説明

トリチウム測定装置

【課題】トリチウムの測定を連続して行うことができるトリチウム測定装置を提供する。
【解決手段】トリチウムから放射されるβ線を検出するためのシンチレータ5を内部に有する測定室部4と、水分を含有する被測定気体を外部から導入して水分を膨張させて霧粒子として生成し測定室部4内のシンチレータ5上に霧粒子を吹き付けてシンチレータ5上に残存する物質を除去するとともにシンチレータ5上に霧粒子にて水膜を形成する霧生成器20と、測定室部4内の排気を行う排気管10と、シンチレータ5の信号を入力する複数の光電子倍増管7と、各光電子倍増管7にそれぞれ接続された前置増幅器8と、各前置増幅器8に接続されたトリチウムの測定処理を行う測定処理部9とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所、加速器利用施設、核燃料再処理施設等から放出される空気中の水分に含有されるトリチウム濃度を自動で監視するトリチウム測定装置に関し、特にトリチウムの測定を連続して実施することができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来のトリチウム測定装置は、トリチウムサンプラと測定装置とを融合させ、トリチウム測定の自動化を図ったものとして提供している。従来の当該装置は、トリチウム採取方法が水蒸気冷却・凝縮方式であり、水の形態としてトリチウムをいったん採取し、その後にプラスチツクシンチレータまたは液体シンチレータを用いて測定を行っている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−016980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトリチウム測定装置はトリチウム採取方法として水蒸気冷却などしてサンプル水を生成して行っているため、バッチ処理にて測定する方法の場合には、トリチウムを含む気体のトリチウムの測定を連続して実施することができないという問題点があった。また、サンプル水を生成しながら連続にて測定する場合には、トリチウムから放射されるエネルギーの小さいβ線を測定するためサンプル水を水膜状として、サンプル水中の放射線の吸収を抑制している。このため、シンチレータに近接並行して配置された水膜を形成する冷却板に接する側の箇所と接さない側の箇所とでサンプル水の入れ替わりに差が生じ、古いサンプル水が測定に影響を与えるという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、トリチウムの測定を連続して行うことができるトリチウム測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、トリチウムから放射されるβ線を検出するためのシンチレータを内部に有する測定室部と、水分を含有する被測定気体を外部から導入して水分を膨張させて霧粒子として生成し測定室部内のシンチレータ上に霧粒子を吹き付けてシンチレータ上に残存する物質を除去するとともにシンチレータ上に霧粒子にて水膜を形成する霧生成器と、測定室部内の排気を行う排気管と、シンチレータの信号を入力する複数の光電子倍増管と、各光電子倍増管にそれぞれ接続された前置増幅器と、各前置増幅器に接続されたトリチウムの測定処理を行う測定処理部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明のトリチウム測定装置は、トリチウムから放射されるβ線を検出するためのシンチレータを内部に有する測定室部と、水分を含有する被測定気体を外部から導入して水分を膨張させて霧粒子として生成し測定室部内のシンチレータ上に霧粒子を吹き付けてシンチレータ上に残存する物質を除去するとともにシンチレータ上に霧粒子にて水膜を形成する霧生成器と、測定室部内の排気を行う排気管と、シンチレータの信号を入力する複数の光電子倍増管と、各光電子倍増管にそれぞれ接続された前置増幅器と、各前置増幅器に接続されたトリチウムの測定処理を行う測定処理部とを備えたので、シンチレータ上の水膜は霧粒子を吹き付けて形成されているため、シンチレータに霧粒子を吹き付ける際に、シンチレータ上に古い水膜が存在しても吹き飛ばされて常に新しい水膜が形成されることと成るため、応答性に優れ、かつ、連続してトリチウムが測定可能と成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の実施の形態1におけるトリチウム測定装置の構成を示す図、図2は図1に示したトリチウム測定装置の詳細を説明するための部分断面図である。図において、トリチウムから放射されるβ線を検出するためのシンチレータ5を内部に有する測定室部4と、水分を含有する被測定気体、例えば原子力発電所、加速器利用施設、核燃料再処理施設等から放出される空気を導入するための導入管1と、導入管1に接続され被測定気体中の水分を膨張させて霧粒子として生成し測定室部4内のシンチレータ5上に霧粒子を吹き付けて、シンチレータ5上に残存する物質を除去するとともにシンチレータ5上に霧粒子にて水膜を形成する霧生成器20と、測定室部4内の排気を行う排気管10と、排気を効率よく行うために排気管10に設置された排気ポンプ11と、シンチレータ5が発光した光を集光する集光部6と、集光部6に集光されたシンチレータ5の信号を入力して電流パルス信号に変換する複数の光電子倍増管7と、各光電子倍増管7にそれぞれ接続され光電子増倍管7の信号を電圧パルス信号に変換する前置増幅器8と、各前置増幅器8に接続されトリチウムの測定処理を行う測定処理部9とを備えている。
【0009】
ここでは、光電子増倍管7は2個、集光部6に取り付けられており、前置増幅器8も独立に2個設置している。よって、2つの独立した光の測定系の信号が測定処理部9に入力される構成にて形成されている。尚、ここでは2つの独立した光の測定系にて測定する例を示しているがこれに限られることはなく複数であればよいことは言うまでもない。また、霧生成器20は、被測定気体を圧縮するコンプレッサ2と、一端をコンプレッサ2に接続され他端を測定室部4に接続され、コンプレッサ2にて圧縮された被測定気体をシンチレータ5上へ膨張噴出させる細管3とにて成る。また、この細管3の他端の測定室部4の接続部分の開口形状は、測定室部4側へ開口径が漸次狭くなるノズル3aにて形成されその先端は、シンチレータ5の図2の紙面上において左側から中央部にかけて霧粒子が吹きかけるように形成されている。
【0010】
次に上記のように構成された実施の形態1のトリチウム測定装置の動作を説明する。まず、導入管1から水分を含有する被測定気体を導入する。そして、コンプレッサ2にてこの被測定気体を圧縮する。そして、この圧縮された被測定気体は細管3を介して測定室部4のシンチレータ5に供給される。その際細管3のノズル3aからシンチレータ5の図2の紙面上において左側から中央部にかけて霧粒子が吹きかけている。よって、細管3から測定室部4のシンチレータ5に供給される際には、圧縮された水分が急激に膨張して霧粒子と成り吹き付けられるため、シンチレータ5上に残存する物質としての古い水膜を除去するとともに、シンチレータ5上に霧粒子にて成る水膜が形成される。またこの際、排気管10では排気ポンプ11にて測定室部4内を排気しているため効率的に排気を行われている。尚、ここでは排気ポンプ11にて強制的に測定室部4の排気を排気管10から行う例を示したが、これに限られることはなく、排気管10のみを備えていれば、導入管1側から被測定気体が測定室部4に導入されるため、その導入にともない被測定気体を測定室部4から自然に排気することが可能である。
【0011】
そして、この水膜に存在するトリチウムから放出されるβ線によりシンチレータ5が発光し、この光が集光部6にて集光される。しかしながらβ線のエネルギーは18keVと微弱なため、各光電子増倍管7ではこの信号を入力して電流パルス信号に変換して5桁から6桁増幅し、さらに、各前置増幅器8では電圧パルス信号に変換して測定処理部9に入力する。そして、測定処理部9では例えば、同時計数回路を備え計測系からのノイズによるパルス信号を除去するために2つの前置増幅器8から入力されるパルス信号の内同時に入力されるパルス信号のみを取り出して波形整形してパルス信号の数をカウントして測定している。このため、測定系のノイズによるパルス信号を誤って計数することがなくなり、ノイズによるバックグランドを減らすことができるので、S/N比を高くすることができ、結果的に検出器の感度が高くなる。
【0012】
上記のように構成された実施の形態1のトリチウム測定装置によれば、シンチレータ上の水膜は霧粒子を吹き付けて形成されているため、シンチレータに霧粒子を吹き付ける際に、シンチレータ上に物質としての古い水膜が存在しても吹き飛ばされて常に新しい水膜が形成されることと成るため、応答性に優れ、かつ、連続してトリチウムが測定可能と成る。また、微量の水分を効率よくシンチレータ上に水膜として形成することが可能と成り、トリチウム測定を効率よく行うことができる。また、従来では冷媒式冷却装置にてサンプル水を生成していたが、本願発明はこのような冷却装置が不要と成り小型化および軽量化が可能と成り、可搬式として利用することが可能と成る。
【0013】
また、霧生成器をコンプレッサおよび細管にて形成しているため、水分を膨張させて霧粒子として生成し測定室部内のシンチレータ上に霧粒子を吹き付けてシンチレータ上に残存する物質を除去するとともにシンチレータ上に霧粒子にて水膜を形成することが確実に行うことができ、かつ、簡便な構成にて達成することができる。また、細管の他端のノズルを測定室部側へ開口径が漸次狭くなるように形成しているため、シンチレータ上に霧粒子を吹き付けてシンチレータ上に残存する物質を除去することを確実行うことができるとともに、シンチレータ上に霧粒子にて水膜を確実に形成することができる。
【0014】
尚、上記実施の形態1においては、細管を一定の直線形状にて形成する例を示したが、これに限られることはなく、例えば図3に示すように細管30をコイル形状に形成してもよ。このように形成すれば、コンプレッサの圧縮により加熱された被測定気体を冷却することができ、測定の性能が向上する。この際、被測定気体中の水分の一部が水滴と成るが、被測定気体と共に細管30を移送され、細管30から吹き出される際に霧粒子にて吹き出されることと成るため、上記実施の形態1と同様にトリチウムを測定することが可能と成る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1のトリチウム測定装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示したトリチウム測定装置の詳細を示すための部分断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1の他のトリチウム測定装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
2 コンプレッサ、3,30 細管、3a ノズル、4 測定室部、
5 シンチレータ、7 光電子倍増管、8 前置増幅器、9 測定処理部、
10 排気管、20 霧生成器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリチウムから放射されるβ線を検出するためのシンチレータを内部に有する測定室部と、水分を含有する被測定気体を外部から導入して上記水分を膨張させて霧粒子として生成し上記測定室部内の上記シンチレータ上に上記霧粒子を吹き付けて上記シンチレータ上に残存する物質を除去するとともに上記シンチレータ上に上記霧粒子にて水膜を形成する霧生成器と、上記測定室部内の排気を行う排気管と、上記シンチレータの信号を入力する複数の光電子倍増管と、上記各光電子倍増管にそれぞれ接続された前置増幅器と、上記各前置増幅器に接続された上記トリチウムの測定処理を行う測定処理部とを備えたことを特徴とするトリチウム測定装置。
【請求項2】
上記霧生成器は、上記被測定気体を圧縮するコンプレッサと、一端を上記コンプレッサに接続され他端を上記測定室部に接続され上記コンプレッサにて圧縮された上記被測定気体を上記シンチレータ上へ膨張噴出させる細管とにて成ることを特徴とする請求項1に記載のトリチウム測定装置。
【請求項3】
上記細管は、コイル形状にて形成されていることを特徴とする請求項2に記載のトリチウム測定装置。
【請求項4】
上記細管の他端の上記測定室部の接続部分の開口形状は、上記測定室部側へ開口径が漸次狭くなるノズルにて形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のトリチウム測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−51634(P2008−51634A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227546(P2006−227546)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】