説明

トリサイトカインをコードする弱毒化腫瘍退縮パラミクソウイルス

本発明は、トリサイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなり、速現性又は亜病原性腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルスから得られる、組換え腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルスに関する。天然宿主細胞におけるサイトカインのウイルス媒介発現は、トリ種に対する、ウイルスの病原性を低減させる。さらに、当該ウイルスゲノムは、結合タンパク質、プロドラッグ変換酵素、又は/及びプロテアーゼをコードできる。これらの分子のウイルス感染腫瘍における選択的発現は、当該ウイルスの抗腫瘍効果を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリサイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなり、速現性(velogenic)又は亜病原性(mesogenic)腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルスから得られる、組換え腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルスに関する。天然の宿主細胞におけるサイトカインのウイルス媒介発現は、トリ種のウイルスの病原性低減をもたらす。
【0002】
本発明におけるウイルスは、疾患の治療、特に腫瘍退縮腫性の腫瘍の治療に適する。トリサイトカインをコードする組換えウイルスが作製され、ここで当該ウイルスの病原性はトリ種について低減され、ウイルスの環境毒性の軽減をもたらす。当該ウイルスの腫瘍退縮活性は、記載される病原性低減方法により損なわれない。当該ウイルスゲノムは、追加の治療導入遺伝子、好ましくは結合タンパク質(抗体、アンキリン反復分子、ペプチド等)、プロドラッグ変換酵素、又は/及びプロテアーゼをコードしてよい。これらの結合タンパク質、プロドラッグ変換酵素、又は/及びプロテアーゼの活性は、ウイルスの抗腫瘍効果を増加させる。さらに、本発明は、癌治療のためのかかる改変ウイルスの製造及び使用について記載する。
【背景技術】
【0003】
ニューキャッスル病ウイルス
腫瘍の治療のための一般的な腫瘍退縮ウイルスは、Chiocca(2002)において概説される。ニューキャッスル病ウイルス(NDV)は、40年以上にわたり実験的治療剤として使用されており、そしてSinkovics及びHorvath(2000)により概説される。一般的にニューキャッスル病ウイルスは、Alexander(1988)による書籍において報告されている。NDV株PV701は、グリア芽腫の抗癌治療として開発されている(Lorence等、2003)。NDV株MTH68は、実験的癌治療として使用されており、そして30年以上にわたりヒトに投与されている(Csatary等、2004)。
【0004】
Stojdle等(2003)による論文には、全ての試験された腫瘍細胞系列の80%の範囲で、水疱性口内炎ウイルス(VSV)への感染後、インターフェロン応答において欠陥が存在することが記載されている。VSV及びNDVの両方がモノネガウイルス種の構成ウイルスであるために、腫瘍細胞系列の同様の割合が、NDVに感染し易くなるはずであると考えられる。腫瘍細胞におけるNDVの選択的複製のメカニズムは、ウイルスに対する細胞性インターフェロン応答における欠陥に基づくことが示されている(例えば、US20030044384を参照されたい)。
【0005】
パラミクソウイルスは、15〜19kb長のゲノムを有するネガティブ極性の一本鎖RNAゲノムを含み(野生型)、そして当該ゲノムは、6〜10個の遺伝子を含有する。このウイルスエンベローブは、表面糖タンパク質及び宿主細胞由来の膜部分により形成される。当該表面糖タンパク質(F及びHN又はH又はG)は、宿主細胞からのウイルスの出入を媒介する。ヌクレオカプシドは、エンベローブの内側にあり、そしてRNAゲノム及びヌクレオカプシドタンパク質(NP)、細胞間ウイルス転写及び複製に関与するホスホプロテイン(P)及び巨大タンパク質(L)を含む。マトリクス(M)タンパク質は、ウイルス性エンベローブ及びヌクレオカプシドに接続する。これらの構造タンパク質をコードするこれらの遺伝子に加え、パラミクソウイルス科は、「アクセサリー」遺伝子を含んでもよく、これは上記の遺伝子が散在する追加の転写単位になることができる。当該アクセサリー遺伝子は、P遺伝子転写単位と重複する主要なORFである。パラミクソウイルス科の包括的な記載は(Lamb、2001)にある。
【0006】
NDVは、モノネガウイルス種に属するパラミクソウイルス科のファミリーの、アブラウイルスのプロトタイプな構成ウイルスである。当該ウイルスゲノムは、6つの主要なタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質(NP)、ホスホプロテイン(P)、マトリクスタンパク質(M)、融合タンパク質(F)、ヘマグルチニンタンパク質(HN)、及びポリメラーゼタンパク質(L)、をコードする一本鎖ネガティブセンスRNAである。Pタンパク質mRNAの編集により、1又は2個の追加のタンパク質、V(及びW)が翻訳される。
【0007】
NDVは、Alexander(1988)及びLamb(2001)において詳細に特性決定されている。
【0008】
トリ病原体としてのニューキャッスル病ウイルス
NDV株は、全齢のニワトリの急性致死的感染をもたらす速現性株(高毒性)、若いニワトリにおいてのみ致死的である亜病原性単離物(中間的ウイルス)、及び疾患の軽度又は明白ではない状態において明示されるレントジェニック株(無毒性)として、ニワトリに対するその病原性が分類される。速現体、亜病原体、又はレントジェニック体におけるNDV単離物の分類は、胚を死亡させる最小致死用量の接種後、9日齢の孵化卵におけるニワトリ胚の平均死亡時間(MDT)により決定される。NDV毒性の決定因子の1つは、前駆体Fタンパク質の切断部位のようである。
【0009】
NDVの最初の発生は、1926年、イングランドのタインのニューキャッスル及びインドネシアのジャワで観察された。当該疾患の最初の出現から、3つのNDV動物性流行病が報告されている。
【0010】
NDVは、主に、感染し易い鳥により吸入されたエアロゾル又は巨大な液滴により伝播される。感染の過程で、新規な感染性ウイルス粒子は、感染した気道から噴出されるか、排泄物中に排泄されることになる。この健常な鳥によるウイルスが含有物質の摂取により、新規な感染が確立され、且つある鳥から別の鳥へのウイルス伝播を維持できる。
【0011】
トリ病原体としてのNDVは、Alexander(1997)、Diseases of Poultryに詳細に記載されている。
【0012】
ニューキャッスル病ワクチン接種
家禽農業の脅威としてのNDV及びワクチン接種の必要性は、前世紀の初期に既に認識されていた。Iyer及びDobsonは、毒性NDV株の弱毒化について、1930年代に研究を行い、いくつかの亜病原性NDVワクチン株の開発へと導いた。生ワクチンの開発は、今日では最も広く使用されるNDVワクチンである、レントジェニックワクチン株HitchnerB1及びLaSotaの確立により前進した。さらなるワクチン戦略には、担体アジュバント(水酸化アルミニウム、オイルエマルション)と一緒に提供される、不活性化NDVワクチンの使用(例えば、フォルマリン、β−プロピオラクトンによるなど)がある。
【0013】
NDVワクチンの開発の歴史及び現状は、Alexander(1997)、Disease of Poultryに記載されている。
【0014】
逆遺伝法により作製される、組換えNDVに基づく獣医学的使用のための次のワクチンの作製は、Huang等(2003)で概説され、組換えNDVワクチンは、以下の特許に記載がある。
【0015】
US6,699,479 B1は、ニューキャッスル病ウイルス(NDV)であって、低減したレベルでそのVタンパク質を発現し、且つ孵化の前に胚のワクチン化に使用されるNDVを記載している。
【0016】
US2004/0043035は、核タンパク質(NP)の免疫優勢エピトープを発現できず、且つマーカーワクチン株に適する、組換えNDV突然変異体に関する。
【0017】
US2003/0224017は、組換えNDVワクチンの作製のためのNDV用の逆遺伝子システムについて記載する。このシステムは、NDVゲノム由来の導入遺伝子、例えばトリサイトカイン(ニワトリIL−2、ニワトリIL−4)の発現により、NDVワクチン株を作製することを可能にする。
【0018】
EP1 300 157は、HN及び/又はF糖タンパク質をコードする遺伝子配列における変異を含んでなる、トリ種の卵内ワクチン化に適する、弱毒化変異ニューキャッスル病ウイルス株に関する。
【0019】
US6,719,979は、クローン化完全長DNAに完全に由来する感染性ニューキャッスル病ウイルス(NDV)の作製のためのプロセス、及びワクチンの使用、及び当該プロセスと共に作製されそして当該プロセスに由来する診断アッセイに関する。
【0020】
WO2007/025431は、組換え弱毒化ニューキャッスル病La Sota株を作製するための方法、及びニューキャッスル病ウイルス(NDV)により引き起こされる疾患の予防のためのワクチンの調製におけるその使用を記載する。
【0021】
WO2000/067786は、弱毒化感染性ニューキャッスル病ウイルス(NDV)を作るためのcDNAに関する。弱毒化感染性NDVを含んでなるワクチンは、当該発明の範囲内である。
【0022】
組換えパラミクソウイルス
EP−A−0 702 085は、ウイルスゲノムのオープンリーディングフレーム、擬似遺伝子領域、又は遺伝子間領域における挿入及び/又は欠失を含んでなる、遺伝子組換え感染性複製非セグメント化ネガティブ一本鎖RNAウイルス変異体に関する。
【0023】
WO99/66045は、ウイルスゲノムの全長cDNA分子から得られる、遺伝子改変NDVウイルスに関する。
【0024】
WO00/62735は、インターフェロン感受性の複製可能なクローンRNAウイルス、例えばNDVを投与することを含んでなる、腫瘍治療の方法に関する。
【0025】
WO01/20989(PCT/US00/26116)では、組換え腫瘍退縮パラミクソウイルスを伴う腫瘍を有する患者を治療するための方法を記載する。当該腫瘍は、複製可能なパラミクソウイルス科のウイルスを投与することにより低減される。腫瘍退縮特性を向上させるため、ウイルスゲノムを設計するために使用できる様々な方法が、報告されている。
【0026】
WO03/005964は、サイトカインをコードする核酸を含んでなる、組換えVSVに関する。
【0027】
US2004/0170607は、一般的なヒト病原体ではないウイルスを投与することによるメラノーマの治療に関する。
【0028】
NDVの遺伝子組換え
NDVは、例えばEP−A−0 702 085に記載されるような逆遺伝子法を用いる遺伝子組換えを行うことができる。例えば、分泌アルカリホスファターゼ(Zhao及びPeeters、2003)、緑色蛍光タンパク質(Engel−Herbert等、2003)、感染性嚢疾患のVP2タンパク質(Huang等、2004)、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(Nakaya等、2001)及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Huang等、2001)(Krishnamurthy等、2000)をコードする追加の核酸を含んでなる、組換えNDV構築物を作製することが既知である。これらの組換えNDVのうちで、ヒト疾患の治療における使用のために構築されているものはない。当該組換えNDVは、NDVの基本的なウイルス学を研究するためか、又は家禽のためのワクチン株を開発するためのいずれかのために作製された。これらの株は、顕著な腫瘍退縮特性を有さない。
【0029】
ウイルスの遺伝子操作
遺伝子操作RNAウイルスのための方法は、上記の通り周知である。さらに、腫瘍退縮ウイルスの遺伝子操作は、例えば、Bell等(2002)に概説される。ウイルス療法剤としてのRNAウイルスは、Russell(2002)に概説される。これらの文書の任意の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
トリサイトカイン
トリサイトカインは、Staeheli等(2001)に概説されている。ニワトリサイトカイン及びケモカインの遺伝子解析は、Kaiser等(2005)で記載された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
腫瘍退縮NDV株は、1960年代初期から、腫瘍療法として研究されている。腫瘍退縮腫瘍療法に使用される大半のウイルス株は、亜病原性ウイルスのクラスに属し、家禽の病原体として記載される。抗腫瘍生物薬物としての腫瘍退縮NDVを開発するため、潜在的に存在する環境毒素、特に家禽への病原体を低減するべきである。しかしながら、家禽のために弱毒化されるNDVは、腫瘍細胞を溶解させ、且つその腫瘍退縮の潜在力を維持する継続能力を有する必要がある。ワクチンの開発のための現存する戦略は、これらが、完全に不活性化したウイルス粒子の応用か、非病原性レントジェニックウイルス株のいずれかにより、鳥免疫システムの刺激に焦点を当てるために適用できない。いずれのワクチンタイプも、癌細胞においてそれ以上複製できず、且つ腫瘍細胞を溶解する潜在力を実質的に失っている。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明では、ウイルスの腫瘍退縮活性を軽減することなく、逆遺伝子法を活用して、家禽用のNDV弱毒化を達成することができる。組換え弱毒化NDVは、サイトカイン、特に抗ウイルス性又は免疫刺激性のサイトカインをコードする導入遺伝子の挿入により創作される。
【0033】
さらに、ワクチンの目的が二次感染に対して動物を保護する長時間継続免疫性を有する、強力な免疫応答を誘導することであるため、NDVワクチンにはかかるアプローチが適さない。本発明において、記載されるNDVの弱毒化は、動物に(不所望の)一次感染を制御させ、そしてその結果、増殖性疾患の療法において適用される場合、環境毒性を低減させ、当該ウイルスの安全性を増加させることを可能にするという主要な目標がある。
【0034】
本発明の主題は、腫瘍退縮ウイルスによる腫瘍細胞の溶解である。かかる腫瘍退縮ウイルスアプローチの適応症は、ヒトにおける癌療法である。対照的に、US2003/0224017に開示されるような家禽のためのNDVは、動物に適用され、そして動物の健康管理の分野に位置する。すなわち、本発明の目的は、トリサイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなる、組換え腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルスであって、ここで当該組換え腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルスが、速現性又は亜毒性腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルスから得られる。
【0035】
本発明のウイルスは、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含んでもよい。
【0036】
当該少なくとも1つのさらなる導入遺伝子は、宿主に対して部分的な同種異系又は同系である。
【0037】
本発明の別の態様によれば、本発明のウイルスは、弱毒化ウイルスであってよい。
【0038】
「弱毒化」又は「弱毒化した」には、トリ種に対するウイルスの病原性の低減、及びトリ種について予測される生物学的アッセイシステムにおける病原体の低減がある(実施例5を参照されたい)。
【0039】
本発明のさらなる態様は、サイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなる核酸を含んでなる、家禽用の、弱毒化組換え腫瘍退縮RNAウイルスである。具体的には、当該ウイルスは、ニワトリ用に弱毒化される。「サイトカインをコードする導入遺伝子」は、本明細書において記載される場合、具体的には「トリサイトカインをコードする導入遺伝子」である。
【0040】
さらに、本発明は、カプシドタンパク質と複合化したウイルス性RNAを含んでなる、本発明の組換えウイルスのヌクレオカプシドに関する。さらに、本発明は、本発明のウイルスのRNAである、RNAに関する。本発明は、本発明のウイルスのRNAに相補的なRNAにも関する。
【0041】
さらには、本発明は、DNA、例えば、本発明のRNAをコードするcDNA及び/又は本発明のRNAに相補的なDNAに関する。さらに、本発明は、腫瘍疾患、癌又は/及び増殖性疾患の予防又は治療に関する。
【0042】
本発明のRNA又は/及びDNAは、単離状態で提供されてよい。
【0043】
本発明によれば、本明細書に記載の導入遺伝子によりコードされるサイトカインは、その適切な隣接細胞上のインターフェロン受容体に結合後、本発明のウイルスにより感染される鳥細胞から分泌されてもよく、受容体保持細胞において抗ウイルス状態を誘導してもよい。したがって、インターフェロン刺激鳥細胞における、本発明のウイルスの複製は、少なくとも部分的に阻害されてよい。ニワトリI型インターフェロンと、哺乳類I型インターフェロンとの間の類似性は、非常に低い(アミノ酸レベルで<25%同一)(Staeheli等、2001)。このため、鳥細胞におけるかかる抗ウイルス効果を発揮するサイトカインは、ヒト細胞において基本的に生物活性を示さず、且つヒト腫瘍細胞におけるウイルス複製への影響は基本的になくてもよい。さらに、ヒト生命体においては、これらのサイトカインによる副作用は基本的に期待されない。
【0044】
本明細書に記載されるサイトカインをコードする導入遺伝子の発現は、トリ種、具体的には家禽、具体的にはニワトリ用のウイルスの病原性の低減をもたらし、それにより、環境毒素の軽減をもたらす。本明細書に記載のサイトカインをコードする導入遺伝子の活性は、ウイルスの治療効果に、基本的に有害影響をもたらさない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、NDVの完全ゲノムと、ニワトリインターフェロン−アルファ(ChIFN−アルファ)導入遺伝子を含んでなる転写カセットとを含んでなる、プラスミドpfIMTH68ChIFN−アルファについて記載する。
【図2】図2は、NDVの完全ゲノムと、ニワトリインターフェロン−ベータ(ChIFN−ベータ)導入遺伝子を含んでなる転写カセットとを含んでなる、プラスミドpfIMTH68ChIFN−ベータについて記載する。
【図3a】図3aは、トリCEC−32細胞系列が、NDV−ChIFN−アルファでの感染後48時間で、溶解から部分的に保護され、且つNDV−ChIFN−ベータでの感染後は強力に保護されることを実証する。GFP発現NDVでの感染は、CEC−32単分子層を完全に破壊する。対照的に、腫瘍形成Hela細胞系列の感染後、3つのウイルス、NDV−GFP、NDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータの間の溶解効果には違いが見られない。使用したウイルスとは独立に、Hela細胞単分子膜は、感染後48時間で、完全に破壊される。
【図3b】図3bは、ウイルスNDV−GFP、NDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータで感染後48時間でのCEC−32及びHela細胞の生存細胞の定量を示す。NDV−GFPでの感染は、CEC−32細胞のほぼ完全な死滅が観察され、細胞の3%しか生き残らない。ウズラ細胞のNDV−ChIFN−アルファでの感染は、感染細胞の26%を生き続けさせる。最良の保護は、NDV−ChIFN−ベータウイルスでの感染後に観察され、CEC−32細胞の96%が生き残る。対照的に、腫瘍形成Hela細胞の感染後48時間のバイアビリティは、組換えNDVを使用とは独立に、10%未満に低下する。
【図4】図4は、巨大な治療域が、腫瘍及び線維芽細胞を、NDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータで感染後に存在することを示す。腫瘍退縮ウイルスNDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータの増殖阻害は、腫瘍細胞においては非常に強力であり、対照的に、初期の線維芽細胞の感染後は、特に0.1等の低MOI及びMOI0.01では、増殖阻害がほとんど観察されない。
【図5a】図5aは、4つのウイルス、NDV−GFP、NDV−ChIFN−アルファ、NDV−ChIFN−ベータ及び非病原性株LaSotaによる、NDV感染孵化ニワトリ卵の生存曲線を示す。NDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータで感染させたニワトリ胚は、NDV−GFP感染胚よりも長期間生存する。当該曲線は、レントジェニックNDVLaSota株の生存曲線の方向に明らかにシフトする。
【図5b】図5bは、生存曲線の結果から、各感染群についてMDT(平均死亡時間)を計算する。当該MDTは、NDV−GFPと比較して、ウイルスNDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータでは増加する。最高のMDTは、非病原性株LaSotaで観察された。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ウイルス
本発明は、一般的に、RNAウイルス、好ましくはネガティブ鎖RNAウイルス、より好ましくは腫瘍退縮特性を有し、且つ遺伝子設計できるようなウイルスに関する。かかるウイルスは:
−パラミクソウイルス、好ましくはニューキャッスル病ウイルス(NDV)、はしかウイルス、おたふく風邪ウイルス、センダイウイルス;
−オルソミクソウイルス、好ましくはインフルエンザウイルス;
−ラブドウイルス、好ましくは小胞性口内炎ウイルス、である。
【0047】
本発明のウイルスは、トリ病原体、好ましくは家禽の病原体、より好ましくはニワトリの病原体であることが好ましい。
【0048】
本発明のウイルスは、ネガティブ鎖RNAウイルスであることも好ましい。本発明の組換えRNAウイルスは、パラミクソウイルス、好ましくはニューキャッスル病ウイルス(NDV)であってよい。当該NDVは、亜病原性又は速現性の株であってよい。NDVは亜病原性NDVであることが好ましい。
【0049】
本発明のウイルスは、速現性又は亜病原性の腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルス、具体的には株MTH68から得られる。
【0050】
本発明のウイルスは、好ましくは複製成分である。
【0051】
本発明のウイルスは、具体的には、組換えウイルスが得られるウイルスに対して、トリ種への病原性が低減されていてよい。
【0052】
本発明のウイルスにおいて、病原性低減とは、細胞バイアビリティの増加により測定される、MOI0.01で、感染後約48時間のトリ細胞溶解を低減させるウイルスの能力であり、これにより、細胞バイアビリティは、組換えウイルスが得られるウイルスに対して、生存細胞が少なくとも約25%(例えば、少なくとも約25%〜約50%まで)、より好ましくは生存細胞が少なくとも約50%(例えば、少なくとも約50%〜約75%まで)、及び最も好ましくは生存細胞が少なくとも約75%(例えば、少なくとも約75%〜約100%まで)増加することが好ましい。
【0053】
本発明のウイルスにおいて、病原性低減は、平均死亡時間(MDT)決定法により測定された、11日齢孵化卵におけるウイルス感染ニワトリ胚の生存期間の延長であり、これにより、組換えウイルスが得られるウイルスに対して、MDTが少なくとも約15時間(例えば、約15時間〜約20時間まで)、より好ましくは少なくとも約20時間(例えば、約20時間〜約30時間まで)、及び最も好ましくは30時間超にまで延長されることが好ましい。
【0054】
さらなる別の実施態様によれば、ヒト腫瘍に対する本発明のウイルスの腫瘍退縮活性は、基本的に低減されない。
【0055】
本発明のウイルスにおいて、感染後48時間後に、細胞バイアビリティにより測定される、ヒト腫瘍細胞へのウイルスの腫瘍退縮活性が、組換えウイルスが得られるウイルスと比較して、50%超は低減しない、そしてより好ましくは、組換えウイルスが得られるウイルスに対し基本的に低減しないことが好ましい。
【0056】
サイトカイン
本明細書に指示されるような少なくとも1つの導入遺伝子によりコードされるサイトカインは、任意のサイトカインでよい。特に、当該サイトカインは、鳥細胞において、具体的には家禽細胞において、より具体的には、ニワトリ細胞において、少なくとも部分的にウイルス複製を阻害できるサイトカインであってよい。ウイルス複製は、基本的に、完全に阻害されることが好ましい。
【0057】
当該サイトカインは、哺乳類において、具体的には人間において基本的に生物活性のないサイトカインであってよい。これに関連して、「生物活性」は、少なくとも部分的にウイルス複製、具体的には本発明のウイルスの複製を阻害するサイトカインの能力のことを言う。「生物活性」は、非哺乳類細胞又は/及び非哺乳類において呈示されてよいサイトカインの他の活性のことも言う。
【0058】
サイトカインは、トリにおける、具体的には家禽における、より具体的にはニワトリにおける少なくとも部分的なウイルス複製を阻害できるサイトカインであってよく、そして哺乳類、具体的には人間において基本的に生物活性を有さなくてもよい。
【0059】
当該サイトカインは、トリサイトカイン、具体的には家禽サイトカイン、より具体的にはニワトリサイトカインから選択されてよい。
【0060】
サイトカインは、インターフェロン、具体的にはトリインターフェロン、より具体的にはニワトリインターフェロン、より具体的にはニワトリI型インターフェロンから選択されてよい。
【0061】
当該インターフェロンは、インターフェロン−ベータであるか、インターフェロン−アルファファミリーの構成インターフェロンであってよい。
【0062】
好ましい実施態様によれば、組換え腫瘍退縮RNAウイルスは、ニワトリインターフェロン−アルファ又は/及びニワトリインターフェロン−ベータをコードする導入遺伝子を含んでなる核酸を含んでなるNDVである。
【0063】
導入遺伝子
導入遺伝子は、ウイルスゲノムに導入される追加の核酸として、NDVゲノムに関連して定義される。当該核酸は、異なるゲノム供給源(例えば、NDVゲノム、異なるウイルスクラス、原核生物もしくは真核生物の供給源、哺乳類もしくは非哺乳類の種)から選択できる。2以上の異なるゲノム供給源からの融合導入遺伝子も可能である。核酸配列のデノボ合成に基づいて合成導入遺伝子も構築できる。当該核酸は、少なくとも1つの転写カセット内に位置する必要がある。好ましくは、当該導入遺伝子は、感染細胞においてタンパク質に翻訳される。このため、当該導入遺伝子配列は、翻訳開始及び停止コドンを含むべきである。
【0064】
本発明の組換え腫瘍退縮ウイルスは、結合タンパク質、プロドラッグ変換酵素、及びプロテアーゼをコードする導入遺伝子から独立に選択される、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子をコードする核酸を含んでもよい。
【0065】
少なくとも1つのさらなる導入遺伝子は、好ましくは、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する結合タンパク質をコードする。
【0066】
別の好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子は、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有するプロドラッグ変換酵素をコードする。
【0067】
さらに別の好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子は、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有するプロテアーゼをコードする。
【0068】
特に断りがなければ、本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」又は「少なくとも1つの導入遺伝子」は、トリサイトカインをコードする導入遺伝子のことを言うか、又はウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子、又はその組み合わせのことを言う。「導入遺伝子」の定義は、特に断りがなければ、具体的には、本明細書で記載される、ウイルスゲノム内の導入遺伝子の位置及び数に適用される。
【0069】
本発明のRNAウイルス、ゲノム、アンチゲノム、ヌクレオカプシド及び/又はDNA分子は、本明細書に記載される導入遺伝子を含んでもよく、それは本明細書に記載される転写カセット内に位置してもよい。
【0070】
本発明の組換え腫瘍退縮ウイルスは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つの、各々本明細書に記載される導入遺伝子を含んでなる核酸を含んでもよい。本発明の組換え腫瘍退縮ウイルスは、各々本明細書に記載の導入遺伝子を含んでなる最大5つの核酸を含んでもよい。具体的には、本発明の組換え腫瘍退縮ウイルスは、各々本明細書に記載の導入遺伝子を含んでなる、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの核酸を含んでなる。本発明の組換えウイルスが、少なくとも2つの導入遺伝子を含んでなる場合、これらは同一であっても、異なってもよい。
【0071】
少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなる核酸は、ウイルス遺伝子のリーディングフレーム間の任意の位置に位置してよい。具体的には、少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなる核酸は、N遺伝子の5'、NとP遺伝子との間、PとM遺伝子との間、MとF遺伝子との間、FとHN遺伝子との間、HNとL遺伝子との間、又は/及びL遺伝子の3'に位置してよい。核酸は、51位以上、例えば、N遺伝子の51、NとP遺伝子との間、又は/及びPとM遺伝子との間に位置してよく、これはかかる位置が3’位置以上と比較して発現の向上がもたらされるからである。
【0072】
好ましくは、本発明のウイルスは、本明細書に記載の導入遺伝子の腫瘍選択的発現をもたらす、腫瘍選択的感染を呈する。
【0073】
本発明の組換えRNAウイルスは、総計で、最大5つの導入遺伝子、最大4つの導入遺伝子、又は最大3つの導入遺伝子を含んでもよい。
【0074】
本発明において、トリサイトカインをコードする導入遺伝子、又はウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子、又はその組み合わせは、好ましくは、本発明の組換えRNAウイルスがそれに基づく腫瘍退縮RNAウイルスに対して異種である。本明細書で使用される場合「異種」なる用語は、遺伝子のコード領域又はその部分であってよい、完全遺伝子又はその部分のことを言う。
【0075】
異種核酸は、人工核酸であっても、天然供給源から得られても、又は天然供給源から得られる核酸及び/又は人工核酸から選択される少なくとも2つの核酸の組換えによってもよい。「天然供給源」には、本発明の腫瘍退縮RNAウイルスとは異なってもよい、哺乳類等の動物、植物、真菌、及び細菌、原生動物及びウイルス等の微生物が含まれる。
【0076】
導入遺伝子は、融合タンパク質をコードしてもよい。
【0077】
本発明の別の実施態様によれば、トリサイトカインをコードする導入遺伝子、及びウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子は、少なくとも2つの別々の転写単位に位置してよい。
【0078】
トリサイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなる核酸を含んでなる少なくとも1つの転写単位は、本明細書に記載の腫瘍細胞において転写されてもよい。
【0079】
ウイルス感染腫瘍により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つの第二の導入遺伝子を含んでなる核酸を含んでなる少なくとも1つの転写単位は、本明細書に記載の鳥細胞において転写されてもよい。
【0080】
少なくとも2つの別々の転写単位の各々は、本明細書に記載の腫瘍細胞において、及び本明細書に記載の鳥細胞において転写されてよい。
【0081】
別の好ましい実施態様によれば、トリサイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子、及びウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子は、本明細書に記載の腫瘍細胞において、及び本明細書に記載の鳥細胞において翻訳される。
【0082】
結合タンパク質
本明細書の腫瘍退縮組換えRNAウイルスにおいて、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子は、結合タンパク質をコードしてよい。
【0083】
したがって、本発明の主題は、活性成分として、本発明の組換え腫瘍退縮ウイルス、本発明のウイルスゲノム、本発明のウイルスアンチゲノム、及び/又は本発明のDNA分子と、任意に、医薬的に許容される担体、希釈剤及び/又はアジュバントと一緒に含んでなる医薬組成物であり、ここでウイルス、ウイルスゲノム、アンチゲノム及び/又はDNA分子は、結合タンパク質をコードするウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含んでなる。
【0084】
結合タンパク質は、標的細胞において発現される場合、当該細胞及び/又は隣接細胞の成分に結合できるタンパク質である。好ましくは、結合タンパク質は、細胞内成分に結合するタンパク質である。
【0085】
好ましい実施態様によれば、結合タンパク質は、以下の、天然リガンド、遺伝子改変リガンド、天然受容体の組換え可溶性ドメイン及びその改変バージョン、ペプチドリガンド、ポリペプチドリガンド、抗体分子及びその断片及び誘導体、並びにアンキリン反復タンパク質及びその断片及び誘導体のような抗体様分子、からなる群から選択される。
【0086】
高親和性の結合フレームワークの不完全な概説は、Ladner及びLey(2001)によって提供されている。
【0087】
本明細書に記載の結合タンパク質は、ヒト、マウスもしくは近縁起源のもの、又はキメラバージョン、例えば異なる種、例えばヒトとマウス由来の配列を含んでなる融合タンパク質であってよいタンパク質であってよい。
【0088】
上の記載に基づく組換え結合分子は、単量体、二量体、三量体、四量体、又は多量体タンパク質であってよい。上の記載に基づく組換え結合分子は、単一特異的、二重特異的、又は多重特異的であってよい。
【0089】
好ましい結合タンパク質は、治療活性を有する結合タンパク質から選択される。
【0090】
本明細書に記載の天然リガンドは、増殖因子又はペプチドであってよい。遺伝子改変リガンドは、天然の増殖因子又はペプチドの類似体であってよい。
【0091】
本明細書に記載の天然受容体の組換え可溶性ドメイン又はその改変バージョンは、細胞表面受容体の組換え法により発現された可溶性細胞外ドメイン、及び/又はその断片、細胞接着分子の組換え法により発現された可溶性細胞外ドメイン及び/又はその断片である。
【0092】
上記の抗体分子は、任意の既知の特異性及びアイソタイプのモノクローナル免疫グロブリン抗体、その断片及び/又はエフェクタータンパク質に融合したその断片であってよい。抗体分子は、キメラ、ヒト化、又はヒト抗体であってよい。抗体断片は、抗体の少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。抗体断片は、文献に広範囲にわたり記載されている(Allen(2002)、参照により本明細書に組み込まれる)。好ましい例は、一本鎖Fv断片、Fab断片、F(ab2')、ミニボディと呼ばれるドメイン欠失バージョン、及び他の免疫活性タンパク質、断片、セグメント及び他のより小さい又はより大きい部分抗体構造物であり、ここで最後のものは、本発明の方法内で治療に有用であるように、十分な標的特性、又は免疫学的な刺激もしくは阻害活性を有する。
【0093】
かかる抗体は、遺伝子組換えマウスの使用によりハイブリドーマクローニング実験から、又はヒト抗体配列を含む抗体ライブラリーのファージディスプレイセレクション、リボソームディスプレイセレクション、又はコロニーフィルタースクリーニング、又は関連方法から得てよい。
【0094】
本明細書に記載の抗体用特性を有する結合タンパク質は、遺伝子改変タンパク質か、そのドメインであってよく、ここで1又は複数のペプチドループは、アミノ酸のレベルを無作為化し、当該手法で、高い特異性を有する高親和性結合分子を、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、コロニーフィルタースクリーニング又は関連方法によるか、かる分子のライブラリーからの任意の抗原を濃縮してもよい。通常、選択タンパク質は、高い熱的及び熱力学的安定性を有し、且つE.coli、酵母、虫、及び哺乳類の発現システム等の組換え発現システムにおいてよく発現される。抗体様特性を有するかかる結合タンパク質の例は、Binz等(2004)に記載されるアンキリン反復タンパク質、Skerra(2000)に記載されるリポカリン、DE199 32 688.6に記載されるガンマ−クリスタリン、Hogbom等(2003)又はNord等(2000)に記載される改変タンパク質Aスキャホールド(affibodies)、又はフィブロネクチンフレームワーク等である。抗体様分子は、単量体であるか、又は一本鎖分子か、もしくは多重鎖分子のいずれかとして構築された反復分子であってよく、ここで、当該抗体様分子は、本発明の方法内で治療に有用であるよう、十分な標的特性又は免疫学的刺激もしくは阻害活性を有する。
【0095】
本発明の別の主題は、本明細書に記載の結合タンパク質をコードするウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有するすくなくとも1つのさらなる導入遺伝子を含んでなる、本発明の組換え腫瘍退縮ウイルス、本発明のウイルスゲノム、本発明のウイルスアンチゲノム、及び/又は本発明のDNA分子を、それを必要とする対象に、医薬有効量で投与することを含んでなる、増殖性疾患、具体的には過剰増殖性疾患、例えば腫瘍又は癌の治療のための方法である。
【0096】
追加の機能を有する結合分子
結合タンパク質は、少なくとも1つの結合ドメイン、例えば、抗体由来、及び少なくとも1つの異種ドメインを含んでなる融合タンパク質であってよい。「異種」は、異種遺伝子に関連して上で議論された意味を有する。
【0097】
上記の結合タンパク質は、いわゆる細胞内抗体又は細胞外利用可能な結合タンパク質として、疾患特異的部位(例えば、腫瘍)へのペイロードを送達することができる。送達されたペイロードは異種ドメイン、例えばヒトRNAse(De Lorenszo等、2004)(Zewe等、1997)、シュードモナス外毒素(Chaudhary等、1989)(Kreitman及びPastan、1995)(Batra等、1992)、ジフテリア毒素(Kreitman等、1993)(Chaudhary等、1990)(Batara等、1981)等の毒素、又は治療活性を有する、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ(Roffler等、1991)(Wang等、1992)(Bosslet等、1992)、ベータ−グルコシダーゼ(Rowlinson−Busza、1992)、カルボキシペプチダーゼ(Antoniw等、1990)、(Bagshawe等、1988)、ベータ−ラクタマーゼ等の酵素、又はIL−2、IL−12、TNF−アルファ、IFN−ベータ又はGM−CSF等のサイトカイン活性を有する免疫刺激タンパク質(例えば、Allen(2002)による概説を参照されたい)であってよい。
【0098】
別の例によれば、上記の結合タンパク質は、治療的に有用である、それ自身の拮抗的又は作動的効果を有する。拮抗的/阻止的結合分子の例は、VEGF阻害抗体アバスチン(Avastin)Ferrara等、2004)、HER2/neu受容体結合抗体ハーセプチン(Herceptin)(Noonberg及びBenz、2000)、又はEGF−受容体阻止抗体アービタックス(Erbitux)(Herbst及びLanger、2002)である。作動的結合タンパク質は、例えばアポトーシス(Georgakis等、2005)を含むか、又はDNA、RNAもしくはタンパク質への調整活性(例えば、転写の誘導、タンパク質の安定化)を有する結合タンパク質があり得る。(Adams及びWeiner、2005)によるが概説では、腫瘍退縮ウイルスへ組み込むこともできる様々な治療抗体について記載している。
【0099】
プロドラッグ変換酵素
本発明の腫瘍退縮組換えRNAウイルスにおいて、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子は、プロドラッグ変換酵素をコードしてもよい。
【0100】
プロドラッグは、治療活性化合物の誘導体又は前駆体であり、これは活性化合物に酵素的に変換できる。プロドラッグ変換酵素は、プロドラッグを治療活性なドラッグへ変換できる酵素である。
【0101】
したがって、本発明の主題は、活性成分として、本発明の組換え腫瘍退縮ウイルス、本発明のウイルスゲノム、本発明のウイルスアンチゲノム、及び/又は本発明のDNA分子と、任意に、医薬的に許容される担体、希釈剤、及び/又はアジュバントを一緒に含んでなる医薬組成物であり、ここでウイルス、ウイルスゲノム、アンチゲノム、及び/又はDNA分子は、プロドラッグ変換酵素をコードするウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含んでなる。
【0102】
当該医薬組成物は、ウイルス、ウイルスゲノム、アンチゲノム、及び/又はDNA分子によりコードされるプロドラッグ変換酵素により治療活性化合物に変換されることができるプロドラッグをさらに含んでもよい。当該医薬組成物は、増殖性疾患の治療及び/又は緩和に適してもよい。
【0103】
当該プロドラッグは、活性成分として、本発明の組換え腫瘍退縮ウイルス、本発明のウイルスゲノム、本発明のウイルスアンチゲノム、及び/又は本発明のDNA分子を有する単一組成物として製剤化されても、腫瘍退縮ウイルス調製物とは異なる組成物中に製剤化されてもよい。
【0104】
本発明の腫瘍退縮組換えRNAウイルスがプロドラッグ変換酵素をコードする場合、本発明の腫瘍退縮ウイルスは、プロドラッグ変換酵素を通常発現しないか、又は十分に発現しない、ウイルス感染標的細胞(具体的には、腫瘍細胞)におけるプロドラッグ変換酵素の選択的発現を引き起こす。すなわち、それを必要とする対象の治療の間、当該プロドラッグは、標的細胞、具体的には腫瘍細胞において、医薬活性化合物に選択的に変換されるが、非標的細胞、具体的には治療される対象の健常な細胞において、基本的に治療活性化合物に変換されなくてよい。すなわち、治療活性化合物の不所望の副作用は、治療活性化合物単独の治療と比較して低減される。
【0105】
本発明に関連して、当該プロドラッグは、プロドラッグをプロドラッグ変換酵素により変換できる、増殖性疾患、腫瘍、又は/及び癌の治療及び/又は緩和に適する治療活性化合物の誘導体もしくは前駆体であってよい。当該プロドラッグは、当該技術分野の通常の知識を有する者により既知の化合物であってよい。誘導体及び/又は前駆体は、当該技術分野の通常の知識を有する者に既知である。
【0106】
プロドラッグは、基本的に医薬的に不活性及び/又は無毒性であることが好ましい。
【0107】
本発明のプロドラッグ変換酵素の例は、ベータ−グルクロニダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ベータ−ラクタマーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼである。さらなる例は、当該技術分野の通常の知識を有する者に既知である。
【0108】
プロドラッグ変換酵素は、非腫瘍細胞においては基本的に発現されないことが好ましい。
【0109】
プロドラッグ変換酵素は、哺乳類、植物、真菌、並びに細菌、原生動物及びウイルス等の微生物から選択される生物から得てもよい。
【0110】
プロドラッグ変換酵素及びプロドラッグの最も好ましい組み合わせは、E.coliベータ−グルクロニダーゼと、ベータ−グルクロニダーゼにより活性細胞毒化合物に変換できるプロドラッグである。例としては、癌の治療のための化合物として知られるドキソルビシンに変換できる、HMR1826(ドキソルビシン−グルクロニド)がある。
【0111】
本発明の別の主題は、本明細書に記載のプロドラッグ変換酵素をコードする、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含んでなる、本発明の組換え腫瘍退縮ウイルス、本発明のウイルスゲノム、本発明のウイルスアンチゲノム、及び/又は本発明のDNA分子を、それを必要とする対象に、医薬有効量で投与することを含んでなる、増殖性疾患、具体的には腫瘍もしくは癌等の過剰増殖性疾患の治療のための方法である。
【0112】
具体的には、本発明の主題は、(i)プロドラッグ変換酵素をコードする、少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなる本発明の組換え腫瘍退縮ウイルス、本発明のウイルスゲノム、本発明のウイルスアンチゲノム、及び/又は本発明のDNA分子、及び(ii)増殖性疾患の治療に適するプロドラッグであって、(i)のプロドラッグ変換酵素により医薬活性化合物に変換えきるプロドラッグを、それを必要とする対象に、医薬有効量で投与することを含んでなる、増殖性疾患、具体的には腫瘍もしくは癌等の過剰増殖性疾患の治療のための方法である。
【0113】
当該方法は、(i)及び(ii)の両方を含んでなる単一医薬組成物の投与を含んでもよく、あるいは、一方は成分(i)を含んでなり、他方は(ii)を含んでなる2つの異なる医薬組成物の投与を含んでもよい。
【0114】
プロテアーゼ
本発明の腫瘍退縮組換えRNAウイルスにおいて、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子は、プロテアーゼをコードしてもよい。
【0115】
したがって、本発明の主題は、活性成分として、本発明の組換え腫瘍退縮ウイルス、本発明のウイルスゲノム、本発明のウイルスアンチゲノム、及び/又は本発明のDNA分子と、任意に、医薬的に許容される担体、希釈剤及び/又はアジュバントと一緒に含んでなる医薬組成物であり、ここでウイルス、ウイルスゲノム、アンチゲノム及び/又はDNA分子は、プロテアーゼをコードするウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含んでなる。当該医薬組成物は、増殖性疾の治療及び/又は緩和に適してよい。
【0116】
本発明の腫瘍退縮組換えRNAウイルスが、プロテアーゼをコードする場合、本発明の腫瘍退縮組換えRNAウイルスは、プロテアーゼを通常発現しないか、もしくは十分に発現しないウイルス感染標的細胞(具体的には腫瘍細胞)においてプロテアーゼの選択的発現を引き起こしてよい。すなわち、それを必要とする対象の治療の間、当該プロテアーゼは、標的細胞において、標的ポリペプチドを不可逆的に切断し、それにより当該標的細胞の増殖及び/又は生育を阻害するか、又は当該標的細胞を死滅させてもよいが、非標的細胞、具体的には治療される対象の健常細胞においては、当該標的分子を基本的に切断しなくてよい。この戦略により、プロテアーゼ治療の不所望の副作用は低減される。
【0117】
当該プロテアーゼは配列特異的なプロテアーゼであることが好ましい。標的ポリペプチドを特異的に切断するプロテアーゼがより好ましい。当該プロテアーゼは、天然起源且つ任意の種由来であっても、設計されてもよい。既定の標的ポリペプチドの特異的切断に適するアミノ酸配列は、当該技術分野における通常の知識を有する者により、例えば一般に利用可能な配列データベースに基づいて決定できる。US2005−0175581及びUS2004−0072276は、既定の基質特異性を有する、設計タンパク質プロテアーゼの作製について記載している。これらの2つの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
プロテアーゼの標的分子は、以下の結合タンパク質の標的として記載される任意の標的分子であってもよい。
【0119】
本発明の別の主題は、活性成分として、プロテアーゼをコードするウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含んでなる、本発明の組換え腫瘍退縮ウイルス、本発明のウイルスゲノム、本発明のウイルスアンチゲノム、及び/又は本発明のDNA分子を、それを必要とする対象に、医薬有効量で投与することを含んでなる、増殖性疾患、具体的には腫瘍もしくは癌等の過剰増殖性疾患の治療のための方法である。
【0120】
本発明の導入遺伝子は、上記のプロドラッグ変換酵素、上記の結合分子、及び/又は上記のプロテアーゼの融合タンパク質をコードしてよい。プロドラッグ変換酵素及び結合分子の融合タンパク質、又はプロテアーゼ及び結合分子の融合タンパク質が特に好ましい。
【0121】
治療的応用
本発明は、活性成分として、本明細書に記載のウイルス、当該ウイルスのヌクレオカプシド、当該ウイルスのゲノム、又は当該ウイルスのゲノムもしくは/及びアンチゲノムをコードするDNA分子と、任意に、医薬的に許容される担体、希釈剤、及び/もしくはアジュバントを含んでなる医薬組成物に関する。
【0122】
当該医薬組成物は、溶液、懸濁物、凍結乾燥物として、又は任意の他の好適な状態で提供されてよい。活性成分に加え、当該組成物は、当該技術分野で既知の担体、緩衝剤、界面活性剤及び/又はアジュバントを含んでもよい。当該組成物は、例えば、経口、経鼻、経肺、又は局所もしくは静脈内注入により投与してよい。医薬組成物は、障害のタイプ、患者の症状及び体重、投与の経路等に依存して医薬有効量で投与される。好ましくは、1投与当たり、10〜1012ウイルス粒子、10〜1011、10〜1010、又は10〜10ウイルス粒子が投与される。腫瘍退縮療法は、任意に他の腫瘍療法、例えば外科、放射線及び/又は化学療法、例えばシクロホスファミド治療及び/又は異常好熱治療と組み合わせてもよい。
【0123】
さらに別の態様は、組換え腫瘍退縮ウイルスであって、ここで本明細書に記載の通り、当該ウイルスのヌクレオカプシド、当該ウイルスのゲノム、又は当該ウイルスのゲノムもしくは/及びアンチゲノムをコードするDNA分子を含んでなるウイルスと、任意に、医薬的に許容される担体、希釈剤、及び/もしくはアジュバントを、それを必要とする対象に投与に、医薬有効量投与することを含んでなる、増殖性疾患又は/及び癌の治療のための方法である。
【0124】
本発明によれば、組換え腫瘍退縮パラミクソウイルスは、感染細胞にそのまま残っても、分泌されてもよい、可溶性結合タンパク質、プロドラッグ変換酵素及び/又はプロテアーゼ、例えば、抗体、抗体断片、アンキリン反復タンパク質又は以下に特定される別の結合分子等であってよい。
【0125】
NDVの例として、本発明において株NTH68が選択され、これは患者の実験的臨床治療からの期待の持てるデータで、固有の腫瘍退縮特性を有するためである(Sinkovics及びHorvath、2000)。しかしながら、原理上は、マルチベーシック(multibasic)融合タンパク質切断部位を有する大部分のNDV株を、腫瘍の治療のための腫瘍退縮剤として使用してよい。当該逆遺伝子法は、全ての株に適用できる。
【0126】
本明細書に記載の結合タンパク質は、高い治療潜在力を有することが実証されている。
【0127】
上記の特性の治療結合タンパク質、プロドラッグ変換酵素及び/又はプロテアーゼを有する腫瘍退縮NDVの組み合わせは、追加の、又は2つの治療原理のさらに相乗的な効果を有することになる。腫瘍退縮自己複製ウイルスは、それが局所濃度が高いインサイチュで発現される場合、好ましい作用部位で、結合タンパク質ドラッグ、プロドラッグ変換酵素及び/又はプロテアーゼを標的とする。かかるタンパク質発現は、非常に選択的であることが期待され、且つそれぞれの作用様式を有する結合タンパク質、プロドラッグ変換酵素及び/又はプロテアーゼを、NDVの内因性の治療腫瘍退縮活性に追加することになる。使用されるウイルスの複製成分の性質及び腫瘍細胞中での選択的複製に基づくと、発現導入遺伝子[結合タンパク質、プロドラッグ変換酵素、及び/又はプロテアーゼ]の量は、大まかに腫瘍の質量に比例することが期待される。
【0128】
抗体分子又は抗体様分子又はその誘導体は、NDVシステムで使用される理想的な結合タンパク質である。抗体分子は、集中的な研究の対象であり、且つ非免原性で、非常に選択性が高く、且つ高親和性である抗体分子を作製する技術は、現在利用可能である。高濃度での抗体分子の局所発現は、非常に顕著な作用的もしくは拮抗的効果をもたらすか、又は標準的な療法と比較して低減した毒性プロファイルを有するエフェクター分子を効率的に標的とする。
【0129】
NDVシステムにおける抗体様分子の使用は、さらに優れていると期待される。これらの分子は、通常の抗体と比較して、非常に高い熱的安定性を有する選択的な高親和性の結合のために設計され、そして生み出される。アンキリンベースの抗体様分子の場合、分子の反復性質は、最適化したターゲティング、結合、阻害又は活性化のために、個別の標的について微調整することができる。異なる結合特異性を有する複数単位が1つのアンキリン反復分子へ加わる可能性を有効に利用して、異なる結合特性を1つのアンキリン分子内で組み合わせることもできる。このモジュール構造は、タンパク質−タンパク質相互作用の阻止において非常に重要となり得る抗体に、それが可能であるよりもより大きいタンパク質表面の多価結合をせることができる。当該モジュール構造は、アンキリン反復タンパク質のたった1度の単一の阻止で、複数のエフェクターを阻止するためにも有効に利用することができる。
【0130】
アンキリン反復分子は還元条件下でさえ非常に安定であるため、これらの分子は、細胞内でタンパク質を標的とするよう設計することができる(「細胞内抗体」)。
【0131】
インビボ標的同定のために、NDVを有する結合タンパク質コード配列のライブラリーの使用も可能である。
【0132】
結合分子又は/及びプロテアーゼの可能性ある標的は、標的細胞又は当該標的細胞を囲む細胞外マトリクスの全ての構造である可能性があり、これは記載の結合タンパク質又は/及びプロテアーゼにより認識でき、且つ病理学的表現型の特定のタイプと関連する。これらは、構造タンパク質、酵素、増殖因子、増殖因子受容体、インテグリン、転写因子等であってよい。
【0133】
本発明により、小分子(タンパク質−タンパク質相互作用、DNA−結合等)で薬物になり得る(drugable)標的でさえ、記述することができる。
【0134】
腫瘍退縮NDVと、本明細書に記載の治療結合タンパク質、プロドラッグ変換酵素及び/又はプロテアーゼとの組み合わせは、炎症性疾患、例えばリウマチ様関節炎の、及び癌の治療用として想定することができる。
【0135】
癌の治療のために、癌の進行に寄与する全ての経路を標的とすることができる。これらの経路は:増殖シグナルにおける自給自足、増殖阻害(抗増殖)シグナルへの非感受性、アポトーシスの回避、無限の複製潜在力、血管新生の持続、並びに組織侵襲及び転移である。これらの経路のまとめは、(Hanahan及びWeiberg、2000)に提供されている。腫瘍形成に関与し、且つ記載のアプローチで標的とすることができるシグナル伝達経路は、受容体チロシンキナーゼ経路(RTK)経路、RB及びp53経路、アポトーシス経路、APC経路、HIF1経路、GLI経路、P13K経路、及びSMAD経路である。これらのシグナル伝達経路の詳細な記載は、Vogelstein及びKinzler(2004)に提供されている。
【0136】
記載の結合タンパク質が干渉できるはずである他のシグナル伝達経路は、ras、Wnt及びHedgehog経路であり、例えば、タンパク質−タンパク質相互作用が阻止され得る。
【0137】
癌細胞における上記の経路において、有利に介在する結合タンパク質の例には、以下のものがある。
−自立活性増殖因子受容体の阻止タンパク質(例えば、EGFR、Met)
−増殖因子に対する競合的結合剤(アンタゴニスト)
−Rb−リン酸化の阻止タンパク質
−E2F依存性転写の阻止タンパク質
−p53の安定化剤
−抗アポトーシスタンパク質の拮抗結合剤(例えばBcl−2)
−サイクリンの拮抗結合剤
−Rasエフェクターの拮抗結合剤(例えば、GEF)
−低酸素誘導タンパク質の拮抗結合剤(例えば、HIF1α)
−二量化、DNA結合及び/もしくは補因子結合を干渉する転写因子の阻害剤(例えばMyc/Max)
−分化誘導剤
−smadシグナル伝達/転座の阻害剤
−細胞接着相互作用の阻害剤(カドヘリン、インテグリン、例えばα5β1、αvβ3)
−細胞外マトリクスを分解する酵素の阻害剤(例えば、MMP)
−血管新生誘導リガンドの拮抗結合剤(例えば、可溶性VEGF−R)
−有糸分裂キナーゼの阻害剤(例えば、Plk−1)
−血管新生誘導受容体への拮抗結合剤
−スキャホールド複合体形成の阻害剤(例えば、KSR/Ras)
−翻訳開始の阻害剤(例えば、eIF4E、EIF2a)
【0138】
本発明のプロテアーゼ、プロドラッグ変換酵素及び/又は当該プロドラッグ変換酵素により本発明のプロドラッグから得られる治療活性化合物も、上記の癌細胞経路に有利に介在することができる。
【0139】
組換えウイルス
組換えウイルスは、そのゲノムRNA配列において設計された規定の変更を有するウイルスを意味する。この変更は、1又は複数の挿入、欠失、部位特異的変異導入又はその組み合わせであってよい。
【0140】
本発明の組換えRNAウイルスは、天然の(非改変の)RNAウイルスの完全ゲノム配列、又はその誘導化配列を含んでよく、且つ少なくとも1つの組換え転写カセットを追加的に含んでもよい。少なくとも1つの転写カセットは、当該ウイルスゲノムの2つの遺伝子の間に位置してよい(転写単位)。この場合、当該少なくとも1つの転写カセットは、転写開始及び停止配列と隣接する。当該少なくとも1つの転写カセットはまた、ウイルスゲノムの転写単位内に位置してもよい。この場合、追加の転写開始及び停止配列は必要ない。
【0141】
当該少なくとも1つの転写カセットは、Pad又は/及びAscl等、特有であってもよい制限部位を含んでよい。2つの転写カセットが存在する場合、これらは異なる制限部位を含んでよい。
【0142】
本発明のRNAウイルスは、1又は2つの組換え転写カセットを含んでなることが好ましい。
【0143】
本発明の少なくとも1つの転写カセットに位置づけされた、本明細書に記載の結合タンパク質、プロドラッグ変換酵素、及び/又はプロテアーゼをコードしてよい、導入遺伝子がある。
【0144】
当該ウイルスゲノムの2つの遺伝子(転写単位)の各々の間の任意の遺伝子間領域は、少なくとも1つの組換え転写カセットの誘導に適する。1以上の組換え転写カセットが存在する場合、これらは同じであるか異なる遺伝子間領域に位置してよい。具体的には本発明のRNAウイルスが組換えニューキャッスル病ウイルスである場合、少なくとも1つの組換え転写カセットがウイルスFとHN遺伝子との間に位置することが好ましい。
【0145】
パラミクソウイルス科のゲノムのサイズの上限はわかっていない。したがって、本発明の組換えRNAウイルスに誘導される導入遺伝子の数及びサイズの上限はわかっていない。導入遺伝子(本明細書に記載される、トリサイトカインをコードする導入遺伝子、又はウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する少なくとも1つのさらなる導入遺伝子、又はその組み合わせ)は、独立に、約10kbまで、より好ましくは約5kbまで、最も好ましくは約2kbまでのサイズを有することが好ましい。
【0146】
本明細書に記載の導入遺伝子の発現(ウイルスRNAのmRNAへの転写、及びmRNAの翻訳等)において、転写開始及び停止配列等の発現制御配列と、翻訳制御配列が使用される。RNAウイルスの発現制御配列は、本発明の組換えRNAウイルスがそれに基づくRNAウイルスであってもよいRNAウイルスを使用できる。具体的には、転写開始及び停止配列は、RNAウイルスから得てよい。発現制御配列はまた、標的細胞、具体的には、翻訳及び/又はタンパク質輸送を制御する配列から得てもよい。
【0147】
パラミクソウイルス科の複製メカニズムのために、ゲノム又はアンチゲノムRNAは、通常ネイキッドRNAとみられない。ゲノム及びアンチゲノムRNAは、核タンパク質の集積である。したがって、本発明のさらなる主題は、本発明の組換え腫瘍退縮RNAウイルスのヌクレオカプシドである。当該ヌクレオカプシドは、ゲノムをコードするRNA分子又は/及びRNAウイルスのアンチゲノム及びヌクレオカプシドタンパク質を含んでなる。当該ヌクレオカプシドはまた、ポリメラーゼタンパク質L又は/及びホスホプロテインPを含んでもよい。
【0148】
本発明の主題はまた、本明細書に記載の本発明のゲノムのアンチゲノムである。
【0149】
本発明のさらなる態様は、本発明のゲノム又は/及び組換え腫瘍退縮RNAウイルスのアンチゲノムをコードするDNA分子である。DNA分子は、プラスミドでもよい。本発明のDNA分子は、本発明のRNAウイルスを遺伝的に設計するために使用できる。さらに、当該DNA分子は、本発明のRNAウイルスを作製するために使用してもよい。したがって、当該DNA分子は、転写制御配列、例えば、原核生物又は真核生物の転写制御配列と、作動的に連結してもよい。
【0150】
本発明の別の態様は、本発明の組み換え腫瘍退縮ウイルス、具体的には本発明の組換え腫瘍退縮NDVのゲノム及び/又はアンチゲノムをコードするDNA分子から発現される、組換え腫瘍退縮RNAウイルスを作製するための方法である。
【0151】
本発明のさらなる態様は、本発明の組換え腫瘍退縮ウイルス、本発明のウイルスゲノム、本発明のウイルスアンチゲノム、及び/又は本発明のDNA分子を含んでなる細胞である。当該細胞は、原核生物細胞又は真核生物細胞であってよい。当該細胞は、細胞系列、具体的には哺乳類細胞系列、より具体的にはヒト又はマウス細胞系列であってよい。当該細胞は、本発明のRNAを作製するために本発明の方法において使用してよい。DNA分子を転写するための好適なシステムは、当該技術分野の通常の技能を有する者に既知であり、例えばE.coli等の原核生物システム又はHeLaもしくはCHO等の真核生物システムがある。
【0152】
さらなる別の態様は、パラミクソウイルス科の遺伝子の完全セット又はパラミクソウイルス科の遺伝子のセットを含んでなる、腫瘍退縮RNAウイルス、そのゲノムもしくはアンチゲノム、又はDNA分子であり、ここで、少なくとも1つの遺伝子もしくは遺伝子間領域は、遺伝的に改変されており、且つ本明細書に記載の少なくとも1つの組換え転写カセットをさらに含んでなる。かかるウイルス、ゲノムもしくはアンチゲノム、又はDNA分子は、癌の医薬の製造及び/又は治療のために使用されてよい。かかるRNAウイルス、ゲノム、アンチゲノム、又はDNA分子は、転写カセットに組換え配列を誘導するために、遺伝子設計法による、組換えパラミクソウイルス科、具体的には組換えニューキャッスル病ウイルスに適する。この目的によれば、少なくとも1つの転写カセットは、制限部位を含んでよい。1以上の転写カセットが存在する場合、転写カセットの特有の制限部位は異なってよい。一例は、WO2006/050984の図1のプラスミドph1MTH68 Asc Pacであり、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。別の例は、WO2006/050984の図2に開示されるpf1MTH68マウスIgG EDBであり、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
治療関連
癌又は/及び腫瘍の治療には、腫瘍増殖の阻害、好ましくは感染によるタイムギャップにおける、腫瘍細胞の死滅又は増殖の阻止がある。NDVは、腫瘍細胞において選択的に複製する。
【0154】
本発明のウイルスは、増殖性疾患、具体的には過剰増殖性疾患の治療に使用することができる。好ましくは、新生物(neoplasm)を記載のウイルスで治療することができ、好ましくは肺、結腸、前立腺、乳房、及びの脳癌からなる群から選択される癌を治療することができる。
【0155】
より好ましくは、固形腫瘍を治療できる。
より好ましくは、低増殖率の腫瘍を治療できる。低増殖率の腫瘍の例は、前立腺癌又は乳癌である。
より好ましくは、脳腫瘍を治療できる。
より好ましくは、グリア芽腫を治療できる。
哺乳類には、人間、マウス、及びラットが含まれる。
【0156】
組換えRNAウイルスの製造
本発明の組換えRNAウイルス、具体的には組換えNDVは、Romer−Oberdorfer等(1999)に記載の通り構築できる。新規な核酸配列の構築物は、以下の開始プラスミドである、pCITE P、pCITE N、pCITE L、pX8δT fINDVを使用する真核性細胞内のRNAに翻訳されるcDNAの水準である。
【0157】
NDVは、ニューキャッスル病ウイルスの任意の株、より好ましくはその野生型状態で腫瘍退縮性の株であってよい。
【0158】
プラスミドpX8δTは、EP0 702 085(Conzelmann KK)に記載されている。
【0159】
本発明の組換えRNAウイルス、具体的には組換えNDVは、T7ポリメラーゼ発現細胞、例えば、BHK T7細胞から最初に、又はT7ポリメラーゼ形質転換CHO細胞と同時に回収できる。それは、293、CEC32、HT29又はA431当の細胞において増幅できる。それはまた、孵化ニワトリ卵の尿膜腔液において増殖することができる。
【0160】
組換えRNA、具体的には組換えNDVは、以下の条件で保存される。組換えRNAウイルス、具体的にはNDVは、5%D−マンニトール/1%(w/v)L−リジン/pH8.0又は標準的細胞培養培地において安定である。−20℃で1月まで。−80℃で10年まで。
【0161】
本発明の組換えRNAウイルスは、野生型ウイルス又は組換えウイルスを出発物質として使用して製造してもよい。核酸、例えばDNA、例えば野生型又は組換え配列等を使用してもよい。例えば、WO2006/50984に記載されるような組換えRNAウイルス及び/又はDNA分子を出発物質として使用してよい。一例は、WO2006/050984の図1のプラスミドph1MTH68 Asc Pacであり、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。別の例は、WO2006/050984の図2に開示されるpf1MTH68マウスIgG EDBであり、このWO2006/050984の開示は参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、組換え腫瘍退縮RNAウイルス及びその構築物に関するWO2006/050984の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0162】
医薬としての組換えNDVの使用
本発明の組換えRNAウイルス、具体的には本発明による精製組換えNDVは、薬学的効果を示すために、医薬として使用できる。
【0163】
組換えRNAウイルス、具体的には本発明のNDV、本発明のウイルスゲノム、アンチゲノム、ヌクレオカプシド及び/又はDNA分子は、特に癌、腫瘍又は/及び増殖性疾患の予防、緩和、又は/及び治療のための、特に肺癌、前立腺癌、脳癌、結腸癌、乳癌等の癌の予防、緩和又は/及び治療のための、医薬の製造のために使用できる。
【0164】
本発明の医薬組成物は、任意に、医薬的に許容される担体及び希釈剤を含んでなる。かかる担体及び希釈剤は、Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.Mack Publishing Company,Easton Pennsylvania(1980)に記載がある。医薬組成物で使用され、又は/及び本発明の治療方法に適用されるウイルス力価は、治療の適応症に依存して、用量当たり、10〜1012pfuの範囲、10〜1011pfuの範囲、107〜1010pfuの範囲、又は10〜10pfuの範囲でよい。
【0165】
本発明の医薬組成物は、癌等の増殖性疾患の予防又は/及び治療のために使用されてよい。
【0166】
本発明の医薬組成物は、本発明の組換え腫瘍退縮RNAウイルス、具体的には本発明のNDVのエマルションを含んでよく、そして吸入、静脈注入、皮下注入、腹腔内注入、又は腫瘍内注入により投与してよい。
【0167】
腫瘍増殖性疾患、具体的には癌の予防又は/及び治療のための本発明の方法において、医薬有効量は、当該疾患を予防、緩和又は/及び抑制する、本発明の腫瘍退縮RNAウイルス、具体的には本発明のNDV、本発明のウイルスゲノム、又は本発明のDNA分子の力価である。
【0168】
治療効果に対して、許容される用量は、例えば、構築物、患者、投与方法、及び癌のタイプに依存してよい。
【0169】
対象(患者)は、哺乳類、より好ましくはヒト患者であることが好ましい。
【0170】
本発明は、以下の図及び実施例によりさらに例示される。
【実施例1】
【0171】
ニワトリサイトカインの発現をもたらすトリ誘導化導入遺伝子を有する組換えNDVの作製
NDVの腫瘍退縮株MTH68を、ウイルスRNAを得るために使用した。RT−PCRを使用し、cDNAの複数の断片を得て、そしてマルチステップクローニング手法で、これらは、プラスミドpfIMTH68を生み出すベクターpX8δT(Schnell等、1994)にクローニングされた完全ゲノムcDNAへと組み立てられた。このベクターは、組換えウイルスをT7−ポリメラーゼ発現細胞系列からレスキュー(rescue)するために形質移入のために使用することができる。
【0172】
追加の転写カセットを、特有のSfiI制限部位内の、Fペプチド及びHNタンパク質をコードするゲノム間に、NDV MTH68(pfIMTH68)の完全長ゲノムプラスミドをクローニングした。2つのDNAオリゴヌクレオチドである、
Sfi fw(5’−aggccttaattaaccgacaacttaagaaaaaatacgggtagaacggcctgag−3'、配列番号1)及び
Sfi back(5’−aggccgttctacccgtattttttcttaagttgtcggttaattaaggcctctc−3’、配列番号2)
をアニーリングし、その後pfIMTH68のSfiI部位にライゲーションした。
【0173】
ChIFN−アルファ(NM 205427)及びChIFN−ベータ(NM 001024836)をコードする2つのDNA導入遺伝子は、PCRにより増幅した。ポリメラーゼ連鎖反応のテンプレートとして、Schultz等、1995及びSick等、1996に記載されるChIFN−アルファ及びChIFN−ベータ発現構築物を使用した。ChIFN−アルファの増幅のために、以下のプライマー対:
ChlFN−アルファ fw(5'−ccttaattaagccaccatggctgtgcctgcaagccc−3’、配列番号3)及び
ChlFN−アルファ−rev(5'−ccttaattaactaagtgcgcgtgttgcctgtg−3’、配列番号4)を使用し、そしてChIFN−ベータの増幅のために、以下の2つのプライマー
Pad ChIFN−ベータ fw(5’−ccttaattaacgcaccatgactgcaaaccatcagtctccagg−3’、配列番号5)及び
ChIFN−ベータ−rev(5’−ccttaattaatcactgggtgttgagacgtttggatg−3’、配列番号6)を使用した。
【0174】
2つのChIFN導入遺伝子の各々を、pgIMTH68PacのPad部位にそれぞれクローニングした。当該ゲノムの総長さを、ウイルスゲノムの長さについて「rule of 6」に従い、6の倍数に調整した。ChIFN−ベータインサートの配列同一性を、ヌクレオチド配列決定により確認した。ChIFN−アルファインサートにおいて、配列NM 205427と比較して、位置89に、GからAへのヌクレオチド変換が1つ検出された。組換えウイルスは、標準的ウイルスレスキュー法により、ChIFN−アルファ(図1)又はCHIFN−ベータ(図2)の遺伝子を含む完全長ウイルスゲノムプラスミドで形質移入されたT7発現細胞からレスキューした。得られたChIFN−アルファ発現ウイルスをNDV−CHIFN−アルファとし、ChIFN−ベータ発現ウイルスをNDV−CHIFN−ベータとした。当該ウイルスを組織培養又はニワトリ卵の尿膜腔のいずれかにおいて培養し、高力価とした。
【実施例2】
【0175】
組換えNDVから発現されたChIFN−アルファ及びChIFN−ベータは生物活性である。
【0176】
原料と方法:
CEC−32細胞(トリウズラ細胞系列)、又はHela細胞(頸部癌細胞系列)を、1×10細胞/ウェルで6つのプレートに播種した。接着性になった後、細胞を、GFP−発現コントロールウイルスNDV−GFP、NDV−ChIFN−アルファ、NDV−ChIFN−ベータ又はMOCKで、0.01のMOIで感染させた。64時間後、上清を回収し、感染ウイルス粒子をUV照射により不活性化させた。
【0177】
ウイルス感染細胞の懸濁物中のNDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータの生物活性を実証するため、ニワトリインターフェロン特異的バイオアッセイを使用した(Schwarz等、JICR、2005)。当該アッセイは、IFN感受性ニワトリMxプロモーターにより調整されるルシフェラーゼ遺伝子を保持する安定な形質移入ウズラ細胞系列CEC−511に基づく。EC−511指標細胞である場合、当該ルシフェラーゼ活性は、ChIFN−アルファ又はChIFN−ベータでインキュベートされた場所で誘導される。このアッセイを行うために、15.000のCEC−511細胞を96ウェルプレートに播種した。播種から24時間後、当該細胞を、ウイルス感染Hela又はCEC032細胞のUV処理した上清で処理した。細胞を75μlの各上清の1:100希釈物と共にインキュベートした。ポジティブコントロールとして、細胞を、ChIFN−アルファ又はChIFN−ベータ(Sick等、1996)の発現プラスミドで形質移入した293T細胞からの上清の1:100希釈物と共に、又は培地だけでインキュベートした。6時間のインキュベーション時間後、Stedy−Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイ(Promega)を、製造業者により提供されるプロトコルに従い行った。平均値を決定するため、各データポイントを三重に測定した。
【0178】
結果
インキュベーション後64時間の、NDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータを感染させたCEC−32及びHela細胞の上清は、感染細胞におけるChIFN−アルファ及びChIFN−ベータのウイルス媒介発現を示すCEC−511細胞での強力なルシフェラーゼ誘導活性を有する。対照的に、MOCK感染細胞、又はGFPを発現するコントロールウイルスで感染したものの上清は、CEC−511指標細胞系列に対するルシフェラーゼ誘導活性を示さない。組換えChIFN−アルファ及びChIFN−ベータを含んでなる上清の1:1000希釈物も、ChIFN依存性Mxプロモーター誘導活性を示す。
【0179】
表1:組換えNDV発現CHIFN−アルファ又はCHIFN−ベータに感染したCEC−32及びHela細胞の上清におけるインターフェロン活性。IFN応答は、Mxプロモーター制御ルシフェラーゼレポーター遺伝子を保持する指標細胞において測定する。測定値は、相対的ルシフェラーゼ数で提供される。
【0180】
【表1】

【実施例3】
【0181】
組換えNDV発現ChIFN−アルファ又はChIFN−ベータに感染した腫瘍細胞でないトリ細胞は、ウイルス溶解から保護される。
【0182】
原料と方法
3a)CEC−32細胞(トリウズラ細胞系列)、又はHela細胞(頸部癌細胞系列)を、1×10細胞/ウェルで6つのプレートに播種した。接着性になった後、細胞を、GFP−発現コントロールウイルスNDV−GFP、NDV−ChIFN−アルファ、NDV−ChIFN−ベータ又はMOCKで、0.01のMOIに感染させた。48時間後、細胞を4%のホルムアルデヒド溶液で固定化し、そしてGiemsa溶液で染色した。その後、Zeiss Axiophot画像化システムを用いてフォトドキュメンテーションを行った。
【0183】
3b)CEC−32細胞(トリウズラ細胞系列)、又はHela細胞(頸部癌細胞系列)を、1×10細胞/ウェルで6つのプレートに播種した。接着性になった後、細胞を、GFP−発現コントロールウイルスNDV−GFP、NDV−ChIFN−アルファ、NDV−ChIFN−ベータ又はMOCK(=非感染)で、0.01のMOIに感染させた。48時間のインキュベーション時間後、CellTiter−Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイ(Promega)を、製造業者により提供されるプロトコルに従い行い、細胞バイアビリティを測定した。平均値を決定するため、各データポイントを6つの独立した値から作製した。
【0184】
結果:
図3a)48時間後の、トリCEC−32細胞をGFP発現NDV(NDV−GFP)により溶解する。対照的に、ChIFN−アルファ発現ウイルスに感染した細胞は、溶解から保護される。NDV−ChIFN−アルファ感染CEC−32単分子膜は、25〜50%が無損傷である。より強い保護は、NDV発現ChIFN−ベータで観察される。48時間後、CEC−32単分子膜のほぼ90〜100%は無損傷であり、且つウイルス溶解から保護される。この単分子膜の密度は、CEC−32細胞感染MOCKの単分子膜と同程度である。
【0185】
腫瘍形成Hela細胞系列上の3つのウイルスによる感染は、ウイルスNDV−GFP、NDV−ChIFN−アルファ、及びNDV−CHIFN−ベータの間で同程度の腫瘍退縮活性を示す。48時間後、NDV−ChIFN−アルファ、及びNDV−CHIFN−ベータ感染Hela細胞の単分子膜は、ほぼ完全に破壊される。MOCK感染Hela細胞の細胞単分子膜は、無損傷であり、これはGiemsa染色細胞の青色により示される。
【0186】
図3b)第二の実験において、細胞バイアビリティを、ChIFN−発現NDV感染後、48時間で定量した。NDV−GFP感染鳥CEC−32細胞は、3%の残存細胞バイアビリティしか示さなかった。NDV−ChIFB−アルファ感染CEC−32細胞においては、残存細胞の26%が無損傷である。CEC−32ウズラ細胞系列のNDV−ChIFN−ベータ感染後48時間では、細胞の94%が生存可能であり、且つウイルス溶解に対して保護される。
【0187】
対照的に、腫瘍形成Hela細胞系列上の3つのウイルスNDV−GFP、NDV−ChIFN−アルファ、又はNDV−CHIFN−ベータでの感染後には、細胞破壊におけるほとんどどの違いも観察可能である。48時間後、生存可能細胞の値は、3つの全てのウイルスについて、3%〜9%の間であり、ほとんど完全な腫瘍細胞破壊を示す。
【実施例4】
【0188】
組換えNDV発現ChIFN−アルファ又はChIFN−ベータによる、初代細胞ではない腫瘍細胞の選択的腫瘍退縮
【0189】
原料と方法:
5000個の初代線維芽細胞又は3000個のHela細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに播種した。播種後16時間で、NDV−GFP(NDV−GFP)、NDV−ChIFN−アルファ(NDV−ChIFN−アルファ)、及びNDV−CHIFN−ベータ(NDV−CHIFN−ベータ)のウイルス希釈物を調製した。線維芽細胞を、指示したウイルス濃度で感染させた。ネガティブコントロールとして、線維芽細胞をMOCK感染させた。1時間後、接種物を除去し、細胞をPBSで洗浄し、そして200μl細胞培養培地で、4日間、細胞培養インキュベータでインキュベートした。その後、残存する細胞を4%のホルムアルデヒド溶液で固定化し、クリスタルバイオレットで染色した。当該染色剤を10%の氷酢酸で可溶化し、各ウェルの吸収を595nmで、ELISA Readerにおいて測定した。
【0190】
結果:
感染から4日後、3つのウイルスNDV−GFP、NDV−ChIFN−アルファ、及びNDV−CHIFN−ベータを、MOI0.001〜MOI0.1までのMOIを用いて、感染させた初代線維芽細胞は、増殖阻害を示さない(図4)。増殖阻害の最初の兆候は、感染のために1細胞当たり1〜10ウイルス粒子が用いられる場合のMOIでしか観察されない。対照的に、MOI0.001とMOI10との間のMOIで感染させた腫瘍形成Hela細胞は、非常に強力な増殖阻害を示す。この結果は、組換えNDVは、特にMOI0.1MOI0.001のような低MOIで非常に良好な治療域を有し、初代細胞における溶解効果はほぼ測定されず、且つ非常に強力な阻害効果が、腫瘍形成Hela細胞で測定される。腫瘍細胞と初代細胞における死滅(kill)曲線の形状は、コントロールウイルスNDV−GFPと、ChIFN−発現ウイルスであるNDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータとの間で違いは観察されない。
【実施例5】
【0191】
組換えNDV発現ChIFN−アルファ又はChIFN−ベータ感染したニワトリ胚の延長した生存期間
【0192】
原料と方法:
15個の11日齢孵化ニワトリ卵の群を、NDV−ChIFN−アルファ、NDV−ChIFN−ベータ、NDV−GFP、又は非病原性NDV株LaSotaにそれぞれ感染させた。感染物質として、滅菌PBSで希釈した尿膜腔液中の卵増殖(egg−grown)ウイルスを使用した。総容量200μl中、4000PFUの感染用量を適用した。接種物を尿膜腔に接種した。感染後、当該卵を37℃、50%〜60%の湿度で、卵ブリーダー(breader)においてインキュベートした。卵を、指示した時点(図5)で、1日に2回ろうそくにかざし(candle)、そして胚を、生命力の兆候について確認した。このアッセイは、感染胚の生存期間を比較することにより、異なるNDVの病原性を比較できる。当該方法は、R.P.Hanson(1980)に記載される決定法、「Mean Death Time of the Minimum Lethal Dose(MDT/MLD)」に基づく。当該プロトコルは、致死用量より高い濃度での既定ウイルス用量感染の代わりに、ウイルスストックの非連続希釈を卵に接種する点を修正した。倫理的理由から、このアッセイ修正法は、試験のために使用する胚の数を低減した。MDTは、以下の式によって決定される。
MDT=((X時間での非死亡)×(X時間)+(Y時間での非死亡)×(Y時間)等)/総死亡数
【0193】
結果:
NDV−ChIFN−アルファ及びNDV−ChIFN−ベータ感染ニワトリ胚の生存は、NDV−GFP感染胚との比較で増加する。NDV−GFP感染孵化卵は、24時間と62時間との間で生命力の兆候を失い、50時間のMDT(平均死亡時間)となっている。NDV−ChIFN−ベータ感染胚は、最大96時間まで生存しており、計算されたMDは69時間である。74時間のMDTと同程度の生存期間は、NDV−ChIFN−ベータ感染胚で測定される。NDV−ChIFN−ベータ感染胚の大部分は、48時間と6時間の間で死亡している。当該アッセイの感受性は、非病原性又はレントジェニック株LaSotaの利用により示される。NDV LaSota株で接種した孵化卵でさえ、62時間〜115時間の間で死亡し、そのMDTは85時間と計算される。この実験は、亜病原性NDV MTH68のMDTがレントジェニックNDV株へとシフトすることを示す。
【0194】
【表2】

【0195】
【表3】

【0196】
【表4】

【0197】
【表5】

【0198】
【表6】

【0199】
【表7】

【0200】
【表8】

【0201】
【表9】

【0202】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリサイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなり、速現性(velogenic)又は亜病原性(mesogenic)腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルスから得られる、組換え腫瘍退縮RNAニューキャッスル病ウイルス。
【請求項2】
ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する、少なくとも1つのさらなる導入遺伝子を含んでなる、請求項1に記載のウイルス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのさらなる導入遺伝子が、宿主に対して部分的な同種異系又は同系である、請求項2に記載のウイルス。
【請求項4】
前記ウイルスの病原性がトリ種で低減される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項5】
前記ウイルスの病原性が、前記組換えウイルスが得られるウイルスに対して、トリ種で低減される、請求項4に記載のウイルス。
【請求項6】
前記トリ種が家禽類から選択される、請求項4又は5に記載のウイルス。
【請求項7】
前記トリ種がニワトリである、請求項4〜6のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項8】
トリ病原体、具体的には家禽類の病原体、より具体的にはニワトリの病原体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項9】
亜病原性株MTH68から得られる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項10】
前記少なくとも1つのさらなる導入遺伝子が、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有する結合タンパク質をコードする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項11】
前記結合タンパク質が、以下の、天然リガンド、遺伝子改変リガンド、天然受容体の組換え可溶性ドメイン及びその改変バージョン、ペプチドリガンド、ポリペプチドリガンド、抗体分子及びその断片及び誘導体、並びにアンキリン反復タンパク質及びその断片及び誘導体のような抗体様分子、からなる群から選択される、請求項10に記載のウイルス。
【請求項12】
前記結合タンパク質が、哺乳類、例えばヒト、マウス又は近縁起源のもの、又はキメラタンパク質である、請求項10又は11に記載のウイルス。
【請求項13】
前記結合タンパク質が、単量体、二量体、三量体、四量体、又は多量体タンパク質である、請求項10〜12のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項14】
前記結合タンパク質が、単一特異的、二重特異的、又は多重特異的である、請求項10〜13のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項15】
前記結合タンパク質が、少なくとも1つの結合ドメイン及び少なくとも1つの異種ドメインを含んでなる融合タンパク質である、請求項10〜14のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項16】
前記結合タンパク質が、ヒトRNAse(シュードモナス外毒素、ジフテリア毒)等の毒を含んでなる融合タンパク質、又はベーターグルクロニダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ベータ−ラクタマーゼ等の酵素を含んでなる融合タンパク質、又はIL−2、IL−12、TNF−アルファ、IFN−ベータもしくはFM−CSF等のサイトカイン活性を有する免疫刺激タンパク質を含んでなる融合タンパク質である、請求項15に記載のウイルス。
【請求項17】
前記結合タンパク質が、自律活性増殖因子受容体の阻止タンパク質(例えば、EGFR、Met)、増殖因子への競合結合剤(アンタゴニスト)、Rb−リン酸化の阻止タンパク質、E2F依存性転写の阻止タンパク質;p53の安定化剤;抗アポトーシスタンパク質の拮抗結合剤(例えばBcl−2);サイクリンの拮抗結合剤;Rasエフェクターの拮抗結合剤(例えば、GEF);低酸素誘導タンパク質の拮抗結合剤(例えば、HIF1α);二量化、DNA結合及び/もしくは補因子結合を干渉する転写因子の阻害剤(例えばMyc/Max);分化誘導剤;smadシグナル伝達/転座の阻害剤;細胞接着相互作用の阻害剤(カドヘリン、インテグリン、例えばα5β1、αvβ3);細胞外マトリクスを分解する酵素の阻害剤(例えば、MMP);血管新生誘導リガンドの拮抗結合剤(例えば、可溶性VEGF−R);血管新生誘導受容体への拮抗結合剤;スキャホールド複合体形成の阻害剤(例えば、KSR/Ras);翻訳開始の阻害剤(例えば、eIF4E、EIF2a);及び有糸分裂キナーゼの阻害剤(例えば、Plk−1)からなる群から選択される、請求項10〜16のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項18】
前記少なくとも1つのさらなる導入遺伝子が、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有するプロドラッグ変換酵素をコードする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項19】
前記少なくとも1つのさらなる導入遺伝子が、ウイルス感染腫瘍細胞により発現される場合に治療活性を有するプロテアーゼをコードする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項20】
トリサイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子が、ニワトリインターフェロンから選択される、請求項1〜19のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項21】
トリサイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子が、ニワトリI型インターフェロンから選択される、請求項20に記載のウイルス。
【請求項22】
前記病原性の低減が、細胞バイアビリティの増加により測定されるMOI0.01で、感染後約48時間での鳥細胞溶解を低減するウイルスの性能であり、それにより、当該細胞バイアビリティは、組換えウイルスが得られるウイルスに対して、生存細胞が少なくとも約25%〜約50%まで、より好ましくは生存細胞が少なくとも約50%〜約75%まで、及び最も好ましくは生存細胞が少なくとも約75%〜約100%まで増加する、請求項5〜21のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項23】
前記病原性の低減が、平均死亡時間(MDT)決定法により測定される、11日齢孵化卵におけるウイルス感染ニワトリ胚の生存期間の延長であり、これにより、組換えウイルスが得られるウイルスに対して、MDTが少なくとも約15時間〜約20時間まで、より好ましくは少なくとも約20時間〜約30時間まで、及び最も好ましくは30時間超まで延長される、請求項5〜21のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項24】
ヒト腫瘍細胞への前記ウイルスの腫瘍退縮活性が、基本的に低減しない、請求項1〜23のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項25】
感染後48時間後に、細胞バイアビリティにより測定される、前記ヒト腫瘍細胞へのウイルスの腫瘍退縮活性が、組換えウイルスが得られるウイルスと比較して、50%超は低減しない、そしてより好ましくは、組換えウイルスが得られるウイルスに対し基本的に低減しない、請求項1〜23のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の組換え腫瘍退縮RNAウイルスのヌクレオカプシド。
【請求項27】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の組換え腫瘍退縮RNAウイルスのゲノム。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の組換え腫瘍退縮RNAウイルスのゲノム及び/又はアンチゲノムをコードするDNA分子。
【請求項29】
転写制御配列に作動的に連結される、請求項27に記載のDNA分子。
【請求項30】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の組換え腫瘍退縮ウイルス、請求項27に記載のウイルスゲノム、又は/及び請求項28もしくは29に記載のDNA分子、を含んでなる細胞。
【請求項31】
活性成分として、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組換え腫瘍退縮ウイルス、請求項27に記載のウイルスゲノム、又は/及び請求項28もしくは29に記載のDNA分子を、任意に、医薬的に許容される担体、希釈剤及び/又はアジュバントと一緒に含んでなる、医薬組成物。
【請求項32】
前記少なくとも1つのさらなる導入遺伝子によりコードされるプロドラッグ変換酵素により、治療活性化合物に変換できるプロドラッグをさらに含んでなる、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の組換え腫瘍退縮ウイルス、請求項27に記載のウイルスゲノム、又は/及び請求項28もしくは29に記載のDNA分子を、それを必要とする対象に、医薬有効量で投与することを含んでなる、増殖性疾患の治療のための方法。
【請求項34】
(i)プロドラッグ変換酵素をコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなる、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組換え腫瘍退縮ウイルス、請求項27に記載のウイルスゲノム、又は/及び請求項28もしくは29に記載のDNA分子、及び
(ii)前記ウイルスと組み合わせて増殖性疾患の治療に適するプロドラッグであって、(i)のプロドラッグ変換酵素により医薬活性化合物に変換できる、プロドラッグ、
を、それを必要とする対象に、医薬有効量で投与することを含んでなる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象がヒト患者である、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
サイトカインをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含んでなる核酸を含んでなる、家禽類のために弱毒化された組換え腫瘍退縮RNAウイルス。
【請求項37】
ニワトリのために弱毒化される、請求項36に記載のウイルス。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2011−510638(P2011−510638A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544616(P2010−544616)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000308
【国際公開番号】WO2009/095167
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】