説明

トランスグルコシダーゼを含む洗浄剤組成物

本願の発明はトランスグルコシダーゼ酵素と天然ガム多糖を含む組成物であって、当該天然ガム多糖が、トランスグルコシダーゼ酵素の基質である組成物を提供する。本願発明はまた、天然ガム多糖を分解するためトランスグルコシダーゼ酵素を使用する方法も提供する。いくつかの好ましい態様では、この組成物と方法は洗浄の用途に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明はトランスグルコシダーゼ酵素と天然のガム多糖を含む組成物を提供する。ここでこの天然のガム多糖はこのトランスグルコシダーゼ酵素の基質である。本願の発明はまた、天然のガム多糖を分解するトランスグルコシダーゼ酵素を使用するための方法を提供する。いくつかの好ましい実施態様では、この組成物と方法は洗浄剤の用途に用いられる。
【背景技術】
【0002】
洗剤と他の洗浄剤組成物は活性な成分と複雑な組合せを含むことが多い。例えば、多くの洗浄剤組成物は、界面活性剤システム、洗浄用の酵素、漂白剤、増量剤、発泡抑制剤、汚れ懸濁剤(soil-suspending agents)、汚れ遊離剤(soil-release agents)、光学的漂白剤、柔軟剤、懸濁剤、染料転移阻害剤組成物、擦り剤、殺菌剤及び香料を含む。しかし、現在の洗剤の複雑さにも拘らず、除去が困難な多くの汚れがある。従って、種々の汚れの洗浄に効果のある組成物と方法について、本願技術分野で求められている。
【発明の概要】
【0003】
本願の発明はトランスグルコシダーゼ酵素と天然のガム多糖を含む組成物を提供する。ここでこの天然のガム多糖はこのトランスグルコシダーゼ酵素の基質である。本願の発明はまた、天然のガム多糖を分解するトランスグルコシダーゼ酵素を使用するための方法を提供する。いくつかの好ましい実施態様では、この組成物と方法は洗浄剤の用途に用いられる。
【0004】
いくつかの好ましい実施態様では、当該組成物はキサンタンガムのような天然のガム多糖を含む。さらにいくつかの実施態様では、このトランスグルコシダーゼ酵素は、IUBMB命名法に従うEC2.4.1.24で定義される活性を持つ。いくつかの他の実施態様では、このトランスグルコシダーゼ酵素はアスペルギルス(Aspergillus)トランスグルコシダーゼ酵素と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列をもつ。いくつかの他の実施態様では、この組成物は少なくとも1個の界面活性剤を含む。いくつかの他の実施態様では、この天然のガム多糖は対象物に汚れとして付着している。いくつかの特に好ましい実施態様では、この対象物は布地である。
【0005】
本願の発明は、天然のガム多糖を分解するため少なくとも1つの天然のガム多糖とトランスグルコシダーゼ酵素を混合することを含む方法も提供する。いくつかの実施態様ではこのトランスグルコシダーゼ酵素はIUBMB命名法に従うEC2.4.1.24で定義される活性を持つ。いくつかの他の実施態様では、この天然ガム多糖はキサンタンガムである。
【0006】
本願の発明はトランスグルコシダーゼ酵素を含有する洗浄剤組成物と天然ガム多糖により汚れた対象物を接触させ;この天然ガム多糖を分解し、それによりこの対象物をを洗浄するに十分な条件下でこの対象物と洗浄剤組成物を維持することを含む。いくつかの実施態様では、この対象物は少なくとも一つの天然ガム多糖を含む食品により汚されている。いくつかのさらに別の実施態様では、この天然ガム多糖はキサンタンガムを含む。いくつかの別の実施態様では、このトランスグルコシダーゼ酵素はアスペルギルス(Aspergillus)トランスグルコシダーゼ酵素と少なくとも約90%同一のアミノ酸配列をもつ。いくつかの別の実施態様では、この洗浄剤組成物はさらに、他の汚れ成分を分解するためプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、ペクテートリアーゼ及び酸化還元酵素を含む。さらにいくつかの別の実施態様では、この洗浄剤組成物は約0.01ppmから約100ppmの範囲の濃度でこのトランスグコシダーゼ酵素を含む。
【0007】
いくつかの実施態様では、本願の発明はトランスグルコシダーゼ酵素;及び少なくとも1つの天然ガム多糖を含む組成物を提供し、この天然ガム多糖はトランスグルコシダーゼ酵素に適している基質である。いくつかの実施態様では、この天然ガム多糖はキサンタンと/またはグアルガム(guar gum)を含む。しかし、本願の発明はいずれかのガム多糖に限定する意図はない。いくつかの好ましい実施態様では、この天然ガム多糖は対象物(例.布地)の汚れとして存在し、他の実施態様では、溶液に溶けている。いくつかの実施態様では、このトランスグルコシダーゼ酵素はアスペルギルストランスグルコシダーゼと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約98%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、この組成物はさらに少なくとも一つの界面活性剤と/または他の洗浄剤を含む。
【0008】
本願の発明は、また、天然のガム多糖を分解するために少なくとも一つの天然ガム多糖とトランスグルコシダーゼを混合することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、この方法は:トランスグルコシダーゼ酵素を含む洗浄剤組成物と天然ガム多糖で汚れた対象物を接触させること、この天然ガム多糖を分解し、それによりこの対象物を洗浄するに十分な条件でこの対象物と洗浄剤組成物をと共に保つことを含む。
【0009】
いくつかの実施態様では、この対象物(例.布地)は少なくとも一つの天然ガム多糖を含む食品(例.少なくとも一つのキサンタンと/またはグアルガムを含む食品)で汚れている。いくつかの実施態様では、この洗浄剤組成物は、さらに少なくとも一つの界面活性剤、他の洗浄剤、及び./又は少なくとも一つの追加の酵素(例.プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、酸化還元酵素等)を、他の汚れの成分の分解のために含む。いくつかの実施態様では、この洗浄剤組成物は約pH5.0から約pH11.5の範囲にpHがあり、このトランスグルコシダーゼ酵素は約0.01ppmから約mの濃度でこの洗浄剤組成物に含まれる。
【0010】
いくつかの実施態様では、本願で提供される方法は天然ガム多糖を含む汚れをトランスグルコシダーゼを使用しない同等の方法よりも効率的に除去する。
【0011】
いくつかの実施態様では、本願の発明はトリコデルマ・レセイ宿主細胞により産生されるアスペルギルストランスグルコシダーゼを含む単離された酵素を提供する。本願の発明は、また、対象物(例.布地)を洗浄するためにこの酵素を使用する方法のほか、この酵素を含む洗浄剤組成物(例.洗濯組成物)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下の詳細な説明のある面は、添付する図面と併せて読むとき最も良く理解できる。普通どおり、図面の種々の特徴は、正確に同一縮尺ではない。逆に、種々の特徴の大きさは、明瞭に表すため任意に拡大、縮小されている。
【図1】図1はpTrex 3(AGL51M)のマップである。
【図2】図2はpTrex3(AGL51M)(SEQ ID:1)の発現カセットのヌクレオチド配列である。
【図3】図3は還元糖の定量により測定された、0.2%キサンタンに対するトランスグルコシダーゼの酵素活性を示すグラフである。
【図4】図4は、50mM Hepes緩衝液(pH7.4)とAATCC HDL 洗剤(pH7.4)中での、グアルで汚れた微小布見本 (上の図)とサラダドレッシングで汚れた微小布見本(下の図)に対するTrip-TGの洗浄性能を示すグラフである。
【図5】図5は使用量応答実験のグラフであり、AATCC HDL中でTrip-TGが1から5ppm濃度でサラダドレッシングで汚れた微小布見本に対し活性であることを示す。
【図6】図6は強い汚れ用洗剤(HDD)中でサラダドレッシング微小布地に対するTrip-TG洗浄活性を示すグラフである。
【図7】図7は0.15%AATCC HDLを使用してターゴットメーター(Tergotometer) 定量でマーマレードの汚れに対するTrip-TG洗浄活性を示すグラフである。発明の説明
【0013】
本願の発明はトランスグルコシダーゼ酵素と天然ガム多糖を含む組成物を与え、この天然ガム多糖はトランスグルコシダーゼ酵素の基質である。本願の発明はまた、天然ガム多糖を分解するためにトランスグルコシダーゼ酵素を使用する方法を与える。いくつかの好ましい実施態様では、この組成物と方法は洗浄剤用途に使用される。
【0014】
実施例でさらに詳細に述べる前に、本願の発明は、当然変化し得るものであり、特定の実施態様に限定されないことが理解されるべきである。本願で使用される用語は特定の実施態様を述べる目的にのみ使用され、限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0015】
本願で使用する場合、ある範囲の数値が与えられたとき、文脈から別に示されている場合を除き、この範囲の上限と下限の間の中間値もまた、下限値の10分の1まで特定して開示されているものと理解されるべきである。記載された範囲内にある、いずれかの記載された値または中間的な値の間にあるより小さい各範囲と記載された範囲内のいずれかの他の記載された値または中間にある値は本願の発明に含まれる。これらの小さい範囲の上限と下限は、その範囲に独立して含まれても良く、または含まれなくても良い。限度値のいずれかがこの小さい範囲に含まれる、いずれもこの小さい範囲に含まれない、または両者がこの小さい範囲に含まれる各範囲も本願の発明に含まれるが、述べられた範囲内で、特に除かれる場合は別である。この述べられた範囲が限度の一つまたは両者を含む場合には、これらの含められた限度のいずれか又は両者を除く範囲もまた、本願の発明に含められる。
【0016】
本願に述べられた方法や物質と類似または等価の方法と物質は本願の発明の実施または試験で使用できるが、例示的な方法と物質を以下述べる。本願に記載された全ての特許と刊行物は、方法と配列を含めた物質を開示し説明するために、これらの刊行物が引用される方法と物質に関して、引用により本願に組み入れられる。本願に記載されたいずれのGENBANK(登録商標)データベースも引用により、この特許出願の最も早い出願日における、それに含まれる核酸配列とタンパク質配列、これらの配列の注釈を含めて全体が組み入れられる。
【0017】
本願に述べられた刊行物は本願の出願日の前に開示されたもののみが提供されている。本願にこれらの刊行物に引用することにより、本願の発明が、そのような刊行物に先行する資格がないことを認めていると解釈されるべきではない。さらに、与えられた刊行物の公表日は実際に公表された日と異なるかもしれず、これは、個別に確認される必要があるかもしれない。
【0018】
本願で別に定める場合を除き、本願で使用されている全ての技術的科学的用語は本願の発明が属する技術分野の普通の技術者により一般的に理解されているのと同一の意味をもつ。本願に述べられたものと類似または同等の多くの方法と物質が本願の発明の実施と試験で使用されるが、好ましい方法と物質のいくつかは本願に述べる。数字の範囲は、その間にある全ての数字と同様、その範囲を限る数字も含む。

定義
【0019】
明細書とクレームで使用する場合、単数表記は、文脈から明確に異なる場合を除き、複数も含む。従って、「宿主細胞」とは複数の当該宿主細胞を含む。
【0020】
別途指示がある場合を除き、それぞれ、核酸は左から右へ5’から3’の向きに書かれ、アミノ酸配列は左から右へアミノ基からカルボキシの方向へ書かれる。明細書中に与えられる見出しは、全体としてこの明細書を参照したときに得られる発明の種々の面または実施態様を限定するものではない。従って、直ぐ後に定義される用語は全体としてこの明細書を参照することにより、より十分に定義される。
【0021】
用語「組換え体」は宿主細胞に天然に生成しないポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。いくつかの実施態様では、組換え分子は、天然に生じないような方法で互いに連結する2以上の天然に生成する配列を含む。組換え細胞は組換えポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む。
【0022】
用語「異種」は、正常では互いに組み合わさっていない要素をいう。例えば、宿主細胞が異種のタンパク質を産生する場合、このタンパク質はこの宿主細胞の正常時は産生されない。同様に、異種のコーディング領域に機能的に連結しているプロモーターは野生型宿主細胞では普通、機能的に連結していないコーディング領域に機能的に連結するプロモーターである。用語「相同」は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質に関しては、宿主細胞に天然に生成されるポリヌクレオチドまたはタンパク質をいう。
【0023】
用語「タンパク質」と「ポリペプチド」は明細書では、文脈において相互に交換して使用される。
【0024】
「シグナル配列」は細胞からタンパク質の成熟型の分泌を促す、そのタンパク質のN末端にあるアミノ酸配列である。シグナル配列の定義は機能による定義である。この細胞外タンパク質の成熟型は、シグナル配列を欠き、これは分泌の間に切断される。
【0025】
「コーディング領域」はポリペプチドをコードするDNA配列である。
【0026】
用語「核酸」はDNA、RNA、一本鎖または二重鎖、及びその化学的修飾物を含む。用語「核酸」と「ポリヌクレオチド」は、文脈において本明細書に相互に入れ替えて使用される。
【0027】
「ベクター」は1以上の宿主細胞へ核酸を導入するために設計されたポリヌクレオチドをいう。適したベクターは異なる宿主細胞で自律的に複製し、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、カセット等を含む。
【0028】
「発現ベクター」は、本願で使用する場合、適した宿主細胞内でタンパク質の発現をすることができる、適した調節配列に機能的に連結したタンパク質コーディング領域を含むDNA構造体をいう。いくつかの実施態様では、そのような調節配列は転写を行うプロモーター、mRNAを産生する転写を調節する任意のオペレーター配列、mRNA上に適したリボソーム結合部位をコード化する配列、エンハンサー及び転写と翻訳の収量を調節する他の配列を含む。
【0029】
「プロモーター」は下流の核酸の転写を開始させる調節配列である。
【0030】
用語「機能的に連結した」は因子が機能的に関連するように並べられている状態をいう。例えば、プロモーターは、配列の転写を調節する場合、コーディング領域に機能的に連結している。
【0031】
用語「選択的マーカー」は核酸またはベクターが導入された宿主を容易に選別できるように宿主細胞で発現できるタンパク質をいう。選択マーカーの例は、抗微生物剤(例.ハイグロマイシン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール)遺伝子、及び/または宿主細胞に、代謝的優位、例えば栄養的優位を与える遺伝子を非限定的に含む。
【0032】
用語「由来の」は用語「から始まる」「得られる」「から得ることができる」と「単離される」を含み、配列及び/またはタンパク質の源をいう。
【0033】
「非病原性」微生物はヒトと/または他の動物に病原性のない生物である。
【0034】
用語「回収された」「単離された」及び「分離された」は、本明細書で使用する場合、天然状態で組み合わされていた少なくとも1つの成分から取り出されたタンパク質、細胞、核酸またはアミノ酸をいう。
【0035】
本明細書では、細胞に関し、用語「形質転換された」「安定に形質転換された」及び「トランスジェニック」は、細胞がそのゲノムに非内在性(例.異種)の核酸配列を組み入れている、または何世代にわたり維持されるエピソームプラスミドとして有していることをいう。
【0036】
本願で使用する場合、用語「発現」はポリヌクレオチドが遺伝子の核酸配列に基づき産生される過程をいう。
【0037】
細胞へ核酸配列を挿入する文脈で用語「導入された」は、「トランスフェクション」、「形質転換」、「形質導入」をいい、原核細胞または真核細胞に核酸配列を導入し、この核酸配列がこの細胞のゲノムに組み入れられても良く(例.染色体、プラスミド、プラスチド、ミトコンドリアDNA)、自律的な複製をするか、または一時的に発現されても良い(例.感染mRNA)。
【0038】
用語「ハイブリダイゼーション」は核酸の鎖が本願技術分野で既知の塩基対により相補鎖と結合する過程をいう。核酸は2個の配列が、中程度から高度に厳格なハイブリダイゼーションと洗浄条件で、特異的に互いにハイブリダイズする場合に、関係核酸配列へ「選択的にハイブリダイズできる」と考えられている。中程度から高度に厳格なハイブリダイゼーション条件は本願技術分野の技術者に知られている。高度に厳格な条件の一例は50%ホルムアミド、5X SSC、5X Denhardt’s 溶液、0.5%SDS及び100μg/ml 変性担体DNA中で約42℃でのハイブリダイゼーション、その後の室温での2X SSC と0.5% SDSによる二度の洗浄、及び42℃で0.1X SSC と0.5% SDS で追加の2回の洗浄を含む。
【0039】
本願で使用する場合、「洗浄剤組成物」と「洗浄剤調合剤」は洗浄を受ける物品、例えば、布地、皿、コンタクトレンズ、他の固体物、髪(シャンプー)、皮膚(石鹸とクリーム)、歯(口腔洗浄剤、練り歯磨き)などから好ましくない化合物(例.「汚れ」)の除去に使用される用途をもつ組成物をいう。この用語は組成物が組成物中の酵素物質と共存できる限り、製品の形態(例.液体、ゲル、顆粒、スプレー組成物)で特定の種類の望ましい洗浄剤組成物に選択されるいずれかの物質/化合物を含む。洗浄剤組成物原料の具体的選択は洗浄を受ける表面、物品及び/または布地、及び使用時の洗浄条件に合う組成物の好ましい形態を考慮することにより容易に行われる。
【0040】
この用語は、洗剤組成物(例.液体、ゲル、及び/または固形洗濯洗剤及び精巧な布地用洗剤;硬い表面の洗浄剤組成物、例えば、ガラス、木、陶器と食事用カウンターの表面及び窓;カーペットクリーナー;オーブンクリーナー;布地フレッシュナー、布地柔軟剤、及び織物の洗濯用しみ取り剤及び皿の洗剤)を非限定的に含むことを意図している。
【0041】
用語「洗浄剤組成物」は本明細書で使用する場合、別に記載がない限り、顆粒、錠剤または粉末全用途用、または強い汚れ用洗浄剤、特に洗浄洗剤;液体、ゲルまたは糊状の全用途用洗浄剤、特にいわゆる強い汚れ用液体(HDL)タイプ;液体の精巧な布地用洗剤;高い発泡性のものを含む、手による皿洗い剤または落ちやすい汚れ用皿洗い剤;家庭用及び施設用の、種々の錠剤、顆粒、液体及びすすぎの簡単なタイプを含む皿洗い機用洗剤;抗菌性手洗い型、洗浄塊、口腔洗浄剤、入れ歯洗浄剤、自動車またはカーペットのシャンプー、浴室洗浄剤;髪のシャンプーとリンス剤;シャワー用ゲルとフォームバス(foam bath);金属洗剤;及び漂白用添加剤及び「ステインスティック(stain-stick)」、予備処理、または洗濯用添加剤等の液体洗浄及び殺菌剤等を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、「洗剤組成物」と「洗剤調合剤」は、固形の対象物の洗浄に洗液中で使用するために調合された組成物について使用される。特定の実施態様では、この用語は布地及び/または衣類(例.「洗濯剤」)に関して使用される。別の実施態様では、この用語は、他の洗剤、つまり皿、刃物類等(例.「皿洗い用洗剤」)を洗浄するために使用されるものをいう。本願の発明はいずれか特定の洗剤調合剤または組成物に限定する意図はない。実際、目的酵素に加え、洗剤組成物は界面活性剤、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、酸化還元剤、添加剤、漂白剤、漂白活性剤、青み剤及び蛍光染料、固化防止剤、マスキング剤、酵素活性剤、抗酸化剤及び/または溶解剤等も含むことが意図されている。
【0043】
本明細書で使用する場合、洗浄剤組成物における「向上した性能」は、標準的洗浄サイクルの後、普通の評価によって決定する場合に、汚れ(特にチョコレートクリーム、サラダドレッシング、グアルガム等の天然ガム多糖関連の汚れを含むもの)を洗浄(例.除去及び/または脱色)する能力の増強として定義される。
【0044】
本明細書で使用する場合、「硬い表面の洗浄剤組成物」は、床、壁、タイル、風呂及び台所設備等のような硬い表面を洗浄する洗剤組成物をいう。このような組成物は固体、液体、エマルジョン等を非限定的に含むいかなる形態においても提供される。
【0045】
本明細書で使用する場合、「皿洗い組成物」はゲル、顆粒及び液体形態等の皿の洗浄用の全ての形態の組成物をいう。
【0046】
本明細書で使用する場合、「布地洗浄剤組成物」は、布地洗浄用のゲル、顆粒、液体、塊の形態を非限定的に含む全ての形態の洗剤組成物をいう。
【0047】
本明細書で使用する場合、「織物」は、縦糸、織った布、ニットの布及び非職布に変換されまたはそれらとして使用に適した繊維と細糸のほか、織った布地をいう。この用語は合成(例.製造された)繊維のほか、天然から作られた縦糸を含む。
【0048】
本明細書で使用する場合、「織物原料」は繊維、縦糸中間体、縦糸、布地、布地から作った製品(例.衣類と他の製品)の総括的用語である。
【0049】
本明細書で使用する場合、「布地」はいずれの織物原料も含む。従って、この用語は布地、縦糸、繊維、不職布原料、天然原料、合成原料及びいずれか他の織物原料を含むことが意図されている。
【0050】
本明細書で使用する場合、「トランスグルコシダーゼの有効量」は特定の用途(例.洗浄剤組成物等)に必要な酵素活性を達成するために必要なトランスグルコシダーゼ酵素の量をいう。このような有効量は本願技術分野の普通の技術者により、使用される特定の酵素変異種、洗浄用途、洗浄剤組成物の特定の組成、液体または固体(例.顆粒、塊)組成物が求められるか等の多くの因子に基づき容易に確認される。
【0051】
用語「トランスグルコシダーゼ」は、1,4-α-D-グルカンのα-D-グルコシル残基をグルコース(遊離したものまたは1,4-α-D-グルカンと結合したもの)の一級水酸基へ転換させる酵素をいう。明細書に記載されたこのトランスグルコシダーゼは、IUBMB酵素命名法に従いEC2.4.1.24として述べられる活性をもつ。本明細書に述べられたトランスグルコシダーゼのこの系統的名称は1,4-α-D-グルカン:1,4-α-D-グルカン(D-グルコース)6-α-D-グルコシルトランスフェラーゼである。この酵素は、ある用途ではα-グルコシダーゼと呼ばれる。
【0052】
用語「汚れた対象物」は別の組成物により汚された対象物(例.布地または皿)をいう。用語「汚れた対象物」には天然ガム多糖を含む食品により汚れた、汚い布地、例えば、汚い布、リネン、布地が含まれる。いくつかの実施態様では、この汚れは肉眼で分かる色を示し、他の実施態様では、肉眼で分かる色は示さない。
【0053】
用語「天然ガム多糖」は低い濃度で大きい粘度増加を生じさせることのできる天然物由来の非デンプン多糖をいう。このような多糖は食品産業で普通に使用され、多くの食品原料(例.ソース、クリーム、乳製品、アイスクリーム、ムース、ミルクシェイク、サラダドレッシングなど)において泥状にする試剤、ゲル化剤、エマルジョン形成剤、安定剤として使用される。グアルガム(食品添加物E412)(マメ科のグアル豆の木から抽出した食用増粘剤)、及びキサンタンガム(食品添加物E415)(グルコースまたはスクロースの発酵(例.ザンソモナス・カンペストリス(Xanthomonas camperstris))により産生される多糖)が天然のガム多糖の例である。他の天然のガム多糖は、寒天(E418)、アルギン酸(E400)、β-グルカン、カラギーナン(E407)、チクル、ダマールガム、ゲランガム(gellan gum)(E418)、グルコマンナン(E425)、アラビアガム(E414)、ガッチガム(gum ghatti)、トラガカントガム(E413)、カラヤガム(E416)、ロカスロビーンガム(E410)、マスティックガム(mastic gum)、アルギン酸ナトリウム(E401)、スプルースガム(spruce gum)及びタラガム(tara gum)(E417)を非限定的に含む。
【0054】
用語「非デンプン食品多糖分解酵素」は、非デンプン食品多糖を分解する酵素をいう。酵素の例はヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、β-ガラクトシダーゼ及びα-ガラクトシダーゼを非限定的に含む。
【0055】
用語「使用pH」は、使用中の洗剤のpHをいう。例えば、洗濯洗剤の使用pHは洗濯機及び/または洗濯物の手洗い中に布地を洗浄するため使用されるときの洗剤のpHである。同様に、皿洗い洗剤の使用pHは皿洗い機及び/または皿の手洗いにおいて使用されるときの洗剤のpHである。いくつかの実施態様では、濃縮または固形の洗剤は洗剤のpHがその使用pHになる前に稀釈又は溶解される。
【0056】
用語「使用濃度」は使用中の洗剤の酵素の濃度をいう。例えば、洗濯洗剤中の酵素の使用濃度は、この洗濯洗剤が洗濯機中で、及び/または洗濯物の手洗い洗浄の間布地を洗浄するために使用されているときのこの酵素の濃度である。同様に、皿洗い洗剤における酵素の使用濃度は、皿洗い機で使用されているとき及び/または皿の手洗いの間のこの洗剤の濃度である。いくつかの実施態様では、濃縮または固形の洗剤は、洗剤中の酵素の濃度が使用濃度になる前に稀釈または溶解される。

本願発明の詳細な説明
【0057】
本願の発明はトランスグルコシダーゼ酵素と天然ガム多糖を含む組成物を提供し、この天然ガム多糖はトランスグルコシダーゼ酵素の基質である。本願の発明は、天然ガム多糖を分解するためトランスグルコシダーゼ酵素を使用する方法も提供する。いくつかの好ましい実施態様では、この組成物と方法は洗浄用途がある。実際、本願の発明はこの組成物を使用する方法のほか、トランスグルコシダーゼ酵素を含む種々の組成物を提供する。
トランスグルコシダーゼ酵素含有組成物
【0058】
上記のように、本願の発明はトランスグルコシダーゼを含む組成物を提供する。いくつかの実施態様では、この組成物は少なくとも1個のトランスグルコシダーゼ酵素と、天然ガム多糖を含み、この天然ガム多糖はこのトランスグルコシダーゼの基質である。
【0059】
上記のように、このトランスグルコシダーゼ酵素は一般的にIUBMB酵素命名法に従い、EC2.4.1.24として定義される活性をもつ。この活性は、あるグルカンのグルコシル残基をグルコースの一級水酸基へ転換する。いくつかの実施態様では、この酵素は糖の側鎖切り取りまたは内部結合を切断し、多糖の骨格を分解することにより天然のガム多糖(例.キサンタン、及びグアルガムまたはライマメガム(lima bean gum)のようなガラクトマンナン含有多糖)を分解する活性も持っても良い。
【0060】
いずれかの適したトランスグルコシダーゼ酵素は本願の発明に用途がある。(Pazur ら、Carbohydr. Res. 1986 149:134-47[1986] ;及びNakamuraら、J.Biotechnol. 53:75-84[1997]参照)。いくつかの実施態様では、本願の発明に用途があるトランスグルコシダーゼは市販されている(Megazyme, Wicllow,Ireland; またはDanisco US Inc., Genencor Division, PALO Alto, カルフォルニアから得られる酵素を非限定的に含む)。いくつかの実施態様では、この酵素はトリコデルマ・レセイ細胞に産生されるアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)トランスグルコシダーゼである。いくつかの追加の実施態様では、このトランスグルコシダーゼは野生型の菌類トランスグルコシダーゼ(例えば、;D45356(GID:2645159;アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger))、BAD06006.1(GID:4031328;アスペルグルス・アワモリ(Aspergillus awamori))、BAA08125.1(GID:1054565;アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae))、XP_001210809.1(GID:115492363;アスペルギルス・テレアス(Aspergillus terreus))、XP_001271891.1(GID:121707620;アスペルギルス・クラバタス(Aspergillus clavatus))、XP_001266999.1(GID: 119500484;ネオサルトリヤ・フィシェリ(Neosartorya fischeri))、XP_751811.1(GID:70993928;アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus))、XP_659621.1(GID:67523121;アスペルギルス・ニードランス(Aspergillus nidulans))、XP_001216899.1(GID:115433524;アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus))及びXP_001258585.1(GID:119473371;ネオサルトリヤ・フィシェリ(Neosartorya fisheri)) をアクセス番号としてNCBI’s GENBANK(登録商標)データベースに保存されているアミノ酸配列をもつ菌類のトランスグルコシダーゼを非限定的に含む)または、野生型菌類トランスグルコシダーゼと少なくとも約70%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、または少なくとも約98%同一であるこれらの変異種である。
【0061】
いくつかの好ましい実施態様では、この酵素は、一般的に約0.01ppm(百万分のうちの部分、w/v)から約100ppm(例.約0.01ppmから約0.05ppm、約0.05ppmから約0.1ppm、約0.1ppmから約0.5ppm、約0.5ppmから約1ppm、約1ppmから約5ppm、約5ppmから約10ppm、または約10ppmから約100ppm)の濃度でこの組成物中に存在する。
【0062】
いくつかの好ましい実施態様では、この組成物は洗浄剤組成物である。いくつかの特に好ましい実施態様では、この組成物はさらに少なくとも1の界面活性剤、洗浄剤、及び/または後に更に詳しく述べる他の布地処理剤を含む。
【0063】
いくつかの実施態様では、天然ガム多糖は水溶液であり、他の実施態様では、対象物に付着している(例えば、布地または硬い表面のような対象物の表面にある場合のように)。いくつかの実施態様では、この天然ガム多糖は乾燥体である。天然ガム多糖は種々の食品で一般に使用されるので、いくつかの実施態様では、対象物は天然ガム多糖を含む食品で汚れている。天然ガム多糖を含む食品の例は、ソース、クリーム、乳製品、アイスクリーム、ムース、ミルクシェイク、サラダドレッシング、フルーツジュース、缶詰めの果物、ジェリー、醤油、オイスターソース、パック詰めされた肉、チーズ及びパン販売店の製品がある。いくつかの実施態様では、天然ガム多糖は約0.1%から約1.5%、約0.1%から約0.5%、約0.5%から約1.0%、約1.0%から約1.5%の濃度で食品に含まれる。
【0064】
いくつかの好ましい実施態様では、このトランスグルコシダーゼは従来の方法を用いて生産される。例えば、いくつかの実施態様では、これはペリプラスム(例.グラム陰性菌、例えば、大腸菌)へ分泌され、または菌体外空間(例.グラム陽性菌、例えば、バシラスとアクチノマイセート)または真核細胞宿主(例.トリコデリマ、アスペルギルス、サッカロミセス(Saccharomyces)及びピキア(Pichia))へ分泌される。
【0065】
いくつかの実施態様では、このトランスグルコシダーゼ酵素はT・レセイ宿主細胞のトランスグルコシダーゼ酵素に機能的に連結しているシグナル配列を含む融合タンパク質を発現することにより産生される。これらの実施態様のいくつかでは、このトランスグルコシダーゼ酵素は培地へ分泌され、ここから収集される。いずれのシグナル配列も適した融合タンパク質で使用され、トリコデルマ宿主細胞からのタンパク質の分泌が促進される。いくつかの実施態様では、シグナル配列は内在性であり、他の実施態様では、トリコデルマ宿主細胞に対し非内在性である。いくつかの実施態様では、トリコデルマ属の宿主細胞から高度に分泌されることが知られているタンパク質のシグナル配列である。このようなシグナル配列は、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、エンドグルカナーゼI、エンドグルカナーゼII、エンドグルカナーゼIII、α-アミラーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルコアミラーゼ、マンナナーゼ、グリコシダーゼ及びオオムギエンドペプチダーゼのシグナル配列を非限定的に含む(例.Saarelainen, Appl.Environ.Microbiol.,63:4938-4940[1997]参照。)。いくつかの実施態様では、本開示の実施例でさらに述べられるように、このトランスグルコシダーゼはそのシグナル配列を使用して分泌される。(つまり、AGL1、AGL2またはAGL3シグナル配列)
【0066】
従って、いくつかの実施態様では、このトランスグルコシダーゼは、トランスグルコシダーゼをコードする核酸と、これに機能的に連結しているシグナル配列をコードする核酸を使用して産生される。ここでこの核酸の翻訳はトリコデルマ・レセイ細胞からトランスグルコシダーゼタンパク質を分泌するためのN-末端シグナル配列をもつトランスグルコシダーゼタンパク質を含む融合タンパク質を産生する。
【0067】
いくつかの実施態様では、この融合タンパク質はさらに、シグナル配列に加え、内在性であり、T.レセイ(T.reesei)属宿主細胞により高度に分泌されるタンパク質の一部である「担体タンパク質」を含む。適した担体タンパク質は、T・レセイマンナナーゼI(Man5A、またはMANI)、T・レセイセロビオヒドラーゼII(Cel 6A、またはCBHII)(Paloheimoら、Appl.Environ.Microbiol.,69:7073-7082[2003])またはT.レセイセロビオヒドラーゼI(CBHI)の担体タンパク質を非限定的に含む。いくつかの実施態様では、この担体タンパク質は、CBH1コア領域とCBH1リンカー領域を含む切断されたT・レセイCBH1タンパク質である。従って、いくつかの実施態様では、アミノ基末端からカルボキシ末端までにシグナル配列、担体タンパク質と本体のフィターゼを含む融合タンパク質をコードする核酸が、機能的に連結して用いられる。
【0068】
いくつかの実施態様では、このトランスグルコシダーゼのコーディング領域は使用される宿主細胞内にこのトランスグルコシダーゼの発現について最適化されたコドンである。トリコデルマ・レセイ等の多くの宿主細胞において各コドンの用法を一覧にしたコドン使用表が本願技術分野(Nakamuraら、Nucl. Acids Res., 28:292[2000])で知られ、または容易に作成できるので、このような核酸は、容易に設計でき、発現すべきトランスグルコシダーゼのアミノ酸配列を与える。
【0069】
いくつかの実施態様では、コーディング領域に加え、この核酸はさらに宿主細胞でトランスグルコシダーゼ酵素の発現に必要な他の因子を含む。例えば、いくつかの実施態様では、この核酸はコーディング領域の転写のプロモーターと転写のターミネーターを含む。T・レセイで使用されるプロモーターの例は、T・レセイ cbh1、cbh2、egl1、egl2、eg5、xln1及びxln2プロモーター、またはそれらの混成物、切除体を非限定的に含む。例えば、いくつかの実施態様では、このプロモーターはT・レセイcbh1プロモーターである。適したターミネーターはT・レセイcbh1、cbh2、egl1、egl2、eg5、xln1及びxln2ターミネーター及び多くの他のもの、例えば、この技術分野の技術者に知られているような、A・ニゲル(A.niger)またはA・アワモリ(A.awamori)グルコアミラーゼ遺伝子及びアスペルギルス・ニードランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸合成遺伝子、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ遺伝子、またはA.ニードランスtrpC(Puntら、Gene 56:117-124[1987])由来のターミネーターを含む。いくつかの実施態様では、このプロモーター及び/またはターミネーターはこのトリコデルマ属宿主細胞に固有であり、他方、他の実施態様では、これらはトリコデルマ属宿主細胞に非内在性である。
【0070】
T・レセイ宿主細胞がトランスグルコシダーゼ酵素の発現のため使用されるいくつかの実施態様では、この細胞は、内在性の分泌されるタンパク質の発現を減少させるように遺伝学的に修飾される。いくつかの実施態様では、この細胞は、欠失または不活性化された一以上の固有の遺伝子、特に分泌されるタンパク質をコードする遺伝子が欠失または不活性化されている。例えば、いくつかの実施態様では、一以上のプロテアーゼコーディング遺伝子(例.アスパラギン酸プロテアーゼコーディング遺伝子;Berkaら、Gene 86:153-156[1990];及び米国特許第6,509,171号参照)またはセルラーゼコーディング遺伝子は欠失または不活性化されている。いくつかの実施態様では、このトリコデルマ属宿主細胞は、WO05/001036に述べられているようにcbh1,cbh2及びegl1及びegl2遺伝子に不活性化を行う欠失を含む宿主細胞である。いくつかの実施態様では、上記に述べた核酸はトリコデルマ属宿主細胞の核のゲノムに含まれ、他の実施態様では、トリコデルマ宿主細胞で複製するプラスミドに含まれる。
【0071】
核酸をトリコデルマ宿主細胞へ導入するいずれの適した方法も本願発明で使用される。(例.電気穿孔法、核マイクロインジェクション、形質導入、トランスフェクション、リポフェクション仲介性及びDEAE-デキストリン仲介性トランスフェクション、リン酸カルシウムDNA沈降物との接触、DNA-コート微粒子銃による高速導入、及びプロトプラスト融合)。実際、一般的形質転換技術は本願技術分野で良く知られている(例えば、Campbellら、Curr.Genet.,16:53-56[1989];WO05/001036;米国特許第6,022,725号;米国特許第6,103,490号;米国特許第6,268,328号;及び公開された米国特許出願第20060041113号、第20060040353号、第20060040353号及び第20050208625号参照、これらの刊行物は引用により本明細書に含める。)いくつかの実施態様では、形質転換用のトリコデルマの調製は、菌類の菌糸からプロトプラストの調製を含む。(例えば、Campbellら上記参照)いくつかの実施態様では、この菌糸は発芽した植物性胞子から得られる。
【0072】
いくつかの実施態様では、培地へ分泌された後、このトランスグルコシダーゼ酵素はいずれか適した、従来の方法を用いて回収される(例.沈殿、遠心分離、アフィニティー、ろ過または本願技術分野のいずれか他の方法。たとえば、アフィニティークロマトグラフィー(Tilbeurghら、FEBS Lett., 16:215[1984];イオン-交換クロマトグラフィー法(Goyalら、Biores.Technol.,36:37[1991];FliessらEur.J.Appl.Microbiol.,Biotechnol.17:314[1983];Bhikhabhaiら、J.Appl.Biochem.,6:336[1984];及びEllouzら Chromatogr.,396:307[1987])、高分離能をもつ物質を使用したイオン交換(Medveら、J.Chromatogr.A808:153[1998];疎水性相互作用クロマトグラフィー(Tomaz とQueiroz,J.Chromatogr. A865:123[1999];二相分配(Brumbauerら、Bioseparation 7:287[1999]);エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEのようなカチオン-交換樹脂でのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;またはゲルろ過(例.Sephadex G-75を使用)が使用される。いくつかの実施態様では、このトランスグルコシダーゼは、培地の他の成分から精製されずに使用される。いくつかのこれらの実施態様では、培地は単に濃縮され、培地の成分からこのタンパク質をさらに精製することなく使用され、他の実施態様ではさらに修飾または処理を受けずに使用される。
【0073】
本願の発明は天然ガム多糖を分解する方法も提供する。いくつかの実施態様では、この方法は天然ガム多糖が分解するような条件下で天然ガム多糖とトランスグルコシダーゼ酵素を組み合わせる(例.混合する)ことを含む。トランスグルコシダーゼ酵素の活性に適した条件は(例.温度範囲、pH範囲、及びトランスグルコシダーゼ酵素の活性に適した他の反応成分)本願技術分野で知られている。
洗浄方法
【0074】
上記のトランスグルコシダーゼ含有組成物に加え、本願の発明は洗浄方法も提供する。これらの方法は一般的に以下を含む。トランスグルコシダーゼ酵素を含む洗浄組成物と、少なくとも一つの天然ガム多糖で汚れた対象物を接触させること、及び;天然ガム多糖を分解し、それにより対象物を洗浄するに十分な条件下でこの対象物と洗浄剤組成物を維持すること。
【0075】
いくつかの好ましい実施態様では、これらの方法で使用されるこの洗浄剤組成物は布地洗浄剤組成物(例.洗濯洗剤)、表面洗浄剤組成物、皿洗い組成物、自動皿洗い洗剤組成物等である。WO0001826(引用により本明細書に組み入れる)で詳細に述べられているものを非限定的に含む洗浄剤組成物の種々の調合剤は本願の発明で使用できる。
【0076】
いくつかの実施態様では、この主題の洗浄剤組成物(例.洗濯洗剤)は、約1%から約80%(例.約5%から約50%(重量))の少なくとも一種の界面活性剤(例.非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び/または両性界面活性剤、またはこれらの混合物、例えば、アニオン性及び非イオン性界面活性剤の混合物として)を含む。界面活性剤の例は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸と直鎖アルキル硫酸ナトリウム、アルキルフェノキシポリエトキシエタノール(例.ノニルフェノキシエトキシレート又はノニルフェノール)等のアルキルベンゼンスルホン酸(ABS)、アルキルフェノキシポリエトキシエタノール(例.ノニルフェノキシエトキシレート又はノニルフェノール)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノエタノールアミンを含む。種々の洗剤に使用される界面活性剤の例、特に洗濯洗剤は米国特許第3,664,961号、第3,919,678号、第4,222,905号、第4,239,659号に述べられており、これらのそれぞれは、引用により本明細書に組み入れられる。
【0077】
いくつかの実施態様では、この主題の洗浄剤組成物は固体(例.粉末又は錠剤)、液体またはゲルである。いくつかの好ましい実施態様では、この組成物はさらに少なくとも1種の緩衝剤(例.炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウム)、洗剤添加剤、漂白剤、漂白活性剤、酵素、酵素安定化剤、発泡促進剤、消泡剤、抗退色剤、抗腐食剤、汚れ懸濁剤、汚れ遊離剤、抗菌剤、pH調整剤、添加剤以外のアルカリ源、キレート剤、有機または無機充填剤、溶媒、ヒドロトロープ、光学的漂白剤、染料及び/または香料を含む。いくつかの実施態様では、この洗浄剤組成物は、使用前に洗濯用添加剤として洗剤と併せられる。
【0078】
いくつかの実施態様では、他の汚れの除去のため、この洗浄剤組成物はさらに、少なくとも1種の非デンプン食品多糖分解酵素(例.ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、キシリナーゼまたはペクテートリアーゼ)と、任意に、一以上の他の酵素(例.スブチリシンプロテアーゼのようなプロテアーゼ、及び/またはSSIタンパク質;リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、クチナーゼ、リパーゼ、酸化還元酵素等)を含む。
【0079】
洗剤洗浄組成物の多くの種類の他の成分は本明細書で提供される組成物で使用され、他の活性成分、単体、ヒドロトロープス、処理助剤、染料または色素、液体調合剤用の溶媒を非限定的に含む。泡立ちを増やしたいときは、通常は、重量でこの組成物の約1%から約10%でC10-C16のアルコールアミドのような泡立ち促進剤が組成物に組み入れられる。
【0080】
いくつかの実施態様では、洗剤組成物は水と他の溶媒を担体として含む。メタノール、エタノールプロパノール、及びイソプロパノールで例示される低分子量の一級または二級アルコールはそのような担体として使用される。いくつかの実施態様では、モノヒドリックアルコールは界面活性剤の溶解に好まれるが、ポリオール、約2から約6個の炭素原子と約2個から約6個の水酸基を含むもの(例.1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グリセリン、及び1,2-プロパンジオール)も使用される。いくつかのさらなる実施態様では、この組成物は約5%から約90%の、通常は、約10%から約50%のそのような担体を含む。
【0081】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載されているこの洗剤組成物は、水を使って洗浄している間、洗浄水のpHが約5.0と約11.5の間であるように調合されている。よって、最終製品は通常この範囲に調合されている。推奨される用途水準にpHを調節する技術は、緩衝剤、アルカリ剤、酸等の使用、本願技術分野の技術者に良く知られている。いくつかの実施態様では、洗浄剤組成物は、約pH9.0から約pH11.5、約pH9.0から約pH9.5、約pH9.5から約10.0、約pH10.0から約pH10.5、約pH10.5から約pH11.0、または約pH11.0から約pH11.5の範囲に使用pHをもつ自動皿洗い洗剤である。いくつかの他の実施態様では、この洗浄剤組成物は約pH7.5から約pH8.5、約pH7.5から約pH8.0、または約pH8.0から約pH8.5の範囲に使用pHをもつ液体洗濯洗剤である。いくつかの他の実施態様では、この洗浄剤組成物は約pH9.5から約pH10.5、約pH9.5から約pH10.0、または約pH10.0から約pH10.5の範囲に使用pHをもつ固体の洗濯洗剤である。
【0082】
過炭酸、過ホウ酸等のような種々の漂白剤も、通常重量で約1%から約15%の水準で、本明細書で提供される種々の組成物で使用される。好ましい場合、そのような組成物はテトラアセチルエチレンジアミン、ノナノイロキシベンゼンスルホン酸等のような漂白活性剤も含み、これらはこの技術分野でも知られている。
【0083】
種々の汚れ遊離剤、特にアニオン性オリゴエステルタイプ、種々のキレート剤、特にアミノホスホネートとエチレンジアミンジコハク酸、種々の粘土汚れ除去剤、特にエトキシル化テトラエチレンペンタミン、種々の分散剤、特にポリアクリル酸塩とポリアスパラギン酸塩、種々の漂白剤、特にアニオン性漂白剤、種々の発泡抑制剤、特にシリコーンと第2級アルコール、種々の布地柔軟剤、特にスメタイト粘土等も重量で約1%から約35%の範囲の水準で使用される。標準的処方と公開された特許には、本願の発明により提供される組成物で使用されるそのような従来の原料について多数の詳細な記載がある。
【0084】
いくつかの実施態様では、酵素安定剤はまた本明細書に記載の洗浄剤組成物で使用される。そのような安定剤は、プロピレングリコール(好ましくは、約1%から約10%)
、ギ酸ナトリウム(好ましくは、約0.1%から約1%)及びギ酸カルシウム(好ましくは約0.1%から約1%)を非限定的に含む。
【0085】
いくつかの実施態様では、この硬い表面用洗浄剤組成物と/または布地洗浄剤組成物は重量で約5%から約50%の水準で種々の添加剤を含むように調合される。通常の添加剤は、1-10ミクロンのゼオライト、クエン酸塩とオキシジコハク酸塩(oxydisuccinate)のようなポリカルボン酸塩、層状シリケート(layered silicate)、リン酸塩等を非限定的に含む。
他の従来の添加剤は標準的処方に一覧にされ、本願発明で使用できる。
【0086】
他の任意の成分はキレート剤、粘土汚れ除去剤/再沈着防止剤、ポリマー性分散剤、漂白剤、光沢剤、消泡剤、溶媒及び美観剤を含む。
【0087】
本願の発明により提供されるこの洗浄方法はある種の汚れ(例.天然のガム多糖を含有する食品による汚れ)をトランスグルコシダーゼ酵素を使用しない相当する方法よりもより効果的に除去する。いくつかの好ましい実施態様では、トランスグルコシダーゼ酵素を含まない点以外は同じ方法と比較して、本願の発明の洗浄剤組成物は汚れ除去においてより効果的である。標準的な反射率計に基づく定量を用いると、例えば、主題の方法は、トランスグルコシダーゼ酵素を使用しない同等の方法よりも、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、またはいくつかの実施態様では、少なくとも約90%多く汚れを落としまたは脱色する。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本願の発明とその長所を更に説明するために、以下の具体的な例が与えられるが、これらは本願の発明を説明するために提供されるのであって、これらの範囲を限定するようには解釈されてはならないことが理解されるべきである。
実験
【0089】
以下の実施例は、本願技術分野の一般的技術者に本願の発明を完全に開示し説明するために提供されるが、発明者が自らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図しているものではなく、また、これらの下記実験が実施した全てまたは唯一の実験であることを示すことを意図するものではない。使用した数値(例.数量、温度など)について正確さを確保するため努力が払われた。しかし、いくつかの実験的誤差と逸脱が考慮されるべきである。別に示す場合を除き、重量による部分、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏の温度、圧力は大気圧又はその近傍である。

実施例1
T・レセイのA.ニゲルトランスグルコシダーゼの発現
【0090】
A.ニゲルの成熟トランスグルコシダーゼ酵素をコード化する核酸は、A・ニゲルのゲノムDNAからPCRにより増幅され、ベクターpTrexにクローンされpTrex3(AGL51M)を作成した。pTrex3(AGL51M)は図1に説明されている。このベクターによりコードされたトランスグルコシダーゼタンパク質は、CBH1シグナル配列に機能的に連結し培地への分泌が促されるようにされている。このトランスグルコシダーゼコーディング領域にはT・レセイcbh1プロモーターとターミネーターが隣接している。pTrex3(AGL51M)の発現カセットのヌクレオチド配列は図2に示されている。
【0091】
プラスミドpTrex3(AGL51M)の7.75kbXBaI-XbaIフラグメントはアガロースゲル電気泳動により精製され、電気穿孔法によりT.レセイの胞子を形質転換するために使用された。電気穿孔法のパラメーターは以下の通り。:電圧16kV/cm、静電容量25μF、抵抗:50Ω。電気穿孔法は、氷冷した1.2Mソルビトールに懸濁された取り入れたばかりのT・レセイ胞子の懸濁液を用いて行われた。電気穿孔の後、この胞子は1Mソルビトール、0.3%グルコース、0.3%Bacto ペプトン及び0.15%酵母抽出物を含有する培地にロータリーシェーカー(30℃、200rpm)中で一夜培養された。発芽した胞子は唯一の窒素源(アセトアミド0.6g/l;塩化セシウム1.68g/l;グルコース20g/l;リン酸ニ水素カリウム15g/l;硫酸マグネシウム6水和物0.6g/l;塩化カルシウム2水和物0.6g/l;硫酸鉄(II) 5mg・l;硫酸亜鉛1.4mg/l;塩化コバルト(II)1mg/l;硫酸マンガン(II) 1.6mg/l;寒天20g/l;ph4.25)としてアセトアミドを含む選択培地に接種された。形質転換株のコロニーは約1週間で現れた。各形質転換株は新しいアセトアミド選択プレートへ移され、3-4日培養された。
【0092】
選択培地上で安定な増殖を示す株は、20x175mm試験管のラクトース規定培地(lactose defined medium)(WO2005/001036、p.60参照)5mlに接種された。この試験管は約45°の角度でロータリーシェーカーに固定され、4-5日間200rpm、28℃で振とうされた。培地の上澄液の電気泳動分析はほぼ予想の分子量の新しいタンパク質のバンドの存在を示した。
【0093】
酵素的定量を使用して形質転換株によるトランスグルコシダーゼ活性の産生もまた確認された。この定量は4mMパラ-ニトロフェニル-α-グルコシドと1mg/ml BSAを含有する100mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH4.5中で行われた。30℃で30分の反応後、反応は同量の1M炭酸ナトリウムを加えて終了し、OD405が測定された。通常、形質転換株は液体培地1ml当たり1-2Uのトランスグルコシダーゼ活性(1分あたり遊離されたパラ-ニトロフェノールのマイクロモルとして表される)を表した。形質転換されていない株の比較例では、活性は検出限界より低かった。

実施例2
トランスグルコシダーゼはキサンタンガムを分解する
【0094】
キサンタンガムに対する酵素の加水分解活性は、この技術分野で知られているようにPAHBAH(パラ-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド)試薬により測定された。(Leverら、Anal.Biochem.,47:273[1972])。キサンタンガム(CAS 111 38-66-2)はSigma Chemicals、St.Louisミズーリーから購入し、濃度0.2%で、50mMの酢酸ナトリウム緩衝剤pH6.0に溶解された。いくつかの実験ではAATCC標準的強固な汚れ用液体洗剤(漂白剤を含まないAATCC HDL 2003、Test Fabrics, Inc. West Pittston, ペンシルバニア)が1L当たり1.5mL(0.15%)で加えられた。このAATCC HDL 液体洗剤は12%の直鎖アルキルスルホン酸塩、8%アルコールエトキシレート、8%プロパンジオール、1.2%クエン酸、4%脂肪酸及び4%水酸化ナトリウムと残り水を含む。
【0095】
この定量は24ウェルのマイクロプレートで次のように行われた(COSTAR 3526、Corning Incorporated, Corning, N.Y.):1mlの緩衝液がウェル1に加えられ、1mlの緩衝液と酵素がウェル2へ加えられ、1mlの緩衝液と基質がウェル3へ加えられ、1mlの緩衝液、基質と酵素がウェル4へ加えられた。統計上の理由から、各ウェルは2から4回繰り返して準備された。試験する酵素は普通、反応緩衝液で1から10倍から1から1000倍へ稀釈された。全ての試薬が加えられた後、プラスチックのカバーがマイクロプレートにつけられ、このカバーとプレートは、蒸発を防ぐためにパラフィルム(Pechiney Plastic Packing, Menasha, ウィスコンシン)で幾重にも堅く包装された。この反応プレートは1から16時間、37℃で、回転100rpmでシェイカーで反応した。
【0096】
還元糖の活性は、Eppendorf Mastercycler Gradient(Eppendorf Scientific, Westbury,ニューヨーク)サーマルサイクラーとVMR International, West Chester, ペンシルバニアから購入した0.2mlのディスポーザブルPCR(Polymerase chain reaction)ストリップチューブとキャップを用いて測定された。還元糖試薬は以下の様に調製された。:10mlの蒸留水の2%水酸化ナトリウム溶液に0.15gの酒石酸ナトリウムカリウム4水和物(Rochelle Salt,Sigma Chemical Co.)と0.15gのパラヒドロキシ安息香酸ヒドラジド(H-9882、Sigma Chemical Co.)を加えた。この溶液(”PAHBAH試薬“といわれる)を回転させ全ての成分を溶かし、使用まで暗所で氷の上に置く。この試薬は毎日新しく作った。サンプル分析の直前に、0.160mlのPAHBAH試薬がPCRストリップの各管に加えられ、5から20μlの酵素サンプルと対照が加えられた。全ての管は堅くキャップされ、サーマルサイクラーに入れられ、99℃で15分間反応を受け、4℃で少なくとも15分間冷却された。冷却後、ストリップ管は取り出され、各サンプルの0.15mlが96ウェルの平底マイクロプレート(COSTAR 9017, Corning Inc. Corning, ニューヨーク)に移され、Spectra Max250 Plate Reader (Molecular Devices, Sunnyvale, カリフォルニア)で蒸留水のブランクを対照として405nmで測定した。
【0097】
各酵素サンプルは以下の様に分析された。:対照サンプルの光学濃度(OD)が、緩衝液のサンプルのO.D.にから差し引かれ、この値が基質緩衝液対照液へ加えられた。酵素と基質の反応のO.D.は基質と対照サンプルの総計と比較された。
【0098】
図3は、トリコデルマ(Trip-TG)とアスペルギルス(Mega-TG)に産生されたトランスグルコシダーゼが、50mM酢酸緩衝液とAATCC強固な汚れ用液体洗剤中、pH6.0でキサンタンガムに対する相当な還元糖活性を示した。

実施例3
トランスグルコシダーゼは汚れた布から汚れを落とす
【0099】
色素(STC CFT CS-6)とグアル色素(STC CFT CS-43)を加えたサラダドレッシングで汚れた綿の布見本をTest Fabrics,Inc.West Pittston、ペンシルバニア、米国から入手した。マイクロプレート定量用の布見本は15mmの円(円盤)に5/8”ダイスカッターを備えた織物PunchPress Model B により切り出された。1枚の布見本が24-ウェルのマイクロプレート(Costar 3526)の各ウェルヘ置かれた。1リットル当たり1.5mlのAATCC HDL洗剤、50mMHepes緩衝液、及び50mMHepes緩衝液pH7.4で稀釈された6から60ppm酵素を含む1mlの洗浄液が各ウェルヘ加えられた。このマイクロプレートはプラスチックの蓋とアルミニウム薄で包まれ、37℃で4-16時間100rpmで穏やかに回転を受けて反応を受けた。このプレートはシェーカーから取り出され、洗剤溶液は吸引により除去された。各マイクロプレートのウェルは1.5mlのDulbecco’s PBS pH7.3により3度、1.5mlの蒸留水により3度洗浄された。各ディスクはそのウェルから取り出されペーパータオルの間で一夜乾燥され、直接光にさらされることはなかった。ディスクは目視により検査を受け、次に標準白タイルで校正されたMinolta Reflectometer CR-200で分析を受けた。標準偏差とともに平均L値が計算された。
【0100】
図4に示されたグラフはTrip-TG(50mM Hepes緩衝液で1/50に稀釈)が50mMHepes 緩衝液pH7.4と50mMHepes 緩衝液pH7.4に0.15%AATCC HDLを加えた液中でサラダドレッシングの汚れとグアル色素の汚れの両者による汚れを除くことを示す。
【0101】
図5はTrip-TG用量応答微小布見本実験で得られた結果を示す。Trip-TGは0.15%AATCC強固な汚れ用液体中1ppmでサラダドレッシングの汚れを落とした。
【0102】
図6はTrip-TGが漂白剤を含まない0.1%North American AATCC-1993 HDD 標準中で微小布見本洗浄実験におけるサラダドレッシングの汚れを落とすことを示す。この洗剤は18%直鎖アルキルスルホン酸塩、25%ゼオライトA、18%ソーダ灰、0.5%ケイ酸ナトリウム、22%硫酸ナトリウム、10%水分と、6.3%のコポリマーまたは他の添加物を含む。
【0103】
この実験は、強固な汚れ用液体(HDL)と強固な汚れ用固体(HDD)におけるトランスグルコシダーゼの除去活性示した。

実施例4
トランスグルコシダーゼの洗浄活性のターゴットメーター(Tergotometer)分析
【0104】
ターゴットメーター試験は6ポットのターゴットメーターモデル7243S(Y.S.Testing,Co.Inc.Hoboken,ニュージャージー)を30℃で維持して使用した。撹拌速度は100rpmに設定された。Warwick Equest Limited,Consett,County Durham,Englandから入手した綿の布見本(ターゴットメーターの1ポット当たり5枚)で、丸い食品の汚れが付いたもの、が6gpgの硬度(1.735M塩化カルシウムと0.67M塩化マグネシウムを含む15000gpg硬度の原液から稀釈された)と25mMHepes 緩衝液pH7.4を含む1リットルの0.15%AATCC HDL 洗剤に加えられた。30分の洗浄後、この布見本は1.5 Lの冷たい水道水中で3度洗浄を受け、過剰な水分を除去するため7分間回転させて、室温で一夜乾燥された。汚れ除去パーセント(%SRI)が反射率計による各汚れの分析後の標準的方法により計算された。図7はトランスグルコシダーゼが、酵素を含まない対照例、または関係のないタンパク質、Rockland Immunochemicals, Gilbertsville,ペンシルバニアから入手したウシの血清アルブミン(BSA-50,Fraction V、免疫グロブリンとプロテアーゼを含まない)を含む対照例と比較して相当にマーマレードの汚れを洗浄することを示す。
【0105】
上記の例はトランスグルコシダーゼが効果的にキサンタンを分解し、綿の布見本から汚れを落とすことを示している。
【0106】
明細書に述べられた全ての特許と刊行物は本発明が属する技術分野の技術者の水準を示す。全ての特許と刊行物は、各刊行物が具体的、個別に引用により組み入れられることが示されている場合と同様に引用により本明細書に組み入れられる。
【0107】
本願技術分野の技術者は、本願の発明が、発明が固有にもつものに加え、述べられた目的を実行し結果と利点を得るために良く適合していると容易に認識するであろう。本明細書に述べられたこの組成物と方法は好ましい実施態様の代表例、実施例であり、本願の発明の範囲を限定することを意図していない。本願の発明の範囲と本質から離れずに本明細書に開示された発明に種々の置換と修飾を行えることは、本願技術分野の技術者には容易に分かる。
【0108】
本明細書に説明のため述べられた発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素、限定を加えずに適切に実施できる。用いられた用語と表現は記述のための用語として使用され、限定するための用語として用いられたのではなく、そのような用語と表現の使用により示され、記述された特徴またはその一部と均等ないずれのものも排除する意図はない。むしろ、種々の修飾が本願の発明の範囲内で可能であることが分かる。従って、本願の発明が好ましい実施態様により具体的に開示されたが、本明細書に開示された概念の修飾と変形は、本願の技術分野の技術者に委託されているのであって、そのような修飾と変形は本発明の範囲内にあると考えられることは理解されるべきである。
【0109】
本願の発明は本明細書に広くかつ属について述べてられてきた。属としての開示の範囲内にあるより狭い種と属より狭い分類もまた本願の発明に含まれる。これは、除外するものが本明細書に具体的に記載されているか否かを問わず、この属からそれに属するいずれかを除く旨の条件や限定を定める場合を除き、本発明に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) トランスグルコシダーゼ酵素と
b) 天然ガム多糖
を含む組成物であって、前記天然ガム多糖は前記トランスグルコシダーゼ酵素の基質である組成物。
【請求項2】
請求項1の組成物であって、前記天然ガム多糖はキサンタンガムである組成物。
【請求項3】
請求項1の組成物であって、前記トランスグルコシダーゼ酵素はIUBMB命名法に従ったEC2.4.1.24と定義される活性をもつものである組成物。
【請求項4】
請求項1の組成物であって、前記トランスグルコシダーゼ酵素がアスペルギルス(Aspergillus)トランスグルコシダーゼ酵素と少なくとも約90%同一のアミノ酸配列をもつものである組成物。
【請求項5】
請求項1の組成物であって、前記組成物はさらに少なくとも1つの界面活性剤を含む組成物。
【請求項6】
請求項1の組成物であって、前記天然ガム多糖は対象物上に汚れとして存在するものである組成物。
【請求項7】
請求項6の組成物であって、前記対象物は布地である組成物。
【請求項8】
前記天然ガム多糖を分解するために天然ガム多糖をトランスグルコシダーゼ酵素と組み合わせることを含む方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、前記トランスグルコシダーゼ酵素はIUBMB命名法に従ったEC2.4.1.24として定義される活性をもつものである方法。
【請求項10】
請求項8の方法であって、前記天然ガム多糖はキサンタンガムである方法。
【請求項11】
洗浄方法であって、
a) 天然ガム多糖で汚れた対象物をトランスグルコシダーゼ酵素を含む洗浄剤組成物と接触させ
b) 前記対象物と洗浄剤組成物を、前記天然ガム多糖の分解を行いそれにより前記対象物を洗浄するに十分な条件で保つ
ことを含む方法。
【請求項12】
請求項11の洗浄方法であって、前記対象物は前記天然ガム多糖を含有する食品で汚れているものである方法。
【請求項13】
請求項11の洗浄方法であって、前記天然ガム多糖はキサンタンガムを含むものである方法。
【請求項14】
請求項11の洗浄方法であって、前記対象物は布地と堅い表面から選択されるものである方法。
【請求項15】
請求項11の洗浄方法であって、前記トランスグルコシダーゼ酵素はアスペルギルストランスグルコシダーゼと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列をもつものである方法。
【請求項16】
請求項11の洗浄方法であって、前記洗浄剤組成物がさらに少なくとも1つの界面活性剤を含むものである方法。
【請求項17】
請求項11の洗浄方法であって、前記洗浄剤組成物はさらにプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、ペクテートリアーゼ、及び酸化還元酵素から選択される少なくとも1つの酵素を他の汚れ組成物の分解のために含むものである方法。
【請求項18】
請求項11の洗浄方法であって、前記洗浄剤組成物は約pH5.0から約pH11.5のpHをもつものである方法。
【請求項19】
請求項11の洗浄方法であって、前記洗浄剤組成物は約0.01ppmから約100ppmの範囲の濃度で前記酵素を含むものである方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−522271(P2010−522271A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500947(P2010−500947)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/003788
【国際公開番号】WO2008/118382
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】