体を具備する画像形成装置において発生する感光体の絶縁破壊を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(トナー)
本発明のトナーは、トナー母粒子に対して、必要に応じて外添剤を含む。
【0012】
トナー母粒子は、結着樹脂および共役系ポリマーを含み、必要に応じて、着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉等を含む。
【0013】
結着樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等。)、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂等。)、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0014】
共役系ポリマーとしては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン等の、いわゆる導電性ポリマーが挙げられ、透明性が高く、色味の調整が不要である点から、ポリアセチレン系ポリマーが好ましい。
共役系ポリマーの量は、結着樹脂100質量部に対し、2〜10質量部であり、3〜7質量部が好ましい。
【0015】
着色剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料等が挙げられる。
着色剤の量は、結着樹脂100質量部に対し、2〜15質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましい。
【0016】
離型剤としては、ワックス類、低分子量オレフィン系樹脂が挙げられる。ワックス類としては、例えば、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸の高級アルコールエステル、アルキレンビス脂肪酸アミド化合物、天然ワックス等が挙げられる。低分子量オレフィン系樹脂としては、数平均分子量が1000〜10000、好ましくは2000〜6000の範囲にあるポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体等が挙げられ、低分子量ポリプロピレンが好ましい。
離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対し、1〜15質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。
【0017】
正電荷制御剤としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロールイド等の4級アンモニウム塩;4級アンモニウム塩を有する樹脂またはオリゴマー;カルボン酸塩を有する樹脂またはオリゴマー;カルボキシル基を有する樹脂またはオリゴマー等が挙げられる。
【0018】
負電荷制御剤としては、有機金属錯体またはキレート化合物が挙げられ、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシヤリーブチルサリチル酸クロム等が挙げられ、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体または塩が好ましい。
電荷制御剤の量は、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0019】
本発明のトナーを磁性一成分現像剤として用いる場合、トナー母粒子に磁性粉を含ませてもよい。
磁性粉としては、例えば、フェライト、マグネタイト等の、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属または合金またはこれらの元素を含む化合物;強磁性元素を含まないが適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金;二酸化クロム等が挙げられる
磁性粉の量は、結着樹脂100質量部に対し、50〜100質量部が好ましい。
【0020】
トナー母粒子の製造方法としては、粉砕分級法、重合法、溶融造粒法、スプレー造粒法等の公知の製造方法が挙げられる。
【0021】
トナー母粒子には、外添剤を外添してもよい。
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、各種脂肪酸の金属石鹸(ステアリン酸亜鉛等。)等が挙げられる。
外添剤の量は、トナー母粒子100質量部に対し、0.3〜5質量部が好ましい。
【0022】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像剤として用いてもよく、キャリアと組み合わせて二成分現像剤として用いてもよい。
キャリアとしては、磁性体の粒子、または結着樹脂中に磁性体を分散させた樹脂粒子が挙げられる。
二成分現像剤における本発明のトナーの割合は、二成分現像剤(100質量%)中、2〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。
【0023】
(画像形成装置)
本発明のトナーは、アモルファスシリコン感光体を具備する画像形成装置に用いられる。
【0024】
アモルファスシリコン感光体は、ドラム状等の導電性基体の表面に、アモルファスシリコン系の感光層を形成した公知の感光体である。
感光層の材料としては、a−Si、a−SiC、a−SiO、a−SiON等の光導電性を有する、アモルファスシリコン系の材料が挙げられる。
感光層は、グロー放電分解法、スパッタリング法、ECR法、蒸着法等の気相成長法によって形成できる。
【0025】
画像形成装置としては、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、これらの複合機等が挙げられる。
図1は、画像形成装置の一例を示す概略構成図である。複写機30(画像形成装置)は、画像形成ユニット31、排紙ユニット32、画像読取ユニット33、および原稿給送ユニット34を有して概略構成される。
【0026】
画像形成ユニット31は、画像形成部31aおよび給紙部31bを有する。
画像形成部31aは、ドラム状のアモルファスシリコン感光体41、ならびに該アモルファスシリコン感光体41の回転方向に沿って、アモルファスシリコン感光体41の周囲に配置された、帯電器42(帯電手段)、露光器43(露光手段)、現像器44(現像手段)、転写ローラ45(転写手段)、およびクリーニング装置46(クリーニング手段)を有する。
【0027】
排紙ユニット32は、中間トレイ32aおよび排紙トレイ32bを有する。なお、中間トレイ32aおよび排紙トレイ32bは、いわゆる胴内排紙部として構成されている。
画像読取ユニット33は、光源33aおよび光学素子33bを有する。
原稿給送ユニット34は、原稿載置トレイ34a、原稿給送機構34b、および原稿排出トレイ34cを有する。
【0028】
複写機30においては、原稿載置トレイ34a上に載置された原稿が、原稿給送機構34bによって画像読取位置Pに送られた後、原稿排出トレイ34cに排出される。
原稿が原稿読取位置Pに送られた段階で、光源33aからの光を利用して、CCD等の光学素子33bにて原稿上の画像が読み取られ、原稿上の画像に対応した画像信号が形成される。
一方、給紙部31bに積載された用紙S(被転写体)は、一枚ずつ画像形成部31aに送られる。
【0029】
画像形成部31aにおけるアモルファスシリコン感光体41は、図中、実線矢印で示す方向に回転駆動されて、帯電器42により、その表面が均一に帯電される。その後、画像信号に基づいて、露光器43によりアモルファスシリコン感光体41に対して露光プロセスが実施され、アモルファスシリコン感光体41の表面に静電潜像が形成される。静電潜像に、現像器44によりトナーを付着させて現像し、アモルファスシリコン感光体41の表面にトナー像を形成する。そして、トナー像は、アモルファスシリコン感光体41と転写ローラ45とのニップ部に搬送される用紙Sに転写される。転写が行われた後、アモルファスシリコン感光体41に残留する残留トナーについては、クリーニング装置46内のクリーニングローラ46aおよびクリーニングブレード46bで除去される。
【0030】
トナー像が転写された用紙Sは、定着ユニット47(定着手段)に搬送されて、定着プロセスが行われる。
定着後の用紙Sは、排紙ユニット32に送られる。後処理(例えば、ステイプル処理等。)を行う場合には、用紙Sは中間トレイ32aに送られた後、後処理が行われる。その後、用紙Sは、画像形成装置の側面に設けられた排出トレイ部(図示略)に排出される。一方、後処理を行わない場合には、用紙Sは中間トレイ32aの下側に設けられた排紙トレイ32bに排紙される。
【0031】
以上説明した本発明のトナーにあっては、共役系ポリマーを含むトナー母粒子を含むため、トナーの局所的な過帯電が抑えられ、トナーから感光体への1点放電が起こりにくい。そのため、感光体の絶縁破壊が抑えられ、画像不具合(黒点)の少ない安定した画像が得られる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
〔製造例1〕
モノマー(ビス(4−ブトキシフェニル)−(4−エチニルフェニル)アミン(BBEA))の合成:
【0034】
p−ブトキシフェニルアニリンとp−ブトキシフェニルブロミドとを、酢酸パラジウム、助触媒である1,1’−(ビスジフェニルホスフィノ)フェロセン、ナトリウムt−ブトキシドの存在下に反応させて、ビス(4−ブトキシフェニル)アニリンを得た。
ビス(4−ブトキシフェニル)アニリンに、N−ブロムスクシンイミドを、N,N−ジメチルホルムアミドの存在下に反応させてビス(4−ブトキシフェニル)アニリノ−4−ブロミドを得た。
ビス(4−ブトキシフェニル)アニリノ−4−ブロミドを、テトラヒドロフランの存在下にn−ブチルリチウムおよびヨウ素で前処理した。これに、アセチレンアルコールのトリエチルアミン溶液を加え、Pd(PPh、PPh(ただし、PPhはトリフェニルホスフィンである。)、ヨウ化銅(I)の存在下に反応させた後、トルエン中で、水素化ナトリウムで処理することにより、BBEAを得た。なお、各工程は、ほぼ定量的に反応が進行するように適宜反応温度を調整した。
【0035】
〔製造例2〕
ポリアセチレン系ポリマー(ポリ(ビス(4−ブトキシフェニル)−(4−エチニルフェニル)アミン)(PBBEA))の合成:
【0036】
隔膜ラバーのキャップをした2つの注入口を備えたU型ガラスアンプルを用意した。
アンプルの一方の注入口に、[Rh(NBD)Cl](ただし、NBDはノルボルナジエンである。)3.3mg(7.3ミリモル)および助触媒であるトリエチルアミン20μLを入れ、アンプルの他方の注入口に、BBEA0.3mg(7.3ミリモル)を入れた。さらに、アンプルの両方の注入口に、溶媒であるクロロホルム7.3ミリモルをそれぞれ入れ、アンプルの両側の溶液を10分間静置した後、モノマー溶液と触媒溶液とを混合して重合温度30℃で重合を開始させた。2時間後、ポリマー溶液を大量のメタノールに注いで橙色の繊維を析出させ、ろ過し、室温で24時間真空乾燥して、PBBEAを得た。
【0037】
〔実施例1〕
ポリエステル樹脂(酸価:5.6mgKOH/g、融点:120℃)100質量部、ポリアセチレン系ポリマー(PBBEA)5質量部、カーボンブラック5質量部、離型剤(日本精蝋社製、FT−100)3質量部、および電荷制御剤(クラリアント社製、P51)1質量部をヘンシェルミキサ(三井三池工業社製)にて混合し、押出機(池貝社製、PCM−30)にて混練し、ターボミル(ターボ工業社製)にて粉砕した後、エルボージェット分級機(日鉄鉱業社製)にて分級を行ない、平均粒子径7.8μmのトナー母粒子を得た。
【0038】
トナー母粒子100質量部に対して、外添剤であるシリカ微粒子(日本アエロジル社製、RA200H)1.5質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池工業社製)にて混合し、トナーを得た。
トナーの割合が5.0質量%となるように、トナーとキャリア(パウダーテック社製 、フェライトキャリヤ、平均粒子径:45μm)とをロッキングミキサにて30分間混合し、二成分現像剤を得た。
【0039】
二成分現像剤を、アモルファスシリコン感光体を具備する複写機(京セラミタ社製、KM−7530(75枚機))に搭載し、高温低湿環境(温度:32.5℃、相対湿度20%)において2万枚の間欠耐刷を行った。ちなみに、低湿環境では、トナーのチャージアップが起こりやすい。また、高温環境および間欠耐刷では、トナーの劣化が早く、トナーの流動性が悪くなるため、クリーング手段にトナーが溜まりやすい。このように、高温低湿環境および間欠耐刷においては、感光体の絶縁破壊が起こりやすい。
【0040】
(画像濃度)
画像濃度(ID)は、マクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製、RD914)により測定した。判定基準は下記の通りである。結果を表1に示す。
1.4以上:優、
1.3〜1.4:良、
1.2〜1.3:可、
1.2未満:不可。
【0041】
(余白部分のかぶり濃度)
余白部分のかぶり濃度(FD)は、画像の白紙相当部のIDの値からベースペーパーのIDを引いた値とした。判定基準は下記の通りである。結果を表1に示す。
0.003以下:優、
0.004〜0.007:可、
0.008以上:不可。
【0042】
(黒点)
画像上の黒点の発生は、目視にて判断した。判定基準は下記の通りである。結果を表1に示す。
○:2万枚耐刷後、画像に黒点が見られない。
×:2万枚耐刷後、画像に黒点が見られる。
【0043】
〔実施例2〕
ポリアセチレン系ポリマーの量を2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。
該トナー母粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび二成分現像剤を得た。
該二成分現像剤を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
〔実施例3〕
ポリアセチレン系ポリマーの量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。
該トナー母粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび二成分現像剤を得た。
該二成分現像剤を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
〔比較例1〕
ポリアセチレン系ポリマーの量を1.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。
該トナー母粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび二成分現像剤を得た。
該二成分現像剤を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
〔比較例2〕
ポリアセチレン系ポリマーの量を12質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。
該トナー母粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび二成分現像剤を得た。
該二成分現像剤を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
〔比較例3〕
ポリアセチレン系ポリマーの量を0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。
該トナー母粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび二成分現像剤を得た。
該二成分現像剤を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1〜3では、トナーに適度なリークサイトがあるため、トナーの過帯電が抑えられ、黒点等の不具合なく、画像濃度も安定していた。
比較例1では、共役系ポリマーの量が少ないため、トナーの過帯電が起こり、感光体の絶縁破壊による黒点が発生した。
比較例2では、共役系ポリマーの量が多いため、トナーリークサイトが多すぎ、トナーの帯電不良によるかぶりが発生した
比較例3では、共役系ポリマーを用いていないため、トナーの過帯電が顕著となり、耐刷による画像濃度の低下および感光体の絶縁破壊による黒点が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のトナーは、アモルファスシリコン感光体を具備する画像形成装置用のトナーとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】アモルファスシリコン感光体を具備する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
30 複写機(画像形成装置)
41 アモルファスシリコン感光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファスシリコン感光体を具備する画像形成装置に用いられるトナーであり、
トナー母粒子として少なくとも結着樹脂および共役系ポリマーを含み、
前記共役系ポリマーの量が、結着樹脂100質量部に対して、2〜10質量部である、トナー。
【請求項2】
前記共役系ポリマーが、ポリアセチレン系ポリマーである、請求項1に記載のトナー。

【図1】
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【公開番号】特開2008−216856(P2008−216856A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56920(P2007−56920)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】