説明

トリメチオールプロパンオクタデカエトキシレートに基づくグリジルエーテルを含む熱硬化性組成物

(a)熱硬化性樹脂及び(b)少なくとも1種の強化剤を含み、前記少なくとも1種の強化剤がトリメチロールプロパンオクタデカエトキシレート(TMP−18EO)に基づくグリシジルエーテルである熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂用の改質剤として使用される、トリメチロールプロパンオクタデカエトキシレート(TMP−18EO)に基づくグリシジルエーテルとを含む熱硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリシジルエーテル(GE)は、主に反応性希釈剤として知られている、エポキシ樹脂用の改質剤である。GEは、紙用の湿潤紙力増強剤及びポリエステル繊維用の接着促進剤としてもよく知られている。ポリアルキレンオキサイドに基づくGE(GEs based on polyalkylenoxide)がエポキシ樹脂用の可撓性付与剤として有用なこと、及びアミン付加物の形態のGEが水性硬化剤配合物の有益な原料であることも知られている。
【0003】
公知のGEのほとんどは、主鎖にヘテロ原子を含まない芳香族又は脂肪族アルコールに基づくものである。ポリアルキレンオキサイド(PAO)の誘導体は、対応するグリコールであるポリアルキレングリコール(PAG)の形態で広範に使用されている。生成物の水への溶解度が限られるため、ポリプロピレングリコール(PPG)又はポリブチレングリコール(PBG)が好ましい。エピクロロヒドリン(ECH)のBF3エーテレート触媒添加と、それに続く水酸化ナトリウム水溶液による脱離の使用によって、ポリエチレングリコール(PEG)に基づく生成物を得ることは、生成物の水性媒体中への溶解度が高いために加工中にエマルジョンに関連する問題を引き起こすという理由から、又は単に収率の低下の故に、より困難である。
【0004】
PAGから得られるGEは全て二価である。これは、PAGが、一般により高い分子質量を有するため、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)又は1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(HDDGE)のような「古典的な」GEとは著しく異なり、硬化エポキシ系の網目密度(network density)を減少させることを意味する。
【0005】
一部の熱硬化性樹脂は、良好な靭性並びに良好な防湿性及び良好な加工性などの他の性質を有するものとして特徴付けられる。しかし、良好な靭性特性を示し、大規模製造が可能であり且つ著しい応力及び水分暴露下で高性能用途に使用できる熱硬化樹脂製品が、当業界では依然として必要とされている。
【0006】
例えばゴム、コアシェル粒子、熱可塑性ブロックポリマーなどの従来の強化剤のほとんどは、好適な強化メカニズムを開始するためには高分子量を有する。しかし、高分子量は、まだ硬化されていない熱硬化配合物の粘度に対して望ましくない影響を及ぼす。これらの配合物は、高粘度のため、小さなキャビティ中に拡散する必要がある組成物の製造には使用できず、従来の方法によって使用することもできない(例えばポンプの限界のため)。これらの従来の配合物の粘度を低下させるために配合物の加工温度を上昇させるが、これはまた、ポットライフを短縮することになる。
【0007】
樹脂に対する優れた強化性を保持しながら、良好な加工性を与える、TMP−18EOに基づくグリシジルエーテルを樹脂系用改質剤として提供することは、望ましい。
【0008】
ポリエチレンオキサイド含有ブロックコポリマーを効果的な強化剤として使用することが記載されている。ポリエチレンオキサイドブロックは、エポキシ配合物に対して相溶化剤として作用するが、第2のブロックは非混和性であるのでミクロ相分離につながる。しかし、このような生成物は、その不良な安定性及び低い耐水性によって本来的に制約がある。エポキシ網状構造などの熱硬化網状構造中に組み込まれた場合には、おそらくはポリエチレンオキサイド鎖の高い親水性のために、吸水量(water takeup)が劇的に増加する。
【0009】
従来知られている方法は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂のための強化剤として、TMP−18EOに基づくグリシジルエーテルなどの改質剤を使用することを開示していない。例えば特許文献1は熱硬化系のためのテトラメチロールシクロヘキサノンのテトラグリシジルエーテルを開示している。
【0010】
特許文献2は、特に、優れた高い可撓性並びに優れた接着性及び耐衝撃性を有するエポキシ樹脂組成物を提供するポリオキシアルキレンジグリシジルエーテルを開示している。特許文献2に開示されたエポキシ樹脂組成物は、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル(A)と、ポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル(B)及び/又はダイマー酸ジグリシジルエステル(C)と、ビスフェノール型エポキシ樹脂(D)及び/又はグリシジルアミノ基を有する芳香族エポオキシ樹脂(E)と、エポキシ樹脂と反応し得る硬化剤とを特定の割合で含んでいる。
【0011】
更に、先行技術は、例えばタイヤ用のポリエステルサイズ剤として、GEを使用することを教示している。GEの使用を教示している参考文献としては、例えば、以下の特許文献が挙げられる:特許文献3は「ソルビトール−エポキシ」を開示し;特許文献4はグリセロール−TGEを開示し;特許文献5はグリセロール−ポリGEを開示し;特許文献6及び7はグリセロール−DGE及びTGEを開示し;特許文献8はグリセロール−ポリGEを開示し、特許文献9はTMP−TGEを開示している。
【0012】
先行技術はNBRポリマーとエポキシ樹脂との組合せも教示している。NBRは、例えば非特許文献1に記載されるように、耐衝撃性強化剤として使用することが知られている。
【0013】
TMP−18EO−TGEのような分子自体は知られており、このような分子の合成は特許文献10に記載されている。また、エポキシ樹脂分子内にEO/PO/BuOを組み込むことによってエポキシ樹脂系に可撓性を付与することも知られている。しかし、アルケンオキサイドを系に混和して一定レベルの可撓性を達成するためには、典型的には或る量のアルキレンオキサイドが必要であることも知られている。この量は、通常非常に多いので、ポリマーマトリックスを脆弱化する。ポリマーマトリックスの脆弱性(weakness)は、このようなマトリックスの耐薬品性の低下によって示され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許第DE3824676号
【特許文献2】特開2007−284467号公報
【特許文献3】欧州特許第1221456号
【特許文献4】米国特許第4,348,517号
【特許文献5】特開2001−3273号公報
【特許文献6】特開昭55−152816号公報
【特許文献7】特開昭55−152815号公報
【特許文献8】特開平8−246353(JP000008246353)号公報
【特許文献9】欧州特許第1442900号
【特許文献10】米国特許第3,575,797号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Frounchiら、「Toughening Eopxy Resins with Solid Acrylonitrile-Butadiene Rubber」、Polymer International、第49巻、第2号、163〜169頁、2000年6月17日オンライン公表、Society of Chemical Industry 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
TMP 18EO TGEなどのGE改質剤を、例えばエポキシ化PEG又はPPG(二官能性)などの他の公知GEの代わりに、エポキシ樹脂系中に使用することによって、耐薬品性の低下がごくわずかでありながら、可撓性を増大させることができれば、技術的な進歩となるであろう。従って、このような改良された性質を有する熱硬化性樹脂を提供する改質剤を開発することに対するニーズが、当業界にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、対応するグリシジルエーテルへの転化前に、OH基当たり少なくとも3モルのエチレンオキサイドが付加されたトリオールに由来するトリグリシジルエーテル(TGE)の合成及び使用によって、先行技術の問題を解決する。
【0018】
本発明の一面は、(a)熱硬化性樹脂及び(b)少なくとも1種の強化剤を含み、前記少なくとも1種の強化剤がTMP−18EO(トリメチロールプロパンオクタデカエトキシレート)に基づくグリシジルエーテルである熱硬化性組成物に関する。
【0019】
本発明は望ましい性質を兼ね備え、1分子中の網目密度を減少させることなく、優先的にポリマーであることによって可撓性を付与する。また、本発明のポリマーは、製品ペンタエリスリトール−TGE(紙用の湿潤紙力増強剤)のポリマー代替品として有用であると考えられる。また、本発明は、ポリエステル用の接着促進剤として作用する点でも有用と考えられるであろう。
【0020】
本発明の他の面は、前記の硬化性組成物から製造された、硬化された(cured)熱硬化物(thermoset product)及び前記の熱硬化性組成物又は熱硬化生成物の製造方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明を説明するために、図面は、現在好ましい本発明の形態を示す。図1及び図1A〜1D中の各グラフ図の菱形の面積は耐薬品性に対応する。しかし、本発明はこれらの図面中に示した正確な配列に限定されないことを理解されたい。
【図1】本発明の硬化系の2mmフィルムの耐薬品性試験の結果を示すグラフ図である。
【図1A】エポキシ樹脂に既知改質剤がブレンドされた硬化系の2mmフィルムの耐薬品性試験の結果を示すグラフ図である。
【図1B】エポキシ樹脂に既知改質剤がブレンドされた硬化系の2mmフィルムの耐薬品性試験の結果を示すグラフ図である。
【図1C】エポキシ樹脂に既知改質剤がブレンドされた硬化系の2mmフィルムの耐薬品性試験の結果を示すグラフ図である。
【図1D】エポキシ樹脂に既知改質剤がブレンドされた硬化系の2mmフィルムの耐薬品性試験の結果を示すグラフ図である。
【0022】
【図2】本発明の硬化系の吸水量を、他の硬化系と比較して示す棒グラフである。TMP 18EO TGEで改質された系の吸水量は、既知の系に比較して高い。この吸水量は予想よりも驚くほど良好であった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な説明に脈略を与えるために、いくつかの定義が役立つと考えられる。「熱硬化性組成物(thermosettable composition)」は、組み込まれ且つ混合されるか又は反応されることによって「熱硬化生成物(thermoset product)」を形成できる複数の要素を含む組成物である。「熱硬化性組成物」の要素の一部はこのような要素の1つ又はそれ以上と反応し得るので、熱硬化性組成物の元の要素は最終「硬化生成物」中にはもはや存在しない可能性がある。「熱硬化生成物」は、一般に「熱硬化網状構造」を含む。「熱硬化網状構造」は、「熱硬化性樹脂(thermosetting resin)」によって形成される構造を説明しており、その例は当業界でよく知られている。
【0024】
最も広範な範囲において、本発明は、(a)少なくとも1種の熱硬化性樹脂及び(b)少なくとも1種の強化剤を含み、前記少なくとも1種の強化剤が、好ましくはトリメチロールプロパンオクタデカエトキシレート(TMP−18EO)に基づくポリグリシジルエーテルである熱硬化性組成物を提供する。
【0025】
本発明の成分(a)の熱硬化性樹脂は、熱によって熱硬化可能であること、即ち硬化温度において硬化可能(curable)又は架橋可能であることによって熱硬化網目構造を形成する任意の樹脂であることができる。
【0026】
本発明の成分(a)の熱硬化性樹脂は、例えばエポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂並びにそれらの混合物を含む、当業界で知られた周知の熱硬化性樹脂の任意のものから選択できる。
【0027】
一態様において、本発明において有用な熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂である。本発明の熱硬化性(又は硬化可能な)エポキシ樹脂組成物は少なくとも1種のエポキシ樹脂成分(a)を含む。エポキシ樹脂は少なくとも1個の隣接エポキシ基を含む化合物である。エポキシ樹脂は、飽和又は不飽和脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式化合物であることができ、置換されていてもよい。エポキシ樹脂はモノマーでもポリマーでもよい。
【0028】
好ましくは、エポキシ樹脂成分はポリエポキシドである。ここで使用するポリエポキシドは、1個より多いエポキシ部分を含む化合物又は化合物の混合物を意味する。ここで使用するポリエポキシドは、1分子当たり平均して1個より多い未反応エポキシド単位を有する、ポリエポキシドと連鎖延長剤との反応生成物である部分先進(advanced)エポキシ樹脂を含む。脂肪族ポリエポキシドは、エピハロヒドリンとポリグリコールとの既知の反応によって製造できる。脂肪族エポキシドの他の具体例には、トリメチロールプロパンエポキシド及びジグリシジル−1,2−シクロヘキサンジカルボキシレートがある。ここで使用できる好ましい化合物としては、例えば多価フェノール(即ち1分子当たり平均で1個より多い芳香族ヒドロキシル基を有する化合物、例えば二価フェノール類、ビフェノール類、ビスフェノール類、ハロゲン化ビフェノール類、ハロゲン化ビスフェノール類、アルキル化ビフェノール類、アルキル化ビスフェノール類、トリスフェノール類、フェノール−アルデヒドノボラック樹脂、置換フェノール−アルデヒドノボラック樹脂、フェノール−炭化水素樹脂、置換フェノール−炭化水素樹脂及びそれらの任意の組合せ)のグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
場合によっては、本発明の樹脂組成物に使用するエポキシ樹脂は、少なくとも1種のハロゲン化又はハロゲン含有エポキシ樹脂化合物である。ハロゲン含有エポキシ樹脂は、少なくとも1個の隣接エポキシ基及び少なくとも1個のハロゲンを含む化合物である。ハロゲンは、例えば塩素又は臭素、好ましくは臭素である。本発明において有用なハロゲン含有エポキシ樹脂の例としては、テトラブロモビスフェノールA及びその誘導体のジグリシジルエーテルが挙げられる。本発明において有用なエポキシ樹脂の例としては、The Dow Chemical Companyから市販されているD.E.R.(商標)500シリーズなどの市販樹脂が挙げられる。
【0030】
ハロゲン含有エポキシ樹脂は、単独で、1種若しくはそれ以上の他のハロゲン含有エポキシ樹脂と組合せて、又は1種若しくはそれ以上の他の種々のハロゲン非含有エポキシ樹脂と組合せて使用できる。非ハロゲン化エポキシ樹脂に対するハロゲン化エポキシ樹脂の比は、好ましくは硬化された樹脂に難燃性を与えるように選択する。存在できるハロゲン化エポキシ樹脂の重量は、当業界で知られているように、使用する個々の化学構造(ハロゲン化エポキシ樹脂中のハロゲン含量による)によって異なると考えられる。また、存在できるハロゲン化エポキシ樹脂の重量は、硬化剤及び任意的な添加剤を含む組成物中に他の難燃剤が存在する可能性もあるということによっても左右される。好ましいハロゲン化難燃剤は、臭素化化合物、好ましくはテトラブロモビスフェノールA及びその誘導体のジグリシジルエーテルである。
【0031】
本発明の組成物中に使用される、ハロゲン含有エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂化合物は、例えばエピハロヒドリンとフェノール若しくはフェノール系化合物とから製造された、エピハロヒドリンとアミンとから製造された、エピハロヒドリンとカルボン酸とから製造された、又は不飽和化合物の酸化によって製造された、エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の組合せであることができる。
【0032】
一態様において、本発明の組成物中に使用されるエポキシ樹脂としては、エピハロヒドリンとフェノール又はフェノール系化合物から製造された樹脂が挙げられる。フェノール系化合物としては、1分子当たり平均で1個より多い芳香族ヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。フェノール系化合物の例としては、二価フェノール類、ビフェノール類、ビスフェノール類、ハロゲン化ビフェノール類、ハロゲン化ビスフェノール類、水素化ビスフェノール類、アルキル化ビフェノール類、アルキル化ビスフェノール類、トリスフェノール類、フェノール−アルデヒド樹脂、ノボラック樹脂(即ちフェノールと簡単なアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドとの反応生成物)、ハロゲン化フェノール−アルデヒドノボラック樹脂、置換フェノール−アルデヒドノボラック樹脂、フェノール−炭化水素樹脂、置換フェノール−炭化水素樹脂、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、アルキル化フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、炭化水素−フェノール樹脂、炭化水素−ハロゲン化フェノール樹脂、炭化水素−アルキル化フェノール樹脂又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0033】
別の態様において、本発明の組成物中に使用するエポキシ樹脂としては、エピハロヒドリンとビスフェノール類、ハロゲン化ビスフェノール類、水素化ビスフェノール類、ノボラック樹脂及びポリアルキレングリコール又はそれらの組合せとから製造された樹脂が挙げられる。本発明において有用なビスフェノールA系エポキシ樹脂の例としては、The Dow Chemical Companyから市販されているD.E.R.(商標)300シリーズ及びD.E.R.(商標)600シリーズなどの市販樹脂が挙げられる。本発明において有用なエポキシノボラック樹脂の例としては、The Dow Chemical Companyから市販されているD.E.N.(商標)400シリーズなどの市販樹脂が挙げられる。
【0034】
一態様において、本発明の組成物のエポキシ樹脂としては、DER(商標)331、DER(商標330)、DER(商標)354又はそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
別の態様において、本発明の組成物中に使用されるエポキシ樹脂化合物としては、好ましくはエピハロヒドリンと、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラブロモビスフェノールA、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン−置換フェノール樹脂、テトラメチルビフェノール、テトラメチル−テトラブロモビフェノール、テトラメチルトリブロモビフェノール、テトラクロロビスフェノールA又はそれらの組合せとから製造された樹脂が挙げられる。
【0036】
このような化合物の製法は、当業界でよく知られている。例えば、Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第9巻、267〜289頁を参照のこと。本発明の組成物中への使用に好適なエポキシ樹脂及びそれらの前駆体の例は、例えば米国特許第5,137,900号及び第6,451,898号にも記載されており、これらの特許を参照することによって本明細書中に組み入れる。
【0037】
別の態様において、本発明の組成物中に使用するエポキシ樹脂としては、エピハロヒドリン及びアミンから製造された樹脂が挙げられる。好適なアミンには、ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン、アニリン類など又はそれらの組合せがある。
【0038】
別の態様において、本発明の組成物中に使用するエポキシ樹脂としては、エピハロヒドリン及びカルボン酸から製造された樹脂が挙げられる。好適なカルボン酸には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ−及び/若しくはヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、イソフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸など又はそれらの組合せがある。
【0039】
別の態様において、エポキシ樹脂は、前述のような、1種若しくはそれ以上のエポキシ樹脂成分と前述のような、1種若しくはそれ以上のフェノール系化合物及び/又は1分子当たり平均で1個より多い脂肪族ヒドロキシル基を有する1種若しくはそれ以上の化合物との反応生成物である先進エポキシ樹脂を意味する。或いは、エポキシ樹脂は、カルボキシル置換炭化水素と反応させることもできる。本明細書中では、カルボキシル置換炭化水素は、炭化水素主鎖、好ましくはC1〜C40炭化水素主鎖と1個又はそれ以上の、好ましくは1個より多い、最も好ましくは2個のカルボキシル部分とを有する化合物とみなす。C1〜C40炭化水素主鎖は、任意的に酸素を含む、直鎖又は分岐鎖アルカン又はアルケンであることができる。脂肪酸及び脂肪酸ダイマーは有用なカルボン酸置換炭化水素に含まれる。これらの脂肪酸には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、ペンタデカン酸、マルガリン酸、アラキジン酸及びそれらの二量体が含まれる。
【0040】
本発明の成分(a)のエポキシ樹脂は、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルのポリマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのオリゴマー及びポリマー、ビスフェノールA及びテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテルのオリゴマー及びポリマー、エポキシ化フェノールノボラック、エポキシ化ビスフェノールAノボラック、オキサゾリドン改質エポオキシ樹脂並びにそれらの混合物から選択できる。
【0041】
別の態様において、エポキシ樹脂はポリエポキシドと1個より多いイソシアネート部分を含む化合物又はポリイソシアネートとの反応生成物である。好ましくは、このような反応で製造されるエポキシ樹脂はエポキシを末端基とするポリオキサゾリドンである。
【0042】
別の態様において、本発明において有用なエポキシ樹脂は、例えば他の非ポリマーグリシジエーテル(GE)で改質されたエポキシ樹脂であることができる。例えば、エポキシ樹脂は、o−クレジル−モノグリシジルエーテル(oCMGE)、p−t−ブチルフェニル−モノグリシジルエーテルptBPMGE、HDDGE、BDDGE、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(NPGDGE)、C12/C14−脂肪アルコールモノグリシジルエーテル、それらの混合物などから選択される非ポリマーGEで改質されていてよい。
【0043】
エポキシ樹脂成分(a)は、本発明の組成物中に、熱硬化性樹脂成分(a)に基づいて計算した場合に、一般に約99重量%(wt%)〜約50wt%、好ましくは約96wt%〜約60wt%、より好ましくは約95wt%〜約75wt%の範囲の濃度で存在する。約99wt%を超える濃度では、成分(a)の樹脂と併用される改質剤の効果が低すぎて、ポリマーマトリックスをそれほど改質できず、約50wt%未満の濃度では、硬化系の機械的性質及び化学的性質が低下する。
【0044】
本発明の成分(b)のポリグリシジルエーテル強化剤は、特殊構造を有するグリシジルエーテル(GE)の分子又は化学物質類(chemical class)を含む。本発明において有用なポリグリシジルエーテルの特殊構造は、広く離間されたエポキシ基を有する三官能価分子、即ち、トリグリシジルエーテル(TGE)を含む。特定の理論に限定するものではないが、本発明者によって実施された実験からは、特殊構造(広く離間されたエポキシ基を有する三官能価分子)が、TGEが熱硬化エポキシ樹脂マトリックスに与える、結果として生じる靭性及び耐水膨潤性に関与すると考えられる。
【0045】
本発明のTGEの特殊構造は、先行技術の溶液から知られているものよりも熱硬化性樹脂の性質を向上させる種々の溶液を提供する。TGEのTMP部分は、ポリマーの網状構造中の「硬い」部分といえるもの考えられ、3個の小さいEO鎖は改質剤の「軟らかい」部分として作用する。エポキシ基を離間させることによって、性質の組合せ(耐水膨潤性のわずかな増加による耐衝撃性の向上)が得られる。
【0046】
予想外の性質を有する本発明の成分(b)のポリマーTGEポリグリシジルエーテルは、例えばDER732(The Dow Chemical Companyから市販されている)、Flexibilisator WF(以前はBakelite、現在はHexion)及びポリグリセロールポリグリシジルエーテル(Raschig製のGE500)などの他のポリマーGEから選択できる。
【0047】
好ましい一態様において、本発明において有用な強化剤は、好ましくはトリメチロールプロパンオクタデカエトキシレート(TMP−18EO)に基づくポリグリシジルエーテルを含む。
【0048】
例えば強化剤は下記式I:
【0049】
【化1】

【0050】
(式中、x、y、zは、互いに独立して、3より大きく、且つx+y+zが約18である)
のポリグリシジルエーテルであることができる。
【0051】
TMP−18EOは、TMP 1モル当たりEO 18モルを有するポリマー転化生成物を意味する。この18は、1個のTMP分子に結合されたEO部分の平均数である。OH−基1個当たりのEO分子の理想化数(idealized number)は、「3個より多い(>3)」。この生成物は、最初のOH基の平均置換度が約2.5で且つ平均鎖長が約7.3である分布を有する。TMP−18EOのポリグリシジルエーテルは、1モルのTMP−18EOと3モルのエピクロロヒドリン(ECH)との反応及びそれに続く水酸化ナトリウム(NaOH)との反応の生成物である。TMP−18EO対ECHの比は1:2から1:6まで変化できる。
【0052】
本発明の態様に認められる改良点は、樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOを基剤とするグリシジルエーテルの使用、より詳細には、熱硬化生成物中への、好ましい構造を有する樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルの使用に関係すると考えられる。いかなる特定の作用理論に縛られることを望むものではないが、樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルは、低粘度であるために未硬化の組成物の粘度を低く保ちながら、強化剤として作用し、熱硬化網状構造の吸湿性を低下させると思われる。本発明において使用する、樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルの存在は、樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルを含まない熱硬化網状構造に比較して靭性を増大し、吸湿性を低下させる。
【0053】
樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルがエポキシ網状構造の耐水性を有意に低下させないことは驚くべきことである。
【0054】
本発明によれば、添加剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルが反応性基によって熱硬化網状構造中にグラフトされる可能性がある。従来の強化剤のほとんどは非反応性である−それらは、網状構造に物理的に結びつけられる(絡み合いによって)が、化学的には結合されない。従って、先行技術の強化剤は、網状構造中を、特に高温では泳動(又は移行)する可能性がある(これを「クリーピング」という)。本発明の態様においては、樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルが熱硬化系と反応性であり、その結果として、最終網状構造に組み込まれる。従って、強化剤の泳動は、高温であっても阻止される。
【0055】
更にまた、シリコーン樹脂は、剥離剤又は界面活性剤として作用することが知られている。このような用途において、シリコーン樹脂は表面まで泳動することが一般に望ましい。本発明の実施態様において使用される、樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルが、表面に泳動することなく、熱硬化網状構造のバルク内によく分散された状態であり続けることは驚くべきことである。
【0056】
ブロックコポリマーを、従来の方法で強化剤として用いる場合には、ブロックの特定の配列に依拠して適正な相分離を可能にする。本発明の態様では、樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルは、ブロック構造を有するのではなく、グラフト化されても、好適な相分離を引き起こすことがわかったことは驚くべきことである。物理的構造に加えて化学組成が本発明のこの利点には重要だと思われる。
【0057】
更にまた、本発明の未硬化組成物は、従来の強化剤を用いる従来の未硬化組成物よりも粘度が低いので、本発明によれば加工性がより良好になり、取扱もより容易になる。樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルのより低い粘度は、他の強化剤に比較して、高い加工性及び機械的性質を保持しながら、より多くの充填剤の配合を可能とする。本発明の熱硬化網状構造中の樹脂系用改質剤としてのTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルは、注型された配合物の熱膨張率を改善し且つ収縮率を低下させることができる。本発明に従って作成された熱硬化網状構造は、例えば電気及び電子機器注型(electrical and electronics casting)、注型封入(potting)及びカプセル封入を含む高性能用途に特に好適である。
【0058】
成分(b)のTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルは商業的入手が容易であり、例えばSeppicから商品名Simulsol TOZEとして入手できる。或いは成分(b)は、米国特許第3,575,797号(参照することによって本明細書中に組み入れる)に記載された方法などの、当業界で知られた方法によって製造できる。本発明のグリシジルエーテルTMP−18EO−TGEを合成するための一般的手法は以下の実施例1に記載する。
【0059】
成分(b)のTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルは、本発明の組成物中に、一般に約1重量%(wt%)〜約50wt%、好ましくは約4wt%〜約40wt%、より好ましくは約5wt%〜約25wt%の濃度で存在する。1重量%未満の濃度では、改質剤の効果が低すぎてポリマーマトリックスをそれほど改質できず、50wt%を超える濃度では、得られる硬化系の機械的性質及び化学的性質が低下する傾向があると考えられる。
【0060】
本発明の成分(b)のTGEポリグリシジルエーテルは、少なくとも1種の三官能価アルコール及び−OH当たり少なくとも3モルのEOから出発して、既知の方法によってTGEに転化させることによって、形成できる。苛性アルカリ水溶液を用いる標準的な方法でによって高い収率が得られることは予想外であった。TGE自体の性質、特にエポキシ樹脂の耐水膨潤性のわずかな向上による靭性の向上は、予測されなかったことである。著名な既知の製品グリセロール−TGE及びポリグリセロール−PGEよりも優れた性質を有するポリエステル/ゴム用接着促進剤として作用することは、その機構が充分に理解されていないので、予測できないことであった。
【0061】
本発明による熱硬化性組成物は更に、1種又はそれ以上の任意的な成分又は添加剤、例えば硬化剤、触媒、追加の反応性樹脂、充填剤、成分(b)以外の強化剤、硬化抑制剤、湿潤剤、着色剤、熱可塑性樹脂、加工助剤、染料、紫外線遮断剤及び螢光化合物などを含むことができる。このリストは、例示であって、限定的なものではない。これらの任意選択の成分は、当業者によって知られているようなそれらの使用目的で使用され、最終の熱硬化性組成物又はそれらの熱硬化物の望ましい性質に悪影響を及ぼさずに意図された効果をもたらす量で使用する。任意的な成分の濃度は、その任意的な成分を使用する最終用途を含む種々の要因によって異なるであろう。
【0062】
例えば、本発明の熱硬化性組成物は、少なくとも1種の熱硬化性樹脂のための少なくとも1種の硬化剤を更に含むことができる。硬化剤はアミン、ポリアミドアミン、フェノール樹脂、カルボン酸、カルボン酸無水物及びポリオール樹脂から選択できるが、これらに限定するものではない。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む態様においては、少なくとも1種の硬化剤は、好ましくはアミン、フェノール樹脂、カルボン酸及びカルボン酸無水物から選択される。熱硬化性樹脂がイソシアネートを含む態様においては、少なくとも1種の硬化剤は好ましくはポリオールから選択される。
【0063】
一般に、本発明において有用な硬化剤は、当業界で知られているアミン系硬化剤から選択でき、硬化剤は、樹脂中の全てのエポキシ基がアミン水素と反応し得るような所定量で存在できる。従って、当業者ならば、+/−10%内の精度で1エポキシ当量重量(equivalent weight)(EEW)が1水素当量重量(HEW)と反応すると推測できる。
【0064】
一般に、硬化剤は、本発明の組成物中に、約0wt%〜約50wt%、好ましくは約10wt%〜約40wt%の濃度で存在できる。
【0065】
本発明の熱硬化性組成物は、任意的に、前記の少なくとも1種の熱硬化性樹脂のホモ重合を含む重合のための又は前記の少なくとも1種の熱硬化性樹脂と前記の少なくとも1種の硬化剤との反応のための少なくとも1種の触媒を含むことができる。当業界で知られている種々の触媒を使用できる。
【0066】
例えば、本発明において有用な特に好適な任意的な触媒は、第四級ホスホニウム及びアンモニウム化合物、例えばエチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムジアセテート(エチルトリフェニルホスホニウムアセテート・酢酸錯体)、エチルトリフェニルホスホニウムテトラハロボレート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムジアセテート(テトラブチルホスホニウムアセテート・酢酸錯体)、テトラブチルホスホニウムテトラハロボレート、ブチルトリフェニルホスホニウムテトラブロモビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムビカーボネート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムテトラハロボレート、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムテトラハロボレート及びそれらの混合物などである。
【0067】
他の適当な触媒としては、アンモニウム化合物、例えばトリエチルアンモニウムクロリド、トリエチルアンモニウムブロミド、トリエチルアンモニウムヨージド、トリエチルアンモニウムテトラハロボレート、トリブチルアンモニウムクロリド、トリブチルアンモニウムブロミド、トリブチルアンモニウムヨージド、トリブチルアンモニウムテトラハロボレート、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノエタン・テトラハロホウ酸(tetrahaloboric acid)錯体及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0068】
他の適当な触媒としては、適当な非求核性酸、例えばホウフッ化水素酸(fluoboric acid)、フルオロヒ酸、フルオロアンチモン酸、フルオロリン酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸、それらの混合物などと第四級及び第三級アンモニウム、ホスホニウム及びアルソニウムとの付加物又は錯体が挙げられる。
【0069】
他の適当な触媒としては、第三級アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、2−メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、それらの混合物などが挙げられる。
【0070】
一態様において、エポキシ−アミン反応のための触媒は第三級アミン、アルキルフェノール又はサリチル酸であることができる。この触媒は合計で成分(b)、例えばアミン硬化剤の約50%となると考えられる量で使用できる。
【0071】
一般に、アミン又はポリアミン反応生成物に触媒は必要ない。
【0072】
一般に、任意的な触媒の濃度は、組成物の総重量に基づき、0wt%〜約10wt%、好ましくは約0.001wt%〜約10wt%、より好ましくは約0.01wt%〜約5wt%、更に好ましくは約0.1wt%〜約2wt%である。10wt%の限界を超えると、反応は速すぎて、組成物は通常の加工条件下で加工できない可能性がある。0.001wt%の限度を下回ると、反応は遅すぎて、組成物は通常の加工条件下では加工できない可能性がある。
【0073】
本発明の熱硬化性組成物は、前記の少なくとも1種の熱硬化性樹脂(a)と異なり且つ前記の少なくとも1種の硬化剤とも異なる第2の反応性樹脂を含むことができる。本発明において有用な第2の反応性樹脂は、架橋網状構造の一部を形成できる。このような熱硬化性樹脂の例としては、イソシアネート樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビニル樹脂、ビニルエステル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、炭化水素樹脂並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
任意的な追加反応性樹脂の濃度は、組成物中の総成分の重量に基づき、一般に0wt%〜50wt%、好ましくは約0.5wt%〜約50wt%、好ましくは約1wt%〜約40%、より好ましくは約2wt%〜約30wt%、最も好ましくは約5wt%〜約25wt%である。50wt%を超えると、追加反応性樹脂が主樹脂となる。0.5wt%未満であると、濃度は、性質の違いを生じるのに十分でなくなる。
【0075】
本発明の熱硬化性組成物は少なくとも1種の溶媒又は少なくとも1種の高沸点改質剤、例えばベンジルアルコール若しくはジイソプロピルナフタレンを更に含むことができる。好ましくは任意的な溶媒は、例えば約200℃超の沸点を有する高沸点溶媒であることができる。約56℃未満の沸点を有するような低沸点溶媒は回避すべきである。約250℃超の溶媒は有機揮発性化合物(VOC)とは見なされないため、一態様において、本発明において有用な溶媒は約56℃又はそれ以上、好ましくは約200℃超、最も好ましくは約250℃超、更に好ましくは約250℃〜約350℃の沸点を有する。
【0076】
本発明において有用な任意的な溶媒としては、例えばケトン、アルコール、水、グリコールエーテル、芳香族炭化水素及びそれらの混合物を挙げることができる。好ましい溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルピロリジノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルアミルケトン、メタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド(DMF)などが挙げられる。単一溶媒を使用することができるが、1つ又はそれ以上の成分のために別個の溶媒を使用することもできる。エポキシ樹脂及び硬化剤に好ましい溶媒は、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンなど及びエーテルアルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはジプロピレングリコールのメチル、エチル、プロピル若しくはブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル又は1−メトキシ−2−プロパノール並びにそれぞれのアセテートである。本発明の触媒に好ましい溶媒としては、アルコール、ケトン、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、グリコールエーテル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル又はエチレングリコールモノメチルエーテル及びそれらの組合せが挙げられる。
【0077】
一般に、高沸点溶媒は、組成物中の総成分の重量に基づき、一般に約40wt%以下の濃度で添加できる。任意的な溶媒の濃度は、組成物中の総成分の重量に基づき、一般に約0wt%〜約40wt%、好ましくは約1wt%〜約40wt%、より好ましくは約2wt%〜約40wt%、最も好ましくは約5wt%〜約40wt%である。40wt%を超える濃度では、熱硬化樹脂の機械的性質が低下する傾向がある。
【0078】
本発明の熱硬化性組成物は少なくとも1種又はそれ以上の充填剤又は繊維強化材を更に含むことができる。このような充填剤の例としては、シリカ、タルク、石英、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びベーマイトを含む(これらに限定するものではないが)無機充填剤が挙げられるが、これに限定するものではない。
【0079】
無機充填剤などの充填剤の濃度は、揮発分の重量を除いた組成物の総重量に基づき、約1wt%〜約95wt%又は約2wt%〜約90wt%又は約3wt%〜約80wt%又は約5wt%〜約70wt%又は約10wt%〜約65wt%の範囲であることができる。前記濃度未満の充填剤を用いると、熱硬化樹脂の機械的性質に対してほとんど利益が得られず、前記濃度を超える充填剤を用いると、費用がかかりすぎて経済的に有益でない。
【0080】
無機充填剤の平均粒径は、一般に、約5mm未満、例えば約100ミクロン未満又は約50ミクロン未満又は更には約10ミクロン未満であろう。無機充填剤の平均粒径は、約2nm超又は約10nm超又は約20nm超又は約50nm超であろう。前記粒径を超える粒径を有する充填剤を用いると、熱硬化樹脂の機械的性質にほとんど利益が得られない。
【0081】
本発明は、少なくとも9モルのエチレンオキサイドが付加されたトリオールに由来するTGEの合成及び使用を含む。使用する合成は、例えばF.Lohse、Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie、Vol 20E(1987)p.1911〜1924(参照することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたような、特殊な加工技術を必要としない、BF3を触媒とするECH付加とそれに続く、水酸化ナトリウム水溶液による脱離を経る、よく知られた経路である。
【0082】
意外なことに、生成物自体が水中に容易に溶解/エマルゲート(emultage)されるにもかかわらず、収率は理論値に対して80%のレベルであり、エマルジョンの形成の問題は起こらなかった。LERを反応性希釈剤として使用することにより、切削動力(cutting power)は予想通り中程度であったが、驚くべきことに、耐水膨潤性のごくわずかな低下により耐衝撃性が増大した。
【0083】
本発明の構造は、グリセロール−TGEと比較して、水溶性がより良好であるため、最先端のサイズ剤技術よりも更に優れている。
【0084】
本発明はこれらの特性に改良を加える熱硬化樹脂を提供する。本発明は、従来の熱硬化網状構造に比較して著しい、場合によっては驚くほどの改良を提供する。
【0085】
また、本発明は、(a)少なくとも1種の熱硬化性樹脂及び(b)少なくとも1種の強化剤を含み、前記の少なくとも1種の強化剤がTMP−18EOに基づくグリシジルエーテルである前記熱硬化性組成物を硬化させることによって製造される熱硬化物も提供する。
【0086】
樹脂系用改質剤としてTMP−18EO(トリメチロールプロパンオクタデカエトキシレート)に基づくグリシジルエーテルを使用する本発明は、例えばエポキシ樹脂系などの樹脂系に使用でき、樹脂に高い耐衝撃性を与える。
【0087】
前記改質剤はポリエステル接着促進剤又は紙力増強剤としても使用できる。
【0088】
本発明の一態様において、前記改質剤は製紙製品(湿潤紙力増強剤)として使用でき、ペンタエリスリトール−TGEなどの先行技術の湿潤紙力増強剤に取って代わり得る。
【0089】
本発明の別の態様において、前記改質剤はポリエステル系タイヤコード用の水性サイジング配合物(sizing formulation)中に(ポリ)グリセロール−PGEの代わりに使用できる。本発明の改質剤は、水溶性の増加により、既知のグリセロール誘導体より改良された。
【0090】
GEは、エポキシ樹脂改質剤として使用でき、本発明の改質剤は、TMP−TGEに比較して、耐水膨潤性のわずかな増加によって耐衝撃性を向上させる。
【0091】
GEはサイズ剤として使用でき、本発明の改質剤はゴムへのポリエステル繊維の接着を増強し、例えばタイヤ工業において有用である。
【0092】
本発明の特殊な構造は、有利なことに、本発明のGE生成物の挙動において重要な要因である。
【0093】
本発明の熱硬化物は、強靱で且つ防湿性の高い網状構造が望ましい全ての用途に使用できる。一般的な用途には、例えば注型、注型封入及びカプセル封入などがあり、一般的な製品には、コーティング、複合材料及び/又は積層品などがある。より具体的な用途には、電気若しくは電子機器注型、電気若しくは電子機器注型封入、電気若しくは電子機器カプセル封入などがあり、具体的な製品には電気用積層板、構造用複合材料、フォトレジスト及びソルダーレジスト、保護コーティング、絶縁保護コーティング(conformal coating)、装飾コーティング並びに/又は樹脂コート銅箔などがある。
【0094】
本発明の一態様において、本発明のポリマーGEは、好ましくは液体エポキシ樹脂(LER)と且つ任意的に標準的な反応性希釈剤及び標準的なアミン硬化剤と組合せて使用する。
【0095】
本発明の一態様の実例として、本発明の組成物を液体エポキシ樹脂(LER)(A−成分)と混合することによって、透明バインダーを製造できる。この混合物は、改質脂環式アミン硬化剤(Polyprox H 488/L、B−成分)などの硬化剤を用いて硬化させることができる。硬化生成物(cured product)は、試験法DIN 53452 ISO 178に従って約2000N/mm2以下のE−弾性率を、試験法DIN 65467/Aに従って、少なくとも約40℃のガラス転移温度を示す。一般に、約20wt%の成分(a)を約80wt%のLERと混合する。
【0096】
前記ポリマーGEとLERとの併用は、前記系自体の全体的な機械的性質によってのみ制限される。ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂とビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂との混合物中では25wt%以下の濃度が都合よく、前記成分を単純にブレンドすることによって容易に得ることができる。
【0097】
一般に、PGEの濃度は、組成物の総重量に基づき、1wt%〜約50wt%、好ましくは約4wt%〜約40wt%、より好ましくは約5wt%〜約25wt%である。1wt%未満の濃度では、効果が低すぎて、ポリマーマトリックスをそれほど改善できず、約50wt%を超の濃度では、硬化系の機械的性質及び化学的性質が低下する傾向があると考えられる。
【実施例】
【0098】
以下の実施例は、本発明の実例であって、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。これらの実施例の変形形態及び均等形態は、本発明の開示を考慮すれば、当業者には明白であろう。特に明示しない限り、全ての百分率は総組成物の重量に基づく。
【0099】
例中で使用する種々の用語及び名称を、以下に説明する:
”ショアー(Shore)D値”は、ISO 868 DIN 53505に従って測定される硬度(針押込深さ(needle impact depth))であり;「耐薬品性」は、種々の化学薬品への結合剤表面の暴露後におけるショアーD値の経時的測定値であり、ショアーD値が高いほど耐薬品が良好であり;Polypox H488/Lは、UPPC GmbHから入手可能な改質アミン硬化剤であり;D.E.R.331は、The Dow Chemical Companyから市販されている、182〜192g/当量のEEWを有するジグリシジルビスフェノールA液体エポキシ樹脂であり;「TMP−18EO−TGE」は、本発明のトリメチロールプロパンオクタデカエトキシレートポリグリシジルエーテルを表し;Ruetapox Flexibilisator WFは、Hexionから入手可能なエポキシ化ポリブチレングリコール製品であり;Polypox R20は、UPPCから入手可能なTMP−TGEであり;Polypox R19は、UPPCから入手可能なポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂製品であり、この製品はThe Dow Chemical Companyから入手可能なポリプロピレングリコール製品D.E.R.732と同様であり;Polypox R11はUPPCから入手可能なシクロヘキサンジメタノール−DGE製品であり:「Hac 10%」は、10%酢酸を表し;「BPG5b」は、メタノール及びイソプロノール各46容量%並びに水4容量%の混合物を表し;「キシロール」は、キシレンの異性体混合物を意味し;「ジーゼル(Diesel)」はジーゼル油を意味し;「rH」は相対湿度を表す。
【0100】
以下の標準的な分析装置及び方法を例中で使用する:
エポキシ樹脂のエポキシ当量重量(EEW、g/当量)は、試験法DIN 16945に従って測定する。一般に、本発明に使用するエポキシ樹脂のEEWは、約100〜約1000、好ましくは約120〜約500、最も好ましくは約150〜約250である。
【0101】
エポキシ樹脂の粘度(mPa・s)は、25℃において試験法DIN 53018に従って測定する。一般に、本発明において使用するエポキシ樹脂の粘度は、0mPa・s〜約100000mPa、好ましくは約1mPa・s〜約50000mPa、最も好ましくは約5mPa・s〜約20000mPaである。
【0102】
エポキシ樹脂のポットライフ(分)は、試験法Gelnorm Geltimer TCに従って測定する。一般に、本発明において使用するエポキシ樹脂のポットライフは、1分〜約600分、好ましくは約5分〜約120分、最も好ましくは約15分〜約75分である。
【0103】
エポキシ樹脂硬化物の表面は23℃/rH(相対湿度)50%において目視検査によって測定する。一般に、熱硬化された樹脂の表面は、滑らかで光沢があり(glossy and shiny)、傷も他の欠陥もない。熱硬化樹脂の表面特性は、「良(good)」、「不良(bad)」又は「可(fair)」と表す。例えば、例中で、「+」は、滑らかで光沢のある表面を意味する「良」の表面品質である。「+/−」は、いくつかの不良な表面特性を表面上で目視し得るが、表面上で目視し得る表面特性はほとんど良好であることを意味する「可」の表面品質である。「−」は、樹脂表面がその表面上にゆがみ、傷又はカルバメート反応生成物(即ちブラッシング又は白化)を含むか、又は樹脂表面が粘着性であることを意味する「不良」の表面品質である。
【0104】
23℃/rH50%で7日間硬化後のエポキシ樹脂のショアーDは、25℃において試験法DIN 53505に従って測定する。一般に、本発明において使用するエポキシ樹脂のショアーD硬度は、約10〜約95、好ましくは約20〜約90、最も好ましくは約35〜約85である。
【0105】
エポキシ樹脂のTg(第2ラン、℃)は、試験法DIN 65647Aに従って測定する。一般に、本発明において使用するエポキシ樹脂のTgは、0℃〜約120℃、好ましくは約10℃〜約100℃、最も好ましくは約40℃〜約90℃である。
【0106】
エポキシ樹脂のE−弾性率(N/mm2)は、試験法EN ISO 178に従って測定する。一般に、本発明において使用するエポキシ樹脂のE−弾性率は0N/mm2〜約5000N/mm2、約100N/mm2〜約3500N/mm2、最も好ましくは約500N/mm2〜約2000N/mm2である。
【0107】
熱硬化樹脂サンプルの水膨潤試験は以下のようにして実施した:最初に、グリシジルエーテルはA−成分として単独では使用しないので、液体エポキシ樹脂(LER)、例えばD.E.R.331との20wt%混合物を調製する。この混合物を混ぜ合わせ(1エポキシ当量に対して1アミン当量)、アミン付加物硬化剤(B−成分)を用いて室温(約23℃)で硬化させる。硬化された2mm厚のフィルム(及び他の組成の、即ちGEが異なるフィルム)を脱イオン水中に浸漬し、重量増加を経時的に測定する。重量増加が多いほど、耐水膨潤性が劣っている。
【0108】
熱硬化樹脂サンプルの耐薬品性は、以下の方法に従って、種々の媒体中の種々の反応性希釈剤/改質剤(標準的なビスA−樹脂(例えば、D.E.R.31)に20%を添加)について試験する:2mmのフィルムを十分に硬化させる(室温(約23℃)で7日間(7d))。コットンパッドに試験液、例えばジーゼル、アルコール混合物、酢酸(Hac)を含ませる。コットンパッドをフィルムの表面に置き、試験液が蒸発しないように覆う。所定期間にわたるショアーD硬度の低下は、種々の試験液に対する耐薬品性の良好な指標となる。通常、7d値を低下%に換算して採用する。
【0109】
試験結果を、図1及び図1A〜図1Dに記載する。各図中の菱形の四隅を比較して、サンプルのショアーD硬度を判定できる。隅の「長さ」は、7日後のショアーD硬度を初期値で割った値であり、例えばTMP 18EO TGEで改質されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルは、他の公知改質剤に匹敵し得ることを示している。
【0110】
合成例1―TMP−18EO−TGEの合成
Simulsol TOZE(Seppic製のTMP+18EO)1100グラム(g)及びBF3エチルエーテレート8gに、ECH 318gを85℃において2時間15分(2°15')以内に添加した(2時間(2°)の後反応)。700gのトルエンの添加、25wt%水酸化ナトリウム395g及び213gによる2段階脱離、85%リン酸4gによる中和、2回の洗浄、真空蒸留(155℃、23mbar)の使用による溶媒の除去を行って、エポキシ化合物1198gを得た。得られた生成物の分析値は、25℃における粘度が372mPas及びEEWが524g/当量である。
【0111】
実施例1及び比較例A
実施例1では、合成例1で製造されたTMP−18EO TGEを反応性希釈剤として用いて、市販GE製品、Polypox R20(TMP−TGE)[比較例A]と比較した。
【0112】
各GEとビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)との混合物を調製した。各組成物のEEW、粘度及びポットライフを測定した。測定された性質の結果は、実施例1では切削動力が低下し、ポットライフが2倍であることを示している。改質脂肪族アミン硬化剤を用いた硬化系では、両系の性質は、E−弾性率特性を除いて全く同じである。結果は、実施例1では同様なTgと著しく低いE−弾性率の組合せを示している。このような結果から、TMP−18EO−TGEは反応性希釈剤としてではなく強化剤として作用していることがわかる。
【0113】
DGEBA樹脂及び反応性希釈剤(DGEBA樹脂80%及びGE20%)を含む混合物のEEW及び粘性を測定し、下記表Iの最初の2つの列に示す。表Iに示した他の性質は、硬化剤と樹脂との反応生成物、及びPolypox 488/Lによって硬化された硬化樹脂に関する。
【0114】
図1A〜図1Eのグラフ図に示す結果を提供するために、前記の耐薬品性試験を用いた。硬化系の2mmのフィルムに、試験液を含ませたコットンパッドを載せた(図中の菱形の隅を参照のこと)。隅の「長さ」は、7日後のショアーD硬度を初期値で割った値であり、例えば、TMP 18EO TGEで改質されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが他の改質剤に匹敵し得ることを示している。菱形の面積は、耐薬品性に対応する。耐薬品性試験の結果を、表Iに記載する。
【0115】
【表1】

【0116】
図2のグラフ図に示す結果を提供するために、前記の水膨潤試験を用いた。図2のグラフ図は硬化系の吸水性を示している。図2に記載された結果は、TMP 18EO TGE改質系では、他の系よりも吸水性が大きいことを示しているが、TMP 18EO TGE改質系の結果は驚くべきことに予想よりも良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の熱硬化性樹脂及び(b)少なくとも1種の強化剤を含んでなり、前記少なくとも1種の強化剤が、トリオールが対応するグリシジルエーテルへ転化する前に、少なくとも9モルのエチレンオキサイドが付加されたトリオールに由来するポリグリシジルエーテルである熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の強化剤が下記式I:
【化1】

(式中、x、y、zは、互いに独立して、3より大きく、且つx+y+zが約18である)
のポリグリシジルエーテルである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリグリシジルエーテルがトリメチロールプロパンオクタデカエトキシレートに基づくグリシジルエーテルである請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記トリメチロールプロパンオクタデカエトキシレートが、TMP1モル当たり、EO 18モル(ここで18は1TMP分子に結合したEO部分の平均数であり、そしてOH−基当りのEO分子の理想化数が3より多い)を有するポリマー転化生成物の反応生成物である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記反応生成物が、当初OH基の平均置換度が約2.5で且つ平均鎖長が約7.3である分布を有する請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記TMP−18EOのポリグリシジルエーテルが、TMP−18−EO 1モルとECH 3モルとの反応及びそれに続く水酸化ナトリウム(NaOH)との反応の生成物である請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
TMP−18EO対ECHの比が約1:2から約1:6までである請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
アミン、ポリアミドアミン、フェノール樹脂、カルボン酸、カルボン酸無水物、ポリオール樹脂及びそれらの混合物から選択される、前記エポキシ樹脂を硬化させるための少なくとも1種の硬化剤並びに前記少なくとも1種のエポキシ樹脂と前記少なくとも1種の硬化剤との反応のための少なくとも1種の触媒を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の充填剤、繊維強化材、溶媒、高沸点改質剤、硬化抑制剤、湿潤剤、着色剤、熱可塑性樹脂、加工助剤、染料、紫外線遮断化合物、螢光化合物、成分(b)とは異なる強化剤又はこれらの混合物を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記樹脂成分中の前記の少なくとも1種の強化剤の濃度が約1重量%〜約50重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
(a)少なくとも1種の熱硬化性樹脂及び(b)少なくとも1種の強化剤を含んでなり、前記少なくとも1種の強化剤が式I:
【化2】

(式中、x、y、zは、互いに独立して、3より大きく、且つx+y+zは約18である)
のポリグリシジルエーテルである熱硬化生成物。
【請求項13】
改質脂環式アミン硬化剤(B−成分)で硬化される、(a)請求項1に記載の組成物と(b)液状エポキシ樹脂(LER)(A−成分)との混合物を含んでなり、その硬化生成物が試験法DIN 53452 ISO 178に従って約2000N/mm2以下のE−弾性率及び試験法DIN 65467/Aに従って少なくとも約40℃のガラス転移温度を示す透明なバインダー製品。
【請求項14】
(a)少なくとも1種の熱硬化性樹脂と(b)少なくとも1種の強化剤とを混合することを含んでなる熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、前記少なくとも1種の強化剤が式I:
【化3】

[式中、x、y、zは、3より大きく、且つx+y+zは約18である]
のポリグリシジルエーテルである熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の熱硬化性組成物を硬化させることを含んでなる熱硬化生成物の製造方法。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−519752(P2012−519752A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552983(P2011−552983)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025179
【国際公開番号】WO2010/101745
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】