説明

トレーラが横揺れしているときの自動車のドライバの支援方法および装置

【課題】限界走行状況において車両を安定化させるときにドライバを支援し、誤ったブレーキ係合を回避させる、トレーラが横揺れしているときの自動車のドライバを支援する方法および装置を提供する。
【解決手段】横揺れしているトレーラを連結している車両は、第1の状態(1)において、少なくとも1つの車両状態変数(ay、vGi)の評価によりトレーラ振動が評価され、第2の状態(2)において、限界振動が検出されたとき、ドライバにブレーキ操作を命令するために、ドライバに警告が出力され、ドライバがブレーキ操作を開始した場合、ブレーキ過程において、ドライバは、車両ブレーキが自動的に操作されることにより支援され、この場合、ブレーキ圧力(Pso)が設定され、このブレーキ圧力(Pso)により最適な車両の減速が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラが横揺れしているときの自動車のドライバを支援する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トレーラを連結する車両の場合、きわめて高い速度において、鉛直軸周りのトレーラの振り子振動が発生することがある。この振り子振動は、通常、いわゆる限界速度以上においてはじめて発生し、限界速度は、特にトレーラの構造特性および積荷の関数である。限界速度を超えたとき、連結車は不安定となる。
【0003】
ドイツ特許公開第10031266号から、トレーラの振り子振動をセンサ情報の評価により検出し、限界トレーラ振動が存在したとき、車両ブレーキまたはトレーラ・ブレーキを自動的に、即ちドライバの助力なしに操作することが既知である。この場合、車両またはトレーラの車輪は、対称的に(右側および左側が同じ強さで)制動されてもよく、また個々に制動されてもよい。さらに、能動的前車軸かじ取りまたは後車軸かじ取りへの自動かじ取り係合により、トレーラ振動を減衰させることが既知である。この場合、状況検出のために、通常、車両の横方向加速度またはヨー速度のような複数の走行状態変数が評価される。上記の方法においては、基本的に、限界走行状況が検出され且つトレーラが連結されているときにブレーキ係合が実行される。
【0004】
この場合、特にトレーラの検出が問題となる。例えば、トレーラとの電気接続を評価することによりトレーラを検出することが既知である。しかしながら、全てのトレーラ・タイプが電気接続を備えているとはかぎらないので、これによってはトレーラを検出することができない。さらに、トレーラの電気系統に電気的故障がある場合、誤った検出をすることがある。この場合には、トレーラが存在しないときにおいても自動安定化機能がブレーキ過程を実行したり、ないしはトレーラが存在しているにもかかわらずブレーキ過程を実行しなかったりするであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、限界走行状況において車両を安定化させるときにドライバを支援し、この場合に誤ったブレーキ係合を回避させることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、独立請求項に記載の特徴により解決される。本発明のその他の形態が従属請求項に記載されている。
本発明の本質的な特徴は、限界走行状況が検出されたときにブレーキ係合を直接実行せず、はじめに、ドライバにブレーキ操作を命令するために、車両トレーラの限界横揺れが存在することをドライバに通知するにすぎないことにある。この命令によりドライバがブレーキ操作を開始した場合、車両制動においてブレーキ圧力が自動的に設定され、このブレーキ圧力により、トレーラを安定化させるために車両の減速特に最適またはできるだけ最適な減速が達成されることにより、ブレーキ過程においてドライバが支援される。ドライバのブレーキ操作が例えば弱すぎた場合、ブレーキ圧力は自動的に走行状況の関数としての最適値に上昇される。これに対して、ブレーキ・ペダルの操作が強すぎた場合、ブレーキ圧力は自動的に制限される。
【発明の効果】
【0007】
このような方法ないしはこのようなドライバ支援装置は、ドライバにより事前にブレーキ操作が開始されたときにのみ自動安定化が実行されるという本質的な利点を有している。特にトレーラが全く連結されていないときの誤ったブレーキ係合はこれにより回避される。
【0008】
安定化過程において設定されるブレーキ圧力は、ドライバ供給圧力(即ち、ドライバにより加えられたブレーキ圧力)および/またはドライバ供給圧力の勾配の関数であることが好ましい。自動設定ブレーキ圧力は、さらに、走行状況特に車両速度、車両横方向加速度および/または車両ヨー・レートの関数であることが好ましい。したがって、安定化係合を走行状況およびドライバの希望に最適に適合させることができる。
【0009】
ドライバ支援のタイプおよび方式は走行状況に応じてそれぞれ異なっていてもよい。トレーラの振動が限界にない走行状況においては、操作が実行されないことが好ましい。振動の強さが所定の範囲内にあるとき、例えばドライバに警告が出力され、ドライバがブレーキ操作を開始した場合、車両の安定化においてドライバが支援されてもよい。安定化装置がトレーラの強い振動を検出した場合、直接自動ブレーキ操作が開始されることが好ましい。これにより、車両を安定化させるために、強くブレーキを操作する代りに、例えばドライバが加速させるような、ドライバの誤った応答が阻止される。
【0010】
トレーラの振り子運動を検出するために、車両のヨー速度および/または車両の横方向加速度が(ドライバの希望を考慮して)評価されることが好ましい。通常の走行動特性制御においては、対応のセンサが本来既に存在している。これがドライバ支援装置により使用されてもよい。
【0011】
本発明によるドライバの支援方法および車両の安定化方法は、所定の速度しきい値を超えているときにのみ実行されることが好ましい。
トレーラが横揺れしているときのドライバの支援装置は、それに接続されている、トレーラの横揺れ運動を検出するためのセンサ装置を有する制御装置と、走行状態の関数として制御装置により操作されるドライバへの警告装置と、能動的ブレーキ装置とを含むことが好ましい。ドライバが警告に基づいてブレーキ操作を開始した場合、制御装置は、車両を安定化させるために、それにより車両の減速、特に最適またはできるだけ最適な車両の減速が達成可能な目標ブレーキ圧力(または比例変数)を決定する。この目標ブレーキ圧力は、次に、例えば走行動特性制御装置のような能動的ブレーキ装置の対応の操作により、制御装置によって設定される。
【0012】
以下に本発明を添付図面により例として詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、トレーラが横揺れしているときにドライバを支援するための安定化方法の本質的な方法状態の概略ブロック図を示す。ここで、ブロック1は、状態「状況検出」を表わし、状態「状況検出」は、例えば制御装置13(図4参照)のような対応の電子装置により実行される。この場合、例えば横方向加速度またはヨーレートのような車両の横方向動特性を表わす信号が処理および評価される。付属のセンサ装置が図4において符号12により示されている。状況検出のために、例えば、本来既に存在するESPセンサ装置が利用されてもよい。実際にトレーラが連結されているかどうかを検出するために、オプションとして、トレーラとの電気接続が評価されてもよい。
【0014】
モニタリングされる走行状態変数が所定の条件を満たしているとき、例えばヨーレートまたは車両横方向加速度が所定のしきい値を超えているとき、限界トレーラ振動が検出される。この場合、ドライバは、ブロック2において光学式または音響式により警告され、さらに、ドライバはブレーキ過程を開始することを要求される。モニタリングされる変数が所定の条件を満たしていない場合、その他の操作は実行されず、この場合、状態3がとられる。
【0015】
状態2においてドライバ警告が出力された後に、ここで、ドライバは、ブレーキ操作を希望するかまたは希望しないかを自身で判断してよい。ドライバがブレーキを操作しない場合(ケースN)、この方法は状態3に移行し且つその他の操作は行われない。これに対して、ドライバがブレーキを操作した場合(ケースY)、ドライバは、状態4において、車両を安定化させるときに自動ブレーキ係合により支援される。この場合、自動ブレーキ係合の強さは、特に、走行状況、即ち車両速度および横揺れの強さの関数であり、好ましくはブレーキ操作(ドライバ供給圧力)の強さまたはドライバ供給圧力の上昇速度の関数でもある。
【0016】
図2は、曲線10により、例えば所定の走行状況に対して1つの車輪に設定された車輪ブレーキ圧力Pをドライバ供給圧力Pの関数として示す。きわめて低い供給圧力(ドライバはブレーキを比較的弱く操作するだけである)を有する範囲Aの第1のセクション内においては自動ドライバ支援が行われず、これにより、車輪ブレーキ圧力Pはドライバ供給圧力P(曲線9)に対応する。供給圧力Pの増加と共に、次に、油圧装置15の自動操作により車輪ブレーキに目標ブレーキ圧力Psoが設定されるが、目標ブレーキ圧力Psoは、制御装置13により状況の関数として計算されたものである。ドライバがブレーキをきわめて弱く操作した場合(範囲A)、車輪ブレーキ圧力Pはそれに対応して上昇され、これに対して、ドライバがブレーキをきわめて強く操作した場合(範囲B)、車輪ブレーキ圧力Pは目標値Psoに制限される。ドライバ供給圧力Pがきわめて高い場合、ドライバに車両のオーバーブレーキ操作を可能にするために自動制限が実行されないことが好ましい。車輪ブレーキ圧力P(曲線10)は、この範囲Cにおいて、再びドライバの希望(曲線9)に対応する。他の特性曲線もまた考えられる。特に範囲A、B、Cの1つまたは複数が幅0を有していてもよい。
【0017】
図3は、本発明の他の実施形態による、トレーラが横揺れしているときのドライバの支援方法の本質的な方法状態を示す。この場合、状態1−4は、図1の状態1−4に対応するので、この説明に関しては図1の説明が参照される。図1の方法とは異なり、ここでは、トレーラ振動の強さの関数として異なる安定化手段が開始される。状態1(状況検出)においてトレーラが振動していないことが検出された場合(矢印8参照)、その他の操作が実行されず、且つこの方法は状態3に移行する。弱い振動がある場合(矢印7)、ドライバにブレーキ操作を命令するために、一方で、ドライバに光学式または音響式警告が伝達される。これに対して、強い振動がある場合(矢印6)、車両は、ドライバの操作とは独立に、直接自動ブレーキ係合により安定化される(状態5)。この自動ブレーキ係合5は、同様に、走行状況(例えば、車両速度および振動の強さ)の関数であり且つ制御装置13により制御される。
【0018】
図4は、トレーラが横揺れしているときに車両を安定化させるための装置の本質的な要素のブロック図を示す。このブロック図は、それに接続されたセンサ装置12を有する制御装置13を含み、制御装置13は、センサ信号の評価により限界走行状況を検出する。センサ装置12は、例えばヨーレート・センサおよび/または横方向加速度センサを含む。
【0019】
ドライバに警告するために光学式または音響式の警告装置14が設けられ、警告装置14は、制御装置13により操作可能である。ドライバによるブレーキ操作はブレーキペダル・センサ11により検出され、ブレーキペダル・センサ11は同様に制御装置13に接続されている。制御装置13は、さらに、例えば既知のESP油圧装置のような能動的ブレーキ装置と結合され、ESP油圧装置は、車両の安定化においてドライバを支援するために、希望に応じて制御装置13により電気的に操作可能である。制御装置は、それにより上記の方法が実行可能なアルゴリズムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態による安定化方法の本質的な方法状態のブロック図を示す。
【図2】図2は、ドライバ設定の関数としての車輪ブレーキ圧力線図を示す。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態による安定化方法の本質的な方法状態のブロック図を示す。
【図4】図4は、トレーラが横揺れしているときのドライバの支援装置のブロック図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの走行状態変数(vFz、ay、vGi)の評価により、トレーラの振動を検出する(1)ステップと、
限界振動が検出されたとき、ドライバにブレーキ操作を命令するために、ドライバに警告を出力する(2)ステップと、
ドライバにより実行されたブレーキ操作をモニタリングする(3)ステップと、
ブレーキ過程において、車両ブレーキの自動操作(10)によりドライバを支援する(4)ステップであって、ブレーキ圧力(Pso)が加えられ、このブレーキ圧力(Pso)により、トレーラを安定化させるために車両の減速が達成される、前記ドライバを支援する(4)ステップと、
を特徴とするトレーラが横揺れしているときの自動車のドライバの支援方法。
【請求項2】
ドライバを支援する(4)ために、自動設定ブレーキ圧力(Pso)が、ドライバ供給圧力およびドライバ供給圧力の勾配の少なくともいずれかの関数として決定されることを特徴とする請求項1に記載の支援方法。
【請求項3】
ドライバを支援する(4)ために、自動設定ブレーキ圧力(Pso)が、走行状況(vFz、ay、vGi)、好ましくは車両速度またはトレーラ振動の強さの関数として決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の支援方法。
【請求項4】
トレーラ振動の強さの関数として、いかなる操作も実行されない(3)か、ドライバに警告が出力される(2)か、または直ちに自動ブレーキ操作が開始される(5)ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の支援方法。
【請求項5】
トレーラ振動を検出する(1)ために、車両ヨー速度(vGi)および車両横方向加速度の少なくともいずれかが評価されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の支援方法。
【請求項6】
所定の速度しきい値(vFz)を超えているときにのみ実行されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の支援方法。
【請求項7】
トレーラ振動を検出する(1)ためのセンサ装置(12)と、
状況検出のために少なくとも1つのセンサ情報(vFz、ay、vGi)を評価する制御装置(13)と、
限界振動が検出されたとき、ドライバにブレーキ操作を命令するために、ドライバに警告を出力する(2)ための警告装置(14)と、
ドライバにより実行されたブレーキ操作をモニタリングする(3)ためのセンサ装置(11)と、
トレーラを安定化させるために車両の減速が達成されるように、制御装置(13)により自動的に操作される電気操作可能なブレーキ装置と、
を備えたことを特徴とするトレーラが横揺れしているときの自動車のドライバの支援装置。
【請求項8】
制御装置(13)が、ドライバ供給圧力およびドライバ供給圧力の勾配の少なくともいずれかの関数として、ブレーキ圧力を決定することを特徴とする請求項7に記載の支援装置。
【請求項9】
車輪のブレーキ圧力が、中位のドライバ供給圧力の範囲(A、B)内においては、所定の目標値(Pso)に設定され、きわめて高いドライバ供給圧力(C)においては、ドライバ供給圧力に対応することを特徴とする請求項7または8に記載の支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−502527(P2008−502527A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515927(P2007−515927)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052554
【国際公開番号】WO2006/005652
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】