トランスアクスル駆動装置
【課題】発進要素と変速機構とを切り離してトランスアクスルを二段にユニット化させたことの利点を損なうことなく、車両レイアウトの自由度を高めることができ、しかも、オイルポンプの常時駆動が可能なトランスアクスル駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明は、エンジン1からの回転が入力されるトルクコンバータ2と、トルクコンバータ2からの回転が入力されるメインシャフト3と、メインシャフト3からの回転が入力される変速機構4と、変速機構4からの回転が入力される差動機構5とを備えるトランスアクスル駆動装置において、エンジン1からの回転が入力されるサブシャフト6と、メインシャフト3及びサブシャフト6から入力される回転のうち、当該回転の高い方を出力する、ワンウェイクラッチC1,C2を有する回転出力選択手段9と、この回転出力選択手段9に連結されるオイルポンプ10とを備える。
【解決手段】本発明は、エンジン1からの回転が入力されるトルクコンバータ2と、トルクコンバータ2からの回転が入力されるメインシャフト3と、メインシャフト3からの回転が入力される変速機構4と、変速機構4からの回転が入力される差動機構5とを備えるトランスアクスル駆動装置において、エンジン1からの回転が入力されるサブシャフト6と、メインシャフト3及びサブシャフト6から入力される回転のうち、当該回転の高い方を出力する、ワンウェイクラッチC1,C2を有する回転出力選択手段9と、この回転出力選択手段9に連結されるオイルポンプ10とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに代表される駆動源からの回転が入力される発進要素と、当該発進要素からの回転が入力される変速機構との間に、当該変速機構に発進要素からの回転を入力させるメインシャフトを介在させることで、トランスアクスルを前段のユニットと後段のユニットとに分離させてなるトランスアクスル駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のトランスアクスル駆動装置には、発進要素と変速機構とを直結したときに生じる問題を解決すべく、エンジンからの回転が入力される発進要素と、この発進要素からの回転が入力される変速機構との間に、当該変速機構に発進要素からの回転を入力させるプロペラシャフトを介在させることで、トランスアクスルを前段のユニットと後段のユニットとに分離したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2005−88795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来装置は、潤滑や油圧制御を要する変速機構が、前段側のユニット(以下、「フロントユニット」という)からプロペラシャフト(メインシャフト)を介して切り離された後段側のユニット(以下、「ロアユニット」という)に配置されているため、オイルポンプを常時駆動させるべく、当該オイルポンプをFF構造(前側配置前側駆動)にすると、当該オイルポンプがフロントユニットに配置される一方で、オイルパンに代表されるオイル貯留部がロアユニットを配置される。
【0004】
かかる構成によれば、フロントユニットとロアユニットとの間に掛け渡されたプロペラシャフトに沿って、吸入用油路及び吐出用油路を配管しなければならないが、この油路は、管路抵抗による圧力損失を防止するため、管路の内径を大きく確保する必要があることから、車両レイアウトの自由度に大きな影響を与える。
【0005】
これに対し、オイルポンプをRR構造(後側配置後側駆動)にすると、オイルポンプは、オイルパンと共にロアユニットに配置されるため、フロントユニットとロアユニットとの間に配置したプロペラシャフトに沿って吸入用油路及び吐出用油路を配管する必要がなくなる。
【0006】
しかしながら、RR構造の場合、発進要素が解放されていると、プロペラシャフトの回転数が低下するため、オイルポンプを駆動させることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の事実に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発進要素と変速機構とを切り離してトランスアクスルを二段にユニット化させたことの利点を損なうことなく、車両レイアウトの自由度を高めることができ、しかも、オイルポンプの常時駆動が可能なトランスアクスル駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトランスアクスル駆動装置は、回転出力選択手段を用いることで、発進要素からメインシャフトに入力される駆動源からの回転と、駆動源から直接サブシャフトに入力される駆動源からの回転のうち、これら回転の高い方を選択することでオイルポンプに入力し、この入力回転によってオイルポンプを駆動する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オイルポンプを発進要素から分離してメインシャフトよりも後段、例えば変速機構に配置しても、当該オイルポンプに繋がるサブシャフトには駆動源からの回転が直接入力されるので、発進要素を解放する等してメインシャフトの回転が低下しても、サブシャフトからの回転によってオイルポンプを駆動させることができる。
【0010】
加えて、本発明によれば、メインシャフトの回転が上昇したときには、メインシャフトからの回転と、サブシャフトからの回転とのうち、いずれか高い方の回転によって、オイルポンプを駆動させることができる。
【0011】
即ち、本発明によれば、オイルポンプを発進要素から分離してメインシャフトの後段に配置しても、発進要素の締結及び解放に伴いメインシャフトの回転がどのような変化するかにかかわりなく、オイルポンプを常時駆動させることができる。
【0012】
また、本発明によれば、オイルポンプがオイルパンに代表されるオイル貯留部と共にメインシャフトよりも後段(ロアユニット)に配置されるので、メインシャフトよりも前段(フロントユニット)にオイルポンプを配置した場合のように、メインシャフトの後段から前段に、メインシャフトに沿って吸入用油路及び吐出用油路を配管する必要がない。
【0013】
従って、本発明によれば、発進要素と変速機構とを切り離してトランスアクスルを二段にユニット化させたことの利点を損なうことなく、車両レイアウトの自由度を高めることができ、しかも、オイルポンプの常時駆動が可能なトランスアクスル駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明である、トランスアクスル駆動装置を詳細に説明する。
【0015】
図1は、オイルポンプを前段に配置した本発明の第1の形態である、トランスアクスル駆動装置を示すスケルトン図である。
【0016】
符号1は、駆動源であるエンジンである。以下、本形態は、駆動源をエンジン1として説明するが、駆動源には、エンジン1及びこれと併用されるモータ、又は、モータのみ等、種々のものを適用できる。
【0017】
符号2は、エンジン1の出力軸(以下、「エンジン出力軸」という)1aに連結される発進要素としてのロックアップ式トルクコンバータ(以下、「トルクコンバータ」という)である。トルクコンバータ2は、入力側要素であるポンプインペラ2a、出力側要素であるタービンランナ2b及びケースCに固定されたステータ2cとを有し、ロックアップクラッチ2Lによってポンプインペラ2aとタービンランナ2bとの間の締結及び解放を行う。
【0018】
符号3は、タービンランナ2bに結合し、トルクコンバータ2からの回転が入力されるプロペラシャフト(以下、「メインシャフト」という)である。
【0019】
符号4は、メインシャフト3の出力側に繋がり、メインシャフト3からの回転が入力される変速機構である。変速機構4は、メインシャフト3からの回転を油圧等に応じて適宜変更した後、当該変速機構4から出力する。変速機構4としては、例えば、その変速段が油圧によって制御される有段変速機構や無段変速機構等が挙げられる。
【0020】
符号5は、変速機構4の出力側に結合し、変速機構4からの回転が入力される差動機構(ディファレンシャルギア機構)である。差動機構5は、図示せぬ車軸によって変速機構4を通して伝達されたエンジン1からの回転を左右輪に伝達する。
【0021】
符号6は、エンジン1からの回転が入力されるサブシャフトである。サブシャフト6への入力は、動力伝達機構7を介して行われる。動力伝達機構7は、ポンプインペラ2aに結合し、エンジン1からの回転が直接入力される駆動スプライン7aと、サブシャフト6の入力側に設けた従動スプライン7bとの間に、チェーン又はベルト等の無終端部材7cを掛け渡してなる。
【0022】
また、サブシャフト6への入力は、摩擦要素としてのクラッチ8によって断続させることができる。なお、本形態では、クラッチ8として油圧制御を伴わない電磁クラッチを採用するが、他のクラッチとしては、同じく油圧制御を伴わない遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられる。
【0023】
符号9は、メインシャフト3の回転数(以下、「メインシャフト回転数」という)N3と、サブシャフト6の回転数(以下、「サブシャフト回転数」という)N6とのうち、当該回転数の高い方を出力する回転出力選択手段である。回転出力選択手段9は、オイルポンプ10に結合するポンプ駆動軸9aを有する。
【0024】
ポンプ駆動軸9aは、メインシャフト3が回転可能に貫通する筒状部材である。ポンプ駆動軸9aの内周面は、摩擦要素としてのワンウェイクラッチC1を介してメインシャフト3に結合されている。これにより、回転出力選択手段9内には、ワンウェイクラッチC1によって、メインシャフト3からの回転が入力される第1の駆動力伝達系が形成される。
【0025】
更に、ポンプ駆動軸9aの外周面には、摩擦要素としてのワンウェイクラッチC2が設けられている。このワンウェイクラッチC2には、動力伝達機構11を介してサブシャフト6からの回転が入力される。
【0026】
動力伝達機構11は、動力伝達機構7と同様、サブシャフト6に結合し、サブシャフト6からの回転が入力される駆動スプライン11aと、回転出力選択手段9側に設けた従動スプライン11bとの間に、チェーン又はベルト等の無終端部材11cを掛け渡してなる。
【0027】
これにより、ワンウェイクラッチC1,C2は、一方の回転数が高いときには他方が解放されることで空転し、高い回転数のみを伝達する。回転出力選択手段9には、第1の駆動力伝達系と共に、ワンウェイクラッチC1,C2によって、サブシャフト6からの回転が入力される第2の駆動力伝達系が形成される。
【0028】
メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6よりも高いときには、ワンウェイクラッチC2はサブシャフト6とポンプ駆動軸9aとの間を解放し、当該ポンプ駆動軸9aに対してサブシャフト6を空転させる一方、ワンウェイクラッチC1はメインシャフト3とポンプ駆動軸9aとの間を締結し、当該ポンプ駆動軸9aをメインシャフト3と一体に回転させる。
【0029】
これに対し、サブシャフト回転数N6がメインシャフト回転数N3よりも高いときには、ワンウェイクラッチC1は、メインシャフト3とポンプ駆動軸9aとの間を解放し、当該ポンプ駆動軸9aに対してメインシャフト3を空転させる一方、ワンウェイクラッチC2が、サブシャフト6とポンプ駆動軸9aとの間を締結し、当該ポンプ駆動軸9aをサブシャフト6と一体に回転させる。
【0030】
これにより、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2はそれぞれ、互いに協働することで、メインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6とのうち、回転数の高い方を出力する。
【0031】
オイルポンプ10は、ポンプ駆動軸9aを介して、メインシャフト回転数N3と、サブシャフト回転数N6とのうち、高い方の回転数を入力として、ポンプ動作を生起させる既知のオイルポンプである。
【0032】
変速機構4への入力は、メインシャフト3に介在させた摩擦要素としてのクラッチ12によって断続させることができる。このクラッチ12は、回転出力選択手段9に係る、第1の駆動力伝達系の入力部材としてのワンウェイクラッチC1と変速機構4との間に介在する。クラッチ12も、クラッチ8と同様、遠心クラッチや電磁クラッチ等を採用することができるが、本形態では、変速機構4との制御系を共通化することを目的に、油圧クラッチを採用する。
【0033】
また、符号100は、CPU等を搭載したコントローラである。コントローラ100は、少なくとも、クラッチ8及びクラッチ12の締結・解放を制御し、本形態では併せて、ロックアップクラッチ2Lの締結・解放及び変速機構4における変速を制御する。このため、コントローラ100には、例えば、エンジン回転数センサからの信号(エンジン回転数Ne)、メインシャフト回転数センサからの信号(メインシャフト回転数N3)、サブシャフト回転数センサからの信号(サブシャフト回転数N6)、オイルポンプ回転数センサからの信号(ポンプ回転数Np)、スロットル開度センサからの信号(スロットル開度TVO)及び車速センサからの信号(車速VSP)等の情報が入力される。
【0034】
本形態では、メインシャフト3を介してトルクコンバータ2と変速機構4とを離間させることで、トルクコンバータ2、動力伝達機構7及びクラッチ8をメインシャフト3よりも前段に位置するフロントユニットU1として構成する一方、動力伝達機構11、回転出力選択手段9、クラッチ12、変速機構4及び差動機構5をメインシャフト3よりも後段に位置するリアユニットU2として構成する。
【0035】
図2は、レンジ選択に伴う車両停止時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。なお、同図では、コントローラ100等の制御系が省略されている。また、以下の説明において、クラッチ8は、通常、ばね荷重等の予圧(締結容量)が付勢されることで、その締結が維持されるように構成されているものとする。
【0036】
N(中立)レンジ又はR(後進)レンジの選択によって車両が停止しているときには、エンジン1からの駆動力は発生しているものの、ロックアップクラッチ2Lが解放されているため、トルクコンバータ2内のポンプインペラ2aとタービンランナ2bとの間では滑りを生じ、この滑り分だけ、メインシャフト回転数N3は低くなる。この場合、メインシャフト回転数N3が低くなり過ぎると、オイルポンプ10から必要油圧を発生させるだけの回転数(以下、「必要ポンプ回転数」)Np(min)で、当該オイルポンプ10を駆動させることができないことがある。
【0037】
これに対し、本形態では、サブシャフト6が実質上、エンジン1によって駆動されることで、サブシャフト回転数N6がメインシャフト回転数N3よりも高いため、回転出力選択手段9は、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、同図の太線で示すように、エンジン1からの回転を、トルクコンバータ2、動力伝達機構7、クラッチ8、サブシャフト6及び動力伝達機構11を経てオイルポンプ12に入力させる。従って、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いためにオイルポンプ10を駆動させることができないときでも、サブシャフト6の回転によってオイルポンプ10を駆動させることができる。
【0038】
一方、D(前進)レンジを選択した状態でブレーキ操作を行うことで車両が停止しているときも、すぐさま発進できるようにクラッチ12が締結されているため、メインシャフト3は変速機構4と直結されるために回転していない。このため、メインシャフト3では、オイルポンプ10を駆動させることができない。
【0039】
従って、この場合も、回転出力選択手段9は、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、同図の太線で示すように、エンジン1からの回転を、トルクコンバータ2、動力伝達機構7、クラッチ8、サブシャフト6及び動力伝達機構11を経てオイルポンプ12に入力する。
【0040】
即ち、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いときも、オイルポンプ10はサブシャフト6の回転数N6で駆動させることができる。なお、レンジ選択に伴う車両停止時と、Dレンジ選択状態でのブレーキ操作に伴う車両停止時との相違は、レンジ選択に伴う車両停止時では、クラッチ12を解放するのに対し、Dレンジ選択状態でのブレーキ操作に伴う車両停止時では、クラッチ12を締結することにあり、エンジンからオイルポンプまでの動力伝達経路についての変更はない。
【0041】
図3は、クラッチ8を解放したときの、車両前進時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。なお、同図も、コントローラ100等の制御系が省略されている。
【0042】
通常、Dレンジ選択状態又はRレンジ選択状態でのアクセル操作に伴う車両前進又は後進時には、ロックアップクラッチ2Lを締結することで、トランスアクスルに対して大きな駆動力を供給するが、Dレンジ選択状態又はRレンジ選択状態でロックアップクラッチ2Lが解放された低車速時では、メインシャフト回転数N3がトルクコンバータ2での滑り分だけ低くなると共に、クラッチ12も締結されているため、メインシャフト回転数N3は第2駆動ユニットU2側の回転(車速VSP)に比例する。このため、車速VSPが低いときには、上述したとおり、メインシャフト3では、オイルポンプ10を駆動させることができないことがあるため、この場合、オイルポンプ10の駆動は、サブシャフト回転数N6で行われる。
【0043】
しかしながら、Dレンジ選択状態でのアクセル操作に伴い、エンジン回転数Neが上昇すると、ロックアップクラッチ2Lの締結又は解放にかかわらず、サブシャフト回転数N6と共にメインシャフト回転数N3も上昇する。
【0044】
これに対し、本形態では、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になったとき、クラッチ8を解放する。すると、サブシャフト回転数N6がポンプ回転数Np(必要ポンプ回転数Np(min))よりも低くなる。即ち、サブシャフト回転数N6がメインシャフト回転数N3よりも低くなることで、ワンウェイクラッチC2はポンプ駆動軸9aに対して空転する。
【0045】
このため、回転出力選択手段9では、ワンウェイクラッチC1が、メインシャフト3の回転(必要ポンプ回転数Np(min)以上の回転)をポンプ駆動軸9aに伝えるため、オイルポンプ10は、サブシャフト6に替えてメインシャフト3によって駆動されることになる。また、この場合、サブシャフト6には、ポンプ駆動軸9aの回転も伝わらないので、サブシャフト6は回転しなくなって停止する。
【0046】
即ち、回転出力選択手段9は、アクセルペダルの踏み込み等に伴いメインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になると、クラッチ8を解放しても、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、図3の太線で示すように、エンジン1からの回転を、トルクコンバータ2、メインシャフト3を経てオイルポンプ12に入力する。従って、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になれば、オイルポンプ10をサブシャフト6の回転に替えて、メインシャフト3の回転によって駆動させることができる。
【0047】
ここで、図4は、上述のように、クラッチ8の締結・解放を制御するに際し、コントローラ100にて実行されるステップを概略的に記載したフローチャートである。
【0048】
Dレンジ選択状態でのアクセル操作に伴い車両が前進する場合、コントローラ100では、エンジンスタートと同時に、ステップ11にて、メインシャフト回転数N3と必要ポンプ回転数Np(min)とを比較する。
【0049】
ステップ11にて、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるときは、ステップ12に移行してコントローラ100からの指令(を行わないこと)によりクラッチ8の締結を維持する。このため、サブシャフト6は、トルクコンバータ2から動力伝達機構7を経て入力されるエンジン1の回転によって回転する。
【0050】
このため、サブシャフト6は、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2の協働により、ポンプ駆動軸9aを回転させる。これにより、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるとき、オイルポンプ10は、図2に示すように、サブシャフト6によって駆動される。
【0051】
これに対し、ステップ11にて、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になると、ステップ14に移行してコントローラ100からの指令によりクラッチ8を解放する。
【0052】
すると、サブシャフト6は、トルクコンバータ2から動力伝達機構7を経て入力されるべきエンジン1の回転が遮断されるため、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2の協働により、ポンプ駆動軸9aに対して空転する。これにより、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上であるとき、オイルポンプ10は、図3に示すように、メインシャフト3によって駆動される。
【0053】
図5,6はそれぞれ、クラッチ8の締結を維持した状態での、車両前進時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。なお、図5,6も、コントローラ100等の制御系が省略されている。
【0054】
本形態では、その構成により、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6よりも高いとき、オイルポンプ10を動作させることができる。
【0055】
クラッチ8を締結したまま、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になる場合、図5に示すように、回転出力選択手段9では、ワンウェイクラッチC1が締結されることで、メインシャフト回転数N3を入力とする第1の動力伝達系が選択される一方、ワンウェイクラッチC2が空転することで、サブシャフト回転数N6を入力とする第2の動力伝達系が切断される。
【0056】
即ち、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2の協働によって自動的に第1の動力伝達系が選択されるので、これにより、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になるとき、オイルポンプ10は、図5に示すように、メインシャフト3によって駆動される。
【0057】
これに対し、車速VSPが低下することで、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6未満になる場合、図6に示すように、クラッチ8は締結されたままであるため、ワンウェイクラッチC2が締結されることで、サブシャフト回転数N6を入力とする第2の動力伝達系が選択される一方、ワンウェイクラッチC1が空転することで、メインシャフト回転数N3を入力とする第1の動力伝達系が切断される。
【0058】
即ち、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2の協働によって自動的に第2の動力伝達系が選択されるので、これにより、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6よりも低いとき、オイルポンプ10は、図6に示すように、サブシャフト6によって駆動される。
【0059】
ここで、図7は、クラッチ8を締結したままでの、回転出力選択手段9の動作をメインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6との関係で概略的に示すフローチャートである。
【0060】
メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6未満であると、回転出力選択手段9では、ワンウェイクラッチC1が空転することで、メインシャフト回転数N3を入力とする第1の動力伝達系を選択しないが、ワンウェイクラッチC2が締結されることで、サブシャフト回転数N6を入力とする第2の動力伝達系が選択される(ステップ21→ステップ22)。このため、ポンプ回転数Npは、メインシャフト回転数N3よりも回転数の高いサブシャフト回転数N6となる(ステップ23)。
【0061】
従って、オイルポンプ10は、メインシャフト回転数N3で駆動させることができない状態であっても、メインシャフト回転数N3よりも回転数の高いサブシャフト回転数N6で駆動させることができる。
【0062】
これに対し、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になると、回転出力選択手段9では、ワンウェイクラッチC2が空転することで、サブシャフト回転数N6を入力とする第2の動力伝達系を選択しないが、ワンウェイクラッチC1が締結されることで、メインシャフト回転数N3を入力とする第1の動力伝達系が選択される(ステップ21→ステップ24)。このため、ポンプ回転数Npは、サブシャフト回転数N6よりも回転数の高いメインシャフト回転数N3となる(ステップ25)。
【0063】
従って、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6よりも高いとき、オイルポンプ10は、メインシャフト回転数N3によって駆動させることができる。
【0064】
図8は、上述したそれぞれの各動作を一連の流れとして概略的に記載したフローチャートである。同フローチャートからも明らかなように、回転出力選択手段9を、本形態のように、ワンウェイクラッチC1及びC2の協働によるものとすれば、メインシャフト3を入力とする第1の動力伝達系と、サブシャフト6を入力とする第2の動力伝達系との切替えを、複雑な制御を行うことなく実現することができる。
【0065】
上述のとおり、本発明形態によれば、オイルポンプ10をトルクコンバータ2から分離してメインシャフト3よりも後段のリアユニットU2に配置しても、オイルポンプ10に繋がるサブシャフト6にはエンジン1からの回転が入力されるので、ロックアップクラッチ2Lを解放する等してメインシャフト3の回転が低下しても、サブシャフト6からの回転によってオイルポンプ10を駆動させることができる。
【0066】
加えて、本発明によれば、メインシャフト3の回転が上昇したときには、メインシャフト3からの回転と、サブシャフト6からの回転とのうち、いずれか高い方の回転によって、オイルポンプ10を駆動させることができる。
【0067】
即ち、本発明によれば、オイルポンプ10をトルクコンバータ2から分離してメインシャフト3の後段に配置しても、トルクコンバータ2の締結及び解放に伴いメインシャフト3の回転がどのような変化をするかにかかわりなく、オイルポンプ10を常時駆動させることができる。
【0068】
また、本発明によれば、オイルポンプ10がオイルパンに代表されるオイル貯留部と共にメインシャフト3よりも後段のリアユニットU2に配置できるので、メインシャフト3よりも前段にあるフロントユニットU1にオイルポンプ10を配置した場合のように、ロアユニットU2からフロントユニットU1に、メインシャフト3に沿って吸入用油路及び吐出用油路を配管する必要がない。このため、オイルポンプ10をフロントユニットU1に配置した場合は通常、リアユニットU2に配置したオイルパンからオイルを導いた後、適当に調圧されたオイルを変速機構4に供給するためには、吸入用油路及び吐出用油路を含め少なくとも8本の油路が必要となるのに対し、本発明に従う同形態によれば、少なくとも2本の油路で済むことから、6本の油路を削減することができる。
【0069】
従って、本発明によれば、メインシャフト3を介してトルクコンバータ2と変速機構4とを切り離してトランスアクスルを二段にユニット化させたことの利点を損なうことなく、車両レイアウトの自由度を高めることができ、しかも、オイルポンプ10の常時駆動が可能なトランスアクスル駆動装置を提供することができる。
【0070】
また、本形態では、エンジン1とサブシャフト6との間に、サブシャフト6への入力を断続させるクラッチ8が設けられていることから、上述のとおり、クラッチ8の解放を適宜行うことで、サブシャフト回転数N6を抑えることができる。これにより、サブシャフト6のジョイントや軸径を細くできるため、車両レイアウトの自由度を高めるのに更に有効である。
【0071】
特に、本形態の如く、クラッチ8として電磁クラッチや遠心クラッチを採用した場合には、その締結及び解放に油圧制御を伴わないため、配管構造の整理に更に有効である。
【0072】
加えて、本形態の如く、回転出力選択手段9をワンウェイクラッチC1,C2で構成すれば、上述のとおり、メインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6とのうち、高い回転数の方を自動的にオイルポンプ10に入力させることで、当該オイルポンプ10を駆動させることができる。
【0073】
図9は、本発明の第2の形態を示すスケルトン図である。本形態は、第1の形態に係るワンウェイクラッチC1をクラッチC3に置き換えたものである。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、第1の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0074】
また、本形態においても、クラッチ8は、通常、ばね荷重等の予圧(締結容量)が付勢されることで、その締結が維持されるように構成されているものとする。クラッチC3としては、クラッチ8と同様、油圧制御を伴わない電磁クラッチや遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられるが、本形態では、変速機構4との制御系を共通化することを目的に、油圧クラッチを採用する。
【0075】
車両停止時等により、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるとき、サブシャフト回転数N6がメインシャフト回転数N3よりも高い状態にある。このため、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いとき、エンジン1の回転は、クラッチC3の締結・解放にかかわらず、第1の形態と同様、トルクコンバータ2から動力伝達機構7を経て、クラッチ8を介してサブシャフト6に伝達された後、回転出力選択手段9内でワンウェイクラッチC2からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0076】
即ち、本形態も、車両の停止時等により、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いときには、第1の形態と同様、オイルポンプ10をサブシャフト6の回転によって動作させる。なお、本形態では、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いときには、動力伝達効率を考慮して、クラッチC3を解放する。
【0077】
これに対し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になると、クラッチ8を解放すると同時にクラッチC3を締結する。すると、エンジン1の回転は、第1の形態と同様、トルクコンバータ2からメインシャフト3に伝達された後、回転出力選択手段9内でクラッチC3からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0078】
即ち、本形態も、第1の形態と同様、アクセルペダルの踏み込み等に伴い、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になるまでは、オイルポンプ10の駆動はサブシャフト回転数N6に依存し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上に上昇なれば、オイルポンプ10をメインシャフト3の回転によって動作させる。
【0079】
これに対し、車速VSPが低下し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満になると、サブシャフト6からメインシャフト3の掛け換えと逆に、クラッチC3を解放すると同時にクラッチ8を締結する。すると、エンジン1の回転は、トルクコンバータ2からサブシャフト6に伝達された後、回転出力選択手段9内でワンウェイクラッチC2からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0080】
従って、本形態も、第1の形態と同様、車速VSPが低下すると、オイルポンプ10をメインシャフト3の回転に替えてサブシャフト6の回転によって動作させることができる。なお、こうしたクラッチ8及びクラッチC3の制御は、第1の形態と同様、車速VSPにかかわらず、メインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6との相対回転でも適用できる。このため、本形態によれば、クラッチC3を制御することで、第1の形態と同様の作用効果を奏する。
【0081】
図10は、本発明の第3の形態を示すスケルトン図である。本形態は、第1の形態に係るワンウェイクラッチC1,C2をそれぞれ、油圧クラッチC3,C4に置き換えたものである。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0082】
また、本形態においても、クラッチ8は、通常、ばね荷重等の予圧(締結容量)が付勢されることで、その締結が維持されるように構成されているものとする。クラッチC4としても、クラッチ8と同様、油圧制御を伴わない電磁クラッチや遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられるが、本形態では、クラッチC3と同様、変速機構4との制御系を共通化することを目的に、油圧クラッチを採用する。
【0083】
車両の停止時等により、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるとき、クラッチC4は、締結された状態にある。このため、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いとき、エンジン1の回転は、クラッチC3の締結・解放にかかわらず、第1の形態と同様、トルクコンバータ2から動力伝達機構7を経て、クラッチ8を介してサブシャフト6に伝達された後、回転出力選択手段9内で油圧クラッチC4からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0084】
即ち、本形態も、車両の停止時等により、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いときには、第1の形態と同様、オイルポンプ10をサブシャフト6の回転によって動作させている。
【0085】
これに対し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になると、クラッチC4を解放すると同時にクラッチC3を締結する。すると、エンジン1の回転は、第1の形態と同様、トルクコンバータ2からメインシャフト3に伝達された後、回転出力選択手段9内でクラッチC3からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0086】
即ち、本形態も、第1の形態と同様、アクセルペダルの踏み込み等に伴い、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になるまでは、オイルポンプ10の駆動はサブシャフト回転数N6に依存し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上に上昇なれば、オイルポンプ10をメインシャフト3の回転によって動作させる。なお、本形態では、クラッチ8を締結すると、サブシャフト6が回転し続けるため、これを防止すべく、併せてクラッチ8を解放することで、サブシャフト6が回転し続けないようにしている。但し、本発明に従えば、車両前進時にあっては、クラッチ8又はクラッチC4の少なくともいずれか一方を解放すると同時にクラッチC3を締結することができる。また、クラッチC3については、第2の形態と同様に制御することができる。
【0087】
これに対し、車速VSPが低下し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満になると、サブシャフト6からメインシャフト3の掛け換えと逆に、クラッチC4を締結する。すると、エンジン1の回転は、トルクコンバータ2からサブシャフト6に伝達された後、回転出力選択手段9内でクラッチC4からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0088】
従って、本形態も、第1の形態と同様、車速VSPが低下すると、オイルポンプ10をメインシャフト3の回転に替えてサブシャフト6の回転によって動作させることができる。なお、こうしたクラッチ8及びクラッチC3,C4の制御も、第1の形態と同様、車速VSPにかかわらず、メインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6との相対回転でも適用できる。このため、本形態によれば、クラッチC3,C4を制御することで、第1の形態と同様の作用効果を奏する。
【0089】
図11は、本発明の第4の形態を示すスケルトン図である。本形態は、第1の形態に遊星歯車機構を組み合わせたものである。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0090】
本形態では、ポンプインペラ2aは、遊星歯車機構13のサンギア13sに結合すると共に、クラッチ14を介してリングギア13rに連結される。また、リングギア13rは、ブレーキ15を介してケースCに固定可能に繋がる。サンギア13sとリングギア13rとの間に噛合する遊星ピニオン13pは、キャリア13cによって回転可能に支持されている。キャリア13cは、駆動スプライン7aに結合し、動力伝達機構7にエンジン1の回転を入力する。
【0091】
本形態は、トルクコンバータ2と遊星歯車機構13との間に介在させたクラッチ14が第1の形態に係る、クラッチ8に相当し、当該クラッチ8と同様に機能する。これにより、本形態は、基本的に第1の形態と同様の作用効果を奏する。
【0092】
但し、本形態では、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以下で、サブシャフト回転数N6が必要ポンプ回転数Np(min)を大幅に上回るとき、クラッチ14を解放すると共にブレーキ15を締結することができる。
【0093】
この場合、遊星歯車機構13は、リングギア13rが固定されることで、サンギア13sを入力としてキャリア13cからの出力となる。即ち、遊星歯車機構13からの出力は、減速されたものとなる。これにより、サブシャフト6の回転が抑えられることで、オイルポンプ10を必要以上に回転させなくて済むことから、オイルポンプ10にて生じるフリクションを下げることができる。
【0094】
また、本発明の第5の形態として、第1〜第4の形態に係る、クラッチ8,14はそれぞれ、遠心クラッチに置き換えることも可能である。この場合、クラッチ8(14)は、メインシャフト回転数N3が高回転になると、遠心力により解放される。これにより、クラッチ14として電磁クラッチを用いた場合と同様、クラッチ8(14)を解放させるための油圧回路が不要になるため、部品点数の削減が可能になる。従って、クラッチ8,14をそれぞれ、遠心クラッチに置き換えれば、レイアウト上有利である。また、遠心クラッチは、その締結及び解放が自動的に行われるので、生産コストの上昇抑制に有効である。
【0095】
ところで、第1の形態では、クラッチ8を省略することも可能である。図12は、第1の形態においてクラッチ8を省略した本発明の第6の形態を示すスケルトン図である。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0096】
本形態は、サブシャフト6がエンジン1で直接駆動されるため、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるときは、第1の形態と同様、ワンウェイクラッチC2が締結される一方、ワンウェイクラッチC1は解放される。このため、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるとき、オイルポンプ10は、第1の形態と同様、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、サブシャフト6の回転により駆動される。
【0097】
これに対し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になっても、サブシャフト6がエンジン1で直接駆動されるため、オイルポンプ10は、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になるまで、サブシャフト6の回転によって駆動される。
【0098】
但し、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になれば、第1の形態と同様、ワンウェイクラッチC1が締結される一方、ワンウェイクラッチC2は解放される。このため、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になるとき、オイルポンプ10は、第1の形態と同様、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、メインシャフト3の回転によって駆動される。また、メインシャフト回転数N3が低下し、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6未満になれば、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、再びサブシャフト6の回転によって駆動される。
【0099】
更に、本発明の第1の形態は、摩擦要素をトルクコンバータ2に替えてクラッチに置き換えることができる。図13は、本発明の第7の形態を示すスケルトン図である。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0100】
本形態では、発進要素として、油圧制御を伴わない電磁クラッチ16を採用するが、他のクラッチとしては、同じく油圧制御を伴わない遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられる。電磁クラッチ16は、その入力要素16aがエンジン出力軸1aに結合する一方、出力要素16bがメインシャフト3に結合する。
【0101】
また、入力要素16aは、クラッチ17を介して、メインシャフト3の貫通する中空の駆動ギア18aに結合する。本形態では、クラッチ17として、油圧制御を伴わない電磁クラッチを採用するが、他のクラッチとしては、同じく油圧制御を伴わない遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられる。
【0102】
駆動ギア18aは、サブシャフト6に結合した従動ギア18bに噛合し、この従動ギア18bと共に動力伝達機構18を構成する。これにより、エンジン1は、電磁クラッチ16、17から動力伝達機構18を経て、サブシャフト6に繋がる。サブシャフト6は、その出力側に駆動ギア19aが結合している。駆動ギア19aは、ワンウェイクラッチC2に結合した従動ギア19bに噛合し、この従動ギア19bと共に動力伝達機構19を構成する。
【0103】
本形態では、発進要素として電磁クラッチ16を採用したことから、第2駆動ユニットU2に配置したオイルパンからトルクコンバータ2を動作させるべく、第1駆動ユニットU1に油路を配管する必要がない。また、本形態では、電磁クラッチ17が動力伝達機構18の入力側に存在することから、電磁クラッチ17を解放すれば、エンジン1の回転は、動力伝達機構18に伝わらなくなるため、動力伝達効率がよい。
【0104】
なお、第1〜第6の形態では、メインシャフト3とサブシャフト6との間の動力伝達を無終端部材を用いた動力伝達機構で実現するため、メインシャフト3の回転方向とサブシャフト6の回転方向は同方向になるが、本形態の如く、メインシャフト3とサブシャフト6との間の動力伝達を駆動ギア及び従動ギアを用いた動力伝達機構で実現した場合、メインシャフト3の回転方向に対してサブシャフト6の回転方向は逆方向になる。
【0105】
このため、本形態に係る、ワンウェイクラッチC2は、第1〜第6の形態と逆方向に回転させたときに空転するように設けられている。なお、本形態は、発進要素16、動力伝達機構18、19が異なるだけで、基本的には第1の形態と同様の作用効果を奏する。
【0106】
図14は、本発明の第8の形態を示すスケルトン図である。本形態は、ワンウェイクラッチC1,C2をクラッチC3,C4に置き換えたものであり、基本的な作用は、図10に示す第3の形態と同様である。このため、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0107】
図15は、本発明の第9の形態を示すスケルトン図である。本形態は、第9の形態に係る、クラッチ17を省略することで、クラッチ16の入力要素16aを動力伝達機構18の駆動ギア18aに直結したものである。本形態は、ワンウェイクラッチC1,C2を電磁クラッチC3,C4に変更した以外、基本的な作用は、図12に示す第6の形態と同様である。このため、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0108】
上述したところは、本発明の一形態を示したに過ぎず、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、更に、各形態に採用された各構成及び制御内容はそれぞれ、互いに好適な動力伝達が可能となるように、適宜組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】オイルポンプを前段に配置した本発明の第1の形態である、トランスアクスル駆動装置を示すスケルトン図である。
【図2】レンジ選択に伴う車両停止時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図3】フロントユニットに配したクラッチを解放したときの、車両前進時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図4】同形態において、フロントユニットに配したクラッチの締結・解放を制御するに際し、コントローラにて実行されるステップを概略的に記載したフローチャートである。
【図5】フロントユニットに配したクラッチの締結を維持した状態での、車両前進時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図6】フロントユニットに配したクラッチの締結を維持した状態での、車両前進時に係る、同形態の他の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図7】フロントユニットに配したクラッチを締結したままでの、回転出力選択手段の動作をメインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6との関係で概略的に示すフローチャートである。
【図8】同形態の各動作を一連の流れとして概略的に記載したフローチャートである。
【図9】本発明の第2の形態を示すスケルトン図である。
【図10】本発明の第3の形態を示すスケルトン図である。
【図11】本発明の第4の形態を示すスケルトン図である。
【図12】第1の形態においてフロントユニットに配したクラッチを省略した本発明の第6の形態を示すスケルトン図である。
【図13】本発明の第7の形態を示すスケルトン図である。
【図14】本発明の第8の形態を示すスケルトン図である。
【図15】本発明の第9の形態を示すスケルトン図である。
【符号の説明】
【0110】
1 エンジン(駆動源)
2 発進要素(ロックアップ式トルクコンバータ)
3 メインシャフト
4 変速機構
5 差動機構
6 サブシャフト
7 動力伝達機構(チェーン式)
8 サブシャフト側入力用クラッチ
9 回転出力選択手段
10 オイルポンプ
11 動力伝達機構(チェーン式)
12 変速機構側入力用クラッチ
13 遊星歯車機構
14 遊星歯車機構用クラッチ
15 ブレーキ
16 電磁クラッチ(発進要素)
17 サブシャフト側入力用クラッチ
18 動力伝達機構(ギア式)
19 動力伝達機構(ギア)
100 コントローラ
C1 ワンウェイクラッチ
C2 ワンウェイクラッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに代表される駆動源からの回転が入力される発進要素と、当該発進要素からの回転が入力される変速機構との間に、当該変速機構に発進要素からの回転を入力させるメインシャフトを介在させることで、トランスアクスルを前段のユニットと後段のユニットとに分離させてなるトランスアクスル駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のトランスアクスル駆動装置には、発進要素と変速機構とを直結したときに生じる問題を解決すべく、エンジンからの回転が入力される発進要素と、この発進要素からの回転が入力される変速機構との間に、当該変速機構に発進要素からの回転を入力させるプロペラシャフトを介在させることで、トランスアクスルを前段のユニットと後段のユニットとに分離したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2005−88795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来装置は、潤滑や油圧制御を要する変速機構が、前段側のユニット(以下、「フロントユニット」という)からプロペラシャフト(メインシャフト)を介して切り離された後段側のユニット(以下、「ロアユニット」という)に配置されているため、オイルポンプを常時駆動させるべく、当該オイルポンプをFF構造(前側配置前側駆動)にすると、当該オイルポンプがフロントユニットに配置される一方で、オイルパンに代表されるオイル貯留部がロアユニットを配置される。
【0004】
かかる構成によれば、フロントユニットとロアユニットとの間に掛け渡されたプロペラシャフトに沿って、吸入用油路及び吐出用油路を配管しなければならないが、この油路は、管路抵抗による圧力損失を防止するため、管路の内径を大きく確保する必要があることから、車両レイアウトの自由度に大きな影響を与える。
【0005】
これに対し、オイルポンプをRR構造(後側配置後側駆動)にすると、オイルポンプは、オイルパンと共にロアユニットに配置されるため、フロントユニットとロアユニットとの間に配置したプロペラシャフトに沿って吸入用油路及び吐出用油路を配管する必要がなくなる。
【0006】
しかしながら、RR構造の場合、発進要素が解放されていると、プロペラシャフトの回転数が低下するため、オイルポンプを駆動させることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の事実に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発進要素と変速機構とを切り離してトランスアクスルを二段にユニット化させたことの利点を損なうことなく、車両レイアウトの自由度を高めることができ、しかも、オイルポンプの常時駆動が可能なトランスアクスル駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトランスアクスル駆動装置は、回転出力選択手段を用いることで、発進要素からメインシャフトに入力される駆動源からの回転と、駆動源から直接サブシャフトに入力される駆動源からの回転のうち、これら回転の高い方を選択することでオイルポンプに入力し、この入力回転によってオイルポンプを駆動する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オイルポンプを発進要素から分離してメインシャフトよりも後段、例えば変速機構に配置しても、当該オイルポンプに繋がるサブシャフトには駆動源からの回転が直接入力されるので、発進要素を解放する等してメインシャフトの回転が低下しても、サブシャフトからの回転によってオイルポンプを駆動させることができる。
【0010】
加えて、本発明によれば、メインシャフトの回転が上昇したときには、メインシャフトからの回転と、サブシャフトからの回転とのうち、いずれか高い方の回転によって、オイルポンプを駆動させることができる。
【0011】
即ち、本発明によれば、オイルポンプを発進要素から分離してメインシャフトの後段に配置しても、発進要素の締結及び解放に伴いメインシャフトの回転がどのような変化するかにかかわりなく、オイルポンプを常時駆動させることができる。
【0012】
また、本発明によれば、オイルポンプがオイルパンに代表されるオイル貯留部と共にメインシャフトよりも後段(ロアユニット)に配置されるので、メインシャフトよりも前段(フロントユニット)にオイルポンプを配置した場合のように、メインシャフトの後段から前段に、メインシャフトに沿って吸入用油路及び吐出用油路を配管する必要がない。
【0013】
従って、本発明によれば、発進要素と変速機構とを切り離してトランスアクスルを二段にユニット化させたことの利点を損なうことなく、車両レイアウトの自由度を高めることができ、しかも、オイルポンプの常時駆動が可能なトランスアクスル駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明である、トランスアクスル駆動装置を詳細に説明する。
【0015】
図1は、オイルポンプを前段に配置した本発明の第1の形態である、トランスアクスル駆動装置を示すスケルトン図である。
【0016】
符号1は、駆動源であるエンジンである。以下、本形態は、駆動源をエンジン1として説明するが、駆動源には、エンジン1及びこれと併用されるモータ、又は、モータのみ等、種々のものを適用できる。
【0017】
符号2は、エンジン1の出力軸(以下、「エンジン出力軸」という)1aに連結される発進要素としてのロックアップ式トルクコンバータ(以下、「トルクコンバータ」という)である。トルクコンバータ2は、入力側要素であるポンプインペラ2a、出力側要素であるタービンランナ2b及びケースCに固定されたステータ2cとを有し、ロックアップクラッチ2Lによってポンプインペラ2aとタービンランナ2bとの間の締結及び解放を行う。
【0018】
符号3は、タービンランナ2bに結合し、トルクコンバータ2からの回転が入力されるプロペラシャフト(以下、「メインシャフト」という)である。
【0019】
符号4は、メインシャフト3の出力側に繋がり、メインシャフト3からの回転が入力される変速機構である。変速機構4は、メインシャフト3からの回転を油圧等に応じて適宜変更した後、当該変速機構4から出力する。変速機構4としては、例えば、その変速段が油圧によって制御される有段変速機構や無段変速機構等が挙げられる。
【0020】
符号5は、変速機構4の出力側に結合し、変速機構4からの回転が入力される差動機構(ディファレンシャルギア機構)である。差動機構5は、図示せぬ車軸によって変速機構4を通して伝達されたエンジン1からの回転を左右輪に伝達する。
【0021】
符号6は、エンジン1からの回転が入力されるサブシャフトである。サブシャフト6への入力は、動力伝達機構7を介して行われる。動力伝達機構7は、ポンプインペラ2aに結合し、エンジン1からの回転が直接入力される駆動スプライン7aと、サブシャフト6の入力側に設けた従動スプライン7bとの間に、チェーン又はベルト等の無終端部材7cを掛け渡してなる。
【0022】
また、サブシャフト6への入力は、摩擦要素としてのクラッチ8によって断続させることができる。なお、本形態では、クラッチ8として油圧制御を伴わない電磁クラッチを採用するが、他のクラッチとしては、同じく油圧制御を伴わない遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられる。
【0023】
符号9は、メインシャフト3の回転数(以下、「メインシャフト回転数」という)N3と、サブシャフト6の回転数(以下、「サブシャフト回転数」という)N6とのうち、当該回転数の高い方を出力する回転出力選択手段である。回転出力選択手段9は、オイルポンプ10に結合するポンプ駆動軸9aを有する。
【0024】
ポンプ駆動軸9aは、メインシャフト3が回転可能に貫通する筒状部材である。ポンプ駆動軸9aの内周面は、摩擦要素としてのワンウェイクラッチC1を介してメインシャフト3に結合されている。これにより、回転出力選択手段9内には、ワンウェイクラッチC1によって、メインシャフト3からの回転が入力される第1の駆動力伝達系が形成される。
【0025】
更に、ポンプ駆動軸9aの外周面には、摩擦要素としてのワンウェイクラッチC2が設けられている。このワンウェイクラッチC2には、動力伝達機構11を介してサブシャフト6からの回転が入力される。
【0026】
動力伝達機構11は、動力伝達機構7と同様、サブシャフト6に結合し、サブシャフト6からの回転が入力される駆動スプライン11aと、回転出力選択手段9側に設けた従動スプライン11bとの間に、チェーン又はベルト等の無終端部材11cを掛け渡してなる。
【0027】
これにより、ワンウェイクラッチC1,C2は、一方の回転数が高いときには他方が解放されることで空転し、高い回転数のみを伝達する。回転出力選択手段9には、第1の駆動力伝達系と共に、ワンウェイクラッチC1,C2によって、サブシャフト6からの回転が入力される第2の駆動力伝達系が形成される。
【0028】
メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6よりも高いときには、ワンウェイクラッチC2はサブシャフト6とポンプ駆動軸9aとの間を解放し、当該ポンプ駆動軸9aに対してサブシャフト6を空転させる一方、ワンウェイクラッチC1はメインシャフト3とポンプ駆動軸9aとの間を締結し、当該ポンプ駆動軸9aをメインシャフト3と一体に回転させる。
【0029】
これに対し、サブシャフト回転数N6がメインシャフト回転数N3よりも高いときには、ワンウェイクラッチC1は、メインシャフト3とポンプ駆動軸9aとの間を解放し、当該ポンプ駆動軸9aに対してメインシャフト3を空転させる一方、ワンウェイクラッチC2が、サブシャフト6とポンプ駆動軸9aとの間を締結し、当該ポンプ駆動軸9aをサブシャフト6と一体に回転させる。
【0030】
これにより、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2はそれぞれ、互いに協働することで、メインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6とのうち、回転数の高い方を出力する。
【0031】
オイルポンプ10は、ポンプ駆動軸9aを介して、メインシャフト回転数N3と、サブシャフト回転数N6とのうち、高い方の回転数を入力として、ポンプ動作を生起させる既知のオイルポンプである。
【0032】
変速機構4への入力は、メインシャフト3に介在させた摩擦要素としてのクラッチ12によって断続させることができる。このクラッチ12は、回転出力選択手段9に係る、第1の駆動力伝達系の入力部材としてのワンウェイクラッチC1と変速機構4との間に介在する。クラッチ12も、クラッチ8と同様、遠心クラッチや電磁クラッチ等を採用することができるが、本形態では、変速機構4との制御系を共通化することを目的に、油圧クラッチを採用する。
【0033】
また、符号100は、CPU等を搭載したコントローラである。コントローラ100は、少なくとも、クラッチ8及びクラッチ12の締結・解放を制御し、本形態では併せて、ロックアップクラッチ2Lの締結・解放及び変速機構4における変速を制御する。このため、コントローラ100には、例えば、エンジン回転数センサからの信号(エンジン回転数Ne)、メインシャフト回転数センサからの信号(メインシャフト回転数N3)、サブシャフト回転数センサからの信号(サブシャフト回転数N6)、オイルポンプ回転数センサからの信号(ポンプ回転数Np)、スロットル開度センサからの信号(スロットル開度TVO)及び車速センサからの信号(車速VSP)等の情報が入力される。
【0034】
本形態では、メインシャフト3を介してトルクコンバータ2と変速機構4とを離間させることで、トルクコンバータ2、動力伝達機構7及びクラッチ8をメインシャフト3よりも前段に位置するフロントユニットU1として構成する一方、動力伝達機構11、回転出力選択手段9、クラッチ12、変速機構4及び差動機構5をメインシャフト3よりも後段に位置するリアユニットU2として構成する。
【0035】
図2は、レンジ選択に伴う車両停止時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。なお、同図では、コントローラ100等の制御系が省略されている。また、以下の説明において、クラッチ8は、通常、ばね荷重等の予圧(締結容量)が付勢されることで、その締結が維持されるように構成されているものとする。
【0036】
N(中立)レンジ又はR(後進)レンジの選択によって車両が停止しているときには、エンジン1からの駆動力は発生しているものの、ロックアップクラッチ2Lが解放されているため、トルクコンバータ2内のポンプインペラ2aとタービンランナ2bとの間では滑りを生じ、この滑り分だけ、メインシャフト回転数N3は低くなる。この場合、メインシャフト回転数N3が低くなり過ぎると、オイルポンプ10から必要油圧を発生させるだけの回転数(以下、「必要ポンプ回転数」)Np(min)で、当該オイルポンプ10を駆動させることができないことがある。
【0037】
これに対し、本形態では、サブシャフト6が実質上、エンジン1によって駆動されることで、サブシャフト回転数N6がメインシャフト回転数N3よりも高いため、回転出力選択手段9は、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、同図の太線で示すように、エンジン1からの回転を、トルクコンバータ2、動力伝達機構7、クラッチ8、サブシャフト6及び動力伝達機構11を経てオイルポンプ12に入力させる。従って、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いためにオイルポンプ10を駆動させることができないときでも、サブシャフト6の回転によってオイルポンプ10を駆動させることができる。
【0038】
一方、D(前進)レンジを選択した状態でブレーキ操作を行うことで車両が停止しているときも、すぐさま発進できるようにクラッチ12が締結されているため、メインシャフト3は変速機構4と直結されるために回転していない。このため、メインシャフト3では、オイルポンプ10を駆動させることができない。
【0039】
従って、この場合も、回転出力選択手段9は、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、同図の太線で示すように、エンジン1からの回転を、トルクコンバータ2、動力伝達機構7、クラッチ8、サブシャフト6及び動力伝達機構11を経てオイルポンプ12に入力する。
【0040】
即ち、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いときも、オイルポンプ10はサブシャフト6の回転数N6で駆動させることができる。なお、レンジ選択に伴う車両停止時と、Dレンジ選択状態でのブレーキ操作に伴う車両停止時との相違は、レンジ選択に伴う車両停止時では、クラッチ12を解放するのに対し、Dレンジ選択状態でのブレーキ操作に伴う車両停止時では、クラッチ12を締結することにあり、エンジンからオイルポンプまでの動力伝達経路についての変更はない。
【0041】
図3は、クラッチ8を解放したときの、車両前進時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。なお、同図も、コントローラ100等の制御系が省略されている。
【0042】
通常、Dレンジ選択状態又はRレンジ選択状態でのアクセル操作に伴う車両前進又は後進時には、ロックアップクラッチ2Lを締結することで、トランスアクスルに対して大きな駆動力を供給するが、Dレンジ選択状態又はRレンジ選択状態でロックアップクラッチ2Lが解放された低車速時では、メインシャフト回転数N3がトルクコンバータ2での滑り分だけ低くなると共に、クラッチ12も締結されているため、メインシャフト回転数N3は第2駆動ユニットU2側の回転(車速VSP)に比例する。このため、車速VSPが低いときには、上述したとおり、メインシャフト3では、オイルポンプ10を駆動させることができないことがあるため、この場合、オイルポンプ10の駆動は、サブシャフト回転数N6で行われる。
【0043】
しかしながら、Dレンジ選択状態でのアクセル操作に伴い、エンジン回転数Neが上昇すると、ロックアップクラッチ2Lの締結又は解放にかかわらず、サブシャフト回転数N6と共にメインシャフト回転数N3も上昇する。
【0044】
これに対し、本形態では、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になったとき、クラッチ8を解放する。すると、サブシャフト回転数N6がポンプ回転数Np(必要ポンプ回転数Np(min))よりも低くなる。即ち、サブシャフト回転数N6がメインシャフト回転数N3よりも低くなることで、ワンウェイクラッチC2はポンプ駆動軸9aに対して空転する。
【0045】
このため、回転出力選択手段9では、ワンウェイクラッチC1が、メインシャフト3の回転(必要ポンプ回転数Np(min)以上の回転)をポンプ駆動軸9aに伝えるため、オイルポンプ10は、サブシャフト6に替えてメインシャフト3によって駆動されることになる。また、この場合、サブシャフト6には、ポンプ駆動軸9aの回転も伝わらないので、サブシャフト6は回転しなくなって停止する。
【0046】
即ち、回転出力選択手段9は、アクセルペダルの踏み込み等に伴いメインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になると、クラッチ8を解放しても、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、図3の太線で示すように、エンジン1からの回転を、トルクコンバータ2、メインシャフト3を経てオイルポンプ12に入力する。従って、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になれば、オイルポンプ10をサブシャフト6の回転に替えて、メインシャフト3の回転によって駆動させることができる。
【0047】
ここで、図4は、上述のように、クラッチ8の締結・解放を制御するに際し、コントローラ100にて実行されるステップを概略的に記載したフローチャートである。
【0048】
Dレンジ選択状態でのアクセル操作に伴い車両が前進する場合、コントローラ100では、エンジンスタートと同時に、ステップ11にて、メインシャフト回転数N3と必要ポンプ回転数Np(min)とを比較する。
【0049】
ステップ11にて、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるときは、ステップ12に移行してコントローラ100からの指令(を行わないこと)によりクラッチ8の締結を維持する。このため、サブシャフト6は、トルクコンバータ2から動力伝達機構7を経て入力されるエンジン1の回転によって回転する。
【0050】
このため、サブシャフト6は、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2の協働により、ポンプ駆動軸9aを回転させる。これにより、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるとき、オイルポンプ10は、図2に示すように、サブシャフト6によって駆動される。
【0051】
これに対し、ステップ11にて、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になると、ステップ14に移行してコントローラ100からの指令によりクラッチ8を解放する。
【0052】
すると、サブシャフト6は、トルクコンバータ2から動力伝達機構7を経て入力されるべきエンジン1の回転が遮断されるため、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2の協働により、ポンプ駆動軸9aに対して空転する。これにより、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上であるとき、オイルポンプ10は、図3に示すように、メインシャフト3によって駆動される。
【0053】
図5,6はそれぞれ、クラッチ8の締結を維持した状態での、車両前進時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。なお、図5,6も、コントローラ100等の制御系が省略されている。
【0054】
本形態では、その構成により、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6よりも高いとき、オイルポンプ10を動作させることができる。
【0055】
クラッチ8を締結したまま、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になる場合、図5に示すように、回転出力選択手段9では、ワンウェイクラッチC1が締結されることで、メインシャフト回転数N3を入力とする第1の動力伝達系が選択される一方、ワンウェイクラッチC2が空転することで、サブシャフト回転数N6を入力とする第2の動力伝達系が切断される。
【0056】
即ち、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2の協働によって自動的に第1の動力伝達系が選択されるので、これにより、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になるとき、オイルポンプ10は、図5に示すように、メインシャフト3によって駆動される。
【0057】
これに対し、車速VSPが低下することで、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6未満になる場合、図6に示すように、クラッチ8は締結されたままであるため、ワンウェイクラッチC2が締結されることで、サブシャフト回転数N6を入力とする第2の動力伝達系が選択される一方、ワンウェイクラッチC1が空転することで、メインシャフト回転数N3を入力とする第1の動力伝達系が切断される。
【0058】
即ち、ワンウェイクラッチC1及びワンウェイクラッチC2の協働によって自動的に第2の動力伝達系が選択されるので、これにより、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6よりも低いとき、オイルポンプ10は、図6に示すように、サブシャフト6によって駆動される。
【0059】
ここで、図7は、クラッチ8を締結したままでの、回転出力選択手段9の動作をメインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6との関係で概略的に示すフローチャートである。
【0060】
メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6未満であると、回転出力選択手段9では、ワンウェイクラッチC1が空転することで、メインシャフト回転数N3を入力とする第1の動力伝達系を選択しないが、ワンウェイクラッチC2が締結されることで、サブシャフト回転数N6を入力とする第2の動力伝達系が選択される(ステップ21→ステップ22)。このため、ポンプ回転数Npは、メインシャフト回転数N3よりも回転数の高いサブシャフト回転数N6となる(ステップ23)。
【0061】
従って、オイルポンプ10は、メインシャフト回転数N3で駆動させることができない状態であっても、メインシャフト回転数N3よりも回転数の高いサブシャフト回転数N6で駆動させることができる。
【0062】
これに対し、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になると、回転出力選択手段9では、ワンウェイクラッチC2が空転することで、サブシャフト回転数N6を入力とする第2の動力伝達系を選択しないが、ワンウェイクラッチC1が締結されることで、メインシャフト回転数N3を入力とする第1の動力伝達系が選択される(ステップ21→ステップ24)。このため、ポンプ回転数Npは、サブシャフト回転数N6よりも回転数の高いメインシャフト回転数N3となる(ステップ25)。
【0063】
従って、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6よりも高いとき、オイルポンプ10は、メインシャフト回転数N3によって駆動させることができる。
【0064】
図8は、上述したそれぞれの各動作を一連の流れとして概略的に記載したフローチャートである。同フローチャートからも明らかなように、回転出力選択手段9を、本形態のように、ワンウェイクラッチC1及びC2の協働によるものとすれば、メインシャフト3を入力とする第1の動力伝達系と、サブシャフト6を入力とする第2の動力伝達系との切替えを、複雑な制御を行うことなく実現することができる。
【0065】
上述のとおり、本発明形態によれば、オイルポンプ10をトルクコンバータ2から分離してメインシャフト3よりも後段のリアユニットU2に配置しても、オイルポンプ10に繋がるサブシャフト6にはエンジン1からの回転が入力されるので、ロックアップクラッチ2Lを解放する等してメインシャフト3の回転が低下しても、サブシャフト6からの回転によってオイルポンプ10を駆動させることができる。
【0066】
加えて、本発明によれば、メインシャフト3の回転が上昇したときには、メインシャフト3からの回転と、サブシャフト6からの回転とのうち、いずれか高い方の回転によって、オイルポンプ10を駆動させることができる。
【0067】
即ち、本発明によれば、オイルポンプ10をトルクコンバータ2から分離してメインシャフト3の後段に配置しても、トルクコンバータ2の締結及び解放に伴いメインシャフト3の回転がどのような変化をするかにかかわりなく、オイルポンプ10を常時駆動させることができる。
【0068】
また、本発明によれば、オイルポンプ10がオイルパンに代表されるオイル貯留部と共にメインシャフト3よりも後段のリアユニットU2に配置できるので、メインシャフト3よりも前段にあるフロントユニットU1にオイルポンプ10を配置した場合のように、ロアユニットU2からフロントユニットU1に、メインシャフト3に沿って吸入用油路及び吐出用油路を配管する必要がない。このため、オイルポンプ10をフロントユニットU1に配置した場合は通常、リアユニットU2に配置したオイルパンからオイルを導いた後、適当に調圧されたオイルを変速機構4に供給するためには、吸入用油路及び吐出用油路を含め少なくとも8本の油路が必要となるのに対し、本発明に従う同形態によれば、少なくとも2本の油路で済むことから、6本の油路を削減することができる。
【0069】
従って、本発明によれば、メインシャフト3を介してトルクコンバータ2と変速機構4とを切り離してトランスアクスルを二段にユニット化させたことの利点を損なうことなく、車両レイアウトの自由度を高めることができ、しかも、オイルポンプ10の常時駆動が可能なトランスアクスル駆動装置を提供することができる。
【0070】
また、本形態では、エンジン1とサブシャフト6との間に、サブシャフト6への入力を断続させるクラッチ8が設けられていることから、上述のとおり、クラッチ8の解放を適宜行うことで、サブシャフト回転数N6を抑えることができる。これにより、サブシャフト6のジョイントや軸径を細くできるため、車両レイアウトの自由度を高めるのに更に有効である。
【0071】
特に、本形態の如く、クラッチ8として電磁クラッチや遠心クラッチを採用した場合には、その締結及び解放に油圧制御を伴わないため、配管構造の整理に更に有効である。
【0072】
加えて、本形態の如く、回転出力選択手段9をワンウェイクラッチC1,C2で構成すれば、上述のとおり、メインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6とのうち、高い回転数の方を自動的にオイルポンプ10に入力させることで、当該オイルポンプ10を駆動させることができる。
【0073】
図9は、本発明の第2の形態を示すスケルトン図である。本形態は、第1の形態に係るワンウェイクラッチC1をクラッチC3に置き換えたものである。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、第1の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0074】
また、本形態においても、クラッチ8は、通常、ばね荷重等の予圧(締結容量)が付勢されることで、その締結が維持されるように構成されているものとする。クラッチC3としては、クラッチ8と同様、油圧制御を伴わない電磁クラッチや遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられるが、本形態では、変速機構4との制御系を共通化することを目的に、油圧クラッチを採用する。
【0075】
車両停止時等により、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるとき、サブシャフト回転数N6がメインシャフト回転数N3よりも高い状態にある。このため、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いとき、エンジン1の回転は、クラッチC3の締結・解放にかかわらず、第1の形態と同様、トルクコンバータ2から動力伝達機構7を経て、クラッチ8を介してサブシャフト6に伝達された後、回転出力選択手段9内でワンウェイクラッチC2からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0076】
即ち、本形態も、車両の停止時等により、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いときには、第1の形態と同様、オイルポンプ10をサブシャフト6の回転によって動作させる。なお、本形態では、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いときには、動力伝達効率を考慮して、クラッチC3を解放する。
【0077】
これに対し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になると、クラッチ8を解放すると同時にクラッチC3を締結する。すると、エンジン1の回転は、第1の形態と同様、トルクコンバータ2からメインシャフト3に伝達された後、回転出力選択手段9内でクラッチC3からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0078】
即ち、本形態も、第1の形態と同様、アクセルペダルの踏み込み等に伴い、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になるまでは、オイルポンプ10の駆動はサブシャフト回転数N6に依存し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上に上昇なれば、オイルポンプ10をメインシャフト3の回転によって動作させる。
【0079】
これに対し、車速VSPが低下し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満になると、サブシャフト6からメインシャフト3の掛け換えと逆に、クラッチC3を解放すると同時にクラッチ8を締結する。すると、エンジン1の回転は、トルクコンバータ2からサブシャフト6に伝達された後、回転出力選択手段9内でワンウェイクラッチC2からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0080】
従って、本形態も、第1の形態と同様、車速VSPが低下すると、オイルポンプ10をメインシャフト3の回転に替えてサブシャフト6の回転によって動作させることができる。なお、こうしたクラッチ8及びクラッチC3の制御は、第1の形態と同様、車速VSPにかかわらず、メインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6との相対回転でも適用できる。このため、本形態によれば、クラッチC3を制御することで、第1の形態と同様の作用効果を奏する。
【0081】
図10は、本発明の第3の形態を示すスケルトン図である。本形態は、第1の形態に係るワンウェイクラッチC1,C2をそれぞれ、油圧クラッチC3,C4に置き換えたものである。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0082】
また、本形態においても、クラッチ8は、通常、ばね荷重等の予圧(締結容量)が付勢されることで、その締結が維持されるように構成されているものとする。クラッチC4としても、クラッチ8と同様、油圧制御を伴わない電磁クラッチや遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられるが、本形態では、クラッチC3と同様、変速機構4との制御系を共通化することを目的に、油圧クラッチを採用する。
【0083】
車両の停止時等により、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるとき、クラッチC4は、締結された状態にある。このため、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いとき、エンジン1の回転は、クラッチC3の締結・解放にかかわらず、第1の形態と同様、トルクコンバータ2から動力伝達機構7を経て、クラッチ8を介してサブシャフト6に伝達された後、回転出力選択手段9内で油圧クラッチC4からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0084】
即ち、本形態も、車両の停止時等により、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)よりも低いときには、第1の形態と同様、オイルポンプ10をサブシャフト6の回転によって動作させている。
【0085】
これに対し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になると、クラッチC4を解放すると同時にクラッチC3を締結する。すると、エンジン1の回転は、第1の形態と同様、トルクコンバータ2からメインシャフト3に伝達された後、回転出力選択手段9内でクラッチC3からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0086】
即ち、本形態も、第1の形態と同様、アクセルペダルの踏み込み等に伴い、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になるまでは、オイルポンプ10の駆動はサブシャフト回転数N6に依存し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上に上昇なれば、オイルポンプ10をメインシャフト3の回転によって動作させる。なお、本形態では、クラッチ8を締結すると、サブシャフト6が回転し続けるため、これを防止すべく、併せてクラッチ8を解放することで、サブシャフト6が回転し続けないようにしている。但し、本発明に従えば、車両前進時にあっては、クラッチ8又はクラッチC4の少なくともいずれか一方を解放すると同時にクラッチC3を締結することができる。また、クラッチC3については、第2の形態と同様に制御することができる。
【0087】
これに対し、車速VSPが低下し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満になると、サブシャフト6からメインシャフト3の掛け換えと逆に、クラッチC4を締結する。すると、エンジン1の回転は、トルクコンバータ2からサブシャフト6に伝達された後、回転出力選択手段9内でクラッチC4からポンプ駆動軸9aを経てオイルポンプ10に入力される。
【0088】
従って、本形態も、第1の形態と同様、車速VSPが低下すると、オイルポンプ10をメインシャフト3の回転に替えてサブシャフト6の回転によって動作させることができる。なお、こうしたクラッチ8及びクラッチC3,C4の制御も、第1の形態と同様、車速VSPにかかわらず、メインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6との相対回転でも適用できる。このため、本形態によれば、クラッチC3,C4を制御することで、第1の形態と同様の作用効果を奏する。
【0089】
図11は、本発明の第4の形態を示すスケルトン図である。本形態は、第1の形態に遊星歯車機構を組み合わせたものである。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0090】
本形態では、ポンプインペラ2aは、遊星歯車機構13のサンギア13sに結合すると共に、クラッチ14を介してリングギア13rに連結される。また、リングギア13rは、ブレーキ15を介してケースCに固定可能に繋がる。サンギア13sとリングギア13rとの間に噛合する遊星ピニオン13pは、キャリア13cによって回転可能に支持されている。キャリア13cは、駆動スプライン7aに結合し、動力伝達機構7にエンジン1の回転を入力する。
【0091】
本形態は、トルクコンバータ2と遊星歯車機構13との間に介在させたクラッチ14が第1の形態に係る、クラッチ8に相当し、当該クラッチ8と同様に機能する。これにより、本形態は、基本的に第1の形態と同様の作用効果を奏する。
【0092】
但し、本形態では、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以下で、サブシャフト回転数N6が必要ポンプ回転数Np(min)を大幅に上回るとき、クラッチ14を解放すると共にブレーキ15を締結することができる。
【0093】
この場合、遊星歯車機構13は、リングギア13rが固定されることで、サンギア13sを入力としてキャリア13cからの出力となる。即ち、遊星歯車機構13からの出力は、減速されたものとなる。これにより、サブシャフト6の回転が抑えられることで、オイルポンプ10を必要以上に回転させなくて済むことから、オイルポンプ10にて生じるフリクションを下げることができる。
【0094】
また、本発明の第5の形態として、第1〜第4の形態に係る、クラッチ8,14はそれぞれ、遠心クラッチに置き換えることも可能である。この場合、クラッチ8(14)は、メインシャフト回転数N3が高回転になると、遠心力により解放される。これにより、クラッチ14として電磁クラッチを用いた場合と同様、クラッチ8(14)を解放させるための油圧回路が不要になるため、部品点数の削減が可能になる。従って、クラッチ8,14をそれぞれ、遠心クラッチに置き換えれば、レイアウト上有利である。また、遠心クラッチは、その締結及び解放が自動的に行われるので、生産コストの上昇抑制に有効である。
【0095】
ところで、第1の形態では、クラッチ8を省略することも可能である。図12は、第1の形態においてクラッチ8を省略した本発明の第6の形態を示すスケルトン図である。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0096】
本形態は、サブシャフト6がエンジン1で直接駆動されるため、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるときは、第1の形態と同様、ワンウェイクラッチC2が締結される一方、ワンウェイクラッチC1は解放される。このため、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)未満であるとき、オイルポンプ10は、第1の形態と同様、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、サブシャフト6の回転により駆動される。
【0097】
これに対し、メインシャフト回転数N3が必要ポンプ回転数Np(min)以上になっても、サブシャフト6がエンジン1で直接駆動されるため、オイルポンプ10は、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になるまで、サブシャフト6の回転によって駆動される。
【0098】
但し、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になれば、第1の形態と同様、ワンウェイクラッチC1が締結される一方、ワンウェイクラッチC2は解放される。このため、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6以上になるとき、オイルポンプ10は、第1の形態と同様、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、メインシャフト3の回転によって駆動される。また、メインシャフト回転数N3が低下し、メインシャフト回転数N3がサブシャフト回転数N6未満になれば、ワンウェイクラッチC1,C2の協働により、再びサブシャフト6の回転によって駆動される。
【0099】
更に、本発明の第1の形態は、摩擦要素をトルクコンバータ2に替えてクラッチに置き換えることができる。図13は、本発明の第7の形態を示すスケルトン図である。なお、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0100】
本形態では、発進要素として、油圧制御を伴わない電磁クラッチ16を採用するが、他のクラッチとしては、同じく油圧制御を伴わない遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられる。電磁クラッチ16は、その入力要素16aがエンジン出力軸1aに結合する一方、出力要素16bがメインシャフト3に結合する。
【0101】
また、入力要素16aは、クラッチ17を介して、メインシャフト3の貫通する中空の駆動ギア18aに結合する。本形態では、クラッチ17として、油圧制御を伴わない電磁クラッチを採用するが、他のクラッチとしては、同じく油圧制御を伴わない遠心クラッチ等の摩擦要素、又は、湿式クラッチに代表される油圧制御を伴う摩擦要素等が挙げられる。
【0102】
駆動ギア18aは、サブシャフト6に結合した従動ギア18bに噛合し、この従動ギア18bと共に動力伝達機構18を構成する。これにより、エンジン1は、電磁クラッチ16、17から動力伝達機構18を経て、サブシャフト6に繋がる。サブシャフト6は、その出力側に駆動ギア19aが結合している。駆動ギア19aは、ワンウェイクラッチC2に結合した従動ギア19bに噛合し、この従動ギア19bと共に動力伝達機構19を構成する。
【0103】
本形態では、発進要素として電磁クラッチ16を採用したことから、第2駆動ユニットU2に配置したオイルパンからトルクコンバータ2を動作させるべく、第1駆動ユニットU1に油路を配管する必要がない。また、本形態では、電磁クラッチ17が動力伝達機構18の入力側に存在することから、電磁クラッチ17を解放すれば、エンジン1の回転は、動力伝達機構18に伝わらなくなるため、動力伝達効率がよい。
【0104】
なお、第1〜第6の形態では、メインシャフト3とサブシャフト6との間の動力伝達を無終端部材を用いた動力伝達機構で実現するため、メインシャフト3の回転方向とサブシャフト6の回転方向は同方向になるが、本形態の如く、メインシャフト3とサブシャフト6との間の動力伝達を駆動ギア及び従動ギアを用いた動力伝達機構で実現した場合、メインシャフト3の回転方向に対してサブシャフト6の回転方向は逆方向になる。
【0105】
このため、本形態に係る、ワンウェイクラッチC2は、第1〜第6の形態と逆方向に回転させたときに空転するように設けられている。なお、本形態は、発進要素16、動力伝達機構18、19が異なるだけで、基本的には第1の形態と同様の作用効果を奏する。
【0106】
図14は、本発明の第8の形態を示すスケルトン図である。本形態は、ワンウェイクラッチC1,C2をクラッチC3,C4に置き換えたものであり、基本的な作用は、図10に示す第3の形態と同様である。このため、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0107】
図15は、本発明の第9の形態を示すスケルトン図である。本形態は、第9の形態に係る、クラッチ17を省略することで、クラッチ16の入力要素16aを動力伝達機構18の駆動ギア18aに直結したものである。本形態は、ワンウェイクラッチC1,C2を電磁クラッチC3,C4に変更した以外、基本的な作用は、図12に示す第6の形態と同様である。このため、同図も、コントローラ100等の制御系を省略し、他の形態と同一部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0108】
上述したところは、本発明の一形態を示したに過ぎず、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、更に、各形態に採用された各構成及び制御内容はそれぞれ、互いに好適な動力伝達が可能となるように、適宜組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】オイルポンプを前段に配置した本発明の第1の形態である、トランスアクスル駆動装置を示すスケルトン図である。
【図2】レンジ選択に伴う車両停止時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図3】フロントユニットに配したクラッチを解放したときの、車両前進時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図4】同形態において、フロントユニットに配したクラッチの締結・解放を制御するに際し、コントローラにて実行されるステップを概略的に記載したフローチャートである。
【図5】フロントユニットに配したクラッチの締結を維持した状態での、車両前進時に係る、同形態の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図6】フロントユニットに配したクラッチの締結を維持した状態での、車両前進時に係る、同形態の他の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図7】フロントユニットに配したクラッチを締結したままでの、回転出力選択手段の動作をメインシャフト回転数N3とサブシャフト回転数N6との関係で概略的に示すフローチャートである。
【図8】同形態の各動作を一連の流れとして概略的に記載したフローチャートである。
【図9】本発明の第2の形態を示すスケルトン図である。
【図10】本発明の第3の形態を示すスケルトン図である。
【図11】本発明の第4の形態を示すスケルトン図である。
【図12】第1の形態においてフロントユニットに配したクラッチを省略した本発明の第6の形態を示すスケルトン図である。
【図13】本発明の第7の形態を示すスケルトン図である。
【図14】本発明の第8の形態を示すスケルトン図である。
【図15】本発明の第9の形態を示すスケルトン図である。
【符号の説明】
【0110】
1 エンジン(駆動源)
2 発進要素(ロックアップ式トルクコンバータ)
3 メインシャフト
4 変速機構
5 差動機構
6 サブシャフト
7 動力伝達機構(チェーン式)
8 サブシャフト側入力用クラッチ
9 回転出力選択手段
10 オイルポンプ
11 動力伝達機構(チェーン式)
12 変速機構側入力用クラッチ
13 遊星歯車機構
14 遊星歯車機構用クラッチ
15 ブレーキ
16 電磁クラッチ(発進要素)
17 サブシャフト側入力用クラッチ
18 動力伝達機構(ギア式)
19 動力伝達機構(ギア)
100 コントローラ
C1 ワンウェイクラッチ
C2 ワンウェイクラッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの回転が入力される発進要素と、当該発進要素からの回転が入力されるメインシャフトと、当該メインシャフトからの回転が入力される変速機構と、当該変速機構からの回転が入力される差動機構とを備えるトランスアクスル駆動装置において、
駆動源からの回転が入力されるサブシャフトと、メインシャフト及びサブシャフトから入力される回転のうち、当該回転の高い方を出力する回転出力選択手段と、この回転出力選択手段に連結されるオイルポンプとを備えることを特徴とするトランスアクスル駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、駆動源とサブシャフトとの間に、当該サブシャフトへの入力を断続させる摩擦要素を設けたことを特徴とするトランスアクスル駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記回転出力選択手段をワンウェイクラッチで構成したことを特徴とするトランスアクスル駆動装置。
【請求項1】
駆動源からの回転が入力される発進要素と、当該発進要素からの回転が入力されるメインシャフトと、当該メインシャフトからの回転が入力される変速機構と、当該変速機構からの回転が入力される差動機構とを備えるトランスアクスル駆動装置において、
駆動源からの回転が入力されるサブシャフトと、メインシャフト及びサブシャフトから入力される回転のうち、当該回転の高い方を出力する回転出力選択手段と、この回転出力選択手段に連結されるオイルポンプとを備えることを特徴とするトランスアクスル駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、駆動源とサブシャフトとの間に、当該サブシャフトへの入力を断続させる摩擦要素を設けたことを特徴とするトランスアクスル駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記回転出力選択手段をワンウェイクラッチで構成したことを特徴とするトランスアクスル駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−149610(P2010−149610A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328298(P2008−328298)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]