説明

トラクション係数を低下させることによって大きい低速および中速エンジン用のエンジンオイル組成物の燃料効率を向上させる方法

本発明は、グループII基油、グループIII基油及びグループIV基油から選択される1種以上の第1基油と、ポリイソブチレン(PIB)から選択される第2基油のブレンドを使用して油を配合し、好ましくは、清浄剤を添加して、油のトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイル組成物の燃料効率を向上させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油調合物(又は配合物)を使用する大きい低速および中速エンジンの運転に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋および固定出力用途向けに設計されたディーゼルエンジンは、20以下のシリンダーを有する2サイクルか4サイクルかのどちらかであることができ、典型的には低速、中速または高速ディーゼルエンジンに分類される。これらのエンジンは、残留燃料油または重油から天然ガスまでの範囲の多種多様な燃料を燃やし(ディーゼル圧縮または火花点火)、舶用推進、海洋補助(船舶発電)、分散発電、および熱電併給(CHP)向けに最も一般的に用いられている。そのようなエンジンの潤滑は、全損(すなわち、シリンダー油によってシリンダーに直接供給される潤滑油)であるかまたは油だめを含む再循環であることができる。臨界エンジン部品の潤滑は、ピストンリング、シリンダーライナー、ベアリング、ピストン冷却、燃料ポンプ、エンジン制御水力学などを含む。燃料が典型的にはこれらのエンジンを運転する主要コストであり、船舶コンテナー輸送に用いられる典型的な12シリンダー、90cm口径低速ディーゼルエンジンは、$480/MTの今日の価格で年間約$33Mまでの重油を燃やすであろう。それ故、1%ほどの少ない燃料効率ゲインが船舶経営者に約$330kまでの年間節約をもたらすであろう。加えて、International Marine Organization(国際海事機関)、U.S.Environmental Protection Agency(米国環境保護庁)およびCalifornia Air Resources Board(カリフォルニア大気資源委員会)などの、政府機関は、これらのエンジンに対する排出物規定を法制化中である。燃料効率の向上は、相応に排出物(CO、SO、NOおよび粒子状物質)を低減するだろうし、それは幾つかの排出権取引価値をもたらすはずである。
【0003】
潤滑油は一定の高温環境にさらされるので、潤滑油の寿命は多くの場合その酸化安定性によって制限される。さらに、エンジンは、窒素酸化物(NO)の高排出とともに作動するので、潤滑油寿命はまた、その耐硝化性によって制限される可能性がある。長期的な必要条件は、潤滑油がまた、とりわけピストンおよびピストンリングなどの決定的に重要な構成要素に関して、エンジンの高温環境内で清浄度を維持しなければならないことである。それ故、これらのエンジンオイルは、酸化および硝化に対する向上した耐性によって長寿命を促進しながら良好な清浄度品質を有することが望ましい。
【0004】
特許文献1は、液体の油混和性ポリイソブチレン(PIB)ならびに清浄剤、好ましくは過塩基性フェノレート、フェニレート、サリチレートまたはスルホネートの1つ以上、酸化防止剤、摩耗防止剤および分散剤を含む添加剤パッケージと組み合わせて中重質グループIもしくはグループII中性ベースオイル、典型的には300〜500−600SUS(約12mm/秒以下の100℃でのKV)を含む海洋および固定低速ディーゼルエンジンにおける使用のための向上した清浄度および負荷容量ならびに低下したポートデポジット特性のディーゼルエンジンシリンダー油に関する。完成潤滑油は、100℃で15〜25mm/秒の範囲のKV(又は動粘度)および40〜100mg KOH/gの範囲の全塩基価(Total Base Number)を有する。
【0005】
酸化、硝化およびデポジット形成に対する油の耐性の増加によって立証されるような向上した寿命のガスエンジンオイルが特許文献2の主題である。当該特許のガスエンジンオイルは、主要量の潤滑粘度のベースオイルと、約250以下の全塩基価(TBN)を有する少なくとも1つのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩および前述の成分より低いTBNを有する第2アルカリもしくはアルカリ土類金属塩を含む清浄剤の混合物を含む少量の添加剤混合物とを含む低灰分ガスエンジンオイルである。この第2アルカリもしくはアルカリ土類金属塩のTBNは典型的には、前述の成分のそれの約半分以下であろう。
【0006】
特許文献2の十分に調合されたガスエンジンオイルはまた、分散剤(約0.5〜8容積%)、フェノール系またはアミン系酸化防止剤(約0.05〜1.5容積%)、トリアゾール、アルキル置換ジメルカプトチアジアゾールなどの金属不活性化剤(約0.01〜0.2容積%)、金属ジチオホスフェート、金属ジチオカルバメート、金属ザンテートまたはトリクレジルホスフェートなどの摩耗防止添加剤(約0.05〜1.5容積%)、ポリ(メタ)アクリレートまたはアルキル芳香族ポリマーなどの流動点降下剤(約0.05〜0.6容積%)、シリコーン消泡剤などの消泡剤(約0.05〜0.15容積%)ならびにオレフィンコポリマー、ポリメタクリレート、スチレン−ジエンブロックコポリマー、および星形コポリマーなどの粘度指数向上剤(約15容積%以下、好ましくは約10容積%以下)を含む、当業者に公知のその他の標準添加剤を典型的には含有することができる。
【0007】
特許文献3は、主要量の潤滑粘度のベースオイルならびに1つ以上の金属サリチレート清浄剤と1つ以上の金属フェノレートおよび/または金属スルホネート清浄剤との少量の混合物を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に関する。
【0008】
潤滑油基油は、100℃で約5〜20cStの動粘度を典型的に有するあらゆる天然または合成潤滑ベースオイル基材油留分である。好ましい実施形態においては、粘度指数向上剤の使用は、本発明調合物を製造するために使用される潤滑油ベースオイル留分からの100℃で粘度約20cSt以上の油の排除を可能にする。それ故、好ましいベースオイルは、たとえあったとしても、少量の重質留分;たとえば、たとえあったとしても、少量の100℃で粘度20cSt以上の潤滑油留分をほとんど含まない。
【0009】
潤滑油基油は、天然潤滑油、合成潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な潤滑油基油としては、原油の芳香族および極性成分を(溶媒抽出するよりもむしろ)水素化分解することによって製造される水素化分解体基油だけでなく、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化によって得られる基油が挙げられる。好適な基油としては、APIカテゴリーI、IIおよびIIIのものが挙げられ、ここで、飽和物レベルおよび粘度指数は、
グループI−それぞれ、90%未満および80〜120;
グループII−それぞれ、90%超および80〜120;ならびに
グループIII−それぞれ、90%超および120超
である。
【0010】
清浄剤の混合物は、少なくとも0.65重量%硫酸塩灰分の潤滑油を達成するのに十分な量でその他の金属塩または金属塩の群(下に列挙される)と組み合わせて使用される約150超〜300以上の高TBNを有する1つ以上の金属スルホネート、サリチレート、フェノレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第1金属塩または金属塩の群、約50超〜150の中TBNを有する1つ以上の金属サリチレート、金属スルホネート、金属フェノレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第2金属塩または金属塩の群、ならびに約10〜50のTBNを有する、中性または低TBNと同定される1つ以上の金属スルホネート、金属サリチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第3金属塩または金属塩の群を含み、中プラス中性/低TBN清浄剤の総量は、約0.7容積%以上(活性成分)であり、ここで、中または低/中性TBN清浄剤の少なくとも1つは金属サリチレートであり、好ましくは中TBN清浄剤の少なくとも1つは金属サリチレートである。高TBN清浄剤の総量は、約0.3容積%以上(活性成分)である。混合物は、中または中性サリチレートが必須成分である状態で、少なくとも2つの異なるタイプの塩を含有する。高TBN清浄剤対中プラス中性/低TBN清浄剤の容積比(活性成分を基準とする)は、約0.15〜3.5の範囲にある。
【0011】
清浄剤の混合物は、清浄剤混合物中の活性成分に基づいて(又はを基準として)約10容積%以下の量で、好ましくは活性成分に基づいて約8容積%以下、より好ましくは清浄剤混合物中の活性成分に基づいて6容積%以下、最も好ましくは清浄剤混合物中の活性成分に基づいて、約1.5〜5.0容積%の量で潤滑油調合物に添加される。好ましくは、すべてのTBNのうち使用される金属サリチレートの総量は、金属サリチレートの活性成分に基づいて、0.5容積%〜4.5容積%の範囲にある。
【0012】
特許文献4は、100℃で約40cSt(mm/秒)〜1000cSt(mm/秒)の粘度を有するPAOと、100℃で約2.0cSt(mm/秒)以下の粘度を有するエステルとのブレンドであって、PAOとエステルとのブレンドがPAOの粘度指数以上の粘度指数を有するブレンドを含む完成自動車ギア潤滑油およびギアオイルの調製に有用な潤滑油組成物、自動車ギア潤滑組成物および流体に関する。この組成物は、増粘剤、酸化防止剤、阻害剤パッケージ、防錆添加剤、分散剤、清浄剤、摩擦改良剤、トラクション改良添加剤、乳化破壊剤、消泡剤、染料および曇り防止剤をさらに含有してもよい。
【0013】
特許文献5は、低、中および高TBN清浄剤の少なくとも2つ、好ましくはサリチル酸カルシウムを含む潤滑油組成物用の清浄剤添加剤に関する。この清浄剤は、グループII基油、グループIII基油またはワックス異性化体基油およびそれらの混合物の1つと、任意選択の少量の共基油とを含む潤滑油組成物中に存在する。共基油としては、ポリアルファオレフィンオリゴマーの低および中および高粘度油、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、その他の炭化水素油、補充のヒドロカルビル芳香族化合物などが挙げられる。
【0014】
特許文献6は、潤滑油が100℃で96cSt(mm/秒)超の第1基油と第2基油との間の粘度差の少なくとも2つの基油を含む、向上したマイクロピッチング特性のための潤滑油ブレンドに関する。少なくとも1つの基油は、6cSt(mm/秒)未満だが2cSt(mm/秒)超の粘度のポリアルファオレフィンであり、第2基油は、100℃で100cSt(mm/秒)超だが300cSt(mm/秒)未満の粘度の合成油である。第2基油は、高粘度ポリアルファオレフィンであることができる。
【0015】
特許文献7は、100℃で96cSt(mm/秒)超の第1基油と第2基油と間の粘度差の少なくとも2つの基油を含む潤滑油ブレンドを指向しており、潤滑油は改善された排気を示す。このブレンドは、100℃で10cSt(mm/秒)未満だが2cSt(mm/秒)超の粘度を有する少なくとも1つの合成PAOと100℃で100cSt(mm/秒)超だが300cSt(mm/秒)未満の粘度を有する第2合成油とを含有する。潤滑油は、摩耗防止剤、酸化防止剤、消泡剤、乳化破壊剤、清浄剤、分散剤、金属不動態化剤、摩擦低減剤、防錆剤添加剤およびそれらの混合物を含有することができる。
【0016】
特許文献8は、少なくとも2つの基油を含む潤滑油であって、第1基油が100℃で40cSt(mm/秒)超の粘度および少なくとも10%未満アルゴリズムで粘度の関数としての分子量分布(MWD):
MWD=0.2223+1.0232*log(cSt単位の100℃でのKv)
を有し、第2基油が100℃で10cSt(mm/秒)未満の粘度を持った潤滑油に関する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で30cSt(mm/秒)超である。好ましくは高粘度第1基材油は、メタロセン触媒PAO基油である。第2基材油は、GTL潤滑油、ワックス由来潤滑油、PAO、ブライトストック、PIBと一緒のブライトストック、グループI基油、グループII基油、グループII基油およびそれらの混合物から選択することができる。潤滑油は、清浄剤を含む添加剤を含有することができる。好ましくは第1基材油は、100℃で300cSt(mm/秒)超の粘度を有し、第2基材油は、100℃で1.5cSt(mm/秒)〜6cSt(mm/秒)の粘度を有する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で96cSt(mm/秒)超である。
【0017】
特許文献9は、少なくとも2つの基油を含む潤滑油であって、第1基油が100℃で少なくとも300cSt(mm/秒)の粘度および少なくとも10%未満アルゴリズムで粘度の関数としての分子量分布(MWD):
MWD=0.2223+1.0232*log(cSt単位の100℃でのKV)
を有し、第2基油が100℃で100cSt(mm/秒)未満の粘度を有する潤滑油に関する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で250cSt(mm/秒)超である。好ましくは第1基材油は、メタロセン触媒PAO基油である。第2基材油は、GTL基油、ワックス由来基油、PAO、ブライトストック、PIBと一緒のブライトストック、グループI基油、グループII基油、グループIII基油、グループV基油、グループVI基油およびそれらの混合物から選択することができる。潤滑油は、清浄剤を含む添加剤を含有することができる。
【0018】
特許文献10は、清浄剤を含有する長寿命ガスエンジン潤滑油に関する。この潤滑油は、主要量の潤滑粘度のベースオイルならびに少量の1つ以上の金属スルホネートおよび/またはフェノレートと1つ以上の金属サリチレート清浄剤との混合物を含み、混合物中のすべての清浄剤は同じまたは実質的に同じ全塩基価(TBN)を有する。
【0019】
潤滑油基油は、約5〜20cStの100℃での動粘度を典型的には有するあらゆる天然または合成潤滑基油留分である。好ましい実施形態においては、粘度指数向上剤の使用は、本発明調合物を製造するために使用される潤滑油ベースオイル留分からの100℃で20cSt以上の粘度の油の除去を可能にする。それ故、好ましいベースオイルは、たとえあったとしても、少量の重質留分;たとえば、たとえあったとしても、少量の100℃で粘度20cSt以上の潤滑油留分を含有するものである。
【0020】
潤滑油基油は、天然潤滑油、合成潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な基油としては、APIカテゴリーI、IIおよびIIIのものが挙げられ、ここで、飽和物レベルおよび粘度指数は、
グループI−それぞれ、90%未満および80〜120;
グループII−それぞれ、90%超および80〜120;ならびに
グループIII−それぞれ、90%超および120超
である。
【0021】
好適な潤滑油基油としては、原油の芳香族および極性成分を(溶媒抽出するよりもむしろ)水素化分解することによって製造される水素化分解体基油だけでなく、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化によって得られる基油が挙げられる。
【0022】
清浄剤は、1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレートと1つ以上の金属サリチレートとの混合物である。金属は、あらゆるアルカリもしくはアルカリ土類金属;たとえば、カルシウム、バリウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、より好ましくはカルシウム、バリウムおよびマグネシウムである。混合物に使用される金属塩のそれぞれが、混合物中のその他の金属塩と同じまたは実質的に同じTBNを有することが潤滑油の特徴である。
【0023】
塩のTBNは、約15%以下、好ましくは約12%以下、より好ましくは約10%以下だけ異なるであろう。
【0024】
1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレート、ならびに1つ以上の金属サリチレートは、たとえば、5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20の重量比での混合物として清浄剤に利用される。
【0025】
清浄剤の混合物は、清浄剤混合物中の活性成分に基づいて約10容積%以下の量で、好ましくは活性成分に基づいて約8容積%以下の量で潤滑油調合物に添加される。
【0026】
特許文献11は、ベースオイルおよび錯体の形態での油溶性の過塩基性清浄剤添加剤を含む、2ストローク・クロスヘッド海洋ディーゼルエンジン用の潤滑油であって、清浄剤の塩基性物質が2つ以上の界面活性剤で安定化されている潤滑油に関する。2つ以上の界面活性剤は、(1)硫化および/または非硫化フェノールならびにフェノール界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;(2)硫化および/または非硫化サリチル酸ならびにサリチル酸系界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;または(3)硫化または非硫化フェノール、硫化または非硫化サリチル酸である少なくとも3つの界面活性剤ならびにフェノールまたはサリチル酸系界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;または(4)硫化または非硫化フェノール、硫化または非硫化サリチル酸である少なくとも3つの界面活性剤ならびに少なくとも1つの硫酸界面活性剤の混合物であることができる。
【0027】
基油は、潤滑粘度の油であり、クロスヘッドエンジンのシステム潤滑に好適なあらゆる油であってもよい。潤滑油は好適には動物、植物または鉱物油であってもよい。好適には潤滑油は、ナフテン系ベース、パラフィン系ベースまたは混合ベースオイルなどの、石油由来潤滑油である。あるいは、潤滑油は合成潤滑油であってもよい。好適な合成潤滑油としては、ジ−オクチルアジペート、ジ−オクチルセバケートおよびトリデシルアジペートなどのジエステルを含む、合成エステル潤滑油、またはポリマー炭化水素潤滑油、たとえば、液体ポリイソブチレンおよびポリアルファオレフィンが挙げられる。一般的に、鉱油が用いられる。潤滑油は、一般に潤滑油組成物の60質量%超、典型的には70質量%超を占め、典型的には、2〜40mm/秒、たとえば、3〜15mm/秒の100℃での動粘度、および80〜100、たとえば、90〜95の粘度指数を有する。
【0028】
別のクラスの潤滑油は、精製プロセスが中間および重質留出物留分を高温および中圧で水素の存在下でさらに分解する、水素化分解油である。水素化分解油は典型的には、2〜40、たとえば、3〜15mm/秒の100℃での動粘度、および典型的には100〜110、たとえば、105〜108の範囲の粘度指数を有する。
【0029】
ブライトストックは、28〜36mm/秒の100℃での動粘度を一般に有する減圧残油から溶媒抽出され、脱瀝されている、そして潤滑油組成物の質量を基準として、30質量%未満、好ましくは20未満、より好ましくは15未満、最も好ましくは5質量%未満などの、10質量%未満の割合で典型的には使用されるベースオイルを意味する。
【0030】
特許文献12は、潤滑粘度の油、分散剤の、70〜245の範囲のTBN、油組成物の質量を基準として、0〜0.2質量%の窒素を有する少なくとも1つのサリチル酸カルシウムを含む清浄剤、および少量の1つ以上の共添加剤を含む清浄剤ガス燃料エンジン潤滑油に関する。ベースオイルは、あらゆる動物、植物もしくは鉱物油または合成油であることができる。ベースオイルは、組成物の60質量%超の割合で使用される。この油は典型的には、2〜40、たとえば、3〜15mm/秒の100℃での粘度および80〜100の粘度指数を有する。100℃で2〜40mm/秒の粘度および100〜110の粘度指数を有する水素化分解油をまた使用することができる。28〜36mm/秒の100℃での粘度を有するブライトストックはまた、典型的には30質量%未満、好ましくは20未満、最も好ましくは5質量%未満の割合で使用することができる。
【0031】
特許文献13は、80〜120の粘度指数、少なくとも90質量%の飽和物、0.03質量%以下の硫黄および少なくとも1つの清浄剤を有する主要量の潤滑油を含む、95ppm超のホウ素含有率を有するガスエンジンオイルに関する。金属サリチレートが好ましい清浄剤である。
【0032】
特許文献14は、高粘度PAOなどの高粘度合成炭化水素、液体水素化ポリイソプレン、または100℃で40〜1000cSt(mm/秒)の粘度を有するエチレン−アルファオレフィンコポリマー、100℃で1〜10cSt(mm/秒)の粘度を有する低粘度合成炭化水素、任意選択的に100℃で1〜10cSt(mm/秒)の粘度を有する低粘度エステル、および任意選択的に25重量%以下の添加剤パッケージを含有する潤滑油組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】米国特許第6,339,051号明細書
【特許文献2】米国特許第5,726,133号明細書
【特許文献3】米国特許第6,191,081号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0059563号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0191032号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0276355号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0289897号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0298990号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0207475号明細書
【特許文献10】米国特許第6,140,281号明細書
【特許文献11】米国特許第6,645,922号明細書
【特許文献12】米国特許第6,613,724号明細書
【特許文献13】米国特許第7,101,830号明細書
【特許文献14】米国特許第4,956,122号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、インターフェイス面(又は接触面)速度が約3mm/秒以上、好ましくは約10mm/秒以上、より好ましくは約50mm/秒以上に達するエンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、大きい低速および中速エンジンの燃料経済性を向上させる方法に向けられている。
これは、100℃で8〜25mm/秒の動粘度を有し、2種の異なるベースオイル、
その第1ベースオイルは、100℃で2〜12mm/秒の動粘度を有し、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルから選択される1種以上の油である第1ベースオイルと、
少なくとも800Mn、好ましくは約800Mn〜6,000Mn、より好ましくは約1,300Mn〜4,200Mn、より好ましくは約1,300Mn〜3,000Mnの数平均分子量を有する1種以上のポリイソブチレン(PIB)から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドを含むベースオイルを含む潤滑油を含むエンジンオイルを、
エンジンを潤滑するためのエンジンオイルとして使用することによって達成され、
ここで、燃料経済性の向上は、その二峰性ブレンドを用いるそのエンジンオイルのトラクション係数が、二峰性ではないエンジンオイル、又は1種以上のグループI基油に基づくエンジンオイル、もしくはグループI基油とPIBとの混合物に基づくエンジンオイルのトラクション係数より低いことによって立証される。
【0035】
第1基油と第2基油の組み合わせを含む潤滑油は、好ましくは100℃で8〜25mm/秒の動粘度、より好ましくは100℃で12〜21mm/秒の動粘度を有する。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明は、
100℃で8〜25mm/秒の範囲、好ましくは8〜22mm/秒の範囲、より好ましくは12〜21mm/秒の範囲の動粘度を有し、
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜12mm/秒の動粘度を有するグループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1ベースオイルと、
少なくとも800Mn、好ましくは約800〜6,000Mn、より好ましくは約1,300〜4,200Mn、さらにより好ましくは約1,300〜3,000Mnの数平均分子量を有する1種以上のポリイソブチレン(PIB)から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドを含むベースオイルを含み、
そして、サリチレート、スルホネート、カルボキシレート、フェノレート、好ましくはフェノレートとサリチレートとの混合物またはフェノレートとカルボキシレートとの混合物から選択される、アルカリもしくはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、清浄剤
とを含有する潤滑油を含むエンジンオイルを、
エンジンを潤滑するためのエンジンオイルとして使用することによって、約3mm/秒以上、好ましくは約10mm/秒以上、より好ましくは約30mm/秒以上、さらにより好ましくは約100mm/秒以上の表面速度に達するエンジンにおいて動作するベースオイルを含むエンジンオイルのトラクション係数を低下させることで、大きい低速および中速エンジンオイルの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の向上は、そのエンジンオイルのトラクション係数が、たとえ清浄剤を含有するときでさえ、二峰性ではないエンジンオイル、又はグループI基材油のみに基づくエンジンオイルもしくはグループI基油とPIB基油との混合物に基づくエンジンオイルのトラクション係数より低いことによって立証される方法に向けられている。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、
100℃で8〜25mm/秒、好ましくは8〜22mm/秒、より好ましくは12〜25mm/秒の範囲の動粘度を有し、
2種の異なるベースオイル、
その第1ベースオイルは、100℃で2〜12mm/秒の動粘度を有し、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルから選択される1種以上の油である第1ベースオイルと、
少なくとも800Mn、好ましくは約800〜1,600Mn、より好ましくは約1,300〜4,200Mn、さらにより好ましくは約1,300〜3,000Mnの数平均分子量を有する1つ以上のポリイソブチレン(PIB)から選択される第2ベースオイルとの二峰性ブレンドを有し、
場合により及び好ましくは、サリチレート、スルホネート、カルボキシレート、フェノレート、好ましくはフェノレートとサリチレートの混合物またはフェノレートとカルボキシレートの混合物、より好ましくはフェノレートおよびサリチレートから選択される、1種以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、清浄剤
とを含有する潤滑油を含むエンジンオイルを、
エンジンを潤滑するためのエンジンオイルとして使用することによって、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることにより、少なくとも約60mm/秒以上、好ましくは少なくとも約70mm/秒以上の表面速度に達する大きい低速および中速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の向上は、そのエンジンオイルのトラクション係数が、二峰性ではないエンジンオイル、又はグループIベースオイルのみに基づくエンジンオイルもしくはグループIベースオイルとPIBの混合物に基づくエンジンオイルのトラクション係数より低いことによって立証される方法に向けられている。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、
100℃で8〜25mm/秒の動粘度を有し、
100℃で2〜12mm/秒の動粘度を有するグループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される第1ベースオイルと、
少なくとも800Mn、好ましくは約800Mn〜6,000Mn、より好ましくは約1,300Mn〜4,200Mn、または好ましくは約1,300Mn〜3,000Mnの数平均分子量を有するポリイソブチレン(PIB)から選択される第2ベースオイル
とを含む潤滑油を、
エンジンオイルとして用いることによって、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることにより、少なくとも3mm/秒、好ましくは少なくとも10mm/秒、より好ましくは少なくとも60mm/秒の表面速度に達し、エンジンオイルによって潤滑される大きい低速および中速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の向上は、そのエンジンオイルが、グループIIIベースオイルもしくはグループIVベースオイルの単一ベースオイル成分を含む又は1種以上のグループIベースオイルをもしくはグループIベースオイルとPIBとの混合物に基づく、100℃で同じ動粘度のエンジンオイルのトラクション係数より、低いトラクション係数を有することによって立証される方法に向けられている。
【0039】
本明細書でおよび添付クレームで用いるところでは、用語「基油」および「ベースオイル」は、同意語としておよび同じ意味で用いられる。
【0040】
「表面速度」とは、シリンダー壁およびピストンなどの、2つのインターフェイス面(又は接触面)、またはベアリング面がエンジンの運転中に互いに通りすぎる速度を意味する。この表面速度は、インターフェイス面についての潤滑レジームが境界、流体力学的または混合(境界/流体力学的)であるかどうかに影響を及ぼす主な因子である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】異なる分子量のPIBを使用して異なる最終ブレンド動粘度にブレンドされている、グループIII基油プラスPIBの二峰性ブレンドが、いかなる添加剤も不在下でトラクション係数に及ぼす影響を、グループI基油のブレンド、またはグループI基油とPIBとのブレンドを含有する対照油に対して比較する。
【図2】異なる最終ブレンド動粘度にブレンドされている、グループIII基油プラスPIBの二峰性ブレンドが、個々に異なる清浄剤の存在下でトラクション係数に及ぼす影響を、清浄剤を含有するグループI基油とPIBとのブレンドを含有する対照油に対して示す。
【図3】名目上同じ最終ブレンド動粘度にブレンドされている、グループIII基油またはグループII基油プラス異なる分子量PIBの二峰性ブレンドが、清浄剤の異なる混合物の存在下でトラクション係数に及ぼす影響を、清浄剤を含有するグループI基油とPIBとのブレンドを含有する対照油に対して示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の方法は、基油の二峰性混合物を利用する。本明細書において二峰性とは、それぞれが100℃で異なる動粘度を有する少なくとも2つの基油の混合物であって、少なくとも2つの基油間の100℃での動粘度の差が少なくとも、低粘度基油と少なくとも800Mnの数平均分子量を有するポリイソブチレン(PIB)との間の差である混合物を意味する。少なくとも2つの基油の混合物は、少なくとも800Mnの数平均分子量を有する、1つ以上のポリイソブチレン(PIB)と組み合わせて、その基油が、API分類を用いて、グループII、グループIIIおよびグループIV基油からなる群から選択される、2〜12cSt(mm/秒)の100℃での動粘度を有する1つ以上の低動粘度基油を含む。これらの組み合わせの二峰性の程度は、ASTM D445に従って100℃でのPIBの動粘度を測定することによって決定することができる。たとえば、100℃でのPIB(1300MW)の動粘度は約630mm/秒であり、100℃でのPIB(2500MW)の動粘度は約4,100mm/秒である。
【0043】
グループIII基油は、90%以上の飽和物、0.03%以下の硫黄および120以上の粘度指数を含有する油とAmerican Petroleum Institute(米国石油協会)によって分類されている。グループIII基油は通常、減圧ガスオイル(又は軽油)などの、油原料油を水素化分解して不純物を除去し、かつ、存在する可能性があるすべての芳香族化合物を飽和させて非常に高い粘度指数の高パラフィン系潤滑油基材油を生成する工程、水素化分解基材油を、ノルマルパラフィンを異性化によって分岐パラフィンへ転化する選択的接触水素化脱ロウ処理にかける工程、引き続き水素化精製してあらゆる残存芳香族化合物、硫黄、窒素またはオキシゲネートを除去する工程を含む3段階プロセスを用いて製造される。
【0044】
グループIII基材油はまた、(1)1つ以上のガス液化(GTL)物質;ならびに(2)合成ワックス、天然ワックスまたはワックス質原料から誘導される、水素化脱ロウ処理された、または水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理された基油および/またはベースオイルであって、ワックス質原料が、ガスオイル、スラックワックス(天然油、鉱油もしくは合成油、たとえば、Fischer−Tropsch(フィッシャー−トロプシュ)原料油の溶媒脱ロウ処理に由来する)などの鉱油および/または非鉱油ワックス質原料油ならびにワックス質燃料ハイドロクラッカーボトム、ワックス質ラフィネート、水素化分解物、熱分解物、フ−ツ油もしくはその他の鉱物、鉱油などのワックス質基材油、または石炭液化もしくはシェール油から回収されるワックス質物質、約20個以上の、好ましくは約30個以上の炭素数の線状もしくは分岐ヒドロカルビル化合物などの非石油由来ワックス質物質さえならびにそのような基油および/またはベースオイルの混合物を含む基油および/またはベースオイルから誘導される基油および/またはベースオイルの1つまたは混合物を含む非従来的なまたは型破りな基油および/またはベースオイルを包含する。
【0045】
GTL物質は、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレンおよびブチンなどのガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または原料油としての成分から1つ以上の合成、結合、変換、転位、および/または分解/破壊的プロセスによって誘導される物質である。GTL基油および/またはベースオイルは、炭化水素;たとえば、それら自体、より簡単なガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または原料油としての成分から誘導されるワックス質合成炭化水素から一般に誘導される潤滑粘度のGTL物質である。GTL基油および/またはベースオイルとしては、潤滑油沸点範囲で沸騰する油(1)たとえば、蒸留によってなど合成GTL物質から分離された/分留された、そしてその後低下した/低い流動点の潤滑油を製造するために、接触脱ロウ処理プロセス、または溶媒脱ロウ処理プロセスのどちらかまたは両方を含む最終ワックス処理工程にかけられた;(2)たとえば、水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された接触および/または溶媒脱ロウ処理された合成ワックスまたはワックス質炭化水素を含む、合成ワックス異性化体;(3)水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された接触および/または溶媒脱ロウ処理されたFischer−Tropsch(F−T)物質(すなわち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックスおよび可能な類似オキシゲネート);好ましくは水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/引き続き接触および/または溶媒脱ロウ処理された脱ロウF−Tワックス質炭化水素、または水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/引き続き接触(および/または溶媒)脱ロウ脱ロウ処理されたF−Tワックス、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
GTL物質に由来するGTL基油および/またはベースオイル、とりわけ、水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/引き続き接触および/または溶媒脱ロウ処理されたワックスまたはワックス質原料、好ましくはF−T物質由来基油および/またはベースオイルは、約2mm/秒〜約50mm/秒の100℃での動粘度(ASTM D445)を有するとして典型的には特徴付けられる。それらは、−5℃〜約−40℃以下の流動点(ASTM D97)を有するとして典型的にはさらに特徴付けられる。それらはまた、約80〜約140以上の粘度指数(ASTM D2270)を有するとして典型的には特徴付けられる。
【0047】
加えて、GTL基油および/またはベースオイルは典型的には高パラフィン性(>90%飽和物)であり、非環状イソパラフィンと組み合わせてモノシクロパラフィンとマルチシクロパラフィンとの混合物を含有してもよい。そのような組み合わせにおけるナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有率の比は、使用される触媒および温度とともに変動する。さらに、GTL基油および/またはベースオイルは典型的には、非常に低い硫黄および窒素含有率を有し、一般に約10ppm未満、より典型的には約5ppm未満のこれらの元素のそれぞれを含有する。F−T物質、とりわけF−Tワックスから得られるGTL基油および/またはベースオイルの硫黄および窒素含有率は、本質的に皆無である。加えて、リンおよび芳香族化合物の不在は、この物質を低SAP製品の調合にとりわけ好適にする。
【0048】
用語GTL基油および/またはベースオイルおよび/またはワックス異性化体基油および/またはベースオイルは、100℃で2〜12mm/秒の範囲のターゲット動粘度を示すブレンドを製造するために製造プロセスにおいて回収されるような幅広い粘度範囲のそのような物質、そのような留分の2つ以上の混合物、ならびに1つ、2つ以上のより高い粘度留分と組み合わせられた1つまたは2つ以上の低粘度留分の混合物の個々の留分を包含すると理解されるべきである。
【0049】
GTL基油および/またはベースオイルが誘導される、GTL物質は好ましくは、F−T物質(すなわち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックス)である。
【0050】
好ましい実施形態においては、GTL基油および/またはベースオイルが誘導されるGTL物質は、F−T物質(すなわち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックス)である。スラリーF−T合成プロセスが、COおよび水素ならびに特に、より望ましいより高分子量パラフィンを製造するための高いSchultz−Flory速度論的アルファを提供するための触媒コバルト成分を含むF−T触媒を用いるものから原料を合成するために都合よく用いられてもよい。本プロセスはまた、当業者によく知られている。
【0051】
GTL基油および/またはベースオイル、水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理されたF−T物質由来基油、ならびにワックス異性化体または水素化脱ロウ処理体などの、ワックス由来の水素化脱ロウ処理された、もしくは水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理された基油の有用な組成物は、たとえば、米国特許第6,080,301号明細書;同第6,090,989号明細書、および同第6,165,949号明細書に列挙されている。
【0052】
本発明においてグループIII基材油としての使用にまた好適である、ワックス質原料から誘導される基油および/またはベースオイルは、鉱油、非鉱油、非石油、もしくは天然発生源、たとえばガスオイル、スラックワックス、ワックス質燃料ハイドロクラッカーボトム、炭化水素ラフィネート、天然ワックス、水素化分解物、熱分解物、フ−ツ油、石炭液化からのもしくはシェール油からのワックスの1つ以上などの原料油、またはその他の好適な鉱油、非鉱油、非石油、もしくは天然源由来ワックス質物質、約20個以上の、好ましくは約30個以上の炭素数の線状もしくは分岐ヒドロカルビル化合物、およびそのような異性化体/イソ脱ロウ体基油および/またはベースオイルの混合物の水素化脱ロウ処理された、または水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理されたワックス質原料油から誘導される潤滑粘度のパラフィン系流体である。
【0053】
スラックワックスは、溶媒または自動冷却脱ロウ処理によってF−Tワックス質油などの合成油または石油を含むあらゆるワックス質炭化水素油から回収されるワックスである。溶媒脱ロウ処理は、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、MEK/MIBKの混合物、MEKとトルエンとの混合物などの冷却された溶媒を用いるが、自動冷却脱ロウ処理は、プロパンまたはブタンなどの加圧液化低沸点炭化水素を用いる。
【0054】
F−Tワックス質油などの合成ワックス質油から確保されるスラックワックスは通常、ゼロまたは皆無の硫黄および/または窒素含有化合物含有率を有するであろう。石油から確保されるスラックワックスは、硫黄および窒素含有化合物を含有する可能性がある。そのようなヘテロ原子化合物は、水素異性化触媒のその後の被毒/不活性化を回避するためにたとえば水素化脱硫(HDS)および水添脱窒素(HDN)によるような、水素化処理(そして水素化分解ではない)によって除去されなければならない。
【0055】
ワックス質基材油、たとえばスラックワックス、F−Tワックス、またはワックス質原料から潤滑油基油を製造するプロセスは、異性化プロセスと特徴付けられてもよい。スラックワックスが原料として使用される場合、それらは、さもなければ次工程で使用される水素異性化または水素化脱ロウ処理触媒を不活性化するであろう硫黄−および窒素−含有化合物を(触媒被毒または不活性化を効果的に回避するであろうレベルまで)下げるためにまたは除去するために当業者に既によく知られている条件下で予備水素化処理工程にかけられる必要がある可能性がある。F−Tワックスが使用される場合、そのようなワックスが痕跡量(約10ppm未満、またはより典型的には約5ppm未満〜皆無)の硫黄または窒素化合物含有率を有するにすぎないので、そのような予備処理は必要とされない。しかし、F−Tワックスを供給されるある水素化脱ロウ処理触媒は、オキシゲネートの除去のための前水素化処理から恩恵を受ける可能性があり、一方その他のものはオキシゲネート処理から恩恵を受ける可能性がある。水素異性化または水素化脱ロウ処理プロセスは、触媒の組み合わせ上で、または単一触媒上で行われてもよい。
【0056】
必要とされる水添脱窒素または水素化脱硫の後に、そのようなワックス質原料からの基油の製造のために用いられる水素処理は、潤滑油水素化分解(LHDC)触媒などの、非晶質の水素化分解/水素異性化触媒、たとえば、酸化物担体、たとえば、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ上にCo、Mo、Ni、W、Moなどを含有する触媒、または結晶質の水素化分解/水素異性化触媒、好ましくはゼオライト系触媒を使用してもよい。
【0057】
イソパラフィン系炭化水素ベースオイルを形成するための本明細書において開示されるn−パラフィンワックス質原料油の転化に有用な炭化水素転化触媒は、米国特許第4,906,350号明細書において開示されているような、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−12、ZSM−38、ZSM−48、Offretite、フェリエライト、ゼオライトベータ、ゼオライトシータ、およびゼオライトアルファなどの、ゼオライト触媒である。これらの触媒は、族VIII金属、特にパラジウムまたは白金と組み合わせて使用される。族VIII金属は、イオン交換などの、従来技法によってゼオライト触媒中へ組み入れられてもよい。
【0058】
一実施形態においては、ワックス質原料油の転化は、水素の存在下でPt/ゼオライトベータとPt/ZSM−23触媒との組み合わせ上で、または連続して使用されるそのような触媒上で行われてもよい。別の実施形態においては、潤滑油基油の製造プロセスは、Pt/ZSM−35などの、単一触媒上での水素異性化および脱ロウ処理を含む。その上別の実施形態においては、ワックス質原料は、1ステージか2ステージかのどちらかでVIII族金属担持ZSM−48、好ましくはVIII族貴金属担持ZSM−48、より好ましくはPt/ZSM−48を含む触媒上に供給することができる。あらゆる場合に、有用な炭化水素ベースオイル生成物を得ることができる。触媒ZSM−48は、米国特許第5,075,269号明細書に記載されている。
【0059】
脱ロウ処理工程は、必要なとき、溶媒脱ロウ処理、接触脱ロウ処理もしくは水素化脱ロウ処理プロセスの1つ以上または任意の順番でのそのようなプロセスの組み合わせを用いて成し遂げられてもよい。
【0060】
溶媒脱ロウ処理において、水素異性化体は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ME/MIBKの混合物、またはMEK/トルエンの混合物などの冷却された溶媒と接触させられ、そしてさらに、より高い流動点物質をワックス質固体として沈澱させるためにさらに冷却され、ワックス質固体は次に、ラフィネートである溶媒含有潤滑油留分から分離される。ラフィネートは典型的には、より多くのワックス固形分を除去するためにキサゲ面冷却装置でさらに冷却される。その少なくとも一部が水素異性化体を冷却してワックスを沈澱させるためにフラッシュされる、たとえば、液体プロパンと水素異性化体が混合される、プロパンなどの、低分子量炭化水素を使用する自動冷却脱ロウ処理をまた用いることができる。ワックスは、濾過、膜分離または遠心分離によってラフィネートから分離される。溶媒は次に、ラフィネートからストリップされ、ラフィネートは次に、本発明に有用な好ましい基油を製造するために分留される。
【0061】
接触脱ロウ処理において水素異性化体は、水素異性化体の流動点を下げるのに有効な条件で好適な脱ロウ処理触媒の存在下で水素と反応させられる。接触脱ロウ処理はまた、水素異性化体の一部をより低沸点物質に転化し、低沸点物質はより重質の基油留分から分離される。この基油留分は次に分留して2つ以上の基油にすることができる。より低沸点物質の分離は、所望の基油への重質基油留分物質の分留前か分留中かのどちらかに成し遂げられてもよい。
【0062】
水素異性化体の流動点を下げるであろうあらゆる脱ロウ処理触媒、および好ましくは水素異性化体からの潤滑油基油の大収量を提供するものが使用されてもよい。これらとしては、少なくとも1つの触媒金属成分と組み合わせられたときに、石油留分を脱ロウ処理するために有用と実証されている形状選択的なモレキュラーシーブが挙げられ、たとえば、フェリエライト、モルデナイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、シータワンまたはTONとしても知られるZSM−22、およびSAPOとして知られるシリコアルミノホスフェートが挙げられる。意外にも特に有効であることが分かった脱ロウ処理触媒は、H−モルデナイトと複合した、貴金属、好ましくはPtを含む。脱ロウ処理は、固定床、流動床またはスラリー床での触媒で成し遂げられてもよい。典型的な脱ロウ処理条件としては、約400〜600°Fの範囲の温度、500〜900psigの圧力、フロースルー反応器について1500〜3500SCF/BのH処理比率および0.1〜10、好ましくは0.2〜2.0のLHSVが挙げられる。脱ロウ処理は典型的には、650〜750°Fの範囲の初期沸点を有する水素異性化体の40重量%以下、好ましくは30重量%以下をその初期沸点より下で沸騰する物質に転化するために行われる。
【0063】
二峰性混合物の第1基油はまた、本明細書および添付クレームの目的のためにポリアルファオレフィンと同定されるグループIV基油であることができる。
【0064】
ポリアルファオレフィン(PAO)は、一般に典型的には、C〜約C32アルファオレフィン、好ましくは、例えば、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のC〜約C16アルファオレフィンを含むポリアルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマーまたはオリゴマーからなるが、これらに限定されるものではない。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセンおよびポリ−1−ドデセンならびにそれらの混合物および混合オレフィン由来ポリオレフィンである。
【0065】
PAO流体は、たとえば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素と水、エタノール、プロパノールもしくはブタノールなどのアルコール、カルボン酸または酢酸エチルもしくはプロピオン酸エチルなどのエステルとの錯体を含むFriedel−Crafts(フリーデル−クラフツ)触媒などの重合触媒の存在下でのアルファオレフィンの重合によって便利に製造されてもよい。たとえば、米国特許第4,149,178号明細書または米国特許第3,382,291号明細書によって開示されている方法が本明細書において便利に用いられてもよい。PAO合成のその他の記載は、次の米国特許:第3,742,082号明細書、第3,769,363号明細書、第3,876,720号明細書、第4,239,930号明細書、第4,367,352号明細書、第4,413,156号明細書、第4,434,408号明細書、第4,910,355号明細書、第4,956,122号明細書、および第5,068,487号明細書に見いだされる。C14〜C18オレフィンの二量体は、米国特許第4,218,330号明細書に記載されている。
【0066】
本発明に有用なPAOはまた、メタロセン触媒によって製造することができる。メタロセン触媒PAO(mPAO)は、メタロセン触媒系による少なくとも2つのアルファオレフィンもしくはそれ以上から製造されたコポリマー、または単一のアルファオレフィン原料から製造されたホモポリマーであることができる。
【0067】
メタロセン触媒は、たとえば、メチルアルミノキサン(MAO)またはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレートまたはその他の等価の非配位アニオンなどの、非配位アニオンによって活性化されたまたは促進された単純メタロセン、置換メタロセンまたは架橋メタロセン触媒であることができる。mPAOおよびメタロセン触媒作用を用いるmPAOの製造方法は、国際公開第2009/123800号パンフレット、国際公開第2007/011832号パンフレット、および米国特許出願公開第2009/0036725号明細書に記載されている。
【0068】
コポリマーmPAO組成物は、C〜C30範囲の少なくとも2つのアルファオレフィンから製造され、モノマーがポリマー中にランダムに分配されている。平均炭素数は少なくとも4.1であることが好ましい。有利には、エチレンおよびプロピレンは、原料中に存在する場合、個々に50重量%未満または好ましくは合わせて50重量%未満の量で存在する。本発明のコポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマーまたは適切な立体規則性のあらゆるその他の形態であることができる。
【0069】
mPAOはまた、C〜C30線状アルファオレフィンから選択される少なくとも2つおよび26以下の異なる線状アルファオレフィンを含む混合原料線状アルファオレフィン(LAO)から製造される。好ましい実施形態においては、混合原料LAOは、アルミニウム触媒またはメタロセン触媒を使用するエチレン成長処理から得られる。成長オレフィンは、ほとんどC〜C18LAOを含む。その他のプロセスからのLAOもまた使用することができる。
【0070】
ホモポリマーmPAO組成物は、C〜C30範囲、好ましくはC〜C16、最も好ましくはC〜C14またはC〜C12から選択される単一のアルファオレフィンから製造される。ホモポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマーまたは適切な立体規則性のあらゆるその他の形態であることができる。立体規則性は、選択された重合触媒および重合反応条件によってまたは選択された水素化条件によって慎重に調整することができる。
【0071】
アルファオレフィンは、従来のLAO製造施設からかまたは製油所からのあらゆる成分から選択することができる。それは、ホモポリマーを製造するために単独で、またはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどを含む、製油所もしくは化学プラントから入手可能な別のLAOと、または専用の製造施設から製造された1−ヘキセンもしくは1−オクテンと一緒に使用することができる。アルファオレフィンは、Fischer−Tropsch合成(米国特許第5,382,739号明細書に報告されているような)から製造されたアルファオレフィンから選択することができる。たとえば、C〜C16アルファオレフィン、より好ましくは線状アルファオレフィンがホモポリマーを製造するために好適である。C−およびC14−LAO、C−およびC16−LAO、C−、C10−、C12−LAO、またはC−およびC14−LAO、C−、C10−、C14−LAO、C−およびC12−LAOなどの、その他の組み合わせがコポリマーを製造するために好適である。
【0072】
〜C30LAOから選択されるLAOの混合物またはC〜C16LAOから選択される単一のLAOを含む原料は、潤滑油成分でのまたは機能性流体としての使用に好適な液体生成物を提供するためにオリゴマー化条件下で活性化メタロセン触媒と接触させられる。C〜C30範囲の少なくとも2つのアルファオレフィンから製造された、そしてモノマーがポリマー中にランダムに分配されたコポリマー組成物もまた包含される。語句「少なくとも2つのアルファオレフィン」は、「少なくとも2つの異なるアルファオレフィン」を意味すると理解されるであろう(そして同様に「少なくとも3つのアルファオレフィン」は「少なくとも3つの異なるアルファオレフィン」などを意味する)。
【0073】
得られた生成物は、少なくとも2つのアルファオレフィンを含む本質的にランダムの液体コポリマーである。「本質的にランダムの」とは、生成物がランダムコポリマーであると当業者が考えるであろうことを意味する。同様に用語「液体」は、周囲温度および圧力などの、温度および圧力の通常条件下で液体を意味すると当業者によって理解されるであろう。
【0074】
本プロセスは、非配位アニオン(NCA)(式2,下記)またはメチルアルミノキサン(MAO)1111(式3、下記)などの活性化剤と一緒にメタロセン化合物(式1、下記)を含む触媒系を用いる。
【化1】

【0075】
用語「触媒系」は、メタロセン/活性化剤ペアなどの、触媒前駆体/活性化剤ペアを意味すると本明細書では定義される。「触媒系」が活性化前のそのようなペアを記載するために用いられるとき、それは、活性化剤および、任意選択的に、共活性化剤(トリアルキルアルミニウム化合物などの)と一緒の活性化されていない触媒(プレ触媒)を意味する。それが活性化後のそのようなペアを記載するために用いられるとき、それは、活性化触媒および活性化剤またはその他の電荷バランス部分を意味する。さらに、この活性化「触媒系」は、共活性化剤および/またはその他の電荷バランス部分を任意選択的に含んでもよい。任意選択的におよび多くの場合、トリアルキルアルミニウム化合物などの、共活性化剤はまた、不純物捕捉剤として使用される。
【0076】
メタロセンは、上の式1に従った1つ以上の化合物から選択される。式1において、Mは、4族遷移金属、好ましくはジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)およびチタン(Ti)から選択され、L1およびL2は独立して、置換されていても非置換であってもよい、そして部分的に水素化されていてもよい、シクロペンタジエニル(「Cp」)、インデニル、およびフルオレニルから選択される。Aは、存在する場合、好ましい実施形態においてはジアルキルシリル、ジアルキルメチル、ジフェニルシリルまたはジフェニルメチル、エチレニル(−CH−CH)、アルキルエチレニル(−CR−CR)(ここで、アルキルは独立して、C〜C16アルキルラジカルまたはフェニル、トリル、キシリルラジカルなどであることができる)から選択され、そして式中、2つのX基、XaおよびXbのそれぞれは独立して、ハライド、OR(Rは、好ましくはC〜C直鎖もしくは分岐鎖アルキル基から選択される、アルキル基である)、水素、C〜C16アルキルまたはアリール基、ハロアルキルなどから選択される。通常、比較的より高度に置換されたメタロセンは、より高い触媒生産性およびより広い生成物粘度範囲を与え、したがって多くの場合より好ましい。
【0077】
ポリアルファオレフィンは好ましくは、ASTM D1159によって測定されるように1.8以下、好ましくは1.7以下、好ましくは1.6以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1.4以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.5以下、好ましくは0.1以下の臭素価を有する。
【0078】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィンは、すべての規則正しい1、2−結合に加えて式4:
【化2】

(式中、j、kおよびmはそれぞれ、独立して、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22であり、nは、プロトンNMRによって測定されるように1〜350(好ましくは1〜300、好ましくは5〜50)の整数である)
で表されるモノマー単位を有してもよい。
【0079】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、100,000以下、好ましくは100〜80,000、好ましくは250〜60,000、好ましくは280〜50,000、好ましくは336〜40,000g/モルのMw(重量平均分子量)を有する。
【0080】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、50,000以下、好ましくは200〜40,000、好ましくは250〜30,000、好ましくは500〜20,000g/モルのMn(数平均分子量)を有する。
【0081】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、1超および5未満、好ましくは4未満、好ましくは3未満、好ましくは2.5未満の分子量分布(MWD−Mw/Mn)を有する。mPAOのMWDは常に流体粘度の関数である。あるいは、本明細書において記載されるポリアルファオレフィンのどれもが好ましくは、流体粘度に依存して、1〜2.5、あるいは1〜3.5のMw/Mnを有する。
【0082】
重量平均MWと数平均MWとの比(=Mw/Mn)と定義される、分子量分布(MWD)は、「Principles of Polymer Systems」(Ferdinand Rodrigues,McGraw−Hill Book,1970による)において、p.115−144,Chapter 6,The Molecular Weight of Polymersに記載されているように、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。GPC溶媒は、30℃のカラム温度、1ml/分の流量、および1重量%の試料濃度で、安定剤なしのHPLC Gradeテトラヒドロフランであった、そしてColumn Setは、Phenogel 500 A,Linear,10E6Aである。
【0083】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが、分子量分布の実質的に小部分の高エンドテールを有してもよい。好ましくは、mPAOは、45,000ダルトン超の分子量を有するポリマーが5.0重量%以下である。さらにまたはあるいは、45,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、1.5重量%以下、または0.10重量%以下である。さらにまたはあるいは、60,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、0.5重量%以下、または0.20重量%以下、または0.1重量%以下である。45,000〜60,000の分子量での質量分率は、上記のような、GPCによって測定することができる。
【0084】
本明細書において記載されるあらゆるPAOは、0℃未満(ASTM D97によって測定されるように)、好ましくは−10℃未満、好ましくは20℃未満、好ましくは−25℃未満、好ましくは−30℃未満、好ましくは−35℃未満、好ましくは−50℃未満、好ましくは−10℃〜−80℃、好ましくは−15℃〜−70℃の流動点を有してもよい。
【0085】
メタロセン触媒を用いて製造されるポリアルファオレフィンは、ASTM D445によって測定されるように約1.5〜約5,000cSt、好ましくは約2〜約3,000cSt、好ましくは約3cSt〜約1,000cSt、より好ましくは約4cSt〜約1,000cSt、その上より好ましくは約8cSt〜約500cStの100℃での動粘度を有してもよい。
【0086】
本発明に有用なPAOとしては、米国特許第4,827,064号明細書および米国特許第4,827,073号明細書に開示されているプロセスによって製造されるものが挙げられる。低原子価状態クロム触媒を用いて製造される、それらのPAO物質は、潤滑油基油としておよび、より高い粘度グレードで、VI向上剤として有用であるための非常に望ましい特性をそれらに与える非常に高い粘度指数で特徴付けられるポリマーのオレフィンオリゴマーである。それらは、高粘度指数PAOまたはHVI−PAOと言われる。
【0087】
これらのHVI−PAO物質の様々な修正および変形がまた、言及される次の米国特許:第4,990,709号明細書、第5,254,274号明細書、第5,132,478号明細書、第4,912,272号明細書、第5,264,642号明細書、第5,243,114号明細書、第5,208,403号明細書、第5,057,235号明細書、第5,104,579号明細書、第4,943,383号明細書、第4,906,799号明細書に記載されている。これらのオリゴマーは、低原子価状態での担持金属である金属オリゴマー化触媒の存在下で1−オレフィンのオリゴマー化によって製造されるとして手短に要約することができる。好ましい触媒は、一酸化炭素を還元剤として使用するクロムの還元によって調製される、シリカ担体上の低原子価状態クロムを含む。オリゴマー化は、米国特許第4,827,064号明細書および同第4,827,073号明細書に記載されているように、生じるオリゴマーにとって望ましい粘度に応じて選択される温度で実施される。より高粘度物質は、約90℃より下のオリゴマー化温度がより高分子量オリゴマーを製造するために用いられている米国特許第5,012,020号明細書および米国特許第5,146,021号明細書に記載されているように製造されてもよい。すべての場合に、残存不飽和を減らすために必要なときに水素化後の、オリゴマーは、0.19未満の分岐指数(米国特許第4,827,064号明細書および同第4,827,073号明細書に定義されているような)を有する。概して、HVI−PAOは普通は約12〜5,000cStの範囲の粘度を有する。
【0088】
さらに、HVI−PAOは一般に、下記:C30〜C1300炭化水素は、0.19未満の分岐率、300〜45,000の重量平均分子量、300〜18,000の数平均分子量、1〜5の分子量分布を有する1つ以上で特徴付けることができる。HVI−PAOは、5〜5000mm/秒以上の範囲の100℃粘度の流体である。さらに、3mm/秒〜5000mm/秒の100℃での粘度の流体は、130超のASTM方法D2270によって計算されるVIを有する。通常それらは130〜350の範囲である。流体はすべて−15℃より下の低い流動点を有する。
【0089】
HVI−PAOは、C〜C20の1−アルケンからなる群から取られる、それだけでか混合物形態でかのどちらかでの、1−アルケンから製造されるポリマーまたはオリゴマーを含む炭化水素組成物としてさらに特徴付けることができる。原料の例は、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセンなど、またはC〜C14の1−アルケンの混合物もしくはC〜C20の1−アルケン、CおよびC12の1−アルケン、CおよびC14の1−アルケン、CおよびC16の1−アルケン、CおよびC18の1−アルケン、CおよびC10の1−アルケン、CおよびC12の1−アルケン、C、C10およびC12の1−アルケン、ならびにその他の適切な組み合わせの混合物であることができる。
【0090】
生成物は通常、600°Fより下で沸騰するもの、またはC20未満の炭素数のものなどのあらゆる低分子量組成物を、それらが重合反応から生成するかまたは出発原料から持ち込まれている場合に、除去するために蒸留される。この蒸留工程は通常、完成流体の揮発度を向上させる。
【0091】
重合またはオリゴマー化プロセスから直接製造される流体は通常、不飽和二重結合を有するかまたはオレフィン分子構造を有する。二重結合または不飽和またはオレフィン成分の量は、臭素価(ASTM D1159)、臭素指数(ASTM D2710)などの、幾つかの方法、またはNMR、IRなどの、その他の好適な分析方法によって測定することができる。二重結合の量またはオレフィン組成物の量は、幾つかの因子−重合度、重合プロセス中に存在する水素の量および重合プロセスの停止工程に関与するその他の促進剤の量、またはプロセスにおいて存在するその他の試剤に依存する。通常、二重結合の量またはオレフィン成分の量は、重合のより高い程度、重合プロセスにおいて存在する水素ガスのより高い量、または停止工程に関与する促進剤のより高い量によって減少する。
【0092】
通常、流体の酸化安定性および光またはUV安定性は、不飽和二重結合の量またはオレフィン含有率が低下するときに向上することが知られている。それ故、ポリマーを、それが高度の不飽和を有する場合には水素化処理することが望ましい。通常、ASTM D1159によって測定されるような、5未満の臭素価の流体は、高品質基油用途向けに好適である。もちろん、臭素価が低ければ低いほど、潤滑油品質はより良好である。3または2未満の臭素価の流体が一般的である。最も好ましい範囲は、1未満または0.1未満である。不飽和度を下げるための水素化処理方法は、文献においてよく知られている(米国特許第4,827,073号明細書、実施例16)。あるHVI−PAO製品においては、重合から直接製造された流体は、100℃で150cSt超の粘度のものなど、非常に低い不飽和度を既に有する。それらは、5未満または更に2より低い臭素価を有する。これらの場合には、それは、水素化処理することなくそのままで使用することができるか、またはそれは、基油特性をさらに向上させるために水素化処理することができる。
【0093】
それらの起源またはそれらの製造に用いられるプロセスもしくは技法にかかわらず、第1の低動粘度流体は、単一油または油の混合物が100℃で2〜12mm/秒の範囲の低い動粘度を有するという条件で、単一源からの油としてかまたは油の混合物として用いることができる。
【0094】
したがって、低動粘度流体は、列挙された動粘度を満たす単一基油を構成することができるか、またはそれは、それぞれが列挙された動粘度限度を個々に満たす、2つ以上の基油で構成することができる。さらに、低動粘度流体は、生じた混合物ブレンドが、第1の低動粘度流体の粘度範囲として列挙された100℃で2〜12mm/秒のターゲット低動粘度を示すという条件で、1つ、2つ以上のより高い動粘度基材油、たとえば、100℃で100mm/秒以上の動粘度の基材油などの、100℃で12mm/秒超の動粘度の基材油と組み合わせられた1つ、2つ以上の低粘度基材油、たとえば100℃で2〜12mm/秒の範囲の動粘度の基材油の混合物で構成することができる。
【0095】
二峰性ブレンドに使用される第2油は、少なくとも800Mn、好ましくは800〜6,000Mn、より好ましくは1,300〜4,200Mn、さらにより好ましくは1,300〜3,000Mnの数平均分子量を有する高動粘度ポリイソブチレン(PIB)である。
【0096】
本発明は、第1が2〜12mm/秒の100℃でのKVを有する1つ以上のグループIIまたはグループIIIベースオイルであり、第2が少なくとも800Mnの数平均分子量を有する1つ以上のポリイソブチレン(PIB)である、2つの異なるベースオイルの二峰性ブレンドを含む潤滑油を用いてトラクション係数の低下によって立証されるような燃料経済性のその向上を達成する。基油のそのような二峰性ブレンドを使用するとき、10mm/秒ほどに低い表面速度で使用中である油のトラクション係数は、二峰性ではないかまたはグループI基油もしくはグループI基油プラスPIBのみをベースとする、そして清浄剤を含有するときさえのエンジンオイルの使用と比べて低下する。
【0097】
トラクション係数は、サリチレート、フェノレート、スルホネートもしくはカルボキシレート、好ましくはフェノレートおよびサリチレート清浄剤またはフェノレートおよびカルボキシレート清浄剤からなる群から選択される、アルカリもしくはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類、最も好ましくはカルシウム清浄剤と組み合わせて上に列挙された二峰性基油ブレンドを使用することによって、さらにより低い表面速度、3mm/秒ほどに低い表面速度において下げることができる。清浄剤は、単一金属の塩である必要はなく、例としておよび限定なしに、金属塩の混合物、たとえばナトリウム塩および/またはリチウム塩および/またはカルシウム塩および/またはマグネシウム塩の混合物であることができる。
【0098】
トラクション係数を低下させる方法は、最低限必要なおよび必須の成分として二峰性基油ブレンドを含有する、上に記載されたようなエンジン潤滑油組成物を使用する。好ましくは、トラクション係数の低下を達成するために使用されるエンジン潤滑油は、二峰性基油ブレンドおよび清浄剤の両方を必須の成分として含む。
【0099】
本方法は、基油が必須の二峰性ブレンド基油、好ましくは二峰性ブレンド基油および清浄剤、好ましくは金属フェノレートと金属サリチレート清浄剤との混合物またはフェノレート/カルボキシレート清浄剤を含むという条件で、追加の性能添加剤を含有するエンジン潤滑油を使用することができる。清浄剤が二峰性ブレンドに用いられるとき、それ/それらは、潤滑油の(清浄剤活性成分に基づいて(又はを基準として))4〜33重量%、好ましくは8〜25重量%、より好ましくは8〜20重量%の範囲の総量で存在する。
【0100】
使用される清浄剤は、中性/低いから高い、たとえば0−40〜400以上の範囲の全塩基価(TBN)のものであることができる。完成潤滑油は、少なくとも5、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのTBNを有するであろう。
【0101】
フェノレートとサリチレートとの混合物またはフェノレートとカルボキシレート清浄剤との混合物が用いられるとき、フェノレート清浄剤とサリチレートまたはカルボキシレート清浄剤との重量比は、95:5〜5:95、好ましくは3:1〜1:3の範囲にあることができる。
【0102】
本発明に有用な調合(又は配合)潤滑油は、分散剤、その他の清浄剤、腐食防止剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、摩耗防止および/または極圧添加剤、膠着防止剤、ワックス改質剤、粘度指数向上剤、粘度調整剤、フルイドロス添加剤、シール融和性剤、その他の摩擦改良剤、潤滑剤、汚染防止剤、発色剤、消泡剤、乳化破壊剤、乳化剤、増密度剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤などを含むがそれらに限定されないその他の一般的に使用される潤滑油性能添加剤の1つ以上をさらに含有してもよい。多くの一般に使用される添加剤のレビューについては、Klamann in Lubricants and Related Products,Verlag Chemie,Deerfield Beach,FL;ISBN 0−89573−177−0を参照されたい。Noyes Data Corporation of Parkridge,NJ(1973)によって出版された、M.W.Ranneyによる「Lubricant Additives」もまた参照されたい。
【0103】
潤滑油組成物に本発明と組み合わせて使用される性能添加剤のタイプおよび量は、例示として本明細書において示される例によって制限されない。
【0104】
粘度改良剤
粘度改良剤(粘度指数調整剤、およびVI改良剤としても知られる)は、高温および低温操作性を潤滑油に提供する。これらの添加剤は、低温で限定された影響を粘度に及ぼしながら、高められた温度で油組成物の粘度を増大させ、膜厚を増加させる。
【0105】
好適な粘度改良剤としては、高分子量炭化水素、ポリエステルならびに粘度指数向上剤および分散剤の両方として機能する粘度指数向上剤分散剤が挙げられる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約10,000〜1,000,000、より典型的には約20,000〜500,000、さらにより典型的には約50,000〜200,000である。
【0106】
好適な粘度改良剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン、またはアルキル化スチレンのポリマーおよびコポリマーである。好適な粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(たとえば、様々な鎖長アルキルメタクリレートのコポリマー)であり、その幾つかの調合物はまた流動点降下剤として役立つ。その他の好適な粘度指数向上剤としては、エチレンとプロピレンとのコポリマー、スチレンとイソプレンとの水素化ブロックコポリマー、およびポリアクリレート(たとえば、様々な鎖長アクリレートのコポリマー)が挙げられる。具体的な例としては、50,000〜200,000分子量のスチレン−イソプレンまたはスチレン−ブタジエンベースのポリマーが挙げられる。
【0107】
粘度調整剤の量は、活性成分を基準として、および使用される具体的な粘度調整剤に依存してゼロ〜12重量%、好ましくはゼロ〜6重量%、より好ましくはゼロ〜4重量%の範囲であってもよい。
【0108】
酸化防止剤
典型的な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤および油溶性の銅錯体が挙げられる。
【0109】
フェノール系酸化防止剤としては、硫化および非硫化フェノール系酸化防止剤が挙げられる。本明細書で用いられる用語「フェノール型」または「フェノール系酸化防止剤」には、それ自体単環、たとえば、ベンジル、または多環、たとえば、ナフチリルおよびスピロ芳香族化合物であってもよい芳香環に1個または2個以上のヒドロキシル基が結合した化合物が含まれる。したがって、「フェノール型」には、フェノールそれ自体、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ナフトールなど、ならびにそれらのアルキルもしくはアルケニルおよび硫化アルキルもしくはアルケニル誘導体、およびアルキレン架橋、硫黄架橋または酸素架橋によって連結されたそのようなビフェノール化合物を含むビスフェノール型化合物が含まれる。アルキルフェノールとしては、アルキルもしくはアルケニル基が約3〜100個の炭素、好ましくは4〜50個の炭素を含有する、モノ−およびポリ−アルキルもしくはアルケニルフェノールならびにそれらの硫化誘導体が挙げられ、芳香環に存在するアルキルもしくはアルケニル基の数は、1から芳香環に結合したヒドロキシル基の数を数えた後に残る芳香環の利用可能な不充足結合価までの範囲である。
【0110】
一般に、それ故、フェノール系酸化防止剤は、一般式:
(R)−Ar−(OH)
で表されてもよく、ここで、Arは、
【化3】

からなる群から選択され、
式中、Rは、C〜C100アルキルもしくはアルケニル基、硫黄置換アルキルもしくはアルケニル基、好ましくはC〜C50アルキルもしくはアルケニル基または硫黄置換アルキルもしくはアルケニル基、より好ましくはC〜C100アルキルまたは硫黄置換アルキル基、最も好ましくはC〜C50アルキル基であり、Rは、C〜C100アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基、好ましくはC〜C50アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基、より好ましくはC〜Cアルキレンまたは硫黄置換アルキレン基であり、yは、少なくとも1からArの利用可能な結合価までであり、xは、0からArの利用可能な結合価−yまでの範囲であり、zは1〜10の範囲であり、nは0〜20の範囲であり、mは0〜4であり、pは0または1であり、好ましくはyは1〜3の範囲であり、xは0〜3の範囲であり、zは1〜4の範囲であり、nは0〜5の範囲であり、pは0である。
【0111】
好ましいフェノール系酸化防止化合物は、立体障害のヒドロキシル基を含有するヒンダードフェノール化合物であり、これらとしては、ヒドロキシル基が互いにo−またはp−位にあるジヒドロキシアルール化合物のそれらの誘導体が挙げられる。典型的なフェノール系酸化防止剤としては、C+アルキル基で置換されたヒンダードフェノールおよびこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が挙げられる。このタイプのフェノール系物質の例2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−t−ブチル−4−オクチルフェノール;2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4 メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール;および2,6−ジ−t−ブチル 4 アルコキシフェノール。
【0112】
フェノール型酸化防止剤は潤滑業界においてよく知られており、Ethanox(登録商標)4710、Irganox(登録商標)1076、Irganox(登録商標)L1035、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)L109、Irganox(登録商標)L118、Irganox(登録商標)L135などの市販例は当業者におなじみである。上記は、使用することができるフェノール系酸化防止剤のタイプに関して例示の目的で提示されているにすぎず、限定するものではない。
【0113】
芳香族アミン酸化防止剤としては、次の分子構造:
【化4】

(式中、Rは、水素またはC〜C14線状もしくはC〜C14分岐アルキル基、好ましくはC〜C10線状もしくはC〜C10分岐アルキル基、より好ましくは線状もしくは分岐C〜Cであり、nは、1〜5の範囲の整数、好ましくは1である)
で表されるフェニル−α−ナフチルアミンが挙げられる。特定例はIrganox L06である。
【0114】
その他の芳香族アミン酸化防止剤としては、式R10N[式中、Rは、脂肪族、芳香族もしくは置換芳香族基であり、Rは、芳香族もしくは置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリールまたはR11S(O)12(ここで、R11は、アルキレン、アルケニレン、もしくはアルアルキレン基であり、R12は、高級アルキル基、またはアルケニル、アリール、もしくはアルカリール基であり、xは0、1または2である)である]の芳香族モノアミンなどのその他のアルキル化および非アルキル化芳香族アミンが挙げられる。脂肪族基Rは、1〜約20個の炭素原子を含有してもよく、好ましくは約6〜12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は飽和脂肪族基である。好ましくは、RおよびRの両方が芳香族もしくは置換芳香族基であり、芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基RおよびRは、Sなどのその他の基と結合していてもよい。
【0115】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルが挙げられる。一般に、脂肪族基は、約14個超の炭素原子を含有しないであろう。存在してもよいそのようなその他の追加アミン酸化防止剤の一般タイプとしては、ジフェニルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジルおよびジフェニルフェニレンジアミンが挙げられる。そのようなその他の追加芳香族アミンの2つ以上の混合物がまた存在してもよい。ポリマーアミン酸化防止剤もまた使用することができる。
【0116】
潤滑油組成物に使用される、そして必要なフェニル−α−ナフチルアミンに加えて存在してもよい別のクラスの酸化防止剤は、油溶性銅化合物である。あらゆる油溶性の好適な銅化合物が潤滑油に混ぜ込まれてもよい。好適な銅酸化防止剤の例としては、銅ジヒドロカルビルチオ−またはジチオ−ホスフェートおよびカルボン酸(天然起源または合成の)の銅塩が挙げられる。その他の好適な銅塩としては、銅ジチオカルバメート、スルホネート、フェノレート、およびアセチルアセトネートが挙げられる。アルケニルコハク酸または酸無水物から誘導される塩基性、中性、または酸性銅Cu(I)およびまたはCu(II)塩が特に有用であることが知られている。
【0117】
そのような酸化防止剤は、約0.50〜5重量%、好ましくは約0.75〜3重量%(入手ベースで)の量で使用されてもよい。
【0118】
分散剤
エンジン運転の間ずっと、油不溶性酸化副生物が生成する。分散剤は、これらの副生物を溶液に保つのに役立ち、こうして金属表面上へのそれらの沈着を減らす。分散剤は本来、無灰であっても灰形成性であってもよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に灰を実質的にまったく形成しない有機物質である。たとえば、金属を含有しないかまたはホウ素化された金属を含まない分散剤が無灰と考えられる。対照的に、上に議論された金属含有清浄剤は、燃焼時に灰を形成する。
【0119】
好適な分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を典型的には含有する。極性基は、窒素、酸素、またはリンの少なくとも1つの元素を典型的には含有する。典型的な炭化水素鎖は50〜400個の炭素原子を含有する。
【0120】
特に有用なクラスの分散剤は、長鎖置換アルケニルコハク酸化合物、通常は置換無水コハク酸と、ポリヒドロキシまたはポリアミノ化合物との反応によって典型的には製造される、アルケニルコハク酸誘導体である。油への溶解性を与える分子の親油性部分を構成する長鎖基は、普通はポリイソブチレン基である。このタイプの分散剤の多くの例が、商業的におよび文献においてよく知られている。
【0121】
ヒドロカルビル置換コハク酸化合物がポピュラーな分散剤である。特に、スクシンイミド、スクシネートエステル、または少なくとも50個の炭素原子を炭化水素置換基中に好ましくは有する炭化水素置換コハク酸化合物と、少なくとも1当量のアルキレンアミンとの反応によって製造されるスクシネートエステルアミドが特に有用である。
【0122】
スクシンイミド類は、アルケニル無水コハク酸とアミンとの縮合反応によって形成される。モル比は、ポリアミンに依存して変動することができる。たとえば、アルケニル無水コハク酸とTEPAとのモル比は、約1:1〜約5:1で変動することができる。
【0123】
スクシネートエステルは、アルケニル無水コハク酸とアルコールまたはポリオールとの縮合反応によって形成される。モル比は、使用されるアルコールまたはポリオールに依存して変動することができる。たとえば、アルケニル無水コハク酸とペンタエリスリトールとの縮合生成物は有用な分散剤である。
【0124】
スクシネートエステルアミドは、アルケニル無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応によって形成される。たとえば、好適なアルカノールアミンとしては、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミンおよびポリエチレンポリアミンなどのポリアルケニルポリアミンが挙げられる。一例は、プロポキシル化ヘキサメチレンジアミンである。
【0125】
アルケニル無水コハク酸の分子量は典型的には800〜2,500の範囲であろう。上記の生成物は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、オレイン酸などのカルボン酸、およびボレートエステルまたは高ホウ素化分散剤などのホウ素化合物などの様々な試薬とポスト反応させることができる。分散剤は、分散剤反応生成物の1モル当たり約0.1〜約5モルのホウ素でホウ素化することができる。
【0126】
Mannich(マンニッヒ)塩基分散剤は、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、およびアミンの反応から製造される。オレイン酸およびスルホン酸などの、加工助剤および触媒はまた、反応混合物の一部であることができる。アルキルフェノールの分子量は、800〜2,500の範囲である。
【0127】
典型的な高分子量脂肪酸変性Mannich縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物またはHN(R)基含有反応剤から製造することができる。
【0128】
高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の例は、ポリプロピルフェノール、ポリブチルフェノール、およびその他のポリアルキルフェノールである。これらのポリアルキルフェノールは、平均600〜100,000の分子量を有するフェノールのベンゼン環上にアルキル置換基を与えるための高分子量ポリプロピレン、ポリブチレン、およびその他のポリアルキレン化合物でのフェノールの、BFなどの、アルキル化触媒の存在下での、アルキル化によって得ることができる。
【0129】
HN(R)基含有反応剤の例は、アルキレンポリアミン、主にポリエチレンポリアミンである。Mannich縮合生成物の製造での使用に好適な少なくとも1つのHN(R)基を含有するその他の代表的な有機化合物はよく知られており、モノ−およびジ−アミノアルカンおよびそれらの置換類似体、たとえば、エチルアミンおよびジエタノールアミン;芳香族ジアミン、たとえば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン;複素環アミン、たとえば、モルホリン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、およびピペリジン;メラミンおよびそれらの置換類似体を含む。
【0130】
アルキレンポリアミン反応剤の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタアミン、ヘプタエチレンオクタアミン、オクタエチレンノナアミン、ノナエチレンデカミン、およびデカエチレンウンデカミンならびに、前述の、式HN−(Z−NH−)Hの、アルキレンポリアミンに相当する窒素含有率を有するそのようなアミンの混合物が挙げられ、前述の式のZは二価エチレンであり、nは1〜10である。プロピレンジアミンおよびジ−、トリ−、テトラ−、ペンタプロピレントリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサアミンなどの相当するプロピレンポリアミンもまた好適な反応剤である。アルキレンポリアミンは通常、アンモニアとジクロロアルカンなどの、ジハロアルカンとの反応によって得られる。このように、2〜11モルのアンモニアと2〜6個の炭素原子および異なる炭素上に塩素を有する1〜10モルのジクロロアルカンとの反応から得られるアルキレンポリアミンが好適なアルキレンポリアミン反応剤である。
【0131】
本発明に有用な高分子生成物の製造に有用なアルデヒド反応剤としては、ホルムアルデヒド(また、パラホルムアルデヒドおよびホルマリンとして)、アセトアルデヒドおよびアルドール(β−ヒドロキシブチルアルデヒド)などの脂肪族アルデヒドが挙げられる。ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド生成反応剤が好ましい。
【0132】
好ましい分散剤は、モノ−スクシンイミド、ビス−スクシンイミド、および/またはモノ−とビス−スクシンイミドとの混合物からのそれらの誘導体を含む、ホウ素化および非ホウ素化スクシンイミドを含み、ヒドロカルビルスクシンイミドは、約500〜約5000のMnを有するポリイソブチレンなどのヒドロカルビレン基またはそのようなヒドロカルビレン基の混合物から誘導される。その他の好ましい分散剤としては、コハク酸エステルおよびアミド、アルキルフェノール−ポリアミン結合Mannich付加体、それらのキャップド誘導体、ならびにその他の関連成分が挙げられる。そのような添加剤は、全潤滑油の重量を基準として約0.1〜20重量%、好ましくは約0.1〜8重量%、より好ましくは約1〜6重量%(入手ベースで)の量で使用されてもよい。
【0133】
流動点降下剤
通常の流動点降下剤(潤滑油流動性向上剤としても知られる)がまた存在してもよい。流動点降下剤は、流体が流れるであろうまたは注ぐことができる最低温度を低くするために添加されてもよい。好適な流動点降下剤の例としては、アルキル化ナフタレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、およびジアルキルフマレートと、脂肪酸のビニルエステルとアリルビニルエーテルとのターポリマーが挙げられる。
【0134】
そのような添加剤は、到着ベースで約0.0〜0.5重量%、好ましくは約0〜0.3重量%、より好ましくは約0.001〜0.1重量%の量で使用されてもよい。
【0135】
腐食防止剤/金属不活性化剤
腐食防止剤は、潤滑油組成物と接触している金属部品の分解を減らすために使用される。好適な腐食防止剤としては、アリールチアジン、アルキル置換ジメルカプトチオジアゾールチアジアゾールおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0136】
そのような添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%、より好ましくは約0.01〜0.2重量%、さらにより好ましくは約0.01〜0.1重量%(入手ベースで)の量で使用されてもよい。
【0137】
シール融和性添加剤
シール融和性剤は、流体における化学反応またはエラストマーにおける物理的変化を引き起こすことによってエラストマーシールを膨潤させるのに役立つ。潤滑油のための好適なシール融和性剤としては、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(たとえば、ブチルベンジルフタレート)、およびポリブテニル無水コハク酸が挙げられる。そのような添加剤は、入手(又は到着)ベースで約0.01〜3重量%、好ましくは約0.01〜2重量%の量で使用されてもよい。
【0138】
消泡剤
消泡剤が潤滑油組成物に有利に添加されてもよい。これらの試剤は安定な泡の形成を阻害する。シリコーンおよび有機ポリマーが典型的な消泡剤である。たとえば、シリコンオイルまたはポリジメチルシロキサンなどの、ポリシロキサンが消泡特性を提供する。消泡剤は商業的に入手可能なであり、乳化破壊剤などのその他の添加剤と一緒に慣例の少量で使用されてもよく;通常、組み合わせたこれらの添加剤の量は、潤滑油組成物の総重量を基準として1パーセント未満、好ましくは0.001〜約0.5重量%、より好ましくは約0.001〜約0.2重量%、さらにより好ましくは約0.0001〜0.15重量%(到着ベースで)である。
【0139】
阻害剤および防錆添加剤
防錆添加剤(または腐食防止剤)は、潤滑される金属表面を水またはその他の汚染物質による化学攻撃から防護する添加剤である。1つのタイプの防錆添加剤は、優先的に金属表面を湿らせ、それを油膜で防護する極性化合物である。別のタイプの防錆添加剤は、油だけが表面に触れるように、油中水エマルジョンにそれを組み入れることによって水を吸収する。その上別のタイプの防錆添加剤は、金属に化学的に付着して非反応性表面を生成する。好適な添加剤の例としては、ジチオリン酸亜鉛、金属フェノレート、塩基性金属スルホネート、脂肪酸およびアミンが挙げられる。そのような添加剤は、到着ベースで約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%の量で使用されてもよい。
【0140】
摩耗防止添加剤もまた有利に存在することができる。摩耗防止添加剤は、金属が亜鉛またはモリブデンであることができる金属ジチオホスフェート、金属ジチオカルバメート、金属ジアルキルジチオホスフェート、金属ザンテートで例示される。トリクレジルホスフェートは別のタイプの摩耗防止添加剤である。そのような摩耗防止添加剤は、到着ベースで約0.05〜1.5重量%、好ましくは約0.1〜1.0重量%、より好ましくは約0.2〜0.5重量%の量で存在することができる。
【実施例】
【0141】
比較例および実施例
一連のエンジンオイルを、基油組成物および清浄剤タイプがトラクション係数に及ぼす影響に関して評価した。エンジンオイルは、商業的に入手可能な油か無添加基油もしくは基油ブレンドか添加基油もしくは基油ブレンドかのどれかであった。
【0142】
トラクション係数は、完全自動Mini Traction Machineトラクション測定機器であるMTM Traction Rigを用いて測定した。このリグは、PCS Instrumentsによって製造され、Model MTMと特定される。試験検体および装置構成は、現実的な圧力、温度および速度を、非常に大きい負荷、モーターまたは構造体を必要とすることなく達成できるように定められている。流体の小試料(50ml)を試験セルに入れ、機械は、操作介入することなく試験流体についての包括的なトラクションマップを作成するために様々な速度、スライド対ロール比、温度および負荷によって自動的に作動する。標準試験検体は、AISI 52100軸受鋼から製造された研磨19.05mm球および50.0mm直径ディスクである。検体は、一回使用の、使い捨て品であるように設計されている。球をディスクの面を背にしてロードし、球とディスクとをDCサーボモーターおよび駆動装置によって独立して駆動して、特に低いスライド/ロール比で高精度の速度制御を可能にする。各検体を、小さいステンレススチール試験流体浴中でシャフト上に末端で取り付ける。ディスク試験検体を支える垂直シャフトおよび駆動システムを固定する。しかし、球試験検体を支えるシャフトおよび駆動システムは、それが2つの直交軸回りを回転できるようにジンバル配置で支える。1つの軸は負荷適用方向に垂直であり、もう1つはトラクション力方向に垂直である。球およびディスクを同じ方向に駆動する。負荷の適用およびトラクション力の抑制を、ジンバル配置に適切に取り付けた高剛性力変換器によって行って全体支持システム偏向を最小限にする。これらの力変換器からの出力をパソコンによって直接監視する。トラクション係数は、トラクション力と適用負荷との比である。図1〜3に示されるように、トラクション係数を様々な速度にわたって測定した。図1〜3において、x軸上の速度は、球およびディスク速度の合計の半分である、エントレインメント速度である。これらのエントレインメント速度は、エンジンが動作中であるときに達する、表面速度の範囲、または表面速度の範囲の少なくとも一部をシミュレートしている。
【0143】
本明細書において示される試験結果は、次の試験条件下で生み出された:
【0144】
【表1】

【0145】
潤滑油を表1に記載する。
【0146】
【表2】

【0147】
図1について言及すると、グループI油とPIBとのブレンド(対照油B、DおよびE)がグループI/グループIベースオイルブレンド(対照油A)と比べてまったく有意の利益を示さなかったことが分かる。
【0148】
グループIII油とPIBとのブレンド(油X1、X2およびX3は、中〜高速領域(20mm/秒以上、30mm/秒以上でより明らかになる)でグループI/グループIおよびグループI/PIBブレンドを超えてかなりの利益を示した。
【0149】
より高分子量PIBを含有するブレンド(2500MW対1300MW(油X1対油X3))は、同じブレンド動粘度(約16mm/秒)にグループIII基材油とブレンドされたときにトラクション係数のより大きい低下を示した。
【0150】
同じ分子量のPIBおよび同じ動粘度のグループIII油を含有するブレンド(油X1および油X2)については、動粘度が13mm/秒対16mm/秒であるとき利益にまったく差がない。
【0151】
図2について言及すると、グループIII/PIB混合基油中の100%過塩基性サリチル酸カルシウム(油X6)、100%過塩基性カルボン酸カルシウム(油X7)または100%過塩基性スルホン酸カルシウム(油X8)からなる70TBNシリンダー油清浄剤系のブレンドはすべて、対照油C(グループI/PIB混合基油中の過塩基性カルシウムフェノレート/過塩基性スルホン酸カルシウム)と比べて全速度範囲にわたって大きい利益を提供することが分かる。
【0152】
100℃での21mm/秒KVにブレンドされたグループIII/PIB混合基油中の100%過塩基性サリチル酸カルシウムからなる油X5は、低速(10mm/秒以下)および高速(100mm/秒以上)で顕著な利益を示したが、中間速度(10〜100mm/秒)ではほとんどまたはまったく利益を示さず、100℃での動粘度の好ましい上限は約20mm/秒であることを示唆した。
【0153】
グループIII/PIBブレンド中の対照油X4(100%過塩基性カルシウムフェノレートからなる70塩基価シリンダー油)は、中速(10mm/秒)および高速(100mm/秒)領域においてかなりの利益を提供したが、低速(10mm/秒未満)領域においてはより少ない利益を提供した。
【0154】
図3について言及すると、グループIII/PIBブレンド中の過塩基性カルシウムフェノレート(その他の性能理由によりこれらのエンジンオイルにおける望ましい成分)と過塩基性サリチル酸カルシウムとの混合物(油X9)または過塩基性カルシウムフェノレートと過塩基性カルボン酸カルシウムとの混合物(油X10および油X12)からなる70塩基価シリンダー油はすべて、全速度範囲にわたって対照油C(グループI/PIBブレンド中のカルシウムフェノレートとスルホン酸カルシウムとの混合物)および対照油F(グループI/PIBブレンド中のカルシウムフェノレートとサリチル酸カルシウムとの混合物)を超えて利益を示し、この利益は10mm/秒以上の速度でより顕著になったことが分かる。グループII/PIBの混合物中の過塩基性カルシウムフェノレートとサリチル酸カルシウムとの混合物を含む油X13は、より高い速度、約60mm/秒以上でのみ対照油Cおよび対照油Fを超えて利益を示した。
【0155】
油X11、X12およびX13をすべて、その他の運転すべてと同じ試験条件下で、異なる第2MTMマシン装置で運転した。XIIがアウトライアーであることが分かる。同じ第2MTMマシンでの油X12およびX13運転に関する結果は、第1MTMマシン装置で評価されたその他の試料と合致し、このように、異なる装置からの結果が実質的に同様であり、比較できることを裏付ける。アウトライアーは試験誤差か混合誤差かのどちらかを反映していると考えられる。
【0156】
油X12を油X10と比較すると、より高い分子量PIBを二峰性ブレンドに用いるブレンドは中速〜高速(10mm/秒〜100mm/秒以上)下により大きいトラクション係数利益を提供することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃で8〜25mm/秒の動粘度を有し、
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜12mm/秒の動粘度を有し、グループIIIベースオイル及びグループIVベースオイルから選択される1種以上の油である第1ベースオイルと、
少なくとも800Mnの数平均分子量を有する1種以上のポリイソブチレン(PIB)から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドを含むベースオイルを含む潤滑油を、
エンジンオイルとして用いることで、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも10mm/秒の表面速度に達する大きい低速及び中速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の前記向上は、そのエンジンオイルが、1種以上のグループI基油もしくはグループI基油とPIBとの混合物に基づくエンジンオイル又は二峰性ではないエンジンオイルのトラクション係数より、低いトラクション係数を有することによって立証される方法。
【請求項2】
100℃で8〜25mm/秒の動粘度を有し、
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜12mm/秒の動粘度を有し、グループIIIベースオイル及びグループIVベースオイルから選択される1種以上の油である第1ベースオイルと、
少なくとも800Mnの数平均分子量を有する1種以上のポリイソブチレン(PIB)から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドを含むベースオイル、並びに
アルカリ及び/又はアルカリ土類金属サリチレート、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属フェノレート、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属カルボキシレート、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属フェノレートとサリチレートとの混合物、又はアルカリ及び/又はアルカリ土類金属フェノレートとカルボキシレートとの混合物から選択される活性成分に基づいて、4〜33重量%の範囲で存在する清浄剤
を含む潤滑油を、
エンジンオイルとして用いることで、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも3mm/秒の表面速度に達する大きい低速及び中速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の前記向上は、清浄剤を含むときでさえ、二峰性ではないエンジンオイル又は列挙されるものと同程度に二峰性ではないエンジンオイル又はグループI基油及びPIB基油に基づくエンジンオイルのトラクション係数より、そのエンジンオイルが、低いトラクション係数を有することによって立証される方法。
【請求項3】
100℃で8〜25mm/秒の動粘度を有し、
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜12mm/秒の動粘度を有し、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイル及びグループIVベースオイルから選択される1種以上の油である第1ベースオイルと、
少なくとも800Mnの数平均分子量を有する1種以上のポリイソブチレン(PIB)から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドを含むベースオイルを含む潤滑油を、
エンジンオイルとして用いることで、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、少なくとも60mm/秒の表面速度に達する大きい低速及び中速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の前記向上は、そのエンジンオイルが、二峰性ではないエンジンオイル又は1種以上のグループIベースオイルに基づくエンジンオイル又はグループIベースオイルとPIBとの混合物であるエンジンオイルのトラクション係数より、低いトラクション係数を有することによって立証される方法。
【請求項4】
前記潤滑油は、活性成分に基づいて、4〜33重量%の1種以上のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属サリチレート、フェノレート、スルホネート又はカルボキシレート清浄剤を更に含有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記潤滑油は、100℃で8〜22mm/秒の範囲の動粘度を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記PIBは、800〜6,000Mnの範囲の数平均分子量を有する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記清浄剤は、活性成分に基づいて8〜25重量%の範囲の量で存在する請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記清浄剤は、活性成分に基づいて8〜25重量%の範囲の量で存在する請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記清浄剤が、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属フェノレートとサリチレートとの組み合わせ、又はアルカリ及び/又はアルカリ土類金属フェノレートとカルボキシレートとの組み合わせである場合、フェノレートと、サリチレート又はカルボキシレートとの重量比が95:5〜5:95の範囲にある請求項2、4、7及び8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
フェノレートと、サリチレート又はカルボキシレートとの前記重量比が3:1〜1:3の範囲にある請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1基油がグループIII基油である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1基油がグループIV基油である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記グループIV基油が、メタロセン触媒を用いて製造されるPAOである請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518938(P2013−518938A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551338(P2012−551338)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022971
【国際公開番号】WO2011/094575
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】